説明

塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法

【課題】 本発明は、塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを共重合させて製造された共重合体を、液相造粒法により、簡便に回収することができ、ハンドリングに優れた塩化ビニル系共重合樹脂の造粒体を得る製造方法を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル系共重合樹脂を構成するモノマー成分の総量に対する塩化ビニル系モノマーの比率が、50重量%以上90重量%以下であり、重合終了後の水性分散液に、水に不溶でかつ塩化ビニル系共重合樹脂を溶解しない有機液体を加え、攪拌することにより塩化ビニル系共重合樹脂を有機液体相に移行させた後、水相を分離除去した塩化ビニル系共重合樹脂を乾燥することを特徴とする塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系モノマーおよび二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとの共重合樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、安価で且つ機械的物性や化学的物性に優れる等、品質バランスに優れており、また可塑剤を使用することで硬質から軟質までの成形体が得られるため、種々の広範な分野で利用されている熱可塑性樹脂である。
【0003】
本発明で用いられる塩化ビニル系共重合体は、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが塩化ビニル系樹脂にほぼ完全に取り込まれるために、単独成形により、ブリードの少ない、透明性の高い樹脂とすることができる。しかし、共重合樹脂単独で目的の柔軟性を得るためにはマクロモノマーを多く添加する必要があり、そのために共重合樹脂自身のガラス転移温度が低下し、乾燥条件の制御が困難であった。
【0004】
塩化ビニル系樹脂は制御の簡易性と後処理の簡便性から、ラテックスやスラリーといった水性分散体として塩化ビニル系樹脂が得られることが多い。特に、重合終了後のラテックスまたはスラリーから塩化ビニル系樹脂を効率よく回収するために、水に不溶の有機液体を添加、混合することにより、有機液体相に塩化ビニル系樹脂を取り込ませ、水分を除去した後、気流乾燥機等で乾燥を行う、液相造粒法は既に知られている(特許文献1)。主に、ペースト加工用塩化ビニル樹脂での使用が良く知られているものの、懸濁重合系での使用はあまり知られていない。
【0005】
また、一般に懸濁重合で作製される塩化ビニル樹脂は、生産性を改善する技術が様々、検討・開発され、なかでも流動層乾燥装置は、熱容量係数が大きく、単位流動床面積当たりの処理能力が高く、乾燥室の構造がシンプルで可動部分が少ないので、洗浄や保守が容易で使用しやすいということから採用されることが多かった。例えば、乾燥装置の稼働率を向上させるために、乾燥処理終了時の内容物の排出を速やかに行う工夫が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかし、本発明に用いられる塩化ビニル系共重合樹脂を上記の様な気流乾燥機を用いて乾燥すると、特に樹脂のガラス転移温度が低い場合、気流乾燥機内部で加熱ガスに直接接触する部分が融着することで、ブロッキングが起こりやすくなり、場合によっては払出しができなくなることもあった。
【特許文献1】特開昭57−049630号公報
【特許文献2】特開平10−160348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを共重合させて製造された共重合体を、液相造粒法により、簡便に回収することができ、ハンドリングに優れた塩化ビニル系共重合樹脂の造粒体を得る製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、分子量分布や重合性反応基の制御されたマクロモノマーを使用した塩化ビニル系共重合樹脂を、有機液体中に添加攪拌した後に、乾燥をすることで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合させて塩化ビニル系共重合樹脂を製造するに際し、(A)塩化ビニル系共重合樹脂を構成するモノマー成分の総量に対する塩化ビニル系モノマーの比率が、50重量%以上90重量%以下であり、(B)重合終了後の水性分散液に、水に不溶でかつ塩化ビニル系共重合樹脂を溶解しない有機液体を加え、攪拌することにより塩化ビニル系共重合樹脂を有機液体相に移行させることを特徴とする塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項1)、
(2)更に、(C)水相を分離除去することを特徴とする、請求項1に記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項2)、
(3)有機相に捕捉された塩化ビニル系共重合樹脂を、(D)押出式造粒乾燥法、転動式造粒乾燥法、熱風乾燥法から選ばれる少なくとも一つの方法で乾燥することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項3)、
(4)有機液体の量が塩化ビニル系共重合樹脂水性分散体の乾燥樹脂重量100重量部に対し、5重量部以上20重量部以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項4)、
(5)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性官能基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む構造であることを特徴とする。かつ、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの少なくとも1種が、ガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項5)、
(6)塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを、乳化重合、微細懸濁重合、懸濁重合から選ばれる、少なくとも1つの方法で作製された請求項1〜5のいずれかの記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項6)、
(7)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーがリビングラジカル重合により製造されることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法(請求項7)、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合終了後に収率よく塩化ビニル系共重合樹脂を回収することができる。また、本発明によれば、ガラス転移温度が低くとも、ハンドリングに優れた塩化ビニル系共重合樹脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、重合終了後のラテックス又はスラリーに水に不溶でかつ塩化ビニル系共重合樹脂を溶解しない有機液体を加え、攪拌することにより塩化ビニル系共重合樹脂を有機液体相に移行させた後、水相を分離除去し、有機液体相に捕捉された塩化ビニル系共重合樹脂を乾燥することにより目的の造粒樹脂を得る塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法である。ここで、本発明の「水性分散液」とは、共重合終了後のラテックス又はスラリーをさす。
【0012】
本発明の「液相造粒法」とは、塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合させて得られた塩化ビニル系共重合樹脂の水性分散液に水に不溶でかつ塩化ビニル系共重合樹脂を溶解しない有機液体を加え、攪拌することにより塩化ビニル系共重合樹脂を有機液体相に移行させた後、水相を分離除去し、有機液体相に捕捉された塩化ビニル系共重合樹脂を乾燥する、造粒方法と定義される。ここで「有機液体」は、塩化ビニル系共重合樹脂を溶解せず、かつ水に難溶であるものが好ましい。好ましくは、常圧における沸点或いは90重量%蒸発温度が0℃以上300℃以下のものである。このような有機液体の例としては、ブタン、ヘキサン、オクタン等のパラフィン系炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のナフテン系炭化水素、ドデシルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等の芳香族炭化水素、これらの混合物であるミネラルスピリット、ミネラルターペン等の石油系溶剤、クロロホルム、トリクレン等のハロゲン系炭化水素、その他、水に難溶であり、塩化ビニル系共重合樹脂を溶解しないものであれば、エステル類、エーテル類、アルコール類、ケトン類も使用できる。また、混合有機液体として使用してもよい。特に好ましくは、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等の塩化ビニル用可塑剤として使用される有機液体、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等、塩化ビニルを膨潤させる有機液体である。これらの有機液体は、乾燥処理の間に樹脂から完全に取り除かれても良いし、添加した有機液体が樹脂中に保持されても良い。特に、乾燥樹脂を単独で成形加工した時に高い可塑化効果が得られやすくなるため、有機液体が樹脂中に保持された状態で乾燥されることが好ましい。
【0013】
また、塩化ビニル系共重合樹脂の回収率を上げるために、酸化アルミニウム等の凝集剤を使用してもよい。有機液体の使用量は、樹脂水性分散液に含まれる乾燥樹脂重量と同重量以下であることが好ましい。特に、水性分散液中に余分な有機液体が分離せず、樹脂の回収率が高いことから、乾燥樹脂100重量部当たり、5重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
【0014】
有機液体相と塩化ビニル系共重合の水性分散液の接触は、特に制限はないが、有機液体相に塩化ビニル系共重合樹脂の移行を早くするために、有機液体を予め投入した容器へ塩化ビニル系共重合体の水性分散液を連続的に添加、攪拌・混合することが好ましい。
【0015】
有機液体相に塩化ビニル系共重合樹脂を移行させる方法として、特に制限はないが、ホモジナイザー等の攪拌翼を用いた攪拌機や振盪式攪拌機、回転式混合機等を使用することが好ましい。特にホモジナイザーの使用では、高速回転を与えることで短時間に、回収率が高く処理できるため好ましい。
【0016】
塩化ビニル系共重合樹脂を有機液体相に移行させた水性分散体は、加熱等により水相を揮散させることでも、有機液体相の塩化ビニル系共重合樹脂の界面が融着し、シート化することができるが、効率よく水相を分離除去してハンドリング性のよい樹脂を得るために、特に制限はないが、遠心脱水機、プレス式脱水機等の脱水装置により水分を減じ、脱水ケーキとよばれる含水樹脂を得ることが好ましい。脱水ケーキに含まれる水分は、特に限定はされないが、乾燥樹脂に対して1〜40wt%であれば乾燥機内の滞留時間を短縮できるため好ましく、更に3〜30wt%であれば乾燥時にブロッキングしにくいことから好ましい。また、脱水樹脂を作製後、流動乾燥機に投入するまでに、脱水樹脂を機械的に解砕または分散させる工程を入れても良い。脱水樹脂を解砕機で解砕することで、脱水ケーキの表面積を広げ、重量を軽くすることにより乾燥時間が短縮できるため好ましい。
【0017】
本発明で用いられる有機相に捕捉された塩化ビニル系共重合樹脂を、各種成形材料として用いるために乾燥されることが好ましい。この塩化ビニル系共重合樹脂の乾燥方法としては、特に制限はないが、押出式造粒乾燥法、転動式造粒乾燥法、熱風式乾燥法から選ばれる少なくともひとつの方法で行われることが好ましい。押出式造粒乾燥法とは、ギア式、ローラ式、ラム式などあり、例えば、スクリュー押出式造粒機のように、主軸が電動機により減速装置を経て駆動され、スクリューケース内を貫通している構造であり、スクリューケースを加熱することもできる装置である。ホッパー等投入口から脱水ケーキを投入し、スクリューピッチ等により圧縮され、ダイスから排出されたところで水分を減じた造粒体が排出される。また、転動式造粒乾燥法とは、乾燥ケーキをドラム、サラ等の回転容器または振動面に乗せ、乾燥加熱空気を供することで造粒体を製造する。熱風式乾燥法とは、シート型、バンド型等などがあり、例えば、脱水ケーキをコンベアーの上に並べ拡げ、乾燥した加熱空気に晒した後、粉砕機等で大きさを揃える方法がある。これらの乾燥方法のうち、好ましくは熱風乾燥法が好ましく、コンベアー式の乾燥機を用いると生産コストが低く抑えることができるため更に好ましい。
【0018】
本発明で使用される塩化ビニル系モノマーとしては特に限定はされないが、例えば塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、酢酸ビニルモノマーまたはこれらの混合物、または、この他にこれらと共重合可能で、好ましくは重合後の重合体主鎖に反応性官能基を有しないモノマー、例えばエチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いてもよい。2種以上の混合物を使用する場合は、塩化ビニル系モノマー全体に占める塩化ビニルモノマーの含有率を50重量%以上、特に70重量%以上とすることが好ましく、中でも得られる共重合樹脂のブロッキング性が低減しやすいことから90重量%以上とすることがさらに好ましい。
【0019】
本発明で使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとは、重合体の末端に反応性の官能基を有するオリゴマー分子であり、反応性官能基として、アリル基、ビニルシリル基、ビニルエーテル基、ジシクロペンタジエニル基、下記一般式(1)から選ばれる重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を、少なくとも1分子あたり1個、分子末端に有する、ラジカル重合によって製造されたものである。
特に、塩化ビニル系モノマーとの反応性が良好なことから、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基が、下記一般式
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
で表される基であることが好ましい。
【0020】
式中、Rの具体例としては特に限定されないが、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CNの中から選ばれる基が好ましく、更に好ましくは−H、−CH3を用いることができる。
【0021】
また、本発明で使用されるマクロモノマーの主鎖である、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体は、ラジカル重合によって製造される。ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを使用して、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
【0022】
「一般的なラジカル重合法」は、特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使用する必要がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
【0023】
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を使用して重合を行うことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
【0024】
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対して特定の官能基を有する連鎖移動剤を必要とする。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
【0025】
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、本件出願人自身の発明に係る国際公開WO99/65963号公報に記載されるように、重合速度が大きく、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い、例えば、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.1〜1.5程度の重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0026】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、本発明において、上記の如き特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましい重合法である。
【0027】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁等が挙げられる。
【0028】
本発明に使用されるマクロモノマーの製法として、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、通常、制御ラジカル重合法が利用され、さらに制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく用いられ、特に原子移動ラジカル重合法が最も好ましい。
【0029】
制御ラジカル重合法、詳しくはリビングラジカル重合で製造された二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、末端を完全に塩化ビニル系樹脂と共重合させることができるため、得られる共重合体の十分な柔軟性が得られ、透明性、耐熱性等にも優れるため、好ましい。
【0030】
また本発明で使用されるマクロモノマーの主鎖が有する、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体としては特に制約はなく、該重合体を構成する二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーとしては、各種のものを用いることができる。例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸―2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を共重合させても構わない。中でも生成物の物性等から、酢酸ビニル系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくはアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、さらに好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、最も好ましくはアクリル酸ブチルである。ここで、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸或いはアクリル酸を意味するものである。2種以上のモノマーを共重合させる場合は、マクロモノマー全体に占めるこれらの好ましいモノマーが、重量比で40重量%以上含まれることが好ましい。
【0031】
また、本発明の塩化ビニル系モノマーと共重合可能なマクロモノマーは1種のみを用いてもよく、構成するエチレン性不飽和モノマーが異なるマクロモノマーを2種以上併用してもよい。
【0032】
本発明に使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーのガラス転移温度は、単独、或いは2種以上のマクロモノマーを併用する場合、少なくとも1種は、0℃以下であることが好ましい。より好ましくはガラス転移温度が−20℃以下であり、最も好ましくは−50℃以下である。マクロモノマーを2種以上併用する場合は、−50℃以下のマクロモノマーの重量比が全マクロモノマーの50重量%以上含まれることが好ましい。
【0033】
本発明に使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが、室温で流体として得られにくい場合は、使用するマクロモノマーの良溶媒に溶解したものを使用してもよい。
【0034】
本発明に使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの数平均分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)で測定した重量平均分子量が500〜100,000の範囲が好ましく、更に好ましくは、3,000〜40,000であり、最も好ましくは3,000〜20,000である。この範囲のマクロモノマーを用いると、塩化ビニル系モノマーと均一混合が可能で、重合終了後も安定な水性重合体が得られることができる。分子量が500以上であると、重合終了後も未反応のマクロモノマーが残存することが少ないという観点から好ましく、また、100,000以下であると、マクロモノマーの粘度が高くなるものの、塩化ビニル系モノマーにも十分溶解し共重合の進行を妨げることが少ないという観点から好ましい。本発明におけるGPC測定の際には、Waters社製GPCシステム(製品名510)を用い、クロロホルムを移動相として、昭和電工(株)製Shodex K−802.5及びK−804(ポリスチレンゲルカラム)を使用し、室温環境下で測定した。
【0035】
本発明の塩化ビニル系共重合樹脂の重合方法については、特に制約はないが、重合制御の簡便性、乾燥樹脂が粒子状粉体で得られ、良好なハンドリング性が得られやすいことから水性重合が好ましく、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法等の製造方法が挙げられる。特に好ましくは、粒子制御の簡便性、乾燥処理の簡便性より懸濁重合法、微細懸濁重合法で製造される。
【0036】
懸濁重合法の場合、使用する懸濁分散剤としては特に制約はないが、例えば部分鹸化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ゼラチン、デンプン等の有機高分子化合物;硫酸カルシウム、燐酸三カルシウム等の水難溶性無機微粒子が使用可能で、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
微細懸濁重合法または乳化重合法の場合、使用する界面活性剤としては特に制約されないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルアリールスルフォン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤(ここで、「塩類」とは、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。)、ゾルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などの親水性のノニオン性界面活性剤類が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、分散補助剤として高級アルコール、高級脂肪酸またはそのエステル類、芳香族炭化水素、高級脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、水溶性高分子などが挙げられ、これらを1種以上で用いることができる。
【0038】
さらに本発明の塩化ビニル系共重合樹脂を製造する際に用いられる懸濁重合法または微細懸濁重合法においては、油溶性重合開始剤を添加すれば良いが、これらの開始剤のうち10時間半減期温度が30〜65℃のものを1種または2種以上使用するのが好ましい。重合開始剤は重合させるモノマーに可溶であることが好ましく、このような重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、その他の有機過酸化物系重合開始剤が挙げられ、これらは単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。これら油溶性重合開始剤は特に制約のない状態で添加することができるが、例えば有機溶剤に溶解して使用する場合には、その有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオクチルフタレート等のエステル類が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明により製造された塩化ビニル系共重合樹脂の平均重合度又は平均分子量は特に限定されず、通常製造又は使用される塩化ビニル系樹脂と同様に、JIS K 7367−2に従って測定した可溶分樹脂のK値が50〜95の範囲である。
【0040】
その他、抗酸化剤、重合度調節剤、連鎖移動剤、粒子径調節剤、pH調節剤、ゲル化性改良剤、帯電防止剤、安定剤、スケール防止剤等も、一般に塩化ビニル系樹脂の製造に使用されるものを、必要に応じて特に制約されず、任意の量で用いることができる。
【0041】
本発明から得られた塩化ビニル系共重合樹脂の使用用途としては、特に限定はないが、例示すれば、農業用フィルム、合成レザー、壁紙、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、ガスケット、ホース・チューブ、靴底、電線被覆コート、サイディング材等が挙げられる。また、本発明で得られた有機液体相に樹脂を移行させた水性分散体を、そのまま塗布、成形し、水分を乾燥させることで軟質塩化ビニル系フィルム、手袋等の成形体を得ることもできる。
【実施例】
【0042】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここで、特に断りのない限り、実施例中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
(樹脂中のマクロモノマー含量の定量)
全スラリー又はラテックスを100℃で乾固した乾固物1gを特級THF(テトラヒドロフラン)試薬30gに溶解し、溶解液をKBrプレートに塗布、乾燥させた後IR測定機(パーキンエルマー製フーリエ変換赤外分光光度計SPECRUM1000)にて4000cm-1から400cm-1の吸収を測定した。カルボニル基由来のシグナル(1730cm-1付近のピークトップ)と、炭素−塩素由来のシグナル(615cm-1付近のピークトップ)のベースラインに対するピーク高さの比をマクロモノマー含量に対し検量線を引き、試料のIRを測定することで、全樹脂中マクロモノマー含量を算出した。
(乾燥樹脂中の水分量)
乾燥樹脂の一部をJIS K7251のB法に従って6回測定をおこない、その平均値とした。
(乾燥回収率)
重合によって得られた樹脂と乾燥後に得られた樹脂より、乾燥回収率を以下の計算式より計算し、比較した。この乾燥回収率が高いと、樹脂のロスが少なく、効率よい生産ができる。
【0043】
(乾燥回収率)=(乾燥終了後得られた樹脂の総量)×(スラリーまたはラテックスの乾燥固形分濃度)/(スラリーまたはラテックス総量)
スラリーまたはラテックスの乾燥固形分濃度は、得られたスラリーまたはラテックスの均一混合液10gを精秤し、105℃に設定した熱風式オーブン中で約30分間乾燥し、固形分を精秤する。得られた固形分重量をスラリーまたはラテックスの均一混合液重量で除したものと定義する。
<二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造>
二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造は、下記の製造例に示す手順に従って行った。
(製造例)
還流管および攪拌機付きの2Lのセパラブルフラスコに、CuBr(5.54g)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(73.8ml)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸−n−ブチル(132g)、2−ブロモプロピオン酸メチル(7.2ml)、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.69ml)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸−n−ブチル(528g)を90分かけて連続的に滴下し、さらに80分間加熱攪拌した。
【0044】
反応混合物をトルエンで希釈し、活性アルミナカラムを通したのち、揮発分を減圧留去することにより、片末端Br基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)を得た。
【0045】
フラスコに、メタノール(800ml)を仕込み、0℃に冷却した。そこへ、t−ブトキシカリウム(130g)を数回に分けて加えた。この反応溶液を0℃に保持して、アクリル酸(100g)のメタノール溶液を滴下した。滴下終了後、反応液の温度を0℃から室温に戻したのち、反応液の揮発分を減圧留去することにより、アクリル酸カリウム(CH2=CHCO2K)を得た。
【0046】
還流管付き500mLフラスコに、得られた片末端Br基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)(150g)、アクリル酸カリウム(7.45g)、ジメチルアセトアミド(150ml)を仕込み、70℃で3時間加熱攪拌した。反応混合物よりジメチルアセトアミドを留去し、トルエンに溶解させ、活性アルミナカラムを通したのち、トルエンを留去することにより片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを得た。
25℃での片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーの粘度は、約40Pa・sであった。
(実施例1)
ジャケット及び攪拌機を備えた内容量25リットルのステンレス鋼製重合反応機に初期水として、全モノマーに対し40部相当の水を仕込み、鹸化度約80モル%、平均重合度約2000の部分鹸化ポリ酢酸ビニル0.02部を添加し、重合反応機内温を20℃に制御して、1分間あたり900回転の回転速度で攪拌しながら溶解した。攪拌しながら、製造例の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー10部を重合反応機内に添加、脱気したのち、塩化ビニルモノマー90部を仕込み、投入後から10分間攪拌することにより、該塩化ビニルモノマーに該マクロモノマーを重合反応機内で分散混合させた。t−ブチルパーオキシネオデカノエイト0.03部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート0.01部を仕込んだ後、鹸化度約80モル%、平均重合度約2000の部分鹸化ポリ酢酸ビニル0.08部、平均分子量約450万のポリエチレンオキサイド0.005部を60℃の温水110部とともに重合反応機内に仕込み、重合温度57℃で約6時間重合した。重合反応機内の未反応の塩化ビニルモノマーを回収したのち重合反応機を冷却し、スラリーを払い出した。スラリー中の樹脂重量は8kgであった。このスラリーをメチルイソブチルケトン10部中に攪拌しながら添加し、スラリー中の樹脂をメチルイソブチルケトンにより膨潤させた。その後、有機液体で膨潤された樹脂が沈降した液を遠心脱水器にて30min間脱水を行い、脱水樹脂を得た。脱水樹脂の水分量は15%であった。
【0047】
この脱水樹脂を約1mm厚にして庫内温度120℃のコンベアー式赤外線乾燥機の中を通すことにより乾燥樹脂を得た(滞留時間20分)。得られた乾燥樹脂は7.5kgであった。
(実施例2)
実施例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを40部、塩化ビニルモノマーを60部とした以外は実施例1と同様に重合を実施し、スラリーを得た。得られたスラリー中の樹脂重量は8kgであった。このスラリーをジ−2−エチルヘキシルフタレート20部中に攪拌しながら添加し、スラリー中の樹脂をジ−2−エチルヘキシルフタレート中に凝集させた。その後、有機液体で凝集された樹脂が沈降した液をベルトプレス式脱水機に連続的に投入し、脱水樹脂を得た。脱水樹脂の水分量は10%であった。
【0048】
この脱水樹脂をスクリュー押出式造粒機に投入し、温度80℃とすることで、先端ダイスより乾燥樹脂を得た。得られた乾燥樹脂は7kgであった。
(実施例3)
十分に脱気、窒素置換した30L耐圧容器に、塩化ビニルモノマー90部を仕込み、製造例の片末端アクリロイル基含有ポリアクリル酸ブチルマクロモノマー10部を添加し、40℃に加温して30min間攪拌後、α,α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 0.016部、クミルパーオキシネオデカノエート 0.008部、ステアリルアルコール0.77部とドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.80部を予め溶解、分散した水溶液を容器内に添加し、純水17kgを仕込み、30min間ホモジナイズして、モノマー分散液を得た。容器内を60℃に保温して重合を開始し、約5時間後に、重合機内の塩化ビニルモノマーを回収し、容器内を冷却した後、ラテックスを払出した。得られたラテックス中の樹脂重量は9kgであった。このラテックスをシクロヘキサノン5部中に攪拌しながら添加し、ラテックス中の樹脂をシクロヘキサノン相に凝集させた後、水分を遠心脱水機にて30min間脱水を行い、脱水樹脂を得た、脱水樹脂の水分量は20%であった。
【0049】
この脱水樹脂を熱風式オーブンにて庫内の循環乾燥空気温度を80℃に設定し、乾燥樹脂を得た。得られた乾燥樹脂は7kgであった。
(実施例4)
実施例3の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを40部、塩化ビニルモノマーを60部とした以外は実施例3と同様に重合を実施し、ラテックスを得た。得られたラテックス中の樹脂重量は9kgであった。このラテックスをジ−2−エチルヘキシルフタレート10部中に攪拌しながら添加し、樹脂をジ−2−エチルヘキシルフタレート中に凝集させた。その後、有機液体で凝集された樹脂が沈降した液をベルトプレス式脱水機に連続的に投入し、脱水樹脂を得た。脱水樹脂の水分量は10%であった。
【0050】
この脱水樹脂を約1mm厚にして庫内温度120℃のコンベアー式赤外線乾燥機の中を通すことにより乾燥樹脂を得た。得られた乾燥樹脂は7.4kgであった。
(比較例1)
実施例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを0部、塩化ビニルモノマーを100部とした以外は実施例1と同様に重合を実施し、スラリーを得た。得られたスラリー中の樹脂重量は8kgであった。このスラリーをジ−2−エチルヘキシルフタレート20部中に攪拌しながら添加し、樹脂をジ−2−エチルヘキシルフタレート中に凝集させようとしたが、十分にジ−2−エチルヘキシルフタレート相に樹脂が浸透しなかった。この有機液体が残った、一部樹脂が沈降した液をベルトプレス式脱水機に連続的に投入し、脱水樹脂を得たが、ジ−2−エチルヘキシルフタレートによりベタベタした状態となった。脱水樹脂の水分量は25%であった。この脱水樹脂をスクリュー押出式造粒機に投入し、温度80℃とすることで、先端ダイスより樹脂を押し出した。得られた乾燥樹脂は7kgであったが、ベトツキ感があり、乾燥樹脂として評価できなかった。
(比較例2)
実施例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを50部、塩化ビニルモノマーを50部とした以外は実施例1と同様に重合を実施し、スラリーを得た。得られたスラリー中の樹脂重量は8kgであった。このスラリーをジ−2−エチルヘキシルフタレート20部中に攪拌しながら添加し、スラリー中の樹脂をジ−2−エチルヘキシルフタレート中に凝集させた。その後、有機液体で凝集された樹脂が沈降した液をベルトプレス式脱水機に連続的に投入し、脱水樹脂を得た。脱水樹脂の水分量は8%であった。
【0051】
この脱水樹脂を約1mm厚にして庫内温度120℃のコンベアー式赤外線乾燥機の中を通したところ、水分をふくんだまま樹脂がゲル化・融着するため、不均一に発泡した板状のシートが得られ、パウダー状の乾燥樹脂が得られなかった。
(比較例3)
流動乾燥機内に実施例4の脱水樹脂を投入した後、風量20Nm3/minで90℃の乾燥空気を水蒸気で昇温しながら流し、フラッシュ乾燥機内法にて乾燥を実施した。加熱ガス温度が30℃に到達した状態で120min間保ち、乾燥樹脂はサイクロンにて回収し払い出し口より樹脂を払出した。得られた乾燥樹脂は4kgであり、乾燥機内サイクロンにて回収されなかった多量の微粉および配管内に付着している樹脂が確認された。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合させて塩化ビニル系共重合樹脂を製造するに際し、(A)塩化ビニル系共重合樹脂を構成するモノマー成分の総量に対する塩化ビニル系モノマーの比率が、50重量%以上90重量%以下であり、(B)重合終了後の水性分散液に、水に不溶でかつ塩化ビニル系共重合樹脂を溶解しない有機液体を加え、攪拌することにより塩化ビニル系共重合樹脂を有機液体相に移行させることを特徴とする塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。
【請求項2】
更に、(C)水相を分離除去することを特徴とする、請求項1に記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。
【請求項3】
有機相に捕捉された塩化ビニル系共重合樹脂を、(D)押出式造粒乾燥法、転動式造粒乾燥法、熱風乾燥法から選ばれる少なくとも一つの方法で乾燥することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。
【請求項4】
有機液体の量が塩化ビニル系共重合樹脂水性分散体の乾燥樹脂重量100重量部に対し、5重量部以上20重量部以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。
【請求項5】
二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性官能基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む構造であることを特徴とする。かつ、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの少なくとも1種が、ガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。
【請求項6】
塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを、乳化重合、微細懸濁重合、懸濁重合から選ばれる、少なくとも1つの方法で作製された請求項1〜5のいずれかの記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。
【請求項7】
二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーがリビングラジカル重合により製造されることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2007−262351(P2007−262351A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92861(P2006−92861)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】