説明

塗装ブース垂直循環搬送機構

【課題】自動車ボディの優れた塗装品質を発揮して台車可動効率を高めるとともに塗装ラインの省スペース化を達成できる塗装ブース垂直循環搬送機構を提供すること。
【解決手段】自動車ボディWを搭載した塗装ブース専用台車110を塗装開始位置P1から塗装終了位置P2に搬送する塗装用搬送コンベヤ120とこの自動車ボディWを塗装終了位置P2で乾燥ブースDB側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車110を塗装開始位置P1に返送する台車返送用コンベヤ130とが塗装ブースPB内の上下エリアに配置されている塗装ブース垂直循環搬送機構100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車製造ラインの塗装ラインにおいて自動車ボディを搬送するための塗装ブース搬送機構に係わり、さらに詳しくは、塗装ブースの上下エリア内で塗装ブース専用台車を循環搬送させる塗装ブース垂直循環搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような自動車ボディの塗装ブース搬送機構として、自動車ボディに塗装を施すための塗装ブースの床面に自動車ボディを搭載した複数のコンベヤ台車を搬送チェーンで牽引して走行させるコンベヤを備えたものがある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平6−238206号公報(第1頁−第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような自動車ボディの塗装ブース搬送機構は、自動車ボディを搭載したコンベヤ台車が、自動車ボディに塗装する塗装ブースとこの塗装ブースで塗装された自動車ボディで乾燥する乾燥ブースなどで構成される塗装ラインを連続して走行するように構成されているため、塗装ブース内で付着したコンベヤ台車の汚れを乾燥ブース内に持ち込み、乾燥ブース内で乾燥した塗料カスが埃となって自動車ボディに再び付着して、塗装品質を悪化させるという問題があり、また、コンベヤ台車に付着して硬化した塗料カスを定期的に洗浄除去しなければならないという保守メンテナンス上の厄介な問題があり、しかも、自動車ボディを搭載するコンベヤ台車が、自動車ボディよりはみ出しているため、上述したコンベヤ台車の汚れを更に助長するという問題があった。
【0004】
さらに、塗装ラインを搬送した後のコンベヤ台車を返送するために、塗装ラインを敷設した同一水平床面に連続した返送ラインのための新たな敷設面積を必要として自動車製造ラインの省スペース化を達成できないというライン設計上の問題があり、また、このような同一水平床面に連続した塗装ラインと返送ラインではコンベヤ台車が同一速度で移動しているため、自動車ボディを搭載するコンベヤ台車以外に返送するためのコンベヤ台車が多数必要となるという台車可動効率上の問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述したような従来技術の問題点を解消するものであって、
自動車ボディの優れた塗装品質を発揮して台車可動効率を高めるとともに塗装ラインの省スペース化を達成できる塗装ブース垂直循環搬送機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、自動車ボディを搭載した塗装ブース専用台車を塗装開始位置から塗装終了位置に搬送する塗装用搬送コンベヤと前記自動車ボディを塗装終了位置で乾燥ブース側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車を塗装開始位置に返送する台車返送用コンベヤとが塗装ブース内の上下エリアに配置されていることにより、上述した課題を解決している。
【0007】
そして、本発明の請求項2に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項1記載の構成に加えて、前記台車返送用コンベヤの返送速度が前記塗装用搬送コンベヤの搬送速度より高速であることにより、上述した課題を解決している。
【0008】
また、本発明の請求項3に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記塗装用搬送コンベヤが塗装ブース専用台車を牽引しながら車輪走行させる牽引駆動手段を備えているとともに、前記台車返送用コンベヤが塗装ブース専用台車をフリクション走行させるフリクション駆動手段を備えていることにより、上述した課題を解決している。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項3記載の構成に加えて、前記牽引駆動手段が前記塗装ブース専用台車の左右いずれか一方にオフセット配置されていることにより、上述した課題を解決している。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構成に加えて、前記塗装ブース専用台車が、自動車ボディを支承するフロント側支持アームとリア側支持アームと前記フロント側支持アームとリア側支持アームとをそれぞれ支承して車輪走行する前後一対の車輪支持アームと前記車輪支持アームの相互間に連結されてフリクション走行するフリクションバーとで構成されていることにより、上述した課題を解決している。
【0011】
そして、本発明の請求項6に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項5記載の構成に加えて、前記フロント側支持アームとリア側支持アームが、前記フリクションバーに対して直交した自動車ボディ支承状態と前記フリクションバーと平行配列した台車返送状態との間で切り替え自在に軸支されていることにより、上述した課題を解決している。
【0012】
なお、本発明の塗装ブース垂直循環搬送機構が適用される「自動車ボディ」とは、自動車ボディの全体もしくはその一部、シャーシー等のことである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、自動車ボディを搭載した塗装ブース専用台車を塗装開始位置から塗装終了位置に搬送する塗装用搬送コンベヤと前記自動車ボディを塗装終了位置で乾燥ブース側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車を塗装開始位置に返送する台車返送用コンベヤとが配置されていることにより、自動車ボディを塗装終了位置で乾燥ブース側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車が乾燥ブース側へ侵入することなく塗装ブース内の塗装開始位置に返送されるため、塗装ブース専用台車に付着した塗料などの汚れを乾燥ブース側へ持ち込んで乾燥してなる塗装カスの自動車ボディに対する再付着を回避して、自動車ボディを優れた塗装品質で仕上げることができ、また、塗装ブース専用台車に付着した塗料を乾燥させることなく,ウェットな状態で洗浄除去することができるので、塗装ブース専用台車の保守メンテナンスを簡便に達成できる。
【0014】
そして、本発明の請求項1に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、塗装用搬送コンベヤと台車返送用コンベヤとが塗装ブース内の上下エリアに配置されていることにより、塗装ブース専用台車を塗装ブースの上下エリア内で垂直循環させることができるため、台車返送用コンベヤを塗装用搬送コンベヤと連続した同一水平床面に敷設する必要がなくなり、塗装ラインの省スペース化を達成でき、さらに、台車返送用コンベヤを塗装用搬送コンベヤの下方に配置した場合には、塗装用搬送コンベヤで搬送されながら塗装される自動車ボディが台車返送用コンベヤ側で生じている汚れの影響を回避できる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項1記載の発明が奏する効果に加えて、前記台車返送用コンベヤの返送速度が塗装用搬送コンベヤの搬送速度より高速であることにより、台車返送用コンベヤ上のブース専用台車を少なくすることができるため、塗装ライン全体としての台車可動効率を高めることができる。
【0016】
さらに、本発明の請求項3に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項1または請求項2記載の発明が奏する効果に加えて、前記塗装用搬送コンベヤが塗装ブース専用台車を牽引しながら車輪走行させる牽引駆動手段を備えているとともに、台車返送用コンベヤが塗装ブース専用台車をフリクション走行させるフリクション駆動手段を備えていることにより、台車返送用コンベヤの返送速度を塗装用搬送コンベヤの搬送速度より高速することが確実に達成できる。
【0017】
加えて、本発明の請求項4に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項3記載の発明が奏する効果に加えて、前記牽引駆動手段が前記塗装ブース専用台車の左右いずれか一方にオフセット配置されていることにより、塗装ブース垂直循環搬送機構の全体的な高さ寸法を低減でき、しかも、台車返送用コンベヤを塗装ブース内の下エリアとなる床下に配置する場合には台車返送用コンベヤを設置するためのピットの深さを浅くできるとともに、その保守メンテナンスも簡便となる。
【0018】
そして、本発明の請求項5に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明が奏する効果に加えて、前記塗装ブース専用台車が、自動車ボディを支承するフロント側支持アームとリア側支持アームと前記フロント側支持アームとリア側支持アームとをそれぞれ支承して車輪走行する前後一対の車輪支持アームと前記前後一対の車輪支持アームに連結されてフリクション走行するフリクションバーとで構成されていることにより、自動車ボディを搭載する塗装ブース専用台車が自動車ボディよりはみ出しを回避して塗装ブース専用台車の塗料汚れを抑制するため、塗装ブース専用台車の塗料汚れに起因する自動車ボディの塗料付着を低減できる。
【0019】
また、本発明の請求項6に係る塗装ブース垂直循環搬送機構は、請求項5記載の発明が奏する効果に加えて、前記フロント側支持アームとリア側支持アームが、フリクションバーに対して直交した自動車ボディ支承状態と前記フリクションバーと平行配列した台車返送状態との間で切り替え自在に軸支されていることにより、台車返送用コンベヤの設置幅を狭小化して設置するための省スペース化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の塗装ブース垂直循環搬送機構は、自動車ボディを搭載した塗装ブース専用台車を塗装開始位置から塗装終了位置に搬送する塗装用搬送コンベヤと前記自動車ボディを塗装終了位置で乾燥ブース側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車を塗装開始位置に返送する台車返送用コンベヤとが塗装ブース内の上下エリアに配置されていることにより、自動車ボディの優れた塗装品質を発揮して台車可動効率を高めるとともに塗装ラインの省スペース化を達成するものであり、その具体的態様は如何なるものであっても差し支えない。
【0021】
なお、本発明に用いる塗装用搬送コンベヤと台車返送用コンベヤの配置形態については、塗装ブース内の上下エリアが上下に隔離されていれば、塗装用搬送コンベヤと台車返送用コンベヤの上下配置関係はいずれであっても構わないが、好ましくは、台車返送用コンベヤを塗装用搬送コンベヤの下方に配置した場合には、上下の隔壁を格別に設置しなくても塗装用搬送コンベヤで搬送されながら塗装される自動車ボディが台車返送用コンベヤ側で生じている汚れの影響を受けることがない。
【0022】
そして、前記塗装用搬送コンベヤと台車返送用コンベヤとの間の塗装ブース専用台車の乗り継ぎ手段については、如何なるものであっても差し支えないが、昇降リフター装置などを用いた場合には乗り継ぎスペースをコンパクトに施工できる。
【0023】
また、本発明に用いる塗装ブース専用台車のフロント側支持アームとリア側支持アームと前後一対の車輪支持アームとのアーム長さについては、塗装用搬送コンベヤと台車返送用コンベヤで移送できれば如何なる大小関係であっても差し支えないが、車輪支持アームのアーム長さをフロント側支持アームとリア側支持アームのアーム長さより短くした方が塗装時の塗装汚れを回避し易く、円滑な車輪走行を実現でき、返送時の台車返送用コンベヤの設置幅を狭小化して省スペース化をより一段と達成できる。
【0024】
さらに、前記塗装ブース専用台車の牽引駆動手段については、塗装ブース専用台車を牽引しながら車輪走行させるものであれば、如何なるものであっても差し支えなく、例えば、搬送チェーンの上面に所定間隔で起伏自在な係止爪とこの係止爪に係合可能な塗装ブース専用台車の底部に備えたドグとで構成しても良い。また、前記塗装ブース専用台車のフリクション駆動手段については、塗装ブース専用台車をフリクション走行させるものであれば、如何なるものであっても差し支えなく、例えば、フリクションバーに当接してフリクション駆動するフリクションローラとこのフリクションローラがフリクションバーに対して昇降して調圧自在となるように台車返送用コンベヤ側の機枠フレームに取り付けられた付勢ばねまたはエア式ベローズとを備えた駆動形態などを採用しても何ら構わない。
【実施例】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例である塗装ブース垂直循環搬送機構100を説明する。
ここで、図1乃至図5は、本発明の一実施例である塗装ブース垂直循環搬送機構に関するものであって、図1は、本発明の一実施例である塗装ブース垂直循環搬送機構を模式的に示した概略図であり、図2は、塗装ブース専用台車を斜め上方から見た斜視図であり、図3は、塗装ブース専用台車の平面図であり、図4は、塗装用搬送コンベヤの牽引駆動手段と塗装ブース専用台車との関連図であり、図5は、台車返送用コンベヤのフリクション駆動手段と塗装ブース専用台車との関連図である。
【0026】
まず、図1に示すように、本実施例の塗装ブース垂直循環搬送機構100は、自動車ボディWを搭載した多数の塗装ブース専用台車110を塗装開始位置P1から塗装終了位置P2に順次搬送する塗装用搬送コンベヤ120が塗装ブースPB内の上側エリアに敷設されるとともに、前記自動車ボディWを塗装終了位置P2で乾燥ブースDB側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車110を塗装開始位置P1に順次返送する台車返送用コンベヤ130が塗装ブースPB内の下側エリアに敷設され、塗装ブースPBの上下エリア内で多数の塗装ブース専用台車110が垂直循環搬送するように構成したものである。
すなわち、本実施例では、塗装用搬送コンベヤ120上で塗料付着により汚れた塗装ブース専用台車110を塗装用搬送コンベヤ120の下方となる下側エリアに配置した台車返送用コンベヤ130で返送するようにレイアウト設計されているため、塗装用搬送コンベヤ120上で塗装している最中の自動車ボディWに塗装カスなどの汚れを付着させることがないようになっている。
なお、図1に示す符号140は、塗装用搬送コンベヤ120と台車返送用コンベヤ130との間の塗装ブース専用台車110の乗り継ぎ手段となる昇降リフター装置である。
【0027】
そして、本実施例の塗装ブース垂直循環搬送機構100では、台車返送用コンベヤ130の返送速度V2を塗装用搬送コンベヤ120の搬送速度V1より高速となるように構成することで、台車返送用コンベヤ130上で返送されるブース専用台車110の台数を少なくして、塗装ライン全体としてのブース専用台車110の台車可動効率を高めるようになっている。
【0028】
図2乃至図3に示すブース専用台車110の具体的な構造について詳しく説明する。
すなわち、本実施例で用いたブース専用台車110は、自動車ボディWを支承するフロント側支持アーム111とリア側支持アーム112とこれらのフロント側支持アーム111とリア側支持アーム112とをそれぞれ支承して車輪走行する前後一対の車輪支持アーム113、113とを備え、さらに、これら前後一対の車輪支持アーム113、113に連結されてフリクション走行するフリクションバー114を備えて、塗装ブース専用台車110を自動車ボディWよりはみ出さないようにして塗装ブース専用台車110の塗料汚れを抑制するようになっている。
なお、図2乃至図3の符号115は、車輪支持アーム113に取り付けられた車輪であり、符号121は、塗装用搬送コンベヤ120の一部を構成して搬送方向に延びる左右一対の搬送レールであり、この左右一対の搬送レール121、121上を塗装ブース専用台車110側の車輪115、115、115、115が搬送走行するようになっている。
【0029】
そして、前記フロント側支持アーム111とリア側支持アーム112が、フリクションバー114に対して直交した自動車ボディ支承状態とフリクションバー114と平行配列した台車返送状態との間で切り替え自在に軸支され、台車返送用コンベヤ130の設置幅を狭小化して設置することが可能になっている。
なお、図2乃至図3の符号116は、フロント側支持アーム111とリア側支持アーム112とを自動車ボディ支承状態と台車返送状態との間で切り替えガイド(図示しない)によって切り替えるためのスイッチングレバーである。
【0030】
図4乃至図5に示す塗装用搬送コンベヤ120の具体的なコンベヤ構造について詳しく説明する。
すなわち、本実施例で用いた塗装用搬送コンベヤ120は、図4に示すように、上述した左右一対の搬送レール121、121に加えて、塗装ブース専用台車110を牽引しながら車輪走行させる牽引駆動手段122を備え、さらに、この牽引駆動手段122は、駆動スプロケット122aによって周回駆動する搬送チェーン122bとこの搬送チェーン122bの上面に所定間隔で起伏自在な係止爪122cとで構成され、この係止爪122cを塗装ブース専用台車110の底面側部に備えたドグ(図示しない)に係合させて駆動するようになっている。
また、上述した牽引駆動手段122は、図4乃至図5に示すように、塗装ブース専用台車110の片側にオフセット配置され、塗装ブース垂直循環搬送機構100の全体的な高さ寸法を低減するようになっている。
なお、図4の符号122dは、駆動スプロケット122aを駆動させるための牽引駆動用モータである。
【0031】
図4乃至図5に示す台車返送用コンベヤ130の具体的なコンベヤ構造について詳しく説明する。
すなわち、本実施例で用いた台車返送用コンベヤ130は、図5に示すように、塗装ブース専用台車110の返送時に生じがちな左右振れを解消するために、前述した塗装用搬送コンベヤ120の搬送レール121、121と同幅の左右一対のガイドレール131、131を備えるとともに、塗装ブース専用台車110をフリクション走行させるフリクション駆動手段132を備え、さらに、このフリクション駆動手段132は、フリクションバー114に当接してフリクション駆動するフリクションローラ132aとこのフリクションローラ132aを回転駆動させるフリクション駆動用モータ132bとを備えている。
【0032】
このようにして構成された本実施例の塗装ブース垂直循環搬送機構100は、塗装ブースPBの上側エリアに敷設された塗装用搬送コンベヤ120によって自動車ボディWを搭載した塗装ブース専用台車110を塗装開始位置P1から塗装終了位置P2に搬送しながら各種の塗装処理を施した後、自動車ボディWを塗装終了位置P2で乾燥ブースDB側へ引き渡すとともに、塗装ブースPBの下側エリアに敷設された台車返送用コンベヤ130によって引き渡した後の塗装ブース専用台車110を塗装開始位置P1に返送することができる。
【0033】
したがって、本実施例の塗装ブース垂直循環搬送機構100は、自動車ボディWを塗装終了位置P2で乾燥ブースPB側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車110が乾燥ブースDB側へ侵入することなく塗装ブースPB内の塗装開始位置P1に返送される、所謂、塗装ブースPB内で専用して使用されるため、塗装ブース専用台車110に付着した塗料などの汚れを乾燥ブースDB側へ持ち込んで乾燥してなる塗装カスの自動車ボディWに対する再付着を回避して、自動車ボディWを優れた塗装品質で仕上げることができ、また、塗装ブース専用台車110に付着した塗料を乾燥させることなくウェットな状態で洗浄除去できるので、塗装ブース専用台車110の保守メンテナンスを簡便に達成でき、しかも、塗装ブース専用台車110を塗装ブースPBの上下エリア内で垂直循環できるため、台車返送用コンベヤ130を塗装用搬送コンベヤ120と連続した同一水平床面に敷設する必要がなく、塗装ラインの省スペース化を達成できるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例である塗装ブース垂直循環搬送機構の概略図。
【図2】本実施例に用いた塗装ブース専用台車を斜め上方から見た斜視図。
【図3】本実施例に用いた塗装ブース専用台車の平面図。
【図4】塗装用搬送コンベヤの牽引駆動手段と塗装ブース専用台車との関連図。
【図5】台車返送用コンベヤのフリクション駆動手段と塗装ブース専用台車との関連図。
【符号の説明】
【0035】
100 ・・・ 塗装ブース垂直循環搬送機構
110 ・・・ 塗装ブース専用台車
111 ・・・ フロント側支持アーム
112 ・・・ リア側支持アーム
113 ・・・ 車輪支持アーム
114 ・・・ フリクションバー
115 ・・・ 車輪
116 ・・・ スイッチングレバー
120 ・・・ 塗装用搬送コンベヤ
121 ・・・ 搬送レール
122 ・・・ 牽引駆動手段
122a・・・ 駆動スプロケット
122b・・・ 搬送チェーン
122c・・・ 係止爪
122d・・・ 牽引駆動用モータ
130 ・・・ 台車返送用コンベヤ
131 ・・・ ガイドレール
132 ・・・ フリクション駆動手段
132a・・・ フリクションローラ
132b・・・ フリクション駆動用モータ
140 ・・・ 昇降リフター装置
W ・・・ 自動車ボディ
PB ・・・ 塗装ブース
P1 ・・・ 塗装開始位置
P2 ・・・ 塗装終了位置
DB ・・・ 乾燥ブース
V1 ・・・ 搬送速度
V2 ・・・ 返送速度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ボディを搭載した塗装ブース専用台車を塗装開始位置から塗装終了位置に搬送する塗装用搬送コンベヤと前記自動車ボディを塗装終了位置で乾燥ブース側へ引き渡した後の塗装ブース専用台車を塗装開始位置に返送する台車返送用コンベヤとが塗装ブース内の上下エリアに配置されていることを特徴とする塗装ブース垂直循環搬送機構。
【請求項2】
前記台車返送用コンベヤの返送速度が、前記塗装用搬送コンベヤの搬送速度より高速であることを特徴とする請求項1記載の塗装ブース垂直循環搬送機構。
【請求項3】
前記塗装用搬送コンベヤが塗装ブース専用台車を牽引しながら車輪走行させる牽引駆動手段を備えているとともに、前記台車返送用コンベヤが塗装ブース専用台車をフリクション走行させるフリクション駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗装ブース垂直循環搬送機構。
【請求項4】
前記牽引駆動手段が、前記塗装ブース専用台車の左右いずれか一方にオフセット配置されていることを特徴とする請求項3記載の塗装ブース垂直循環搬送機構。
【請求項5】
前記塗装ブース専用台車が、自動車ボディを支承するフロント側支持アームとリア側支持アームと前記フロント側支持アームとリア側支持アームとをそれぞれ支承して車輪走行する前後一対の車輪支持アームと前記車輪支持アームの相互間に連結されてフリクション走行するフリクションバーとで構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の塗装ブース垂直循環搬送機構。
【請求項6】
前記フロント側支持アームとリア側支持アームが、前記フリクションバーに対して直交した自動車ボディ支承状態と前記フリクションバーと平行配列した台車返送状態との間で切り替え自在に軸支されていることを特徴とする請求項5記載の塗装ブース垂直循環搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−150322(P2006−150322A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349161(P2004−349161)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】