説明

塩基性ガス除去フィルター用シート状物

【課題】
イオン交換当量が高く、アンモニアなどの塩基性ガス除去用フィルター用途に好適な、塩基性ガス除去用シート状物を提供する。
【解決手段】
ポリオレフィン系繊維を構成材料としてなるシート状物、またはポリオレフィン系繊維および繊維状活性炭からなるシート状物に、無水硫酸ガスとの反応によりスルホン酸基が付与されており、シート状物におけるスルホン酸基のイオン交換当量が3.0meq/g以上であることを特徴とする塩基性ガス除去フィルター用シート状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター用途、特にケミカルフィルター用途での濾材として好適に用いられる塩基性ガス除去フィルター用シート状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶などの製造設備や食品製造工場など様々な事業分野において、クリーンルーム内で発生する各種ガス状汚染物質や悪臭物質の除去には、活性炭やイオン交換基を有する繊維等を構成材料としたフィルターが広く用いられている。
近年、特に半導体製造分野等においては、ppbオーダーのより高度なクリーン度が要求され、上記フィルターに対してはさらなる性能の向上が求められている。その中で、微量ガス成分とりわけアンモニアなどの塩基性ガスに対する除去性能の向上が強く求められている。
【0003】
アンモニアなどの微量な塩基性ガスの発生原因としては、製造工程内での副反応による発生、クリーンルーム構成材料からの発生、外気導入の際における混入、さらには作業員自体の生理代謝による発生などが挙げられ、発生原因を根絶するにも困難な面がある。一方これら塩基性ガスは、例えば半導体デバイス工場の場合、シリコンウエハやガラス基盤の表面汚染を起こし生産歩留に大きな影響を与えるなどの大きな問題を引き起こしている。
【0004】
これら塩基性ガスへの対策としては、一般に化学的手段により捕捉・除去する方法が検討されている。その一つに活性炭を用いた事例として、活性炭にリン酸などの薬剤を添着し、これらガス成分と反応させることで除去する方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照)
また、イオン交換基を利用する事例としては、イオン交換樹脂からなる繊維そのものをフィルター用濾布材として用いる方法や、濾布を構成する繊維の表面にスルホン酸基やカルボン酸基などのカチオン交換基を多段的に付与させる方法が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
さらに、イオン交換基の付与法についても、シート状物の材料となる繊維表面にイオン交換基を有する高分子エマルジョンをコーティングする手法(例えば、特許文献3参照)や、材料繊維に電離放射線(例えば、特許文献4参照)や電子線あるいは紫外線照射(例えば、特許文献5参照)などを照射し、直接繊維表面に反応性単量体をグラフト重合させて官能基を付与させる手法などが開示されている。
【0005】

【特許文献1】特開2000−202235
【特許文献2】特開2000−33217
【特許文献3】特開2001−120650
【特許文献4】特開平8−199480
【特許文献5】特開2000−102715
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしこれらの方法では、半導体製造工場などのクリーンルームにおける塩基性ガスを好適に除去できるフィルター用シート材を、簡便な工程で製造するという技術的課題を十分に解決するには至っていないことに加え、以下のような新たな課題を残している。
【0007】
例えば、上記の活性炭を用いたタイプのフィルターの場合、アンモニアなどの塩基性ガスを活性炭細孔内に添着させたリン酸からなる薬剤と反応させることで除去するものであり高度な除去能力を有するが、一方では半導体製造工程で洗浄剤として使用されている酢酸エステル系有機溶剤が、フィルターを通過する際にリン酸によって加水分解され酢酸を発生し、これにより装置の金属部分などを腐食させるというおそれがあった。
【0008】
また、イオン交換体を用いたタイプでは、一般的には官能基としてスルホン酸基、カルボン酸基などが用いられており、上記のリン酸を用いた場合のような問題は軽減されている。しかしながら、例えばこれら官能基をコーティング法を用いて濾布となるシート材表面に付与させる場合、シート材表面と同様にシート材内部の繊維にまで均一に塗布液をコーティングすることは難しく、また過剰な液滴が残存した場合には目付が上がり圧力損失の原因ともなる。
【0009】
一方、イオン交換樹脂からなる繊維そのものを用いてフィルター用シート材を作成する場合、イオン交換繊維のみではシート状物に成形できないため、一般に10〜40質量%程度のバインダー成分を使用する必要がある。しかしながら、これに伴いバインダー成分が付着した部分で表面官能基量が減少するため、シート状物としての実質的なイオン交換当量は2.0meq/g以下に留まるものであった。
【0010】
また、シートを構成する繊維に直接官能基を化学的に付与させる場合、一般にイオン性官能基の付与量は多いほどフィルター性能は高くなるため、効果的な付与法について様々な検討が行われている。例えば、不織布の表面にイオン交換基をもつ重合体をグラフト重合させる手法は、ガス除去に直接関わる繊維表面にイオン交換基を付与する方法として有用である。この場合、カルボン酸基とスルホン酸基とでは、塩基性ガスに対する反応性が大きく異なり、除去効率の面からはスルホン酸基の利用が好ましい。
【0011】
しかしながら、グラフト重合による付与プロセスは工程的にもあるいは操作的にも非常に複雑であり、フィルターの高コスト化への原因ともなっていた。またグラフト重合時の未反応物などが残留した場合、フィルターとして使用した際に、これがオフガスとなって放出される問題があった。さらには、グラフト重合の開始にあたって放射線など高エネルギー線を照射する場合、繊維表面のみならず、繊維内部の高分子鎖も損傷が発生しやすく、濾材としての強度低下を引き起こす原因ともなっていた。
【0012】
これを回避するために繊維芯部に耐放射線性の比較的高いポリエチレンテレフタレートなどを用いた芯鞘構造を用いた繊維が提案されているが、放射線照射の場合では被照射体全体に均一に照射されるため、繊維表面に十分な官能基を付与させようとすると、やはり繊維内部の損傷が発生するため、この課題を完全に解消できるまでには至っていない。
【0013】
一方、放射線に比べ低エネルギーの紫外線を照射しグラフト重合する方法では、逆に重合度を高めるために様々な増感剤を添加する必要があり、また未反応の単量体やオリゴマーを有機溶媒などで洗浄・除去する工程を別途必要とするため、コストアップの要因となるとともに、これら不要な残存成分が微量のガス(オフガス)となりクリーンルームでの二次汚染の原因ともなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、下記のような構成を有するフィルター用シート状物がアンモニアなどの塩基性ガスに対して優れた除去効果を有することを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の内容を要旨とするものである。
(a)ポリオレフィン系繊維を構成材料としてなるシート状物であって、無水硫酸ガスとの反応によりスルホン酸基が付与されており、シート状物におけるスルホン酸基のイオン交換当量が3.0meq/g以上であることを特徴とする塩基性ガス除去フィルター用シート状物。
(b)シート状物の構成材料がポリオレフィン系繊維及び繊維状活性炭であることを特徴とする(a)記載の塩基性ガス除去フィルター用シート状物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塩基性ガス除去フィルター用シート状物は、アンモニアなどの塩基性ガスの除去性能に優れるため、クリーンルームに用いるフィルター用資材として好適に使用できる。また、本発明のシート状物は、イオン交換繊維を用いたタイプよりもイオン交換当量が高く、不織布表面にイオン交換基を持つ重合体をグラフト重合させる方法よりも簡潔なプロセスで、かつ低コストで得ることができる。
【0016】
さらに、本発明のシート状物では、これを用いてクリーンルームに用いるフィルターとした場合、新たな二次汚染の原因につながる、通気ガスとの副反応でオフガスを発生させたり、フィルターを構成する成分からの残留不純物を飛散させたりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の塩基性ガス除去フィルター用シート状物としては、ポリオレフィン系繊維を構成材料として成形されたものであり、その用途や必要に応じて、繊維状活性炭も構成材料に含めて成形された不織布やフェルトなどの形状をなすシート状物をいう。
本発明におけるポリオレフィン系繊維としては、後のスルホン化工程において、スルホン酸基が付与される構成材料であり、具体的にはポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などからなる繊維が挙げられるが、これらの共重合体からなる繊維や、これら樹脂を表面に持つ芯鞘構造を有する繊維、またはこれらのうち2種類以上の繊維を混合して使用することもできる。
【0018】
また、本発明におけるポリオレフィン系繊維は、ポリオレフィン系樹脂を通常の溶融紡糸法やスパンボンド法、メルトブロー法などにより得られるものである。
従って、本発明におけるポリオレフィン系樹脂の平均分子量としては、特に限定はないが、少なくとも通常の溶融紡糸法等では均一な紡糸ができない低分子量体や、逆に例えば極限粘度[η]が5dl/g以上である超高分子量体に類するポリオレフィン系樹脂は対象とするものではない。また、該ポリオレフィン系繊維は、必要に応じて公知の熱安定剤、耐侯剤などの各種安定剤や着色剤等を含んでもよい。
【0019】
本発明のシート状物におけるスルホン酸基のイオン交換等量としては、3.0meq/g以上、好ましくは3.3meq/g以上、より好ましくは3.6meq/g以上である。イオン交換等量が3.0meq/g未満の場合、本発明の目的である塩基性ガスの除去効率がクリーンルーム用途に求められる要求性能を充分には満たさない場合や使用期間の寿命が短くなる場合があり好ましくない。
一方、本発明において付与されるスルホン酸基の上限としては、イオン交換等量が多いほどフィルターとしての除去性能が向上するものであり特に制限されるものではないが、反応操作にあたっては無水硫酸ガスとの過剰な接触によりシート素材に架橋反応などの副反応が起こらない範囲で留めることが必要である。したがってこの意味においては、スルホン酸基のイオン交換等量の上限値として、10meq/g以下が好ましい。
【0020】
本発明のシート状物の構成材料としては、ポリオレフィン系樹脂に加えて、繊維状活性炭を含んでいることが好ましい。本発明における繊維状活性炭としては、ピッチ系、フェノール系、セルロース系等のものを使用することができるが、下記の繊維状活性炭を含有させる効果を得るためには、細孔容積が0.3〜0.8mL/g、平均細孔直径が1.5〜2.2nmであることが好ましい。
【0021】
繊維状活性炭を含有させる場合の比率としては、90〜10質量%であることが好ましい。繊維状活性炭の含有率が90質量%を超えた場合、バインダーとしての機能も併せ持つポリオレフィン繊維の比率が10%を下回ることになり、シート状物の強度が低くなりフィルター形状への加工が困難となったり、シート状物の厚みが増しフィルターの圧力損失が高くなるために好ましくない。また、本発明の目的である塩基性ガスを効果的に除去するためには、繊維状活性炭の含有率としては50質量%以下であることがより好ましい。一方、繊維状活性炭の含有率が10質量%未満の場合、繊維状活性炭を含有させる目的である塩基性ガス以外の他の汚染物質を除去するという効果が充分に得られないため好ましくない。
【0022】
本発明のシート状物において、上記の含有率の範囲で繊維状活性炭を含有させこれをフィルターとして用いた場合、材料繊維に付与されたスルホン酸基により効果的に塩基性ガスを除去できることに加えて、クリーンルーム内の気相中に含まれる他の有機物質やフィルター素材からオフガス等が発生した場合でも、これを効果的に除去することができる。したがって、クリーンルーム内における二次汚染の機会を大幅に低減できると共に、塩基性ガスだけに留まらず多様なガス成分が共存する広範な用途にも利用が可能となる。
【0023】
本発明のシート状物の製造方法としては、繊維状活性炭を含有させる場合とさせない場合のいずれにおいても特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば繊維状活性炭を含有させない場合では、スパンボンド法、メルトブロー法、水流交絡法、カード法などの公知の方法を用いることができる。またこの場合、シート状物の強度向上および厚み低減のためには、ポリオレフィン系繊維の融点以上であり、かつ(融点+40)℃未満の温度に設定した乾燥機中を通過させながら熱融着による繊維間固定を行い、さらに必要に応じてカレンダーロールを通すという工程を含むことが好ましい。
【0024】
他方、繊維状活性炭を含有させる場合では、湿式加工法、乾式加工法など公知の方法を用いることができる。例えば湿式加工法の場合では、ポリオレフィン系繊維および繊維状活性炭を含むスラリーから抄紙することによりシート状物を得るが、本発明の効果に差し支えない範囲で、フィブリル化繊維、分散剤などの第三成分を添加することができる。一方、カード機やランダムウエーバー機などを用いた乾式加工法では、湿式加工法において必要な第三成分添加の必要がないのでより好ましい。このようにして得られたポリオレフィン系繊維からなるウエブあるいは繊維状活性炭も含有させてなるウエブを、強度向上および厚み低減のため、ポリオレフィン系繊維の融点以上、(融点+40)℃未満の温度に設定した乾燥機中を通過させ、熱融着により繊維間固定を行い、さらに必要に応じてカレンダーロールを通して厚みを低減させることで、本発明のシート状物を得ることができる。
【0025】
この場合、本発明におけるシート状物の目付としては、スルホン酸基の付与される繊維の総表面積、通気中の圧力損失およびシート状物の強度物性を含めた取扱い易さとのバランスに基づいて、40〜250g/mであることが好ましい。
【0026】
次に、上記のように得られたシート状物に対し、無水硫酸ガスと反応させることによってシート状物を構成する繊維表面にスルホン酸基を付与させる。無水硫酸ガスと反応させるための装置については特に制限はなく、バッチ式あるいは連続式など公知のものを使用することができる。無水硫酸ガスと反応させる条件としては、シート状物と無水硫酸ガスの接触時間は5〜100分、無水硫酸ガスの濃度は1〜10vol%が好ましく、この範囲でシート状物の構成によって適宜調節することにより目的とするイオン交換等量のシート状物を得ることができる。
【0027】
続いて、無水硫酸ガスとの反応を終了させ、シート状物に残留する無水硫酸を除去するために、洗浄水が中性になるまでシート状物の水洗を行い、さらに乾燥工程を経ることで、スルホン酸基のイオン交換当量が3.0meq/g以上である本発明の塩基性ガス除去フィルター用シート状物を得ることができる。
【0028】
これらの操作によって得られる本発明の塩基性ガス除去用シート状物は、イオン交換当量が高くかつ低コストであり、不純物の残留や放出もないので、塩基性ガス除去用フィルターの構成材料として好適に使用できる。また、フィルターの形状としては特に制限はなく、シート状物の形状でそのまま使用したり、コルゲートやプリーツなどの形状に公知の方法で成型加工して使用したりすることができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、各特性値の測定は室温下で次のようにして行った。
(1)イオン交換当量
0.1N水酸化ナトリウム50mLにシート状物約1gを入れ、23℃で2時間振とうし、5mL正確に計りとって中和滴定し、中和に要した滴定量とサンプル質量から計算して求めた。
(2)アンモニアガスの濃度
光明理化学工業株式会社製、北川式ガス検知管、アンモニア用No.105SDを用いて測定した。
(3)アンモニアガスの吸着試験
直径40mmの円板状にカットしたシート状物に対し、乾燥空気で希釈して20ppmに調製したアンモニアガスを3.8L/minの風速で供給した。アンモニア除去能力が低下し、シート状物の下流側に通過するアンモニアガス濃度が4ppmに達するまでの時間を測定して寿命とした。一般的なイオン交換樹脂にバインダー繊維を用いてシート状物とした場合では、当該試験における寿命としては約25分以下となる。
(4)トルエンガスの濃度
株式会社アナテックヤナコ製の全炭化水素自動計測器(EHF−7C)を用いて通常の方法により測定した。
(5)トルエンガス吸着試験
直径40mmの円板状にカットしたシート状物に対し、乾燥空気で希釈して20ppmに調製したトルエンガスを3.8L/minの風速で供給した。シート状物の下流側のトルエンガス濃度が4ppmに達するまでの時間を測定して寿命とした。
【0030】
実施例1
ポリプロピレン製不織布(三井化学社製 目付60g/m)を10cm角にカットし、内容積3Lのガラス製密閉容器に入れて減圧乾燥を行った。窒素ガスで希釈して5vol%濃度とした無水硫酸ガスを容器中に封入し室温下でスルホン化反応の操作を行った。10分後に無水硫酸ガスを抜き反応を終了させた。次に容器内を常圧に戻し試料を取り出した後、洗浄水が中性になるまで水洗することで残存する無水硫酸ガスを硫酸として除き、乾燥してスルホン酸基が付与された本発明のシート状物を得た。得られたシート状物のイオン交換当量は3.6meq/gであった。アンモニアガスの吸着試験を実施したところ、寿命は45分であった。トルエンガスの吸着試験を行ったところ吸着性能は全く認められなかった。
【0031】
実施例2
熱融着ポリオレフィン短繊維(チッソ社製 3.3dtex カット長51mm)30質量部、ピッチ系繊維状活性炭(アドール社製 細孔容積0.5mL/g、平均細孔直径1.7nm)70質量部をカード機によりウエブ化し、熱処理およびカレンダー加工をして、目付80g/mの繊維状活性炭複合シートを得た。実施例1と同様の処理を行ってスルホン酸基が付与された本発明のシート状物を得た。イオン交換当量は3.8meq/gであった。アンモニアガスの吸着試験を実施したところ寿命は40分であった。トルエンガスの吸着試験を行ったところ寿命は25分であった。
【0032】
比較例1
無水硫酸ガスとの反応時間を3分に変更した以外は、実施例1と同様にしてスルホン酸基が付与されたシート状物を得た。イオン交換当量は2.0meq/gであった。アンモニアガスの吸着試験を実施したところ、寿命は15分であった。トルエンガスの吸着試験を行ったところ吸着性能は全く認められなかった。
【0033】
比較例2
PVA系スルホン酸型イオン交換繊維(ニチビ社製 イオン交換当量2.5meq/g カット長51mm)70質量部とポリプロピレン繊維(チッソ社製 3.3dtex カット長51mm)30質量部をカード機によりウエブ化し、熱処理およびカレンダー加工をして、目付120g/mのイオン交換繊維シートを得た。イオン交換当量は1.7meq/gであった。アンモニアガスの吸着試験を実施したところ、寿命は25分であった。トルエンガスの吸着試験を行ったところ吸着性能は全く認められなかった。
【0034】
比較例3
アクリル系カルボン酸型イオン交換繊維(東洋紡社製 イオン交換当量5.0meq/g カット長47mm)70質量部とポリプロピレン繊維(チッソ社製 3.3dtex カット長51mm)30質量部をカード機によりウエブ化し、熱処理およびカレンダー加工をして、目付120g/mのイオン交換繊維シートを得た。イオン交換当量は4.0meq/gであった。アンモニアガスの吸着試験を実施したところ、寿命は3分であった。トルエンガスの吸着試験を行ったところ吸着性能は全く認められなかった。
【0035】
以上の結果から明らかなように、実施例1で得られたシート状物は、ポリオレフィン系繊維を主たる構成材料としてなるシート状物であり、無水硫酸ガスとの反応により付与されたスルホン酸基のイオン交換当量が3.0meq/g以上であるため、アンモニア除去性能に優れていた。また実施例2で得られたシート状物は、イオン交換当量が高くアンモニア除去性能に優れているとともに、繊維状活性炭の効果により空気中の有機物の除去性能も充分に有していた。
【0036】
一方、比較例1ではシート状物のイオン交換当量が3.0meq/g未満であるため、アンモニア除去性能は低いものであった。また比較例2では、市販のイオン交換繊維を用いて製造したシート状物であり、イオン交換繊維のイオン交換当量が2.5meq/gであるにもかかわらずシート状物とした後では2.0meq/g以下に低下するために、アンモニア除去性能が低いものであった。また比較例3では、イオン交換繊維がカルボン酸型であるためイオン交換当量の高いシート状物となっているが、通気条件下ではスルホン酸基に比べアンモニア除去性能は極めて低く、フィルター用途としては使用できないものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系繊維を構成材料としてなるシート状物であって、無水硫酸ガスとの反応によりスルホン酸基が付与されており、シート状物におけるスルホン酸基のイオン交換当量が3.0meq/g以上であることを特徴とする塩基性ガス除去フィルター用シート状物。
【請求項2】
シート状物の構成材料がポリオレフィン系繊維及び繊維状活性炭であることを特徴とする請求項1記載の塩基性ガス除去フィルター用シート状物。


【公開番号】特開2006−239498(P2006−239498A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55964(P2005−55964)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】