説明

塩化ビニル系積層フィルムおよびその製造方法

【課題】
共押出成形時の成形加工性に優れ、良好な機械特性を発現する塩化ビニル系積層フィルムおよび製造方法を提供する。
【解決手段】
塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層と、その両側に少なくとも各1層の共重合ポリエチレン系樹脂組成物からなる(B)層を最外層に有する塩化ビニル系積層フィルムであって、
(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に可塑剤5〜70質量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物であり、(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物の高化式フローテスターにより測定した剪断速度100(1/sec)での溶融粘度が、同様にして測定した(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度よりも小さいことを特徴とする塩化ビニル系積層フィルム。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系積層フィルムおよびその製造方法に係り、特に溶融粘度が低い共重合ポリエチレン系樹脂組成物の有する良好な成形加工性と、溶融粘度が高い塩化ビニル系樹脂組成物の有する良好な機械特性とを互いに損なうことなく、優れた成形加工性と機械強度の両特性を有する軟質のフィルムが得られる塩化ビニル系積層フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂組成物を用いてなる軟質の押出成形品は、シート・フィルム等の分野で広く用いられている。このような分野では、生産性の向上(金型等の解体清掃のサイクル延長)のために溶融粘度の低い樹脂が望まれているが、溶融粘度は一般的に分子量が小さい方が低いのに対し、成形品の強度は、逆に分子量が大きい方が強いため、両特性の兼ね合いにより使用する塩化ビニル系樹脂の分子量を決めている。
【0003】
そこで、分子量の大きさを変えずに溶融粘度を下げる手段として、樹脂中の低分子量成分を増大させる試みがなされている。例えば、塩化ビニルの重合途中で重合温度を変化させる方法が検討されている。しかし、この方法では、重合を安定して進める必要性から、急速に温度を変えることができないので、十分な量の低分子量成分を持つ塩化ビニル系樹脂を作製することが出来ない。
【0004】
そこで、押出加工性を改良する方法として、例えば特許文献1に示された方法が提案されている。これは、通常の方法で重合した塩化ビニル系樹脂を種樹脂として用い、懸濁重合により再重合する二段階重合法により塩化ビニル系樹脂を製造する方法であり、ゲル化時間が短く、押出成形の生産性の高い塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供している。
しかしながら、この方法では、再重合を行う際に塩化ビニル系樹脂のモルフォロジー変化が生じ、ポロシティー(空隙率)が小さくなり、例えば可塑剤を用いるような軟質(透明)配合では可塑剤吸収にムラが生じ、得られた配合物を成形する際にブツやフィッシュアイが発生し、外観不良や物性低下の原因となる恐れがある。
【0005】
また、塩化ビニル系樹脂成形品の生産性を向上するため、さまざまな安定剤や加工助剤等の添加剤が使用されているが、加工性の改良効果が不十分である、添加剤と塩化ビニル系樹脂のなじみが悪いために加工時に系外にはじき出される生産不良現象(メヤニ・プレートアウト)が起こる、など不具合があり生産性の改良効果が不十分であるのが実情である。
【0006】
ところで、塩化ビニル系樹脂組成物を、塩化ビニル系樹脂組成物あるいはその他の熱可塑性樹脂組成物と積層してなる方法は数多く提案されているが、積層体の製造方法には着目せず、(すなわち共押出法/熱ラミネーション法/コーティング法など)主に成形品の機械的特性等を改良する目的によるものが主である(例えば、特許文献2〜5参照)。一方、共押出成形性を改良する目的とする技術としては、例えば特許文献6に開示されている技術が知られているが、これは発泡層とスキン層との流動性の差に着目したものであり、本発明のように溶融粘度に着目したものではない。
【0007】
また、特許文献7などには押出成形時に潤滑液を注入することにより押出機の負荷を軽減し、さらにメヤニを除去する製造方法が提案されているが、表面への潤滑剤の残存により押出出口後の加工時や、成形品の取り扱い時に悪影響を及ぼす等の問題が残っていた。
【0008】
【特許文献1】特開平11−349761号公報
【特許文献2】特開2001−150611公報
【特許文献3】特開平10−076614号公報
【特許文献4】特開平07−186340号公報
【特許文献5】特許3815849号公報
【特許文献6】特開平09−262920号公報
【特許文献7】特開平07−323459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況下でなされたものであり、共押出成形時の成形加工性に優れ、良好な機械特性を発現する塩化ビニル系積層フィルムおよび製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、このような現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定組成物の層構成からなる積層フィルムを用いることにより上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層と、その両側に少なくとも各1層の共重合ポリエチレン系樹脂組成物からなる(B)層を最外層に有する塩化ビニル系積層フィルムであって、
(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に可塑剤5〜70質量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物であり、(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物の高化式フローテスターにより測定した剪断速度100(1/sec)での溶融粘度が、同様にして測定した(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度よりも小さいことを特徴とする塩化ビニル系積層フィルムにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可塑剤を含む芯層を形成する塩化ビニル系樹脂組成物と、この樹脂組成物よりも溶融粘度が低い表層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物とを共押出成形することにより、溶融粘度が低い共重合ポリエチレン系樹脂組成物が有する良好な成形加工性と、溶融粘度が高い塩化ビニル系樹脂組成物の有する良好な機械特性とを互いに損なうことなく、優れた成形加工性と機械強度の両特性を有する塩化ビニル系積層フィルムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の塩化ビニル系積層フィルム(以下、「積層フィルム」と略称することがある。)およびその製造方法について詳細に説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値および下限値は、本発明が特定する数値の範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含する。
本発明の積層フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層と、その両側に少なくとも各1層の塩化ビニル系樹脂組成物からなる(B)層を最外層に有する塩化ビニル系積層フィルムであって、
(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部と、可塑剤5〜70質量部を含む塩化ビニル系樹脂組成物であり、高化式フローテスターにより測定した剪断速度100(1/sec)での(B)層の共重合ポリエチレン系樹脂組成物の溶融粘度が、同様にして測定した(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
<(A)層>
[塩化ビニル系樹脂組成物]
本発明における塩化ビニル系樹脂には、塩化ビニル単独重合体のほか、機械物性の改良や成形性の改良、また、(B)層との流動性や接着性の改良のために塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、塩化ビニル系共重合体とする)化したものや、この塩化ビニル系共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体化したものなども使用あるい混合して使用することができる。
これらの共重合体は、共重合体中の塩化ビニル単位以外の構成単位含有量が多くなると機械的特性が低下するので、塩化ビニル単位を60質量%以上含有するものが好ましく、より好ましくは80質量%以上含有するものである。前記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類;などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
【0014】
また、前記塩化ビニル系共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよく、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
【0015】
[平均重合度]
塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる塩化ビニル系樹脂の好ましい平均重合度(分子量)の範囲は、目的とする成形品の必要特性によってさまざまであり、また後述する添加剤の種類および量により異なるが、平均重合度が800以上であればフィルムのロール巻き取り/巻き出しなどの工程時や、包装用途などに用いられる際の包装工程時などに引張強度や引張伸度などの機械強度に欠けすぎフィルムが破断するなどの不具合が生じることがなく好適であり、さらに850以上であればより好ましく、900以上であればさらに好ましい。また、平均重合度が1800以下であれば加工性が著しく低下するなどの不具合を生じることがなく好適であり、1650以下であればさらに好ましく、1500以下であればより好ましい。また、異なる平均重合度の塩化ビニル系樹脂を混合することも可能であり、この場合、それぞれの塩化ビニル系樹脂の混合比率に応じた平均重合度の平均値を、その混合物の平均重合度として評価する。
【0016】
[可塑剤]
(A)層を構成する塩化ビニル樹脂組成物には、柔軟性を付与する目的と、成形加工性を改良する目的から、可塑剤を配合することを要する。
可塑剤としては、種々のアルキル鎖長や分岐構造を持ったアルキル鎖を有するフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸系ポリエステル等のエステル類化合物が例示できる。可塑剤の耐溶剤溶出性や可塑化効率、成形性改良効果は分子量や炭素数によってそれぞれ異なるため、最適な可塑剤を選択する必要がある。
炭素数10以下のアルキル基を有する脂肪族アルコール2種以上とアジピン酸との反応物からなる可塑剤が好ましく、このようなものとしては、例えばC8.10アジペート(炭素数8、10のアルキル基を有するアルコールの混合エステル)、C7.9アジペート(炭素数7、9の同上のもの)、C6.8.10アジペート(炭素数6、8、10の同上のもの)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、C6.8.10アジペートおよびC7.9アジペートが、それぞれ押出成形性および柔軟性を付与しやすく好適である。
【0017】
アジピン酸系ポリエステル系可塑剤も好ましく用いることができる。このアジピン酸系ポリエステル系可塑剤は、アジピン酸と二価アルコールとの反応物であり、この二価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオールなどがあり、アジピン酸と1種類または2種類以上の二価アルコールとの反応生成物であり、具体的にはポリ(プロピレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(1、6−ヘキサンジオール、ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、アジピン酸)エステルなどが挙げられる。
これらポリエステル系可塑剤の平均分子量が1000以上であることが好ましい。より好ましくは1250以上であり、さらに好ましくは1500以上である。可塑剤が高分子量化すれば樹脂組成物中でポリ塩化ビニル系樹脂との絡み合いが増えることになり、溶出やブリードなどの現象を起こしづらくなり、好適であるが、柔軟性の付与効果や成形加工性の向上効果が小さくなる。
このため、平均分子量は4000以下であることが好ましく、より好ましくは3250以下、さらに好ましくは2500以下である。可塑剤の平均分子量が前記の範囲であれば、可塑剤の溶出量の削減効果が得られない、押出成形性が大幅に低下する、加工性に著しく劣りヤケや色味不良などが発生する、積層フィルムの耐寒性が低下するなどの不具合を生じづらく、好適である。また、異なる平均分子量の可塑剤を混合することも可能であり、この場合、それぞれの可塑剤の混合比率に応じた平均分子量の平均値を、その混合物の平均分子量として評価する。
【0018】
(A)層において、可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して5〜70質量部であることを要する。この可塑剤の配合量は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは30質量部以上である。また、この可塑剤の配合量は、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下である。可塑剤の配合量が5質量部以上であると、柔軟性の付与や成形加工性の改良が達成され、70質量部以下であると、配合効果と経済性のバランスが良好となる。
【0019】
[添加剤]
上述の可塑剤の他に、製造時の熱安定性を改良する目的や積層フィルムの滑り性や防曇性を改良する目的で、種々の添加物(熱安定剤/滑剤/防曇剤)を添加することが好ましい。下記に好適に用いられる添加剤の例を示す。
エポキシ化植物油は、樹脂組成物の押出成形性、特に押出成形時における熱安定性を向上させる効果を有している。このエポキシ化植物油としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、上記した効果の面でエポキシ化大豆油が好適に使用される。
エポキシ化植物油の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、通常5質量部以上であり、好ましくは7質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、この配合量は、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、通常25質量部以下、好ましくは22質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。エポキシ化植物油の配合量が前記の範囲であれば、添加効果が発揮されずフィルムの着色が抑制されない、配合量が多すぎて溶出量が多くなりすぎるなどの不具合を生じづらく、好適である。
【0020】
滑剤としては、炭素数10〜20の高級脂肪酸とグリセリンとのエステルなどが挙げられる。この炭素数10〜20の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和直鎖脂肪酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸などが挙げられ、滑り性付与効果と防曇性とのバランスを考慮すると、不飽和脂肪酸であるオレイン酸とグリセリンのエステルが好ましい。
滑剤のエステルの配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。また、この配合量は、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。滑剤の配合量が前記の範囲であれば、フィルム表面にべたつきが発生する、滑り性が過剰になりハンドリングしづらくなる、長期保管時にせり出し現象が起こるなどの不具合が生じづらく、好適である。
【0021】
(A)層を構成する樹脂組成物においては、必要に応じて防曇剤、安定剤などを適宜選択して配合することができる。防曇剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。前記グリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜18の飽和または不飽和脂肪酸のグリセリンモノエステルが好ましい。具体的にはグリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレートおよびグリセリンモノリノレートなどが挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜18の飽和または不飽和脂肪酸のポリグリセリンエステルが好ましい。具体的にはポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンミリステート、ポリグリセリンパルミテート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンオレートおよびポリグリセリンリノレートなどが挙げられる。
【0022】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜18の飽和または不飽和脂肪酸のソルビタンエステルが好ましい。具体的にはソルビタンラウレート、ソルビタンミリステート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレートおよびソルビタンリノレートなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素数が12〜18の飽和アルコールのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、より好ましくは、エチレンオキサイドの付加モル数が3〜7であるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテルおよびポリオキシエチレンステアリルエーテルなどが挙げられる。これらは1種または2種以上の組み合わせで使用すればよい。
上記の中では、特にグリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノリノレート、ポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンリノレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレート、ソルビタンリノレートおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。
これらの防曇剤の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂あるいは後述するポリエチレン系共重合体100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、この配合量は、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。防曇剤の配合量が前記の範囲であれば、フィルム表面にべたつきが発生する、長期保管時にせり出し現象が起こるなどの不具合が生じづらく、好適である。
【0023】
安定剤としては、2−エチルヘキシル酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸、クエン酸、グルコン酸、ソルビン酸、安息香酸、イソデカン酸、ネオデカン酸などのカルシウム塩類、および2−エチルヘキシル酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸、イソデカン酸、ネオデカン酸などの亜鉛塩類からなるCa−Zn系塩類などが挙げられる。これらは1種または2種以上の組み合わせで使用される。
なお、前記の安定剤に対して、酸化防止剤を兼ねたものとして、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジプロピレングリコール、合成イソパラフィン石油炭化水素、トリデシルアルコール、デヒドロ酢酸などを併用してもよい。これらの配合量は、それぞれ前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。また、これらの配合量は、それぞれ前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。これらの配合量が前記の範囲であれば、安定化効果が不十分でヤケを生じる、金属塩由来の着色を生じるなどの不具合を生じづらく、好適である。
【0024】
上述した添加剤以外にも、耐衝撃改良剤、加工助剤、静電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐侯劣化防止剤、無機粒子、充填剤、顔料、着色剤、公知の添加剤を、積層フィルムの物性や加工性、および食品衛生性等を損なわない範囲で添加することができる。
【0025】
[溶融粘度]
(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度は、後述する測定方法による剪断速度100(1/sec)における溶融粘度が100(Pa・s)以上であることが好ましく、500(Pa・s)以上であることがより好ましい。また、この溶融粘度は、5000(Pa・s)以下であることが好ましく、2500(Pa・s)以下であることがより好ましい。溶融粘度が前記の範囲であれば押出製造時に加工しづらくなる、機械的強度に劣るなどの不具合を生じることがなく好適である。
溶融粘度を前記範囲に調整するための方法としては、可塑剤、滑剤、加工助剤などの種々の添加剤により調整する方法、重合度を調整する方法などがあり、用途によって適宜選択すればよいが、添加剤のブルームが問題になるような用途(食品包装フィルム等)では、添加剤を多量に加えることは望ましくないため、重合度により調整することが望ましい。
【0026】
<(B)層>
[共重合ポリエチレン系樹脂]
エチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピレン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、 アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体或いは多元共重合体、または、前記エチレン系重合体、 前記共重合体、前記多元共重合体のうちの2種類以上の組合わせからなる混合樹脂を挙げることができる。これらエチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
中でも、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂が特に好ましい。
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0027】
上記共重合ポリエチレン系樹脂の中でも、表面粘着性のバランス、防曇性などの表面特性および製膜時の成形加工安定性を重視する場合には、酢酸ビニル含量が5〜30質量%で、メルトフローレート(以下、「MFR」と略することがある。MFRの測定条件は、JIS K 7210に基づき190℃、荷重21.18Nであり、他のMFRも同様である。)が0.1〜40g/10分であるポリエチレン酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
このポリエチレン酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニル含量が5質量%以上であれば、結晶性が低いためフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、表面粘着性も発現し易いという点で好ましい。その一方、30質量%以下であれば、耐熱性やフィルム強度等を確保でき、防曇剤等を添加してもブリードアウトを抑制でき、しかも表面粘着性が強すぎないためにフィルムの巻き出し性や外観を良好とすることができるという点で好ましい。このような観点から、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は7質量%以上であることがより好ましく、特に10質量%以上であるのがさらに好ましい。また、 25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
また、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体のMFRが0.1g/10分以上であれば溶融粘度が高くなりすぎて押出加工しづらいという不具合が生じづらいため好適であり、40g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。このような観点から、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体のMFRは0.5〜20g/10分であるのがより好ましく、中でも1〜15g/10分がさらに好ましい。
【0028】
[添加剤]
(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物にも、(A)層と同様の添加剤を加えることができる。また、最外層であるため、表面機能を向上させるような添加剤がより効果的に機能する。ここで表面機能とは、防曇性、防滴性、耐侯性、意匠性、印刷適性、滑り性等の成型品として用いられる場合の機能の他に、押出加工時における流動性、熱安定性、金属剥離性等の機能も含む。表面機能に関連する添加剤の例は、滑剤、加工助剤、無機粒子、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤などが例示される。
これら添加剤の含有量についても(A)層の場合と同様にそれぞれ好適な配合比率で配合することが好ましい。
【0029】
その他に、(A)層の樹脂との共押出性の改良や接着性、相溶性の改良のため、両層との親和性が良好である樹脂を混合することも好ましい。
例述すると、エチレンと酢酸ビニル、一酸化炭素、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上との共重合体、スチレンと共役ジエンとの共重合体及び/又はそれらの水素添加誘導体であるSBS、SIS、SEBS、SEPSなどに代表される軟質スチレン系樹脂、軟質スチレン系樹脂を酸変性した無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどに代表される酸変性スチレン系樹脂、不飽和カルボン酸又はその無水物などで変性された変性オレフィン系樹脂などが挙げられる。またこれらは単独であっても、2種以上を含有していてもよい。
上記のなかで、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(エチレン単位40〜80質量%、酢酸ビニル単位10〜60質量%及び一酸化炭素単位3〜30質量%からなる三元共重合体)が特に好適に用いられる。
【0030】
[溶融粘度]
(B)層のポリエチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物の溶融粘度は、(A)層の溶融粘度よりも小さいこと、すなわち(A)層の溶融粘度の100%未満であることを要する。(B)層の溶融粘度は(A)層の溶融粘度の80%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。(B)層の溶融粘度が(A)層の溶融粘度の100%未満であれば、最外層の樹脂組成物が(A)層の樹脂組成物に比べ流動性に劣り共押出法における成形加工性が悪化してヤケ等の不良現象を引き起こす等が生じづらく、安定した製造を行うことができ好適である。また、(B)層の溶融粘度は、(A)層の溶融粘度の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。(B)層の溶融粘度が(A)層の溶融粘度の5%以上であれば、各層間の溶融粘度差が大きすぎて安定に加工できない等の不具合を生じづらく好適である。
溶融粘度を前記範囲に調整するための方法としては、可塑剤、滑剤、加工助剤などの種々の添加剤により調整する方法、平均分子量、分子量分布を調整する方法などがあり、用途によって適宜選択すればよいが、添加剤のブルームが問題になるような用途(食品包装フィルム等)では、添加剤を多量に加えることは望ましくないため、分子量により調整することが望ましい。
【0031】
<積層体>
本発明の塩化ビニル系積層フィルムは、前記(A)層と、その両側に少なくとも各1層の前記(B)層を最外層に有することを基本構成とする共重合ポリエチレン系樹脂積層体である。そして、(B)層の共重合ポリエチレン系樹脂組成物の高化式フローテスターにより測定した剪断速度100(1/sec)での溶融粘度が、同様にして測定した(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度よりも小さいことを要す。
【0032】
また、全層に対する(B)層の厚み比は5%以上が好ましく、8%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。厚み比が5%以上であれば加工性の改良効果が弱く加工不良を発生するなどの不具合が生じづらいため好適であり、また、この厚み比は80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。厚み比が80%以上であれば、機械強度に劣り破断や破壊等の不具合が生じづらいため、好適である。
【0033】
[層構成]
中間層と両側をはさむ最外層があればその間に何層あっても良い。例示すると、(B)/(A)/(B)でも、(B)/(機能層)/(A)/(B)でも、(B)/(機能層)/(A)/(機能層)/(B)でもかまわない。機能層とは特定の性能を付与する層であり、遮光層、帯電防止層が示される。
また、前記のように両最外層として(B)層を形成するように共押出したのち、さらに後工程として公知の積層方法により遮光層、帯電防止層などの機能層等を追加しても良い。例示すると、最終的な層構成が(機能層)/(B)/(A)/(B)でも、(機能層)/(B)/(A)/(B)/(機能層)でもかまわない。
上述した層構成を選択することにより流動性に優れた(B)層が押出加工時に最外層へ存在するため、成形加工性を向上することが出来る。また、この(B)層は可塑剤を実質的に含まないため、食品用途などへ使用する場合は(A)層中に含まれる可塑剤が溶出するのを抑制し、また全層中に含まれる可塑剤の使用量を削減することが出来る。
この積層フィルムの好適な厚みは、用途により異なるがフィルムやシートとして用いられる際の上限値は2〜5mm程度であり、下限値は特に規定されないが強度とハンドリングの許す範囲で薄い方が樹脂使用量を削減できるため好ましく、通常5〜10μm程度である。この積層フィルムを食品包装用ストレッチフィルムとして用いる場合には、可塑剤の溶出量と強度のバランスから、5〜15μm程度が好ましい。
【0034】
<製造方法>
本発明の積層フィルムの製造方法は、前記(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物、および前記(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物を、共押出法により積層形成することを特徴とする。
すなわち、所定の溶融粘度差を持った3層以上の樹脂組成物を共押出しすることによって、より溶融粘度が低く流動性の良い樹脂組成物を最外層に配置することで、中間層単体のみで押出しする際よりも樹脂圧力の上昇とそれに伴う樹脂温度の上昇を抑制することが可能であり、単層では短時間でヤケ、ブツ、メヤニ、ブリードアウト等を生じて加工困難であるような樹脂組成物を良好に加工することが可能になる。
具体的な製造方法として、各層の組成物の混合は、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機により混合する方法、または押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダなどの混練機により混練する方法、あるいは混合機と混練機を組み合わせる方法や、あらかじめ混合せずに直接原料を押出機に投入して混練と押出を同時におこなう方法が挙げられる。押出方法は、スクリュ押出機、プランジャ押出機等の公知な押出方法を挙げられる。
共押出法での積層方法は、フィードブロック方式、マルチマニフォールド方式、スタックプレート方式等の公知な方法を取ることができる。この中で、特に層間の厚み精度が要求される用途においてはマルチマニフォールド方式が好ましく、成形加工性改良が求められる用途においてはダイ前で各層を合流させるフィードブロック方式が流動性の改良効果が大きいため好ましい。
溶融押出された樹脂組成物は、用途に応じてフラットダイやサーキュラーダイ、異型ダイ等の押出ダイにより賦形され、冷却ロール、水、空気等で冷却固化される。さらに、用途に応じて後工程として引取、サイジング、プレス、延伸等の工程をおこなうことも可能である。
また、共押出方により得られた積層体に、ドライラミネーション、溶剤ラミネーション、プレス、押出ラミネーション等の公知の手段により、さらに他の層を追加することも出来る。
【0035】
<特性>
[成形加工性]
本発明の積層フィルムの成形加工性は、連続押出時のシート外観によって評価される。塩化ビニル系樹脂組成物を押出する際には、樹脂の劣化、分解による着色、ヤケコゲや添加剤のブリードアウトなどが発生するため、同一の押出量にて一定時間押出を続け、前述したような不具合が発生するかどうかを目視などにより確認することができる。
【0036】
[機械物性]
本発明の積層フィルムの機械強度は、JIS K 7127に基づいて測定された引張破断伸度により評価され、23℃環境下の引張試験において、特に軟質フィルム用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向に直行する方向(TD)での引張破断伸度が、通常250%以上、好ましくは350%以上、さらに好ましくは450%以上である。23℃環境下での引張破断伸度が250%以上あればシートの巻取り時や巻き出し時、包装用途に用いられる場合は包装時などの工程の際にフィルムが破断するなどの不具合が生じにくい。また、好ましい引張破断伸度の上限値は特に設定されないが、十分な速度でフィルムを製造する、あるいは寒冷条件でフィルムを使用するためには600%程度あることが望ましい。
本発明の積層フィルムにおいて、23℃環境下の引張試験においての引張破断伸度を前記範囲とするためには、樹脂組成や製造方法を本発明で記載するように構成することが好ましく、より具体的な調整方法としては、例えば積層体を構成する塩化ビニル系樹脂の重合度を高める、耐衝撃性の良好な塩化ビニル系共重合体を用いる、可塑剤含有量を上げる、耐衝撃改良剤を添加する、積層フィルムをTDあるいはMDに対し延伸することなどが挙げられる。
【0037】
[密着性]
本発明の積層フィルムを包装用途に用いる際には、容器に対する密着性が重要である。容器に被覆したときのフィルムの状態を観察することによって判定することが出来る。
密着性を増加するためには可塑化効果の大きい低分子量の可塑剤を添加する、可塑剤の添加量を増やす、表層樹脂の共重合体比率を増加させるなどが挙げられる。
【0038】
[用途]
本発明の積層フィルムは、溶融粘度が低い塩化ビニル系樹脂組成物が有する良好な成形加工性と、溶融粘度が高い塩化ビニル系樹脂組成物の有する良好な機械特性とを互いに損なうことなく、優れた成形加工性と機械強度の両特性を有しており、各種用途全般に好適であるが、特に色ヤケやブツ等の加工不良現象が問題となるような透明フィルム、シート類(食品包装用フィルム、容器包装用フィルム等)等の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で使用した原料および添加剤は、下記のとおりである。
[塩化ビニル系樹脂]
・PVC1:平均重合度800(ヴィテック社製「PVC800」)
・PVC2:平均重合度1030(ヴィテック社製「PVC1100」)
・PVC3:平均重合度1400(ヴィテック社製「PVC1400」)
[共重合ポリエチレン系樹脂]
・PE1:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体;MFR2.5 酢酸ビニル含有率=15質量%(日本ポリプロ社製「LV440」)
・PE2:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体;MFR2.5 酢酸ビニル含有率=20質量%(日本ポリプロ社製「LV540」)
・PE3:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体;MFR15 酢酸ビニル含有率=20質量%(日本ポリプロ社製「LV570」)
・PE4:エチレン−一酸化炭素−酢酸ビニル共重合体(三井・デユポンポリケミカル社製「エルバロイ741」)
[可塑剤]
・可塑剤1:混合アジピン酸系エステル可塑剤;平均分子量350(ジェイプラス社製「C−388」)
・可塑剤2:ジイソノニルアジピン酸可塑剤;平均分子量400(田岡化学社製「DINA」)
・可塑剤3:ポリエステル系可塑剤;平均分子量2300(大日本インキ社製「W−360EL」)
[添加剤]
・エポキシ化大豆油(旭電化工業社製「O−130P」)
・Ca/Zn系安定剤(旭電化工業社製「アデカスタブ593」)
・防曇剤(丸菱油化製「PA6950」)
【0040】
[製造方法]
[ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の調製]
表1に記した配合比率で計量されたポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、エポキシ化大豆油15質量部、Ca/Zn系安定剤0.2質量部を含む原料をヘンシェルミキサーに投入し、130℃にて5分間攪拌を行うことで、均一な粉体の樹脂組成物を調製した。
[共重合ポリエチレン系樹脂組成物の調整]
表1に記された配合比率で計量された共重合ポリエチレン系樹脂を三菱重工製40mmφ 小型同方向二軸押出機を用いて設定温度180℃で溶融混練しながら、防曇剤3.0部をベント口より注入し、180℃で溶融混練しストランド形状に押出し、カットしてペレットを調製した。
[積層フィルムの作製(実施例1乃至4、比較例3)]
得られた各層用の樹脂組成物をそれぞれφ40mm単軸押出機(L/D=20)、φ32mm単軸押出機(L/D=22)に投入し、140〜220℃の設定温度にて溶融混錬したのち、(B)/(A)/(B)層となるようにフィードブロックにて合流させ、幅300mm、リップギャップ0.7mmの口金から共押出したのち、30〜40℃に温調されたキャストロールにて巻き取り、厚さ10μm、幅200mmの各積層フィルムを作製した。
[単層フィルムの作製(比較例1乃至2)]
得られた樹脂組成物をφ40mm単軸押出機(L/D=20)に投入し、フィードブロックを用いずに幅300mm、リップギャップ0.7mmの口金から押出した以外は前記と同様に、厚さ10μm、幅200mmの単層シートを作製した。
各例で使用した樹脂組成物の溶融粘度および成形加工性、ならびに各例で得られた積層シートの外観と機械強度を以下に示す方法に従って求めた。結果を表2に示す。
【0041】
[溶融粘度]
表1に示す樹脂組成物を180℃の金属ロールにて5分間圧縮混錬して得られた約500μmのフィルムを約5mm角に裁断し、高化式フローテスター(島津製作所社製キャピラリレオメータCFT−500C:キャピラリ径1.0mm/キャピラリ長10mm)にて、5分間予熱後に所定の加重を印加し、温度200℃における剪断粘度を剪断速度約5〜4000(1/sec)の範囲で4〜7点測定し、得られた粘度カーブから剪断速度100(1/sec)における溶融粘度を読みとった。
【0042】
[成形加工性]
前述の製造方法にて総吐出量10kg/時間の押出条件にて2時間製膜を続け、得られた積層フィルムを観察し、以下の基準で目視判定を行った。
○……薄黄色で透明性が良好
△……黄色味が強いが透明性は良好
×……赤く着色し透明性も悪い、またはヤケ・コゲ・ブツ等が発生して安定製膜が困難
【0043】
[積層フィルムの機械強度]
前記で得られた積層フィルムを5mm(MD;フィルムの流れ方向)×100mm(TD;フィルムの流れに直行する方向)の短冊状に切り出し、JIS K 7127に基づき、23℃環境下中に1時間放置後に、チャック間40mm、200mm/分の速度でV方向に引張試験を行い、破断時の伸び率(%)を測定し、以下の基準で判定した。
◎……450%以上
○……350%以上〜450%未満
△……250%以上〜350%未満
×……250%未満
【0044】
[容器密着性 ]
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に包装したときの容器への密着性を、以下の基準で評価した。
◎:適度に包装できるレベル
○:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となる
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1および2より、本発明で規定される組成または溶融粘度比率を有する積層フィルムは、成形加工性、機械特性に優れていた。これに対し、比較例は、成形加工性、機械物性のいずれかが劣っていた。
これより、本発明の製造方法によって製造された塩化ビニル系積層フィルムは成形加工性、機械強度に優れたものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層と、その両側に少なくとも各1層の共重合ポリエチレン系樹脂組成物からなる(B)層を最外層に有する塩化ビニル系積層フィルムであって、
(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に可塑剤5〜70質量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物であり、(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物の高化式フローテスターにより測定した剪断速度100(1/sec)での溶融粘度が、同様にして測定した(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度よりも小さいことを特徴とする塩化ビニル系積層フィルム。
【請求項2】
(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物が、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物である請求項1に記載の塩化ビニル系積層フィルム。
【請求項3】
前記共重合ポリエチレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、2.16kg荷重)が0.1〜40g/10分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ビニル系積層フィルム。
【請求項4】
全層に対する(B)層の厚み比が5〜80%である請求項1乃至3のいずれかに記載の塩化ビニル系積層フィルム。
【請求項5】
(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物、および(B)層を構成する共重合ポリエチレン系樹脂組成物を、共押出法により積層形成することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の塩化ビニル系積層フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−284792(P2008−284792A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132418(P2007−132418)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】