説明

塗料およびコーティングにおけるナノ粒子有機顔料の使用

【課題】最小限の量の着色料から予め指定されたかまたは選択されたコーティング組成物に適合するかのいずれかの色を有する保護および装飾用のコーティングを調整する方法の提供。
【解決手段】基材に塗布するための予め選択された保護および装飾用のコーティングを、可視スペクトル上に色整合する方法であって、該方法は、以下:(a)予め選択されたコーティングの吸光度または反射率を測定することによって、該予め選択されたコーティングの可視色を、決定する工程;および(b)複数の着色料を選択する工程であって、該複数の着色料は、樹脂製バインダーと組み合わせてコーティング組成物を生成する工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、ナノサイズ粒子を含むコーティング組成物に関し、より詳細には、低いヘーズ(高い透明度)および可視スペクトル中の狭い吸光度のバンドの幅を有する多数のナノサイズの着色料を含むコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.先行技術)
塗料組成物は、代表的には、樹脂バインダー中に分散した着色料粒子を含む。塗料組成物は、反射顔料(例えば、アルミニウムフレークもしくは雲母)または他の色彩効果の顔料組成物または基材に隠れる物質(substrate hiding material)(例えば、二酸化チタンまたは酸化亜鉛または酸化鉛)をさらに含み得る。従来の塗料において使用された着色料粒子は、代表的には、0.5ミクロンのサイズである。このサイズの粒子は、特定の波長の光を吸収し、他の波長の光を散乱させる。この部分的吸収および部分的散乱は、観察者により観察される場合、劣化した着色効果を生じる。塗料のための特定の色の選択を、そのような着色料のブレンドを必要とし、そしてそれらの着色料が互いに重複するスペクトルの特徴を有し、そして劣化した散乱効果が倍化するので、その選択は、従来の着色料を用いて達成することは困難である。結果として、慣用的な塗料組成物は、代表的に、所望の塗料の色を達成するために、数十または数百の種々の着色料より選択される混合物をブレンドする必要がある。要求に応じた塗料の色を生成するために、塗料の供給者は、着色料の任意の組み合わせをブレンドし得るように、多数の着色料を手元に維持する。
【0003】
新しい色の塗料組成物が所望される場合、いくつかの着色料が、所望の色を達成するために一緒に混合され、そして調和される。最終生成物が既成の塗料組成物と適合することが意図される場合、彩色された塗料を生成するプロセスは、非常に複雑である。例えば、自動車の再仕上げ剤(refinisher)において、その自動車の塗料と密接に適合する塗料組成物を生成することが所望される。製造の間にその自動車に元々塗られていた塗料処方物の色は、経時的に、そして天候により変化し得る。さらに、元々の塗料組成物の着色料のスペクトルの特徴は、後に利用可能な着色料のスペクトルの特徴と同じであり得ない。これらの変動性に起因して、既成の自動車の塗料組成物と密接に適合する塗料組成物を調製するプロセスは、複雑であり、そしてしばしば、所望される色が達成されるまで試行錯誤を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、最小限の量の着色料から予め指定されたかまたは選択されたコーティング組成物に適合するかのいずれかの色を有する保護および装飾用のコーティングを調整する方法についての必要性が、残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって以下が提供される:
(1) 基材に塗布するための予め選択された保護および装飾用のコーティングを、可視スペクトル上に色整合する方法であって、該方法は、以下:
(a)予め選択されたコーティングの吸光度または反射率を測定することによって、該予め選択されたコーティングの可視色を、決定する工程;および
(b)複数の着色料を選択する工程であって、該複数の着色料は、樹脂製バインダーと組み合わせてコーティング組成物を生成し、該コーティング組成物は、コーティングとして沈着された場合、該予め選択されたコーティングの該可視色に適合し、該着色料の大多数は、約10%の最大ヘーズを有し、かつ可視スペクトルにおいて吸光度ピークを示し、該可視スペクトル中の総吸光度の少なくとも約50%が該吸光度ピークの波長の上下約50nmの範囲内で生じる、工程、
を包含する、方法。
(2) 項目1に記載の方法であって、前記着色料の各々が、約10%の最大へーズを有し、かつ可視スペクトルにおいて吸光度ピークを示し、該可視スペクトル中の総吸光度の少なくとも約60%が該吸光度ピークの波長の上下約50nmの範囲内で生じる、方法。
(3) 前記ベースコーティング組成物が、基材に隠れる多数のプレートレットを含む、項目1に記載の方法。
(4) 工程(b)が、2〜10の着色料を選択することを含む、項目1に記載の方法。
(5) 工程(b)が、白色着色料もしくは黒色着色料またはそれらの両方を選択することをさらに含む、項目4に記載の方法。
(6) 第1の着色料が、約400nm〜約500nmの間に吸光度ピークを有し、第2の着色料が、約500nm〜約600nmの間に吸光度ピークを有し、そして第3の着色料が、約600nm〜約700nmの間に吸光度ピークを有する、項目4に記載の方法。
(7) 前記第1の着色料が、約400nm〜約500nmの範囲において可視スペクトルの少なくとも約70%を吸収し、前記第2の着色料が、約500nm〜約600nmの範囲において可視スペクトルの少なくとも約70%を吸収し、そして前記第3の着色料が、約600nm〜約700nmの範囲において可視スペクトルの少なくとも約60%を吸収する、項目6に記載の方法。
(8) 前記樹脂製バインダーが、硬化性コーティング組成物である、項目1に記載の方法。
(9) 前記予め選択されたコーティングが、塗料である、項目1に記載の方法。
(10) 予め選択された吸光度または反射率を有する、基材に塗布するための保護および装飾用のコーティングを、可視スペクトル上に調製する方法であって、該方法は、以下:
(a)複数の着色料を選択する工程であって、該着色料の大多数は、約10%未満のヘーズを有し、かつ該可視スペクトル中に吸光度ピークを示し、該可視スペクトルにおける総吸光度の少なくとも約50%が、該吸光度ピークの波長の上下約50nmで生じる、工程;および
(b)該着色料と、樹脂製バインダーとを混合して、コーティング組成物を生成する工程であって、該コーティング組成物は、コーティングとして沈着された場合、該予め選択された吸光度または反射率の可視色に適合する、工程、
を包含する、方法。
(11) 各々の着色料が、約10%未満のヘーズを有し、かつ前記可視スペクトル中に吸光度ピークを示し、該可視スペクトルにおける総吸光度の少なくとも約60%が、該吸光度ピークの波長の上下約50nm以内の波長で生じる、項目10に記載の方法。
(12) 前記ベースコーティング組成物が、基材に隠れる多数のプレートレットを含む、項目10に記載の方法。
(13) 工程(b)が、2〜10の着色料を選択することを含む、項目10に記載の方法。
(14) 工程(b)が、白色着色料もしくは黒色着色料またはそれらの両方を選択することをさらに含む、項目13に記載の方法。
(15) 第1の着色料が、約400nm〜約500nmの間に吸光度ピークを有し、第2の着色料が、約500nm〜約600nmの間に吸光度ピークを有し、そして第3の着色料が、約600nm〜約700nmの間に吸光度ピークを有する、項目13に記載の方法。
(16) 前記第1の着色料が、約400nm〜約500nmの範囲において可視スペクトルの少なくとも約70%を吸収し、前記第2の着色料が、約500nm〜約600nmの範囲において可視スペクトルの少なくとも約70%を吸収し、そして前記第3の着色料が、約600nm〜約700nmの範囲において可視スペクトルの少なくとも約60%を吸収する、項目15に記載の方法。
(17) 前記樹脂製バインダーが、硬化性コーティング組成物である、項目10に記載の方法。
(18) 基材に塗布するための保護および装飾用のコーティング組成物であって、以下:
樹脂製バインダー;および
複数の着色料であって、該着色料の大多数は、約10%の最大ヘーズを有し、かつ可視スペクトル中に吸光度ピークを示し、該可視スペクトル中の総吸光度の少なくとも約50%が該吸光度ピークの波長の上下約50nmの範囲内の波長で生じる、着色料、
を含む、組成物。
(19) 各々の着色料が、約10%未満のヘーズを有し、かつ可視スペクトル中に吸光度ピークを示し、該可視スペクトルにおける総吸光度の少なくとも約60%が、該吸光度ピークの波長の上下約50nm以内の波長で生じる、項目18に記載の組成物。
(20) 2〜10の前記着色料を含む、項目18に記載の組成物。
(21) 白色着色料もしくは黒色着色料またはそれらの両方をさらに含む、項目20に記載の組成物。
(22) 第1の着色料が、約400nm〜約500nmの間に吸光度ピークを有し、第2の着色料が、約500nm〜約600nmの間に吸光度ピークを有し、そして第3の着色料が、約600nm〜約700nmの間に吸光度ピークを有する、項目20に記載の組成物。
(23) 前記樹脂製バインダーが、硬化性コーティング組成物である、項目18に記載の組成物。
(24) 基材に隠れる多数の粒子をさらに含む、項目19に記載の組成物。
(25)前記基材に隠れる多数の粒子が、プレートレットの形態である、項目24に記載の組成物。
(26) 前記覆い隠す粒子が、グラファイト、アルミニウム、雲母、または散乱要素を含む、項目25に記載の組成物。
(27) 前記散乱要素が、ポリマー中にカプセル化されている、項目26に記載の組成物。
(28) 前記着色料が、顔料または色素である、項目18に記載の組成物。
(29) 前記着色料は、約150nm未満の粒子サイズを有する有機顔料を含む、項目28に記載の組成物。
(30) 項目29に記載の組成物であって、前記顔料が、粉砕媒体と共に有機顔料を粉砕することによって生成され、該粉砕媒体が、約0.3mm未満の粒子サイズを有する、組成物。
(31) 項目29に記載の組成物であって、前記顔料が、粉砕媒体と共に有機顔料を粉砕することによって生成され、該粉砕媒体が、約0.1mm未満の粒子サイズを有する、組成物。
(32) 複数の散乱要素を含むフレーク様の集合物であって、該複数の散乱要素は、樹脂製ポリマー中にカプセル化されており、該散乱要素と該ポリマーとの間の屈折率の差異が、約0.1より大きく、該集合物が、約2〜約250のアスペクト比を有する、集合物。
(33) 約5より大きいアスペクト比を有する、項目32に記載の集合物。
(34) 約10より大きいアスペクト比を有する、項目32に記載の集合物。
(35) 前記散乱要素と前記ポリマーとの間の屈折率の差異が、約0.5より大きい、項目32に記載の集合物。
(36) 前記散乱要素と前記ポリマーとの間の屈折率の差異が、約1より大きい、項目32に記載の集合物。
(37) 前記散乱要素が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、または気泡である、項目32に記載の集合物。
(38) 前記樹脂製ポリマー:前記散乱要素の容量比が、約1:10〜約10:1である、項目32に記載の集合物。
(39) 項目32に記載の集合物であって、前記散乱要素が、第一層に存在し、そして該集合物が、少なくとも1つの外部着色料層をさらに含む、集合物。
(40) 前記少なくとも1つの着色料層が、前記粒子の厚さの約2%〜約90%である、項目39に記載の集合物。
(41) 前記着色料層が、樹脂製ポリマー中に分散された着色料粒子を含む、項目39に記載の集合物。
(42) 前記着色料粒子が、約150nmまでの粒子サイズを有する顔料粒子を含む、項目41に記載の集合物。
(43) 添加剤が、一対の前記第一層の間に配置された、暗色の顔料を含む中間層をさらに含む、項目39に記載の集合物。
(44) 基材に塗布するための保護および装飾用コーティング組成物であって、該組成物は、第一のコーティング組成物と基材に隠れるような多数のフレーク様集合物とを含み、該集合物は、樹脂製ポリマー中にカプセル化された複数の散乱要素を含み、該散乱要素と該ポリマーとの間の屈折率の差異が、約0.1より大きく、かつ該集合物が、約2〜約250のアスペクト比を有する、組成物。
(45) 前記樹脂製ポリマーが、硬化性コーティング組成物を含む、項目44に記載の組成物。
(発明の要旨)
本発明は、可視光において所望の吸光度を作り出すナノサイズの着色料粒子を含有する塗料組成物を含む。これらの塗料組成物は、少なくとも3つの着色料のセットから選択される複数の着色料を含み、これらの着色料は、ベースコーティングと組み合わせて所望の色を生成する。好ましくは、このセットの着色料は、約3〜約10の着色料を含む。これらの着色料の大多数、好ましくはそれらの各々は、約10%の最大ヘーズを有し、そして可視スペクトルにおける総吸光度の約50%がこの吸光度ピークの上下約50ナノメーター(nm)内の波長で生じる可視スペクトル内の吸光度ピークを有する。少なくとも3つの着色料のセットにおいて、第一の着色料は、約400nm〜約500nmの範囲内に最大の吸光度ピークを有し、第2の着色料は、約500nm〜約600nmの範囲内に最大の吸光度ピークを有し、そして第3の着色料は、約600nm〜約700nmの範囲内に最大の吸光度ピークを有する。種々の量のこれらの着色料を選択することによって、可視スペクトルにおける広範な色の全領域が生成され得る。追加の着色料が、最小限のメタメリズムを示す塗料組成物を生成するために必要とされ得る。従って、可視スペクトルにおいて狭い吸光度ピークを有しかつ約10%の最大へーズを有する追加の着色料を含むことが好ましい。
【0006】
これらの着色料は、好ましくは、顔料または色素、より好ましくは、有機顔料であり、これらは、約150nm未満、好ましくは約70nm、より好ましくは約30nm未満の第一の粒子サイズを有する。これらの顔料は、慣用的な顔料生成方法に従い生成され得、好ましくは、約0.5mm未満、好ましくは約0.3mm未満、より好ましくは約0.1mm未満の粒子サイズを有する粉砕媒体と共にストック有機顔料を粉砕することによって生成される。コーティング組成物は、基材に隠れる物質をさらに含み得る。これらの基材に隠れる物質は、グラファイト、アルミニウム、雲母、または二酸化チタンを含み得る。
【0007】
本発明は、フレーク様集合物の形態の、基材に隠れる物質をさらに含む。このフレーク様集合物は、樹脂製ポリマー中にカプセル化された散乱要素を含む。散乱要素の屈折率およびポリマの屈折率は、約0.1より大きく異なり、そしてこの集合物は、約2〜約250、好ましくは5より大きく、より好ましくは10より大きいアスペクト比を有する。これらの散乱要素は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、または気泡であり得る。
【0008】
(好ましい実施形態の記述)
これ以降の記載の目的について、本発明が、明白に反対のことを特定する場合を除いて、種々の代替のバリエーションおよび工程順序を想定し得ることが理解されるべきである。添付される図面において図示され、および以下の明細書中に記載される特定のデバイスおよび工程は、単に本発明の実施形態の例示であることもまた、理解される。従って、本明細書中に開示される実施形態に関連する特定の寸法および他の物理的特徴は、限定するものとして考慮されない。
【0009】
本発明は、樹脂バインダーと組み合わせられる場合に所望の可視色を生成する一連の着色料から選択される、複数の着色料を含む塗料組成物を含む。大部分の好ましい各着色料は、最大ヘーズおよび可視スペクトル中の狭い吸光度ピークを有する。本明細書中で使用される場合、可視スペクトルは、約400nm〜約700nmの波長を含む。本発明のコーティング組成物は、好ましくは、これ以降に記載される、着色料、樹脂バインダー、および基材に隠れる物質を含む。「大部分」は、50%よりも多い数の着色料が最大ヘーズおよび狭い吸光度ピークを有することを意味する。しかし、「大部分」はまた、着色料の総重量に基づいて、約50重量%より多い着色料が最大ヘーズおよび狭い吸光度ピークを有する状況も含む。
【0010】
(着色料)
本発明の着色料は、好ましくは、顔料または染料であり、より好ましくは、約150nm未満、好ましくは70nm未満、より好ましくは30nm未満の1次(primary)粒子の径を有する顔料である。好ましくは、この1次粒子は、塊にならない。この分散された粒子の径は、個々の粒子(1次粒子)または1次粒子の塊のサイズである。このコーティング組成物は、少なくとも3種類の着色料のセットからの少なくとも2種類の着色料の使用を必要とする。この着色料のセットは、約400nm〜約500nmの範囲に最大吸光度ピークを有する第1着色料、約500nm〜約600nmの範囲に最大吸光度ピークを有する第2着色料、および約600nm〜約700nmの範囲に最大吸光度ピークを有する第3着色料を含む。塗料組成物の所望の色は、白色着色料および黒色着色料の任意の使用に加えて、着色料セットからの種々の着色料の組み合わせを使用して生成され得る。このセットは、好ましくは、約3〜約10種類の着色料を含む。従って、塗料組成物において使用するために選択可能な潜在的な着色料の総数は、約12である。
【0011】
大部分かつ好ましいそれぞれの着色料は、約10%の最大ヘーズ、好ましくは約1%の最大ヘーズを有する。ヘーズは、材料の透明度の測定値であって、ASTM D1003によって規定される。本明細書中に記載されるヘーズ値は、ブチルアセテート中に分散された着色料において、500ミクロンのセル経路長を有するByk−Gardner TCS(The Color Sphere)機器によって決定される。液体サンプル中の%ヘーズは濃度依存性であるため、本発明者らは、本明細書中で、最大吸光の波長における約15%〜約20%の透過率で、%ヘーズを特定する。一般的に図1に示されるように、受容可能なヘーズは、粒子と周りを取り囲む媒体との間の屈折率の差異が少ない場合、比較的大きい粒子について達成され得る。逆に、より小さい粒子については、その粒子と周りを取り囲む媒体との間のより大きい屈折率差異が、受容可能なヘーズを提供し得る。
【0012】
さらに、本発明の着色料は、可視スペクトル中に、比較的狭いバンドのピーク吸光度を示し、貸しスペクトルにおいて総吸光度の少なくとも約50%または少なくとも約60%が波長のピーク吸光度の上下約50nmの内の波長において生じる。好ましい実施形態において、第1着色料は、約400〜約500nmの範囲の可視スペクトルにおいて総ての吸光度の少なくとも約70%(より好ましくは少なくとも約80%)を有し、第2着色料は、約500〜約600nmの範囲の可視スペクトルにおいて総ての吸光度の少なくとも約70%(より好ましくは少なくとも約75%)を有し、そして第3着色料は、約600〜約700nmの範囲の可視スペクトルにおいて総ての吸光度の少なくとも約60%(より好ましくは少なくとも約70%)を有する。本発明の着色料の可視スペクトルにおける低ヘーズおよび狭い最大吸光度ピークの組み合わせられた特徴は、規定された着色効果を生成する。従って、比較的少数の異なる着色料(2〜12種類)が、塗料組成物中の所望の色を生成するために、組み合わせて使用され得る。所望の色を有する塗料組成物を生成するためには少なくとも2種類の着色料が必要とされる。ヒトの視覚の性質に起因して、2色に着色された物品は、これらの反射スペクトルに違いがあったとしても、所定の光源による照射の下では同一の色に見え得る。それらの反射スペクトルの差異のため、これらの同じ2つの物品は、異なる光源下においては互いに色が異なって見えることがあり得る。この照射依存性色整合現象(illuminant−dependent color
matching phenomenon)は、メタメリズム(metamerism)と呼ばれ、自動車の再仕上げ塗料組成物には特に好ましくないかもしれない。この組成物は、屋内では元の自動車の塗料と整合して見えるが、屋外では整合しない。本発明の着色料のうちの2種類より多くを選択することによって、メタメリズムは、着色料の可視スペクトルが、これらの着色料およびこれらのスペクトル選択性を用いる散乱デグラデーションの非存在に起因して、所望の色のスペクトルと密接に整合させるように組み合わせられ得るので、避けられ得る。
【0013】
金属顔料を含有する特定のコーティング組成物において、最大ヘーズおよび狭い吸光度ピークの特性を有さない着色料を含むことが所望され得る。例えば、従来の金属塗料は、反射された光から直接的に(面と向かって)見られた場合、青緑色に見え、散乱光からの角度(フロップ(flop))で見られた場合は、赤く見える。本発明の着色料は、最小の散乱を有する。従って、本発明の着色料のみを含有するコーティング組成物は、フロップで黒く見え得る。従来の塗料を模倣する色効果を作成するために、さらなる着色料が、コーティング組成物に加えられ得、その結果、フロップにおいて、そのコーティングは、黒以外の所望の色に見える。従って、低いヘーズおよび狭いピーク吸光度バンドを有する本発明の着色料とともにコーティング組成物中への従来の着色料を含むことは、任意である。
【0014】
着色料を生成するために本発明中で使用され得る適切な顔料組成物としては、アゾ(モノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトール AS、塩タイプ(レーキ)、ベンズイミダゾロン、濃縮物、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン)および多環式(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン(インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン)顔料、およびこれらの混合物が挙げられる。約10%ヘーズ以下の所望のヘーズ(最小散乱)を達成するために、着色料は、約150nm以下の粒径、好ましくは約70nm未満およびより好ましくは約30nm未満の粒径を有する。好ましくは、この粒子は、塊にならない。
【0015】
着色料の粒子は、約0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満およびより好ましくは0.1mm以下の粒径を有する粉砕媒体を用いて、バルク着色料(例えば、有機顔料)の粉砕によって調製され得る。この顔料粒子は、Wilmington,DelawareのAvecia,Inc.から入手されるSolsperse(登録商標)32,500のような分散剤を使用して、酢酸ブチルのような有機溶媒中で、または任意のポリマー粉砕樹脂と共にAvecia,Inc.から入手されるSolsperse(登録商標)27,000のような分散剤を使用して水中で、高エネルギー粉砕でナノ粒子径まで粉砕される。本発明の着色料を生成する他の適切な方法としては、結晶化、沈殿、ガス相濃縮、および化学摩擦(すなわち、部分溶解)が挙げられる。
【0016】
(樹脂バインダー)
本発明の装飾的かつ保護的なコーティング組成物は、樹脂バインダーを含む。従来の樹脂バインダーは、自動車OEM組成物、自動車再仕上げ組成物、工業的コーティング剤、建築用コーティング剤、電気コーティング剤、粉末コーティング剤、コイルコーティング剤、および航空宇宙コーティング剤において、本明細書中で記載される着色料と共に使用され得る。
【0017】
適切な樹脂バインダーは、硬化コーティング剤の硬化速度、見た目および他の物理的特性を高め得る、ヒドロキシもしくはカルボン酸含有アクリルコポリマーおよびヒドロキシもしくはカルボキシ酸含有ポリエステルポリマーおよびオリゴマーならびにイソシアネートまたはヒドロキシ含有ポリウレタンポリマー、またはアミンもしくはイソシアネート含有ポリウレタンのような成分を含有する硬化性コーティング組成物を含む。
【0018】
使用される場合、アクリルポリマーは、代表的には、アクリル酸のアルキルエステル(メチルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートを含む)ならびにスチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエンのようなビニル芳香族化合物のような1つ以上の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーと、アクリル酸またはメタクリル酸あるいはアクリル酸もしくはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシプロピルアクリレート)とのコポリマーである。反応物の比および反応条件は、ペンダントヒドロキシルまたはカルボン酸を有するアクリルポリマーを機能的に生じるように選択される。
【0019】
アクリルポリマーに加えて、本発明の硬化性コーティング組成物は、ポリエステルポリマーまたはオリゴマーを含み得る。このようなポリマーは、多価アルコールおよびポリカルボン酸の縮合によって公知の手段で調製され得る。適切な多価アルコールとしては、エ
チレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが挙げられる。
【0020】
適切なポリカルボン酸としては、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボキシル酸およびヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。上記のポリカルボン酸に加えて、無水物のような酸の機能等価物(これらが存在する場合)またはメチルエステルのような酸の低級アルキルエステルが使用され得る。また、ステアリン酸のような少量のモノカルボン酸が使用され得る。
【0021】
ヒドロキシル含有ポリエステルオリゴマーが、ヘキサヒドロフタル酸無水物のようなジカルボン酸の無水物とネオペンチルグリコールのようなジオールとを1:2のモル比で反応させることによって調製され得る。
【0022】
空気乾燥を増強させることが所望される場合、適切な乾性油脂肪酸が使用され得、この脂肪酸としては、アマニ油、ダイズ油、トール油、脱水ヒマシ油またはキリ油由来の脂肪酸が挙げられる。
【0023】
ポリエステルが、さらなる架橋反応に利用可能な遊離末端ヒドロキシ基および/またはカルボキシル基を含むように作作製れる。
【0024】
末端イソシアネート基または末端ヒドロキシ基を含むポリウレタンポリマーもまた、使用され得る。使用され得るポリウレタンポリオールまたはNCO−末端化ポリウレタンは、ポリマーポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとの反応によって調製されたものである。使用され得るポリ尿素含有末端イソシアネートまたは一級アミン基もしくは二級アミン基は、ポリマーポリアミンを含むポリアミンとポリイソシアネートとの反応によって調製されるものである。このヒドロキシル/イソシアネートまたはアミン/イソシアネートの当量比を調節し、そして反応条件を選択することで、所望の末端基が得られる。適切なポリイソシアネートの例は、米国特許第4,046,729号、第5欄26行目〜第6欄28行目(本明細書中に参考として援用される)に記載されている。適切なポリオールの例は、米国特許第4,046,729号、第7欄52行目〜第10欄35行目(本明細書中に参考として援用される)に記載されている。適切なポリアミンの例は、米国特許第4,046,729号、第6欄61行目〜第7欄32行目および米国特許第3,799,854号、第3欄13行目から50行目(この両方は、本明細書中に参考として援用される)に記載されているものである。
【0025】
硬化性コーティング組成物のために適切な硬化剤としては、アミノプラスト樹脂およびフェノプラスト樹脂ならびにこれらの混合物(OHおよびCOOHならびにアミド官能基およびカルバメート官能基含有物質のための硬化剤として)を含む。本発明の硬化性組成物中の硬化剤として適切なアミノプラスト樹脂およびフェノプラスト樹脂の例は、米国特許第3,919,351号、第5欄22行目〜第6欄25行目(本明細書中に参考として援用される)に記載されるものである。
【0026】
OHならびに一級および/または二級アミノ基含有物質の硬化剤としてのポリイソシアネートおよび保護されたポリイソシアネートは、当該分野で周知である。本発明の硬化性組成物中の硬化剤としての使用に適切なポリイソシアネートおよび保護されたイソシアネートの例は、米国特許第4,546,045号、第5欄16行目〜38行目;および米国特許第5,468,802号第3欄48行目〜60行目(この両方は、本明細書中に参考として援用される)に記載されているものである。
【0027】
OHならびに一級および/または二級アミノ基含有物質のための硬化剤としての無水物は、当該分野で周知である。本発明の硬化性組成物中の硬化剤として使用するのに適切な無水物の例は、米国特許第4,798,746号、第10欄16行目〜50行目;および米国特許第4,732,790号、第3欄41行目〜57行目(この両方は、本明細書中に参考として援用される)に記載されているものである。
【0028】
COOH官能基含有物質の硬化剤としてのポリエポキシドは、当該分野で周知である。本発明の硬化性組成物中の硬化剤としての使用に適切なポリエポキシドの例は、米国特許第4,681,811号、第5欄33行目〜58行目(本明細書中に参考として援用される)に記載されているものである。
【0029】
エポキシ官能基含有物質の硬化剤としてのポリ酸は、当該分野で周知である。本発明の硬化性組成物中の硬化剤としての使用に適切なポリ酸の例は、米国特許第4,681,811号、第6欄45行目〜第9欄54行目(本明細書中に参考として援用される)に記載されているものである。
【0030】
ポリオール、すなわち一分子あたり平均2つ以上のヒドロキシル基を有する物質は、NCO官能基含有物質および無水物およびエステルの硬化剤として使用され得、当該分野で周知である。上述のポリオールの例は、米国特許第4,046,729号、第7欄52行目〜第8欄9行目;第8欄29行目〜第9欄66行目;および米国特許第3,919,315号、第2欄64行目〜第3欄33行目(これらの両方は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるものである。
【0031】
ポリアミンは、NCO官能基含有物質ならびにカルボネートおよび妨害されていないエステルの硬化剤としてもまた使用され得、当該分野で周知である。本発明の硬化性組成物中の硬化剤としての使用に適切なポリアミンの例は、米国特許第4,046,729号、第6欄61行目〜第7欄26行目(本明細書中に参考として援用される)に記載されているものである。
【0032】
装飾的かつ保護的なコーティング組成物は、単一コーティング剤として、クリアトップコーティング組成物として、2層系、クリアトップコーティング組成物、着色料層およびベースコーティング組成物を含む多層系の層におけるベースコーティングとして、または1次層として使用され得る。
【0033】
(基材に隠れる物質)
本発明の装飾的かつ保護的なコーティング組成物は、基材に隠れる物質を含む。この隠れる物質は、好ましくは、小板形態であり、グラファイト、アルミナ、雲母、または散乱材を含む。好ましい隠れる粒子は、ポリマーでカプセル化された散乱材である。
【0034】
このポリマーカプセル化散乱顔料は、図2に示されるようなフレーク様集合の形態であり得る。このフレーク様集合2は、樹脂ポリマー6中にカプセル化された散乱材4を含む。この散乱材4は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、もしくは気泡またはこれらの組み合わせであり得る。散乱材4とポリマー6との間の屈折率の差は、約0.1よりも大きく、好ましくは約1よりも大きい。このフレーク様集合2は、約2〜250、好ましくは約5より大きく、より好ましくは、約10よりも大きいアスペクト比を有する。散乱材4とポリマー6との容量比は、約1:10〜約10:1である。フレーク様集合2が塗料組成物中に含まれ、そしてその塗料が基材に塗布される場合、このフレーク様集合2は、塗料組成物中で光の多方向散乱を作り出す最も長い長さにそって平行に、基材と、および互いに、並ぶ傾向がある。
【0035】
図3に示される代替の実施形態において、フレーク様集合12は、樹脂ポリマー6中に分散される散乱材4を含む。着色料層18は、ポリマー6の各々の表面に提供される。この着色料層18の総厚は、好ましくは、フレーク様集合12の総厚の、約2%〜約90%である。この着色料層18は、樹脂ポリマー16と同じかまたは異なるポリマーであり得る樹脂ポリマーに分散される着色料粒子(示さず)を含む。この着色料粒子は、好ましくは、約150nm未満のサイズを有する顔料粒子を含み、および好ましくは上記の着色料である。散乱材4に隣接する着色料層18を含むことによって、散乱材4に到達する光は、本発明の着色料を含む領域を必然的に通過する。このことは、フレーク様集合12から散乱された光が、着色料粒子の光吸光度に曝されることを保証する。
【0036】
図4に示される別の実施形態において、フレーク様集合22は、樹脂ポリマー6中に分散された散乱材4を含む、一対の層24を含む。着色料粒子の層26は、層24をカバーする。層24の間は、暗い色の顔料(示さず)を含む層30である。この黒く色づけられた層30は、散乱材4によって前方に散乱され得る光を吸収する。あるいは、図5に示されるフレーク様集合32は、外層26を有さずに層24および30を含み得る。
【0037】
ポリマー6中に分散された散乱材4を含むフレーク様集合42の別の実施形態が図6に示される。。また、充填剤44(例えば、シリカ)は、ポリマー6に分散され、散乱材4を互いに間隔を開けたまま維持する役割をする。好ましくは、この散乱材4は、約200〜300nmのサイズであり、充填粒子44は、約150nmのサイズである。ポリマー6は、典型的には、約1.35〜約1.8の屈折率を有し得、そして二酸化チタンの散乱材は、約2.1〜約2.7の屈折率を有する。この二酸化チタン散乱材は、シリカまたはアルミナの不動態化層でコーティングされ得る。この充填粒子44が、約1.46の屈折率を有するシリカである場合、充填粒子44は、シリカおよび散乱材4を有する樹脂バインダーの周りにある複合材の間の屈折率の差を増加させ得る。
【0038】
(色整合(color matching)方法)
本発明は、予め選択されたコーティングの色整合の方法をさらに含む。本発明の方法に従って、予め選択されたコーティングの可視色は、可視光に対応する波長の範囲を横切る、予め選択されたコーティングの吸光度および反射率を測定することによって決定される。好ましくは、予め選択されたコーティングの吸光度または反射率は、分光光度計を使用して決定されそして可視光に対応する波長の範囲を横切る吸光度または反射率の曲線が生成された。この曲線は、可視吸光度または反射スペクトルと呼ばれる。適切な濃度で樹脂バインダーと組み合わせて予め選択されたコーティングに密接に整合する可視吸光度または反射スペクトルを有する着色コーティング組成物を生成する本発明の2種類以上の着色料が選択される。黒色着色料および白色着色料に加えて、本発明の10種類の異なる着色料は、予め選択されたコーティングの色を生成するために使用され得ることが考えられる。
【0039】
本発明はまた、コーティング組成物の新しい色を作成する方法を含む。既知のスペクトル特性を有する本発明の着色料は、所望の色を生成するために、樹脂バインダーと合わせられ得る。本発明は、以下の実施を参照することによってさらに記載される。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
Chromothal(登録商標)Yellow BGN(Ciba Specialty Chemicals,Inc.,High Point,NJ)を、粉砕し、そしてSolsperse(登録商標)分散剤(Avecia,Inc.,Wilmington,DE)およびZonyl(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)(E.I.duPont de Nemours and Company,Wilmington,DE)を使用してAdvantis(登録商標)ミル(Draiswerke,Inc.,Mahwah,NJ)で分散させた。表1は、粉砕成分および条件を記載する。分析のために、最終的な着色料を酢酸n−ブチルで希釈した。表2は、最終的な着色料の特性を列挙する。平均一次粒径を、100kVでPhilips CM12透過電子顕微鏡(TEM)を用いて得た。%ヘーズを、500ミクロンのセル路長を有するByk−Gardner TCS(The Color Sphere)装置を用いて測定した。顔料組成物の可視吸光スペクトルを、1cmの路長を有するキュベットにおいてPerkin−Elmer,Lamda 2,UV/visスペクトロメーターを用いて得、そして最大の吸光度の波長で1に標準化したスペクトルを用いて図7で再現した。陰影をつけた領域は、最大の吸光度の波長を中心にして100nmの波長内、および400〜700nmの可視領域内でのこれらの波長に渡って積分した吸光度を表す。この着色料について、可視スペクトルにおける総吸光度の85%が、400〜500nmの波長の間で生じる。
【0041】
【表1】

【0042】
以下のモノマーから、原子移動ラジカル重合技術により、米国特許第6,365,666B号に一般に記載されるとおりに調製された4級アンモニウム基含有ポリマー(重量基準):4.7%のグリシジルメタクリレート、20.3%のベンジルメタクリレート、14.1%のブチルメタクリレート、52.3%の2−エチルヘキシルメタクリレートおよび7.1%のヒドロキシプロピルメタクリレート。このポリマーを、ジメタノール(dimrthethanol)アミンの乳酸塩で4級化した。このポリマーは、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に9505のM(n)および15,445のM(w)を有する。
**以下のモノマーからの溶液重合技術によって調製されるプロピレンイミンを用いてイミノ化されたアクリルポリマー(重量基準):29.32%のスチレン、19.55%の2−エチルヘキシルアクリレート、19.04%のブチルメタクリレート、9.77%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、1.86%のメタクリル酸、および0.59%のアクリル酸。
【0043】
【表2】

【0044】
最大の吸光度の波長で約17.5%の透過率での%ヘーズ。
**最大の吸光度の波長を中心とした100nmの波長範囲内にある可視範囲内の積分された吸光度の%。
***着色料を調整してこれらの最終%固体値および%顔料値を達成した。
【0045】
(実施例2)
Hostaperm(登録商標)Pink EB Trans(Clariant Corporation,Charlotte,NC)のマゼンタ顔料を粉砕し、分散させ、そして実施例1のように分析した。表1および2を参照のこと。図8において、可視吸光スペクトルを、最大吸光度の波長で1に標準化する。陰影をつけた領域は、最大の吸光度の波長を中心とした100nmの波長範囲内、および400〜700nmの可視範囲内での波長に渡って積分された吸光度を表す。この着色料において、可視スペクトルにおける総吸光度の75%は、500〜600nmの波長の間で生じる。
【0046】
(実施例3)
Heliogen(登録商標)Blue L 7081D,(BASF Corporation,Mount Oliver,NJ)のシアン顔料を粉砕し、そして分散させ、次いで実施例1のように分析した。図9において、スペクトルを、最大の吸光度の波長で1に標準化する。陰影をつけた領域は、最大の吸光度の波長を中心として100nmの波長範囲内、および400〜700nmの可視範囲内の波長に渡って積分された吸光度を示す。この着色料において、可視スペクトルにおける総吸光度の70%が、600〜700nmの波長の間で生じる。
【0047】
図10は、陰影をつけた領域のない図7〜9のスペクトルを含む。実施例1〜3の着色料の比較的狭い吸光度のピーク、およびそれらの最小の重複部分を、図10に実証する(実施例1、点線;実施例2、破線;実施例3、実線)。
【0048】
(実施例4)
Monolite Green 860/Monastrol Green 6Y(Avecia)の緑色顔料を粉砕し、そして分散させ、そして実施例1のように分析した。表1および2を参照のこと。
【0049】
(実施例5)
Monolite Blue 3R(Avecia)の紫色顔料を粉砕し、そして分散させ、そして実施例1のように分析した。表1および2を参照のこと。
【0050】
(実施例6)
12−4215 Hostaperm(登録商標)Scarlet GO Trans
(Clariant)の赤橙色顔料を、粉砕し、そして分散させ、そして実施例1のように分析した。表1および2を参照のこと。
【0051】
(実施例7)
Irgazin(登録商標)Yellow 3RLTN(Ciba)の黄橙色顔料を粉砕し、そして分散させ、そして実施例1のように分析した。表1および2を参照のこと。
【0052】
(実施例8)
金属パネル(C1)を、以下のPPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)自動車用塗り替え混合基剤(全ての%は、重量%である)を含む青色塗料でコーティングした:DMD1676(青)65.14%、DMD1684(白)15.49%、DMD614(青)6.34%、DMD1683(黒)3.17%、DBX1689(透明)9.86%。このパネルの色は、非条件等色的にマッチしており、そして対応するパネル(N1)を、DMD1684(白)14.75%、DMD1683(黒)3.00%、実施例3のシアン着色料35.25%、実施例5の紫色着色料6.00%、およびDBX1689(透明)41.00%を含む塗料でコーティングした。このパネル(D65照明下、10°観察者)のCIE色、および色の差異(3つの照明下)は、表3aおよび3bに示されている。
【0053】
【表3】

【0054】
(実施例9)
金属パネル(C2)を、以下のPPG Industries,Inc.自動車用塗り替え混合基剤(全ての%は、重量%である)を含むサーモンピンクの塗料でコーティングした:DMD616(橙色)37.64%、DMD1684(白)16.00%、DMD1679(赤)5.96%、DMD666(黄色)1.13%、DMD1683(黒)1.00%、DBX1689(透明)38.27%。このパネルの色にマッチした良好な外観を、DMD1684(白)33.75%、DMD1683(黒)1.25%、実施例6の赤橙色着色料27.00%、実施例1の黄色着色料5.50%、およびDBX1689(透明)32.50%を含む塗料でコーティングされた対応するパネル(N2)を用いて作製した。パネルのCIE色(D65の照明下、10°観察者)、および色の差異(3つの照明下)は、以下の表4aおよび4bに示される。
【0055】
【表4】

【0056】
(実施例10)
金属パネル(C3)を、以下のPPG Industries,Inc.自動車用塗り替え混合基剤(全ての%は、重量%である)から構成される明るい緑色の塗料でコーティングした:DMD1684(白)41.07%、DMD1678(緑)35.71%、DMD648(黒)8.93%、DMD644(黄色)2.50%、DBX1689(透明)11.79%。このパネルの色にマッチした良好な外観を、DMD1684(白)54.02%、実施例4の緑色着色料19.35%、実施例7の黄橙色着色料3.77%、およびDBX1689(透明)22.86%を含む塗料でコーティングされた対応するパネル(N3)を用いて作製した。パネルのCIE色(D65の照明下、10°観察者)、および色の差異(3つの照明下)は、以下の表5aおよび5bに示される。
【0057】
【表5】

【0058】
(実施例11)
金属パネル(C4)を、以下のPPG Industries,Inc.自動車用塗り替え混合基剤(全ての%は、重量%である)から構成される赤(明るい赤紫)塗料でコーティングした:DMD616(橙色)32.68%、DMD1605(赤紫)26.40%、DMD1684(白)6.60%、DMD648(黒)0.99%、DBX1689(透明)33.33%。このパネルの色にマッチした良好な外観を、DMD1684(白)11.25%、実施例6の赤橙色着色料28.00%、実施例2の赤紫色着色料15.75%、およびDBX1689(透明)45.00%を含む塗料でコーティングされた対応するパネル(N4)を用いて作製した。パネルのCIE色(D65の照明下、10°観察者)、および色の差異(3つの照明下)は、以下の表6aおよび6bに示される。
【0059】
【表6】

【0060】
(実施例12)
金属パネル(C5)を、以下のPPG Industries,Inc.自動車用塗り替え混合基剤(全ての%は、重量%である)から構成されるメタリック緑色塗料でコーティングした:DMD1678(緑)41.53%、DMD1686(微細アルミニウム)27.68%、DMD1687(中程度の粗さの(course)アルミニウム)12.11%、DMD644(黄色)6.57%、DMD1683(黒)3.11%、DMD1684(白)2.08%、DBX1689(透明)6.92%。このパネルの色にマッチした良好な外観を、DMD633(中程度のアルミニウム)27.50%、DMD1684(白)2.50%、DMD1683(黒)2.50%、実施例4の緑色着色料15.00%、実施例7の黄橙色着色料5.00%、およびDBX1689(透明)47.50%を含む塗料でコーティングされた対応するパネル(N5)を用いて作製した。パネルのCIE色(D65の照明下、10°観察者)、および色の差異(3つの照明下)は、以下の表7aおよび7bに示される。
【0061】
【表7】

【0062】
(実施例13)
金属パネル(C6)を、以下のPPG Industries,Inc.自動車用塗り替え混合基剤(全ての%は、重量%である)から構成される緑色塗料でコーティングした:DMD1678(緑)74.21%、DMD1676(青)19.35%、DMD1684(白)6.34%、DMD1683(黒)0.10%。このパネルの色にマッチした良好な外観を、DMD1684(白)5.75%、DMD1683(黒)1.00%、実施例4の緑色着色料34.00%、実施例1の黄色着色料3.25%、実施例3のシアン着色料9.00%、およびDBX1689(透明)47.00%を含む塗料でコーティングされた対応するパネル(N6)を用いて作製した。パネルのCIE色(D65の照明下、10°観察者)、および色の差異(3つの照明下)は、以下の表8aおよび8bに示される。
【0063】
【表8】

【0064】
(実施例14)
アクリルモノマー中の二酸化チタンの分散を含む組成物を、以下の手順により調製した。780gのTi−Pure R−706二酸化チタン顔料(Du Pont)およびSigma−Aldrich Company,Milwaukee,WIからの6gのセルロースアセテートブチレートを、直径2.5インチのカウエル(cowles)ブレードを取り付けた回転式スターラーを用いて一分間当たり1100回転で、160.5gの1,4−ブタンジオールジアクリレート、80.0gのペンタエリスリトールテトラアクリレート、80.5gのエトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(全てSartomer Company Exton,PAから入手)、および18gのアクリル酸(Sigma−Aldrich Company,Milwaukee,WIから入手)中で分散させた。この混合物に、97.5gのペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer)、12gのセルロースアセテートブチレート(Sigma−Aldrichから入手)、および108gのn−ブチルアセテートをさらに添加した。紫外線硬化性組成物を、以下の手順により調製した。166gのn−ブチルアセテートおよび5.1gのジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン50/50ブレンド(Sigma−Aldrich)を、アクリル酸モノマー中の二酸化チタンの500gの分散剤に添加した。この混合物を、5ミクロンのナイロンフィルターバッグを用いてろ過した。500gの紫外線硬化性組成物を、スロット−ダイコーター(slot−die coater)(Frontier Technologies,Towanda,PAから入手)を介してポリエチレンテレフタラート基材に塗布し、そして150°Fで12秒間乾燥させ、次いで100Wの水銀灯を用いて紫外線照射で硬化させた。次いで、硬化したフィルムをポリエチレンテレフタラート基材から取り外した。
【0065】
硬化したフィルムを、乳鉢および乳棒を用いて10分間乾燥粉砕によって細かい粉末へと加工した。38.41gの粉砕された粉末(総固形物に対して50%の顔料)を、84.57gのDCU2042および18.54gのDT870(クリアコートパッケージ)および溶媒薄め液パッケージ(PPG Industries,Inc.から入手可能)に2成分バインダー系の1成分として添加した。粉砕した粉末を、Red Devilシェーカーで20分間振とうすることによってバインダー内に分散させた。分散段階を完結させた後、24.01gの第2成分、DCX61(PPG Industries,Inc.から入手可能な架橋パッケージ)を添加し、そしてその組成物を5分間再度振とうした。
【0066】
(実施例15)
実施例14を、0.47gのステアリルアセテートを、アクリル酸と一緒に添加することを除いて繰り返した。
【0067】
(実施例16:比較)
実施例14および15に対する比較コーティング組成物を、38.89gの金紅石、二酸化チタンの前加工された分散物、D700(PPG Industries,Inc.から入手可能な白色混合基剤)を、実施例14で使用される同じ2成分バインダー系の1つの成分に添加し、次いでRed Devilシェーカーで20分間振とうすることによって調製した。振とう後、第2の成分を添加し、そしてその組成物を5分間再度振とうした。
【0068】
(実施例17)
実施例2の着色料の19.20gの5%顔料固形分散物を、実施例14のコーティング組成物に添加した。着色したコーティング組成物を、Red Devilシェーカーで5分間振とうし、5分間平衡化し、そして48ゲージのワイヤドローダウン(drawdown)ロッド(Paul N.Gardner Co.Inc.,Pompano Beach,Fla.から入手可能なワイヤを巻いたロッド(wire−wound rods))を用いてForm 1B Lenetaペーパー(The Leneta Company,Ho−Ho−Kus,NJから入手可能なPenopac)上にドローダウンした(drawn down)。このドローダウンを、周囲条件下で24時間硬化させた。硬化させた後、ドローダウンの色および不透明度を、Minolta CM−3600dスペクトロメーターを用いて測定した。この色および不透明度のデータを、表9に示す。
【0069】
(実施例18)
実施例17を、実施例15のコーティング組成物を用いて繰り返した。
【0070】
(実施例19:比較)
実施例17を、実施例16の比較コーティング組成物を用いて繰り返した。
【0071】
表9は、ほぼ同じ不透明度において、実施例17、特に、実施例18は、比較例19より赤い(より大きいa)という利点を示すことを示す。従って、白色顔料からの実施例19よりも少ない色の希釈での同程度の隠蔽が、実施例17において見出され、特に、実施例18で見出された。
【0072】
【表9】

【0073】
前述の説明に開示される概念から逸脱することなく本発明に対する改変がなされ得ることは、当業者によって容易に理解される。このような改変は、特許請求の範囲が、その文言により明白に記述しない限り、以下の特許請求の範囲内に含まれるとみなされるべきである。従って、本明細書中で詳細に説明される特定の実施形態は、例示の目的のみで、本発明の範囲を限定するものではなく、これは、添付の特許請求の範囲、ならびにその任意の等価物および全ての等価物の完全な外延を与えられるべきである。
【0074】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、樹脂バインダー中に懸濁された着色料粒子についての、粒子径 対 屈折率の違いのグラフである。
【図2】図2は、本発明に従って作成された基材に隠れる物質の断面図である。
【図3】図3は、基材に隠れる物質の別の実施形態の断面図である。
【図4】図4は、基材に隠れる物質の別の実施形態の断面図である。
【図5】図5は、基材に隠れる物質の別の実施形態の断面図である。
【図6】図6は、基材に隠れる物質の別の実施形態の断面図である。
【図7】図7は、本発明の着色料についての正規化吸光度である。
【図8】図8は、本発明の別の着色料についての正規化吸光度である。
【図9】図9は、本発明の別の着色料についての正規化吸光度である。
【図10】図10は、図7〜9のスペクトルの合成スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載の組成物。
【請求項2】
複数の散乱要素を含むフレーク様の集合物であって、該複数の散乱要素は、樹脂製ポリマー中にカプセル化されており、該散乱要素と該ポリマーとの間の屈折率の差異が、約0.1より大きく、該集合物が、約2〜約250のアスペクト比を有する、集合物。
【請求項3】
約5より大きいアスペクト比を有する、請求項2に記載の集合物。
【請求項4】
約10より大きいアスペクト比を有する、請求項2に記載の集合物。
【請求項5】
前記散乱要素と前記ポリマーとの間の屈折率の差異が、約0.5より大きい、請求項2に記載の集合物。
【請求項6】
前記散乱要素と前記ポリマーとの間の屈折率の差異が、約1より大きい、請求項2に記載の集合物。
【請求項7】
前記散乱要素が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、または気泡である、請求項2に記載の集合物。
【請求項8】
前記樹脂製ポリマー:前記散乱要素の容量比が、約1:10〜約10:1である、請求項2に記載の集合物。
【請求項9】
請求項2に記載の集合物であって、前記散乱要素が、第一層に存在し、そして該集合物が、少なくとも1つの外部着色料層をさらに含む、集合物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの着色料層が、前記粒子の厚さの約2%〜約90%である、請求項9に記載の集合物。
【請求項11】
前記着色料層が、樹脂製ポリマー中に分散された着色料粒子を含む、請求項9に記載の集合物。
【請求項12】
前記着色料粒子が、約150nmまでの粒子サイズを有する顔料粒子を含む、請求項11に記載の集合物。
【請求項13】
添加剤が、一対の前記第一層の間に配置された、暗色の顔料を含む中間層をさらに含む、請求項9に記載の集合物。
【請求項14】
基材に塗布するための保護および装飾用コーティング組成物であって、該組成物は、第一のコーティング組成物と基材に隠れるような多数のフレーク様集合物とを含み、該集合物は、樹脂製ポリマー中にカプセル化された複数の散乱要素を含み、該散乱要素と該ポリマーとの間の屈折率の差異が、約0.1より大きく、かつ該集合物が、約2〜約250のアスペクト比を有する、組成物。
【請求項15】
前記樹脂製ポリマーが、硬化性コーティング組成物を含む、請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−219674(P2006−219674A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49386(P2006−49386)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【分割の表示】特願2003−506367(P2003−506367)の分割
【原出願日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】