説明

塗布針

【課題】インクが乾燥固着することを防ぎ、インクを塗布する際のインクの流動性と転写性とを高めた、塗布針を提供する。
【解決手段】この塗布針1は、先端を基板上の微細領域に接触させて、液状材料を基板に塗布する塗布針1であって、表面の少なくとも一部に、撥水性を有する樹脂素材を含む撥水加工層5が形成されている。撥水加工層5が形成された部分においては、強撥水性が得られるため、インクの乾燥固着を防ぐことが可能となる。また、塗布針1表面におけるインクの流動性が高くなり、基板などの塗布対象物へのインク転写の際、一定量のインクの流し込みという機能が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗布針に関し、特に、液晶ディスプレイ用カラーフィルタのような基板上の微細領域に先端を接触させて、液状材料を基板に塗布する塗布針に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)の大型化、高精細化に伴い画素数も増大し、LCDを無欠陥で製造することは困難となり、欠陥の発生確率も増加している。このような状況下において歩留まり向上のために、LCDのカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥を修正することで良品転換する、欠陥修正装置が生産ラインに不可欠となっている。
【0003】
また最近では、LCDでも37〜45インチ程度のものが市販されており、1画素のサイズも小型パネルの60μm×200μm程度から200μm×600μm程度と大きくなっている。画素サイズが大きくなるに伴い、欠陥サイズも大きくなり、修正サイズも大きくなっている。このような状況において、従来の小さな修正サイズでは問題とされなかった修正品位でも、大きな修正サイズでは目視で見える領域となるため問題になる場合がある。
【0004】
図9(a)〜(c)は、LCDのカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥を示す図である。図9(a)〜(c)に示すように、カラーフィルタは、透明基板と、その表面に形成されたブラックマトリクス300と呼ばれる格子状のパターンと、複数組のR(赤色)画素301、G(緑色)画素302、およびB(青色)画素303とを含む。カラーフィルタの製造工程においては、図9(a)に示すように画素やブラックマトリクス300の色が抜けてしまった白欠陥304や、図9(b)に示すように隣の画素と色が混色したり、ブラックマトリクス300が画素にはみ出してしまった黒欠陥305や、図9(c)に示すように画素に異物が付着した異物欠陥306などが発生する。
【0005】
カラーフィルタの欠陥修正など、色インクを塗布する検査・修正工程においては、塗布針を用いた色修正が主流である。白欠陥304を修正する方法としては、白欠陥304が存在する画素と同色のインクを塗布針の先端部に付着させ、針先端の円形平坦面のインク層を白欠陥304に転写し、円形のインク層で白欠陥304を覆う方法がある。また、黒欠陥305や異物欠陥306を修正する方法としては、欠陥部分をレーザカットして矩形の白欠陥304を形成し、矩形の先端平坦面を有する塗布針を用いて矩形の白欠陥304内に矩形のインク層を転写する方法がある。
【0006】
色インクを塗布する検査・修正工程において、赤、緑、青の3原色、および黒の各インクの塗布作業は、1本の針を用いて塗布し、この針を洗浄した後、異なる色を選択し塗布するという流れとなる。または、各色1本ずつ計4本用意された針を用いて、洗浄動作を省略する場合もある。塗布針による塗布技術は、たとえば特許文献1で提案されている。また、塗布針へのインクや洗浄液の付着量が所定量を超えないように安定化させ、洗浄性を向上させる目的で、塗布針にニッケルめっき加工により撥水加工を施した技術が提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−292442号公報
【特許文献2】特開2004−205912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カラーフィルタの欠陥修正に用いられるインクは定着力が強い。つまり、基板に塗布するために塗布針に付着させたインクが、塗布針に定着しやすい。定着性の強いインクへの塗布針の浸漬を繰り返すと、都度塗布針の洗浄を行なったとしても、部分乾燥したインクが塗布針の外周部に固着しやすい。
【0008】
カラーフィルタの欠陥修正においては、塗布針の先端の直径が、転写するインク径に近似となることを想定して色修正を行なう。しかし、塗布針の先端に乾燥したインクが固着すると、所望の塗布径が得られなくなる。また、塗布針の先端周辺部に余分なインクが固着すると、塗布針をインクに浸漬したときに必要以上のインクが塗布針に付着し、その後のインク転写状態に異常をきたす場合がある。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、インクが乾燥固着することを防ぎ、インクを塗布する際のインクの流動性と転写性とを高めた、塗布針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る塗布針は、先端を基板上の微細領域に接触させて、液状材料を基板に塗布する塗布針であって、表面の少なくとも一部に、撥水性を有する樹脂素材を含む撥水加工層が形成されている。この場合は、撥水加工層が形成された部分においては、強撥水性が得られるため、インクの乾燥固着を防ぐことが可能となる。また、塗布針表面におけるインクの流動性が高くなり、基板などの塗布対象物へのインク転写の際、一定量のインクの流し込みという機能が高められる。なお撥水性とは、水をはじく性質をいい、接触角計を用いて測定される水滴の接触角によって評価することができる。樹脂素材の接触角(撥水性)が80°以上であれば、この発明の塗布針の撥水加工層として好適に用いることができる。
【0011】
好ましくは、撥水加工層は、塗布針の金属素材へ樹脂素材を含浸またはコーティングされた層である。この場合は、鉄などの塗布針の金属素材への樹脂素材の含浸またはコーティングによって、塗布針の表面に撥水加工層を形成することができる。
【0012】
また好ましくは、塗布針の材質として樹脂素材を用いる。この場合は、塗布針自体の材質として樹脂素材を用い、一体加工することによって、塗布針の表面に撥水加工層を形成することができる。
【0013】
また好ましくは、樹脂素材は、耐食性を有している。この場合は、たとえば有機溶剤である洗浄液の影響による塗布針の腐食を防止することができ、塗布針の長寿命化を図ることができる。なお耐食性とは、材料の腐食に対する抵抗性、特に溶剤などの化学薬品中での劣化・変質・分解し難さをいう。耐食性は、たとえば、インクの他エタノールやPEGMA(ポリエチレングリコールメタクリノール)などの溶剤へ、評価材料をたとえば24時間浸漬させた後、表面腐食や母材の発錆がないことを基準として、評価することができる。
【0014】
また好ましくは、樹脂素材は、フッ素系樹脂である。この場合は、撥水性・耐食性に優れたフッ素系樹脂によって塗布針の表面に撥水加工層を形成することによって、インクが塗布針へ乾燥固着することを防ぎ、インクを塗布する際のインクの流動性と転写性とを高めることができる。また、塗布針の長寿命化を図ることができる。たとえばフッ素系樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明の塗布針によれば、インクが塗布針へ乾燥固着することを防ぎ、インクを塗布する際のインクの流動性と転写性とを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1の塗布針の模式図である。図1に示すように、この塗布針1では、先端部に、インクの表面張力に影響を受けない長さに亘って、塗布針1の先端から基端に向かって塗布針1の断面積が漸次拡大するテーパ部2が設けられている。また、塗布針1の先端には平坦面3が設けられている。先端部にテーパ部2と平坦面3を設けたことにより、インクを塗布針1に付着させるためにインクタンクへ浸漬させた塗布針1をインクタンクから引き上げると、表面張力によってテーパ部2の上部にインク溜まりが発生し、平坦面3およびその近傍は薄いインク層で覆われる。なお、塗布針1に保持されるインクの量は、インクタンクへの塗布針1の浸漬深さを制御することによって、調整が可能である。
【0018】
塗布針1を用いて基板の表面にインクを塗布する場合には、先端部にインクを付着させた塗布針1先端の平坦面3を、基板の表面の所定位置に接触させ保持する。このとき、塗布針1と基板の接触保持時間を長くしても、塗布針1と基板の接触部に流れ出すインクの量はほとんど変化しない。つまり、テーパ部2に付着したインクの表面張力が強いために、テーパ部2の上部のインク溜まりに付着したインクはそのまま保持され、基板に流れ込むことがない。よって、平坦面3に付着した分だけのインクを、基板などの被転写物に転写することができる。
【0019】
塗布針1先端の平坦面3を基板に接触させると、平坦面3に付着したインクは、平坦面3の外周に押し出され若干広がって、基板の表面の所定位置に転写塗布される。たとえば、平坦面3がφ50μmである塗布針1を使用すると、転写されたインクの径は約φ60μmになる。このように、塗布針1先端の平坦面3の寸法によって制御し、所望のインク修正サイズを得ることができる。平坦面3は、図1においては円形であり、その直径は、たとえばφ20μm以上φ70μm以下程度のものが好適である。なお、平坦面3の平面形状は円形に限られず、四角形、三角形などの多角形であっても構わない。塗布針1の先端は、必ずしも平坦でなくてもよく、凸形状、凹形状など何でもよい。
【0020】
また、図1に示すように、塗布針1の表面には撥水加工層5が形成されている。撥水加工層5は、撥水性を有する樹脂素材を含み、塗布針1の表面の全体を囲むように切れ目なく形成されている。撥水加工層5は、塗布針1の金属素材へ樹脂素材を含浸することによって形成することができる。たとえば、鉄やステンレスの表面に粒子状に析出したニッケルの多孔性皮膜にフッ素樹脂を含浸させるニダックス(R)処理や、アルミニウムおよびアルミニウム合金の表面に生成した硬質アルマイト皮膜にフッ素樹脂を含浸させるタフラム(R)処理を行なうことができる。また撥水加工層5は、塗布針1の金属素材へ樹脂素材をコーティングすることによって形成することができる。樹脂素材としては、たとえばフッ素系樹脂、シリコーン樹脂などの耐食性を有する樹脂素材が好適である。
【0021】
柔らかい面への塗布を目的とするときには、図1に示すように塗布針1先端の平坦面3まで撥水加工層5を形成することができる。また、用途によっては、図2に示すように、テーパ部2には撥水加工層5を形成せず、塗布針1の円柱形状を有する部分に撥水加工層5を形成してもよい。つまり、樹脂素材を含浸またはコーティングして撥水加工層を形成する塗布針の対象面や部分に制約はなく、塗布針1の表面の少なくとも一部に、撥水加工層5が形成されていればよい。
【0022】
樹脂素材をコーティングして撥水加工層5を形成する場合、樹脂素材が厚くなりすぎると、塗布針1先端の平坦面3が被修正物へ接触するときに、平坦面3に掛かる面圧により樹脂素材が弾性変形して広がるので、修正対象である欠陥の外にインクがはみ出してしまうことがある。また、樹脂素材が薄すぎると、コーティングの剥がれや早期摩耗などの問題が生じることがある。そこで、コーティングは5μm以上30μm以下の厚みとし、被修正物の表面硬度や材質によってコーティングの厚みを使い分けることで、インク塗布径を適正化することが可能となる。
【0023】
図3は、図1または図2に示した塗布針1を用いてインクを塗布する、インク塗布機構の構成を示す一部省略した斜視図である。図3に示すように、このインク塗布機構21は、インク塗布用の塗布針1を含む。また、塗布針1を垂直駆動させ、塗布針1の先端部が液体材料を保持する容器内の液状材料に接触する待機位置と、塗布針1の先端部が待機位置よりも基板に接近した塗布位置との、少なくとも2箇所で塗布針1の先端部を停止させるための駆動部としての、塗布針駆動シリンダ22とを含む。塗布針1は、保持部材24を介して塗布針駆動シリンダ22の駆動軸23の先端部に設けられる。
【0024】
インク塗布機構21は、水平に設けられた回転テーブル25を含む。回転テーブル25上には円周方向に、液状材料を保持する容器としての、複数のインクタンク28〜31が順次配置され、さらに、回転テーブル25上には洗浄装置32とエアパージ装置33とが設けられる。回転テーブル25の中心には回転軸26が立設されている。また、回転テーブル25には、インク塗布時に針1を通過させるための切欠部27が形成されている。インクタンク28〜31には、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)および黒の各色のインクが適宜注入されている。洗浄装置32は、塗布針1に付着したインクを除去するためのものであり、エアパージ装置33は塗布針1に付着した洗浄液を吹き飛ばすためのものである。
【0025】
インク塗布機構21はまた、回転テーブル25の回転軸26を回転させるためのインデックス用のモータ34を含む。さらに、回転軸26とともに回転するインデックス板35と、インデックス板35によって回転テーブル25の回転位置を検出するためのインデックス用センサ36と、インデックス板35によって回転テーブル25の回転位置が原点に復帰したことを検出するための原点復帰用センサ37とが設けられる。モータ34はインデックス用センサ36および原点復帰用センサ37の出力に基づいて制御され、回転テーブル25を回転させて切欠部27、インクタンク28〜31、洗浄装置32およびエアパージ装置33のうちいずれかを塗布針1の下方に位置させる。
【0026】
なお、塗布針駆動シリンダ22とモータ34はZ軸テーブル(図示せず)に固定され、Z軸テーブルと欠陥修正の対象となるカラーフィルタ基板とは、塗布針1の下方のXYテーブル(図示せず)によって相対的に位置決めされる。
【0027】
次に、このインク塗布機構21の動作について説明する。まず、XYテーブルおよびZ軸テーブルが駆動され、カラーフィルタ基板の欠陥部の上方の所定位置に塗布針1の先端が位置決めされる。次いで、モータ34によって回転テーブル25が回転され、所望のインクタンク(たとえば28)が塗布針1の下に移動される。次に、塗布針駆動シリンダ22によって塗布針1が上下に駆動され、塗布針1の先端部にインクが付着される。
【0028】
次いで、モータ34によって回転テーブル25が回転され、切欠部27が塗布針1の下に移動される。次に、塗布針駆動シリンダ22によって塗布針1が上下に駆動され、塗布針1の先端部に付着したインクがカラーフィルタ基板の欠陥部に塗布される。
【0029】
塗布針1の洗浄時は、モータ34によって回転テーブル25が回転され、洗浄装置32が塗布針1の下に移動される。次に、塗布針駆動シリンダ22によって塗布針1が上下に駆動され、塗布針1に付着したインクが洗浄される。次いで、モータ34によって回転テーブル25が回転され、エアパージ装置33が塗布針1の下に移動される。次に、塗布針駆動シリンダ22によって塗布針1が上下に駆動され、塗布針1に付着した洗浄液が吹き飛ばされる。
【0030】
図4は、図3に示したインク塗布機構21を搭載した欠陥修正装置の全体構成を示す図である。図4に示すように、この欠陥修正装置は、観察光学系40、CCDカメラ41、レーザ42、インク塗布機構21、およびインク硬化用照明43から構成される欠陥修正ヘッド部を備える。また、欠陥修正ヘッド部と基板テーブルとを相対的に移動させて位置決めを行なう位置決め機構を備える。位置決め機構は、欠陥修正ヘッド部を基板6に対して垂直方向(Z軸方向)に移動させる第1の副駆動部としてのZ軸テーブル44と、Z軸テーブル44を搭載してY軸方向と直交し基板に略平行なX軸方向に移動させる第2の副駆動部としてのX軸テーブル45と、基板6を搭載して基板に略平行なY軸方向に移動させるための基板テーブルとしてのY軸テーブル46とから構成される。また、装置全体の動作を制御する制御用コンピュータ47と、制御用コンピュータ47に作業者からの指令を入力するための操作パネル48とを備える。
【0031】
観察光学系40は、基板6の表面状態(基板6の表面上の欠陥部を含む)や、インク塗布機構21でインク塗布している状態を観察するためのものである。観察光学系40によって観察される画像は、CCDカメラ41により電気信号に変換され、制御用コンピュータ47のモニタ画面に表示される。インク硬化用照明43は、インク塗布機構21で塗布されたインクを硬化させるための光を照射する。インクが紫外線硬化タイプの場合は、紫外線照明がインク硬化用照明43として選択されて装置に搭載される。インクが熱硬化タイプの場合は、ハロゲン照明がインク硬化用照明43として選択されて装置に搭載される。レーザ42は、黒欠陥や異物欠陥にレーザ光を照射して除去するために用いられる。本装置構成により、塗布針1の先端部に付着したインクを、白欠陥、または、黒欠陥もしくは異物欠陥をレーザ42で除去した穴に塗布して修正することができ、カラーフィルタに発生した白欠陥、黒欠陥、異物欠陥の修正が可能である。
【0032】
以上説明したように、この実施の形態の塗布針1は、たとえばLCDのカラーフィルタやプリント基板などの製造工程で発生した欠陥に、インクなどの液状材料を塗布して修正する用途に、適用することができる。塗布針1は、その先端を基板上に発生した欠陥などの微細領域に接触させて、液状材料を基板に塗布するものである。そして、塗布針1の表面の少なくとも一部に、たとえばフッ素系樹脂などの、撥水性および耐食性を有する樹脂素材を、塗布針1の金属素材へ含浸またはコーティングすることによって、撥水加工層5が形成される。
【0033】
これによって、塗布針1のインクが付着する部分に撥水加工層5が形成されるために、強撥水性を得ることができ、塗布針1をインクタンクの中に浸漬させても塗布針1へのインクの乾燥固着を防ぐことができるので、安定したインク塗布径を得ることができる。図3に示すインク塗布機構21では、塗布針1は各色共通で用いるために、塗布するインク色を変更する際には必ず塗布針1の洗浄動作を行なう必要があるが、塗布針1の撥水性能が高まることで、洗浄時間を短縮することができる。耐食性を有する樹脂素材を用いることで、たとえば有機溶剤である洗浄液の影響による塗布針1の腐食を防止することができ、塗布針1の長寿命化を図ることができる。
【0034】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2の塗布針の模式図である。図5に示すように、この塗布針71では、先端部に、インクの表面張力に影響を受けない長さに亘って、塗布針71の先端から基端に向かって塗布針71の断面積が漸次拡大するテーパ部72が設けられている。また、塗布針71の先端には平坦面73が設けられている。
【0035】
図5においては、塗布針71自体の材質として樹脂素材を用い、塗布針71は一体加工されており、塗布針71の全体が樹脂素材で形成されている。よって塗布針71の表面全体には樹脂素材が現れており、塗布針71の表面の全体に撥水性を有する樹脂素材を含む撥水加工層75が形成されていることになる。この構成によって、塗布針71の表面全体において強撥水性が得られるため、塗布針71の表面にインクが乾燥固着することを防ぐことが可能となる。実施の形態2の塗布針71は、LEDのカラーフィルタの欠陥修正に用いられる他、液晶基板などの薄板ガラス基板、プラズマディスプレイ用の厚板ガラス基板、硬質プラスチック・プリント基板などの樹脂系、フィルム液晶などの軟質材などの修正用途に好適に用いられ、広汎な用途に用いることができ拡張性が高い。
【0036】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3の塗布針の模式図である。図6(a)は塗布針81の先端部を示す正面図であり、同図(b)はその下面図であり、同図(c)は同図(b)のA部拡大図であり、同図(d)は同図(a)のVID−VID線断面図であり、同図(e)は同図(d)のB部拡大図である。
【0037】
図6(a)〜(e)に示すように、塗布針81の先端部には、インクの表面張力に影響を受けない長さに亘って、塗布針81の先端から基端に向かって塗布針81の断面積が漸次拡大するテーパ部82が設けられ、塗布針81の先端には平坦面83が設けられ、さらに、塗布針81の先端部の外周面には、先端からテーパ部82の上部に亘って所定寸法の溝84が形成されている。
【0038】
このように先端部にテーパ部82と平坦面83と溝84とを設けたことにより、塗布針81をインクタンクから引き上げると、表面張力によってテーパ部82の上部にインク溜まりが発生し、平坦面83およびその近傍は薄いインク層で覆われ、溝84内にインクが溜まる。塗布針81の先端の平坦面83を基板表面に接触させると、インクが基板表面に付着することによって表面張力の不均衡が生じ、テーパ部82の上部や溝84内に溜まったインクが毛細管現象によって溝84を経て先端に供給され、基板に塗布される。たとえば、カラーフィルタの白欠陥にインクを塗布する場合は、塗布針81の先端を白欠陥の中央部に接触させることにより、白欠陥全体にインクを正確に速く容易に塗布することができる。
【0039】
図6に示すように、塗布針81の表面全体には撥水性を有する樹脂素材を含む撥水加工層85が形成されている。撥水加工層85が形成された部分においては、強撥水性が得られるため、インクの流動性が高くなる。よって、平坦面83を基板表面に接触させるときに、塗布針81の外周部に付着したインクが容易に基板に流れ込む、充填機能が高められている。したがって、この実施の形態の塗布針81は、大きな欠陥部分の修正や、穴をインクで埋めるといった修正用途に、好適に用いることができる。
【0040】
なお、溝4は、図6に示すように、平坦面83まで貫通させてもよいが、塗布針81先端の平坦面83が基板表面に接触し、平坦面83に付着したインクが外周に押し出されたとき、この押し出されたインクと溝84に蓄えられたインクとが十分につながる位置まで形成すれば、平坦面83まで貫通させなくてもよい。また、溝84の断面形状は、図6に示すように四角形でもよいが、半円形やクサビ形でもよく、どのような形状でもよい。
【0041】
また、溝84の数は、図6に示すように1本でもよいし、2本以上でも構わない。溝84の本数が増えると溝84に蓄えられるインク量が増えるため、塗布針81と基板との接触部に流れ出すインクの量が増える。また、より短時間で多くの量のインクを流出させることができ、修正時間の短縮化を図ることもできる。
【0042】
また、溝84の幅は、図6に示すように溝84の全長に亘って同一でもよいが、塗布針81の先端から基端に向かって徐々に広くしてもよく、溝84の中央部に多角形の幅広部を形成してもよく、溝84の中央部に円形の幅広部を形成してもよい。溝84の幅を広げると、溝84の容積を増やすことができ、上述の溝84の本数を増やした場合と同じ効果を得ることができる。溝84の本数を増やす方法では、塗布針81の先端径が小さい場合、溝84の本数に制限がある。その場合は塗布針81の先端よりも上部で溝84の幅を広げることにより、1本の溝84に蓄えられるインクの量を増やすことが可能である。
【0043】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4の塗布針の模式図である。図7(a)は塗布針91の先端部を示す側面図であり、同図(b)はその正面図であり、同図(c)はその下面図であり、同図(d)は同図(b)のVIID−VIID線断面図であり、同図(e)は同図(b)のVIIE−VIIE線断面図であり、同図(f)は同図(b)のVIIF−VIIF線断面図である。
【0044】
図7に示すように、塗布針91の先端部には、インクの表面張力に影響を受けない長さに亘って、塗布針91の先端から基端に向かって塗布針1の断面積が漸次拡大するテーパ部92が設けられ、塗布針91の先端には平坦面93が設けられ、さらに、テーパ部92の外周面には、先端からテーパ部92の上部に亘って所定寸法の平坦面94が形成されている。
【0045】
このように先端部にテーパ部92と平坦面93、94とを設けたことにより、塗布針91をインクタンクから引き上げると、表面張力によってテーパ部92の上部にインク溜まりが発生し、先端の平坦面93およびその近傍は薄いインク層で覆われる。インクの表面張力により、テーパ部92の平坦面94には平坦面94以外の外周面と比較して、より多くのインクが保持される。なお、平坦面94に保持されるインクの量は、インクの粘度が高いほど多くなり、インクの粘度が低い場合は少なくなる。また、塗布針91に保持されるインクの量は、インクタンクへの塗布針91の浸漬深さを制御することによっても、調整が可能である。
【0046】
そして、塗布針91の先端の平坦面93を基板表面に接触させると、インクが基板表面に付着することによって表面張力の不均衡が生じ、テーパ部92の上部や平坦面94に保持されたインクが先端の平坦面93と基板との接触部に供給され、基板に塗布される。
【0047】
図7に示すように、塗布針91の表面には撥水性を有する樹脂素材を含む撥水加工層95が形成されている。撥水加工層95が形成された部分においては、強撥水性が得られるため、インクの流動性が高くなる。よって、平坦面93を基板表面に接触させるときに、塗布針91の外周部に付着したインクが容易に基板に流れ込む、充填機能が高められている。したがって、この実施の形態の塗布針91は、大きな欠陥部分の修正や、穴をインクで埋めるといった修正用途に、好適に用いることができる。
【0048】
なお、図7ではテーパ部92の外周面に4つの平坦面94を設け、先端の平坦面93は四角形としたが、平坦面94の数は任意に定めることができる。たとえば、図8に示すように、3つの平坦面94を設けてもよい。3つの平坦面94を設けると先端の平坦面93は三角形になる。なお、先端の平坦面が成す四角形または三角形の各辺の寸法は、たとえば20μm以上50μm以下程度になるように、塗布針91を成形することができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態1の塗布針の模式図である。
【図2】実施の形態1の塗布針の変形例を示す模式図である。
【図3】インク塗布機構の構成を示す斜視図である。
【図4】欠陥修正装置の全体構成を示す図である。
【図5】実施の形態2の塗布針の模式図である。
【図6】実施の形態3の塗布針の模式図である。
【図7】実施の形態4の塗布針の模式図である。
【図8】実施の形態4の塗布針の変形例を示す模式図である。
【図9】カラーフィルタに発生する欠陥を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1,71,81,91 塗布針、2,72,82,92 テーパ部、3,73,83,93 平坦面、5,75,85,95 撥水加工層、6 基板、21 インク塗布機構、22 塗布針駆動シリンダ、23 駆動軸、24 保持部材、25 回転テーブル、26 回転軸、27 切欠部、28,29,30,31 インクタンク、32 洗浄装置、33 エアパージ装置、34 モータ、35 インデックス板、36 インデックス用センサ、37 原点復帰用センサ、40 観察光学系、41 CCDカメラ、42 レーザ、43 インク硬化用照明、44 Z軸テーブル、45 X軸テーブル、46 Y軸テーブル、47 制御用コンピュータ、48 操作パネル、84 溝、94 平坦面、300 ブラックマトリクス、301 R画素、302 G画素、303 B画素、304 白欠陥、305 黒欠陥、306 異物欠陥。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を基板上の微細領域に接触させて液状材料を前記基板に塗布する塗布針において、
表面の少なくとも一部に、撥水性を有する樹脂素材を含む撥水加工層が形成されている、塗布針。
【請求項2】
前記撥水加工層は、前記塗布針の金属素材へ前記樹脂素材を含浸またはコーティングされた層である、請求項1に記載の塗布針。
【請求項3】
前記塗布針の材質として前記樹脂素材を用いた、請求項1に記載の塗布針。
【請求項4】
前記樹脂素材は、耐食性を有している、請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布針。
【請求項5】
前記樹脂素材は、フッ素系樹脂である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布針。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−155180(P2008−155180A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349986(P2006−349986)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】