説明

塗膜形成方法及び塗膜の光沢調整方法

【課題】 光重合性組成物(艶消し粉体塗料など)を使用して得られる硬化塗膜の表面光沢(艶消しの程度)を簡単な操作で調整する。
【解決手段】 室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物(例えば、艶消し剤などの充填剤を含有する光重合性組成物)で形成された塗膜(例えば、溶融コーティングによって形成された未硬化塗膜)に所定の照射エネルギー(G1)の活性光線(紫外線など)を照射して部分的に硬化させる予備硬化工程、塗膜を加熱する加熱工程、及び塗膜に所定の照射エネルギー(G2)の活性光線(紫外線など)を照射して硬化させる硬化工程により、基材の表面に塗膜を形成する。G1により、硬化塗膜の表面光沢を調整する。G1を大きくする程、硬化塗膜の表面光沢が低くなる。例えば、G1/G2は1/99〜3/70の範囲内で調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性組成物を使用した塗膜形成方法及び塗膜の光沢調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材に対して、紫外線硬化型粉体塗料を塗布して形成された塗膜に、紫外線を照射して、硬化塗膜を形成する方法が知られている。
【0003】
例えば、特開平8−301957号公報(特許文献1)には、末端メタアクリル基含有結晶型ポリエステルを含有する放射線硬化性粉末組成物が開示されている。この文献には、摩擦電気式ガン又は静電気式ガンによる噴霧(静電塗装)によって、又は流動床(流動浸漬法)によって、物品に沈着させた放射線硬化性粉末組成物を、80〜150℃で加熱して溶融させた後、紫外線又は加速電子ビームを照射する被覆方法が記載されている。この文献には、物品に沈着させた紫外線硬化性粉末組成物を、強制循環式オーブン中で、又は赤外線灯を使用して、80〜150℃に加熱して溶融させ、展延させ、滑らかで、均一な連続コーティングを得ることが記載されている。
【0004】
また、特開2002−212506号公報(特許文献2)には、多孔性基材に塗布するための粉体塗料であって、ワックスを含有する紫外線硬化型粉体塗料が開示されている。この文献には、静電塗装により多孔性基材に付着させた粉体塗料を加熱して溶融させた後、紫外線を照射して硬化させること、ワックスによって、発泡跡の発生が抑制されることが記載されている。
【0005】
しかし、静電塗装の場合、基材への塗着効率が50〜70%程度であり、塗着しなかった塗料は回収又は廃棄される。回収された粉体塗料の粒度分布は、正常な塗料の粒度分布と異なるため、回収された粉体塗料を、再度、静電塗装に使用すると、塗膜外観などが損なわれるおそれがある。また、木質材などの電気絶縁性の基材に対しては、均一かつ厚膜の塗膜を形成できない。さらに、塗布量のコントロールが困難であり、外観の良好な塗膜を形成しにくい。さらに、基材が木質材などである場合には、高温加熱が困難である。また、いずれの場合も、粉体塗料が基材の裏面にまで回り込むため、基材の所定の面だけに塗布することが困難である。さらに、これらの方法では、いずれも、平滑な塗膜を形成するために、塗膜を加熱溶融させた後、塗膜に紫外線を照射して硬化させる。そのため、光沢の高い塗膜の形成には適している。しかし、艶消し剤を使用して光沢の低い塗膜を形成しようとしても、塗膜の光沢が高くなる。そのため、所望の光沢を有する塗膜を形成することが困難である。
【特許文献1】特開平8−301957号公報(請求項1、請求項18、段落番号[0045]、段落番号[0046])
【特許文献2】特開2002−212506号公報(請求項1、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、簡単な操作で硬化塗膜の光沢を調整できる塗膜形成方法及び硬化塗膜の光沢を調整する方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、充填剤を含む塗膜(例えば、艶消しされた塗膜)であっても、簡単な操作で硬化塗膜の光沢(艶消しの程度)を調整できる塗膜形成方法及び硬化塗膜の光沢を調整する方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、高い塗着効率で、均一かつ厚膜の塗膜を形成できる塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物で形成された塗膜に活性光線を照射して部分的に硬化(予備硬化)させた後に加熱し、さらに活性光線を照射して硬化させる方法において、予備硬化の程度(活性光線の照射エネルギー)を高くすると、硬化塗膜の光沢が低下することを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の塗膜形成方法では、室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物で形成された塗膜に活性光線(例えば、紫外線)を照射して部分的に硬化(予備硬化)させた後、塗膜を加熱し、さらに、加熱後の塗膜に活性光線(例えば、紫外線)を照射して硬化させる。光重合性組成物は、例えば、粘度が25℃で200Pa・s(=2000ポイズ)以上の光重合性組成物であってもよい。また、光重合性組成物の塗膜は、例えば、溶融コーティングによって形成してもよい。さらに、予備硬化させた塗膜は、加熱により平坦化してもよい。
【0011】
前記光重合性組成物は、充填剤を含有していてもよく、充填剤の使用量は、光重合性組成物を構成する光硬化性樹脂100重量部に対して、10〜300重量部であってもよい。また、充填剤が少なくとも艶消し剤で構成されていてもよく、艶消し剤の使用量は、光重合性組成物を構成する光硬化性樹脂100重量部に対して、30〜120重量部であってもよい。
【0012】
本発明では、前記光重合性組成物で形成された塗膜に対する活性光線の照射エネルギーG1と加熱後の塗膜に対する活性光線の照射エネルギーG2との合計量を100とするとき、G1/G2は、1/99〜30/70であってもよい。
【0013】
本発明には、前記光重合性組成物で形成された塗膜に活性光線を照射して部分的に硬化させる予備硬化工程、部分的に硬化させた塗膜を加熱する加熱工程、及び加熱後の塗膜に活性光線を照射して硬化させる硬化工程で構成され、予備硬化工程における活性光線の照射エネルギーにより、硬化塗膜の光沢を調整する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予備硬化工程と加熱工程と硬化工程とを経て、室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物で形成された塗膜を硬化させるので、硬化塗膜の光沢をで調整できる。すなわち、予備硬化の程度を高くすることにより、光沢の低い硬化塗膜を形成できる。硬化塗膜の光沢は、充填剤(特に艶消し剤)などによっても、調整できる。そのため、予備硬化の程度と、充填剤の含有量とを組み合わせることにより、硬化塗膜の光沢を広い範囲で調整できる。また、本発明によれば、室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物を溶融コーティングするので、高い塗着効率で、均一かつ厚膜の塗膜を形成できる。さらに、本発明によれば、予備硬化における活性光線の照射エネルギーの調整という簡単な操作で、硬化塗膜の表面光沢を調整でき、所望の表面光沢の硬化塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、光重合性組成物で形成された塗膜(未硬化塗膜)に活性光線を照射して部分的に硬化させる予備硬化工程、部分的に硬化した塗膜を加熱する加熱工程(例えば、加熱して塗膜表面を平坦化する加熱工程)、及び加熱後の塗膜に活性光線を照射して硬化させる硬化工程により、基材の表面に硬化塗膜を形成する。
【0016】
[光重合性組成物]
光重合性組成物は、室温(温度15〜25℃)で固体又は粘稠であり、粘稠な光重合性組成物の粘度は、例えば、25℃において、200Pa・s以上、通常、300Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以上、さらに好ましくは1000Pa・s以上であってもよい。光重合性組成物の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して測定することができるが、通常、25℃では測定不能である場合が多い。このような場合、B型粘度計による高温での測定値と温度との関係から外挿して求めてもよい。
【0017】
固体の又は粘稠な光重合性組成物は、塗膜を加熱することにより、平坦化してもよく、基材に塗布し、冷却しただけでは均一な塗膜を形成できないものであってもよい。
【0018】
光重合性組成物は、例えば、光硬化性樹脂と光重合開始剤とで構成してもよい。光硬化性樹脂としては、室温(温度15〜25℃)で固体であり、かつ光重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和結合基など)を有する樹脂であれば特に限定されず、光硬化性ポリエステル系樹脂、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、光硬化性シリコーン系樹脂などが例示される。これらの光硬化性樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0019】
光硬化性ポリエステル系樹脂は、官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基など)を有する飽和又は不飽和ポリエステル樹脂と、前記官能基に対する反応性基を有する重合性不飽和化合物(例えば、前記官能基に対する反応性基と(メタ)アクリロイル基とを有する重合性化合物)との反応により生成する重合性基含有ポリエステル系樹脂(例えば、(メタ)アクリロイル基含有ポリエステル系樹脂など)、光硬化性不飽和ポリエステル系樹脂(例えば、ジカルボン酸成分として、無水マレイン酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸成分を用いて得られたポリエステル系樹脂など)などが例示できる。光硬化性ポリエステル系樹脂としては、通常、(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル系樹脂が使用される。
【0020】
官能基を有するポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分を主成分(例えば、70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%程度)とするポリカルボン酸成分と、ジオール成分を主成分(例えば、70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%程度)とするポリオール成分とのエステル化反応による生成物であってもよい。
【0021】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC2-20脂肪族ジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのC8-16芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物)、脂環族ジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などのC8-12脂環族ジカルボン酸又はその無水物)などが例示できる。ジカルボン酸成分は、低級アルキルエステル(メチルエステルなどのC1-3アルキルエステル)などの反応性誘導体であってもよい。これらのジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
これらのジカルボン酸成分のうち、直鎖状C6-16脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖状C6-12脂肪族ジカルボン酸)、C8-12芳香族ジカルボン酸(特にベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸)、C8-12脂環族ジカルボン酸(特にC8-10脂環族ジカルボン酸)から選択された少なくとも一種のジカルボン酸が好ましい。
【0023】
ジカルボン酸成分は、分岐構造などを導入するため、必要によりポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸やピロメリット酸などのトリカルボン酸やテトラカルボン酸又はそれらの酸無水物)と併用してもよい。
【0024】
ジオール成分としては、例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールなどのC2-12アルキレングリコール)、(ポリ)オキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)オキシC2-4アルキレングリコール)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC6-10シクロアルカンジオール)、芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールAなどのビスフェノール類、ビスフェノールA−C2-4アルキレンオキシド付加体などのビスフェノール類とC2-4アルキレンオキシドとの付加体)などが例示できる。これらのジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジオール成分のうち、C2-8アルキレングリコール(エチレングリコールなど)及びC6-8シクロアルカンジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)から選択された少なくとも一種を用いる場合が多い。
【0025】
ジオール成分は、分岐構造などを導入するため、必要によりポリオール成分(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなど)と組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ポリエステル系樹脂の官能基(カルボキシル基、ヒドロキシル基)の濃度は、重合性不飽和化合物との反応により光重合性を付与可能な範囲であればよく、例えば、酸価又はヒドロキシル価(OH価)5〜200mgKOH/g、好ましくは10〜150mgKOH/g、さらに好ましくは20〜100mgKOH/g程度であってもよい。
【0027】
前記ポリエステル系樹脂の官能基に対する反応性基を有する重合性化合物(例えば、前記ポリエステル系樹脂の官能基に対する反応性基と(メタ)アクリロイル基とを有する重合性化合物)としては、例えば、カルボキシル基に対する反応性基を有する化合物[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど)などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど]、ヒドロキシル基に対する反応性基を有する化合物[例えば、ビニルフェニルイソシアネート、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート成分と、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物など)、不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、クロトン酸など)又はその反応性誘導体(無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドなど)など]などが例示できる。これらの重合性化合物は、ポリエステル系樹脂の官能基の種類に応じて、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
光硬化性ポリエステル系樹脂は、結晶性(半結晶性を含む)又は非結晶性であってもよい。結晶性ポリエステル系樹脂を得るためには、カルボキシル基が分子の対称軸上に置換したジカルボン酸及び/又はヒドロキシル基が分子の対称軸上に置換したジオールを用いるのが有利である。このような対称型(又は対称構造)ジカルボン酸としては、例えば、直鎖状C4-16脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖状C6-12脂肪族ジカルボン酸)及び対称型環状ジカルボン酸(テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸)から選択された少なくとも一種のジカルボン酸が例示できる。対称型(又は対称構造)ジオールとしては、直鎖状C2-8アルキレングリコール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)及び対称型C6-8シクロアルカンジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)から選択された少なくとも一種のジオールが例示できる。
【0029】
対称構造のジカルボン酸成分及び対称構造のジオール成分の割合が多くなると、光硬化性ポリエステル系樹脂の結晶性(又は結晶化度)が大きくなる。一方、非対称構造のポリカルボン酸成分(ジカルボン酸成分を含む)や非対称構造のポリオール成分(ジオール成分を含む)の割合が多くなると、光硬化性ポリエステル系樹脂の結晶性(又は結晶化度)が低下する。そのため、ポリカルボン酸成分(ジカルボン酸成分を含む)のうち、対称構造のジカルボン酸成分の割合は、例えば、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは85〜100モル%程度であってもよく、ポリオール成分(ジオール成分を含む)のうち、対称構造のジオール成分の割合は、例えば、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは85〜100モル%程度であってもよい。
【0030】
官能基を有するポリエステル系樹脂と前記重合性化合物との反応は、慣用の方法、例えば、不活性ガス雰囲気中、熱重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンなどのハイドロキノンアルキルエーテルなど)の存在下、エステル化触媒(金属触媒、アミン類など)を用い、通常、60〜160℃(例えば、80〜130℃)程度の温度で行ってもよい。必要であれば、有機溶媒の存在下で反応させてもよい。ポリエステル系樹脂の官能基1モルに対する前記重合性化合物の反応性基の割合は、0.5〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.3モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モル程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、残存モノマーや溶媒を除去することにより、室温で固体の光重合性ポリエステル系樹脂を得ることができる。
【0031】
光硬化性ポリエステル系樹脂の酸価は、通常、0.1〜10mgKOH/g(例えば、0.3〜5mgKOH/g)程度である。
【0032】
光硬化性アクリル系樹脂としては、反応性基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基など)を有するアクリル系樹脂と、前記反応性基に対する反応性基を有する重合性不飽和化合物(例えば、ヒドロキシル基に対して反応可能なビニルフェニルイソシアネート、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体(無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドなど)、カルボキシル基に対して反応可能なグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル基に対して反応可能な(メタ)アクリル酸など)との反応により生成する重合性基((メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和結合)を有するアクリル系樹脂が例示できる。
【0033】
光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応により生成するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含まれる。
【0034】
光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂には、例えば、イソシアネート基を有するウレタンオリゴマーと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成する樹脂、ヒドロキシル基を有する樹脂(前記ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂)と、遊離のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応による生成物など)との反応により生成する樹脂などが含まれる。
【0035】
光硬化性樹脂の重合性基((メタ)アクリロイル基など)の濃度は、重合性不飽和結合当量(重合性基当りの分子量)として、通常、200〜10000g/eq(特に250〜8000g/eq)程度であり、例えば、300〜7000g/eq、好ましくは350〜5000g/eq、さらに好ましくは400〜4000g/eq(特に500〜3000g/eq)程度であってもよい。光硬化性樹脂の数平均分子量は、例えば、500〜30000、好ましくは700〜20000、さらに好ましくは900〜15000(特に1000〜10000)程度であってもよい。
【0036】
光硬化性樹脂のうち、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びウレタン系樹脂から選択され、かつ重合性不飽和結合を有する少なくとも一種の光硬化性樹脂が好ましい。
【0037】
光硬化性樹脂(非結晶性及び結晶性樹脂)は、通常、ガラス転移温度又は熱溶融温度(又は融点)を有している。光硬化性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、40〜70℃、好ましくは40〜65℃、さらに好ましくは40〜60℃(特に40〜50℃)程度であってもよい。
【0038】
光硬化性樹脂は、通常、前記ガラス転移温度を示す非結晶性樹脂(例えば、結晶化度10%未満)又は結晶性樹脂(半結晶性樹脂を含む)で構成してもよく、コーティング性などの塗膜性能、塗膜の外観特性を向上させるため、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とを組み合わせて構成してもよい。結晶性樹脂の結晶化度は、例えば、10〜70%、好ましくは15〜60%、さらに好ましくは20〜50%程度であってもよい。結晶性樹脂の熱溶融温度(又は融点)は、通常、50〜150℃程度であり、例えば、55〜130℃、好ましくは60〜110℃、さらに好ましくは65〜100℃(特に70〜90℃)程度であってもよい。
【0039】
光硬化性樹脂を構成する非結晶性樹脂と結晶性樹脂との割合(重量比)は、通常、前者/後者=50/50〜99/1程度であり、例えば、60/40〜98/2、好ましくは70/30〜97/3、好ましくは75/25〜96/4(特に80/20〜95/5)程度であってもよい。
【0040】
光硬化性樹脂は、光重合性組成物が室温で固体の状態を維持できる範囲で、重合性や練合性などを調整するために慣用のラジカル重合性希釈剤を含んでいてもよい。重合性稀釈剤は、室温(例えば、10〜25℃程度)で液状又は固体であってもよい。光硬化性樹脂とラジカル重合性希釈剤との割合(重量比)は、前者/後者=100/0〜80/20(例えば、100/0〜90/10)程度であってもよい。
【0041】
本発明の光重合性組成物は、前記重合性希釈剤の少なくとも一部として、複数の重合性基(α,β−エチレン性不飽和結合)を有する多官能重合性化合物を含んでもよい。多官能重合性化合物によって、光重合性組成物の重合性又は架橋密度、溶融温度、溶融粘度などを調整できる。多官能重合性化合物は、高反応性であるとともに多官能性であるため、硬化塗膜の品質低下(例えば、未反応の多官能重合性化合物の硬化塗膜内への残存など)を生じることなく、硬化塗膜の硬度を高度に向上できる。特に3官能以上(例えば、3〜8官能、好ましくは4〜7官能、さらに好ましくは5〜6官能)の多官能重合性化合物によって、塗膜の硬度(鉛筆硬度)を、2ランク以上(好ましくは3ランク以上、例えば、鉛筆硬度Fから2H又は3Hに)向上できる。例えば、光重合性組成物を、基材に溶融コーティングし、活性光線を照射して予備硬化させた後、加熱して平坦化させ、さらに活性光線を照射して硬化させて形成した塗膜の硬度(鉛筆硬度)は、例えば、H以上(通常、H〜5H、特にH〜4H)、好ましくは2H以上(通常、2H〜4H)程度であってもよい。なお、鉛筆硬度の測定は、例えば、JIS K5400(1990)に準じて行うことができる。
【0042】
多官能重合性化合物は、光重合性組成物を固体(例えば、粉粒状など)の形態で維持できる限り、室温(例えば、10〜25℃程度)において、液状、半固体状又は固体状(通常、液状)であってもよい。多官能重合性化合物は、光硬化性樹脂に比べて、融点(又はガラス転移点)が低い場合が多く、光重合性組成物のガラス転移温度を低下させる場合が多い。通常、固体状の多官能重合性化合物に比べて、液状の多官能重合性化合物は、光重合性組成物のガラス転移温度を低下させる効果が大きく、光重合性組成物のガラス転移温度及び溶融温度(及び溶融粘度)を効率よく低下させる場合が多い。
【0043】
多官能重合性化合物は、2以上の重合性基(光重合性基)を有し、2官能以上であり、例えば、2〜10官能、好ましくは3〜8官能、さらに好ましくは4〜6官能程度であってもよい。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基(ビニル基、アリル基などのC2-4アルケニル基など)などが例示され、通常、少なくとも(メタ)アクリロイル基(特に、アクリロイル基)を有する場合が多い。
【0044】
多官能重合性化合物は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、グリシジル基含有オリゴマー又はコポリマーと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリオールポリ(メタ)アクリレートなどであってもよい。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物、末端イソシアネートオリゴマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物などが例示できる。末端イソシアネートオリゴマーは、ポリイソシアネートとポリオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールなど)との反応により生成できる。
【0046】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物(ビスフェノールAのグリシジルエーテルなど)と(メタ)アクリル酸との反応生成物などが例示される。グリシジル基含有オリゴマー又はコポリマーと(メタ)アクリル酸との反応生成物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートと共重合ビニルモノマー(アクリル系モノマー、例えば、n−ブチルメタアクリレート、メチルメタアクリレートなどの(メタ)アクリレートなど)との共重合により得られるグリシジル基含有コポリマーと(メタ)アクリル酸との反応生成物などが例示される。
【0047】
ポリオールポリ(メタ)アクリレートは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有しており、ポリオールのヒドロキシル基の全部又は一部が(メタ)アクリロイル基に置換されていてもよく、複数、例えば、3〜10、好ましくは4〜8、さらに好ましくは4〜6程度のヒドロキシル基を有していてもよい。ポリオールポリ(メタ)アクリレートを構成するポリオールは、非脂肪族ポリオール(芳香族ポリオール、ヘテロ環式ポリオールなど)又は脂肪族ポリオール[脂環族ポリオール、非環状の脂肪族ポリオール(例えば、アルカンポリオール、アルカンポリオールのオリゴマーなど)]であってもよい。
【0048】
代表的なポリオールポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、芳香族ポリオールポリ(メタ)アクリレート[例えば、ビスフェノール類のC2-4アルキレンオキシド付加体(ビスフェノールA−C2-4アルキレンオキシド付加体など)のジ(メタ)アクリレート]、ヘテロ環式ポリオールポリ(メタ)アクリレート[例えば、イソシアヌレート環を有するポリオール[トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなど]のジ又はトリ(メタ)アクリレートなど]、脂環族ポリオールポリ(メタ)アクリレート[例えば、C6-10シクロアルカンジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAアルキレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレートなど]、アルカンポリオール又はそのオリゴマーのポリ(メタ)アクリレートなどが例示できる。アルカンポリオール又はそのオリゴマーのポリ(メタ)アクリレートには、アルカンポリオール又はそのオリゴマーと、付加によりヒドロキシル基を生成可能な化合物[(C2-4アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド)、ラクトン(例えば、ε−カプロラクトン)など]との付加体のポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基の一部がエーテル化[アルキル(例えば、C1-12アルキル)エーテル化など]やエステル化(又はアシル化)されたアルカンポリオール又はそのオリゴマーのポリ(メタ)アクリレートも含まれる。
【0049】
アルカンポリオール又はそのオリゴマーのポリ(メタ)アクリレートを構成するアルカンポリオールとしては、例えば、C2-12アルカンジオール、好ましくはC2-10アルカンジオール、さらに好ましくはC2-8アルカンジオール(特にC2-6アルカンジオール)(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールなど);C3-12アルカントリオール、好ましくはC3-10アルカントリオール、さらに好ましくはC3-8アルカントリオール(特に分岐鎖状C4-6アルカントリオール)(例えば、トリメチロールプロパン、グリセリンなど);C4-12アルカンテトラオール(好ましくはC4-12アルカンテトラオール、さらに好ましくはC4-10アルカンテトラオール(特に分岐鎖状C5-8アルカンテトラオール)(例えば、ペンタエリスリトールなど);C5-15アルカンペンタオール、好ましくはC5-12アルカンペンタオール、さらに好ましくはC5-10アルカンペンタオール(特に分岐鎖状C5-8アルカンペンタオール)(例えば、キシリトールなど);C6-18アルカンヘキサオール(例えば、ソルビットなど)などが例示される。アルカンポリオールのオリゴマーは、例えば、アルカンポリオールの2〜10量体、好ましくは2〜5量体、さらに好ましくは2〜3量体などであってもよく、単一又は二種以上のポリオールで構成されてもよい。
【0050】
代表的なアルカンポリオール又はそのオリゴマーのポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルカンジオール又はそのオリゴマー(特にダイマー又はトリマー)のジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ又はトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ又はトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど];アルカントリオール又はそのオリゴマー(特にダイマー又はトリマー)のジ又はトリ(メタ)アクリレート[例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ乃至テトラ(メタ)アクリレート、トリグリセリントリ乃至ペンタ(メタ)アクリレートなど];アルカンテトラオール又はそのオリゴマー(特にダイマー又はトリマー)のジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート[例えば、ペンタエリスリトールトリ乃至テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート(日本化薬(株)製、「カラヤッド(KARAYAD) DPHA」など)、ジペンタエリスリトールモノアルキルエーテルのペンタ(メタ)アクリレート(日本化薬(株)製、「KARAYAD D−310」など)、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加体のヘキサ(メタ)アクリレート(日本化薬(株)製、「KARAYAD DCPA−20」、「KARAYAD DCPA−30」、「KARAYAD DCPA−60」、「KARAYAD DCPA−120」など]、アルカンペンタオール又はそのオリゴマー(特にダイマー又はトリマー)のジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0051】
多官能重合性化合物は、光重合性組成物の溶融温度及び溶融粘度、硬化塗膜の表面硬度及び外観などの点より、例えば、アルカンジオール、アルカントリオール(モノマー、ダイマー又はトリマー)又はアルカンテトラオール(モノマー、ダイマー又はトリマー)などのポリオールのポリ(メタ)アクリレートなどであってもよい。これらのなかでも、アルカンポリオールのオリゴマーのポリ(メタ)アクリレートは、エーテル結合を有しているためか、硬化塗膜に効率よく高い可撓性を付与できる場合が多い。エーテル結合を有するポリオールとしては、例えば、アルカントリオールのダイマー又はトリマーのジ乃至ペンタ(メタ)アクリレート、アルカンテトラオールのダイマー又はトリマーのジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート[好ましくは、C3-10アルカントリオール又はC4-10アルカンテトラオールのダイマー(特にC4-10アルカンテトラオールのダイマー)のトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0052】
多官能重合性化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
多官能重合性化合物の重合性基の濃度は、通常、光硬化性樹脂の重合性基の濃度より大きくてもよく、重合性不飽和結合当量として、例えば、30〜300g/eq、好ましくは50〜200g/eq、さらに好ましくは70〜150g/eq程度であってもよい。
【0054】
多官能重合性化合物の割合は、光硬化性樹脂の種類、多官能重合性化合物の種類や形状(液状、半固体状、固体状)にもよるが、通常、光重合性組成物が室温(例えば、10〜25℃)で固体(例えば、粉粒状)の形態を維持できる範囲で選択でき、光硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.5〜35重量部程度であり、例えば、1〜30重量部、好ましくは3〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部(特に7〜15重量部)程度であってもよい。
【0055】
光重合性組成物は、通常、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤は、活性光線の種類に応じて選択でき、紫外線硬化性組成物を形成してもよい。
【0056】
光重合開始剤としては、例えば、ケトン系化合物、ホスフィン系化合物、スルフィド系化合物(ジブチルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなど)などが例示できる。これらの光重合開始剤のうち、ケトン系化合物やホスフィン系化合物が好ましい。
【0057】
ケトン系化合物としては、アセトフェノン系化合物(アセトフェノンジエチルケタール、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1―オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンなど)、ベンゾフェノン系化合物[ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジメチルアミノ−4′−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトンなど]、ベンゾイン系化合物(ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾイン誘導体など)、ベンジル系化合物(ベンジル、ベンジルメチルケタールなど)、アントラキノン系化合物(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンなど)、チオキサントン系化合物(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなど)、モルホリン系化合物[2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン、3,6−ビス(2−モルホリノイソブチル)−9−ブチルカルバゾールなど]などが例示できる。
【0058】
ホスフィン系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6―ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(BAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)メチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)n−ブチルホスフィンオキシドなどが例示できる。
【0059】
光重合開始剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、ケトン系化合物とホスフィン系化合物とを組み合わせて使用してもよい。
【0060】
光重合開始剤の割合は、光硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.15〜8重量部、さらに好ましくは0.2〜6重量部(特に0.3〜5重量部)程度であってもよい。
【0061】
光重合性組成物は、光重合開始剤とともに、増感剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸又はそのエステル、アクリジンなど)、クマリン類[3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリンなど]、キノリン類[2−(2−(4−ジメチルアミノフェニル)エテニル)キノリンなど]、キノン類(ベンゾキノン、アントラキノンなど)、ピレン類(1−ニトロピレンなど)、芳香族炭化水素類(アセナフテンなど)などを含んでいてもよい。
【0062】
光重合性組成物は、クリア塗膜を形成可能な塗料(例えば、粉体塗料などの固形塗料)を形成してもよく、艶消し塗料(例えば、艶消し粉体塗料などの固形塗料)を形成してもよい。
【0063】
光重合性組成物は、通常、充填剤を含んでいる場合が多い。この充填剤は、通常、粉粒体であり、例えば、有機粉粒体又は無機粉粒体であってもよい。充填剤には、フィラーと称される一般的な添加剤の他に顔料も含まれ、隠ぺい性を有してもよいが、有しなくてもよい。充填剤は、着色顔料のように着色性を有してもよいが、体質顔料のように着色性を有しなくてもよく、艶消し剤のように艶消し機能(塗膜表面の光沢を調整する機能)を有してもよいが、艶消し機能を有しなくてもよい。
【0064】
フィラーは、無機フィラー、又は有機フィラーであってもよい。フィラーとしては、例えば、マイカ、カオリンクレー、ベントナイト、タルクなどの無機フィラー、樹脂粉粒体(架橋アクリル系樹脂粒子、架橋ポリスチレン系樹脂粒子などの架橋樹脂粉粒体など)の有機フィラーが例示される。フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0065】
顔料としては、例えば、体質顔料[金属酸化物(シリカ、アルミナなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、金属硫酸塩[硫酸バリウム(特に重晶石を粉砕したバライト粉)など]、金属ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなど)、ガラス(石英ガラスなど)など];白色顔料[二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイトなどの水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リトポン(ZnS+BaSO4)など]、黒色顔料(カーボンブラックなど)、赤色顔料(べんがら、鉛丹、モリブデンレッド、カドミウムレッドなど)、黄色顔料(黄色酸化鉄、黄鉛、リサージ、カドミウムイエロー、クロムイエローなど)、橙色顔料(モリブデートオレンジなど)、青色顔料(紺青、群青など)、緑色顔料(クロムグリーンなど)、紫色顔料(マンガンバイオレットなど)、金属粉顔料(アルミニウム粉顔料など)などの無機顔料;黄色−赤色系顔料[アゾ顔料(ピグメントイエロー、ピグメントオレンジ、ピグメントレッド、ハンザイエローなど)、キナクリドン顔料(キナクリドン赤色など)、ペリレン系顔料(ペリレンマルーンなど)など]、青色−緑色系顔料[フタロシアニン顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなど)など]などの有機顔料などが例示される。
【0066】
顔料は、特殊機能を有する顔料、例えば、防食顔料[金属クロム酸塩(ジンククロメート、ストロンチウムクロメートなど)、鉛化合物(鉛丹、亜酸化鉛、塩基性クロム酸鉛、シアナミド鉛、鉛酸カルシウムなど)、金属リン酸塩(リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸カリウムなど)、金属亜鉛末、ガラスフレーク粉末など]、防汚顔料(亜酸化銅など)、蛍光顔料、パール顔料などであってもよい。顔料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
艶消し機能を有する充填剤(艶消し剤)としては、例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、コロイド状ケイ酸、ガラスなどが例示される。艶消し剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0068】
艶消し剤以外の充填剤の平均粒径は、充填剤の種類にもよるが、通常、0.001〜5μm(例えば、0.005〜3μm)程度である場合が多く、好ましくは0.01〜1μm(例えば、0.05〜0.5μm)、さらに好ましくは0.1〜0.3μm程度であってもよい。艶消し剤以外の充填剤の吸油量は、通常、10〜60ml/100g程度であり、例えば、15〜55ml/100g程度であってもよい。吸油量は、アマニ油を用い、JIS K5101に従って測定できる。
【0069】
艶消し剤の平均粒径は、通常、0.1〜12μm程度であり、例えば、0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは2〜7μm程度であってもよい。艶消し剤の吸油量は、通常、50〜200ml/100g程度であり、例えば、60〜170ml/100g、好ましくは70〜150ml/100g(例えば、75〜120ml/100g程度であってもよい。
【0070】
充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、艶消し剤と艶消し剤以外の充填剤とを組み合わせて使用できる。充填剤の使用量は、光硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0〜300重量部(例えば、10〜300重量部)程度から選択でき、好ましくは20〜250重量部(例えば、30〜200重量部)、さらに好ましくは40〜150重量部(特に50〜100重量部)程度であってもよい。
【0071】
艶消し剤を使用する場合、艶消し剤の使用量は、光硬化性樹脂100重量部に対して、通常、200重量部以下(例えば、0.5〜200重量部程度)であり、好ましくは5〜180重量部(例えば、15〜150重量部)、さらに好ましくは30〜120重量部(例えば、40〜110重量部)、特に50〜100重量部(例えば、60〜90重量部)程度であってもよい。
【0072】
艶消し剤と艶消し剤以外の充填剤とを組み合わせて使用する場合、通常、重量比で、前者/後者=1/99〜99/1から選択でき、例えば、5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは15/85〜85/15(特に20/80〜80/20)程度であってもよい。
【0073】
本発明では、単一の光重合性組成物を使用しても、予備硬化工程での活性光線の照射エネルギーを調整するという簡単な操作で硬化塗膜の光沢を調整できる。特に、充填剤の含有量と予備硬化工程での活性光線の照射エネルギーとを調整することにより、幅広い範囲で塗膜の光沢を調整できる。
【0074】
光重合性組成物は、種々の添加剤、例えば、ワックス類、表面調整剤又はレベリング剤(アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤など)、分散剤(ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などの界面活性剤、ノニオン性やアニオン性であってもよいポリマー型分散剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、可塑剤、粘度調整剤、難燃剤、帯電剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤の使用量は、光硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部程度であってもよい。
【0075】
光重合性組成物の形態は、特に制限されず、例えば、非繊維状(球状、楕円体状、多角体状、無定形状など)、繊維状(針状、短繊維、長繊維など)であってもよく、例えば、粉粒体(粉末状、粒状、チップ状、ペレット状、ブロック状、フレーク状など)であってもよく、通常、非繊維状の粉粒体(特にチップ状又はブロック状の粉粒体)である。
【0076】
光重合性組成物の最大粒子径は、例えば、30mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm程度以下であってもよい。光重合性組成物の最大粒子径は、通常、約0.005mm以上であってもよい。光重合性組成物の体積平均粒子径は、特に限定されず、通常、0.005〜20mm程度であり、例えば、0.01〜15mm、好ましくは0.05〜10mm、さらに好ましくは0.1〜8mm(特に0.5〜5mm)程度であってもよい。
【0077】
例えば、光重合性組成物を溶融コーティングする場合、光重合性組成物(例えば、チップ状、ブロック状などの粉粒体など)が融着(ブロッキング)しても、重大な問題とはならない。そのため、必ずしも必要ではないが、必要に応じて、光重合性組成物のブロッキングを防止するため、粉粒状ブロッキング防止剤を使用できる。ブロッキング防止剤は、通常、有機又は無機微粒子(特に無機微粒子)で構成されている。ブロッキング防止剤としては、例えば、金属酸化物[シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛など]、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなど)、ケイ酸(含水ケイ酸)などが例示される。これらの無機微粒子のうち、ケイ素含有無機微粒子、例えば、シリカ、ケイ酸金属塩、ケイ酸などの微粒子[通常、シリカ微粒子(特に無水シリカ微粒子)など]を用いる場合が多い。ブロッキング防止剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。このようなブロッキング防止剤のうち、無水シリカ微粒子は、日本アエロジル(株)から商品名「アエロジルR972」、「アエロジルR805」、「アエロジルR812S」などとして入手できる。
【0078】
ブロッキング防止剤は、親水性又は疎水性であってもよい。好ましいブロッキング防止剤は、表面が疎水化処理されている。ブロッキング防止剤を構成する微粒子表面は、例えば、シリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイルなど)、アルキルシラン(オクチルシランなど)、シランカップリング剤(トリメチルシリル基などのアルキルシリル基を有するシランカップリング剤など)などを用いて疎水化できる。
【0079】
ブロッキング防止剤を構成する微粒子(一次粒子)の平均粒子径は、通常、1〜100nmであり、例えば、3〜90nm、好ましくは5〜80nm、さらに好ましくは8〜70nm(特に10〜50nm)程度であってもよい。ブロッキング防止剤を構成する微粒子は嵩密度が小さく、通常、嵩密度20〜200g/L程度であり、例えば25〜180g/L、好ましくは30〜150g/L、さらに好ましくは35〜130g/L(特に40〜100g/L)程度であってもよい。
【0080】
ブロッキング防止剤の使用量は、光重合性組成物100重量部に対して、例えば、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.8重量部、さらに好ましくは0.08〜0.5重量部(特に0.1〜0.3重量部)程度であってもよい。ブロッキング防止剤は、光重合性組成物の粉粒体に対して添加されてもよい。ブロッキング防止剤の添加により、光重合性組成物の粉粒体のブロッキングを有効に防止して、貯蔵安定性を向上できる。ブロッキング防止剤は、光重合性組成物から遊離して、光重合性組成物の粉粒体の間に介在してもよく、全部又は一部が光重合性組成物の粉粒体の表面に埋込や付着などにより結合(又は固着)してもよい。
【0081】
[光重合性組成物の製造方法]
光重合性組成物(特に光重合性組成物の粉粒体)は、例えば、光硬化性樹脂と光重合開始剤と[必要に応じて他の添加剤(例えば、重合性希釈剤、充填剤など)と]を含む組成物を溶融混練し、冷却固化した後、粉砕し、必要により、分級することにより得ることができる。ブロッキング防止剤は、所定サイズに分級された光重合性組成物に混合してもよい。しかし、光硬化性樹脂及び光重合開始剤を含む混合物を溶融混練し、冷却固化し、得られた固化物にブロッキング防止剤を添加し、粉砕し、必要により分級する場合が多い。光重合性組成物の固化物をブロッキング防止剤の存在下で粉砕すると、得られる光重合性組成物の粉粒体の表面にブロッキング防止剤が固着するためか、光重合性組成物の粉粒体の貯蔵安定性又は耐ブロッキング性を改善できる。
【0082】
光硬化性樹脂と光重合開始剤と(必要に応じて他の添加剤と)を含む混合物の溶融混練は、光硬化性樹脂の重合又は硬化を抑制しつつ行われ、通常、溶融混練物は、粒状(例えば、ペレット状)の形態に冷却固化される。溶融混練は、慣用の方法、例えば、各成分を混合機(ヘンシェルミキサーやリボンミキサーなど)で乾式混合し、溶融混練機(一軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなど)で溶融混練することにより行うことができる。溶融混練温度は、光硬化性樹脂の重合を抑制可能な温度であってもよく、通常、60〜160℃程度であり、例えば、65〜150℃、好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは75〜120℃(特に80〜100℃)程度であってもよい。
【0083】
冷却固化後の粉砕工程は、必要であれば、繰り返し行ってもよい。粉砕工程では、アトマイザーなどの慣用の粉砕機を使用できる。光硬化性樹脂として、ガラス転移温度又は融点の低い樹脂を使用する場合、固化物は、冷却下(例えば、冷風、ドライアイス、液化窒素などにより冷却しつつ)、粉砕するのが好ましい。冷却温度は、例えば、40℃以下(例えば、0〜40℃)、好ましく30℃以下(例えば、3〜30℃)、さらに好ましくは20℃以下(例えば、5〜20℃)程度であってもよい。必要であれば、粉砕後、所定サイズの粉粒体を得るため、篩や分級機を用いて分級してもよい。
【0084】
[コーティング工程]
光重合性組成物で形成された塗膜(未硬化塗膜)は、例えば、(1)光重合性組成物の溶融温度以上に加熱した基材に、例えば、スプレーガンを使用して、光重合性組成物の粉粒体を散布し、溶融塗着させる方法(粉体散布法)、(2)光重合性組成物の溶融温度以上に予備加熱した基材を、光重合性組成物の粉粒体の流動層に浸漬し、溶融塗着させる方法(流動浸漬法)、(3)静電気を利用して光重合性組成物の粉粒体を基材に吸引付着させる方法(粉体静電スプレー法、静電流動浸漬法)、(4)光重合性組成物を基材に対して溶融コーティングする方法(溶融コーティング法)などによって形成できる。これらの方法のうち、光重合性組成物の塗着効率などの点より、溶融コーティング法が好ましい。
【0085】
基材は、例えば、有機質基材又は無機質基材であってもよく、また、非多孔質基材又は多孔質基材であってもよい。有機質基材としては、例えば、非多孔質プラスチックなどの非多孔質基材;木質材、多孔質プラスチック、紙、布帛(織布、不織布)などの多孔質基材などが挙げられる。前記木質材としては、天然木材及び合成木材[例えば、MDF板(中質繊維板)、パーティクルボード(PB)、ベニヤ板など]が例示できる。無機質基材としては、例えば、セラミック、ガラス、金属(鋼板、アルミニウム、ステンレススチールなど)などの非多孔質基材;コンクリートパネル、石膏ボード、多孔質金属などの多孔質基材が挙げられる。前記多孔質金属としては、マグネシウム合金鋳造物、アルミニウムダイキャスト、アルミニウム溶射鉄板、鋳物、亜鉛溶射鉄板(メタリコン)などが例示できる。基材は、光重合性組成物の塗膜の形成方法などを考慮して選択できる。基材は、単独の基材又は二種以上の複合基材であってもよい。
【0086】
溶融コーティング法では、基材は、必ずしも加熱(プレヒート)しておく必要はないが、形成される塗膜の外観の点より、加熱した基材に対して、光重合性組成物を溶融コーティングしてもよい。加熱温度は、例えば、光重合性組成物の溶融温度より低い温度又は高い温度であってもよい。加熱温度は、通常、30〜130℃程度であり、例えば35〜120℃、好ましくは40〜110℃、さらに好ましくは45〜100℃(特に50〜90℃)程度であってもよい。加熱温度が低いと、塗膜外観に悪影響を及ぼす場合がある。加熱温度が高すぎると、基材が変形する場合がある。基材は、種々の加熱手段(例えば、遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター、温風加熱ヒーターなどの加熱ヒーターなど)を用いて加熱できる。
【0087】
光重合性組成物を、その溶融温度[通常、50〜200℃程度、例えば、60〜180℃、好ましくは70〜160℃、さらに好ましくは80〜150℃(特に90〜140℃)程度]に加熱することによって、溶融コーティングできる。溶融コーティング法としては、例えば、ロールコーター法、溶射法などが例示できる。量産性の点より、ホットロールを用いたロールコーター法が好ましい。
【0088】
図1に、ロールコーター法による塗布状態を説明するための概略図を示す。ロールコーター法では、光重合性組成物4の供給量をコントロールするためのドクターロール2と、溶融した光重合性組成物4を基材3に塗布するためのコーターロール1とで構成された一対のロールを有するロールコーターを使用する。コーターロール1及びドクターロール2(特に各ロールの表面)は、それぞれ、金属製又は非金属製(例えば、耐熱性シリコーンゴムなどのゴム製など)のいずれであってもよい。コーターロール1とドクターロール2とは、材質が同じであっても、異なっていてもよい。コーターロール1及びドクターロール2を利用して、コンベアなどの搬送手段5により所定速度で一定方向に搬送されている多孔質基材3上に、溶融した光重合性組成物の塗膜(未硬化塗膜)を形成できる。
【0089】
ロールコーター法の場合、コーターロール及びドクターロールの加熱温度は、光重合性組成物の溶融状態を維持できる温度(溶融温度)、通常、50〜200℃程度であり、好ましくは60〜180℃、好ましくは70〜160℃、さらに好ましくは80〜150℃(特に90〜140℃)程度であってもよい。各ロールの加熱温度が低いと、光重合性組成物の溶融粘度が高くなり、塗膜のレベリング性が低下する傾向がある。各ロールの加熱温度が高すぎると、光重合性組成物の安定性が低下する傾向がある。コーターロール及びドクターロールは、例えば、各ロール内部に電気ヒーターを内蔵させて加熱する方法、各ロール内部に加熱したオイルを循環させて加熱する方法などによって加熱できる。
【0090】
コーターロール及びドクターロールで構成された一対のロールにおいて、ドクターロールを回転させてもよいが、ドクターロールを回転させることなく、コーターロールを回転(例えば、基材の搬送方向に回転)させて、溶融コーティングすることによって、塗布量が適切で、外観が良好な塗膜を形成できる。
【0091】
基材に対する光重合性組成物の塗布量は、特に限定されず、通常、10〜300g/m2程度の範囲から選択でき、例えば、20〜250g/m2、好ましくは40〜200g/m2、さらに好ましくは60〜180g/m2(特に80〜150g/m2)程度であってもよい。塗布量は、例えば、コーターロールとドクターロールとの間隔や回転速度などによってコントロールしてもよい。コーターロールとドクターロールとの間隔は、通常、約2500μm以下であり、例えば、10〜2000μm、好ましくは50〜1500μm、さらに好ましくは100〜1000μm(特に200〜500μm)程度であってもよい。例えば、コーターロール及びドクターロールの少なくとも一方のロール表面が弾性材料製(ゴム製など)である場合、コーターロールとドクターロールとが接触してもよく、コーターロールに対してドクターロールが押し付けられ、少なくとも一方の弾性材料製のロール表面がくぼんだ状態であってもよい。塗布量は、コーターロールの周速V1によってコントロールしてもよい。すなわち、コーターロールの周速V1を高くすることによって、塗布量を多くできる。コーターロールの周速V1は、光重合性組成物の溶融粘度などの流動特性に応じて選択でき、通常、1〜30m/分程度であり、例えば、2〜25m/分、好ましくは3〜20m/分、さらに好ましくは5〜15m/分(特に7〜13m/分)程度であってもよい。塗布量は、コーターロール周速V1と、基材を搬送するコンベア速度V2との差(V2−V1)によって、コントロールしてもよい。すなわち、コーターロール周速V1よりも、コンベア速度V2を大きくしてもよく、コンベア速度V2を基準として、コーターロール周速V1を高くするほど、塗布量を多くできる。コンベア速度V2は、特に限定されず、通常、5〜60m/分程度であり、例えば10〜55m/分、好ましくは15〜50m/分、さらに好ましくは20〜45m/分(特に25〜40m/分)程度であってもよい。コーターロール周速V1とコンベア速度V2との差(V2−V1)は、例えば、5〜30m/分、好ましくは10〜25m/分、さらに好ましくは15〜20m/分程度であってもよい。
【0092】
基材に対する光重合性組成物のコーティング速度は、特に限定されず、コンベア速度に対応させてもよく、通常、5〜60m/分程度であり、例えば10〜55m/分、好ましくは15〜50m/分、さらに好ましくは20〜45m/分(特に25〜40m/分)程度であってもよい。
【0093】
[予備硬化工程−加熱工程−硬化工程]
本発明では、未硬化塗膜(溶融化塗膜又は加熱塗膜など)を予備硬化させた後(予備硬化工程)、加熱し(加熱工程)、加熱後の塗膜をさらに硬化させる(硬化工程)。予備硬化工程、加熱工程、又は予備硬化工程と加熱工程とで構成されたサイクルは、複数回繰り返し行ってもよい。
【0094】
予備硬化及び加熱後の硬化は、未硬化塗膜又は加熱後の塗膜に活性光線を照射して行う。活性光線は、例えば、ガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよいが、通常、紫外線である。紫外線の照射には、例えば、紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなど)などを使用できる。紫外線の波長域は、例えば、270〜460nm、好ましくは280〜455nm、さらに好ましくは290〜450nm程度であってもよい。
【0095】
予備硬化工程における活性光線の照射エネルギーにより、硬化後の塗膜(硬化塗膜)の光沢を調整できる。すなわち、一般に、活性光線の照射エネルギーによって、塗膜の硬化の程度を調整できる。通常、予備硬化の程度を高くすると、加熱工程による塗膜の光沢の向上が抑制され、光沢の低い硬化塗膜を形成できるので、必要に応じて、光沢(艶消しの程度)が調整された艶消し塗膜を形成できる。なお、活性光線の照射エネルギー(単位:J)は、活性光線の照射強度[ワット数(単位:J/s)]と、照射時間(単位:s)との積に相当する。例えば、紫外線の照射エネルギー(単位面積当たりの照射エネルギー)は、例えば、(株)TOPCOM製「UVR−T1」により測定できる。
【0096】
予備硬化工程における活性光線の照射エネルギーをG1とし、硬化工程における活性光線の照射エネルギーをG2としたとき、G2に対するG1の割合(G1/G2)を高くする程、表面光沢がより低い硬化塗膜(例えば、より高度に艶消しされた硬化塗膜)を形成できる。G1/G2の割合は、G1とG2との合計量(G1+G2)を100として、通常、1/99〜30/70程度であり、例えば、2/98〜25/75、好ましくは3/97〜20/80、さらに好ましくは4/96〜15/85(特に5/95〜10/90)程度であってもよい。
【0097】
予備硬化工程における活性光線(例えば、紫外線)の照射エネルギー(G1)の値(予備硬化工程を複数回繰り返す場合は合計量)は、塗膜の単位面積当たり、通常、1〜1000mJ/cm2程度であり、例えば、5〜800mJ/cm2、好ましくは10〜500mJ/cm2、さらに好ましくは30〜300mJ/cm2(特に50〜200mJ/cm2)程度の範囲内で調整してもよい。また、硬化工程における活性光線(例えば、紫外線)の照射エネルギー(G2)の値は、塗膜の単位面積当たり、通常、100〜5000mJ/cm2程度であり、例えば、200〜4000mJ/cm2、好ましくは300〜3000mJ/cm2、さらに好ましくは400〜2500mJ/cm2(特に500〜2000mJ/cm2)程度であってもよい。
【0098】
加熱工程においては、通常、予備硬化後の塗膜を、光重合性組成物のガラス転移温度(又は溶融温度)以上の温度に加熱してもよく、加熱工程において、予備硬化塗膜を平坦化(レベリング)してもよい。加熱温度は、光重合性組成物の種類にもよるが、通常、50〜160℃程度であり、例えば、55〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃(特に80〜120℃)程度であってもよい。加熱時間は、通常、1秒〜10分間程度であり、例えば、3秒〜9分間、好ましくは5秒〜8分間、さらに好ましくは7秒〜7分間(特に10秒〜5分間)程度であってもよい。加熱源としては、例えば、赤外線(IR)照射ランプを備えた赤外線照射炉、熱風乾燥炉などの加熱炉を使用できる。赤外線照射炉(例えば、波長0.7〜20μm程度の中波長域の赤外線照射炉)を用いる方法や、前記赤外線照射炉と熱風乾燥炉とを組み合わせて用いる方法が好ましい。
【0099】
硬化塗膜の表面光沢度は、通常、0.1〜85程度の範囲内で調整でき、例えば、0.5〜80、好ましくは1〜75、より好ましくは1.5〜70(特に2〜65)程度であってもよい。塗膜の表面光沢度は、例えば、JIS K5600−4−7(2004)に基づいて、入射角60°の条件で測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の塗膜形成方法は、室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物(例えば、粉体塗料)から硬化塗膜を形成するために有用であり、特に、硬化塗膜の表面光沢を調整し、所望の光沢の硬化塗膜を形成するために有用である。本発明は、例えば、塗装パネル(例えば、建材パネルなど)を製造するために好適である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
[粉体塗料の製造]
以下の手順に従って粉体塗料A〜Eを製造した。粉体塗料A〜Eの塗料組成を表1に示す。
(粉体塗料A)
紫外線硬化型ポリエステル樹脂(ダイセル・ユーシービー(株)製、Uvecoat 3001、Tg=44℃)100重量部、半結晶性樹脂(ダイセル・ユーシービー(株)製、Uvecoat 9010)10重量部、アクリレートモノマー[日本化薬(株)製、カラヤッドDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)]、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、Irugacure 819)1重量部、重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、Irugacure 2959)1重量部、艶消し剤[(株)龍森製、ヒューズレックスE-2(無定形高純度溶融石英ガラスフィラー)、平均粒径7μm]70重量部、酸化チタン(白色顔料)20重量部及び表面調整剤(SOLUTIA(株)製、MODAFLOW POWDER M-2000)1重量部をヘンシェルミキサーで1分間乾式混合した後、エクストルーダーで溶融混練し、冷却固化した。得られた固化物を5〜20℃でクラッシャーによって粉砕し、チップ状の艶消し粉体塗料(粉体塗料A)を得た。
(粉体塗料B)
光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、Irugacure 819)を使用しないこと及び艶消し剤の使用量を40重量部としたこと以外は、粉体塗料Aと同様にしてチップ状の艶消し粉体塗料(粉体塗料B)を得た。
(粉体塗料C)
艶消し剤の使用量を20重量部としたほかは粉体塗料Aと同様にしてチップ状の艶消し粉体塗料(粉体塗料C)を得た。
(粉体塗料D)
艶消し剤(ヒューズレックスE-2)の使用量を1重量部としたほかは粉体塗料Aと同様にしてチップ状の艶消し粉体塗料(粉体塗料D)を得た。
(粉体塗料E)
艶消し剤の使用量を40重量部としたほかは粉体塗料Aと同様にしてチップ状の艶消し粉体塗料(粉体塗料E)を得た。
(粉体塗料F)
艶消し剤(ヒューズレックスE-2)70重量部に代えて硫酸バリウム(艶消し剤)70重量部を使用したほかは粉体塗料Aと同様にしてチップ状の艶消し粉体塗料(粉体塗料F)を得た。
【0103】
【表1】

【0104】
実施例1
図1に示すコーターロール1及びドクターロール2で構成された一対のロールを有するロールコーターを使用し、チップ状の粉体塗料(粉体塗料A)4を130℃に加熱し、50℃に加熱(プレヒート)したMDF板(基材)3に対して、溶融コーティングした。この工程において、MDF板3は、コンベア5を搬送手段とし、30m/分のコンベア速度で搬送し、ドクターロール2を回転させることなく、コーターロール1を10m/分の周速でMDF板3の搬送方向に回転させた。
【0105】
MDF板に溶融コーティングされた粉体塗料Aの未硬化塗膜に対し、高圧水銀ランプ(波長280〜450nm)を使用して、紫外線を照射エネルギーが100mJ/cm2以上になるまで照射して予備硬化させた(予備硬化工程)。次いで、予備硬化した塗膜を、中波長域赤外線照射炉(波長1〜10μm)を使用して、約3分間で表面温度が100〜120℃となるように加熱して平坦化した(加熱工程)。その後、加熱後の塗膜に、高圧水銀ランプ(波長280〜450nm)を使用して、紫外線を10秒〜3分間照射して硬化させた(硬化工程)。表2に予備硬化工程における紫外線の照射エネルギー(G1)及び硬化工程における紫外線の照射エネルギー(G2)を示す。予備硬化工程及び硬化工程における紫外線の照射エネルギーは、合計(G1+G2)で1500mJ/cm2とした。紫外線の照射エネルギーは、(株)TOPCOM製「UVR−T1」を使用して測定した。
【0106】
実施例2及び3
予備硬化工程における紫外線の照射エネルギー(G1)を、それぞれ、90mJ/cm2以上(実施例2)又は80mJ/cm2以上(実施例3)としたほかは実施例1と同様にした。
【0107】
参考例1
予備硬化を行わなかったほかは実施例1と同様にした。
【0108】
参考例2
予備硬化工程−加熱工程−硬化工程の順番を、加熱工程−予備硬化工程−硬化工程としたほかは、実施例1と同様にした。
【0109】
実施例4〜8
粉体塗料Aに代えて、それぞれ、粉体塗料B(実施例4)、粉体塗料C(実施例5)、粉体塗料D(実施例6)、粉体塗料E(実施例7)又は粉体塗料F(実施例8)を使用し、実施例7において予備硬化工程における紫外線の照射エネルギー(G1)を80mJ/cm2以上としたほかは実施例1と同様にした。
【0110】
[塗膜の評価]
実施例1〜8、参考例1及び2で形成した硬化塗膜について以下の手順で各試験を行った。結果を表2に示す。
(表面光沢)
硬化塗膜の表面光沢度を、JIS K5600−4−7(2004)「鏡面光沢度」に基づいて入射角60°の条件で測定する。
(付着性)
硬化塗膜の基材に対する付着性を、JIS K5600−5−6(クロスカット法)に基づいて、クロスカット幅2mmの条件で試験し、以下の基準で評価する。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
分類5:はがれの程度が分類4を超える場合。
(ひっかき硬度)
硬化塗膜のひっかき硬度を、JIS K5600−5−4(鉛筆擦り傷法)に基づいて試験する。
(耐溶剤性)
硬化塗膜上に、キシレンを染み込ませたガーゼを2時間放置し、硬化塗膜の状態に、膨れ、ハガレ、艶引けなどの変化(異常)がないか確認する。
【0111】
【表2】

【0112】
表2中、参考例1及び2との比較より、実施例1では、加熱前の予備硬化に起因して、硬化塗膜の表面光沢が低いことがわかる。実施例1〜3より、予備硬化における紫外線の照射エネルギー(G1)が大きいほど、硬化塗膜の表面光沢が低いことがわかる。実施例1及び4より、光重合開始剤も硬化塗膜の表面光沢に影響するが、予備硬化(実施例1〜3)よりも影響が小さいことがわかる。実施例1、5〜7より、艶消し剤の量も硬化塗膜の表面光沢に影響するが、艶消し剤の量を少なくしても、硬化塗膜の表面光沢が必ずしも高くなるとはかぎらないため、艶消し剤の量によって、硬化塗膜の表面光沢を調整することは困難であることがわかる。実施例1及び8より、艶消し剤の種類も硬化塗膜の表面光沢に影響するが、予備硬化(実施例1〜3)よりも影響が小さいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は本発明の実施例で使用したロールコーター法による塗布状態を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0114】
1…コーターロール
2…ドクターロール
3…基材(MDF板)
4…光重合性組成物(艶消し粉体塗料)
5…コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物で形成された塗膜に活性光線を照射して部分的に硬化させた後、塗膜を加熱し、さらに、加熱後の塗膜に活性光線を照射して硬化させる塗膜形成方法。
【請求項2】
光重合性組成物の粘度が25℃で200Pa・s以上である請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
部分的に硬化させた塗膜を加熱により平坦化させる請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
前記光重合性組成物が充填剤を含有する請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
充填剤の使用量が、光重合性組成物を構成する光硬化性樹脂100重量部に対して、10〜300重量部である請求項4記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
充填剤が少なくとも艶消し剤で構成されている請求項4記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
艶消し剤の使用量が、光重合性組成物を構成する光硬化性樹脂100重量部に対して、30〜120重量部である請求項6記載の塗膜形成方法。
【請求項8】
光重合性組成物の溶融コーティングによって形成された塗膜に活性光線を照射する請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項9】
活性光線が紫外線である請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項10】
前記光重合性組成物で形成された塗膜に照射する活性光線の照射エネルギーG1と加熱後の塗膜に照射する活性光線の照射エネルギーG2との合計量を100とするとき、G1/G2が、1/99〜30/70である請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項11】
室温で固体の又は粘稠な光重合性組成物で形成された塗膜に活性光線を照射して部分的に硬化させる予備硬化工程、部分的に硬化させた塗膜を加熱する加熱工程、及び加熱後の塗膜に活性光線を照射して硬化させる硬化工程で構成され、予備硬化工程における活性光線の照射エネルギーにより、硬化塗膜の光沢を調整する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−198511(P2006−198511A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12490(P2005−12490)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000193405)水谷ペイント株式会社 (2)
【Fターム(参考)】