説明

塗料の濃度制御システムおよび方法

【課題】タンクのレベル制御と温度制御を行いながら塗料の濃度制御を行なうことができる塗料の濃度制御システムおよび方法を提供することを目的とする。
【解決手段】原液とうすめ液とを混合・貯蔵し系外に排出または後段に供給する混合タンクと、該混合タンクからの溶液と前記うすめ液とを混合・貯蔵しラインに供給または前記混合タンクにフィードバックする供給タンクとで、それぞれ糖度、レベル、および温度を計測し、これら計測値に基づき前記供給・排出・フィードバックを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を希釈する際に、その糖度を測定することにより塗料の濃度を制御する塗料の濃度制御システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装時の付着量調整には、塗料の濃度を一定にして塗装条件に変更する方法があるが、これでは付着量制御の幅が小さくなってしまう問題があり、塗装時に塗料の濃度を変更する場合がある。従って、連続ラインで塗装を行うときには、塗料の濃度を把握していることが必要となる。
【0003】
これに対し、従来では、液濃度を変更したときには、液をサンプリングしてオフラインで濃度測定が行われることが多かった。濃度測定方法としては、液比重や粘度等の比較的簡便な方法から、サンプリングした液の化学分析を行う方法などが行われている。
【0004】
しかしながら、液比重の場合には、溶解せずに分散している状態等の物質が多い場合は、比重変化が小さいため、濃度が変わったときの差異を検出するのが難しい。また、粘度の場合には、温度による誤差や、薬剤ロット間でのばらつきが大きいなどの問題がある。
【0005】
さらに、化学分析では、薬剤が変わるたびに、測定する元素を変更する必要が生じ、オフライン測定では、時間がかかり、また測定が不連続になるため、精度が不足する、その後のフィードバックが遅れるといった問題があった。これに対し、化学測定でのオンライン測定のためには、塗料にあわせた複数の元素の測定が可能な設備とするために、設備コストがかかるという問題があった。
【0006】
糖度を自動制御する方法として、例えば特許文献1に開示された技術がある。この技術では、混合手段から送出された製品の糖度を連続的に検出する連続糖度計の検出糖度値と設定された目標糖度値との差に基づいて当該差を縮小させるように、制御手段が、混合手段へ原液及び水を各別に送給する容積形ポンプの回転数調整手段を自動制御するようにしている。このようにしているため、従来のバッチ方式で糖度を調整する混合装置と比較して、極めて能率的且つ簡単容易に、しかも正確に目標糖度の製品を製造することが出来る効果があるとしている。
【特許文献1】特開平6−98728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1で開示された技術では、目標糖度への制御は確保されるものの、混合するタンクのレベル制御が行われていない。このため、満杯の状態であるとレベルが下がるまで待たなければならず、その間に目標糖度と現在値が離れていると、制御不能となる可能性がある。さらに、混合された液の温度調整が必要な場合には、対応が取れないといった問題もある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、タンクのレベル制御と温度制御を行いながら塗料の濃度制御を行なうことができる塗料の濃度制御システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、オンラインで分析可能で比較的安価なオンラインの塗料用濃度計を鋭意検討し、糖度計を利用することに思い至り、本発明を考案した。すなわち、糖度計は、屈折率を利用した汎用装置であり、安価に入手でき、塗料中に含まれる成分によっても屈折率が変化するため、成分比率の決まった薬剤の濃度管理には使用出来るのではないかと思い至った。そして、検討した結果、塗料の希釈率の測定に十分使用可能であることがわかった。
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、原液とうすめ液を混合して、所定糖度に調整する薬液の濃度制御システムであって、原液を貯蔵する原液タンクと、うすめ液を貯蔵し、温度計を有するうすめ液タンクと、該うすめ液タンクおよび前記原液タンクからそれぞれポンプを経由して送り込まれる溶液を混合して貯蔵し、貯蔵した溶液を排出弁を経由して系外に排出または後段に送出する混合タンクと、該混合タンクおよび前記うすめ液タンクからそれぞれポンプを経由して送り込まれる溶液を混合して貯蔵し、貯蔵した薬液をラインに供給またはポンプを経由して前記混合タンクにフィードバックする供給タンクと、統括制御装置とを備え、前記混合タンクおよび供給タンクには、それぞれ糖度計、レベル計、および温度計を有し、これら計測値に基づき前記統括制御装置は、前記ポンプおよび排出弁を調整することによって前記混合タンクおよび供給タンクのレベル制御と温度制御を行いながら、薬液の糖度制御を行なうことを特徴とする薬液の濃度制御システムである。
【0011】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の薬液の濃度制御システムにおいて、前記ポンプおよび排出弁の調整にあたっては、ポンプの運転・停止および排出弁の開閉のいずれかを行なうことを特徴とする薬液の濃度制御システムである。
【0012】
また本発明の請求項3に係る発明は、原液とうすめ液を混合して、所定糖度に調整する薬液の濃度制御方法であって、前記原液とうすめ液とを混合・貯蔵し系外に排出または後段に供給するする混合タンクと、該混合タンクからの溶液と前記うすめ液とを混合・貯蔵しラインに供給または前記混合タンクにフィードバックする供給タンクとで、それぞれ糖度、レベル、および温度を計測し、これら計測値に基づき前記供給・排出・フィードバックを調整することにより、レベル制御と温度制御を行いながら、薬液の糖度制御を行なうことを特徴とする薬液の濃度制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、混合タンクおよび供給タンクそれぞれで糖度、レベル、および温度を計測し、これら計測値に基づき系内および系外への供給・排出・フィードバックを調整するようにしたので、レベル制御と温度制御を行いながら、塗料の濃度制御を精度良く行なうことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に係る塗料の濃度制御システムの構成例を示す図である。図中、1は原液タンク、2はうすめ液タンク、3は混合タンク、4は供給タンク、5は原液供給ポンプ、6はうすめ液供給ポンプ(1)、7は混合液供給ポンプ、8はうすめ液供給ポンプ(2)、9は混合タンク戻りポンプ、10は糖度計(1)、11はレベル計(1)、12は温度計(1)、13は糖度計(2)、14はレベル計(2)、15は温度計(2)、16は温度計(3)、17は統括制御装置、および排出弁18をそれぞれ表す。
【0015】
原液およびうすめ液をそれぞれ貯蔵する、原液タンク1とうすめ液タンク2があり、これら2つの液は、原液供給ポンプ5,うすめ液供給ポンプ(1)6により、それぞれ混合する為の混合タンク3に送液される。うすめ液タンク2には、温度計(3)16が設置されている。混合タンク3には、糖度計(1)10、レベル計(1)11、および温度計(1)12が設置されており、これらの物理量データは、統括制御装置17にてモニターされる。
【0016】
次に、混合タンク3で混合された溶液は、混合液供給ポンプ7により供給タンク4に送液される。同時に、うすめ液タンク2からうすめ液もうすめ液供給ポンプ(2)8により供給タンク4へ送液される。供給タンク4には、糖度計(2)13、レベル計(2)14、温度計(2)15が設置されており、これらの物理量データは、統括制御装置17に送信され、目標値に近づくように自動制御される。供給タンク4からは、ラインへの送液の他に、混合タンク戻りポンプ9により混合タンク3に戻るルートもある。これについては、後ほど詳述する。
【0017】
次に、上記システム構成により、供給タンクの糖度、液面レベル、温度が一定に保たれる制御フローについて図2および3を参照しながら説明する。供給タンクで制御される糖度、レベル、温度の目標値をそれぞれ、Ct、Tt、およびLtとする。
【0018】
混合タンク3では、ある一定範囲の間にレベルが収まるように、レベルコントロールを行う。レベルの制御下限を割ると、原液タンク5とうすめ液タンク6より液を制御上限になるまでうすめ液供給ポンプ(1)6,原液供給ポンプ5を運転することにより、レベルの制御上限まで供給し、レベルの制御上限に達したならば、うすめ液供給ポンプ(1)6,原液供給ポンプ5の運転を停止する(図2(a))。
【0019】
混合比率については、一定比率で供給を行う。ポンプには、一定流量を送液する定量ポンプを使用するのが望ましく、使用しない場合は、流量計(図示せず)などを用いて、送液流量を制御することが考えられる。なお、供給時には、混合タンク3の糖度計の値Cmが急激に変化しないように、ゆっくり供給を行う。
【0020】
そして、混合タンク3のレベルの制御上限を超えた場合には、うすめ液供給ポンプ(1)6,原液供給ポンプ5とともに混合タンク戻りポンプ9も停止し、さらにレベル非常上限に達した場合には、排出弁18を開き、レベル制御上限になるまで、液を排出する(図2(b))。
【0021】
混合タンク3では、糖度計の値Cmは、供給タンクで制御される糖度Ctより小さくならないようにする必要があり、Cm/Ctが所定値範囲を外れた場合にはアラームを発する(図2(c))。この所定値は、対象により異なるが、概ね1.2〜1.5とすることが望ましい。
【0022】
次に、供給タンク4での制御について、図3を参照しながら説明する。供給タンク4では、糖度、液面レベル、温度それぞれの自動制御を行う。供給タンク4の糖度計、レベル計、温度計のそれぞれの測定値をCs,Ls,Tsとする。濃度自動制御においては、糖度測定値Csと目標値Ctとの比較を行い、Ctの方が大きければ、ポンプ7を運転し、混合タンク1より送液を行う。反対にCsの方が大きければ、ポンプ8を運転し、うすめ液タンク2より送液を行う。送液する量をそれぞれF7C、F8Cとすると、F7C、F8Cは以下の通りとなる(図3(b)前段)。
【0023】
Ct>Csの時
7C=(Ct−Cs)/Cm×α
Cs>Ctの時
8C=(Cs−Ct)×β
ここで、α、βは、統括制御装置内に予め設定した定数である。
【0024】
また、液面レベル自動制御については、供給タンク4に制御下限を設け、制御下限を下回った時には、混合タンク3、うすめ液タンク2から補給を行う。補給は混合タンク3からの補給量F7Lを固定(統括制御装置内に予め設定した定数)とし、混合タンクの糖度Cmと目標糖度Ctからうすめ液タンクからの補給量2F8Lを以下の式より導出する。
【0025】
8L=F7L×(Cm−Ct)/Ct
従って、混合タンクからの送液量とうすめ液からの送液量のそれぞれの合計F7およびF8は、以下で求められる(図3(b)中段)。
【0026】
F7=F7C+F7L
F8=F8C+F8L
しかしながら、供給タンク4が満杯になると、これ以上の送液が出来ない為、制御不能となるので、これを防ぐ為に、供給タンクの液面レベルがある上限を超えると、混合タンク戻りポンプ9を運転することにより、混合タンク3に液をフィードバックさせる(図3(a))。
【0027】
また、供給タンク4では温度制御を行っている。供給タンク4の側面に配管(図示せず)を通し、配管内に温水、若しくは、冷水を流し、熱交換を行うことによって、供給タンク内溶液の温度が一定になるように制御している。具体的には、温冷水の流量調整によって、コントロールを行う。本発明では調節弁(図示せず)を設置し、弁開度によって流量制御を行っている。混合タンクとうすめ液の送液量F7,F8が発生する際には、送液量とそれぞれのタンク温度の影響を受けるので、持込み熱量を考慮し以下の式を用いて弁開度Bを予め変化させ、温度変化を減少させている(図3(b)後段)。
【0028】
B=ξ×F7×Tm+ζ×F8×Tk
ここで、Tkは、うすめ液タンクの温度である。
【0029】
以上説明したような本発明を用いることにより、レベル制御と温度制御を行いながら、塗料の濃度制御を精度良く実現できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る塗料の濃度制御システムの構成例を示す図である。
【図2】混合タンクでの制御フロー例を示す図である。
【図3】供給タンクでの制御フロー例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 原液タンク
2 うすめ液タンク
3 混合タンク
4 供給タンク
5 原液供給ポンプ
6 うすめ液供給ポンプ(1)
7 混合液供給ポンプ
8 うすめ液供給ポンプ(2)
9 混合タンク戻りポンプ
10 糖度計(1)
11 レベル計(1)
12 温度計(1)
13 糖度計(2)
14 レベル計(2)
15 温度計(2)
16 温度計(3)
17 統括制御装置
18 排出弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液とうすめ液を混合して、所定糖度に調整する薬液の濃度制御システムであって、
原液を貯蔵する原液タンクと、
うすめ液を貯蔵し、温度計を有するうすめ液タンクと、
該うすめ液タンクおよび前記原液タンクからそれぞれポンプを経由して送り込まれる溶液を混合して貯蔵し、貯蔵した溶液を排出弁を経由して系外に排出または後段に送出する混合タンクと、
該混合タンクおよび前記うすめ液タンクからそれぞれポンプを経由して送り込まれる溶液を混合して貯蔵し、貯蔵した薬液をラインに供給またはポンプを経由して前記混合タンクにフィードバックする供給タンクと、
統括制御装置とを備え、
前記混合タンクおよび供給タンクには、それぞれ糖度計、レベル計、および温度計を有し、これら計測値に基づき前記統括制御装置は、前記ポンプおよび排出弁を調整することによって前記混合タンクおよび供給タンクのレベル制御と温度制御を行いながら、薬液の糖度制御を行なうことを特徴とする薬液の濃度制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液の濃度制御システムにおいて、
前記ポンプおよび排出弁の調整にあたっては、
ポンプの運転・停止および排出弁の開閉のいずれかを行なうことを特徴とする薬液の濃度制御システム。
【請求項3】
原液とうすめ液を混合して、所定糖度に調整する薬液の濃度制御方法であって、
前記原液とうすめ液とを混合・貯蔵し系外に排出または後段に供給するする混合タンクと、該混合タンクからの溶液と前記うすめ液とを混合・貯蔵しラインに供給または前記混合タンクにフィードバックする供給タンクとで、それぞれ糖度、レベル、および温度を計測し、これら計測値に基づき前記供給・排出・フィードバックを調整することにより、レベル制御と温度制御を行いながら、薬液の糖度制御を行なうことを特徴とする薬液の濃度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−213988(P2009−213988A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58875(P2008−58875)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】