説明

塗膜形成方法

【課題】 配線パターンが高段差であっても、当該段差内に塗布されたレジストをベークしても気泡の発生がない塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】 配線パターンが形成された基板表面に塗布液を塗布し、加熱して配線パターン間の段差に絶縁性塗膜を埋設する塗膜形成方法において、基板表面に塗布液を塗布した後で加熱前に減圧雰囲気とし、段差内に封じ込められたエア及び/または塗布液中に溶存しているガスを脱気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高段差のパターン(ハイバンプも含む)を形成した基板の表面にフォトレジスト、SOG等の塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を形成するシリコンウエーハなどの基板にフォトレジスト、SOG等塗布液の塗膜を形成するには、スピンナーを用いた回転塗布法が典型的に用いられている。この回転塗布法は、ノズルから基板中心に塗布液を滴下し、基板を回転させた後、基板をベークし塗膜を形成するものである。
【0003】
ところで、特開2006−15288号公報(特許文献1)には、高段差基板に高粘度厚膜有機樹脂を塗布する工程において、塗布中に減圧し段差部で気泡の混入を防止する方法が記載されている。
【0004】
また、特開2006−108374号公報(特許文献2)には、高粘度のレジストを回転塗布したときの気泡の巻き込みを防止するため、塗布膜に空気を吹き付けることが記載されている。
【0005】
特開2000−288458号公報(特許文献3)には、配線パターン間の段差に塗布液を馴染ませ、より均一な塗膜を得るために、塗布液の溶剤を基板へ滴下するプリウェット処理を行い、次いで塗布液を塗布し、この後ベークする先行技術も提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−15288号公報
【特許文献2】特開2006−108374号公報
【特許文献3】特開2000−288458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配線パターン高さが30ミクロン以上の高段差の場合に、ベークの際の収縮が大きいと段差を埋めることができなくなるので、フォトレジスト、SOG等の高濃度の塗布液を用いている。高濃度の塗布液を基板表面に塗布した場合、配線パターン間の段差が大きいと段差内にエアを残したまま塗布液で基板の表面を覆ってしまうことがあり、この場合に、そのままベークすると、段差内にエアの部分を残したまま塗膜が形成されてしまう。この課題は、上記特許文献によっても解決されていない。
【0008】
また、高濃度の塗布液の場合、予め脱気装置にて塗布液中に溶解しているガスを取り除くようにしているが、簡単には十分に取り除くことができない。そして、塗布液中に溶解しているガスがベークの際に気泡となって顕在化し、基板表面に残ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、配線パターンが形成された基板表面に塗布液を塗布し、加熱して配線パターン間の段差に塗膜を埋設する塗膜形成方法において、基板表面に塗布液を塗布した後で加熱前に減圧雰囲気とし、段差内に封じ込められたエア、塗布液中に溶存しているガス又はこれらのエア及びガスの両方を脱気するようにした。
【0010】
上記の減圧雰囲気は塗布液を乾燥することを目的とするものではなく、段差内に残存するエアや塗布液中に溶存しているガスを排出するためのものである。塗布液を減圧雰囲気で乾燥させると表面が粗れてクレータ状になって好ましくないので、このような乾燥の不具合が生じる前に減圧雰囲気から基板を取り出す必要がある。
【0011】
また、配線パターン間の段差が大きいときに、塗布液の塗布は2段階以上で行うことが好ましい。この場合は、各段階でプリベークを行うとともにプリベークの前に減圧雰囲気として段差内に封じ込められたエア、塗布液中に溶存しているガス又はこれらのエア及びガスの両方を気泡にして脱気し、この後最終的なベークを行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る塗膜形成方法によれば、高濃度の塗布液を用いて高段差の配線パターンに塗布しても、段差内にエアが残りにくい。
また、高濃度の塗布液であっても、僅かな時間即ち塗布液を乾燥させることなく塗布液中の溶存ガスを除去することができる。これらのことから、平坦化された均一な塗膜を得ることができる。
特に、高段差の場合、塗布を2段階以上で行い、各段階で減圧脱気とプリベークを行うようにすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る塗膜形成方法の工程を示すブロック図であり、本発明にあっては、配線パターンが形成された基板(半導体ウェーハ)の表面に塗布液(固形分濃度30〜60重量%のフォトレジスト)を塗布し、400〜600rpm、好ましくは500rpm程度の低速で回転せしめて該塗布液表面を平坦にした後、1000〜4000Paの減圧下で1〜2分間保持し、段差内に封じ込められたエア及び塗布液に溶存しているガスを脱気する。
【0014】
段差が高段差の場合や段差のアスペクト比が大きい場合には、該塗布液を複数回に分けて塗布することが好ましい。この場合、各塗布工程ごとに減圧処理とプリベークを行う。プリベークは2回に分けて塗布する場合には、1回目の塗布のプリベークの温度を2回目の塗布のプリベークの温度よりも低くする。1回目の温度と時間は、50〜100℃、好ましくは60〜80℃で1〜5分、例えば70℃/3分、2回目の温度と時間は、100〜150℃、好ましくは100〜130℃で1〜60分、例えば120℃/30分とする。
【0015】
この後、最終的なベークを行って、段差内に塗膜を形成する。最終的なベークの条件としては、100〜200℃で1〜15分、例えば150℃/3分とする。
高段差とは、配線パターンの段差が30〜400ミクロン、好適には30〜100ミクロンである。また、そのような高段差を有する基板に用いる塗布液としては、フォトレジスト、SOG等であり、その固形分濃度が30〜60重量%、好適には、40〜55重量%のフォトレジストである。
【0016】
以下に具体的な実施例と比較例を挙げて説明する。
実施例
400ミクロンの配線パターンの段差が設けられたシリコンウエーハ(基板)に固形分濃度55重量%のフォトレジスト塗布液(東京応化工業社製)を回転数500rpmにて回転塗布した後、1000〜4000Paの減圧雰囲気下に上記塗布された基板を90秒間処理した。次いで70℃で3分間及び120℃で3分間のプリベーク処理した(1回目の塗布・減圧雰囲気下処理・プリベークの一連の処理)。次いで、同固形分濃度の同フォトレジスト塗布液を用い、1回目の塗布・減圧雰囲気下処理・プリベークの一連の処理と同じ条件で2回目の一連の処理を行った。この後最終的なベークとして150℃で15分間の加熱を行った。
その結果、400ミクロンの段差の埋め込み性は良好で、段差内の発泡・表面荒れもなく基板全体にわたり均一な塗膜が形成されていた。
【0017】
比較例1
実施例において、フォトレジスト塗布液の固形分濃度を37%に変え、1回目の塗布・減圧雰囲気下処理・プリベークの一連の処理において、減圧雰囲気下処理とプレベーク処理を行わず、さらに2回目の塗布・減圧雰囲気下処理・プリベークの一連の処理において、減圧雰囲気下処理を行わなかった以外は同様にして、塗膜を形成した。
その結果、400ミクロンの段差の埋め込み性は十分ではなく、段差内の発泡・表面荒れも共に発生していた。
【0018】
比較例2
実施例において、フォトレジスト塗布液の固形分濃度を37%に変え、フォトレジスト塗布前にプリウェット処理を行い、1回目と2回目の塗布・減圧雰囲気下処理・プリベークの一連の処理において、減圧雰囲気下処理を共に行わなかった以外は同様にして、塗膜を形成した。
その結果、400ミクロンの段差の埋め込み性は十分ではなく、段差内の発泡・表面荒れも共に発生していた。
これらの実施例と各比較例の結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1はプリウェット及び減圧雰囲気下処理の有無による基板表面状態の違いを示す実験結果である。この結果から、比較例の場合にはベーク後に多数の気泡が確認されるが、本発明方法によると、ベーク後に気泡の発生は確認されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る塗膜形成方法の工程を示すブロック図
【図2】(a)は実施例1によって得られた基板表面の状態を示す写真、(b)は比較例1によって得られた基板表面の状態を示す写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成された基板表面に塗布液を塗布し、加熱して配線パターン間の段差に塗膜を埋設する塗膜形成方法において、基板表面に塗布液を塗布した後で加熱前に減圧雰囲気とし、段差内に封じ込められたエア、塗布液中に溶存しているガス又はこれらのエア及びガスの両方を脱気することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗膜形成方法において、前記塗布液の塗布は2段階以上で行い、各段階でプリベークを行う前に減圧雰囲気として、段差内に封じ込められたエア、塗布液中に溶存しているガス又はこれらのエア及びガスの両方を脱気し、最終的にベークを行うことを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の塗膜形成方法において、配線パターンの段差が30〜400ミクロンであることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の塗膜形成方法において、塗布液の固形分濃度が30〜60重量%であることを特徴とする塗膜形成方法。





【図1】
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【図2】
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