説明

塗料組成物

【課題】有機成分の分解・劣化に対し、塗料構成成分として無機粉粒体が含有されていたとしても、有機成分の分解・劣化を長期に亘って抑えることができ、優れた耐候性を有する塗料組成物を提供する。
【解決手段】塗料組成物は、ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含む結合材と、アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなる無機粉粒体とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性に優れる塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、ビル等の建築物の外壁・屋根等には、通常塗料が塗られており、風雨や直射日光等から建築物を保護するとともに、建築物の美観性を維持する役割も果たしている。
このような塗料では、風雨や直射日光に対する耐候性等の性能が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1には、結合材として、ピペリジン基と重合性不飽和基を分子内に有する重合性紫外線安定性単量体を重合して得られる合成樹脂エマルションを使用することにより、耐候性に優れる塗膜を得ることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−128978号公報
【0005】
しかしながら、通常使用される塗料の多くは、有機合成樹脂等を含む結合材と、無機顔料等の無機粉粒体等から構成されており、場合によっては、無機粉粒体が、有機合成樹脂等の有機成分を分解・劣化させ、その結果形成塗膜の耐候性等の性能に悪影響を与えるおそれがあった。
【0006】
本発明は、有機成分の分解・劣化に対し、さらなる改善・改良を目指したものであり、塗料構成成分として無機粉粒体が含有されていたとしても、有機成分の分解・劣化を長期に亘って抑えることができ、優れた耐候性を有する塗膜を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含む結合材と、アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなる無機粉粒体とを含む塗料組成物が、有機合成樹脂の分解・劣化を抑制でき、優れた耐候性を有する塗膜が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含む結合材と、
アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなる無機粉粒体とを含む塗料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物は、優れた耐候性を有する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の塗料組成物は、ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含む結合材と、アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなる無機粉粒体とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、無機粉粒体をアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物で被覆し、かつ、結合材としてピペリジン基を有する有機合成樹脂を用いることにより、優れた耐候性を有する形成塗膜が得られるものである。
【0013】
一般に、酸化チタン等の無機粉粒体では、紫外線、可視光線等でラジカルが発生し、該ラジカルによって有機成分は分解・劣化されてしまい、塗膜の耐候性に悪影響を与えている。
本発明では、無機粉粒体をアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物で被覆することにより、アルコキシシリル基が無機粉粒体と強固に密着し、ピペリジン基が無機粉粒体より発生したラジカルを捕捉し、ラジカルによる有機成分の分解・劣化を抑えることができる。かつ、結合材にも、ピペリジン基を導入することにより、ラジカルによる有機成分の分解・劣化を相乗的に抑えることができる。
【0014】
本発明における結合材は、ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含んでいれば、特に限定されない。
このような有機合成樹脂としては、例えば、
(1)重合性モノマーとピペリジン基を有する化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)とを混合し、重合させる方法、また、
(2)重合性モノマーを重合して得られる有機合成樹脂に、ピペリジン基を有する化合物を導入する方法、または(1)及び(2)の方法を併用する方法等で得ることができる。
【0015】
(1)、(2)の方法におけるピペリジン基を有する化合物((A)成分)としては、例えば、
4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のピペリジン基と重合性不飽和結合を有する化合物、
4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと同じ)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、2,4−ビス{N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラテトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}6−(2−ヒドロキシエチルアミン)1,3,5−トリアジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル}ブチルマロネート、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のピペリジン基と反応性官能基を有する化合物等が挙げられる。
【0016】
(1)、(2)の方法における重合性モノマーとしては、
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有モノマー、
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールアリルエーテル、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸トリプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリt−ブチルメチル、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のt−アルキル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
ビニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のアセトアセトキシル基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有モノマー;
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
スチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;
2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{(メタ)アクリロキシ−エトキシ}ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{(メタ)アクリロキシ−ジエトキシ}ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{(メタ)アクリロキシ−トリエトキシ}ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系モノマー;
2−{2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチルフェニル}−2H−ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチル−3−t−ブチルフェニル}−2H−ベンゾトリアゾール、3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−{3’−(2’’−ベンゾトリアゾール)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル}フェニルプロピオネート等のベンゾトリアゾール系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のその他のモノマー;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができ、適宜設定することができる。
【0017】
(1)、(2)の方法における重合方法としては、特に限定されないが、乳化重合、分散重合、溶液重合等の公知の重合方法にて重合すればよい。また、重合添加剤として、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等を、各種重合法、目的に応じ、必要量添加することができる。
【0018】
また、(2)の方法においては、有機合成樹脂に存在する反応性官能基と、該反応性官能基と反応する反応性官能基を有する(A)成分を反応させることによりピペリジン基を有する有機合成樹脂を得ることができる。
このような反応性官能基の組み合わせとして、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、アミノ基とグリシジル基、アミノ基とグリシジル基、カルボキシル基とグリシジル基、カルボキシル基とアミノ基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、アセトアセトキシル基とアミノ基、アルコキシシリル基とカルボキシル基、アルコキシシリル基とヒドロキシル基、反応性シリル基どうし等が挙げられる。
反応方法としては、特に限定されず、常法により反応させればよく、必要に応じ触媒等を使用してもよい。
【0019】
本発明の結合材は、ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含むものであり、ピペリジン基の含有量としては、結合材全量(固形分)に対し、ピペリジン基を有する化合物((A)成分)が、0.1重量%から80重量%(好ましくは、0.5重量%から50重量%)であることが好ましい。
【0020】
本発明で用いる無機粉粒体は、アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなるものである。
【0021】
無機粉粒体としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化錫、酸化ビスマス、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、酸化ハフニウム、酸化ルテニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化カドミウム、窒化タンタル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ガリウム砒素、ガリウムリン、インジウムリン、ニオブ酸カリウム、バナジン酸ビスマス、シリコンカーバイド、カーボンブラック、モリブデンレッド、コバルトブルー、マンガンバイオレット、弁柄、紺青、群青等が挙げられる
【0022】
このような無機粉粒体に被覆するアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物は、特に限定されないが、例えば、次のような方法で得ることができる。
(3)ピペリジン基と重合性不飽和結合を有する化合物と、アルコキシシリル基と重合性不飽和結合を有する化合物とを重合させることにより得る方法、
(4)ピペリジン基と反応性官能基を有する化合物と、アルコキシシリル基と該反応性官能基と反応可能な官能基を有する化合物とを反応させることにより得る方法、
または、(3)及び(4)の方法を併用する方法等により得ることができる。
【0023】
(3)の方法におけるアルコキシシリル基と重合性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等が挙げられる。
【0024】
(3)の方法におけるピペリジン基と重合性不飽和結合を有する化合物としては、上述したもの等が挙げられ、こようなピペリジン基と重合性不飽和結合を有する化合物とアルコキシシリル基と重合性不飽和結合を有する化合物、さらには上述したエチレン性不飽和モノマーを混合し、常法により重合することによって、ピペリジン基とアルコキシシリル基を有する化合物を得ることができる。
【0025】
(4)の方法におけるピペリジン基と反応性官能基を有する化合物としては、上述したもの等が挙げられ、
また、(4)の方法におけるアルコキシシリル基と反応性官能基を有する化合物としては、特に限定されないが、アルコキシシリル基の炭素数が8以下、好ましくは5以下のものであることが好ましい。アルコキシシリル基と重合性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられる。
【0026】
(4)の方法における反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、アミノ基とグリシジル基、カルボキシル基とグリシジル基、カルボキシル基とアミノ基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、アセトアセトキシル基とアミノ基等が挙げられ、特に、ヒドロキシル基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基の組み合わせが好ましい。
(4)の方法では特に、ピペリジン基とヒドロキシル基を有する化合物と、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物の組み合わせ、ピペリジン基とアミノ基とを有する化合物と、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物の組み合わせが好ましい。
【0027】
このようなピペリジン基と反応性官能基を有する化合物と、アルコキシシリル基と反応性官能基を有する化合物とを反応させて、ピペリジン基とアルコキシシラン基を有する化合物を得ることができる。
このような反応における反応温度は、通常、30〜150℃程度であることが好ましい。
また、反応触媒を加えて、反応を促進することもできる。反応触媒としては、特に限定されないが、上述した反応性官能基の組み合わせにより、適宜選定すればよい。
さらに、上述した化合物、反応比率等を適宜調整することにより、目的とするピペリジン基とアルコキシシラン基を有する化合物を得ることができる。
【0028】
無機粉粒体表面に、アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物を被覆する方法としては、特に限定されないが、無機粉粒体とアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物を混合し乾燥させる方法、無機粉粒体表面にアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物をスプレー等で吹き付け乾燥させる方法等によって容易に被覆することができる。
【0029】
混合方法としては、ホモミキサーやマグネットスターラー、また、ボールミル、サンドミル、高速回転ミル、ジェットミル等を用いて混合することができる。
乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、真空乾燥、直接加熱乾燥、高周波加熱乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿乾燥等を採用することができる。乾燥工程において乾燥容器を使用する場合、乾燥容器としては各種の形状のものが使用可能である。乾燥容器は、排気口、加熱装置、攪拌装置等を備えたものであってもよい。
乾燥温度については、無機粉粒体及びアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物の耐熱温度以下の範囲内で適宜設定することができるが、通常は30〜200℃、好ましくは50〜120℃である。
【0030】
アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物の被覆量は、特に限定されないが、無機粉粒体の固形分100重量部に対し、0.1重量部〜30重量部、さらには0.3重量部〜20重量部、さらには0.5重量部〜15重量部程度であることが好ましい。
【0031】
無機粉粒体表面にアルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物を被覆する際、本発明の効果を損なわない程度に、溶剤、顔料、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明の塗料組成物は、ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含む結合材(固形分)100重量部に対し、アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなる無機粉粒体を1重量部〜1000重量部(さらには、30重量部〜800重量部)程度混合して用いる。
また、必要に応じ通常用いられる公知の着色顔料、体質顔料、骨材、繊維、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、吸着剤、溶剤等を、単独あるいは併用して配合することにより塗料組成物を得ることができる。
【0033】
このようにして得られる塗料組成物は、例えば、モルタル、コンクリート、石膏ボード、サイディングボード、押出成形板、スレート板、石綿セメント板、繊維混入セメント板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、焼成タイル、磁器タイル、プラスチック板、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上に形成された塗膜(下塗材や既存塗膜等)等に対し適用することができる。
また、塗装方法としては、特に限定されず公知の方法で塗装することができるが、塗料の形態の応じ、例えば、刷毛、スプレー、ローラー、鏝、へら等の各種塗装器具を用いた塗装や、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。また、塗料の塗付量は、各種用途にあわせて、適宜設定すればよい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0035】
<ピペリジン基とアルコキシシラン基を有する化合物の製造>
(製造例1)
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン40重量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン60重量部、ジブチル錫ジラウレート0.5重量部を混合し、50℃で3時間反応させてピペリジン基とアルコキシシラン基を有する化合物(以下、「化合物(1)」という。)を得た。
(製造例2)
4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン40.9重量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン59.0重量部、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を混合し、50℃で3時間反応させてピペリジン基とアルコキシシラン基を有する化合物(「化合物(2)」ともいう。)を得た。
【0036】
(実施例1)
アナターゼ型酸化チタン(平均粒子径150nm、堺化学工業株式会社製)(以下、「無機粉粒体(1)」という。)100重量部、化合物(1)1.0重量部を温度25℃、相対湿度50%にて、1時間攪拌混合し、100℃で1時間乾燥させ、粒子(1)を得た。
得られた粒子(1)を、表1に示すように、有機合成樹脂エマルション(1)(モノマー成分:アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、スチレン、化合物(2)、ガラス転移温度:15℃、固形分:50重量%)60重量部、粒子(1)20重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)20重量部を常法にて均一に混合・攪拌し、水性塗料(1)を製造した。
得られた水性塗料(1)について、次の耐変色性試験を行った。
【0037】
(耐変色性試験)
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m塗付し、標準状態で24時間養生させた後、製造した水性塗料(1)をスプレーにて300g/m塗付し、標準状態で14日間乾燥させ試験体を得た。
得られた試験体を、大阪府茨木市で南向き45度傾斜にて、1ヶ月屋外暴露した後、色差計(CM−3700d、コニカミノルタホールディングス株式会社製)を用いて、1ヶ月屋外暴露前後の色差(Δb)により次のように評価した。結果は表1に示す。
◎:Δb=0.5未満
○:Δb=0.5以上1.0未満
△:Δb=1.0以上1.5未満
×:Δb=1.5以上2.0未満
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例2)
無機粉粒体(1)100重量部、化合物(1)5.0重量部を温度25℃、相対湿度50%にて、1時間攪拌混合し、100℃で1時間乾燥させ、粒子(2)を得た。
得られた粒子(2)を、表1に示すように、有機合成樹脂エマルション(1)60重量部、粒子(2)20重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)20重量部を常法にて均一に混合・攪拌し、水性塗料(2)を製造した。
得られた水性塗料(2)について、実施例1と同様の耐変色性試験を行った。結果は表1に示す。
【0040】
(実施例3)
無機粉粒体(1)100重量部、化合物(1)10.0重量部を温度25℃、相対湿度50%にて、1時間攪拌混合し、100℃で1時間乾燥させ、粒子(3)を得た。
得られた粒子(3)を、表1に示すように、有機合成樹脂エマルション(1)60重量部、粒子(3)20重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)20重量部を常法にて均一に混合・攪拌し、水性塗料(3)を製造した。
得られた水性塗料(3)について、実施例1と同様の耐変色性試験を行った。結果は表1に示す。
【0041】
(比較例1)
表1に示すように、有機合成樹脂エマルション(1)60重量部、無機粉粒体(1)20重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)20重量部を常法にて均一に混合・攪拌し、水性塗料(4)を製造した。
得られた水性塗料(4)について、実施例1と同様の耐変色性試験を行った。結果は表1に示す。
【0042】
(比較例2)
有機合成樹脂エマルション(2)(モノマー成分:アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、スチレン、ガラス転移温度:15℃、固形分:50重量%)60重量部、粒子(1)20重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)20重量部を常法にて均一に混合・攪拌し、水性塗料(5)を製造した。
得られた水性塗料(5)について、実施例1と同様の耐変色性試験を行った。結果は表1に示す。
【0043】
(比較例3)
有機合成樹脂エマルション(2)60重量部、無機粉粒体(1)20重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)20重量部を常法にて均一に混合・攪拌し、水性塗料(6)を製造した。
得られた水性塗料(6)について、実施例1と同様の耐変色性試験を行った。結果は表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペリジン基を有する有機合成樹脂を含む結合材と、
アルコキシシリル基とピペリジン基とを有する化合物が被覆されてなる無機粉粒体とを含む塗料組成物。



【公開番号】特開2007−270095(P2007−270095A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100987(P2006−100987)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】