説明

塗装装置

【課題】 防爆構造を実現し、装置の簡易化および小型化を図ることができる塗装装置を提供する。
【解決手段】塗装ロボット2と、前記塗装ロボット2のアーム先端部に装着された塗装機本体3と、塗装機本体3の塗料吐出口3dに塗料通路3eを介して通じる塗料貯留部4と、塗料通路3eの途中に配設された定量ポンプ5Aと、定量ポンプ5Aを駆動させる液体圧モータ5Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの先端部に設けられる塗装機本体の、塗料吐出口からたとえば、水性塗料を噴射して静電塗装を行うために好適に実施することができる塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水性塗料で静電塗装を行う装置における塗料の供給方式としては、大別して、外部印加方式、ボルテージブロック方式、カートリッジ方式および塗料タンク保持方式が挙げられる。近時、自動車ボディなどの塗装には、塗装設備の大型化を抑えることができることから、カートリッジ方式が多く採用されるようになった。このようなカートリッジ方式の塗装装置は、塗料が充填されたカートリッジを、ヘッド部に着脱自在に装着され、塗装対象物の仕様に応じて異なる色のカートリッジに適宜交換して塗装するように構成されている。
【0003】
カートリッジ方式の塗装装置における塗装機本体への塗料の供給方法は、たとえば、特許文献1〜3に記載されている。特許文献1の先行技術では、カートリッジ内に設けられたピストンを空気圧あるいは液圧で作動させ、塗装機本体に装着されたカートリッジ内の塗料を吐出口側に押出し、あるいは、カートリッジ内に設けられた袋状塗料容器を同様の流体圧で圧縮して塗料を同様に押出すようにしている。
【0004】
また、特許文献2の先行技術では、ロボットの近くに設置されたカートリッジホルダ内に圧縮ガスボンベを設け、あるいは外部のコンプレッサから圧縮空気を導入し、カートリッジホルダ内のカートリッジを圧縮し、ペイントチューブを通じて塗装機本体の吐出口側に塗料を押出すようにしている。
【0005】
さらに、特許文献3の先行技術では、ピストンをヘッド部に内蔵したモータによって駆動して塗料を吐出口側に押出すようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−229446号公報
【特許文献2】特開平9−168766号公報
【特許文献3】特開2003−175348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される塗装装置の場合、ピストンを作動させあるいは袋状容器を圧縮させるための空気圧あるいは液圧が用いられており、そのため、空気や液体を圧送するためのモータなどの駆動源を備える圧送装置を設け、塗装機本体側には、空気圧あるいは液圧を受けて、塗料を吐出口側に押出すピストンや袋状容器を備える受圧室がカートリッジ毎に設けられている。この場合は、圧送装置と受圧装置とが配管接続されるが、圧送装置が大型となるため、ロボットあるいは塗装機本体に設けると、ロボットの可動範囲に制約を受けると共に、装置全体がより一層大型化および複雑化して、コストの増大を招くことにもなる。
【0008】
また、特許文献2のように、カートリッジホルダ内に圧縮ガスボンベを設け、あるいは外部のコンプレッサからカートリッジホルダへ圧縮空気を導入する場合は、圧縮ガスボンベのランニングコストが嵩み、あるいは外部のコンプレッサからロボットへの配管を要する上に、カートリッジホルダから塗装機本体へのペイントチューブの配管接続も必要とされる。
【0009】
さらに、特許文献3のように、塗装機部にピストンを作動させるためのモータを設ける場合、塗装機部の重量が増加するため、塗装機部を動作させるためのエネルギが増大し、加えて、防爆上の問題も派生する。
【0010】
本発明の目的は、防爆構造を実現し、装置の簡易化および小型化を図ることができる塗装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ロボットアームの先端部に装着され、塗料を吐出する塗料吐出口を有する塗装機本体と、
前記塗装機本体の塗料吐出口に塗料通路を介して連通する塗料貯留部と、
前記塗装機本体の塗料通路の途中に設けられ、塗料貯留部の塗料を塗料吐出口に吐出する定量ポンプと、
前記定量ポンプを駆動させる液体圧モータとを含むことを特徴とする塗装装置である。
【0012】
また本発明は、前記塗料貯留部は、塗装機本体に着脱自在に装着される塗料カートリッジからなることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記液体圧モータを作動させるための液体は非導電性の液体からなり、前記液体の供給源は、ロボットアーム内に設置されていることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記定量ポンプと液体圧モータとは、ギヤポンプから成ることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記塗装機本体は静電塗装機本体であって、対象塗料が水性塗料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗料通路の途中に配設された定量ポンプの作動により、塗料貯留部に貯留された塗料が、塗料通路を経て塗装機本体の塗料吐出口に供給される。ロボットは、教示によって予めプログラムされた動作シーケンスに従って塗装機本体を被塗物の形状などに応じて動作し、塗装機本体の塗料吐出口より塗料を吐出しながら被塗物の塗装を行う。定量ポンプは、液体圧モータによって駆動されるので、防爆上の問題を生じることなく塗料吐出口への塗料の定量供給を行う。そして、定量ポンプの処理量(回転数)の適宜設定により、安定かつ精度の高い塗装が実現できる。
【0017】
さらに、定量ポンプが塗装機本体内であって塗料通路の途中に配設されるので、定量ポンプから塗料吐出口までの距離が短く、この間での圧力損失が生じることがなく、吐出精度の向上を図ることができる。しかも、定量ポンプは、塗装機本体内に設けられるので、狭い作業空間内であっても周囲の機器への干渉が防がれる。
【0018】
また、塗料貯留部が、塗装機本体に着脱自在に装着される塗料カートリッジからなることによって、各色のカートリッジを準備しておくことにより、被塗物の塗装仕様に応じた色替えなどの対応を簡易に行うことができ、大規模な塗装設備を不要とする。
【0019】
また、前記液体圧モータを作動させるための液体を非導電性の液体とし、この液体の供給源を、塗装ロボットのアーム内に設置することによって、防爆性が完全に保証されると共に、塗装ロボットの外部から液体を供給・循環させるための流体圧送用配管などを設置する必要がなく、装置の簡易化および小型化に一層寄与する。また、圧送流体の管路の設置箇所がアーム内の一箇所に限定されるから、扱いが便利でメンテナンスも容易となる。加えて、イニシャルコストも低減できる。
【0020】
さらに、前記定量ポンプと液体圧モータとが、一体型のギヤポンプとして構成されることによって、構成のコンパクト化が図られ、塗装機本体内にこれを組込むための大きなスペースを確保する必要がなく、重量増による塗装機本体の作動エネルギの問題も生じることがない。
【0021】
そして、本発明の塗装機本体は、以上のような簡易な構成を備えるものであるから、対象塗料を水性塗料とする静電塗装機本体を簡易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施形態の塗装装置1が塗装室に設置された状態を示す鉛直断面図である。塗装ブース内BIと塗装ブース外BOとは壁Wによって仕切られ、塗装ブース内BI内には、本実施形態の塗装装置1が設置されている。この塗装装置1は、静電塗装装置であって、塗装ロボット2と、塗装ロッボット2のアーム先端部に装着された塗装機本体3と、塗装機本体3の基端(上端)側に着脱自在に装着された塗料カートリッジ(塗料貯留部)4とを主たる構成要素として備える。塗装ロボット2は、ロボットベース2aに、関節部2b,2c,2dを介し、第1アーム2e,第2アーム2fおよび手首部2gが連結され、これら関節部、アームおよび手首部により自由度6のロボットアーム部が構成されている。ロボットベース2a内に、各関節部2b,2c,2dを動作させるための中枢機構部および制御部(いずれも図示せず)が装備され、手首部2gに塗装機本体3が着脱自在に取付けられている。
【0023】
塗装機本体3は、ベルボディ3aと、ベルボディ3aに内蔵されたエアモータ3bと、エアモータ3bに支持されたベルカップ3cと、ベルボディ3aのほぼ中央に上下に貫通し塗料カートリッジ4と塗料吐出口3dとを連通する塗料通路3eと、前記塗料通路3eの途中に配設されたギヤポンプ5とを備える。
【0024】
エアモータ3bは、圧縮空気により高速回転するエアタービンによって実現される。エアモータ3bには、図示しない圧縮空気供給ラインを介して圧縮空気が供給される。塗装機本体3のベルボディ3aには、ブース外BOに設置された高電圧コントローラ6から導出され、関節部2c、第2アーム2f、関節部2dおよび手首部2g内に配線された高電圧ケーブル6aの先端が臨み、また、ベルカップ3cは、前記エアモータ3bによって高速回転可能に支持されている。これらによって、ボルテージブロック方式の回転霧化塗装機本体が構成されている。ボルテージブロック方式により、塗装機本体3のベルボディ3aに直接高電圧を印加できるため、水性塗料に対応した塗着効率の良い塗装装置を実現することができる。ベルボディ3aの側部には、内部洗浄ポート7を備え、後述するように塗料の色替え時に、塗料通路3e内の洗浄が行えるようになされている。
【0025】
塗料カートリッジ4は、図2にも示すように、塗装機本体3(ベルボディ3a)の上端に着脱自在に装着させるためのベース部4aと、ベース部4aの上に装着された透明樹脂からなるカバーケース(カートリッジボディ)4bと、ベース部4aおよびカバーケース4bにより形成される内部空間内に設けられた軟質の合成樹脂からなる透明ラミネートパック(塗料貯留容器)4cとを備えている。
【0026】
ベース部4aの中央には、ラミネートパック4cに通じ、かつベルボディ3aに装着された際に塗料通路3eに連通するニードル弁4dによる塗料注出口が設けられている。カバーケース4bの上端には、取外し可能なエンドキャップ4eが螺着されている。ベース部4aは、ベルボディ3aに対して、その軸線まわりに回動させることによって、図示しない着脱機構部を介して着脱可能とされている。
【0027】
ベルボディ3aの着脱機構部には、塗料通路3eの入口部分を開閉する開閉シャッター3fと図示しないカートリッジロック機構(ロックシリンダ)が設けられている。この開閉シャッター3fは、塗料カートリッジ4がベルボディ3aに装着されロックされたときには開となり、また、脱着されたときには閉となるように構成されている。さらに、ベルボディ3a内には、オン・オフの操作信号によって動作するトリガーバルブ3gが設けられ、開閉シャッター3fが開の状態でトリガーバルブ3gがオンとされると、ニードル弁4dが押上げられて開となり、ラミネートパック4c内と塗料通路3eとが連通する。
【0028】
前記内部洗浄ポート7は、ベルボディ3a内に形成された洗浄流体通路7aを介して塗料通路3eに通じており、また、その入口部分にはチャッキ弁7bが設けられている。後記するように、洗浄ユニット8(図3参照)が内部洗浄ポート7にドッキングされたときには、洗浄流体の流体圧によりチャッキ弁7bが開となり、洗浄流体通路7aを経て洗浄液あるいは洗浄エアーが塗料通路3eに供給されるように構成されている。
【0029】
塗装ロボット2の第2アーム2fには、前記ギヤポンプ5を作動させるための非導電性液体を循環させる液体供給源である循環ポンプ液体供給源9と、この循環ポンプ9の駆動用モータ9aとが設置されている。循環ポンプ9と、駆動用モータ9aとにより、前記液体の供給源が構成される。循環ポンプ9とギヤポンプ5とは、循環路9b,9cを介して非導電性液体の循環系が構成されており、往復路としての循環路9b,9cは、ナイロンあるいはテフロン(登録商標)などの樹脂チューブからなり、第2アーム2f、関節部2d、手首部2gおよびベルボディ3aに亘って配設されている。非導電性液体としては、酢酸を好適に用いることができる。ギヤポンプ5の詳細構造およびその作用については後述する。
【0030】
図2は、塗装装置1が塗装動作のスタンバイ状態ないしは塗装開始動作に移行する状態であることを示している。すなわち、塗装機本体3の上端には、ラミネートパック4cに所望の塗料pが充填された塗料カートリッジ4が装着されており、この状態では、開閉シャッター3fが開とされている。この状態から、ロボット2の関節部2b,2c,2d、第1アーム2e,第2アーム2fおよび手首部2gが所定の動作シーケンスに基づき動作し、被塗物(図示せず)の表面にベルカップ3cが近接され、その後、トリガーバルブ3gがオンとされ、ニードル弁4dが開とされる。
【0031】
ベルボディ3aには、高電圧コントローラ6から高電圧ケーブル6aを介して高電圧、たとえば90000V〜100000Vが印加されるとともに、エアモータ3bに圧縮空気が供給されてベルカップ3cが高速回転、たとえば40000rpm〜50000rpmの回転状態とされる。この状態で循環ポンプ9が作動し、非導電性液体の循環作用によってギヤモータモンプ5が作動し、ラミネートパック4c内の塗料pは、塗料通路3eを経てベルカップ3c内に臨む塗料吐出口3dから被塗物に向けて吐出される。
【0032】
ベルカップ3cは、被塗物の表面から200mm〜300mm離れた位置で被塗物の表面に沿って、塗装ロボット2の動作によって移動し、塗料吐出口3dから吐出される塗料pは、ベルカップ3cの高速回転とベルボディ3aに印加された高電圧とによって回転霧化され、アースされた被塗物の表面に静電気力によって塗着される。このとき、被塗物の表面は、たとえば正電位に帯電されており、微粒化された塗料粒子はベルボディ3aに対する高電圧の印加により負電位に帯電され、これにより塗料粒子は、静電気的に被塗物の表面に吸着される。
【0033】
また、塗料pの供給は、非導電性液体によって作動するギヤモータモンプ5によってなされるから、防爆構造が実現されると共に、精度の高い定量供給がなされ、塗着精度が向上する。さらに、ボルテージブロック方式の回転霧化によって塗装がなされるから、水性塗料にも好適であり、塗着効率の高い水性塗料の塗装が実現できる。
【0034】
塗料カートリッジ4のラミネートパック4cには1回の塗装に必要な量の塗料pが充填されており、目的の塗装が完了すると、ギヤモータモンプ5の作動を停止し、トリガーバルブ3gをオフしてニードル弁4dを閉とすると共に、エアモータ3bの回転および高電圧の印加を停止させた上で塗装ロボット2は塗装機本体3を待機位置(塗料カートリッジの交換位置)に移動させる。
【0035】
ラミネートパック4cは、透明カバーケース4bを透して視認されるから、作業者は、この塗装作業の間、ラミネートパック4c内の塗料pの量を、壁Wに設けられた確認窓(図示せず)を通してブース外BOより監視することができる。また、カバーケース4bには、その内部空間と外部とを連通させるための図示しない通気孔が設けられている。
【0036】
したがって、カバーケース4bの内部空間は外気の導入によって常時大気圧に維持されるから、塗装時におけるラミネートパック4c内の塗料pの減少に伴うラミネートパック4c内の減圧過程で、カバーケース4bが圧縮・収縮され、これによって、塗料pの供給が円滑になされ、定量供給が維持される。
【0037】
所定の塗装が完了すると、上述のように、塗装ロボットは塗装機本体3を塗料カートリッジ交換位置に移動させて待機させる。図3は、この塗料カートリッジ交換位置での塗装機本体3の状態を示しており、塗装機本体3のベルカップ3cが洗浄ホッパー10内に下向きに挿入されている。そして、図示しない移載装置によって塗料カートリッジ4が取外され、続いて、洗浄ユニット8が内部洗浄ポート7に接続される。
【0038】
洗浄ユニット8には、洗浄液バルブ8aおよび洗浄エアーバルブ8bを介して洗浄液供給管路8cおよび洗浄エアー供給管路8dが接続されており、洗浄液供給管路8cおよび/または洗浄エアー供給管路8dをオン(開)とすることにより、この流体圧によりチャッキ弁7bが開となり、これらの洗浄液供給管路8cおよび/または洗浄エアー供給管路8dが洗浄流体通路7aを介して塗料通路3eに通じる。これによって、塗料通路3eの洗浄がなされ、洗浄流体は洗浄ホッパー10内に収容される。
【0039】
このとき、開閉シャッター3fは閉とされているから、洗浄流体が外部に流出することはない。また、洗浄ホッパー10の上にカップ裏洗浄ノズル11が設置されており、このカップ裏洗浄ノズル11には、洗浄液バルブ11aを介して洗浄液供給管路11bが接続されている。
【0040】
塗料通路3eの洗浄と並行して、洗浄液バルブ11aをオン(開)とすることによって、ベルカップ3cの裏面が洗浄され、洗浄液は洗浄ホッパー10内に収容される。これらの洗浄の際には、エアモータ3bを作動させ、ベルカップ3cを回転させておけば、ベルカップ3cの表裏がむらなく清浄化され、次の塗装への影響をなくすことができる。洗浄液としては、塗料pが水性塗料の場合は水が、油性塗料の場合は各種有機溶剤が、用いられる。
【0041】
塗料通路3eおよびベルカップ3cの洗浄が完了すると、ベルカップ3cの回転を停止させた上で、前記移載装置によって色替えがなされる。すなわち、移載装置は、図示しないカートリッジ配列台上に各色の塗料が事前に充填され準備された複数の塗料カートリッジから、次の塗装仕様に基づく所定色の塗料が充填された塗料カートリッジ4を取り出して塗装機本体3の上端部に載せ、所定の装着動作を行い、塗料カートリッジ4を塗装機本体3の上端部に装着・固定する。この装着・固定により開閉シャッター3fが開となり、ラミネートパック4cの内部と塗料通路3eとがニードル弁4dを介して連通し、図2に示すように塗装スタンバイ状態となる。以後、前記と同様にロボット2などの動作が開始され、次の塗装仕様に基づく塗装がなされ、目的の塗装が完了すると、同様に塗料カートリッジ4の交換・色替えおよび洗浄がなされ、これらが順次繰返される。
【0042】
図4および図5は、ギヤポンプ5の詳細を示している。図に示すギヤポンプ5は、定量ポンプとしてのギヤポンプ本体5Aと、液体圧モータ5Bとが一体として構成されたものである。図示のギヤポンプ本体5Aは、外接形ギヤポンプであり、一対の外接歯車5Aa,5Abが、互いに噛合った状態でケーシング5Ac内に回転可能に支持されている。この支持状態では、外接歯車5Aa,5Abの外周および側面は、ケーシング5Acの内面に密接している。外接歯車5Aaが駆動側、外接歯車5Abが従動側とされ、駆動側外接歯車5Aaは駆動軸5Adに一体にキー結合され、一方、従動側外接歯車5Abはケーシング5Acに固定された支軸5Aeに軸回転可能に支持されている。ケーシング5Acにおける外接歯車5Aa,5Abが噛合う部分の両側には、塗料通路3eが接続される吸入口5Afおよび吐出口5Agが形成されている。
【0043】
液体圧モータ5Bは、ギヤポンプ本体5Aのケーシング5Acと一体に形成されたモータケーシング5Baと、このモータケーシング5Ba内に、その内面に密接的に軸回転可能に支持されたタービン5Bbとより構成される。タービン5Bbの出力軸5Bcは、ギヤポンプ本体5Aにおける駆動軸5Adに同心的に直結されており、タービン5Bbの回転力が出力軸5Bcおよび駆動軸5Adを介し、外接歯車5Aaに伝達されるように構成されている。モータケーシング5Baの液体導入口5Bdには、前記循環ポンプ9に繋がる循環路(往路)9bが接続され、液体排出口5Beには、循環路(復路)9cが接続される。
【0044】
このような構成のギヤポンプ5の作用について説明する。前記循環ポンプ9の駆動用モータ9aが作動すると、循環ポンプ9によって循環路9b,9cを非導電性液体が循環する。循環路9bから液体圧モータ5Bのモータケーシング5Ba内に導入された非導電性液体は、タービン5Bbに作用して、タービン5Bbを図4の破線矢印の方向に軸回転させる。この回転は、出力軸5Bcから、ギヤポンプ本体5Aの駆動軸5Adに伝達され、これにより、駆動側外接歯車5Aaおよびこれに噛合う従動側外接歯車5Abが、図5に示す矢印の方向に軸回転する。両外接歯車5Aa,5Abの回転の際に、双方の歯同士が離れる部分に真空部分が生じ、この真空部分に塗料通路3eが接続された吸入口5Afより塗料pが吸入され、両外接歯車5Aa,5Abの歯溝空間が順次塗料で満たされる。
【0045】
両外接歯車5Aa,5Abの回転に伴い歯溝に満たされた塗料pは、順次吐出口5Ag付近にまで運ばれる。吐出口5Ag付近にまで運ばれた塗料pは、両外接歯車5Aa,5Abの噛合いに伴う歯溝空間の容積の減少により押出され、吐出口5Agより塗料吐出口側の塗料通路3eに導出される。これにより、塗料カートリッジ4内の塗料pは、塗料通路3eを経てその先端の塗料吐出口3d(図1および図2参照)から被塗物に向けて吐出される。
【0046】
前記駆動用モータ9aを定速回転させることによって、循環ポンプ9による非導電性液体の循環量(液体圧)を一定化させることができる。非導電性液体の循環量を一定とすることにより、ギヤポンプ5による塗料pの供給量を一定化させることができる。たとえば、自動車のボディの塗装においては、駆動用モータ9aの回転速度を1000rpm、循環ポンプ9による非導電性液体の循環量を0.5cc/1回転とし、塗料吐出口3dからの塗料吐出量を500cc/minとされる。このように、駆動用モータ9aの回転速度の設定により、塗料吐出口3dからの塗料吐出量の設定が、簡易かつ精度よくなされる。
【0047】
ギヤポンプ5は、ギヤポンプ本体5Aと、液体圧モータ5Bとの一体型で構成されたものであるから、コンパクトでかつ軽量であり、そのため、塗装機本体3内のギヤポンプ5のための収納スペースを大きく確保する必要がなく、また、塗装機本体3を動作させるためのエネルギも小さくすることができる。
【0048】
さらに、ギヤポンプ5は、第2アーム2f内に設置された駆動用モータ9aおよび循環ポンプ9により循環供給される非導電性液体の液体圧で作動するから、塗装機本体3を防爆構造とすることができると共に、塗料pの精度の高い定量供給が可能とされる。
【0049】
しかも、ギヤポンプ5は、塗料カートリッジ4から塗料吐出口3dに通じる塗料通路3eの途中に配設されるから、ギヤポンプ5から塗料吐出口3dまでの距離が短く、この間での圧力損失が殆どなく、塗装精度の向上を図ることができる。加えて、塗装ロボット2の外部から液体を供給・循環させるための流体圧送用配管などを設置する必要がなく、装置を簡易化および小型化することができると共に、循環路9b,9cのような圧送流体の管路の設置箇所が第2アーム2f内の一箇所に限定されるから、ギヤポンプ5を作動させるための機構のイニシャルコストも低減でき、これらのメンテナンスも容易となる。
【0050】
なお、前記実施形態における塗料カートリッジ4には、図示を省略したが、塗料pをラミネートパック4c内に充填するためのチャッキ弁付注入口が設けられている。実際の塗装設備においては、塗装ブース外の塗料調合室などにおいて、あるいは、塗料製造工場において、塗装仕様に応じて、各種色の塗料pがこの注入口より注入され、塗装ブース内の前記配列台に搬入される。
【0051】
また、図1において図示を省略したが、エアモータ3bの近傍には回転センサが設置され、このセンサによる検出情報をブース外BOの回転計で表示すると共に、この検出情報を塗装ロボット2の制御部(いずれも図示せず)にフィードバックし、塗装ロボット2のロボットアーム部、エアモータ3b、ギヤポンプ5の駆動用モータ9aなどの動作制御をするよう構成されている。
【0052】
さらに、塗装ロボット2、エアモータ3b、ギヤポンプ5、ベルボディ3aへの高電圧印加および前記洗浄などの作動制御は、予めプログラムされた動作シーケンスに基づき、塗装ロボット2の制御部においてなされる。本発明の塗装機本体は、水性塗料の静電塗装に好適であるが、油性塗料の静電塗装にも適用することができる。また、自動車のボディだけでなく、その他の輸送装置(たとえば、飛行機、列車、自転車、バイクなど)のボディ、各種家電製品や制御機器などのケーシング、建築用品あるいは建築資材などの塗装にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態の塗装装置1を示す断面図である。
【図2】塗装装置1の一部の断面図であり、塗装スタンバイ状態ないしは塗装動作状態を示している。
【図3】塗装装置1を洗浄する状態を示す断面図である。
【図4】塗装装置1に組込まれたギヤポンプを示す平面図である。
【図5】図4の切断面線V−Vから見た断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 塗装装置
2 塗装ロボット
2f アーム
3 塗装機本体
3d 塗料吐出口
3e 塗料通路
4 塗料カートリッジ(塗料貯留部)
5 ギヤポンプ
5A ギヤポンプ本体(定量ポンプ)
5B 液体圧モータ
9 循環ポンプ(液体の供給源)
9a 駆動用モータ(液体の供給源)
p 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端部に装着され、塗料を吐出する塗料吐出口を有する塗装機本体と、
前記塗装機本体の塗料吐出口に塗料通路を介して連通する塗料貯留部と、
前記塗装機本体の塗料通路の途中に設けられ、塗料貯留部の塗料を塗料吐出口に吐出する定量ポンプと、
前記定量ポンプを駆動させる液体圧モータとを含むことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記塗料貯留部は、塗装機本体に着脱自在に装着される塗料カートリッジからなることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記液体圧モータを作動させるための液体は非導電性の液体からなり、前記液体の供給源は、ロボットアーム内に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記定量ポンプと液体圧モータとは、ギヤポンプから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗装装置。
【請求項5】
前記塗装機本体は静電塗装機本体であって、対象塗料が水性塗料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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