説明

塗料組成物

【課題】混合安定性が良好で、十分な可使時間を有し、優れた仕上り性を確保できるとともに、層間密着性に優れ、塗膜の剥離、ふくれ及び割れを防止することができ、さらには、耐汚染性に優れた塗膜を形成できる塗料を得る。
【解決手段】(A)ポリオール化合物、(A’)イソシアネート化合物、(B)テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1〜3と炭素数4〜12のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数4〜12のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5〜50%である化合物、(C)有機酸を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用される塗料組成物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より建築物、土木構築物等の躯体の保護、意匠性の付与および、美観の向上のため塗装仕上げが行われており、フッ素樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料あるいはポリウレタン樹脂塗料等の高耐久性塗料が好んで用いられている。しかしながら、最近、特に都心や都市近郊部においては、自動車等からの排出ガスにより大気中に油性の汚染物質が多く浮遊している状況であり、それら油性の汚染物質が塗膜表面に付着し、著しいすす状あるいはすじ状の汚染を生じるという問題が生じている。
【0003】
これに対して、塗膜表面を親水性にし、付着した油性の汚染物質を降雨時の雨水が塗膜表面に広がる作用によって剥離し洗い流す、という塗料が各種発表されている。例えば、特願平6−506632(国際公開WO94/06870号公報)には、塗料中にオルガノシリケートを混合することが提案されている。
【0004】
【特許文献1】WO94/06870号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、塗料を建築物などに現場塗装する場合、塗料を1回塗装するだけでは、下地の凹凸、吸い込みむら等の影響により、塗装むらや艶引け等が発生しやすく、美観性の高い仕上りを得難い。これを防ぐために厚塗りを行うと、今度は塗料のたれが発生する等の問題を生じる。従って、良好な仕上り外観を得るために、同一塗料を複数回塗装する方法が好んで行われている。一方、塗装終了後において、部分的な傷、塗装むら等が発見された場合には、同一塗料による補修塗装が行われている。このように、建築物等への現場塗装においては、同一塗料が2回以上塗装されることが殆どである。
【0006】
しかしながら、前記公報の塗料はオルガノシリケートを混合したときの安定性が低く、短時間で凝集物が発生したり、ゲル化を引き起こしたり、相分離してしまうというような欠点がある。このため、2回目の塗装を行おうとしても塗装できない、あるいは、塗装できたとしても艶引け等により良好な仕上りを得ることができないという問題が生じやすい。
【0007】
さらに、前記公報の塗料では、複数回塗装を行おうとする際、そのインターバルが長くなると各層間の密着性が著しく低下するという欠点がある。このため、塗り重ねた塗膜が剥離する、あるいは、経時的に塗膜にふくれ、われなどが発生する、というような実用上無視することのできない問題が生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、有機系樹脂に対し、特定のアルコキシシラン化合物及び有機酸を特定量含有させることによって、凝集物等が発生せず、混合安定性が良好で、十分な可使時間を有し、優れた仕上り性(グロスエナメルにおいては高い光沢値)を確保できるとともに、層間密着性に優れ、塗膜の剥離、ふくれ及び割れを防止することができ、さらには、耐汚染性に優れた塗膜が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記の塗料組成物に係るものである。
1.(A)ポリオール化合物、
(A’)イソシアネート化合物、
(B)テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1〜3と炭素数4〜12のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数4〜12のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5〜50%である化合物、
(C)有機酸、
を含有し、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、(B)成分をSiO2 換算で1.0〜50.0重量部、(C)成分を0.1〜30重量部含有し、
(A’)成分と(A)成分との混合比率は、NCO/OH比率で0.7〜2.0であることを特徴とする塗料組成物。
2.(A)成分の水酸基価が15〜100KOHmg/gであることを特徴とする1.に記載の塗料組成物。
3.塗料中の全溶剤のうち、50重量%以上が脂肪族炭化水素である1.または2.に記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凝集物等が発生せず、混合安定性が良好で、十分な可使時間を有し、優れた仕上り性(グロスエナメルにおいては高い光沢値)を確保できるとともに、層間密着性に優れ、塗膜の剥離、ふくれ及び割れを防止することができ、さらには、耐汚染性に優れた塗膜が得られる。
また、本発明において、塗料中の溶剤のうち50重量%以上を脂肪族炭化水素とすると、塗装時、特に複数回塗装を行う際の塗膜のリフティング現象を十分に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
[(A)有機系樹脂]
本発明組成物における(A)成分であるポリオール化合物は、塗料の結合材として用いるものである。
【0013】
(A)成分の樹脂の形態としては、溶液形、分散形、あるいはこれらの混合形が使用可能である。
【0014】
このような本発明の(A)成分は、重量平均分子量が5000〜200000のものが使用できる。重量平均分子量が5000より小さい場合は、塗料として適度な粘性が得られず、各塗膜物性に劣り、逆に200000より大きい場合は、塗膜の鮮映性や光沢の低下が見られるので好ましくない。
【0015】
(A)成分のガラス転移点は−10℃〜150℃、さらには10℃〜100℃であることが好ましい。−10℃より低い時は汚染除去性、汚染回復性が劣り、150℃より高い時は可撓性、耐久性が劣ることになる。
【0016】
本発明では、架橋反応によって耐久性を向上できる点等から、官能基として水酸基を含有する化合物、即ちポリオール化合物が好ましく使用される。
【0017】
(ポリオール化合物)
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、フッ素含有アクリルポリオール、シリコーン含有アクリルポリオール等があげられる。以下に各ポリオールを例示する。
【0018】
(1)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールの1種又は2種以上にプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等の1種又は2種以上を付加して得られるポリオール類、および、前記多価アルコールにテトラヒドロフランを開環重合により付加して得られるポリオキシテトラメチレンポリオール類が例示できる。
【0019】
(2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールあるいはその他の低分子量多価アルコールの1種又は2種以上とグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸あるいはその他の低分子ジカルボン酸やオリゴマー酸の1種又は2種以上との縮合重合体、プロピオラクトン、カプロラクトン、バレロラクトン等開環エステル類の開環重合体等のポリオール類が例示できる。
【0020】
(3)アクリルポリオール
アクリルポリオールは、水酸基含有アクリル系単量体と、その他の重合性単量体を共重合することにより得られるものである。
水酸基含有アクリル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、グリセリン、トリメチロールプロパン等多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等があげられる。
【0021】
その他の重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体;アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル等があげられる。
【0022】
さらに、反応性シリル基含有ビニル系単量体を共重合することにより、アクリルポリオールをシリコン変性することも可能である。反応性シリル基含有ビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等があげられる。
【0023】
(4)フッ素含有ポリオール
フッ素含有ポリオールは、フルオロオレフィン単量体、フルオロアルキル基含有アクリル系単量体等のフッ素系単量体と、水酸基含有ビニル系単量体と、必要に応じて他の重合性単量体とを共重合することにより得られるものである。
フルオロオレフィン単量体としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等があげられる。フルオロアルキル基含有アクリル系単量体としては、パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート等があげられる。
【0024】
水酸基含有ビニル系単量体としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル等があげられる。
他の重合性単量体としては、上記アクリルポリオールで示した単量体等を適宜使用することができる。
【0025】
(5)シリコーン含有ポリオール
シリコーン含有ポリオールは、ポリオールにシリコーン成分を導入したものである。このようなシリコーン成分を導入する方法としては、特に限定されず各種の方法を採用することができるが、例えば、
1)重合性二重結合を有するシリコーン化合物を共重合する方法、
2)樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシリコーン化合物とを反応させる方法、
3)反応性シリル基含有ビニル系単量体を共重合した樹脂に、反応性シリル基含有化合物を反応させる方法、
4)樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するカップリング剤を反応させた後、反応性シリル基含有化合物を反応させる方法、
等があげられる。
【0026】
2)、4)における官能基の組み合わせとしては、水酸基とイソシアネート基、水酸基とカルボン酸無水物基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等があげられる。
【0027】
3)、4)における反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等が結合したものである。反応性シリル基含有化合物としては、反応性シリル基を一分子中に2個以上有するものが用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン類などがあげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、反応性シリル基を一分子中に1個有する化合物を併用することもできる。
【0028】
3)における反応性シリル基含有ビニル系単量体としては、アクリルポリオールを変性する際と同様の単量体をあげることができる。
【0029】
4)におけるカップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上のアルコキシシリル基とそのほかの置換基を有する化合物である。カップリング剤としては具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イソシアネート官能性シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどがあげられる。
【0030】
(6)その他のポリオール
その他、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステル−ポリエーテルポリオール、アクリロニトリルやスチレン等の重合体をビニル付加ないし分散せしめたポリマーポリオール、ウレア分散ポリオール、カーボネートポリオール等が本発明のポリオールとして使用することが可能である。
【0031】
本発明では、このようなポリオールの1種または2種以上を使用することができる。このうち、アクリルポリオール、シリコン変性アクリルポリオール、フッ素含有ポリオール、あるいはシリコーン含有ポリオールを使用した場合は、塗膜の耐候性を向上させることができ、好ましい。また、シリコン変性アクリルポリオール、シリコーン含有ポリオールを使用した場合は、多種の基材に対する密着性を向上できる点で好ましい。
【0032】
上記のようなポリオールを用いる場合、その水酸基価としては、15〜100KOHmg/gのものを使用することが望ましい。水酸基価が15KOHmg/gより小さい場合には、架橋密度が低いため、各種塗膜物性、耐汚染性が劣り、逆に、100KOHmg/gより大きい場合は、架橋密度が高くなり(B)テトラアルコキシシラン低縮合物の表面配向性が阻害されるため好ましくない。
【0033】
本発明においては、(A)成分としてアミノ基含有ポリオール化合物を用いることにより、形成された塗膜の層間密着性をさらに高めることができる。このような(A)成分のアミノ基は、第1級アミノ基含有単量体、第2級アミノ基含有単量体、第3級アミノ基含有単量体から選ばれる1種または2種以上を共重合することにより付与することができる。
【0034】
第1級アミノ基含有単量体としては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、p−アミノスチレン、アリルアミンなどがあげられる。
【0035】
第2級アミノ基含有単量体としては、例えば、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタアクリルアミドなどがあげられる。
【0036】
第3級アミノ基含有単量体としては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタアクリル酸のエステル;ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物;ジメチルアミノエチルスチレンなどのスチレン誘導体;2−ビニルピリジンなどのピリジル基含有ビニル化合物があげられる。
【0037】
アミノ基としては、特に窒素原子に3個の炭素が結合した第3級アミノ基を含有するものを最も好適に使用することができる。これは、第1級アミノ基、第2級アミノ基に存在するNH基が、イソシアネート化合物のNCO基と反応しやすく、ウレタン結合生成よりも速く反応して尿素結合を形成し、塗膜の性質に多少影響を及ぼすためである。ただし、たとえNH基が存在していたとしても、全体の含有量を適宜調整すれば、NHを有するアミノ基を使用しても実用上は問題ない。
【0038】
[(A’)イソシアネート化合物]
本発明では、イソシアネート化合物(以下、「(A’)成分」という)を配合して架橋硬化させて塗膜を形成する。
【0039】
(A’)成分としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等のイソシアネートモノマーをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化反応等により、誘導体化したもの、および、それらの混合物が使用可能である。特に、形成される塗膜の黄変を考慮すると、脂肪族系もしくは脂環族系のポリイソシアネート、又はこれらの混合物を使用することが望ましい。
【0040】
さらに、これらの(A’)成分は、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類などのブロック剤を用いたブロックイソシアネートの形態でも使用できる。
【0041】
これらの(A’)成分と(A)成分との混合は、NCO/OH比率で0.7〜2.0、好ましくは0.8〜1.5となるような比率で行う。このときNCO/OH比率が0.7より小さいと、塗膜の架橋率が低くなり、硬化性、耐久性が劣るほか、汚染物質が塗膜の密度の粗い分子内へ潜り込むため、塗膜の洗浄を行っても汚染物質が除去しにくく、汚染回復性に劣ることになる。逆に、2.0よりも大きいと、未反応のイソシアネートが残存し、初期の乾燥性を悪化させるため、タックと呼ばれる表面のべたつきが発生し、汚染物質が物理的に付着してしまうため、かえって初期汚染性に劣ることになる。
【0042】
[(B)テトラアルコキシシラン低縮合物]
本発明では、特定構造のテトラアルコキシシラン低縮合物(以下、「(B)成分」という)を配合する。
この(B)成分は、テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1〜3と炭素数4〜12のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数4〜12のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5〜50%の化合物である。
【0043】
(B)成分は、テトラアルコキシシランの低縮合物であるが、高縮合度(平均縮合度が20より大きいもの)、高分子量のものは、製造が難しく、粘度上昇等により取り扱いが不便であるため好ましくない。逆に、平均縮合度が3以下で、低分子量のものは、揮発性が高くなりやはり取り扱いが不便であるため好ましくない。
【0044】
また、(B)成分中のアルキル基が、炭素数1〜3と炭素数4〜12のものが混在していることにより、(A)成分との相溶性が飛躍的に向上し、表面配向性に優れ、塗膜物性の優れた塗膜が形成できるものである。
アルキル基の部分が炭素数が1〜3のアルキル基のみの場合、(A)成分との相溶性が悪く、表面配向性が悪いので好ましくない。また、炭素数が4〜12のアルキル基のみの場合は、耐汚染性が著しく悪くなり好ましくない。炭素数13以上のアルキル基が存在する場合も、耐汚染性が悪くなるので好ましくない。また、アルキル基の炭素数が大きくなればなるほど、加水分解反応は起こりにくくなる傾向にあるので、炭素数が大きいアルキル基ばかりが存在することは好ましくない。
(B)成分は、該低縮合物の全体のアルキル基のうち、約5〜50%が炭素数4〜12のアルキル基となるようにしたものが(A)成分との相溶性、塗膜の耐汚染性に優れるため好ましいものとなる。
【0045】
本発明の(B)成分は以下のような方法により製造することが可能であるが、これに限定されるものではない。
1)一般式
Si(OR)(OR)(OR)(OR
(式中、R〜Rは炭素数1〜3のアルキル基と炭素数4〜12のアルキル基が混在しているものとする)で表されるテトラアルコキシシランを平均縮合度4〜20、重量平均分子量が500〜3500となるように縮合させる。縮合方法は、公知の方法による。
【0046】
式中、R〜Rのアルキル基の部分が、炭素数1〜3のものと炭素数4〜12のものが混在していることにより、(A)成分との相溶性が飛躍的に向上し、表面配向性に優れ、塗膜物性の優れた塗膜が形成できるものである。
このようなテトラアルコキシシランを縮合して、低縮合物とした際に、全体のアルキル基のうち、約5〜50%が炭素数4〜12のアルキル基となるようにしたものが(A)成分との相溶性、塗膜の耐汚染性に優れるため好ましいものとなるが、炭素数4〜12のアルキル基が全体の約5〜50%となるようにするために、縮合の際に、他のアルキルシリケート(アルキル基の炭素数は1〜3であるもの)を混合して縮合するのは有効な手段である。
【0047】
具体例としては、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジブトキシジエトキシシラン等の低縮合物があげられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
2)(a)一般式
O(Si(ORO)
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基とし、nは4〜20の整数とする)で表されるアルキルシリケート低縮合物(以下、「(a)成分」という)を、
(b)一般式
OH
(式中、Rは炭素数4〜12のアルキル基とする)で表されるアルコール(以下、「(b)成分」という)を用いて、(a)成分のアルキル基部分の約5〜50%をエステル交換する。
【0049】
(a)成分としては、具体的にはテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケートなどの低縮合物があげられる。特に、テトラメチルシリケートやテトラエチルシリケートが一般的である。
平均縮合度は4〜20が好ましく、平均縮合度が大きくても小さくても、取り扱いが不便になるので好ましくない。
(b)成分としては、具体的にはn−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコールが例示できる。
【0050】
(a)成分を(b)成分によりエステル交換する際には、(a)成分の全てのアルキル基(R)を(b)成分のアルキル基(R)にエステル交換してしまうのではなく、(a)成分のアルキル基のうち全体の約5〜50%をエステル交換したものを使用する。
その交換比率は、(a)成分1モルに対して、(b)成分を1〜12モル用いて、エステル交換させるとよい。この交換比率は、(a)成分の平均縮合度によって適宜調整するが(a)成分のアルキル基のうち全体の約5〜50%をエステル交換することにより、(A)成分との相溶性や、塗膜の耐汚染性が優れたものとすることができる。このエステル交換率が低くなると、相溶性が悪くなり、表面配向性が十分でなくなる。また、エステル交換率が高くなると、加水分解反応を起こしにくくなり、塗膜が親水性になりにくく、耐汚染性が悪くなる傾向にある。
【0051】
このようにして製造した(B)成分は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、SiO換算で1.0〜50.0重量部、好適には2.0〜30.0重量部配合することができる。
これは、1.0重量部未満では塗膜の親水性が十分でないため耐汚染性に劣り、50.0重量部を越えると、硬化塗膜の外観が悪化したり、クラックが発生するといった問題が出てくるためである。
【0052】
ここでSiO換算とは、アルコキシシランやシリケートなどのSi−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケートは、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
(Rはアルキル基を示す。nは整数。)
という反応式で表されるが、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0053】
[(C)有機酸]
本発明組成物は、(C)有機酸(以下、「(C)成分」という)を必須成分として配合するものである。本発明組成物では、(A)有機系樹脂に対し、(B)成分及び(C)成分を特定量含有させることにより、凝集物等が発生せず、混合安定性が良好で、十分な可使時間を有し、優れた仕上り性(グロスエナメルにおいては高い光沢値)を確保できるとともに、層間密着性に優れ、塗膜の剥離、ふくれ及び割れを防止することができ、さらには、耐汚染性に優れた塗膜が得られるものである。その作用機構については明らかではないが、(A)、(B)、(C)各成分の極性の相違及び反応特性に起因しているものと推測される。
【0054】
(C)成分は、カルボキシル基を有する化合物であり、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、パラトルエンスルホン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸など、およびそれらの無水物があげられる。このなかでも、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マレイン酸、フタル酸が特に好適である。
【0055】
(C)成分の配合割合は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.3〜15重量部である。(C)成分をこのような範囲内で加えることにより、(B)成分との相乗効果が発揮され、上述のような混合安定性、仕上り性、層間密着性、及び耐汚染性に優れた塗料を得ることができる。
【0056】
[(D)アミン化合物]
本発明の塗料組成物は、(D)アミン化合物を添加することにより、形成された塗膜の層間密着性をさらに高めることができる。このようなアミン化合物としては、水溶性アミン類が好適で、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジアミルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピリジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、エチルフェニルエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の有機アミン類、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、n−トリメトキシシリルプロピル−エチレンジアミン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノシラン類が例示される。
【0057】
(D)アミン化合物の混合率は、(A)成分の固形分100重量部に対して、0.02〜5.0重量部であり、好適には0.05〜2.0重量部である。アミン化合物が0.02重量部より少なくなると効果が得られないので好ましくない。一方で5.0重量部より過剰に添加した場合は、塗膜の耐候性が低下し実用性に欠けるものになる。
【0058】
[(E)ポリアルキレンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化合物]
次に本発明では、(E)ポリアルキレンオキサイド鎖を含有するアルコキシシラン化合物(以下「(E)成分」という)をさらに加えることにより、塗膜表面をさらに初期より親水性にすることが可能になり、初期より優れた耐汚染性を得ることが可能である。
(E)成分は、アルキレンオキサイドの繰り返し単位と、少なくとも1個以上のアルコキシシリル基を有する化合物である。かかる(E)成分のポリアルキレンオキサイド繰り返し単位は、そのアルキレン部分の炭素数は2〜4であり、繰り返し単位の数は2〜40、好ましくは2〜20である。
【0059】
このような(E)成分は、そのポリアルキレンオキサイド鎖の両末端がアルコキシシリル基であってもよく、一端がアルコキシシリル基であって、他端がその他の官能基であってもよい。このような片末端に有することのできる官能基としては、例えば、ビニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基等が挙げられる。特にヒドロキシル基(水酸基)であるものの使用が好ましい。また、該官能基は、アルコキシシリル基との間にウレタン結合、尿素結合、シロキサン結合、アミド結合、エーテル結合等を介して結合されたものであっても良い。
【0060】
これらの(E)成分は、例えば、ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物と、アルコキシシリル基含有化合物(以下カップリング剤という。)を反応させて合成したものが使用できる。
【0061】
前記ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物は、重量平均分子量が150〜3500が好ましく、200〜1500がさらに好ましい。重量平均分子量が150未満の場合、最終的に得られる硬化塗膜の親水性に劣り、降雨による汚染物質の洗浄効果が得られず、重量平均分子量が3500を越える場合、硬化物の耐水性や硬度が低下する。
【0062】
このようなポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリエチレン−テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンジグリコール酸、ポリエチレングリコールビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテルなどが挙げられる。また、該ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物は、1種もしくは2種以上の組み合わせから選択することができる。2種以上のモノマーを使用する場合は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても構わない。
【0063】
一方、カップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上のアルコキシシリル基とそのほかの置換基を有する化合物である。カップリング剤としては具体的には、例えば、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0064】
(E)成分の合成は、特に限定されないが、ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物とカップリング剤とを別々に用意し、例えば重合性二重結合を有する各化合物についてはラジカル重合開始剤を用いて共重合させる他、アミノ基/エポキシ基、イソシアネート基/水酸基またはイソシアネート基/アミノ基等の付加反応など公知の方法によって合成することができる。また、第1級、第2級アミノ基等の活性水素基を有するアルコキシシリル化合物にエチレンオキサイドを開環付加せしめる方法によっても合成可能である。
【0065】
これら(E)成分の中で、アルキレンオキサイド鎖がエチレンオキサイド鎖であり片末端が水酸基であるものが、本発明の汚染防止効果、すなわち耐汚染性ならびに染み込み抵抗性等が高いため最も好ましい。
【0066】
(E)成分の配合割合は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し、固形分で0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部である。0.1重量部未満では効果が見られず、20重量部を越えると、樹脂との相溶性、硬化物の耐水性などが劣る結果となる。
【0067】
[溶剤]
本発明の塗料組成物は、溶剤として非水系溶剤を用いるものである。このような非水系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンのほか、テルピン油やミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどがあげられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
本発明組成物においては、特に、塗料中の溶剤のうち50重量%以上を脂肪族炭化水素とすることが好ましい。これは、リフティングと呼ばれる既存塗膜のちぢみ現象発生が発生せず、重ね塗り適性に優れるためである。さらに脂肪族炭化水素は、比較的低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さいという点においても好ましいものである。
【0069】
[その他]
本発明の塗料組成物では(A)、(B)成分および(C)成分(さらに、(D)成分、(E)成分を添加しても良い)による透明(クリヤー)塗膜の他、着色顔料を配合して、着色(エナメル)塗膜としてもよい、このような着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、クロム酸鉛(モリブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料が使用できる。
【0070】
また、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の体質顔料を使用することも可能である。特に、艶消し塗膜を形成する場合には、塗膜表面における耐汚染効果を損なうことの最も少ないホワイトカーボン、珪藻土を使用することが最適である。なお、これらの無機物質を塗料に添加する際に、粉体表面をカップリング剤で処理したり、塗料にカップリング剤を添加することは好ましい手段である。
【0071】
本発明の塗料組成物には、通常塗料に配合することが可能な各種添加剤を本発明の効果に影響しない程度に配合することが可能である。このような添加剤としては、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤等があげられる。
【0072】
[適用面・塗装方法]
本発明の塗料組成物は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に使用するものである。このとき、本発明の塗料組成物は最終の仕上面に施されているものであり、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(下地処理等)を施した上に塗装することも可能であるが特に限定されるものではない。
【0073】
また、本発明の塗料組成物は、各種添加剤類を加えて塗料化した後、通常、非水系溶剤で希釈して塗装を行う。塗装方法としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター等、種々の方法を用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0075】
(合成例1)アルコキシシラン化合物1合成例
重量平均分子量500、平均縮合度約4、不揮発分100%のメチルシリケート(以下、「メチルシリケートA」という)100重量部に対して、n−ブチルアルコール44.4重量部と、触媒としてジブチルスズジラウレート0.03重量部を添加し、混合後、75℃で8時間脱メタノール反応を行い、アルコキシシラン化合物1を合成した。
このアルコキシシラン化合物1のエステル交換率は約30%であり、900℃にて焼成して得られたシリカ残量比率40.7重量%であった。
【0076】
(合成例2)アルコキシシラン化合物2合成例
重量平均分子量1000、平均縮合度約8、不揮発分100%のメチルシリケート(以下、「メチルシリケートB」とい)100重量部に対して、n−ヘプチルアルコール58.0重量部、ジブチルスズジラウレート0.03重量部を混合し、合成例1と同様にしてアルコキシシラン化合物2を合成した。
このアルコキシシラン化合物2のエステル交換率は約27%であり、シリカ残量比率は39.4重量%であった。
【0077】
(合成例3)ポリアルキレンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化合物合成例
加熱装置、撹拌器、還流装置、脱水装置、温度計を備えた反応槽に、ポリエチレングリコール200(平均分子量200;和光純薬株式会社製)20重量部と、イソシアネート含有シランであるY−9030(日本ユニカー株式会社製)54.3重量部と、ジブチルスズジラウレート0.05重量部とを仕込み、50℃にて8時間反応させ、淡黄色のポリエチレンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化合物を得た。このポリエチレンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化合物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下GPCという)のポリスチレン換算により測定した結果800であった。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
(試験方法)
【0082】
1.相溶性
表1に示すような樹脂、表2に示すような原料を用いて、表3に示す配合中、顔料を除く各成分を配合して塗料を作製した。作製した塗料を十分に撹拌した後、150×50×3mmの透明なガラス板に乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装し、気温20℃、湿度65%(以下、「標準状態」という)で24時間乾燥養生した後、フィルムの透明性を目視にて評価した。評価は、以下の通り。
○:完全に透明な状態
△:わずかに白濁が見られる状態
×:白濁して不透明な状態
【0083】
2.可使時間
表1に示すような樹脂、表2に示すような原料を用いて、表3に示す配合にて塗料を作製した。作製した塗料を容器に入れ、ふたをして標準状態で静置し、4〜8時間後の状態を調べた。評価は、以下の通り。
○:粘度上昇がなく、凝集物発生もない状態。
×:粘度が上昇、あるいは凝集物が発生した状態。
【0084】
3.光沢
表3の配合にて作製した塗料を150×120×3mmの透明なガラス板にWET膜厚が150μmとなるようにアプリケーター引きし、標準状態で72時間乾燥養生した後、JIS K5400(1990)7.6に準じ、60度の角度での光沢度を測定した。
【0085】
4.層間密着性
300×150×3mmのスレート板に、SK#1000プライマー(エポキシ樹脂系プライマー;エスケー化研株式会社製)を乾燥塗膜厚みが30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で16時間乾燥した。次に、表3の配合にて作製した塗料を乾燥塗膜厚みが25μmとなるようにスプレーにて塗装した。その後標準状態にて1〜7日間養生・乾燥し、さらにその上に同じ塗料を乾燥塗膜厚みが25μmとなるように、即ち塗料の全塗膜厚みが50μmとなるようにスプレー塗装を行い、試験体とした。作製した試験体を標準状態で7日間養生し、付着性試験の碁盤目法(JIS K5400(1990)8.5.1)に準拠して付着性の評価を行った。評価は、以下の通り。
◎:欠損部なし
○:欠損部面積が5%以内
△:欠損部面積が5〜35%
×:欠損部面積が35%以上
【0086】
5.汚れの染み込み抵抗性
150×75×0.8mmのアルミ板に、SK#1000プライマーを乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で16時間乾燥を行った。次に、作製した塗料組成物を乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装し試験体を作製した。作製した試験体を、標準状態で24〜168時間乾燥養生した後、JIS K5400(1990)8.10耐汚染性試験に準じ、塗膜面に15重量%カーボンブラック水分散ペースト液を、直径20mm、高さ5mmとなるように滴下し、標準状態で12時間放置した。その後流水中にて洗浄し、塗膜表面の汚染の程度を目視により評価した。評価は以下の通り。
○:痕跡なし
△:痕跡有り
×:著しい痕跡有り
【0087】
【表4】

【0088】
(結果)
各試験の結果を表4に示す。本発明組成物である実施例1〜8では、いずれの試験においても優れた結果となった。一方、メチルシリケートを配合した比較例1〜3では、可使時間、層間密着性、汚れの染み込み抵抗性に劣る結果となった。
【0089】
6.リフティング試験
(塗料P)
実施例2の配合の白色塗料組成物に、さらにキシレン100重量部を加えて希釈し(外割30重量%にて希釈)、混合撹拌して、吹付用白色塗料Pを作製した。このとき、全溶剤中の脂肪族炭化水素の含有率は36重量%であった。
(塗料Q)
実施例2の配合の白色塗料組成物に、さらにLAWS(シェル石油株式会社製ミネラルスピリット)100重量部を加えて希釈し(外割30重量%で希釈)、混合撹拌して、吹付用白色塗料Qを作製した。このとき、全溶剤中の脂肪族炭化水素の含有率は65重量%であった。
【0090】
(試験方法)
200×300×4mmのスレート板に、ミラクシーラーES(一液エポキシ樹脂系シーラー;エスケー化研株式会社製)を塗付量0.1kg/mとなるようにスプレー塗装し、標準状態にて2時間乾燥した。次に、塗料P及びQをそれぞれ塗付量0.15kg/mとなるようにスプレー塗装し、標準状態にて72時間養生乾燥した後、さらに同一塗料をそれぞれ塗付量0.15kg/mとなるようにスプレー塗装して重ね塗りを行った。
【0091】
(結果)
このときの塗膜表面の状態を観察したところ、塗料Pを吹きつけたスレート板は、表面にちぢみが発生しており、リフティング現象が観察された。塗料Qを吹きつけたスレート板は、表面状態は良好であり、リフティング現象はみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオール化合物、
(A’)イソシアネート化合物、
(B)テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1〜3と炭素数4〜12のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数4〜12のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5〜50%である化合物、
(C)有機酸、
を含有し、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、(B)成分をSiO2 換算で1.0〜50.0重量部、(C)成分を0.1〜30重量部含有し、
(A’)成分と(A)成分との混合比率は、NCO/OH比率で0.7〜2.0であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
(A)成分の水酸基価が15〜100KOHmg/gであることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
塗料中の全溶剤のうち、50重量%以上が脂肪族炭化水素である請求項1または2に記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2007−284698(P2007−284698A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206279(P2007−206279)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【分割の表示】特願2000−50687(P2000−50687)の分割
【原出願日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】