説明

塗装ブースにおけるミスト捕集用バッフル箱

【課題】 バッフル式塗装ブースのメンテナンス上で最も重要なバッフル板交換が容易にでき、作業者の負担を軽減し、コストの削減も可能にする。
【解決手段】 乾式塗装ブースに使用するバッフルであって、平板のほぼ全域に縦に長く伸びたコの字状の切目を、平行にかつ交互に複数箇所設け、それぞれの切目の両端部を結ぶ線で折り曲げて開口窓を開けるとともに、平板の周囲を立ち上げて箱状に形成したバッフル箱を形成し、このバッフル箱を互いに向かい合わせた時に、前記開口窓の位置が他方のバッフル箱の開口窓とは互い違いになるように組み合わされ、塗装ブースに組み込まれるように構成した。バッフル箱はダンボール紙により形成され、切目位置を左右非対象として、向かい合わせたときに前記開口窓の位置が互い違いになるよう形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブース内に噴霧された塗料用ミストを直接バッフル板に衝突させて付着させ、塗料を捕集する方式の塗装ブースに使用するバッフル箱に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装用ブースは、塗料ミストの捕集方法により、大きく分けて乾式と湿式に分類され、乾式の場合は主としてフィルタを用いて捕捉する方式と衝突板により塗料の粘着力によって捕捉する方式が知られている。フィルタの場合は目を細かくすれば細かい塗料ミストまでも捕集できるが、通常の塗料の場合には粘着力が残っておりすぐに目詰まりを起こして使用不能になる。一方衝突板を用いる方式は気流通路が広く取れるため目詰まりも無く使用できる利点がある。
【0003】
一般的に乾式の塗装ブースは取扱い管理が容易なため、スプレー後にも粘着性が残る塗料の塗装用ブースとして広く採用されており、その代表的な装置として特公昭52-33825号公報に見られる塗装室がある。ここに示されているように、衝突板となるミスト捕集板(バッフル板)はダンボール紙のごとき可燃性の材質で断面がコの字状に折り曲げられたチャンネル形状を有しており、これらの内側を互いに向かい合わせるように、かつ隙間を形成して多数併設し、これによって曲折した気流通路を通過する間に塗料ミストが効率的に付着捕集される構成になっている。
【0004】
そしてバッフル板は図7に示されるように、取扱い上の適合性から、コの字状に折り曲げたバッフル板を50cmほどの長さに揃え、塗装室前面の内側と外側に、折り曲げた側を向かい合わせるように、かつ互い違いに組み込む構成が採られていた。したがって比較的小さい間口2mの塗装ブースで100枚を超えるバッフル板が使用されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭52−033825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッフル板に付着した塗料ミストは徐々に堆積し、次第に通気面積が狭くなり通気抵抗が増加すると吸引力が低下して塗装室内に噴霧された塗料ミストの吸引が十分にできなくなり、いずれバッフル板を交換することになる。この場合バッフル板は塗装ブースの開口部全面に組み込まれており、前記のように多数の交換が必要であり、その交換時には多大の労力と時間を要することになる。
【0007】
またこれらの乾式塗装ブースは、塗料粒子の粘着力によって付着させて捕捉する仕組みのため、水膜やシャワーを使用した湿式の塗装室に比較して捕集効率が低いことから、前記バッフル板に付着し易いように起毛性のフィルタ材を貼るなどの工夫がされている。これによって比較的乾燥しやすい塗料にも使用できることになるが、その機能を維持するためには比較的早い段階でバッフル板の交換が必要であり、しかもコスト的にも高いバッフル板となるために使用者の負担が大きくなる状況があった。
【0008】
本発明は、上記の問題に対し、バッフル式塗装ブースのメンテナンス上で最も重要なバッフル板交換が容易にでき、作業者の負担を軽減することを目的とし、さらに全体コストが削減できることを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0009】
乾式塗装ブースに使用するバッフルであって、平板のほぼ全域に縦に長く伸ばしたコの字状の切目を、平行にかつ交互に複数箇所設け、それぞれの切目の両端部を結ぶ線で折り曲げて開口窓を開けるとともに、平板の周囲を立ち上げて箱状に形成したバッフル箱を形成し、このバッフル箱を互いに向かい合わせた時に、前記開口窓の位置が他方のバッフル箱の開口窓とは互い違いになるように組み合わされ、塗装ブースに組み込まれるように構成したミスト捕集用バッフル箱
【0010】
またバッフル箱の切目位置を左右非対象として、向かい合わせたときに前記開口窓の位置が互い違いになるよう形成することによって同じもので互い違いに組合せ構成することができ、さらに1枚板を真中で折り曲げることで異なる切目位置によって互い違いになる開口が組み合わされるバッフル箱を形成することもできる。これらのバッフル箱はダンボール紙により形成すれば、安価になる。

【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、バッフル式塗装ブースのミスト捕集手段として塗装室前面に設けられたバッフル板は、数枚のバッフル板がセットになったバッフル箱を嵌め込むだけであり、極めて簡単に取り付けることができる。すなわちバッフル箱は平板上に切り込みが施されており、予め決められた必要な折り目に沿って折り曲げることによって開口窓が形成され、いくつかのバッフル板が併設された定形のバッフル箱が簡単に製作できる。これらのバッフル箱の内側を互いに向き合わせ、かつ開口窓が互い違いになるようにセットし、塗装ブースの開口窓に順次嵌め込む事によって簡単に取付けが完了する。
【0012】
2つのバッフル箱を向かい合わせたときに、折り曲げによる開口窓が互い違いになるようにするには、予めバッフル箱の開口窓が異なる2種類を準備するか、開口窓の位置が非対象に設けられたバッフル箱によって構成することができ、誰でも簡単にセットすることが可能である。このように塗装ブースの開口窓に対して箱単位で嵌め込むことができることで、従来100枚を超えるようなバッフル板の取り替え作業も10数個のバッフル箱を交換すれば良く、作業者の負担、メンテナンス時間が削減される。
【0013】
またバッフル箱は、一枚板で切り込み成形されるので、使用前は無駄な空間が無く、保存管理や輸送時の嵩を最小限にできるために、これらに係るコストも押さえることが可能となる。さらにダンボール紙とすることでリサイクル紙を有効活用でき、使用後の焼却処分も簡単になる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明を実施する塗装ブースの一例を示す一部を断面とした正面図、図2は同じく側面図である。一般的に汎用の乾式塗装ブースとしてのバッフル式塗装ブース1は、塗装室2の前面に塗料ミストを捕捉するバッフル板3とその後部にフィルタ4を配置し、該フィルタの後部に設けた排気室5に排気扇6が接続されている。塗装室内に噴霧され被塗装物に塗着されなかった塗料ミストは排気扇6による吸引気流にのって引かれ、バッフル板3によって形成された曲折する隙間を通過しきれずに衝突して付着し捕集される。わずかに通過した塗料ミストは後部のフィルタ4によって捕捉され清浄化された空気が排気室から排気扇6を通して排気される。
【0015】
本発明におけるバッフル板は、図3に示すように複数のバッフル板が組み合わされた箱状のバッフル箱がいくつか並べられて塗装室2の前面に配置される。図3に示すバッフル箱10は可燃性のダンボール紙で製作され、図4に展開図を示すように平板に縦に長く伸ばしたコの字状の切れ目11を入れ、両端部を結ぶ折線13(図4では点線で示す)折り曲げることによって斜めに流れ込む空間(開口窓12)を形成する。この実施例では隣り合う空間が互いに対象方向になるように配置しており、隣り合う折り曲げ部14は山形を形成している。したがって前記切れ目は隣り合う部分では”工”形の切れ込みになって全体が開口している。
【0016】
さらに、前記山形の折り曲げ部14は塗装室側のバッフル箱10Aと排気室側のバッフル箱10Bが、互いに向き合わされ、そのときの開口窓12の位置が互い違いになるように形成されて、1つのセットとして構成されている。製作する場合には図のように別々に製作することでも、図4の展開図で示すように1つのセットを1枚のダンボールによって製作し、折り曲げによって組み合わされるようにしても良い。
【0017】
また別々に製作する場合でも、図6の断面図で理解されるように、切り込み位置を非対象にすることによって、組み合わせるときに回転させ定置を変えれば同じバッフル箱で前記のように折り曲げ部14の山形が向かい合わせで、かつ互い違いの開口窓12に配置させることもできる。
【0018】
バッフル箱は予め折り線を加工しておくことによって、塗装ブースにセットするときに指定の箇所を折り曲げれば簡単に製作でき、保管や輸送時の容積をいたずらに多くすることがない。また塗装ブースに組み付ける場合には従来に比較しわずかな数のバッフル箱を取り付けるだけでよく、作業が極めて容易になる。特に図示しなかったが、バッフル箱の組み込みは、予め塗装ブースに取り付けられた固定具に押し込むか、嵌め込むなどの方法で簡単に取り付けられる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用される塗装ブースの一実施例を示す正面図。
【図2】図1の塗装ブースで内部の一部を点線で示した側面図。
【図3】塗料ミスト捕捉用バッフル箱の一例を示す構成図。
【図4】図3のバッフル箱を製作する時の一側部分の展開図。
【図5】バッフル箱の他の実施例を示す構成図
【図6】バッフル箱の他の実施例を示す構成図
【図7】従来のバッフル板の構成図
【符号の説明】
【0020】
1 塗装ブース
2 塗装室
3 バッフル板
4 フィルタ
5 排気室
6 排気扇
10 バッフル箱
11 切れ目
12 開口窓
13 折線
14 折り曲げ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式塗装ブースに使用するバッフルであって、平板のほぼ全域に縦に長く伸ばしたコの字状の切目を、平行にかつ交互に複数箇所設け、それぞれの切目の両端部を結ぶ線で折り曲げて開口窓を開けるとともに、平板の周囲を立ち上げて箱状に形成したバッフル箱を形成し、このバッフル箱を互いに向かい合わせた時に、前記開口窓の位置が他方のバッフル箱の開口窓とは互い違いになるように組み合わされ、塗装ブースに組み込まれるように構成されたミスト捕集用バッフル箱。
【請求項2】
前記バッフル箱はダンボール紙により形成された請求項1のミスト捕集用バッフル箱。
【請求項3】
バッフル箱の切目位置を左右非対象に形成し、2つの同じバッフル箱を向かい合わせたときに前記開口窓の位置が互い違いになるよう形成した請求項1のミスト捕集用バッフル箱。
【請求項4】
前記互いに向かい合わせるバッフル箱をそれぞれ形成する前記平板を、1枚の板で形成し、折り曲げにより開口窓が互い違いに組み合わされる請求項1のミスト捕集用バッフル箱。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137186(P2010−137186A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317577(P2008−317577)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】