説明

塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料

【課題】塩基性アミノ酸を健康機能有効成分として含有する塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料において、容器詰め飲料の微生物増殖抑制の手段としてのpH調整と、その場合に生じる飲料の香味バランスのくずれを防止して、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持とを両立させた塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持を図った塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料を製造することからなる。本発明において、健康機能有効成分として飲料に含有させる塩基性アミノ酸としては、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)、及びそれらの塩を挙げることができる。本発明において、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、飲料のpHの調整にレモン果汁と共に、酸性化合物を添加・含有させ、pHの調整を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)、及びそれらの塩のような塩基性アミノ酸を健康機能有効成分として含有する塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料、特に、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、殺菌等における処理条件の緩和や、飲料のpH調整を図り、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持とを両立させた塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の生理、薬理機能を有し、人間の生理機能や障害に対する改善作用を有する物質として、多くのアミノ酸が知られているが、中でも塩基性アミノ酸であるオルニチンは、成長ホルモンを分泌させ筋肉合成を増強する、或いは、基礎代謝を高め肥満を予防する食品素材として、米国および日本を中心に用いられている。また、オルニチンは、欧州では肝臓障害を改善する医薬品としてL−オルニチンL−アスパラギン酸塩の形態で用いられている。オルニチンの薬理的な機能に基いて、各種の症状改善剤が開示されている。例えば、血中アンモニア値の上昇が関与する病的な疲労において、オルニチンまたはその塩を投与することで血中アンモニア値が低下し、病的な疲労を回復するための改善剤が開示されている(特公昭41−8592号公報、特公昭42−7767号公報、特公昭46−3194号公報、Arzneim.-Forsch. (Drug Res.),1970, vol8, p1064-1067)。
【0003】
また、国際公開番号WO2007/040244、WO2007/142286には、仕事や家事、余暇のスポーツ等の日常活動において現れる肉体的な及び精神的な疲労、すなわち、生理的疲労に対して、その疲労自覚症状を改善する組成物、或いは、各種の感染症や基礎疾患に伴う症状、或いは身体的、精神的障害に伴う症状として現れる病的疲労に対してその疲労自覚症状を改善する組成物として、オルニチン又はその塩を有効成分とする疲労自覚症状改善用組成物或いは疲労軽減剤が開示されている。
【0004】
更に、オルニチンのその他の改善剤として、特開2006−342148号公報には、オルニチン又はその塩を有効成分とする寝つき又は寝起き改善用経口剤が、特開2007−31375号公報には、オルニチン又はその塩を有効成分とする肌質改善用経口剤が、特開2007−119348号公報には、オルニチン又はその塩を有効成分とする冷え症改善剤が、特開2008−50352号公報には、オルニチン、リジン、アルギニン、及びシトルリンから選択される塩基性アミノ酸を含む睡眠改善剤が、WO2007/049628には、オルニチン又はその塩を有効成分とする血液流動性改善剤が、それぞれ開示されている。
【0005】
また、本発明者らが別途出願しているように、健常人のアルコール摂取により起こる疲労、すなわちアルコール性疲労に対して、オルニチン又はその塩により、その症状を有効に改善する改善剤がある。
【0006】
他の塩基性アミノ酸であるアルギニンは、脳の下垂体に作用し、成長ホルモン分泌を促進することで、組織中のタンパク質合成を促し筋肉を増強する作用がある。更に、アルギニンはオルニチン(尿素)回路の一員として、アンモニアの解毒にも関わっている。加えて、アルギニンから発生する一酸化窒素(NO)は血管拡張作用があり、血流改善を促し、血流が悪くなることで起きる症状にも有用であるとの報告がされている。
【0007】
上記のとおり、塩基性アミノ酸の各種の薬理機能から、各種改善剤が開示されているが、該塩基性アミノ酸を添加して、塩基性アミノ酸の各種の薬理機能を付与した飲料も開示されている(WO2004/052125、WO2007/023999)。
【0008】
そこで、塩基性アミノ酸又はその塩を飲料に添加した場合は、その添加量によってpHの上昇を引き起こすことが知られている。容器詰め飲料の場合、製造から消費者の飲用に至るまでの流通及び保存のために一定の期間を要することは避けられないため、その対応として微生物増殖抑制のための手段を講じる必要がある。その場合に、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料においては、塩基性アミノ酸の添加によるpHの上昇が問題となる。
【0009】
例えば、食品衛生法でも記すとおり、炭酸ガスを含有せず動植物由来の組織を含むものに対しては殺菌を行う必要があるが、この殺菌強度はpHによって区分されており、殺菌条件は飲料のpHによって相違してくる。例えば清涼飲料の一般的流通形態である常温販売において、pHが4.0未満の場合は65℃、10分間同等以上、pHが4.0以上4.6未満の場合は85℃、30分間同等相当、pH4.6以上の場合は120℃、4分間同等以上の殺菌が必要となる。そこで、殺菌強度の高さは香味に及ぼす影響も大きく、よりフレッシュな香味設計実現のため、より低い殺菌強度で微生物を制御することが望まれている。
【0010】
清涼飲料ではさわやかな酸味や飲用時の爽快感の付与のような良好な香味を考慮し、また、より低い温度で微生物を制御することを考慮して、酸性の飲料処方を設計する場合があり、例えば、炭酸飲料では一般的にpH4.0未満の処方設計が主流である。しかし、単純に酸性化合物(酸味料)だけでpHを調整した場合は、意図しない鋭い酸味を付与してしまうなど、飲料の香味設計上、問題を生じる。したがって、飲料の香味のバランスを保持しながら、目的とするpHまで低下させる有効な手段は知られておらず、そのような飲料製造技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭41−8592号公報
【特許文献2】特公昭42−7767号公報
【特許文献3】特公昭46−3194号公報
【特許文献4】特開2006−342148号公報
【特許文献5】特開2007−31375号公報
【特許文献6】特開2007−119348号公報
【特許文献7】特開2008−50352号公報
【特許文献8】WO2004/052125
【特許文献9】WO2007/023999
【特許文献10】WO2007/040244
【特許文献11】WO2007/049628
【特許文献12】WO2007/142286
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Arzneim.-Forsch. (Drug Res.),1970, vol8, p1064-1067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)、及びそれらの塩のような塩基性アミノ酸を健康機能有効成分として含有する塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料において、容器詰め飲料の微生物増殖抑制の手段としてのpH調整と、その場合に生じる飲料の香味バランスのくずれを防止して、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持とを両立させた塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際しての、微生物増殖抑制の手段としてのpH調整において、レモン果汁を用いることにより、単純に酸性化合物(酸味料)だけでpHを調整した場合のような、意図しない鋭い酸味を付与してしまい、飲料の香味バランスをくずすようなことがなく、飲料本来の香味バランスを保持し、しかも、目的とするpHまで低下させ、飲料のpH調整を有効に行い、飲料の微生物管理の向上を図ることが可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持を図った塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料を製造することからなる。本発明において、健康機能有効成分として飲料に含有させる塩基性アミノ酸としては、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)、及びそれらの塩から選択される塩基性アミノ酸の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0016】
本発明において、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、飲料のpHの調整にレモン果汁と共に、酸性化合物を添加・含有させ、pHの調整を行うことができる。かかる酸性化合物としては、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸、及びビタミンCから選択される酸性化合物の1種又は2種以上を挙げることができる。本発明において、容器詰め飲料の有効な微生物の増殖抑制のためには、飲料のpHをpH2.0〜4.6に調整することが望ましい。本発明の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料における塩基性アミノ酸の添加量は、その健康機能の付与の観点からは、0.01〜10.0重量%であることが望ましい。また、本発明の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料におけるレモン果汁の添加量は、ストレート果汁換算で0.5〜10.0重量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、飲料の味覚と香味バランスの向上とを図るために、糖類、糖アルコール類や甘味料を添加することができる。糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖など、糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトールなど、甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、サッカリン、アスパルテーム、ステビアから選択され、糖類、糖アルコール類、甘味料の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0018】
本発明における塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法においては、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造工程において、(A)飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程、及び(B)飲料原料にレモン果汁を添加する工程を設け、飲料原料に塩基性アミノ酸及びレモン果汁を添加することによって行うことができる。また、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造工程において、(A)飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程、及び(B)飲料原料にレモン果汁を添加する工程に、更に、(C)飲料原料に酸性化合物を添加する工程を設け、飲料原料に塩基性アミノ酸及びレモン果汁と、更に、酸性化合物を添加することによって行うことができる。
【0019】
すなわち、具体的には本発明は、(1)塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持を行うことを特徴とする塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(2)塩基性アミノ酸が、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、γ−アミノ酪酸、及びそれらの塩から選択される塩基性アミノ酸の1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(3)塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁と共に、酸性化合物を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(4)酸性化合物が、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸、及びビタミンCから選択される酸性化合物の1種又は2種以上であることを特徴とする上記(3)記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法からなる。
【0020】
また、本発明は、(5)飲料のpHの調整により、pH2.0〜4.6とすることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(6)塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料における塩基性アミノ酸の添加量が、0.01〜10重量%であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(7)塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料におけるレモン果汁の添加量が、ストレート果汁換算で0.5〜10.0重量%であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(8)上記(1)〜(7)のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、甘味料を添加することを特徴する塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法からなる。
【0021】
さらに、本発明は、(9)甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、サッカリン、アスパルテーム、ステビアから選択される甘味料の1種又は2種以上であることを特徴とする上記(8)記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(9)塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造工程において、(A)飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程、及び(B)飲料原料にレモン果汁を添加する工程を設けたことを特徴とする上記(1)記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(11)塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造工程において、(A)飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程、及び(B)飲料原料にレモン果汁を添加する工程に、更に、(C)飲料原料に酸性化合物を添加する工程を設けたことを特徴とする上記(3)記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法や、(12)上記(1)〜(11)のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法によって製造された飲料の微生物管理の向上と香味バランスを保持した塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料からなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)、及びそれらの塩のような塩基性アミノ酸を健康機能有効成分として含有する塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料において、塩基性アミノ酸又はその塩を容器詰め飲料に添加した場合に生じるpH上昇に対して、飲料の香味バランスを保ちながら、pHの調整を行うことを可能とし、飲料の微生物管理の向上と香味バランスを保持した、健康機能及び嗜好性を兼備した容器詰め飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持を図った塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料を製造することからなる。
【0024】
本発明の容器詰め飲料は、その健康機能成分として、塩基性アミノ酸を含有する。本発明の容器詰め飲料で添加・含有される塩基性アミノ酸としては、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)等があり、それぞれL体、D体が挙げられる。塩基性アミノ酸は、化学的に合成する方法、発酵生産する方法、素材から抽出する方法等により取得することができる。また、塩基性アミノ酸は、市販品を購入することにより入手することもできる。
【0025】
本発明においては、塩基性アミノ酸に、更に、非塩基性アミノ酸及び/又はその塩を含有する容器詰め飲料とすることもできる。非塩基性アミノ酸としては、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらの非塩基性アミノ酸も、上記塩基性アミノ酸と同様に入手することができる。
【0026】
塩基性アミノ酸の一つであるL−オルニチンを化学的に合成する方法としては、例えば、Coll.Czechoslov.Chem.Commun.,24,1993(1959)に記載の方法があげられる。L−オルニチンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−24096号公報、特開昭61−119194号公報に記載の方法があげられる。また、L−オルニチン及びD−オルニチンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。
【0027】
本発明においては、塩基性アミノ酸として、遊離の塩基性アミノ酸の代わりに又はこれと併せて、塩基性アミノ酸の塩を用いることもできる。塩基性アミノ酸の塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。その他、塩以外の形態として、ペプチドや素材抽出物など、塩基性アミノ酸が含まれる全ての物質が利用できる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
【0028】
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。上記の塩基性アミノ酸の塩のうち、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸塩、アスパラギン酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、又は2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の飲料における塩基性アミノ酸又はその塩の濃度は、塩基性アミノ酸の種類、該アミノ酸の摂取により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、オルニチン又はその塩の場合は、通常は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。又は、オルニチン又はその塩の濃度は、飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程である工程(A)により、pHを0.1〜5.0上昇させる濃度であり、好ましくは0.5〜2.0上昇させる濃度である。
【0030】
本発明において、塩基性アミノ酸のpH調整に用いられるレモン果汁は、特に限定されないが、ストレート果汁、濃縮果汁を用いることができる。また、レモン果汁の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料への添加量は、飲料の種類や塩基性アミノ酸の添加率、目的とするpHにより異なるが、ストレート果汁換算で好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは、1〜5重量%である。
【0031】
本発明の容器詰め飲料は、酸性化合物を更に含むことができる。ただし、酸性化合物の使用量は、意図しない鋭い酸味や、酸性化合物由来のえぐ味・渋みが飲用時に許容可能であるようなものとする点に留意すべきである。本発明において用いられる酸性化合物は、食品に用いることができる化合物であれば特に限定されないが、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸、ビタミンC等を挙げることができ、特に好ましくは、クエン酸、リン酸を挙げることができる。
【0032】
本発明において、酸性化合物の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料への添加量は、飲料の種類や塩基性アミノ酸の添加率、レモン果汁の添加量、目的とするpHにより異なるが、一般的には内容物100重量%に対し、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0033】
本発明において、容器詰め飲料の有効な微生物の増殖抑制のためには、飲料のpHを
pH2.0〜4.6、好ましくはpH2.0〜4.0、さらに好ましくはpH3.0〜4.0に調整することが望ましい。
【0034】
本発明の容器詰め飲料は、糖類、糖アルコール類や甘味料をさらに含むことができる。糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖などが挙げられる。糖類の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料への添加率は、飲料の種類などにより異なるが、一般的には内容物100重量%に対し、例えばショ糖であれば0.1〜20.0%、果糖であれば0.1〜20.0%、ブドウ糖であれば0.1〜20.0%添加することができる。糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトールなどが挙げられる。糖アルコール類の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料への添加率は、飲料の種類などにより異なるが、一般的には内容物100重量%に対し、例えばエリスリトールであれば0.1〜15.0%添加することができる。
【0035】
甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、サッカリン、アスパルテーム、ステビア等が挙げられる。本発明ではこれらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、好ましくは、アセスルファムカリウムとスクラロース、アセスルファムカリウムとネオテーム組み合わせて用いることができる。
【0036】
甘味料の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料への添加率は、飲料の種類などにより異なるが、一般的には内容物100重量%に対し、アセスルファムカリウムであれば0.001〜0.05%、スクラロースであれば0.001〜0.04%、ネオテームであれば0.001〜0.05%、アセスルファムカリウムとスクラロースの組合せであればそれぞれ0.001〜0.03%、0.001〜0.02%添加することができる。また、糖類、糖アルコール類及び甘味料の1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
本発明の容器詰め飲料には、塩基性アミノ酸又はその塩に加え、適宜、各用途に適した添加剤を含有させることができる。また、本発明の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製品化に際しては、塩基性アミノ酸又はその塩に加え、適宜、その他の成分を含有させることで、容器詰め飲料として調製することができる。該その他の成分としては、各種ビタミン、ミネラル、香料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、乳化剤、糖類、乳清、果汁、酸味料、消泡剤等が挙げられる。
【0038】
一般的に容器詰め飲料においては、微生物増殖抑制などの観点から、低pHとすることや、加熱殺菌することが行われる。加熱殺菌の場合は、微生物増殖抑制の観点からは有効であるが、加熱前の飲料と比較して香味が劣化することが避けられない。一方、低pHとすることで微生物増殖を抑制することが考えられる。しかし、低pHとすることだけでは、加熱殺菌の場合に比較して、有効な微生物増殖抑制効果が得られにくいという傾向がある。本発明においては、加熱殺菌と低pHとすることを併用することにより、加熱殺菌強度を抑え、香味バランスの保持と有効な微生物増殖抑制効果を両立できるという効果を得ることができる。
【0039】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
(1)飲料の調製方法
遊離オルニチンが最終濃度で0.08%になるようにL−オルニチン塩を添加した溶液に、濃縮レモン果汁をストレート換算で表1の値になるように調整したサンプル[1]〜[7]を準備し、それぞれに、クエン酸を表1の量で添加した。更に甘味料としてアセスルファムカリウムとスクラロースを甘味度がショ糖換算で7.00〜9.00になるように添加し、水溶性食物繊維0.5%を加え、クエン酸三ナトリウムでpHを3.5〜3.6に調整したうえで、イオン交換水でメスアップした。また、官能評価は0.23MPaの炭酸ガスを封入し実施した。
【0041】
【表1】

【0042】
(2)官能評価方法
上記方法により得られた、塩基性アミノ酸を含有する飲料は、専門パネリスト4名で官能評価を実施した。官能評価は、(i)酸味の強さが適当であるか、(ii)酸味の感じ方は好ましいかという点に注意して行った。総合評価ではその2点を考慮し、酸性飲料として好ましい酸味であると判断した場合には±、より好ましい酸味であると判断した場合は+、好ましくない酸味であると判断した場合は−で表記した。官能評価結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
(3)結果
表2で示したように、クエン酸のみでpHを低下させたサンプル[1]は、鋭い酸味を持ち、官能上好ましくなかった。一方、クエン酸とレモン果汁を併用したサンプル[2]乃至[6]は、酸味の強さ・感じ方に改善が見られた。その中でもサンプル[3]乃至[5]は適度な強さで爽やかな酸味を有し、厚みのある香味でより良好であった。また、果汁を多く使用し調整したサンプル[7]は、果汁由来のものと思われるえぐ味が強くでてしまい、官能上好ましくなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、GABA(γ−アミノ酪酸)、及びそれらの塩のような塩基性アミノ酸を健康機能有効成分とし、塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、塩基性アミノ酸又はその塩を容器詰め飲料に添加した場合に生じるpH上昇に伴う問題を回避して、飲料の香味バランスを保ちながら、pHの調整を行うことを可能とし、飲料の微生物管理の向上と香味バランスを保持した、健康機能及び嗜好性を兼備した容器詰め飲料を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持を行うことを特徴とする塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項2】
塩基性アミノ酸が、オルニチン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、シトルリン、γ−アミノ酪酸、及びそれらの塩から選択される塩基性アミノ酸の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項3】
塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、レモン果汁と共に、酸性化合物を添加・含有させ、飲料のpHを調整することにより、飲料の微生物管理の向上と香味バランスの保持することを特徴とする請求項1又は2記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項4】
酸性化合物が、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸、及びビタミンCから選択される酸性化合物の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項5】
飲料のpHの調整により、pH2.0〜4.6とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項6】
塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料における塩基性アミノ酸の添加量が、0.01〜10.0重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項7】
塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料におけるレモン果汁の添加量が、ストレート果汁換算で0.5〜10.0重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造に際して、甘味料を添加することを特徴する塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項9】
甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、サッカリン、アスパルテーム、及びステビアから選択される甘味料の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項8記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項10】
塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造工程において、(A)飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程、及び(B)飲料原料にレモン果汁を添加する工程を設けたことを特徴とする請求項1記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項11】
塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造工程において、(A)飲料原料に塩基性アミノ酸を添加する工程、及び(B)飲料原料にレモン果汁を添加する工程に、更に、(C)飲料原料に酸性化合物を添加する工程を設けたことを特徴とする請求項3記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載の塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料の製造方法によって製造された飲料の微生物管理の向上と香味バランスを保持した塩基性アミノ酸含有容器詰め飲料。

【公開番号】特開2011−120479(P2011−120479A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278251(P2009−278251)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(594197388)小岩井乳業株式会社 (13)
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】