説明

塗装木質床材の製造方法

【課題】 低位部を有する木質床材の少なくとも低位部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法において、低位部に確実に塗布材を塗布できる製造方法を提供する。
【解決手段】 塗装木質床材100の製造方法は、木質床材110のうちの可視低位部111,115,121等に、厚み方向の被着色面110h側からディスペンサDPにより第1着色材TZ1を塗布して、可視低位部111,115,121等を着色する低位部着色工程と、木質床材110の被着色面110h等に第2着色材TZ2を塗布して、木質床材110の被着色面110h等を着色する被着色面着色工程と、木質床材110の被着色面110h等を塗装する塗装工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表板面及び裏板面を有する板状をなし、表板面よりも裏板面側に低位に形成された低位部を有する木質床材のうち、少なくとも低位部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗装木質床材を製造するにあたっては、木質床材の被着色面(表面板)側全体にクリア塗料等による塗装をする前に、木質床材の見栄えを良くするため、着色処理を行っている。つまり、木質床材の被着色面の導管等に着色材を塗布して木目等を際だたせると共に、木質床材に形成された凹溝や雄実部、面取り部などの低位部(可視低位部)に着色材を塗布して、木質床材の外観を美しくしている。例えば、特許文献1に、木質材の凹溝や導管等を着色してからクリア塗料を塗装することにより、外観の優れた塗装木質材を製造する方法が開示されている。
【0003】
具体的には、クリア塗装の前に、まず、スポンジロール等を有する着色装置を用いて、そのスポンジロールにより、木質材の被着色面全体に着色材を塗布し(着色材塗布工程)、続いて、掻き取りロールにより、木質材の被着色面に余分に塗布された着色材を取り除く(着色材掻取工程)。これにより、着色材が凹溝や被着色面の導管等に充填塗布され、凹溝や導管等が着色される。その後、木質材に塗布された着色材を乾燥させる。
その後、この下地着色(素地着色)を行った木質材に、クリア塗料を用いて下塗り、中塗り、上塗りを順次行って木質材を塗装すれば、塗装木質材が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−347008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の製造方法では、スポンジロールによる着色材の塗布のみによって、被着色面の導管等への着色材の塗布と、凹溝への着色材の塗布とを同時に行っている。一般に、凹溝では、導管等に比して着色材の吸収(水などの溶剤の吸収)が大きく、中でも化粧合板は、凹溝内に内側の合板が露出しているので、着色材の吸収が特に大きい。このため、導管等の着色と凹溝の着色とを同時に行う上記方法では、凹溝を確実に着色するのが困難な場合があり、製品外観がバラツキやすい。特に、着色が淡色の場合には、製品外観がバラツキがちである。また、雄実部や面取り部などを有する塗装木質床材を製造する場合も同様に、上記の方法では、雄実部や面取り部を確実に着色するのが困難な場合がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、表板面よりも裏板面側に低位に形成された低位部を有する木質床材のうち、少なくとも低位部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法において、上記低位部に確実に塗布材を塗布できる塗装木質床材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、表板面及び裏板面を有する板状をなし、前記表板面よりも前記裏板面側に低位に形成された低位部を有する木質床材のうち、少なくとも前記低位部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法であって、前記木質床材のうちの前記低位部に、ディスペンサにより前記塗布材を塗布する塗布材塗布工程を備える塗装木質床材の製造方法である。
【0008】
本発明の塗装木質床材の製造方法は、木質床材に形成された低位部(表板面よりも裏板面側に低位に形成された部分)に選択的に塗布材を塗布する塗布材塗布工程を備える。このため、上記低位部に塗布材を確実に塗布できる。
しかも、この塗布材塗布工程での塗布はディスペンサを用いて行うので、例えばスプレーノズルを用いる場合のように塗布材が飛散することが少ない。このため、目的部分(低位部)以外を汚すことなく、目的部分だけにより選択的に確実に塗布材を塗布できる。特に、木質材に低位部として凹溝が形成されている場合には、このような凹溝は、一般に幅1mm〜2mm程度と非常に細いので、ディスペンサを用いることは、選択的な塗布の点で有利である。また、ディスペンサを用いることにより、粘度の高い塗布材も塗布可能となる。
【0009】
また、例えばインクジェット印刷により木質床材に塗布材を塗布する場合には、被塗物(木質床材)との距離が近いために、被塗物に僅かな反り等があるだけで、被塗物に適切に塗布材を塗布するのが困難となる。また、塗布速度が遅いというデメリットもある。これに対し、本発明に係るディスペンサを用いた塗布は、被塗物(木質床材)との距離を十分に確保しつつ、塗布速度を大幅に速くできるので、生産性を向上させることができる。
このように、本発明の製造方法によれば、低位部に確実に塗布材を塗布でき、品質バラツキの少ない塗装木質床材を製造できる。
【0010】
なお、「低位部」は、上記のように、表板面よりも裏板面側に低位に形成された部分であるが、具体的には、例えば、表板面に設けられた凹溝や、木質床材の側面、側面から突出する雄実部、側面に凹設された雌実部、表板面と側面とのつなぎ目に形成された面取り部などが挙げられる。
【0011】
「塗布材塗布工程」は、上記のように、木質床材のうちの低位部に塗布材を塗布する工程であり、低位部が複数存在する場合には、その少なくともいずれかに対して塗布材塗布工程を行えばよい。例えば、低位部として、上記の凹溝、側面、雄実部、雌実部及び面取り部のうちの2種以上が存在する場合には、そのすべての種類に対して塗布材塗布工程を行ってもよいし、そのうちの一部に対してのみ塗布材塗布工程を行ってもよい。また、同一種の低位部が複数存在する場合(例えば凹溝が複数存在する場合)にも、そのすべてに対して塗布材塗布工程を行ってもよいし、そのうちの一部に対してのみ塗布材塗布工程を行ってもよい。
【0012】
更に、上記の塗装木質床材の製造方法であって、前記塗装木質材は、前記表板面が被着色面とされ、前記低位部が厚み方向の前記被着色面側から視認し得る可視低位部を含み、前記木質材を着色し更に塗装してなり、前記塗布材塗布工程は、前記木質床材のうちの前記可視低位部に、厚み方向の前記被着色面側から前記ディスペンサにより前記塗布材として第1着色材を塗布して、前記可視低位部を着色する低位部着色工程であり、前記低位部着色工程よりも後に、前記木質床材のうちの少なくとも前記被着色面に第2着色材を塗布して、前記木質床材のうちの少なくとも前記被着色面を着色する被着色面着色工程と、前記被着色面着色工程よりも後に、前記木質床材のうちの少なくとも前記被着色面を塗装する塗装工程と、を更に備える塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0013】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、木質床材の被着色面(表板面)を着色する被着色面着色工程に先だって、木質床材に形成された可視低位部(被着色面よりも低位に形成されて厚み方向の前記被着色面側から視認し得る部分)を選択的に着色する低位部着色工程を別途行う。このため、被着色面着色工程だけでは確実に着色させ難い上記可視低位部を、この低位部着色工程において確実に着色できる。
【0014】
しかも、低位部着色工程での着色はディスペンサを用いて行うので、例えばスプレーノズルを用いる場合のように着色材が飛散することが少ない。このため、目的部分(可視低位部)以外を汚すことなく、目的部分だけをより選択的に確実に着色できる。特に、木質材に可視低位部として凹溝が形成されている場合には、このような凹溝は、一般に幅1mm〜2mm程度と非常に細いので、ディスペンサを用いることは、選択的な着色の点で有利である。また、ディスペンサを用いることにより、粘度の高い着色材も塗布可能となるので、濃度が高く隠蔽性の高い着色材でも容易に塗布できる。
【0015】
また、例えばインクジェット印刷により木質床材を着色する場合には、被塗物(木質床材)との距離が近いために、被塗物に僅かな反り等があるだけで、被塗物を適切に着色するのが困難となる。また、着色速度が遅いというデメリットもある。これに対し、本発明に係るディスペンサを用いた着色は、被塗物(木質床材)との距離を十分に確保しつつ、着色速度を大幅に速くできるので、生産性を向上させることができる。
このように、本発明の製造方法によれば、可視低位部を確実に着色でき、製品外観にバラツキの少ない塗装木質床材を製造できる。
【0016】
なお、「可視低位部」は、上記のように、被着色面よりも低位に形成されて厚み方向の被着色面側から視認し得る部分であるが、具体的には、例えば、被着色面に設けられた凹溝や、側面から突出する雄実部、被着色面と側面とのつなぎ目に形成された面取り部などが挙げられる。
【0017】
「低位部着色工程」は、上記のように、木質床材のうちの可視低位部を着色する工程であり、可視低位部が複数存在する場合には、その少なくともいずれかに対して低位部着色工程を行えばよい。例えば、可視低位部として、上記の凹溝、雄実部及び面取り部のうちの2種以上が存在する場合には、そのすべての種類に対して低位部着色工程を行ってもよいし、そのうちの一部に対してのみ低位部着色工程を行ってもよい。また、同一種の可視低位部が複数存在する場合(例えば凹溝が複数存在する場合)にも、そのすべてに対して低位部着色工程を行ってもよいし、そのうちの一部に対してのみ低位部着色工程を行ってもよい。
【0018】
「低位部着色工程」での第1着色材の塗布は、上記のようにディスペンサにより行うが、「被着色面着色工程」での第2着色材の塗布の手法は、第2着色材の種類や物性などに応じて適宜変更できる。塗布の手法としては、例えば、ハケ塗り、スプレ塗り、カーテンフローコータ及びフローコータ等の流し塗り、ロールコータ及びローラブラシ等のローラ塗装、減圧塗装法、浸漬塗装法などが挙げられる。
【0019】
「第1着色材」及び「第2着色材」には、顔料や染料を適宜選択して用いることができる。例えば、顔料としては、酸化チタン、硫化亜鉛、亜鉛華、鉛白、リトポン、カーボンブラック、油煙、紺青、フタロシアニンブルー、群青、カーミンFB、黄鉛、亜鉛黄、ハンザイエロー、オーカー、ベンガラなどが挙げられる。また例えば、染料としては、不溶性含有金属アゾ染料、均染性染料、耐縮充性染料、酸性媒染染料、金属錯塩酸性染料、m−フェレンジアミン誘導体、直接染料、反応染料、ナフトール染料などが挙げられる。また、「第1着色材」及び「第2着色材」には、塗布作業性の向上あるいは貯蔵時の安定性、品質維持等のために、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、沈降防止剤等の各種添加剤を配合できる。
【0020】
更に、上記の塗装木質床材の製造方法であって、前記低位部着色工程では、前記第1着色材として水性着色材を用い、前記低位部着色工程よりも後で、前記被着色面着色工程よりも前に、前記水性着色材を乾燥させる水性着色材乾燥工程を備える塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0021】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、第1着色材として水性着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。また、被着色面着色工程よりも前に木質床材に塗布したこの水性着色材を乾燥させるので、被着色面着色工程で第2着色材を塗布したときに、第2着色材がこの水性着色材(第1着色材)と混ざり合うことを防止できる。
【0022】
更に、前記の塗装木質床材の製造方法であって、前記低位部着色工程では、前記第1着色材としてUV着色材を用い、前記低位部着色工程よりも後で、前記被着色面着色工程よりも前に、前記UV着色材をUV硬化させるUV着色材硬化工程を備える塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0023】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、第1着色材としてUV着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。また、被着色面着色工程よりも前に木質床材に塗布したこのUV着色材を硬化させるので、被着色面着色工程で第2着色材を塗布したときに、第2着色材がこのUV着色材(第1着色材)と混ざり合うことを防止できる。
【0024】
更に、前記の塗装木質床材の製造方法であって、前記低位部着色工程では、前記第1着色材として第1水性着色材を用い、前記被着色面着色工程では、前記第2着色材として第2水性着色材を用い、前記被着色面着色工程を、前記低位部着色工程で塗布した前記第1水性着色材を乾燥させる前に行い、前記表低位部着色工程よりも後で、前記塗装工程よりも前に、前記第1水性着色材と前記第2水性着色材とを同時に乾燥させる水性着色材同時乾燥工程を備える塗装木質床材の製造方法と良い。
【0025】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、第1,第2着色材として第1,第2水性着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。また、第1,第2水性着色材を同時に乾燥させるので、これらを別々に乾燥させる場合に比して、工数を削減できる。
【0026】
更に、前記の塗装木質床材の製造方法であって、前記塗装木質材は、前記低位部が厚み方向の前記表板面側から視認し得る可視低位部を含み、前記木質材を着色してなり、前記塗布材塗布工程は、前記木質床材のうちの前記可視低位部に、厚み方向の前記表板面側から前記ディスペンサにより前記塗布材として着色材を塗布して、前記可視低位部を着色する低位部着色工程である塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0027】
本発明の塗装木質床材の製造方法は、木質床材に形成された可視低位部を選択的に着色する低位部着色工程を備える。このため、上記可視低位部をこの低位部着色工程において確実に着色できる。
しかも、低位部着色工程での着色はディスペンサを用いて行うので、例えばスプレーノズルを用いる場合のように着色材が飛散することが少ない。このため、目的部分(可視低位部)以外を汚すことなく、目的部分だけをより選択的に確実に着色できる。特に、木質材に可視低位部として凹溝が形成されている場合には、このような凹溝は、一般に幅1mm〜2mm程度と非常に細いので、ディスペンサを用いることは、選択的な着色の点で有利である。また、ディスペンサを用いることにより、粘度の高い着色材も塗布可能となるので、濃度が高く隠蔽性の高い着色材でも容易に塗布できる。
【0028】
また、例えばインクジェット印刷により木質床材を着色する場合には、被塗物(木質床材)との距離が近いために、被塗物に僅かな反り等があるだけで、被塗物を適切に着色するのが困難となる。また、着色速度が遅いというデメリットもある。これに対し、本発明に係るディスペンサを用いた着色は、被塗物(木質床材)との距離を十分に確保しつつ、着色速度を大幅に速くできるので、生産性を向上させることができる。
このように、本発明の製造方法によれば、可視低位部を確実に着色でき、製品外観にバラツキの少ない塗装木質床材を製造できる。
【0029】
上記の塗装木質床材の製造方法であって、前記低位部着色工程では、前記着色材として水性着色材を用い、前記低位部着色工程よりも後に、前記水性着色材を乾燥させる水性着色材乾燥工程を備える塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0030】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、着色材として水性着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。
【0031】
更に、前記の塗装木質床材の製造方法であって、前記塗布材塗布工程では、前記塗布材としてUV塗料を用い、前記塗布材塗布工程よりも後に、前記UV塗料をUV硬化させるUV塗料硬化工程を備える塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0032】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、塗布材としてUV塗料を用いるので、例えば有機溶剤系の塗料に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。
【0033】
更に、前記の塗装木質床材の製造方法であって、前記塗布材塗布工程では、前記塗布材として熱硬化性塗料を用い、前記塗布材塗布工程よりも後に、前記熱硬化性塗料を熱硬化させる熱硬化性塗料硬化工程を備える塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0034】
本発明の塗装木質床材の製造方法では、塗布材として熱硬化性塗料を用いるため、加熱により熱硬化性塗料を熱硬化させることができるので、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1に係る塗装木質床材を示す説明図である。
【図2】実施形態1に係る塗装木質床材のうち木質床材の被着色面近傍の概略化した部分断面図である。
【図3】実施形態1に係る塗装木質床材のうち雄実部及び面取り部等を示す斜視図である。
【図4】実施形態1に係る塗装木質床材のうち雄実部及び面取り部等を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係る塗装木質床材のうち雌実部及び面取り部等を示す斜視図である。
【図6】実施形態1に係る塗装木質床材のうち雌実部及び面取り部等を示す断面図である。
【図7】実施形態1に係る塗装木質床材の製造方法に関し、低位部着色工程において、ディスペンサにより、木質床材の可視低位部を選択的に着色する様子を示す説明図である。
【図8】実施形態1に係る塗装木質床材の製造方法に関し、被着色面着色工程において、スポンジロール等により、木質床材の被着色面等を着色する様子を示す説明図である。
【図9】実施形態1に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗装工程において、ロールコータにより、木質床材の被着色面等にクリア塗料を塗布する様子を示す説明図である。
【図10】実施形態4に係る塗装木質床材のうち木質床材の表板面近傍の概略化した部分断面図である。
【図11】実施形態4に係る塗装木質床材のうち雄実部及び面取り部等を示す断面図である。
【図12】実施形態4に係る塗装木質床材のうち雌実部及び面取り部等を示す断面図である。
【図13】実施形態4に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗布材塗布工程において、ディスペンサにより、木質床材の低位部に選択的に塗布材を塗布する様子を示す説明図である。
【図14】実施形態5に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗布材塗布工程において、ディスペンサにより、木質床材の低位部に選択的に塗布材を塗布する様子を示す説明図である。
【図15】実施形態7に係る塗装木質床材のうち雄実部及び面取り部等を示す断面図である。
【図16】実施形態7に係る塗装木質床材のうち雌実部及び面取り部等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1で製造する塗装木質床材100について説明する。図1に、塗装木質床材100の全体を示す。また、図2に、塗装木質床材100のうち木質床材110の被着色面(表板面)110h近傍の断面を示す。また、図3及び図4に、塗装木質床材100のうち雄実部(低位部、可視低位部)115,116及び面取り部(低位部、可視低位部)121,122等を示す。また、図5及び図6に、塗装木質床材100のうち雌実部117,118(低位部)及び面取り部(低位部、可視低位部)123,124等を示す。なお、図1では、雄実部115,116、雌実部117,118及び面取り部121,122,123,124を省略してある。
【0037】
この塗装木質床材100は、図2に示すように、木質床材110の被着色面110h等に着色層131が形成され、更にその上には、3層からなるクリア塗料層134(内側から下塗クリア塗料層135、中塗クリア塗料層137及び上塗クリア塗料層139)が形成されている。
【0038】
このうち木質床材110は、図1に示すように、被着色面(表板面)110hと、裏面(裏板面)110rと、4つの側面(第1長側面110a,第2長側面110b,第1短側面110c,第2短側面110d)とを有する矩形板状をなす。その寸法は、長さ1800mm×幅300mm×厚み12mmである。この木質床材110は、木材の木目を縦横交互にして複数層積層してなる合板の表面に、化粧単板(具体的にはナラ単板)を張り付けた化粧合板である。
【0039】
この木質床材110の被着色面110hには、長手方向(図1中、左右方向)に沿って凹溝(縦凹溝)111,111,…が複数形成され、また、この長手方向と直交する短手(幅)方向(図1中、上下方向)にも凹溝(横凹溝)112,112,…が複数形成されている。これらの凹溝111,112は、幅1〜2mm、深さ1〜2mmである。
なお、これらの凹溝111,112は、被着色面110hよりも裏面110r側に低位に形成された部分であるので、本発明の低位部に相当し、更に、これらは厚み方向の被着色面110h側(図1、図4及び図6中、上側)から視認し得る部分であるので、本発明の可視低位部に相当する。
【0040】
また、この木質床材110のうち、その短手方向の一端をなして長手方向に延びる第1長側面110aには、図3及び図4に示すように、雄実部(第1雄実部)115が設けられている。この第1雄実部115は、図4に示すように、断面矩形状をなし、第1長側面110aから、第1長側面110aと直交して外側に向かって突出している。
また、この木質床材110のうち、被着色面110hと第1長側面110aとのつなぎ目には、図3及び図4に示すように、これらの面に斜交する面取り部(第1面取り部)121が設けられている。
【0041】
また、この木質床材110のうち、その長手方向の一端をなして短手方向に延びる第1短側面110cには、図3及び図4に示すように、雄実部(第2雄実部)116が設けられている。この第2雄実部116は、図4に示すように、断面矩形状をなし、第1短側面110cから、第1短側面110cと直交して外側に向かって突出している。
また、この木質床材110のうち、被着色面110hと第1短側面110cとのつなぎ目には、図3及び図4に示すように、これらの面に斜交する面取り部(第2面取り部)122が設けられている。
【0042】
また、この木質床材110のうち、その短手方向の一端をなして長手方向に延びる第2長側面110bには、図5及び図6に示すように、第1雄実部115と嵌合可能な雌実部(第1雌実部)117が設けられている。この第1雌実部117は、図6に示すように、断面コ字状をなし、第2長側面110bから内側に向かって凹設されている。
また、この木質床材110のうち、被着色面110hと第2長側面110bとのつなぎ目にも、図5及び図6に示すように、これらの面に斜交する面取り部(第3面取り部)123が設けられている。
【0043】
また、この木質床材110のうち、その長手方向の一端をなして短手方向に延びる第2短側面110dには、図5及び図6に示すように、第2雄実部116と嵌合可能な雌実部(第2雌実部)118が設けられている。この第1雌実部118は、図6に示すように、断面コ字状をなし、第2短側面110dから内側に向かって凹設されている。
また、この木質床材110のうち、被着色面110hと第2短側面110dとのつなぎ目には、図5及び図6に示すように、これらの面に斜交する面取り部(第4面取り部)124が設けられている。
【0044】
なお、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124は、被着色面110hよりも低位に形成された部分であるので、本発明の低位部に相当し、更に、これらは厚み方向の被着色面110h側(図4及び図6中、上側)から視認し得る部分であるので、本発明の可視低位部に相当する。また、雌実部117,118及び4つの側面(第1長側面110a,第2長側面110b,第1短側面110c,第2短側面110d)は、被着色面110hよりも低位に形成された部分であるので、本発明の低位部に相当する。
【0045】
着色層131は、木質床材110の木目等をより美しく見せるなどの目的で形成されており、水性ステイン(着色材)を用いて形成されている。着色層131は、図2、図4及び図6に示すように、木質床材110の平坦な被着色面110hに形成されている。
また、着色層131は、図4に示すように、面取り部121,122や、雄実部115,116の被着色面110h側の表面115h,116h、第1長側面110a及び第1短側面110cのうち、面取り部121,122と雄実部115,116とを繋ぐ表側部分110ah,110chにも、形成されている。
また、着色層131は、図6に示すように、面取り部123,124や、第2長側面110b及び第2短側面110dのうち、面取り部123,124と雌実部117,118とを繋ぐ表側部分110bh,110dhにも、形成されている。
【0046】
着色層131上には、図2、図4及び図6に示すように、クリア塗料層134が形成されている。このクリア塗料層134のうち、下塗クリア塗料層135は、厚みが10〜30μmで下塗り用のUV塗料から形成されている。また、中塗クリア塗料層137は、厚みが10〜80μmで中塗り用のUV塗料から形成されている。また、上塗クリア塗料層139は、厚みが10〜80μmで上塗り用のUV塗料から形成されている。
【0047】
この塗装木質床材100は、次述する製造方法により製造している。このため、木質床材110の被着色面110hの導管等と、凹溝111,112、雄実部115,116の表面115h,116h、及び、面取り部121,122,123,124との色調が合っており、製品外観にバラツキが少ない。
【0048】
次いで、この塗装木質床材100の製造方法について説明する。
まず、上記のように、凹溝111,112、雄実部115,116、雌実部117,118及び面取り部121,122,123,124を形成したナラ突き板合板からなる木質床材110を用意する。
【0049】
次に、塗布材塗布工程(低位部着色工程)において、図7に示すように、木質床材110のうちの凹溝111,112、雄実部115,116の表面115h,116h及び面取り部121,122,123,124(可視低位部)に、厚み方向の被着色面101h側(図7中、上方)から、ディスペンサDPにより第1着色材TZ1を塗布して、この木質床材110を部分的に着色する。なお、図7は、可視低位部のうち、縦凹溝111の1つに、第1着色材TZ1を塗布する様子を示している。なお、この第1着色材TZ1が本発明の塗布材に相当する。
【0050】
具体的には、木質床材110を図示しない真空吸着装置に載置し、木質床材110を真空吸着させる。そして、これを吸着させた状態のまま搬送して所定位置で停止させる。続いて、ディスペンサDP(武蔵エンジニアリング製)を搭載した図示しない3軸直交ロボット(IAI製)を用いて、木質床材110に部分的な着色を行う。第1着色材TZ1には、水性着色材(ナトコ社製フローラ)を用いる。なお、真空吸着装置を用いるのは、木質床材110の位置ズレを防止すると共に、木質床材110特有の反りを矯正するためである。
【0051】
その後、第1水性着色材乾燥工程において、木質床材110に塗布した第1水性着色材(第1着色材TZ1)を乾燥させる。具体的には、ジェット乾燥機を用いて、木質床材110に塗布した第1水性着色材(第1着色材TZ1)を乾燥させる。その後、#320のサンドペーパにより、木質床材110の被着色面110hを研磨する。
【0052】
次に、被着色面着色工程において、図8に示すように、木質床材110の被着色面110h側に第2着色材TZ2を塗布して、木質床材110の被着色面110h側を全体的に着色する。
具体的には、木質床材110を搬送させつつ、スポンジロールSRを木質床材110の被着色面110h側に接触させて、木質床材110の被着色面110h側に、上記と同様の水性着色材(ナトコ社製フローラ)を塗布する。これにより、この第2着色材TZ2は、主として被着色面110hに塗布される他、凹溝111,112や、雄実部115,116の表面115h,116h、面取り部121,122,123,124など、低位部着色工程で第1着色材TZ1を塗布した部分にも、塗布される。
その後続いて、掻取ロールKRを順回転させてながら、木質床材110の被着色面110h側に接触させて、木質床材110の被着色面110hに余分に塗布された第2水性着色材(第2着色材TZ2)を取り除く。
【0053】
その後、第2水性着色材乾燥工程において、木質床材110に塗布した第2水性着色材(第2着色材TZ2)を乾燥させる。具体的には、ジェット乾燥機を用いて、木質床材110に塗布した第2水性着色材(第2着色材TZ2)を乾燥させる。これにより、図2、図4及び図6に示したように、被着色面110h、雄実部115,116の表面115h,116h、面取り部121,122,123,124等に、着色層131が形成される。
【0054】
次に、塗装工程のうちの下塗塗布工程において、図9に示すように、ロールコータRCにより、木質床材110の被着色面110h側に、下塗り用のUV塗料CT1を塗布する。その後、塗装工程のうちの下塗硬化工程において、UVドライヤーにより、下塗り用のUV塗料CT1を硬化させて、下塗クリア塗料層135を形成する(図2参照)。
【0055】
次に、塗装工程のうちの中塗塗布工程において、ロールコータRCにより、下塗クリア塗料層135上に中塗り用のUV塗料CT2を塗布する(図9参照)。その後、塗装工程のうちの中塗硬化工程において、UVドライヤーにより、中塗り用のUV塗料CT2を硬化させて、下塗クリア塗料層135上に中塗クリア塗料層137を形成する(図2参照)。その後、塗装工程のうちの研磨工程で、#320のサンドペーパにより、中塗クリア塗料層137の表面を研磨する。
【0056】
次に、塗装工程のうちの上塗塗布工程で、ロールコータRCにより、中塗クリア塗料層137上に上塗り用のUV塗料CT3を塗布する(図9参照)。その後、塗装工程のうちの上塗塗料硬化工程で、UVドライヤーにより、上塗り用のUV塗料CT3を硬化させて、中塗クリア塗料層137上に上塗クリア塗料層139を形成する(図2参照)。これにより、図2、図4及び図6に示したように、着色層131上にクリア塗料層134が形成され、上記塗装木質床材100が完成する。
【0057】
以上で説明したように、この塗装木質床材100の製造方法では、木質床材110の被着色面110hを着色する被着色面着色工程に先だって、木質床材110のうちの可視低位部(具体的には、凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124)のみを選択的に着色する低位部着色工程を別途行う。このため、被着色面着色工程だけでは確実に着色させ難い可視低位部(凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124)を、この低位部着色工程において確実に着色できる。
【0058】
しかも、低位部着色工程での着色はディスペンサDPを用いて行うので、例えばスプレーノズルを用いる場合のように第1着色材TZ1(第1水性着色材)が飛散することが少ない。このため、目的部分である凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124以外を汚すことなく、目的部分だけをより選択的に確実に着色できる。特に、木質床材110の凹溝111,112は、幅1〜2mmと非常に細いので、ディスペンサDPを用いることは、選択的な着色の点で有利である。
【0059】
また、本実施形態1のディスペンサDPを用いた着色は、例えばインクジェット印刷に比して、木質床材110との距離を十分に確保しつつ、着色速度を大幅に速くできるので、生産性を向上させることができる。
このように、本実施形態1の製造方法によれば、可視低位部である凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124を確実に着色でき、製品外観にバラツキの少ない塗装木質床材100を製造できる。
【0060】
更に、本実施形態1では、第1,第2着色材TZ1,TZ2として水性着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。また、被着色面着色工程よりも前に、低位部着色工程で塗布した第1着色材TZ1を乾燥させるので、被着色面着色工程で第2着色材TZ2を塗布したときに、第2着色材TZ2が第1着色材TZ1と混ざり合うことを防止できる。
【0061】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。本実施形態2の塗装木質床材100の製造方法では、第1着色材TZ3が上記実施形態1で用いた第1着色材TZ1と異なる。それ以外は、上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0062】
本実施形態2では、低位部着色工程(塗布材塗布工程)において、第1着色材(塗布材)TZ3として、UV着色材(ナトコ社製NSステイン)を用いる。そして、このUV着色材を、上記実施形態1と同様に、木質床材110のうちの凹溝111,112、雄実部115,116の表面115h,116h及び面取り部121,122,123,124(可視低位部)に、厚み方向の被着色面101h側から、ディスペンサDPにより塗布して、この木質床材110を部分的に着色する(図7参照)。
その後、UV着色材硬化工程において、木質床材110に塗布したUV着色材を硬化させる。具体的には、UVドライヤーを用いて、UV着色材を乾燥させ硬化させる。
その後は、上記実施形態1と同様な各工程を行い、塗装木質床材100を完成させる。
【0063】
本実施形態2でも、木質床材110のうちの凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124を部分的に着色する低位部着色工程を別途行う。このため、被着色面着色工程だけでは確実に着色させ難い凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124を、低位部着色工程において確実に着色できる。
【0064】
また、本実施形態2では、第1着色材TZ3としてUV着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。また、被着色面着色工程よりも前に木質床材110に塗布したこのUV着色材を硬化させるので、被着色面着色工程で第2着色材TZ2を塗布したときに、第2着色材TZ2が第1着色材TZ3と混ざり合うことを防止できる。
その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0065】
(実施形態3)
次いで、第3の実施形態について説明する。本実施形態3の塗装木質床材100の製造方法では、第1着色材TZ1と第2着色材TZ2とを同時に乾燥させる点が、第1着色材TZ1と第2着色材TZ2を別々に乾燥させる上記実施形態1と異なる。それ以外は、上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0066】
まず、上記実施形態1と同様に低位部着色工程(塗布材塗布工程)を行い、前述のように木質床材110を部分的に着色する。
その後、低位部着色工程で塗布した第1着色材TZ1を乾燥させることなく(第1水性着色材乾燥工程を行うことなく)、被着色面着色工程を行って、前述のように木質床材110の被着色面110h側を全体的に着色する。
【0067】
次に、水性着色材同時乾燥工程において、低位部着色工程及び被着色面着色工程で木質床材110に塗布した第1水性着色材TZ1と第2水性着色材TZ2とを同時に乾燥させる。具体的には、ジェット乾燥機を用いて、木質床材110に塗布した第1,第2水性着色材TZ1,TZ2を同時に乾燥させる。
その後は、上記実施形態1,2と同様な各工程を行い、塗装木質床材100を完成させる。
【0068】
本実施形態3でも、木質床材110のうちの凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124を部分的に着色する低位部着色工程を別途行う。このため、被着色面着色工程だけでは確実に着色させ難い凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124を、低位部着色工程において確実に着色できる。
【0069】
また、本実施形態3では、第1,第2着色材TZ1,TZ2として第1,第2水性着色材を用いるので、例えば有機溶剤系の着色材に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。また、第1,第2着色材TZ1,TZ2を同時に乾燥させるので、これらを別々に乾燥させる場合に比して、工数を削減できる。
その他、上記実施形態1等と同様な部分は、上記実施形態1等と同様な作用効果を奏する。
【0070】
(実施形態4)
次いで、第4の実施形態について説明する。本実施形態4では、木質床材110の基材の種類が上記実施形態1と異なる。また、塗布材塗布工程が上記実施形態1と異なる。更に、塗装工程を行わない点が上記実施形態1と異なる。それ以外は、上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0071】
図10に、本実施形態4に係る塗装木質床材400のうち木質床材110の表板面110h近傍の断面を示す。また、図11に、塗装木質床材400のうち雄実部115,116及び面取り部121,122等の断面を示す。また、図12に、塗装木質床材400のうち雌実部117,118及び面取り部123,124等の断面を示す。
【0072】
この塗装木質床材400では、図10に示すように、木質床材110の表板面110h上には、着色層もクリア塗料層も形成されておらず、表板面110h全体が露出している。
木質板材110は、パーティクルボードからなり、上記実施形態1と同様の形状を有する。即ち、上記実施形態1と同様に、木質板材110の表板面110hには、複数の凹溝111,112が形成されている(図11及び図12参照)。また、木質板材110には、雄実部115,116及び面取り部121,122が設けられている(図11参照)。また、木質板材110には、雌実部117,118及び面取り部123,124が設けられている(図12参照)。
なお、雄実部115,116、雌実部117,118、面取り部121,122,123,124及び側面110a,110b,110c,110dは、前述のように、本発明の低位部に相当する。
【0073】
本実施形態4では、図11に示すように、雄実部115,116、面取り部121,122及び側面110a,110cの全体に、イソシアネート含有UV塗料からなる防水用の塗料層431が形成されている。また、図12に示すように、雌実部117,118、面取り部123,124及び側面110b,110dの全体にも、この防水用の塗料層431が形成されている。一方、木質板材110の表板面110h上には、塗料層431が形成されていない。また、表板面110hには、上記実施形態1のような着色層や塗料層も形成されていない。
【0074】
次いで、この塗装木質床材400の製造方法について説明する。
まず、パーティクルボードからなる上記の木質床材110を用意する。そして、塗布材塗布工程において、木質床材110のうちの雄実部115,116、雌実部123,124、面取り部121,122,123,124及び側面110a,110b,110c,110d(低位部)に、90度屈曲したカーブニードルCN1を有するディスペンサDP2(武蔵エンジニアリング製)により、塗布材TZ4を塗布する(図13参照)。この塗布材TZ4は、イソシアネート含有UV塗料からなる。ディスペンサDP2は、垂直方向及び水平方向に移動させることができる。
【0075】
その後、UV塗料硬化工程において、木質床材110に塗布した塗布材TZ4をUV硬化させる。具体的には、UVドライヤーを用いて、塗布材TZ4を硬化させる。これにより、低位部115,116等に塗料層431が形成され、低位部115,116等の防水性が大幅に向上し、低位部115,116等が水分による膨張するのを防止できる。
また、塗料層431が形成されることにより、低位部115,116等の表面硬度が向上するため、塗装木質床材400のハンドリング性が良好となる。
かくして、上記塗装木質床材400が完成する。
【0076】
以上で説明したように、この塗装木質床材400の製造方法では、木質床材110に形成された低位部(具体的には、雄実部115,116、雌実部123,124、面取り部121,122,123,124及び側面110a,110b,110c,110d)に選択的に塗布材TZ4を塗布する塗布材塗布工程を備える。このため、上記低位部115,116等に塗布材TZ4を確実に塗布できる。
しかも、この塗布材塗布工程での塗布はディスペンサDP2を用いて行うので、例えばスプレーノズルを用いる場合のように塗布材TZ4が飛散することが少ない。このため、目的部分(低位部115,116等)以外を汚すことなく、目的部分だけに選択的に確実に塗布材TZ4を塗布できる。
【0077】
また、例えばインクジェット印刷により木質床材110に塗布材TZ4を塗布する場合には、木質床材110との距離が近いために、木質床材110に僅かな反り等があるだけで、被塗物に適切に塗布材TZ4を塗布するのが困難となる。また、塗布速度が遅いというデメリットもある。これに対し、また、ディスペンサDP2を用いた塗布は、木質床材110との距離を十分に確保しつつ、塗布速度を大幅に速くできるので、生産性を向上させることができる。
このように、本実施形態4の製造方法によれば、低位部115,116等に確実に塗布材TZ4を塗布でき、品質バラツキの少ない塗装木質床材400を製造できる。
更に、本実施形態4では、塗布材TZ4としてUV塗料を用いるので、例えば有機溶剤系の塗料に比して、環境汚染や安全性などの点で優れる。
その他、上記実施形態1等と同様な部分は、上記実施形態1等と同様な作用効果を奏する。
【0078】
(実施形態5)
次いで、第5の実施形態について説明する。本実施形態5の塗装木質床材400の製造方法では、塗布材塗布工程が上記実施形態4と異なる。それ以外は、上記実施形態1または4と同様であるので、上記実施形態1または4と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0079】
本実施形態5における塗布材塗布工程では、木質床材110のうちの雄実部115,116、雌実部123,124、面取り部121,122,123,124及び側面110a,110b,110c,110d(低位部)に、ディスペンサDP3により、塗布材TZ4を塗布する(図14参照)。このディスペンサDP3は、45度屈曲したカーブニードルCN2を有する。また、このディスペンサDP3は、垂直方向及び水平方向に移動可能なだけでなく、カーブニードルCN2の角度を任意に調整することもできる。従って、低位部115,116等に確実に塗布材TZ4を塗布でき、特に品質バラツキの少ない塗装木質床材400を製造できる。その他、上記実施形態1等と同様な部分は、上記実施形態1等と同様な作用効果を奏する。
【0080】
(実施形態6)
次いで、第6の実施形態について説明する。本実施形態6では、木質床材110の基材の種類が上記実施形態1と異なる。また、本実施形態6の塗装木質床材400の製造方法では、塗布材塗布工程で用いる塗布材TZ5が、上記実施形態4で用いる塗布材TZ4と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1または4と同様であるので、上記実施形態1または4と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0081】
本実施形態6では、木質床材110として、ラワン合板を用いる。そして、塗布材塗布工程において、塗布材TZ5として、ウレタン塗料を用いる。そして、このウレタン塗料からなる塗布材TZ5を、上記実施形態4と同様に、木質床材110のうちの雄実部115,116、雌実部123,124、面取り部121,122,123,124及び側面110a,110b,110c,110d(低位部)に、カーブニードルCN1を有するディスペンサDP2により塗布する(図13参照)。
その後、熱硬化性塗料硬化工程において、木質床材110に塗布した塗布材TZ5を熱硬化させる。具体的には、60℃で1時間保持して、塗布材TZ5を熱硬化させる。
【0082】
本実施形態6の製造方法でも、木質床材110に形成された低位部115,116等に、選択的に塗布材TZ5を塗布する塗布材塗布工程を備えるので、上記低位部115,116等に塗布材TZ5を確実に塗布できる。
また、本実施形態6では、塗布材TZ5として熱硬化性塗料を用いるため、加熱により熱硬化性塗料を熱硬化させることができるので、製造が容易である。
その他、上記実施形態1等と同様な部分は、上記実施形態1等と同様な作用効果を奏する。
【0083】
(実施形態7)
次いで、第7の実施形態について説明する。本実施形態7では、木質床材110の基材の種類が上記実施形態1と異なる。また、塗装工程を行わない点が上記実施形態1と異なる。それ以外は、上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
図15に、本実施形態7に係る塗装木質床材700のうち雄実部115,116及び面取り部121,122等の断面を示す。また、図16に、塗装木質床材700のうち雌実部117,118及び面取り部123,124等の断面を示す。
【0084】
この塗装木質床材700では、木質床材110の表板面110h上には、着色層もクリア塗料層も形成されておらず、表板面110h全体が露出している。
木質板材110は、オレフィンシート合板からなり、上記実施形態1と同様の形状を有する。即ち、上記実施形態1と同様に、木質板材110の表板面110hには、複数の凹溝111,112が形成されている(図15及び図16参照)。また、木質板材110には、雄実部115,116及び面取り部121,122が設けられている(図15参照)。また、木質板材110には、雌実部117,118及び面取り部123,124が設けられている(図16参照)。
【0085】
また、凹溝111,112全体、雄実部115,116の一部、面取り部121,122全体、及び、側面110a,110cの一部には、水性ステイン(着色材)からなる着色層731が形成されている(図15参照)。また、凹溝111,112全体、面取り部123,124全体、及び、側面110b,110dの一部にも、着色層731が形成されている。一方、木質板材110の表板面110h上には、着色層731が形成されていない。また、表板面110hには、上記実施形態1のような着色層や塗料層も形成されていない。
【0086】
次いで、この塗装木質床材700の製造方法について説明する。
まず、オレフィンシート合板からなる上記の木質床材110を用意する。そして、塗布材塗布工程(低位部着色工程)において、木質床材110のうちの凹溝111,112、雄実部115,116、面取り部121,122,123,124の可視低位部に、上記実施形態1と同様にして、ディスペンサDPにより第1水性着色材(塗布材)TZ1を塗布し、この木質床材110を部分的に着色する。
【0087】
その後、第1水性着色材乾燥工程において、木質床材110に塗布した第1水性着色材(塗布材TZ1)を乾燥させる。具体的には、ジェット乾燥機を用いて、木質床材110に塗布した第1水性着色材(塗布材TZ1)を乾燥させる。
かくして、上記塗装木質床材700が完成する。
【0088】
以上で説明したように、この塗装木質床材700の製造方法では、木質床材110のうちの可視低位部(具体的には、凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124)のみを選択的に着色する低位部着色工程を備える。このため、可視低位部111,112等を、この低位部着色工程において確実に着色できる。
その他、上記実施形態1等と同様な部分は、上記実施形態1等と同様な作用効果を奏する。
【0089】
(比較形態1〜4)
第1の比較形態として、上記実施形態1において、塗布材塗布工程(低位部着色工程)を変更して、塗装木質床材100を製造した。具体的には、塗布材塗布工程(低位部着色工程)において、木質床材110の凹溝111,112、雄実部115,116の表面115h,116h及び面取り部121,122,123,124(可視低位部)への第1着色材TZ1を塗布を、ディスペンサDPの代わりに、スプレを用いて行った。
しかしながら、スプレにより第1着色材TZ1を可視低位部111,112等に塗布すると、第1着色材TZ1が可視低位部111,112からはみ出して塗布される。このため、塗布後にはみ出した第1着色材TZ1を拭き取る作業が必要となり手間が掛かる。従って、上記実施形態1で説明したように、第1着色材TZ1の塗布は、ディスペンサDPにより行うのが好ましい。
【0090】
また、第2の比較形態として、上記実施形態4において、塗布材塗布工程を行わずに、塗装木質床材を製造した。この塗装木質床材では、木質床材110の低位部115,116等の防水性が低下し、水分により低位部115,116等が膨潤するために、塗装木質床材の寸法安定性が低下した。従って、上記実施形態4で説明したように、塗布材塗布工程を行うことが好ましい。
【0091】
また、第3の比較形態として、上記実施形態6において、塗布材塗布工程を変更して、塗装木質床材を製造した。具体的には、塗布材塗布工程において、木質床材110の凹溝111,112、雄実部115,116、雌実部117,118及び面取り部121,122,123,124(低位部)への塗布材TZ5を塗布を、ディスペンサDP2の代わりに、スプレを用いて行った。
しかしながら、スプレにより塗布材TZ5を低位部111,112等に塗布すると、塗布材TZ5が低位部111,112等からはみ出して塗布される。このため、塗布後にはみ出した塗布材TZ5を拭き取る作業が必要となり手間が掛かる。従って、上記実施形態6のように、塗布材TZ5の塗布は、ディスペンサDP2により行うのが好ましい。
【0092】
また、第4の比較形態として、上記実施形態7において、塗布材塗布工程(低位部着色工程)を行わずに、塗装木質床材を製造した。この塗装木質床材では、低位部111,112等が着色されないために、外観が損なわれる。従って、上記実施形態7のように、塗布材塗布工程(低位部着色工程)を行うのが好ましい。
【0093】
以上において、本発明を実施形態1〜7即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜7に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態1〜7では、可視低位部として、凹溝111,112と、雄実部115,116と、面取り部121,122,123,124の3種類を有する木質床材110を例示したが、これに限定されない。例えば、これら3種類の可視低位部のうち、いずれか1種類のみ、またはいずれか2種類のみを有する木質床材に本発明を適用することもできる。
【0094】
また、上記実施形態1〜7では、可視低位部(凹溝111,112、雄実部115,116及び面取り部121,122,123,124)のすべてに対して、本発明に係る低位部着色工程を行っているが、これに限定されない。例えば、凹溝111,112に対してのみ、または、凹溝111,112のうちの縦凹溝111に対してのみなど、可視低位部の一部に対してのみに低位部着色工程を行ってもよい。
また、上記実施形態1,3では、第1,第2着色材TZ1として同じ水性着色材を用いているが、色調の異なる着色材を用いることもできる。
【0095】
また、上記実施形態1〜3では、3層のクリア塗料層135,137,139をその都度硬化させて一層ずつ形成している。しかし、各々のUV塗料を続けて塗布した後、全部まとめて硬化させることにより、3層のクリア塗料層135,137,139を同時に形成してもよい。
また、上記実施形態1〜3では、クリア塗料層を3層(クリア塗料層135,137,139)形成しているが、クリア塗料層の総数は特に限定されない。例えば、クリア塗料層を1層としてもよいし、或いは2層としてもよい。
【0096】
また、上記実施形態1〜3では、表側全体着色工程において、掻取ロールKRを順回転させて余分な第2着色材TZ2を取り除いているが、掻取ロールKRを逆回転させて余分な第2着色料を取り除いてもよい。
また、上記実施形態1〜7では、木質床材110として、突き板合板やパーティクルボード、ラワン合板、オレフィンシート合板を用いているが、これに限定されない。例えば、木質床材110として、MDFを含む合板を用いることもできる。
【符号の説明】
【0097】
100,400,700 塗装木質床材
110 木質床材
110h 被着色面(表板面)
110r 裏面(裏板面)
111 縦凹溝(低位部、可視低位部)
112 横凹溝(低位部、可視低位部)
115 第1雄実部(低位部、可視低位部)
116 第2雄実部(低位部、可視低位部)
117 第1雌実部(低位部、可視低位部)
118 第2雌実部(低位部、可視低位部)
121 第1面取り部(低位部、可視低位部)
122 第2面取り部(低位部、可視低位部)
123 第3面取り部(低位部、可視低位部)
124 第4面取り部(低位部、可視低位部)
131,731 着色層
134 クリア塗料層
431 塗料層
TZ1,TZ3 第1着色材(塗布材)
TZ4,TZ5 塗布材
TZ2 第2着色材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表板面及び裏板面を有する板状をなし、前記表板面よりも前記裏板面側に低位に形成された低位部を有する木質床材のうち、少なくとも前記低位部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法であって、
前記木質床材のうちの前記低位部に、ディスペンサにより前記塗布材を塗布する塗布材塗布工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記塗装木質材は、
前記表板面が被着色面とされ、前記低位部が厚み方向の前記被着色面側から視認し得る可視低位部を含み、前記木質材を着色し更に塗装してなり、
前記塗布材塗布工程は、
前記木質床材のうちの前記可視低位部に、厚み方向の前記被着色面側から前記ディスペンサにより前記塗布材として第1着色材を塗布して、前記可視低位部を着色する低位部着色工程であり、
前記低位部着色工程よりも後に、前記木質床材のうちの少なくとも前記被着色面に第2着色材を塗布して、前記木質床材のうちの少なくとも前記被着色面を着色する被着色面着色工程と、
前記被着色面着色工程よりも後に、前記木質床材のうちの少なくとも前記被着色面を塗装する塗装工程と、を更に備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記低位部着色工程では、前記第1着色材として水性着色材を用い、
前記低位部着色工程よりも後で、前記被着色面着色工程よりも前に、前記水性着色材を乾燥させる水性着色材乾燥工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記低位部着色工程では、前記第1着色材としてUV着色材を用い、
前記低位部着色工程よりも後で、前記被着色面着色工程よりも前に、前記UV着色材をUV硬化させるUV着色材硬化工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記低位部着色工程では、前記第1着色材として第1水性着色材を用い、
前記被着色面着色工程では、前記第2着色材として第2水性着色材を用い、
前記被着色面着色工程を、前記低位部着色工程で塗布した前記第1水性着色材を乾燥させる前に行い、
前記低位部着色工程よりも後で、前記塗装工程よりも前に、前記第1水性着色材と前記第2水性着色材とを同時に乾燥させる水性着色材同時乾燥工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記塗装木質材は、
前記低位部が厚み方向の前記表板面側から視認し得る可視低位部を含み、前記木質材を着色してなり、
前記塗布材塗布工程は、
前記木質床材のうちの前記可視低位部に、厚み方向の前記表板面側から前記ディスペンサにより前記塗布材として着色材を塗布して、前記可視低位部を着色する低位部着色工程である
塗装木質床材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記低位部着色工程では、前記着色材として水性着色材を用い、
前記低位部着色工程よりも後に、前記水性着色材を乾燥させる水性着色材乾燥工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記塗布材塗布工程では、前記塗布材としてUV塗料を用い、
前記塗布材塗布工程よりも後に、前記UV塗料をUV硬化させるUV塗料硬化工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記塗布材塗布工程では、前記塗布材として熱硬化性塗料を用い、
前記塗布材塗布工程よりも後に、前記熱硬化性塗料を熱硬化させる熱硬化性塗料硬化工程を備える
塗装木質床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−202590(P2009−202590A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17165(P2009−17165)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】