説明

塗被紙の製造方法及び塗被紙

【課題】本発明は、プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部と、金属ロールと弾性ロールで組み合わされた一対のニップを持つソフトカレンダーが4基又は5基を通して塗被紙を処理する仕上げ部と、が一体となった1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、塗被紙の表裏差を少なくし、ヒジワ又はコックリングと呼ばれる外観上の波打ちを防ぐことを目的とする。
【解決手段】本発明に係る塗被紙の製造方法は、ソフトカレンダーを通す際に、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面が、シュープレスのフェルト側に接した原紙面に塗被した面であるフェルト側塗被面側、シュープレスのベルト側に接した原紙面に塗被した面であるベルト側塗被面側、ベルト側塗被面側、フェルト側塗被面側の順になるように通紙する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部、ソフトカレンダーを通して塗被紙を仕上げる仕上げ部とが、一体となった1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、塗被紙表面の外観を良好にし、塗被紙の表裏差を少なくする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年印刷用紙は、チラシ、カタログ、広告、宣伝を目的とした商業印刷分野で需要が増加している。製紙メーカーにとっては、安価で安定的に需要に答えるべく、高品質を維持したまま生産性を上げることが急務となっている。
【0003】
高品質を維持したまま生産性を上げるためには、高速抄紙機で原紙を抄造し、ついで塗工機で原紙に塗被し、その後、平滑化・光沢付けの高温ソフトカレンダー仕上げ処理を一体化させることが適している。
【0004】
特に高速で抄紙する場合には、湿紙乾燥前の水分を出来るだけ低くするために、シュープレスを2基用いるタンデムシュープレスが多用されている。タンデムシュープレスは、湿紙からの脱水を、1基目のフェルト−フェルトと2基目のフェルト−ベルトとを組み合わせた脱水機構とすることで、最終製品の幅方向の水分プロファイルを良好にするのに適している。
【0005】
しかしながら、通常、オントップフォーマー、ギャップフォーマー等で作られた原紙を、フェルト−ベルトの組み合わせを少なくとも1基有するタンデムシュープレスで脱水した場合、フェルト面に当たった原紙とベルト面に当たった原紙とでは、平滑度、液体の吸収性が異なる。これを緩和するため、表裏で塗被量差をつけることが行われているが、解消には不十分である。
【0006】
一方、ソフトカレンダー処理する際に表裏差なく仕上げる方法が提案されている(例えば特許文献1を参照。)。これは、ソフトカレンダーで仕上げ処理する場合に、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面がワイヤー側、フェルト側、フェルト側、ワイヤー側の順となる様に通紙することで、塗被紙の表裏差を少なくするものである。
【0007】
この方法によれば、オントップフォーマーを含む長網抄紙機と通常のプレスを備えた設備では、表裏差はある程度解消できる。しかし、オントップフォーマーでフェルト−ベルトの組み合わせを少なくとも1基有するシュープレスや、特にギャップフォーマーでフェルト−ベルトの組み合わせを少なくとも1基有するシュープレスの場合には、ワイヤー、フェルトの区別よりもフェルト−ベルトによる差異が大きく、表裏差の改善には至らない。
【0008】
これは、従来のオントップフォーマーとプレスの場合では、塗被紙の面がワイヤー面側のときに該表面の平滑度が粗く、液体吸収性も大きいが、これに対して、ギャップフォーマーでフェルト−ベルトの組み合わせを少なくとも1基有するシュープレスの場合には、塗被紙の面がベルト面側のときに該表面の平滑度が滑らかであるが、液体吸収性は多い性質となるためと考えられる。
【0009】
フィルムサイザーは、1000m/分を超える高速でのサイズ液処理、顔料塗被に適した設備である。このフィルムサイザーを導入して、塗被前の原紙に澱粉を塗布し、原紙の表面強度改善及び内部結合強度の向上によって、印刷時の耐刷力を付与し、オフセット輪転印刷(以下、「オフ輪印刷」という。)での耐ブリスター性を改善させることが知られている。
【0010】
例えば、フィルムメタリングサイズプレスで澱粉液濃度2〜12%を塗布する方法がある(例えば特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特許第3256957号公報
【特許文献2】特許第3744115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、原紙が低坪量でサイズ剤を用いない場合若しくは微量しか用いない場合、水の浸み込みによる原紙の伸び、及びその後の乾燥による縮みが発生し、塗被及びソフトカレンダー処理をしても、ヒジワ又はコックリングと呼ばれる概観上の波打ちが発生する場合がある。したがって、特許文献1又は2などの従来技術では、塗被紙の表裏差及び外観上の波打ちを改善することはできなかった。なお、ヒジワとは、オフ輪印刷で両面に高濃度の絵柄を印刷した場合、用紙の流れ方向に沿って発生するシワのことをいう。
【0012】
そこで本発明は、プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部と、金属ロールと弾性ロールで組み合わされた一対のニップを持つソフトカレンダーが4基又は5基を通して塗被紙を処理する仕上げ部と、が一体となった抄造速度1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、塗被紙の表裏差を少なくし、ヒジワ又はコックリングと呼ばれる外観上の波打ちを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記に鑑み鋭意研究した結果、ソフトカレンダーを通す際の、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面の通紙の仕方が、塗被紙の表裏差を少なくし、ヒジワ又はコックリングと呼ばれる外観上の波打ちを防ぐことに効果があることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る塗被紙の製造方法は、プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部と、金属ロールと弾性ロールで組み合わされた一対のニップを持つソフトカレンダーが4基又は5基を通して塗被紙を処理する仕上げ部と、が一体となった1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、前記ソフトカレンダーを通す際に、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面が、前記シュープレスのフェルト側に接した原紙面に塗被した面であるフェルト側塗被面側、シュープレスのベルト側に接した原紙面に塗被した面であるベルト側塗被面側、ベルト側塗被面側、フェルト側塗被面側の順になるように通紙することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る塗被紙の製造方法では、前記フィルムサイザーにおいて、接着剤を主成分とする固形分濃度が13〜18質量%の水性液が塗布されることが好ましい。高濃度の水溶液を使用して原紙への水の持ち込みを抑え、かつ、原紙への水分移行を少なくすることによって、原紙の伸び若しくは縮みを抑制し、ヒジワ又はコックリングをより抑制することができる。
【0015】
本発明に係る塗被紙は、本発明に係る塗被紙の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部と、金属ロールと弾性ロールで組み合わされた一対のニップを持つソフトカレンダーが4基又は5基を通して塗被紙を処理する仕上げ部と、が一体となった1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、塗被紙の表裏差を少なくし、ヒジワ又はコックリングと呼ばれる外観上の波打ちを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[作用]
まず、本発明の作用について説明する。ソフトカレンダー処理では、塗被紙の平滑度向上・光沢発現のために100℃〜200℃の高温となるが、ニップを通過する毎に塗被紙の水分が失われていく。塗被紙の水分が最も高い1ニップ目に、金属ロール面に当たった塗被紙の面は、表面が可塑化しやすく、最も白紙光沢、平滑性が出やすくなる。したがって、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ場合には、塗被量差をつけて表裏差を少なくしているといえども、平滑が劣る、シュープレスのフェルト側に接した原紙面に塗被した面(以下、「フェルト側塗被面又はF」という。)を金属ロールに当てる必要がある。
【0018】
次いで2ニップ目は、シュープレスのベルト側に接した原紙面に塗被した面(以下、「ベルト側塗被面又はB」という。)を金属ロールに当て、更に3ニップ目はベルト側塗被面を金属ロールに当て、4ニップ目にはフェルト側塗被面を金属ロール面に当てて、塗被紙表裏の均一化を図る必要がある。
【0019】
塗被紙水分との関係で、1ニップ目では最もソフトカレンダー処理による効果が高く、次いで2ニップ目、3ニップ目となるが、塗被紙の脱水が進むにつれて処理効果は順に少なくなると考えられる。4ニップ目では、処理効果が更に低い。
【0020】
したがって、紙くせ、カールを防ぐために、金属ロールに当てる回数を塗被紙表裏共に同じくするためには、フェルト側塗被面、ベルト側塗被面、ベルト側塗被面、フェルト側塗被面の順が不可欠である。
【0021】
次に、本発明に係る塗被紙の製造方法を説明する。本実施形態に係る塗被紙の製造方法は、プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部と、金属ロールと弾性ロールで組み合わされた一対のニップを持つソフトカレンダーが4基又は5基を通して塗被紙を処理する仕上げ部と、が一体となった1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、前記ソフトカレンダーを通す際に、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面が、前記シュープレスのフェルト側に接した原紙面に塗被した面であるフェルト側塗被面側、シュープレスのベルト側に接した原紙面に塗被した面であるベルト側塗被面側、ベルト側塗被面側、フェルト側塗被面側の順になるように通紙する。
【0022】
原紙抄造部であるワイヤーパート部には、オントップフォーマー、とりわけ高速抄造に適したギャップフォーマーが適している。坪量としては、30g〜80g/mである。酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙のいずれで抄造されてもよい。また、メカニカルパルプを含む中質原紙又は古紙パルプを含む原紙若しくは上質原紙としてもよい。
【0023】
ワイヤーパート部での紙層は、次いでプレスパートに移行され、更に脱水される。本実施形態では、プレスパートは、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスをもつ。高速に適したプレスパートは、通常、2基のシュープレスから成り立ち、1基目は湿紙をフェルト−フェルトで挟み込み、湿紙の両面から脱水させる。2基目は、フェルト−ベルトで挟み込み、湿紙の再湿潤を防ぎながら脱水させる。なお、フェルト−ベルトにすることによって、幅方向の水分プロファイルが安定する利点があり、広く採用されている。
【0024】
プレスパートで脱水された湿紙は、プレドライヤーパートに移行され、乾燥される。プレドライヤーパートは、通常オープンドローがないシングルデッキドライヤーを用いる。
【0025】
プレドライヤー後、フィルムメタリングサイズプレスなどのフィルムサイザーで、澱粉などの水性接着剤を13〜18質量%濃度で、両面絶乾で1.0〜2.4g/m、例えば2g/m程度塗布し、アフタードライヤーにて乾燥して、原紙への表面平滑性の付与、内部結合強度の向上及びバリヤー性の向上を図る。
【0026】
フィルムサイザーにおいて、接着剤を主成分とする固形分濃度が13〜18質量%、好ましくは14〜17質量%の水性液が塗布されることが本発明においては特に重要である。一般的に、フィルムサイザーによって澱粉などを主体とする接着剤の水性液を原紙に塗布し、原紙表面強度の向上及びに塗料の浸み込みの防止を図り、かつ、内部結合強度の向上によってオフ輪印刷時の耐ブリスター性の向上が図られている。そのためには、接着剤の固形分濃度を、通常12質量%以下、好ましくは10質量%以下とすることによって目的を十分果たせることができる。
【0027】
意外なことに、本発明のような1200m/分を超える高速オンマシン塗被においては、フィルムサイザーにおける接着剤濃度は、単に原紙表面強度や内部結合強度を上げるだけでなく、別の影響を与えることを本発明者らは見出した。すなわち、本発明者らは、ヒジワ又はコックリングと呼ばれる外観上の欠点に、接着剤の固形分濃度が深く関係することを見出した。その理由は明確ではないが、水性液を塗布するため、接着剤が所定濃度以下の場合には、水の浸み込みによる原紙の伸び及びその後の乾燥による縮みが発生し、塗被、ソフトカレンダー処理してもヒジワ、コックリングと呼ばれる外観上の波打ちが発生するものと推定される。なお、本発明で使用する塗被紙製造設備は、抄造速度1200m/分以上、例えば、1200〜1800m/分の設備を想定している。ここで、上限の1800m/分は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0028】
澱粉などの接着剤の塗布量は、所望の表面強度及び内部結合強度で変わるが、1.0〜2.4g/m、一般的には両面絶乾で2g/m・前後である。
【0029】
原紙への水の浸み込みを軽減するためには、接着剤を所望塗布量つけるに際して、高濃度にすることによって、水の持ち込みを抑えることができるし、また、高濃度にするにつれて水性液粘度が上昇し、原紙への水分移行を少なくすることができる。接着剤濃度が13質量%未満の場合は、粘度も低く、水の持ち込み量が多いので、原紙の伸び及びその後の乾燥による縮みが発生し、塗被、ソフトカレンダー処理してもヒジワ又はコックリングと呼ばれる外観上の波打ちが発生する場合がある。一方、接着剤濃度が18%を超えると外観上の波打ちは発生しないものの、所望塗布量に制御することが困難であり、塗布量が多く付きすぎるときは、塗被紙の透気抵抗度(ガーレー)(JIS P 8117:1998)が急激に高くなり、耐ブリスター性は悪化してしまう場合がある。
【0030】
澱粉などの接着剤としては、熱化学変性用のアセチルタピオカ澱粉、熱化学変性用のコーン澱粉、酸化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉などが適している。
【0031】
なお、澱粉などの水性接着剤を13〜18質量%濃度で塗布する代わりに、水性接着剤とクレー、炭酸カルシウム等のピグメントとを1:2〜1.2:1、例えば1:1の質量比で混ぜ合わせたピグメントサイズと呼ばれる塗布液を濃度30質量%以上、好ましくは32〜40質量%で塗布しても同様な効果が期待できる。
【0032】
その後に、ブレードコータによる塗被部(コーターパート)で、片面ずつ塗液が塗被され、赤外ドライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤーなどの乾燥機を用いて乾燥する。塗被量は、両面絶乾で12〜30g/mが好ましい。
【0033】
ブレードコータで塗被される塗料は、顔料、接着剤、助剤などから構成される。
【0034】
顔料は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリンクレー、デラミクレー、二酸化チタンなどの無機顔料、密実タイプや中空タイプのプラスチックピグメントなどの有機顔料を用いることができ、必要に応じて2種類以上混合して使用する。
【0035】
接着剤は、ラテックス、酸化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、カゼイン、大豆蛋白、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが用いられる。
【0036】
助剤には、分散剤、消泡剤、保水剤、増粘剤、耐水化剤、青味顔料、染料、蛍光染料などが用いられる。
【0037】
このようにして塗被、乾燥された塗被紙は、100℃以上の高温、線圧100kN/m以上、好ましくは150〜300kN/mのソフトカレンダー処理によって光沢、平滑付けの仕上げが施される。
【0038】
ソフトカレンダーは、金属ロールと樹脂ロールが一対のニップを形成し、4基から5基設置されて4ニップから5ニップで塗被面を処理する。金属ロールは、オイルなどの熱媒体を内部に流通させて80℃〜230℃程度まで加熱される。本発明においては、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面が、フェルト側塗被面側、ベルト側塗被面側、ベルト側塗被面側、フェルト側塗被面側の順になるように通紙する。
【0039】
ソフトカレンダーを5基設置している場合は、最後の5ニップ目はベルト側、フェルト側のどちら塗被紙の面を金属面にあてても構わない。
【実施例】
【0040】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に示す。なお、各実施例はテストプラントによるテスト例であることを付記する。
【0041】
塗被紙の品質評価は次の方法による。
1.白紙光沢
JIS P 8142:2005「紙及び板紙‐75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。
2.平滑度
JIS P 8119:1998「紙及び板紙‐ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定した。
3.外観評価(波打ち評価)
ソフトカレンダー処理後の巻き取りから30cm×60cmのサンプルを切り出し、24時間室温で放置し、表面の外観を目視評価した。
ヒジワ・コックリングなどの波打ちがないもの ○
ヒジワ・コックリングなどの波打ちを若干感じるもの(実用上下限) △
ヒジワ・コックリングなどの波打ちが目立つもの(実用に耐えない) ×
4.オフ輪印刷のブリスター評価
三菱重工社製オフセット輪転機リソピア(BT 2L−800NEO) 印刷速度:600rpm
紙面温度140℃でブリスターを発生しないもの ○
紙面温度140℃でブリスターを発生するもの(実用に耐えない) ×
【0042】
(実施例1)
原紙抄造のための紙料は、叩解度としてカナダ標準フリーネス(CSF)600mlの針葉樹(N)パルプ20質量%と叩解度としてCSF450mlの広葉樹(L)パルプ80質量%の配合に、市販カチオン澱粉 ネオタック30T(日本食品加工株式会社製)を0.2重量%添加し、軽質炭酸カルシウム TP121(奥多摩工業株式会社製)を填料率が8質量%となるように、市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 パーコール292(アライドコロイド社製)を0.03質量%添加した。原紙は、ワイヤーパート部がメッツオペーパー社製ギャップフォーマー、プレスパート部がメッツオ社タンデム型シュープレスを用いて、1基目がフェルト−フェルトでのプレス脱水、2基目がフェルト−ベルトでの脱水後、オープンドローがないシングルデッキドライヤーによって乾燥させて得られた。得られた原紙の坪量は、45g/mであった。ついで、メッツオペーパー社製オプチサイザーを用いたメタリングサイズプレス装置によって、熱化学変性用アセチルタピオカ澱粉 MS5300(日本食品加工株式会社製)を定法によって蒸煮後、14質量%の固形分濃度で、両面絶乾で2g/m塗布し、乾燥した。その後、ブレードコータによって両面で23g/mになるよう塗料を塗被、乾燥した。塗料は、顔料としてアマゾン88(カダム社製)30質量部及び湿式重カル カービタル90(イメリス社製)70質量部を用い、接着剤として、尿素燐酸エステル化澱粉 MS4600(日本食品加工株式会社製)を1質量部、ラテックスとしてJSR株式会社製 2788G を10質量部用い、塗料固形分は65%であった。なお、原紙抄造から塗被・乾燥までの工程を、すべて1600m/分の抄造速度にて実施した。塗被紙の仕上げは、メッツオペーパー社製ソフトカレンダー オプチソフトを用い、金属ロール温度130℃、ニップ線圧300kN/mで4ニップ通過とした。金属ロールに当たる順番は、フェルト側塗被面−ベルト側塗被面−ベルト側塗被面−フェルト側塗被面であった。ソフトカレンダー処理速度は、本生産工程と同様の1600m/分に該当するよう設定した。以上によって、実施例1の塗被紙を得た。
【0043】
(実施例2)
ソフトカレンダーの金属ロール温度を180℃、ニップ線圧350kN/mとした以外は実施例1と同様にして、実施例2の塗被紙を得た。
【0044】
(実施例3)
サイズ液を尿素燐酸エステル化澱粉 MS4600(日本食品加工株式会社製)を定法によって蒸煮後、濃度17質量%にて塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例3の塗被紙を得た。
【0045】
(実施例4)
実施例1において熱化学変性用アセチルタピオカ澱粉MS5300の14質量%の水性接着剤を塗布する代わりに、尿素燐酸エステル化澱粉 MS4600(日本食品加工株式会社製)と、クレー及び炭酸カルシウムのピグメントとを1:1の質量比で混ぜ合わせた濃度35質量%のピグメントサイズ(塗布液)を塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例4の塗被紙を得た。ピグメントサイズの塗布量は両面絶乾で2.4g/mとした。
【0046】
(比較例1)
ソフトカレンダー処理時に金属ロールに当たる順番を、ベルト側塗被面−フェルト側塗被面−フェルト側塗被面−ベルト側塗被面とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の塗被紙を得た。
【0047】
(比較例2)
ソフトカレンダー処理時に金属ロールに当たる順番を、フェルト側塗被面−ベルト側塗被面−フェルト側塗被面−ベルト側塗被面とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の塗被紙を得た。
【0048】
(比較例3)
ソフトカレンダー処理時に金属ロールに当たる順番を、ベルト側塗被面−フェルト側塗被面−フェルト側塗被面−ベルト側塗被面とし、メタリングサイズプレス装置で、熱化学変性用アセチルタピオカ澱粉 MS5300(日本食品加工株式会社製)を定法によって蒸煮後、10質量%の固形分濃度で、両面絶乾で2g/m・塗布・乾燥した以外は実施例1と同様にして、比較例3の塗被紙を得た。
【0049】
(比較例4)
ソフトカレンダー処理時に金属ロールに当たる順番を、ベルト側塗被面−フェルト側塗被面−フェルト側塗被面−ベルト側塗被面とし、メタリングサイズプレス装置で、尿素燐酸エステル化澱粉 MS4600(日本食品加工株式会社製)を定法によって蒸煮後、22質量%の固形分濃度で、両面絶乾で2.8g/m・塗布・乾燥した以外は実施例1と同様にして、比較例4の塗被紙を得た。
【0050】
(比較例5)
ソフトカレンダー処理時に金属ロールに当たる順番を、ベルト側塗被面−フェルト側塗被面−フェルト側塗被面−ベルト側塗被面とした以外は実施例4と同様にして、比較例5の塗被紙を得た。
【0051】
以上の結果を表1に示した。
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、実施例1〜4は白紙光沢、平滑度ともに表裏差が少なく、外観も優れている。一方、比較例1は、金属ロールに当たる塗被面をB,F,F,Bの順としたので、表裏差が大きかった。比較例2は、金属ロールに当たる塗被面をF,B,F,Bの順としたので、表裏差が大きかった。比較例3は、金属ロールに当たる塗被面をB,F,F,Bの順とし、かつ、サイズ液の固形分濃度が10質量%と低いため、表裏差が大きく、かつ、塗被紙の外観がコックリング状になり、劣る。比較例4は、金属ロールに当たる塗被面をB,F,F,Bの順とし、かつ、サイズ液の固形分濃度が22質量%と高いため、表裏差が大きく、かつ、澱粉の塗布量が制御しづらく、塗布量が多いためにオフ輪印刷でのブリスターが発生した。実施例4はピグメントサイズを塗布したが、実施例1と同様に白紙光沢、平滑度ともに表裏差が少なく、外観も優れていた。ただし、金属ロールに当たる塗被面をB,F,F,Bの順とした以外は実施例4と同様にして得られた比較例5は、白紙光沢と平滑度の表裏差が大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスパートに、脱水がフェルト−ベルトで構成されてなる少なくとも1基のシュープレスを持つ原紙抄紙部と、フィルムサイザーと、塗被部と、金属ロールと弾性ロールで組み合わされた一対のニップを持つソフトカレンダーが4基又は5基を通して塗被紙を処理する仕上げ部と、が一体となった1200m/分以上の塗被紙製造設備を用いる塗被紙の製造方法において、
前記ソフトカレンダーを通す際に、最初の4ニップの金属ロール面に当たる塗被紙の面が、前記シュープレスのフェルト側に接した原紙面に塗被した面であるフェルト側塗被面側、シュープレスのベルト側に接した原紙面に塗被した面であるベルト側塗被面側、ベルト側塗被面側、フェルト側塗被面側の順になるように通紙することを特徴とする塗被紙の製造方法。
【請求項2】
前記フィルムサイザーにおいて、接着剤を主成分とする固形分濃度が13〜18質量%の水性液が塗布されることを特徴とする請求項1に記載の塗被紙の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗被紙の製造方法によって製造されたことを特徴とする塗被紙。

【公開番号】特開2008−231591(P2008−231591A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69275(P2007−69275)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】