説明

塗料組成物及び自動車車体構成部材

【課題】例えば、ドライブシャフト等に設けられる塗膜の耐チッピング性を向上させる。
【解決手段】塗膜は、エポキシ樹脂粉体塗料物と、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方とを含有する塗料組成物が硬化して形成される。ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂としては、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分、且つ脆化温度が−100℃〜−20℃であるものが選定される。なお、塗料組成物において、エポキシ樹脂粉体塗料物とポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂との割合は、重量比で1〜70:99〜30に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐チッピング性を付与する塗料組成物及び該塗料組成物が塗布された自動車車体構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体において、路面に近接する側の構成部材、例えば、フロアパネルの下面やドライブシャフトには、塗料組成物が硬化した塗膜が設けられている。この塗膜は、自動車の走行中にタイヤで跳ね上げられた小石や砂利が衝突した際、該塗膜が設けられた部位を保護して傷が発生することを回避する。換言すれば、塗膜は保護膜として機能し、そのために小石や砂利が衝突した際の耐性(耐チッピング性)が希求される。
【0003】
塗膜となる塗料組成物としては、ワークに強固に付着し、且つ防錆力に優れるエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂系塗料組成物が多用されている。しかしながら、エポキシ樹脂系組成物には、ガラス転移点が比較的高いので寒冷地等では脆くなるために耐チッピング性の確保が容易ではなく、また、吸水性も比較的高いという不具合がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、オレフィン系樹脂を含有する固体粉末、極性基含有変性オレフィン系樹脂を含有する固体粉末、及びエポキシ樹脂を含有する固体粉末からなる粉体塗料組成物が提案されている。この粉体塗料組成物を用いれば、硬化エポキシ樹脂を下層、オレフィン系樹脂皮膜を表層とする複層塗膜が形成される、とのことである。
【0005】
また、特許文献2、3には、エポキシ粉体塗料からなる最下層、極性基を有する接着性ポリオレフィンからなる中間層、ポリオレフィンからなる最上層を備える塗膜を鋼製杭の外表面に設けることが記載されている。
【0006】
さらに、エポキシ粉体塗料とポリオレフィン樹脂とを積層又は半相互浸入させた塗膜を設けることは、特許文献4、5にも提案されている。
【0007】
【特許文献1】特公昭62−27109号公報
【特許文献2】特開平2−8043号公報
【特許文献3】特開昭63−258680号公報
【特許文献4】特表平11−513416号公報
【特許文献5】特公昭62−27109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、エポキシ樹脂系塗料組成物の諸特性を向上させるべくポリオレフィン系塗料組成物を併用することについての種々の提案がなされている。しかしながら、いずれも低温環境下における耐チッピング性に優れるものであるとはいい難い側面があり、依然として、耐チッピング性が一層良好な塗料組成物が希求されている。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、低温環境下での耐チッピング性が良好な塗料組成物及び自動車車体構成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明に係る塗料組成物は、エポキシ樹脂粉体塗料物と、
ポリオレフィン樹脂、又は、エポキシ樹脂に対して親和性を有する極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方と、
を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂又は前記極性基含有変性オレフィン樹脂は、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分、且つ脆化温度が−100℃〜−20℃であり、
前記エポキシ樹脂粉体塗料物が1〜70重量部、前記ポリオレフィン樹脂又は前記極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方が99〜30重量部の割合であることを特徴とする。
【0011】
この塗料組成物は、エポキシ樹脂に由来して、ワークに対する強固な付着力を示すとともに、優れた耐食性や耐水性を示す。また、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂に由来して、低温環境下であっても良好な耐チッピング性を示す。
【0012】
すなわち、本発明によれば、ワークに対して強固に付着し、優れた耐食性や耐水性、耐チッピング性を示す塗膜が得られ、これにより、該塗膜が形成されたワークが保護されて耐久性が向上する。
【0013】
なお、本発明において、「親和性」は、異種材料同士が物理的及び/又は化学的に引き寄せ合う性質として定義され、その例としては、水素結合及びファンデルワールス力による結合等が挙げられる。
【0014】
また、極性基含有変性オレフィン樹脂の好適な例としては、カルボキシル基を極性基として有するものを挙げることができる。このような極性基は、カルボキシル基含有ビニル系モノマーや、不飽和カルボン酸又はその無水物を共重合ないしグラフト重合させて導入することができる。この種の極性物質の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0015】
さらに、エポキシ樹脂粉体塗料物に含まれるエポキシ樹脂は、軟化点が30℃〜160℃のものであることが好ましい。この場合、常温でのハンドリングに優れるとともに、エポキシ樹脂粉体塗料物の混練が容易となる。
【0016】
また、本発明に係る自動車車体構成部材は、エポキシ樹脂粉体塗料物が1〜70重量部、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方が99〜30重量部の割合である塗料組成物が硬化した塗膜が設けられ、
前記ポリオレフィン樹脂又は前記極性基含有変性オレフィン樹脂は、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分、且つ脆化温度が−100℃〜−20℃であり、
前記極性基含有変性オレフィン樹脂は、エポキシ樹脂に対して親和性を有する極性基を有することを特徴とする。
【0017】
このような構成の自動車車体構成部材は、小石や砂利等が衝突したとしても塗膜によって保護される。このため、該部材に傷が発生することが回避される。
【0018】
しかも、この塗膜は、耐食性や耐水性も良好であるので、自動車車体構成部材に錆が発生することも抑制される。
【0019】
自動車車体構成部材は、特に限定されるものではないが、フロアパネル、ドライブシャフト又は各種のバネ(例えば、サスペンションを構成するバネ)を好適な例として挙げることができる。
【0020】
上記したように、極性基含有変性オレフィン樹脂としては、極性基としてのカルボキシル基を有するものが例示される。また、エポキシ樹脂粉体塗料物に含まれるエポキシ樹脂は、軟化点が30℃〜160℃のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エポキシ樹脂粉体塗料物と、ポリオレフィン樹脂、又は、エポキシ樹脂と物理的に結合可能な極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方とを配合するようにしている。このため、ワークに対して強固に付着するとともに、優れた耐食性や耐水性、耐チッピング性を示す塗膜が得られる。
【0022】
従って、例えば、この塗膜が設けられた自動車車体構成部材は、低温環境下でも傷が発生し難く、また、錆も発生し難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る塗料組成物につき該塗料組成物が塗布された自動車車体構成部材との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
先ず、エンジンからの駆動力をタイヤに伝達するための駆動力伝達機構を図1に示す。この駆動力伝達機構10においては、デファレンシャルギヤ12から順に、ハーフシャフト14、スプラインシャフト16a、16bが連結され、該スプラインシャフト16a、16bは、ホイールが外嵌されたハブ(ともに図示せず)に連結されている。
【0025】
ハーフシャフト14又はデファレンシャルギヤ12の回転軸18とスプラインシャフト16a、16bとはトリポート型等速ジョイント20a、20bを介して連結され、一方、スプラインシャフト16a、16bと前記ハブとはバーフィールド型等速ジョイント22a、22bを介して連結されている。従って、エンジンからの回転駆動力は、これらデファレンシャルギヤ12、トリポート型等速ジョイント20a、20b、ハーフシャフト14又は回転軸18、スプラインシャフト16a、16b、バーフィールド型等速ジョイント22a、22b、及びハブを介してタイヤ(図示せず)に伝達される。
【0026】
このような構成において、ハーフシャフト14及びスプラインシャフト16a、16b、すなわち、ドライブシャフトの表面には、塗膜が形成されている。この塗膜は、エポキシ樹脂粉体塗料と、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方が配合された塗料組成物が硬化して形成されたものである。
【0027】
この場合、エポキシ樹脂粉体塗料には、エポキシ樹脂、硬化剤、顔料及び各種の添加剤が配合されている。このうち、エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が170〜2100g/eqであるものが好適であり、600〜1200g/eqであるものがより好適である。
【0028】
また、エポキシ樹脂は、軟化点が30℃〜160℃であるものが好ましい。軟化点が30℃未満のものは常温で固体状態を維持することが困難であり、従って、粉体塗料とすることが容易ではない。また、160℃を超えるものであると、後述する混練の過程で容易に軟化しない。軟化点が50℃〜150℃であるエポキシ樹脂がより好ましく、60℃〜140℃であるエポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0029】
このようなエポキシ樹脂は、エピコート1004(ジャパンエポキシ社製の商品名)、エポトートYDO14(東都化成社製の商品名)、エピクロン4050(大日本インキ化学工業社製の商品名)等の市販品として容易に入手可能である。
【0030】
硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させる物質であればよく、特に限定されるものではないが、アミン、アミジン、酸無水物、ノボラック構造を有するフェノール、ビスフェノール型エポキシを骨格とするフェノール、ジアミノジフェニールメタン(DDM)、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、これらにイミダゾール類が付加された物質を好適な例として挙げることができる。
【0031】
硬化剤の割合は、エポキシ樹脂粉体塗料の全重量を100重量%とするとき、1〜20重量%とすれば十分である。
【0032】
顔料としては、一般的に顔料として使用されているものが例示される。すなわち、着色顔料としての酸化チタン、弁柄、オーカー等の黄色酸化鉄、カーボンブラック、キナクリドン、アゾ化合物、ジオキサン、スレン、フタロシアニン等の金属錯体、各種金属塩が挙げられ、体質顔料としての硫酸バリウム、二酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、ウオラストナイト、酸化アルミニウム、その他のセラミックス粉末が挙げられる。
【0033】
顔料は必須成分ではないが、添加する場合には、エポキシ樹脂粉体塗料の全重量を100重量%とするとき、1〜80重量%とすることが好ましく、10〜80重量%とすることがより好ましい。
【0034】
添加剤としては、レベリング剤、ワックス、脱泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が添加される。添加剤も必須成分ではないが、添加する場合には、エポキシ樹脂粉体塗料の全重量を100重量%とするとき、0.1〜10重量%とすることが好ましく、0.3〜7重量%とすることがより好ましい。
【0035】
一方のポリオレフィン樹脂としては、オレフィンをモノマーとして重合したものの中、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分であるものが選定される。メルトインデックスが0.1g/10分未満であると、塗布後の焼き付け時に十分な流動性が発現しないため、平滑な塗膜を得ることが困難となる。また、80g/10分を超えると、レベリング性が向上するものの脆化温度が高くなるので、低温環境下での耐チッピング性が低下する。メルトインデックスが0.15〜50g/10分であるポリオレフィン樹脂がより好ましく、0.2〜30g/10分であるポリオレフィン樹脂がさらに好ましい。
【0036】
また、ポリオレフィン樹脂としては、脆化温度が−100℃〜−20℃であるものが選定される。脆化温度が−20℃を超えるものであると、低温環境下での耐チッピング性が十分ではなく、−100℃未満であるものであると、粉砕することが困難である。
【0037】
以上のような物性のポリオレフィン樹脂に代替して、極性基含有変性オレフィン樹脂を配合するようにしてもよい。勿論、ポリオレフィン樹脂と極性基含有変性オレフィン樹脂とを同時に配合するようにしてもよい。
【0038】
極性基含有変性オレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂と同様に、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分であり、且つ脆化温度が−100℃〜−20℃であるものが選定される。この理由は、上記した通りである。
【0039】
また、極性基含有変性オレフィン樹脂の極性基は、エチレン樹脂と親和性を示す官能基であり、具体的には、カルボキシル基が例示される。そして、このような官能基を有する極性基含有変性オレフィン樹脂の好適な例としては、アドマー、UM1420、フローセン13142が挙げられる。ここで、アドマーは三井化学工業社製の低密度ポリエチレン樹脂の商品名であり、190℃でのメルトインデックスが9g/10分、脆化温度が−60℃以下である。また、UM1420、フローセン13142は、それぞれ、宇部興産社製の流動浸漬用低密度ポリエチレン樹脂、住友精化社製の静電塗装用低密度ポリエチレン樹脂の商品名であり、190℃でのメルトインデックスは20g/10分、10g/10分、脆化温度は−70℃以下、−80℃以下である。
【0040】
ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂は、カーボンブラック等で着色されたものであってもよい。
【0041】
エポキシ樹脂粉体塗料物と、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方とは、重量比で1〜70:99〜30に設定される。ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の割合が30重量部未満であると、−40℃付近における耐チッピング性が十分でなくなる。また、99重量部を超えると、表面状態が均一な塗膜を設けることが困難となる。
【0042】
前記塗膜は、このような成分が配合された塗料組成物から、次のようにして設けられる。
【0043】
先ず、エポキシ樹脂粉体塗料物を調製する。すなわち、上記したエポキシ樹脂、硬化剤、添加物を常温で混合し、一軸又は二軸押し出し機等の粉体塗料製造に一般的に使用される混練機を使用して混練する。これにより形成されたペレットを、ピンミル等の粉砕機で粉砕して、例えば、粒径200μm以下の粉末とし、この粉末の粒度分布を、篩等で所定の範囲内とする。
【0044】
その一方で、ポリオレフィン樹脂、極性基含有変性オレフィン樹脂、又はこれらの混合物を常温ないし氷点下で粉砕して、例えば、粒径300μm以下の粉末とする。この粉末も、篩等で粒度分布を所定の範囲内としてもよい。
【0045】
以上のようにして得られた各粉末を、エポキシ樹脂粉体塗料物が1〜70重量部、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方が99〜30重量部となるように配合すれば塗料組成物が得られる。前記塗膜は、この塗料組成物をハーフシャフト14やスプラインシャフト16a、16bに対して静電塗装、流動浸漬、インモールド等によって塗布し、次いで、熱風炉、赤外炉、誘導加熱炉内で焼き付けを行って該塗料組成物を硬化することによって設けることができる。
【0046】
なお、この硬化の際、塗料組成物中では、エポキシ樹脂粉体塗料物と、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂との相分離が起こる。
【0047】
このようにして設けられた塗膜は、エポキシ樹脂に由来して、ワーク(ハーフシャフト14及びスプラインシャフト16a、16b)に強固に付着するとともに、優れた耐食性や耐水性を示し、その一方で、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂に由来して、低温環境下であっても良好な耐チッピング性を示す。
【0048】
なお、塗膜が形成された自動車車体構成部材は、ハーフシャフト14やスプラインシャフト16a、16bに特に限定されるものではなく、図示しないフロアパネルであってもよいし、図示しないサスペンションを構成する巻バネないし板バネであってもよい。
【0049】
また、この塗料組成物を塗布するワークが自動車車体構成部材に特に限定されるものでないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0050】
エピクロン4050(大日本インキ化学工業社製の商品名、エポキシ当量:945g/eq、軟化点:100℃)を100重量部、硬化剤であるADHを6重量部、硫酸バリウムを20重量部、カーボンブラックを1.5重量部、アクリル系レベリング剤であるBYK360Pを2重量部配合し、高速ミキサーで予備混合した後、混練、粉砕、分級を行って平均粒径50μmのエポキシ樹脂粉体塗料物を得た。
【0051】
その一方で、平均粒径180μmの粉体として市販されているアドマーNS101を用意した。
【0052】
次に、両粉体を図2に示す割合で配合し、塗料組成物とした。この塗料組成物をショットブラストした軟鋼板(板厚6mm)に静電塗装し、180℃で20分間保持して硬化させた。これにより、肉厚がおよそ100μmである平滑な塗膜を得た。各々を実施例1〜4とする。
【0053】
比較のため、上記のエポキシ樹脂粉体塗料物、又はアドマーNS101(粉末状)のそれぞれから、実施例1〜4と同条件下で塗膜を形成した。これらを比較例1、2とする。
【0054】
以上の実施例1〜4及び比較例1、2の各塗膜につき、外観、耐衝撃性、耐食性、耐湿性を評価した。なお、外観は目視にて判定し、良好である場合を「○」、不良である場合を「×」とした。また、耐衝撃性は、軟鋼板を−40℃で24時間保持した後に取り出し、JIS K 5600 5−3−6に準拠して試験を行った。すなわち、直径が1/8インチであるポンチと、1kgの錘を使用して、前記錘を前記軟鋼板上の高さ50cmの位置から落下させて塗膜に割れが発生しなかった場合を「○」、割れが発生した場合を「×」とした。この耐衝撃性が良好であるほど、低温での耐チッピング性が良好であることを意味する。
【0055】
さらに、耐食性は、JIS K 5600 7−1に準拠して、×字状の切り込みが予め入れられた塗膜に対して塩水を噴霧し、500時間後にテープを押し当てて剥がした際に塗膜に剥離があるか否かで評価した。切り込みからの剥離幅が1mm以内であれば「○」、それ以上の剥離が起こった場合を「×」とした。
【0056】
そして、耐湿性については、連続結露法であるJIS K 5600 7−2に準拠した試験を行った。すなわち、500時間後に取り出し、外見を目視で検査するとともに、取り出し1時間後に碁盤目付着性テストを実施して判定した。ここで、碁盤目付着性テストにおいては、JIS K 5600 5−6に基づき、1mm×1mmに100分割した碁盤目状カット部に対して粘着テープを貼付し、次に該粘着テープを剥離させ、この粘着テープに碁盤目状カット部がどの程度付着するかを調べて評価した。
【0057】
塗膜が平滑であり、且つ付着性が100/100である場合を「○」、塗膜が平滑ではなく、且つ碁盤目付着性テストにおいて多数の凹部が発生した場合を「×」とした。
【0058】
以上の評価結果を、図2に併せて示す。この図2から、エポキシ樹脂粉体塗料物と、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方とを混合することによって、外観が良好であり、低温での耐チッピング性、耐食性及び耐湿性に優れる塗膜を形成できることが明らかである。
【0059】
なお、図2に示すように、アドマーNS101のみで設けられた塗膜は、ピンホールが多く発生して外観が不良であった。また、軟鋼板に対する付着力も十分であるとはいい難く、耐食性及び耐湿性が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態に係る塗料組成物からなる塗膜が設けられたドライブシャフトが組み込まれた動力伝達機構のシステム概要図である。
【図2】実施例1〜4及び比較例1、2の塗膜の諸物性を比較して示す図表である。
【符号の説明】
【0061】
10…駆動力伝達機構 14…ハーフシャフト
16a、16b…スプラインシャフト
20a、20b…トリポート型等速ジョイント
22a、22b…バーフィールド型等速ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂粉体塗料物と、
ポリオレフィン樹脂、又は、エポキシ樹脂に対して親和性を有する極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方と、
を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂又は前記極性基含有変性オレフィン樹脂は、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分、且つ脆化温度が−100℃〜−20℃であり、
前記エポキシ樹脂粉体塗料物が1〜70重量部、前記ポリオレフィン樹脂又は前記極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方が99〜30重量部の割合であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
請求項1記載の塗料組成物において、前記極性基含有変性オレフィン樹脂が、極性基としてのカルボキシル基を有するものであることを特徴とする塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗料組成物において、前記エポキシ樹脂粉体塗料物に含まれるエポキシ樹脂は、軟化点が30℃〜160℃のものであることを特徴とする塗料組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂粉体塗料物が1〜70重量部、ポリオレフィン樹脂又は極性基含有変性オレフィン樹脂の少なくともいずれか一方が99〜30重量部の割合である塗料組成物が硬化した塗膜が設けられ、
前記ポリオレフィン樹脂又は前記極性基含有変性オレフィン樹脂は、190℃でのメルトインデックスが0.1〜80g/10分、且つ脆化温度が−100℃〜−20℃であり、
前記極性基含有変性オレフィン樹脂は、エポキシ樹脂に対して親和性を有する極性基を有することを特徴とする自動車車体構成部材。
【請求項5】
請求項4記載の自動車車体構成部材において、前記極性基含有変性オレフィン樹脂が、極性基としてのカルボキシル基を有するものであることを特徴とする自動車車体構成部材。
【請求項6】
請求項4又は5記載の自動車車体構成部材において、前記エポキシ樹脂粉体塗料物に含まれるエポキシ樹脂は、軟化点が30℃〜160℃のものであることを特徴とする自動車車体構成部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−182963(P2006−182963A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379991(P2004−379991)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000199991)川上塗料株式会社 (12)
【Fターム(参考)】