説明

塗装工程不正検出方法およびその装置

【課題】 壁や屋根等の下地に下塗り、中塗りおよび上塗りの3回の塗布工程が行われるべき場合に、上塗りが行われていないことを検出できる塗装検査方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 塗装検査業者は、中塗り塗装を終えたとの報告を得た、家主あるいは建設会社から、検索依頼を受けると、中塗りを終えた対象塗装面に対して、蛍光塗料を塗布する。数日後、塗装業者から上塗りが終了した旨の報告を受けると、塗装検査業者は、例えば、夜間に対象塗装面にライトの光を当てて、上記蛍光塗料で描かれた文字が検出されるか(検出されるか)見えるか否かを判定し、見えれば不正(上塗りが行われいない)と報告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中塗りが行われていない不正行為を適切に検出できる塗装工程不正検出方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋の壁等の塗装は、通常、ハケやローラ等を用いて、下塗り、中塗りおよび上塗りの3回の塗装工程で壁や屋根などの下地に塗料を塗布する。
通常、中塗りと上塗りとは、同じ塗料が用いられることが多いが、1回の塗布工程では、規定量の塗料を壁などに塗布することができないため、同じ塗料を用いて、中塗りと上塗りの2回の塗装工程が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、塗装業者に対しての発注額の抑制に伴い、塗装業者が自らの利益を確保するために、中塗りを行わない偽装行為が多くなっている。
しかしながら、中塗りと上塗りの塗料が同じものを使うことが多いため、中塗りをしていなくても、最終的な塗装面を見ただけでは、そのことを発見できない。このことが、上述したような偽装工程が多く行われる理由にもなっている。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、壁や屋根等の下地に下塗り、中塗りおよび上塗りの3回の塗布工程が行われるべき場合に、上塗りが行われていないことを検出できる塗装検査方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の塗装工程不正検出方法は、上述した従来技術の問題を解決し、上述した目的を達成するために、塗装対象の下地に対して下塗り、中塗りおよび上塗りを順に施工すべき場合に、前記上塗りが不正に施工されていないことを検出する塗装工程不正検出方法であって、中塗り完了の通知を受けると、前記中塗終了後の対象面に対して蛍光塗料を塗布する第1の工程と、上塗り完了の通知を受けると、上塗完了との通知を受けた対象面に対して、夜間にライトを塗布して前記蛍光塗料からの光を検出する第2の工程と、前記第2の工程の検出結果に基づいて、前記上塗りが行われたか否かを判定する第3の工程とを有する。
上記ライトは、紫外線ライトや赤外線ライトである。
また、蛍光塗料として、紫外線発光するヘアマニュキアのコーティング剤を用いてもよい。
【0006】
好適には、本発明の塗装工程不正検出方法の前記第2の工程において、前記対象面を携帯端末装置の画面上に表示されたウェブ上の時計画像を撮像範囲に含むようにカメラで撮像し、当該撮像したデータを前記カメラのメモリに記憶する。
好適には、本発明の塗装工程不正検出方法は、前記第2の工程において、前記対象面を携帯端末装置のカメラで撮像し、当該携帯端末装置が前記撮像時に取得した時刻データと、前記撮像の撮像データとを対応付けて、前記携帯端末装置のメモリに格納する。
【0007】
本発明の塗装工程不正検出装置は、塗装対象の下地に対して下塗り、中塗りおよび上塗りを順に施工すべき場合に、前記上塗りが不正に施工されていないことを検出する塗装工程不正検出装置であって、中塗り完了の通知を受けると、前記中塗終了後の対象面に対して蛍光塗料を塗布する塗布手段と、上塗り完了の通知を受けると、上塗完了との通知を受けた対象面に対して、夜間にライトを塗布して前記蛍光塗料からの光を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記上塗りが行われたか否かを判定する判定手段とを有する。
【0008】
好適には、本発明の塗装工程不正検出装置の前記検出手段は、前記対象面を携帯端末装置の画面上に表示されたウェブ上の時計画像を撮像範囲に含むようにカメラで撮像し、当該撮像したデータを前記カメラのメモリに記憶する。
好適には、本発明の塗装工程不正検出装置は、前記検出手段は、前記対象面を携帯端末装置のカメラで撮像し、当該携帯端末装置が前記撮像時に取得した時刻データと、前記撮像の撮像データとを対応付けて、前記携帯端末装置のメモリに格納する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、壁や屋根等の下地に下塗り、中塗りおよび上塗りの3回の塗布工程が行われるべき場合に、上塗りが行われていないことを検出できる塗装検査方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、壁や屋根の下地に対して塗装業者が行う正当な塗装施工手順について説明するためのフローチャートである。
【図2】図2は、壁や屋根の塗装において塗装業者が行う不正な塗装施工手順について説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係わる塗装検査方法の手順を説明するための図である。
【図4】図4は、塗装検査業者が検査対象の塗装面に塗布する蛍光塗料による文字を説明するための図である。
【図5】図5は、壁や屋根の下地に対して正当な塗装施工手順を行った場合の検査について説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、壁や屋根の塗装において不正な塗装施工手順を行った場合の検査について説明するためのローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係わる塗装検査方法およびその装置について説明する。
先ず、壁や屋根の下地に対して塗装業者が行う正当な塗装施工手順について説明する。
図1は、壁や屋根の下地に対して塗装業者が行う正当な塗装施工手順について説明するためのフローチャートである。
【0012】
ステップST1:
塗装業者は、下塗り前に下地のクラック補修等を行い、その後、日付と時刻を書いた黒板が撮像範囲に入るように、下地の写真撮影を行う。
【0013】
ステップST2:
塗装業者は、対象となる下地に対して下塗り用塗料を塗布してハケやローラで平坦化する。
下塗り用塗料としては、例えば、可とう形改修用仕上塗材E主材や水性二重反応硬化形シーラー等の高性能な水性弾性材が用いられ、劣化部を埋め、クラックを防ぐ。
【0014】
ステップST3:
塗装業者は、下塗り後に、その後、日付と時刻を書いた黒板が撮像範囲に入るように、下塗り後の塗装面の写真撮影を行う。
【0015】
ステップST4:
塗装業者は、対象となる下塗り後に塗装面に対して中塗り用塗料を塗布してハケやローラで平坦化する。
中塗り用塗料としては、例えば、水性ウレタン樹脂塗料が用いられる。
【0016】
ステップST5:
塗装業者は、中塗後に、日付と時刻を書いた黒板が撮像範囲に入るように、中塗後の塗装面の写真撮影を行う。
【0017】
ステップST6:
塗装業者は、対象となる下塗り後に塗装面に対して上塗り用塗料を塗布してハケやローラで平坦化する。
上塗り用塗料としては、例えば、液水性反応硬化形ウレタン樹脂塗料が用いられる。
【0018】
ステップST7:
塗装業者は、上塗後に、日付と時刻を書いた黒板が撮像範囲に入るように、上塗後の塗装面の写真撮影を行う。
【0019】
次に、壁や屋根の塗装において塗装業者が行う不正な塗装施工手順について説明する。
図2は、壁や屋根の塗装において塗装業者が行う不正な塗装施工手順について説明するためのフローチャートである。
図2に示すように、ステップST5の中塗後の写真撮影の後に、上塗工程(ST6)を行わずに、ステップST7で上塗りと偽って塗装面の写真撮影を行う不正行為が行われることがある。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係わる塗装検査方法の手順を説明するための図である。
ステップST11:
塗装検査業者は、中塗り塗装を終えたとの報告を得た、家主あるいは建設会社から、検索依頼を受けると、ステップST12に進む。
【0021】
ステップST12:
塗装検査業者は、中塗りを終えた対象塗装面に対して、蛍光塗料を塗布する。
このとき、例えば、図4に示すように、対象塗装面に蛍光塗料で、年月日時分の文字を描く。
蛍光塗料として、紫外線発光するヘアマニュキアのコーティング剤を用いてもよい。

【0022】
ステップST13:
数日後、塗装業者から上塗りが終了した旨の報告を受けると、ステップST14に進む。
【0023】
ステップST14,ST15:
塗装検査業者は、例えば、夜間に対象塗装面にライトの光を当てて、上記蛍光塗料で描かれた文字が検出されるか(検出されるか)見えるか否かを判定する。
上記ライトは、紫外線ライトや赤外線ライトである。
また、塗装検査業者は、上記塗装対象面を携帯端末装置の画面上に表示されたウェブ上の時計画像(世界時計の画像)を撮像範囲に含むようにカメラで撮像し、当該撮像したデータを前記カメラのメモリに記憶する。
また、塗装検査業者は、携帯型端末装置を用いて、そのカメラで上記対象塗装面の写真を撮像し、当該携帯端末装置が前記撮像時に取得した時刻データと、前記撮像の撮像データとを対応付けて、当該携帯端末装置のメモリに記憶するようにしてもよい。
【0024】
ステップST15:
塗装検査業者は、ステップST14で蛍光塗料の文字が検出された場合には、上塗りが行われていない、すなわち不正であると判断し、その結果を依頼者に提供する。
【0025】
ステップST16:
塗装検査業者は、ステップST14で蛍光塗料の文字が検出されなかた場合には、上塗りが行われた、すなわち正当であると判断し、その結果を依頼者に提供する。
【0026】
本実施形態では、上塗りを正当に行った場合には、図5に示すように塗装面に蛍光塗料の文字が現れる。
一方、上塗りを正当に行わなかった場合には、図6に示すように塗装面に蛍光塗料の文字が現れない。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、塗装検査業者が、図3に示すような手順で、蛍光塗料を用いて検査を行うことで、中塗り後に上塗りを行わなかった場合に、そのことを適切に検出し、不正行為を見つけることが出きる。
これにより、上塗りが行われない不正な施工を抑制し、家主が損害を受けることを防止できる。
【0028】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態において、図3に示すステップST12〜ST17の処理を塗装工程不正検出装置で自動的に行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、中塗りが行われていない不正行為を適切に検出できる塗装工程不正検出システムに適用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象の下地に対して下塗り、中塗りおよび上塗りを順に施工すべき場合に、前記上塗りが不正に施工されていないことを検出する塗装工程不正検出方法であって、
中塗り完了の通知を受けると、前記中塗終了後の対象面に対して蛍光塗料を塗布する第1の工程と、
上塗り完了の通知を受けると、上塗完了との通知を受けた対象面に対して、夜間にライトを塗布して前記蛍光塗料からの光を検出する第2の工程と、
前記第2の工程の検出結果に基づいて、前記上塗りが行われたか否かを判定する第3の工程と
を有する塗装工程不正検出方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記対象面を携帯端末装置の画面上に表示されたウェブ上の時計画像を撮像範囲に含むようにカメラで撮像し、当該撮像したデータを前記カメラのメモリに記憶する
請求項1に記載の塗装工程不正検出方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記対象面を携帯端末装置のカメラで撮像し、当該携帯端末装置が前記撮像時に取得した時刻データと、前記撮像の撮像データとを対応付けて、前記携帯端末装置のメモリに格納する
請求項1に記載の塗装工程不正検出方法。
【請求項4】
塗装対象の下地に対して下塗り、中塗りおよび上塗りを順に施工すべき場合に、前記上塗りが不正に施工されていないことを検出する塗装工程不正検出装置であって、
中塗り完了の通知を受けると、前記中塗終了後の対象面に対して蛍光塗料を塗布する塗布手段と、
上塗り完了の通知を受けると、上塗完了との通知を受けた対象面に対して、夜間にライトを塗布して前記蛍光塗料からの光を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記上塗りが行われたか否かを判定する判定手段と
を有する塗装工程不正検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記対象面を携帯端末装置の画面上に表示されたウェブ上の時計画像を撮像範囲に含むようにカメラで撮像し、当該撮像したデータを前記カメラのメモリに記憶する
請求項4に記載の塗装工程不正検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記対象面を携帯端末装置のカメラで撮像し、当該携帯端末装置が前記撮像時に取得した時刻データと、前記撮像の撮像データとを対応付けて、前記携帯端末装置のメモリに格納する
請求項4に記載の塗装工程不正検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−251229(P2011−251229A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125544(P2010−125544)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(510152596)
【Fターム(参考)】