説明

塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法

【課題】保護不要箇所を露出させつつ、塗膜保護用粘着フィルムを塗装物表面に容易に貼付でき、かつ塗膜表面の損傷が生じ難い塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法を提供する。
【解決手段】保護不要箇所としての突起部2が表面に存在する塗装物表面に、塗膜保護用粘着フィルムを貼付するにあたり、保護不要箇所2を露出させる開口部3aを有するシート状物3を塗膜表面に該保護不要箇所2を露出させるように配置し、塗膜保護用粘着フィルム4をシート状物3が設けられている部分を含む領域を覆うように貼付し、塗膜保護用粘着フィルム4の上記保護不要箇所2上に位置している部分を上記シート状物3の開口部3aよりも大きめに切除し、しかる後、塗膜保護用粘着フィルム4が切除されている部分からシート状物3を除去する、各工程を備える、塗膜保護用粘着フィルム4の貼付方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などの塗装物の塗膜を保護するための塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法に関し、より詳細には、例えば自動車のウォッシャーノズルなどの突起部のような、塗装物表面において保護用粘着フィルムの保護が必要でない部分を有する塗装物に塗膜保護用粘着フィルムを貼付する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの塗装物は、利用者の手に渡るまで搬送されたり、また屋内もしくは屋外で一時的に保管されたりする。この場合、砂塵、鉄粉、雨(酸性雨)、塩類、及び太陽光線などの影響により、塗装物表面に傷、シミ、変色または汚染などが生じることがある。そのため、塗装物表面に予め塗膜を保護するための保護用粘着フィルムを貼付し、塗装物表面を一時的に保護する方法が広く用いられている。
【0003】
例えば、自動車に上記保護用粘着フィルムを貼付するに際しては、ローラーまたはスキージなどを用いて、自動車の車体の外表面に保護用粘着フィルムを均一に押さえ付けて貼付される。さらに、保護用粘着フィルムによる被覆が不要な部分、例えば自動車のウォッシャーノズルなどの突起部については、上記保護用粘着フィルムを自動車の車体外表面に貼付した後、カッターナイフなどを用いて、被覆不要箇所において、保護用粘着フィルムの一部が切り取られていた。このカッターナイフで保護用粘着フィルムの一部を切り取ることにより、ウォッシャーノズルなどが露出される。
【0004】
しかしながら、カッターナイフにより保護用粘着フィルムを切り取る際に、カッターナイフにより誤って自動車の外表面の塗膜に傷が付くおそれがあった。このようなカッターナイフによる損傷を防止するために、下記の特許文献1には、保護不要箇所を露出させるための穴が形成された穴開き粘着フィルムと、保護用粘着フィルムとを用いた保護用粘着フィルム貼付方法が開示されている。ここでは、先ず、穴開き粘着フィルムの穴から保護不要箇所が露出するように、穴開き粘着フィルムが塗膜表面に貼付される。次に、上記穴開き粘着フィルムが貼付されている領域を含むように、自動車の塗膜表面の広い領域に保護用粘着フィルムが貼付される。しかる後、上記穴開き粘着フィルム上に保護用粘着フィルムが積層されている部分であって、かつ上記保護不要箇所を取り囲む部分をカッターナイフなどにより、切断する。それによって、保護不要箇所を覆っている保護用粘着フィルム部分が取り除かれる。この方法では、カッターナイフ等による切断は、上記穴開き粘着フィルム上に保護用粘着フィルムが積層される部分で行われるため、誤ってカッターナイフが保護用粘着フィルムを貫通し、下方に達したとしても、上記穴開き粘着フィルムの存在により塗膜表面に傷が付きにくい。
【特許文献1】特許第2508924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、上記穴開き粘着フィルムが、塗膜に貼り付けられたまま、自動車などの塗装物が輸送されたり、保管されることになる。従って、上記穴開き粘着フィルムは、保護用粘着フィルムと同等の塗膜保護性能を要求されることになる。よって、保護用粘着フィルムの他に、上記穴開き粘着フィルムが必要であるだけでなく、穴開き粘着フィルムとして、汎用の粘着フィルムに比べても高価な粘着フィルムを用いなければならない。そのため、コストが非常に高く付くという問題があった。
【0006】
また、保管状態から、需要者に塗装物が渡される前には、保護用粘着フィルムは、剥離・除去される必要がある。特許文献1に記載の貼付方法を用いた場合には、保護用粘着フィルムの除去に際し、上記穴開き粘着フィルムも剥離し、除去しなければならない。しかしながら、塗膜上に狭い領域にわたって密着し、残留している上記穴開き粘着フィルムを剥離するのは意外に困難であった。そのため、穴開き粘着フィルムと塗膜の境界部に作業者が爪を立ててつかみ代を形成しなければならないことがあり、それによって、塗膜に微小な擦り傷を付けるおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、保護不要箇所を露出させた状態で残りの領域を確実に保護することができ、貼付及び剥離作業が容易であり、塗膜表面を傷つけ難い、保護用粘着フィルムの貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、塗膜保護用粘着フィルムの貼付による保護を要しない保護不要箇所を有する塗装物の塗膜面に該塗膜保護用粘着フィルムを貼付する方法において、保護不要箇所を囲繞可能な開口部を有するシート状物を、該開口部が保護不要箇所を囲繞可能に位置するように塗装物の塗膜面に配置する工程、前記シート状物が設けられている部分を含む塗膜部分に塗膜保護用粘着フィルムを貼付する工程、保護不要箇所上に貼付された塗膜保護用粘着フィルムの一部の不要部分を、前記シート状物の前記開口部より大きめに切除する工程及び前記開口部を露出させるように不要部分が切除された塗膜保護用粘着フィルムの切除部分からシート状物を除去する工程を備える塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法である。
【0009】
本願の第2の発明は、塗膜保護用粘着フィルムの貼付による保護を要しない保護不要箇所を有する塗装物の塗膜面に該塗膜保護用粘着フィルムを貼付する方法において、保護不要箇所を露出可能とするスリット部を有するシート状物を、該スリット部から保護不要箇所が露出可能な位置となるように塗装物の塗膜面に配置する工程、前記シート状物が設けられている部分を含む塗膜部分に塗膜保護用粘着フィルムを貼付する工程、保護不要箇所上に貼付された塗膜保護用粘着フィルムの不要部分を、前記保護不要箇所より大きめに切除する工程及び塗膜保護用粘着フィルムの切除部分からシート状物を除去する工程を備える塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法である。
【0010】
第1,第2の発明(以下、本発明と総称する)の塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法では、上記開口部またはスリット部から保護不要箇所が露出されるようにして、上記シート状物が塗装物の塗膜上に配置される。しかる後、保護用粘着フィルムが上記シート状物が設けられている部分を含む塗膜部分に貼付され、次に、保護不要箇所において、塗膜粘着フィルムの不要部分が、該保護不要箇所よりも大きめに切除される。従って、上記保護不要箇所が確実に露出される。しかも、塗膜保護用粘着フィルムの切除部分から上記シート状物が除去されるので、塗膜保護用粘着フィルムにより塗装物を一時的に保護する前に、上記シート状物を取り除くことができる。
【0011】
本発明においては、好ましくは、シート状物の非塗膜接触面が離型処理されていることが望ましく、その場合にはシート状物を塗膜保護用粘着フィルムの切除部分から除去するに際し、シート状物の非塗膜接触面と塗膜保護用粘着フィルムの内面との接触抵抗が低いため、シート状物を容易に切除部から抜き出すことができる。
【0012】
また、本発明においては好ましくは、シート状物の非塗膜接触面は、粗面加工されている。この場合には、粗面加工により、シート状物の非塗膜接触面の保護用粘着フィルム内面に対する摩擦係数が小さくされ、それによってシート状物を塗膜保護用粘着フィルムの切除部分から容易に抜き出すことができる。
【0013】
本発明においては、好ましくは、シート状物の塗膜接触面に対するJIS K 7125に準拠した静止摩擦係数が0.3〜1の範囲とされる。該静止摩擦係数が1以下とされていることにより、シート状物は、塗膜保護用粘着フィルムの切除部分から容易に抜き出すことができる。なお、上記摩擦係数が0.3未満の場合には、塗膜表面にシート状物を配置した場合の位置ずれが生じ易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の発明に係る塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法では、シート状物が開口部を有するため、該開口部において、保護不要箇所を露出させるようにして塗装物の塗膜面にシート状物を配置することができる。そして、上記シート状物を配置した後に、シート状物を含む塗膜部分に塗膜保護用粘着フィルムを貼付した後に、塗膜保護用粘着フィルムの上記保護不要箇所を含む開口部より大きめに塗膜保護用粘着フィルムが接続された部分からシート状物を除去する。従って、シート状物を塗膜保護用粘着フィルムによる保護を開始する前に除去すればよいため、シート状物として、高価な保護性能を有する粘着フィルム等を用いる必要がない。また、シート状物は、粘着性を有しておらずともよい。従って、安価なフィルム等によりシート状物を形成することができ、しかもシート状物は、上記保護用粘着フィルムの切除部分から容易に抜き出し、除去することができる。また、上記塗膜保護用粘着フィルムの切除は、上記開口部よりも大きめに行われるので、例えばカッターナイフ等によって切除したとしても、カッターナイフ等の刃先が塗膜保護用粘着フィルムを貫通したとしても、上記シート状物の存在により、塗膜表面が傷つき難い。
【0015】
よって、第1の発明によれば、塗膜保護用粘着フィルムと、安価なシート状物とを用い、保護不要箇所を露出させつつ、塗膜保護用粘着フィルムによる保護を確実に行うこができ、しかも、塗膜保護用粘着フィルムの貼付に際しての作業を簡便にかつ容易に行うことができるとともに、貼付作業に際しての塗膜表面への損傷も生じ難い。
【0016】
第2の発明に係る塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法においても、スリット部から保護不要箇所が露出可能な位置となるように上記シート状物を塗膜表面に配置する。シート状物を塗膜保護用粘着フィルムによる保護を開始する前に除去すればよいため、シート状物として、高価な保護性能を有する粘着フィルム等を用いる必要がない。また、シート状物は、粘着性を有しておらずともよい。従って、安価なフィルム等によりシート状物を形成することができ、しかもシート状物は、上記保護用粘着フィルムの切除部分から容易に抜き出し、除去することができる。また、上記塗膜保護用粘着フィルムの切除は、上記スリット部よりも大きめに行われるので、例えばカッターナイフ等によって切除したとしても、カッターナイフ等の刃先が塗膜保護用粘着フィルムを貫通したとしても、上記シート状物の存在により、塗膜表面が傷つき難い。
【0017】
よって、第2の発明によれば、塗膜保護用粘着フィルムと、安価なシート状物とを用い、保護不要箇所を露出させつつ、塗膜保護用粘着フィルムによる保護を確実に行うことができ、しかも、塗膜保護用粘着フィルムの貼付に際しての作業を簡便にかつ容易に行うことができるとともに、貼付作業に際しての塗膜表面への損傷も生じ難い。
【0018】
しかも、第1,第2の発明に係る貼付方法では、予めシート状物が除去されているので、塗膜保護用粘着フィルムによる保護を終了した後に、塗膜保護用粘着フィルムを剥離する際にシート状物を剥離する作業を要しない。従って、塗膜保護用粘着フィルムの剥離・除去作業が複雑になることもない。加えて、上記シート状物を再利用することもでき、それによって、塗膜保護用粘着フィルム貼付に際してのコストをより一層低減することができるとともに、資源を節約することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
図1(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法を説明するための模式図部分切欠正面断面図である。
【0021】
本実施形態では、塗装物としての自動車の塗膜表面に保護不要箇所としてウィンドウウォッシャーノズルが設けられている部分での塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法を説明する。もっとも、本発明で貼付の対象となる塗装物は、自動車に限定されるものではなく、本発明の保護用粘着フィルムの貼付方法は、表面に塗膜を有し、かつ保護用粘着フィルムによる保護を要しない突起部が表面に存在する様々な塗装物の保護に一般的に用いることができる。
【0022】
図1(a)に示すように、自動車の車体1の外表面から外側に突出するように、断面構造を模式的に示すウィンドウウォッシャーノズル2が設けられている。このウィンドウウォッシャーノズル2は、塗膜保護用粘着フィルムによる一時的な保護を必要としない保護不要箇所である。これは、塗膜保護用粘着フィルムによる車体の保護は、車体の一時的な保護であり、保護中にも、ウィンドウウォッシャーノズル2を動作させる必要があることなどによる。
【0023】
従って、保護用粘着フィルムを車体1に貼付し、表面の塗膜を保護する際には、上記保護不要箇所において、塗膜保護用粘着フィルムを除去しなければならない。
【0024】
本実施形態では、上記車体1の外表面に、先ずシート状物3を配置する。
【0025】
図2(a)に斜視図で示すように、シート状物3は、開口部3aを有する。開口部3aは、保護不要箇所であるウィンドウウォッシャーノズル2を露出させるために設けられている。
【0026】
上記開口部3aの平面形状は、本実施形態では円形であるが、矩形等の他の形状であってもよく、露出される保護不要箇所を露出させ得る限り、適宜の形状とされ得る。また、開口部3aの開口面積は、保護不要箇所であるウィンドウウォッシャーノズル2の平面積よりも大きくされている。それによって、ウィンドウウォッシャーノズル2が、開口部3a内に配置されるように、シート状物3を車体1の塗膜表面に配置することができる。
【0027】
開口部3aは、保護不要箇所としてウィンドウウォッシャーノズル2の平面積よりも大きいことが望ましいが、開口部3aは、保護不要箇所の全体を完全に露出させる必要は必ずしもない。すなわち、本発明においては、シート状物3は、保護不要箇所の全体を完全に露出させる必要は必ずしもない。
【0028】
なお、本実施形態では、シート状物3に、開口部3aを設けることにより、保護不要箇所としてのウィンドウウォッシャーノズル2が露出されるが、図2(b)に示すスリット部3bを有するシート状物3を用いてもよい。ここでは、クロス状のスリット部3bが設けられており、それによって、シート状物3を図1(a)に示すように、車体1の外表面に配置した場合、上記スリット部3bにおいて、ウィンドウウォッシャーノズル2がシート状物3の一部を上方に押し上げる。そのため、スリット部3bにおいて、ウィンドウウォッシャーノズル2が上方に露出し、ウィンドウウォッシャーノズル2の側壁にシート状物3の一部が当接されるようにして、ウィンドウウォッシャーノズル2が露出される。
【0029】
なお、図2(b)では、スリット部がクロス状の形状を有していたが、一文字状、放射状等の適宜の形状を有するスリット部を設けてもよい。また、上記スリット部3bを設け、保護不要箇所を露出させる場合、保護不要箇所の全体が露出される必要は必ずしもない。
【0030】
上記シート状物3を構成する材料としては、柔軟性を有する適宜の材料を用いることができ、好ましくは、塗膜と接触された際に、摩擦により塗膜を損傷しない材料が望ましい。このような材料としては、例えば、合成樹脂、合成ゴム、天然ゴム、合成繊維、天然繊維などが挙げられ、また、繊維状物として紙や布等を例示することができる。中でも、熱可塑性樹脂フィルムや各種ゴムシート類などが、柔軟性を有し、塗膜表面に損傷を与え難いため好ましい。
【0031】
上記合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等が列挙されるが、これらも何ら制限なく使用可能である。但し、塗膜面に対する密着性を重視する場合は、比較的軟質の材料ないしは軟質のグレードを選定することが推奨される。
【0032】
これらの素材からなるシート状物の厚みに関して言えば、シート状物を保護不要個所に配置する際にハンドリング性に支障がない程度の腰を有することが望ましく、少なくとも30μm程度以上、好ましくは50μm程度以上に形成されることが推奨される。一方、厚みの上限についてはコスト、成形加工性、ハンドリング性、引き抜き除去性等を勘案して適宜の範囲に設計すればよく、例えば、2mm以下程度、好ましくは500μm以下程度、より好ましくは200μm以下程度が推奨される。但し、これらも必ずしも必要条件ではない。
【0033】
そして、シート状物の非塗膜接触面、即ち、塗膜保護用粘着フィルムの粘着面に対向する面には離型処理や粗面加工が施されていることが好ましい。これらの処理が併用されていればより好ましい。離型処理されたり粗面加工されたりすることにより、塗膜保護用粘着フィルムの粘着層との剥離性が確保でき、シート状物の除去作業が容易となる。
【0034】
離型処理としては、汎用のシリコーン離型剤や長鎖アルキルペンダント型有機離型剤による離型層の付与、プラズマ離型処理等適宜の手段が採用されればよい。また、粗面加工としては、エンボス金属ロールを利用した凹凸付与や砂粒子を含むゴムロールを利用した梨子地加工等が挙げられる。なお、粗面の程度としては、凸部の高さが3μm程度以上、好ましくは5μm程度以上、より好ましくは10μm程度以上とされる。
【0035】
一方、シート状物の塗膜接触面側の塗膜に対する静止摩擦係数(JIS K 7125準拠)については、何ら制限されるものではないが、0.3〜1の範囲に設計されると保護不要個所周辺に配置されたあとで不測に位置ずれが起こりにくく、塗膜保護用粘着フィルムの不要部切除後に引き抜き除去する際に支障が生じにくいものとなる効果を発揮する。
【0036】
次に、図1(a)に示すように、上記シート状物3が設けられている部分を含む領域に、塗膜保護用粘着フィルム4を貼付する。なお、塗膜保護用粘着フィルム4の貼付に際しては、背面側をスキージなどの治具を用いてしごき、車体1の外表面との間に空気等を残存させないようにし塗膜保護用粘着フィルム4を貼付する。
【0037】
塗膜保護用粘着フィルム4は、下面が粘着性を有する。この粘着性とは、車体1の塗膜に一時的に貼付され、最終的に塗膜表面から容易に剥離し得る程度の粘着性をいうものとする。このような粘着性を有する表面は、合成樹脂フィルム等からなる基材の下面に再剥離性粘着剤を塗工することにより、あるいは上記のような粘着剤を発現する合成樹脂フィルムにより塗膜保護用粘着フィルム4を構成することにより達成され得る。
【0038】
塗膜保護用粘着フィルム4の基材としては、特に限定されないが、従来より周知の塗膜保護用粘着フィルムの基材として用いられている、ポリオレフィン基材、ポリエステル基材などを用いることができる。塗膜保護用粘着フィルム4の厚みは、30〜100μm程度とすることが望ましい。この範囲の厚みとすることにより、後述する塗膜保護用粘着フィルム4の切除を容易に行うことができるとともに、シート状物3の後述の抜き出し・除去作業を容易に行うことができる。
【0039】
次に、図1(b)に示すように、上記シート状物3の開口部3aよりも大きめに、塗膜保護用粘着フィルム4を該開口部3aを囲む領域で切除する。この切除は、例えば、塗膜保護用粘着フィルム4のウィンドウウォッシャーノズル2上に位置している部分を指等でつまみ、カッターナイフ等により、塗膜保護用粘着フィルム4の一部を切断することにより行うことができる。この場合、切除部分が、開口部3aよりも大きめの部分であるため、カッターナイフが塗膜保護用粘着フィルム4を貫通したとしても、シート状物3が存在するため、車体1の外表面の塗膜に傷が付きにくい。
【0040】
上記塗膜保護用粘着フィルム4の一部を切除する方法の他の例としては、略V字状の開口部を有し、開口奥部にカッター刃が収納されてなるセーフティカッターを用いることが望ましい。この場合、塗膜保護用粘着フィルム4のウィンドウウォッシャーノズル2上に位置している部分を指で引っ張り、上記セーフティカッターの開口部内にすくい上げられた塗膜保護用粘着フィルム4を配置して切断すれば、塗膜を全く傷付けることなく、容易に塗膜保護用粘着フィルム4の一部を切断することができる。このようなセーフティカッターとしては、例えば、オルファ社製、商品名「マルカッター」やブロモビズジャパン社製、商品名「セーフティカッター」などを例示することができる。
【0041】
次に、図1(c)に示すように、上記塗膜保護用粘着フィルム4が切除された部分から下方のシート状物3を抜き出し、除去する。この作業は、シート状物3が開口部3aを有するので、開口部3aの周縁において、シート状物3を指でつまむことにより容易に行うことができる。また、シート状物3は、粘着性を有しないので、車体1の外表面の塗膜に密着もしくは粘着されていないので、図示の矢印方向にシート状物3を容易に抜き出すことができる。
【0042】
好ましくは、前述したように、シート状物3の非塗膜接触面に離型処理や粗面加工を施しておくことにより、又は/及び塗膜接触面に対する前記摩擦係数を上記特定の範囲としておくことにより、シート状物3をより速やかにかつ容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法の各工程を示す模式的部分正面断面図。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態で用いられるシート状物及び該シート状物の変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1…車体
2…ウィンドウウォッシャーノズル(保護不要箇所)
3…シート状物
3a…開口部
3b…スリット部
4…塗膜保護用粘着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜保護用粘着フィルムの貼付による保護を要しない保護不要箇所を有する塗装物の塗膜面に該塗膜保護用粘着フィルムを貼付する方法において、
保護不要箇所を囲繞可能な開口部を有するシート状物を、該開口部が保護不要箇所を囲繞可能に位置するように塗装物の塗膜面に配置する工程、
前記シート状物が設けられている部分を含む塗膜部分に塗膜保護用粘着フィルムを貼付する工程、
保護不要箇所上に貼付された塗膜保護用粘着フィルムの一部の不要部分を、前記シート状物の前記開口部より大きめに切除する工程及び
前記開口部を露出させるように不要部分が切除された塗膜保護用粘着フィルムの切除部分からシート状物を除去する工程を備える塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法。
【請求項2】
塗膜保護用粘着フィルムの貼付による保護を要しない保護不要箇所を有する塗装物の塗膜面に該塗膜保護用粘着フィルムを貼付する方法において、
保護不要箇所を露出可能とするスリット部を有するシート状物を、該スリット部から保護不要箇所が露出可能な位置となるように塗装物の塗膜面に配置する工程、
前記シート状物が設けられている部分を含む塗膜部分に塗膜保護用粘着フィルムを貼付する工程、
保護不要箇所上に貼付された塗膜保護用粘着フィルムの不要部分を、前記保護不要箇所より大きめに切除する工程及び
塗膜保護用粘着フィルムの切除部分からシート状物を除去する工程を備える塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法。
【請求項3】
シート状物の非塗膜接触面が離型処理されている請求項1または2に記載の塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法。
【請求項4】
シート状物の非塗膜接触面が粗面加工されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法。
【請求項5】
シート状物の塗膜接触面に対するJIS K 7125に準拠した静止摩擦係数が0.3〜1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着フィルムの貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−229452(P2008−229452A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70959(P2007−70959)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】