説明

塗布容器

【課題】使用時にはうなじや背中等の塗布し難い部分に自ら塗布することが容易に行え、また、保管、流通等の不使用時にはコンパクトな状態にしておくことができ、これらの使用時及び不使用時の形態を簡単な操作で切り替えが可能である使い勝手のよい塗布容器を提案する。
【解決手段】胴部10上に傾斜起立する口頸部11を備えた容器体Aと、口頸部11に回転可能に嵌合させた回転筒部20より、容器体A内と内部を連通する装着筒部21を垂直起立し、回転により装着筒部21が垂直状態から前方傾倒状態へ回動する回動部材Bと、装着筒部21の先端部に嵌着した塗布体Cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布容器に関し、詳しくは、使用時には塗布が行い易く、また、不使用時にはコンパクトな形態での保管、運送等が可能な塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布容器として、容器体上に塗布部を突設したものが一般に提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
これらは、塗布部を被塗布部分に押し当てる等して使用するが、例えば、うなじや背中等の塗布し難い部分に自ら塗布する場合には行い難いが、この様な問題点に対応できる塗布容器も提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
上記特許文献2の塗布容器は、上端部に取出口が形成された容器本体と、取出口を塞いで設けられこの取出口の中心位置に透孔が形成されている中栓と、中栓上端部に設けられた透孔を囲む略円筒状の球体保持部と、球体保持部の内側に回転可能に嵌合保持されその一部が球体保持部の先端に形成された開口縁部から露出する球体とを備え、球体が容器本体の中心軸上に配置されるとともに、開口縁部は、容器本体の中心軸に対して直角以外の角度で交差する仮想面に沿って形成されている。
【0005】
上記特許文献2の塗布容器は塗布部である球体が側方を向いているため上記塗布し難い部分への塗布が行いやすい利点はあるもの、容器体上の容器体の径内に塗布部が位置しているため、その効果に限度がある。
【0006】
一方、斜め方向へ容器体より突出した状態で塗布部を突設している塗布容器も提案されている。(例えば、特許文献3参照)
【0007】
上記特許文献3の塗布容器は特許文献2の塗布容器と比較して上記塗布し難い部分への塗布がより行いやすいという利点があるものの、保管、流通時等に嵩ばるという点も否めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−107667号公報
【特許文献2】特開2003−118761号公報
【特許文献3】特開平10−218219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、使用時にはうなじや背中等の塗布し難い部分に自ら塗布することが容易に行え、必要に応じて塗布部の容器体に対する角度を変化させての塗布が可能であり、また、保管、流通等の不使用時にはコンパクトな状態にしておくことができ、これらの使用時及び不使用時の形態を簡単な操作で切り替えが可能である使い勝手のよい塗布容器を提案する。また、収容液の充填或いはキャップの装着の際に効率の良い充填、装着が可能な塗布容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、胴部10上に傾斜起立する口頸部11を備えた容器体Aと、口頸部11に回転可能に嵌合させた回転筒部20より、容器体A内と内部を連通する装着筒部21を垂直起立し、回転により装着筒部21が垂直状態から前方傾倒状態へ回動する回動部材Bと、装着筒部21の先端部に嵌着した塗布体Cとを備えてなる。
【0011】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、装着筒部21の垂直状態では回動部材Bの上方からの投影面が容器体Aの上方からの投影面内に位置し、装着筒部21の前方傾倒状態では、装着筒部21が胴部10前面より前方へ突出した状態である。
【0012】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、装着筒部21の垂直状態と前方傾倒状態とでそれぞれ回動部材Bが係止される係止機構を設けた。
【0013】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段に於いて、回動部材Bを回転させるための回動用突起30を設けた。
【0014】
第5の手段として,以下の通り構成した。即ち、前記第4の手段に於いて、容器体Aは、胴部10の前部に回動用突起収納用の凹部14が凹設され、回動用突起30は、装着筒部21起立状態の回転筒部20前面より前方へ突設して回動用突起収納用の凹部14内に収納されてなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば不使用時には装着筒部21を垂直起立させておくことができるため、例えば箱などに収納する場合に無駄な側方突出部分を極力少なくすることができ、コンパクトな形態での収納が可能であり、ガタツキを極力防止しての収納が可能となる。
【0016】
また、使用時には回動部材Bを装着筒部21を前方傾倒状態に回動させることで、塗布体Cの向きを側方に向けることができ、うなじや背中等の塗布し難い部分に自ら塗布することを容易に行える。また、必要に応じて装着筒部21の垂直起立状態での使用も可能であるため、塗布体Cの容器体Aに対する向きが異なる状態での塗布が可能となる利点もある。更に、その回動操作も極めて簡単に行える。また、使用後は再び装着筒部21を垂直起立状態に回動させれば、コンパクトな保管が可能となる。
【0017】
また、装着筒部21の垂直起立状態での収容物の充填を行うことができ、充填効率の向上を図れるとともに、キャップ装着の際にも装着筒部21の垂直起立状態で行えるため、効率の良いキャッピングが可能となり、製造上でのメリットも兼ね備えている。
【0018】
装着筒部21の垂直状態では回動部材Bの上方からの投影面が容器体Aの上方からの投影面内に位置し、装着筒部21の前方傾倒状態では、装着筒部21が胴部10前面より前方へ突出した状態である場合には、装着筒部21の垂直状態では、側方への突出部分をより確実に無くすことができるため、上から下まで同形の単純な形状の箱等の利用が可能となる利点がある。
【0019】
装着筒部21の垂直状態と前方傾倒状態とでそれぞれ回動部材Bが係止される係止機構を設けた場合には、装着筒部21の垂直状態から前方傾倒状態への回動及びその逆を、所定位置で確実に止めることができ、切り替え操作が容易であり、使い勝手が良い。
【0020】
回動部材Bを回転させるための回動用突起30を設けた場合には、装着筒部21の垂直状態と前方傾倒状態との切り替えが極めて容易となる利点がある。
【0021】
容器体Aは、胴部10の前部に回動用突起収納用の凹部14が凹設され、回動用突起30は、装着筒部21起立状態の回転筒部20前面より前方へ突設して回動用突起収納用の凹部14内に収納されてなる場合には、回動用突起30を大きく形成でき取り扱いもより便利となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】塗布容器の縦断面図である。(実施例1)
【図2】塗布容器の平面図である。(実施例1)
【図3】塗布容器の分解図である。(実施例1)
【図4】図1のA−A線に沿う横断面図である。(実施例1)
【図5】塗布容器の縦断面図である。(実施例1)
【図6】図5のB−B線に沿う横断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図6は塗布容器1の一例を示し、塗布容器1は、容器体Aと、回動部材Bと、塗布体Cと、キャップDとを備えている。
【0025】
容器体Aは合成樹脂製で、胴部10上に口頸部11を備えている。胴部10は、図2或いは図3に示す如く、前後に長い楕円筒状の下部胴部10a と、下端が下部胴部10a の上端縁と同じ前後に長い楕円筒状をなし、上端開口縁が前方へ傾く円形状に縮径され、且つ、前部が上方に行くに従い縮径するテ−パ状に形成された中間胴部10b と、下端縁を中間胴部10b 上端縁と連続して前方へ傾く円筒状をなす上端胴部10c とを備えている。また、上端胴部10c よりフランジ状に延設した肩部12を介して前方へ傾く円筒状の口頸部11を起立している。口頸部11外周には係止突条13を周設している。そして、中間胴部10b の前部及び上端胴部10c の前部の凹んだ部分を後述する回動用突起を回動可能に収納する回動用突起収納用の凹部14として構成している。
【0026】
また、上端胴部10c の前面中央部には、図4或いは図6に示す如き横断面半円状の第1係止突起15を突設し、また、上端胴部10c の後部所定位置には横断面三角形状の第2係止突起16を突設している。
【0027】
回動部材Bは、口頸部11外周に抜け出しを防止して回転可能に嵌合させた回転筒部20の先端縁より装着筒部21を垂直に起立している。この状態の装着筒部21の上端面は水平面をなしている。また、回転筒部20の内面上端部より内孔が偏心位置にあるフランジ部22を延設し、フランジ部22の内周縁より垂設したシール筒部23を口頸部11内周に液密かつ回動可能に嵌合させている。また、回転筒部20の外周一部から装着筒部21の外周に亘り、この状態で水平なフランジ24を突設し、フランジ24上方の装着筒部21外周にキャップDを螺着させるための螺条を周設している。なお、回転筒部20内周に突設した係合突条25を係止突条13に乗り越え係合させて抜け出しの防止を図っている。
【0028】
また、回動部材Bの前部からは、容器体Aに対して回動部材Bを回転させるための回動用突起30を一体に突設している。回動用突起30は前面が容器体Aの下部胴部10a 先端面と略同じ位置の垂直面をなし、また、第1係止突起15が嵌合する係合凹部31を備え、更に、第2係止突起16に係止される係合突片32を備えている。そして、この回動用突起30を含めた回動部材Bは、装着筒部21の垂直状態では回動部材Bの上方からの投影面が容器体Aの上方からの投影面内に位置し、装着筒部21の前方傾倒状態では、装着筒部21が胴部10前面より前方へ突出した状態である如く構成している。尚、ここでいう前方傾倒状態とは傾斜した状態のみでなく装着筒部21が前方へ水平に倒れた状態も含む。装着筒部21の前方傾倒状態の傾斜角度(水平も含む)は、容器体Aの口頸部11の傾斜角度及び回転筒部20と装着筒部21の屈折角度を調整して選択すれば良い。
【0029】
塗布体Cは、装着筒部21内周に嵌合させた嵌合筒部40と、装着筒部21の上面に嵌合させたフランジ41と、上面に突設した塗布部42とを備えている。塗布部42は多孔性物質で形成されたもので、収容液を孔を介して吐出するとともに、表面で塗布液を延ばすことができる。なお、塗布体Cはこれに限らず、従来使用されているものが種々採用できる。例えば、刷毛であっても、球体を保持したものであっても良い。
【0030】
キャップDは、装着筒部21外周に螺着させた周壁50の上端縁より頂壁51を延設して構成しており、頂壁51の裏面からはフランジ41上面に圧接する環状のシール突起52を突設している。
【0031】
この様に構成される塗布容器1の作用について説明する。収容物の充填に当たっては、例えば、装着筒部21の垂直起立状態で、塗布体Cを嵌着する前に充填することができる。充填後塗布体Cを嵌着し、キャップDを装着する。
【0032】
使用に当たっては、図1の状態からキャップDを外しそのままの状態で塗布体Cを被塗布部に当接しての塗布が可能となる。また、必要に応じて回動用突起30を掴んで回動部材Bを回動させる。図1の状態では、係合凹部31が第1係止突起15に係止されている状態であり、この状態から回動用突起30を半時計廻りに回動させると、図5及び図6に示す如く、第2係止突起16に係合突片32が係止されて、装着筒部21が前方を向く状態で係止される。従って、この第1係止突起15及び第2係止突起16と、回動部材Bの係合凹部31及び係合突片32とで、装着筒部21の垂直状態と前方傾倒状態とでそれぞれ回動部材Bが係止される係止機構を構成している。
【0033】
液の塗布に当たっては、容器体Aの胴部10の圧搾により塗布部42を被塗布部に当接させて塗布し、引き延ばすことができる。尚、容器体Aの胴部10は必ずしも圧搾可能なものでなくても液の塗布は可能である。
【0034】
また、装着筒部21の垂直起立状態では、外方へのでっぱりが殆どないため、図1及び図2に二点鎖線で示す如き箱E内に効率よく収納することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…塗布容器
A…容器体
10…周壁、10a …下部胴部、10b …中間胴部、10c …上端胴部、11…口頸部、12…肩部、13…係止突条、14…回動用突起収納用の凹部、15…第1係止突起、16…第2係止突起
B…回動部材
20…回転筒部、21…装着筒部、22…フランジ部、23…シール筒部、24…フランジ、25…係合突条、30…回動用突起、31…係合凹部、32…係合突片
C…塗布体
40…嵌合筒部、41…フランジ、42…塗布部
D…キャップ
50…周壁、51…頂壁、52…シール突起
E…箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部(10)上に傾斜起立する口頸部(11)を備えた容器体(A)と、口頸部(11)に回転可能に嵌合させた回転筒部(20)より、容器体(A)内と内部を連通する装着筒部(21)を垂直起立し、回転により装着筒部(21)が垂直状態から前方傾倒状態へ回動する回動部材(B)と、装着筒部(21)の先端部に嵌着した塗布体(C)とを備えてなることを特徴とする塗布容器。
【請求項2】
装着筒部(21)の垂直状態では回動部材(B)の上方からの投影面が容器体(A)の上方からの投影面内に位置し、装着筒部(21)の前方傾倒状態では、装着筒部(21)が胴部(10)前面より前方へ突出した状態である請求項1記載の塗布容器。
【請求項3】
装着筒部(21)の垂直状態と前方傾倒状態とでそれぞれ回動部材(B)が係止される係止機構を設けた請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の塗布容器。
【請求項4】
回動部材(B)を回転させるための回動用突起(30)を設けた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の塗布容器。
【請求項5】
容器体(A)は、胴部(10)の前部に回動用突起収納用の凹部(14)が凹設され、回動用突起(30)は、装着筒部(21)起立状態の回転筒部(20)前面より前方へ突設して回動用突起収納用の凹部(14)内に収納されてなる請求項4記載の塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25450(P2012−25450A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166815(P2010−166815)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】