塗膜および塗膜形成方法
【課題】 卓越した耐久性と防水性を有するシリコンシーリング材を塗布した面に耐汚染性や意匠性を付与するための塗装を可能として、良好な外観を要求される外壁や外装材等にも適用可能となる塗膜および塗膜形成方法を提供することである。
【解決手段】 １液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶを塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に速乾性の有機樹脂塗料を塗布して硬化し、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着した塗膜を形成する構成とした。
【解決手段】 １液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶを塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に速乾性の有機樹脂塗料を塗布して硬化し、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着した塗膜を形成する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建築分野等に適用される塗膜およびその形成方法に関し、特に、耐久性と防水性に優れ、さらに耐汚染性に優れた塗膜および塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、建築分野においては、外壁や外装材の外観に意匠を付与し、また保護するために塗装を行っている。また、壁材の変形やひび割れが生じても、その変位に容易に追従して簡単には破損されない弾性塗材を用いた塗装も行われている。
【０００３】
さらに、浴室やキッチン等の水まわりの防水充てん材（シーリング材）として、また建築分野においても防水性を付与するために、耐久性と防水性に卓越したシーリング材、特に１液室温湿気硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材であるシリコンシーラント（以後、１液ＲＴＶと称する）が多用されている。しかし、この１液ＲＴＶの塗布面には塗料が直接塗れないという問題があり、美的外観が求められる外装材には適用困難である。
【０００４】
上記の１液ＲＴＶを塗布した塗膜は弾力性を有していると共に、耐水性、耐熱性、耐久性に優れているが、汚染され易く、環境汚染を寄せ付けやすいという問題がある。また、前記弾性塗材が塗布された弾性塗膜も、一般に硬質タイプの塗膜に比べて表面の耐汚染性に劣っているという欠点がある。
【０００５】
そのために、伸び率が大きい第一の塗材を塗装した後で前記第一の塗材と結合容易な合成樹脂エマルジョンを主成分とする第二の塗材を塗装して、防水性、耐汚染性に優れ長期に亘り美観を保つことができる塗膜形成方法が既に出願されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００６】
しかし、耐久性と防水性に卓越した前記１液ＲＴＶを塗布した表面に、耐汚染性を付与するために別の塗材を塗装することは前述したとおり困難である。これは、硬化後の１液ＲＴＶの表面が極端な非粘着性を示すからである。そのために、一旦硬化した後の１液ＲＴＶ塗布面に新たな塗装を行うことは困難であり、硬化後の１液ＲＴＶ塗布面に良好な接着性を有する新たな塗料を見出す努力に拘らずに、未だにそのような塗料は見つかっていない。
【０００７】
しかし、硬化前の１液ＲＴＶはガラスや金属を含む広範な材質への強い接着性を示すことが知られている。本発明者は「硬化してからは何も接着しないが、硬化する前は何にでも接着する」という特異な性質に注目して、硬化前の１液ＲＴＶ塗布面に速乾性の塗料を塗装すると、完璧な接着性を有する塗膜が形成されることを見出した。
【特許文献１】特開２００２−１０２７９７号公報（第１−１０頁）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明の目的は、卓越した耐久性と防水性を有するシリコンシーリング材を塗布した面に耐汚染性や意匠性を付与するための塗装を可能として、良好な外観を要求される外壁や外装材等にも適用可能となる塗膜および塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記の目的を達成するために請求項１に係る発明は、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材の塗布面に有機樹脂塗料を密着塗装して造膜硬化した塗膜であることを特徴としている。
【００１０】
上記の構成を有する請求項１に係る発明によれば、耐水性、耐熱性、耐久性に優れたシリコンシーリング材の上に耐汚染性と種々の色合いを備える塗料を造膜した塗膜を得ることができる。
【００１１】
請求項２に係る発明は、前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴としている。
【００１２】
上記の構成を有する請求項２に係る発明によれば、塗膜が硬化性と耐久性を備え、さらに耐汚染性を発揮する程度の重量平均分子量を有する有機樹脂塗料を短時間で硬化させることができ、指触乾燥時間の短いシリコンシーリング材と同時に硬化して、完璧な接着性を有する塗膜を得ることができる。
【００１３】
請求項３に係る発明は、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材を塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に有機樹脂塗料を塗布して、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着した塗膜を形成する塗膜形成方法としたことを特徴としている。
【００１４】
上記の構成を有する請求項３に係る発明によれば、硬化前には強い接着性を有するシリコンシーリング材と有機樹脂塗料とを同時に硬化させて、両者が完璧に密着した塗膜を形成することができる。
【００１５】
請求項４に係る発明は、前記シーリング材の指触乾燥時間内に前記有機樹脂塗料を塗装することを特徴としている。
【００１６】
上記の構成を有する請求項４に係る発明によれば、シリコンシーリング材の組成成分に応じて予期される硬化時間内（指触乾燥時間内）に塗装を施すことで、硬化後では非粘着性を示すシリコンシーリング材に所定の耐汚染性と意匠性を備える塗料を造膜することができる。
【００１７】
請求項５に係る発明は、前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴としている。
【００１８】
上記の構成を有する請求項５に係る発明によれば、シリコンシーリング材の所定の指触乾燥時間内に硬化する速乾性の塗料を用いることで、シリコンシーリング材と有機樹脂塗料とが密着し、防水性、耐久性、耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる。
【００１９】
請求項６に係る発明は、前記有機樹脂塗料をスプレー塗装機により塗装することを特徴としている。
【００２０】
上記の構成を有する請求項６に係る発明によれば、短時間に塗装することができ、短い時間の指触乾燥時間であっても、容易に所定の有機樹脂塗料を塗装することができる。
【発明の効果】
【００２１】
本発明によれば、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材を塗布し、その塗布面が硬化する前に有機樹脂塗料を塗装して同時に硬化して、両者が密着した塗膜を形成する塗膜形成方法としたので、前記シーリング材と前記有機樹脂塗料とが密着して硬化し、防水性、密着性、耐汚染性に優れ、さらに長期に亘って美観を保つことができる塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２２】
以下、本発明に係る塗膜および塗膜形成方法の実施の形態について、詳細に説明する。
【００２３】
シリコン系充てん材（シリコンシーリング材）は弾力性があり、さらに耐水性、耐熱性、耐久性に優れた高性能の充てん材である。また、硬化剤などの配合が不要で室温程度の温度で硬化する作業性のよい１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシリコンシーラント（１液ＲＴＶ）が、その卓越した耐久性と防水性により建築防水分野で多用されている。
【００２４】
しかし、一般に一旦硬化したシリコンシーリング材に塗装は不可であり、前記１液ＲＴＶにもその硬化した表面に新たな塗装を行うことは困難である。これは、硬化後の１液ＲＴＶが極端な非粘着性を示し、塗料はおろか粘着テープなども付着しないためである。また、前記シリコンシーリング材は環境汚染を受けやすく、表面が汚れやすいので、人目に触れる屋外に使用することは不向きである。
【００２５】
そのために、意匠性が要求される外壁や外装材に、前記１液ＲＴＶを塗布することは好ましくない。
【００２６】
しかし、前記１液ＲＴＶは卓越した耐久性と防水性を備えているだけでなく、弾力性も備えているので、温度により伸縮し、時にはひび割れも生じる外壁等に塗布し、その表面に耐汚染性を付与する新たな塗装ができれば好適である。
【００２７】
そこで、本発明者が１液ＲＴＶ塗布面に塗装可能な塗料や塗装方法について適宜研究を重ねたところ、「硬化してからは何も接着しないが、硬化する前は何にでも接着する」という１液ＲＴＶの特異な性質に注目して、硬化前の１液ＲＴＶ塗布面に速乾性の塗料を塗装すると、使用する塗料の組成成分に拘らずに完璧な接着性を有する塗膜が形成されることを見出した。
【００２８】
つまり、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶを塗布した表面が硬化する前であれば、その塗布面に新たな塗料を塗装して造膜することが可能であることを見出した。また、１液ＲＴＶが硬化する前に新たな塗料を塗装して同時に硬化させるので、使用する塗料は、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性の塗料が好ましい。そのために、本実施の形態においては新たな塗料として室温でも速乾性を発揮し、密着性と耐汚染性を発揮する塗膜を形成する重量平均分子量２００００以上の有機樹脂を主たる成分とする有機樹脂塗料を用いることとした。
【００２９】
重量平均分子量が小さくなると塗膜の靭性が下がり、クラックが発生しやすくなる。また、塗膜が耐汚染性を発揮するには所定量以上の重量平均分子量が必要となる。
【００３０】
そのために、重量平均分子量２００００以上の有機樹脂を主たる成分とする有機樹脂塗料を用いる本実施の形態により得られる塗膜は、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着して硬化した耐汚染性を備える塗膜となる。つまり、この塗膜は、内層側の１液ＲＴＶが有する、卓越した耐久性と防水性と、外層側の有機樹脂塗料が有する耐汚染性とを備える構成の塗膜となっており、建築物の外壁や外装材にも適用可能となる。
【００３１】
前記塗膜を形成する際には、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶを塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に有機樹脂塗料を塗布して硬化させるようにしている。硬化が終了する前とは前記１液ＲＴＶが硬化する指触乾燥時間内にということであり、塗料の成分組成によって予め定められている前記指触乾燥時間内に塗装を行うことが肝要である。
【００３２】
そのためには、塗装を短時間で行う必要があり、さらに、１液ＲＴＶが硬化していない柔らかい状態の塗布面に塗装を行うので、スプレー塗装することが好ましい。また、前述したように、速乾性で所定量異常の重量平均分子量を有する有機樹脂塗料を用いることが好ましい。
【００３３】
本実施の形態においては、密着性と耐汚染性を発揮する塗膜を形成するために、前記シーリング材である１液ＲＴＶの指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性を有する有機樹脂塗料をスプレー塗装機により塗装する塗膜形成方法とした。
【００３４】
次に塗膜の具体的な実施例と比較例について説明する。
【００３５】
実施例Ａ：１液ＲＴＶとしてシーラント４５（信越化学工業（株）製）、速乾性塗料としてレタンＰＧ白ベース（関西ペイント（株）製）を用いて、前記シーラントを塗布してから２分以内に速乾性塗料のスプレー塗装を行った。
【００３６】
比較例１：１液ＲＴＶとしてシーラント４５（信越化学工業（株）製）、速乾性塗料としてレタンＰＧ白ベース（関西ペイント（株）製）を用いて、前記シーラントを塗布して十分硬化した後で（２４時間後）速乾性塗料の塗装を行った。
【００３７】
比較例２：１液ＲＴＶとしてシーラント４５（信越化学工業（株）製）を用いた。その上に塗装は行わなかった。
【００３８】
上記の実施例Ａと比較例１と比較例２とを用いて、シーラントと塗膜の接着性、汚染防止効果、耐水性の比較テストを行った結果を表１に示す。尚、汚染防止効果のテストは屋外にて自然光に暴露して行った。また、耐水性のテストは沸騰水中に漬けて塗膜の剥離状態を確認する沸騰水浸漬テストで行った。
【００３９】
【表１】
表１から明らかなように、本発明に係わる実施例Ａは、シーラントと該シーラントの上に塗装する塗膜との接着性に優れ、汚染防止効果と耐水性を備えている。つまり、この実施例Ａは、内層側の１液ＲＴＶが有する、卓越した耐久性と防水性と、外層側の有機樹脂塗料が有する耐汚染性をも備える構成の塗膜を形成していることが明らかである。
【００４０】
比較例１は、同じシーラントと塗料を用いているが、シーラントが硬化した後でその上に塗料を塗布したので、シーラントと塗膜との接着性が悪く、剥離容易であり、汚染防止効果は得られない。
【００４１】
比較例２は、シーラントのみの塗膜であり、従来のシリコン充てん材と同様に環境汚染を受けやすく、汚染防止効果を備えていない。
【００４２】
この実験から判るように、本発明による塗膜形成方法により、従来困難であった、１液ＲＴＶの塗布面に新たな塗装を行い、耐汚染性を備える塗膜を形成することができた。
【００４３】
また、１液ＲＴＶの塗布面に塗装する塗料は、特に組成成分を特定する必要もなく、一般的な塗料をそのまま塗装することができる。ただし、塗装を素早く行う必要があるために、スプレー塗装することが望ましい。
【００４４】
本発明に係わる塗膜形成方法により得られる塗膜は、卓越した耐久性と防水性を備えている１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶの塗布面上に、耐汚染性を備えると共に所望の色合いの塗料を密着塗装して造膜しているので、防水性、密着性、耐汚染性に優れ、さらに長期に亘って美観を保つことができる塗膜となる。
【００４５】
つまり、１液ＲＴＶの塗布面が硬化する前に速乾性の有機樹脂塗料をスプレー塗装するだけの簡単な施工方法である本発明に係る塗膜形成方法により、防水性、密着性、耐汚染性に優れ、さらに長期に亘って美観を保つことができる塗膜を容易に得ることができる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建築分野等に適用される塗膜およびその形成方法に関し、特に、耐久性と防水性に優れ、さらに耐汚染性に優れた塗膜および塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、建築分野においては、外壁や外装材の外観に意匠を付与し、また保護するために塗装を行っている。また、壁材の変形やひび割れが生じても、その変位に容易に追従して簡単には破損されない弾性塗材を用いた塗装も行われている。
【０００３】
さらに、浴室やキッチン等の水まわりの防水充てん材（シーリング材）として、また建築分野においても防水性を付与するために、耐久性と防水性に卓越したシーリング材、特に１液室温湿気硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材であるシリコンシーラント（以後、１液ＲＴＶと称する）が多用されている。しかし、この１液ＲＴＶの塗布面には塗料が直接塗れないという問題があり、美的外観が求められる外装材には適用困難である。
【０００４】
上記の１液ＲＴＶを塗布した塗膜は弾力性を有していると共に、耐水性、耐熱性、耐久性に優れているが、汚染され易く、環境汚染を寄せ付けやすいという問題がある。また、前記弾性塗材が塗布された弾性塗膜も、一般に硬質タイプの塗膜に比べて表面の耐汚染性に劣っているという欠点がある。
【０００５】
そのために、伸び率が大きい第一の塗材を塗装した後で前記第一の塗材と結合容易な合成樹脂エマルジョンを主成分とする第二の塗材を塗装して、防水性、耐汚染性に優れ長期に亘り美観を保つことができる塗膜形成方法が既に出願されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００６】
しかし、耐久性と防水性に卓越した前記１液ＲＴＶを塗布した表面に、耐汚染性を付与するために別の塗材を塗装することは前述したとおり困難である。これは、硬化後の１液ＲＴＶの表面が極端な非粘着性を示すからである。そのために、一旦硬化した後の１液ＲＴＶ塗布面に新たな塗装を行うことは困難であり、硬化後の１液ＲＴＶ塗布面に良好な接着性を有する新たな塗料を見出す努力に拘らずに、未だにそのような塗料は見つかっていない。
【０００７】
しかし、硬化前の１液ＲＴＶはガラスや金属を含む広範な材質への強い接着性を示すことが知られている。本発明者は「硬化してからは何も接着しないが、硬化する前は何にでも接着する」という特異な性質に注目して、硬化前の１液ＲＴＶ塗布面に速乾性の塗料を塗装すると、完璧な接着性を有する塗膜が形成されることを見出した。
【特許文献１】特開２００２−１０２７９７号公報（第１−１０頁）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明の目的は、卓越した耐久性と防水性を有するシリコンシーリング材を塗布した面に耐汚染性や意匠性を付与するための塗装を可能として、良好な外観を要求される外壁や外装材等にも適用可能となる塗膜および塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記の目的を達成するために請求項１に係る発明は、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材の塗布面に有機樹脂塗料を密着塗装して造膜硬化した塗膜であることを特徴としている。
【００１０】
上記の構成を有する請求項１に係る発明によれば、耐水性、耐熱性、耐久性に優れたシリコンシーリング材の上に耐汚染性と種々の色合いを備える塗料を造膜した塗膜を得ることができる。
【００１１】
請求項２に係る発明は、前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴としている。
【００１２】
上記の構成を有する請求項２に係る発明によれば、塗膜が硬化性と耐久性を備え、さらに耐汚染性を発揮する程度の重量平均分子量を有する有機樹脂塗料を短時間で硬化させることができ、指触乾燥時間の短いシリコンシーリング材と同時に硬化して、完璧な接着性を有する塗膜を得ることができる。
【００１３】
請求項３に係る発明は、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材を塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に有機樹脂塗料を塗布して、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着した塗膜を形成する塗膜形成方法としたことを特徴としている。
【００１４】
上記の構成を有する請求項３に係る発明によれば、硬化前には強い接着性を有するシリコンシーリング材と有機樹脂塗料とを同時に硬化させて、両者が完璧に密着した塗膜を形成することができる。
【００１５】
請求項４に係る発明は、前記シーリング材の指触乾燥時間内に前記有機樹脂塗料を塗装することを特徴としている。
【００１６】
上記の構成を有する請求項４に係る発明によれば、シリコンシーリング材の組成成分に応じて予期される硬化時間内（指触乾燥時間内）に塗装を施すことで、硬化後では非粘着性を示すシリコンシーリング材に所定の耐汚染性と意匠性を備える塗料を造膜することができる。
【００１７】
請求項５に係る発明は、前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴としている。
【００１８】
上記の構成を有する請求項５に係る発明によれば、シリコンシーリング材の所定の指触乾燥時間内に硬化する速乾性の塗料を用いることで、シリコンシーリング材と有機樹脂塗料とが密着し、防水性、耐久性、耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる。
【００１９】
請求項６に係る発明は、前記有機樹脂塗料をスプレー塗装機により塗装することを特徴としている。
【００２０】
上記の構成を有する請求項６に係る発明によれば、短時間に塗装することができ、短い時間の指触乾燥時間であっても、容易に所定の有機樹脂塗料を塗装することができる。
【発明の効果】
【００２１】
本発明によれば、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材を塗布し、その塗布面が硬化する前に有機樹脂塗料を塗装して同時に硬化して、両者が密着した塗膜を形成する塗膜形成方法としたので、前記シーリング材と前記有機樹脂塗料とが密着して硬化し、防水性、密着性、耐汚染性に優れ、さらに長期に亘って美観を保つことができる塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２２】
以下、本発明に係る塗膜および塗膜形成方法の実施の形態について、詳細に説明する。
【００２３】
シリコン系充てん材（シリコンシーリング材）は弾力性があり、さらに耐水性、耐熱性、耐久性に優れた高性能の充てん材である。また、硬化剤などの配合が不要で室温程度の温度で硬化する作業性のよい１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシリコンシーラント（１液ＲＴＶ）が、その卓越した耐久性と防水性により建築防水分野で多用されている。
【００２４】
しかし、一般に一旦硬化したシリコンシーリング材に塗装は不可であり、前記１液ＲＴＶにもその硬化した表面に新たな塗装を行うことは困難である。これは、硬化後の１液ＲＴＶが極端な非粘着性を示し、塗料はおろか粘着テープなども付着しないためである。また、前記シリコンシーリング材は環境汚染を受けやすく、表面が汚れやすいので、人目に触れる屋外に使用することは不向きである。
【００２５】
そのために、意匠性が要求される外壁や外装材に、前記１液ＲＴＶを塗布することは好ましくない。
【００２６】
しかし、前記１液ＲＴＶは卓越した耐久性と防水性を備えているだけでなく、弾力性も備えているので、温度により伸縮し、時にはひび割れも生じる外壁等に塗布し、その表面に耐汚染性を付与する新たな塗装ができれば好適である。
【００２７】
そこで、本発明者が１液ＲＴＶ塗布面に塗装可能な塗料や塗装方法について適宜研究を重ねたところ、「硬化してからは何も接着しないが、硬化する前は何にでも接着する」という１液ＲＴＶの特異な性質に注目して、硬化前の１液ＲＴＶ塗布面に速乾性の塗料を塗装すると、使用する塗料の組成成分に拘らずに完璧な接着性を有する塗膜が形成されることを見出した。
【００２８】
つまり、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶを塗布した表面が硬化する前であれば、その塗布面に新たな塗料を塗装して造膜することが可能であることを見出した。また、１液ＲＴＶが硬化する前に新たな塗料を塗装して同時に硬化させるので、使用する塗料は、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性の塗料が好ましい。そのために、本実施の形態においては新たな塗料として室温でも速乾性を発揮し、密着性と耐汚染性を発揮する塗膜を形成する重量平均分子量２００００以上の有機樹脂を主たる成分とする有機樹脂塗料を用いることとした。
【００２９】
重量平均分子量が小さくなると塗膜の靭性が下がり、クラックが発生しやすくなる。また、塗膜が耐汚染性を発揮するには所定量以上の重量平均分子量が必要となる。
【００３０】
そのために、重量平均分子量２００００以上の有機樹脂を主たる成分とする有機樹脂塗料を用いる本実施の形態により得られる塗膜は、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着して硬化した耐汚染性を備える塗膜となる。つまり、この塗膜は、内層側の１液ＲＴＶが有する、卓越した耐久性と防水性と、外層側の有機樹脂塗料が有する耐汚染性とを備える構成の塗膜となっており、建築物の外壁や外装材にも適用可能となる。
【００３１】
前記塗膜を形成する際には、１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶを塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に有機樹脂塗料を塗布して硬化させるようにしている。硬化が終了する前とは前記１液ＲＴＶが硬化する指触乾燥時間内にということであり、塗料の成分組成によって予め定められている前記指触乾燥時間内に塗装を行うことが肝要である。
【００３２】
そのためには、塗装を短時間で行う必要があり、さらに、１液ＲＴＶが硬化していない柔らかい状態の塗布面に塗装を行うので、スプレー塗装することが好ましい。また、前述したように、速乾性で所定量異常の重量平均分子量を有する有機樹脂塗料を用いることが好ましい。
【００３３】
本実施の形態においては、密着性と耐汚染性を発揮する塗膜を形成するために、前記シーリング材である１液ＲＴＶの指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性を有する有機樹脂塗料をスプレー塗装機により塗装する塗膜形成方法とした。
【００３４】
次に塗膜の具体的な実施例と比較例について説明する。
【００３５】
実施例Ａ：１液ＲＴＶとしてシーラント４５（信越化学工業（株）製）、速乾性塗料としてレタンＰＧ白ベース（関西ペイント（株）製）を用いて、前記シーラントを塗布してから２分以内に速乾性塗料のスプレー塗装を行った。
【００３６】
比較例１：１液ＲＴＶとしてシーラント４５（信越化学工業（株）製）、速乾性塗料としてレタンＰＧ白ベース（関西ペイント（株）製）を用いて、前記シーラントを塗布して十分硬化した後で（２４時間後）速乾性塗料の塗装を行った。
【００３７】
比較例２：１液ＲＴＶとしてシーラント４５（信越化学工業（株）製）を用いた。その上に塗装は行わなかった。
【００３８】
上記の実施例Ａと比較例１と比較例２とを用いて、シーラントと塗膜の接着性、汚染防止効果、耐水性の比較テストを行った結果を表１に示す。尚、汚染防止効果のテストは屋外にて自然光に暴露して行った。また、耐水性のテストは沸騰水中に漬けて塗膜の剥離状態を確認する沸騰水浸漬テストで行った。
【００３９】
【表１】
表１から明らかなように、本発明に係わる実施例Ａは、シーラントと該シーラントの上に塗装する塗膜との接着性に優れ、汚染防止効果と耐水性を備えている。つまり、この実施例Ａは、内層側の１液ＲＴＶが有する、卓越した耐久性と防水性と、外層側の有機樹脂塗料が有する耐汚染性をも備える構成の塗膜を形成していることが明らかである。
【００４０】
比較例１は、同じシーラントと塗料を用いているが、シーラントが硬化した後でその上に塗料を塗布したので、シーラントと塗膜との接着性が悪く、剥離容易であり、汚染防止効果は得られない。
【００４１】
比較例２は、シーラントのみの塗膜であり、従来のシリコン充てん材と同様に環境汚染を受けやすく、汚染防止効果を備えていない。
【００４２】
この実験から判るように、本発明による塗膜形成方法により、従来困難であった、１液ＲＴＶの塗布面に新たな塗装を行い、耐汚染性を備える塗膜を形成することができた。
【００４３】
また、１液ＲＴＶの塗布面に塗装する塗料は、特に組成成分を特定する必要もなく、一般的な塗料をそのまま塗装することができる。ただし、塗装を素早く行う必要があるために、スプレー塗装することが望ましい。
【００４４】
本発明に係わる塗膜形成方法により得られる塗膜は、卓越した耐久性と防水性を備えている１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材である１液ＲＴＶの塗布面上に、耐汚染性を備えると共に所望の色合いの塗料を密着塗装して造膜しているので、防水性、密着性、耐汚染性に優れ、さらに長期に亘って美観を保つことができる塗膜となる。
【００４５】
つまり、１液ＲＴＶの塗布面が硬化する前に速乾性の有機樹脂塗料をスプレー塗装するだけの簡単な施工方法である本発明に係る塗膜形成方法により、防水性、密着性、耐汚染性に優れ、さらに長期に亘って美観を保つことができる塗膜を容易に得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材の塗布面に有機樹脂塗料を密着塗装して造膜硬化したことを特徴とする塗膜。
【請求項２】
前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴とする請求項１に記載の塗膜。
【請求項３】
１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材を塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に有機樹脂塗料を塗布して、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着した塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項４】
前記シーリング材の指触乾燥時間内に前記有機樹脂塗料を塗装することを特徴とする請求項３に記載の塗膜形成方法。
【請求項５】
前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴とする請求項３または４に記載の塗膜形成方法。
【請求項６】
前記有機樹脂塗料をスプレー塗装機により塗装することを特徴とする請求項３から５のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項１】
１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材の塗布面に有機樹脂塗料を密着塗装して造膜硬化したことを特徴とする塗膜。
【請求項２】
前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴とする請求項１に記載の塗膜。
【請求項３】
１液室温硬化性有機シリコン樹脂を主たる成分とするシーリング材を塗布し、その硬化が終了する前にその塗布面上に有機樹脂塗料を塗布して、前記１液ＲＴＶと前記有機樹脂塗料とが密着した塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項４】
前記シーリング材の指触乾燥時間内に前記有機樹脂塗料を塗装することを特徴とする請求項３に記載の塗膜形成方法。
【請求項５】
前記有機樹脂塗料が、前記シーリング材の指触乾燥時間内に乾燥する程度の速乾性塗料であることを特徴とする請求項３または４に記載の塗膜形成方法。
【請求項６】
前記有機樹脂塗料をスプレー塗装機により塗装することを特徴とする請求項３から５のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【公開番号】特開２００６−３２６５４６（Ｐ２００６−３２６５４６Ａ）
【公開日】平成１８年１２月７日（２００６．１２．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−１５６９７８（Ｐ２００５−１５６９７８）
【出願日】平成１７年５月３０日（２００５．５．３０）
【出願人】（５９１１６４７９４）株式会社ピアレックス・テクノロジーズ (25)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１２月７日（２００６．１２．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年５月３０日（２００５．５．３０）
【出願人】（５９１１６４７９４）株式会社ピアレックス・テクノロジーズ (25)
【Ｆターム（参考）】
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