説明

塩素化塩化ビニル系樹脂及びその成形体

【課題】本発明は、不安定構造が少なく、熱安定性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂及びその成形体を提供する。
【解決手段】 塩素含有量が65重量%以上、68重量%未満であり、分子構造中に含まれる−CCl2 −が6.2モル%以下、−CHCl−が58.0モル%以上、且つ、−CH2 −が35.8モル%以下であることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂及び塩素含有量が70重量%以上、72重量%未満であり、分子構造中に含まれる−CCl2 −が17.0モル%以下、−CHCl−が46.0モル%以上、且つ、−CH2 −が37.0モル%以下であることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂(以下、「PVC」という)は、機械的強度、耐候性、耐薬品性等に優れた材料として、多くの分野に用いられている。しかしながら、耐熱性に劣るため、PVCを塩素化することにより耐熱性を向上させた塩素化塩化ビニル系樹脂(以下、「CPVC」という)が開発されている。
【0003】
PVCは、熱変形温度が低く使用可能な上限温度が60〜70℃付近であるため、熱水に対して使用できないのに対し、CPVCは熱変形温度がPVCよりも20〜40℃も高いため、熱水に対しても使用可能であり、例えば、耐熱パイプ、耐熱継手、耐熱バルブ等に好適に使用されている。
【0004】
しかしながら、CPVCは塩素含有量が65重量%以上になった場合、塩素原子の付加される比率が高くなるために生じる不安定構造が多く生じ、これに起因して熱安定性が悪くなるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、熱安定性の良好なCPVCを製造する方法が種々提案されている。例えば、酸素濃度が0.05〜0.35容量%の塩素を特定の流速で供給して、55〜80℃の温度で塩素化して、熱安定性の良好なCPVCを得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、この製造方法においては酸素濃度が高く、低温での反応のため、熱安定性が格段に優れているわけでなく、長期の押出成形や射出成形に耐えられなかった。
【特許文献1】特公昭45−30833号公報
【0006】
又、異なる製造方法として、酸素濃度が200ppm以下の塩素を使用して紫外線照射下に塩素化する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)が、この製造方法は紫外線照射による低温での反応のために、熱安定性が格段に優れたCPVCは得られなかった。
【特許文献2】特開平9−328518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、不安定構造が少なく、熱安定性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩素含有量が65重量%以上、68重量%未満であり、分子構造中に含まれる−CCl2 −が6.2モル%以下、−CHCl−が58.0モル%以上、且つ、−CH2 −が35.8モル%以下であることを特徴とする。
【0009】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂(CPVC)は、塩化ビニル系樹脂(PVC)が塩素化されてなる樹脂である。
上記PVCとは、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0010】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニルビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上が使用される。
【0011】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものであれば特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても良い。
【0012】
上記PVCの平均重合度は、特に限定されず、通常用いられる400〜3,000のものが好ましく、より好ましくは600〜1,500である。
【0013】
上記PVCの重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等が挙げられる。
【0014】
上記CPVCの塩素含有率は、塩素含有率が65重量%未満であると耐熱性の向上が不十分になり、68重量%以上であると成形加工性が困難となるので65重量%以上、68重量%未満であり、好ましくは66重量%以上、68重量%未満である。
【0015】
CPVCの分子構造中に含まれる−CCl2 −、−CHCl−及び−CH2 −の比率はPVCが塩素化される際の塩素が導入される部位を反映したものである。塩素化前のPVCは、理想的には、ほぼ、−CCl2 −が0モル%、−CHCl−が50.0モル%、−CH2 −が50.0モル%の状態にあるが、塩素化に伴って−CH2 −が減少し、−CHCl−及び−CCl2 −が増加してくる。この際、立体障害が大きく不安定な−CCl2 −が増えすぎたり、CPVCの同一粒子内で塩素化されている部位とされていない部位が偏ったりすると、塩素化状態の不均一性が大きくなり、熱安定性が大きく損なわれてしまう。−CCl2 −が6.2モル%以下、−CHCl−が58.0モル%以上、且つ、−CH2 −が35.8モル%以下の範囲を外れると、この不均一な塩素化の影響が大きくなるため、熱安定性が悪化してしまうので、本発明1のCPVCの分子構造中に含まれる−CCl2 −は6.2モル%以下、−CHCl−は58.0モル%以上、且つ、−CH2 −は35.8モル%以下である。又、−CCl2 −が5.9モル%以下、−CHCl−が59.5モル%以上、且つ、−CH2 −が34.6モル%以下になると熱安定性がより優れるので好ましい。
【0016】
上記CPVCは、分子構造中に含まれる4連子以上の塩化ビニル単位(以下、「VC単位」という)が30.0モル%以下が好ましい。
【0017】
上記VC単位とは未塩素化PVC単位のことで、−CH2 −CHCl−であり、4連子以上のVC単位とは、VC単位が4個以上連続して結合している単位を意味する。
【0018】
CPVC中に存在するVC単位は脱HClの起点となり、且つ、このVC単位が連続していると、ジッパー反応と言われる連続した脱HCl反応が起こりやすくなってしまう。即ち、この4連子以上のVC単位の量が大きくなるほど、脱HClが起こり易く、熱安定性が低くなる。従って、4連子以上のVC単位が30.0モル%を超えると、脱HCl反応が起こり易くなり、熱安定性が大きく損なわれてしまうので30.0モル%以下が好ましく、より好ましくは28.0モル%以下である。
【0019】
又、上記CPVCは、216nmの波長におけるUV吸光度が0.8以下であるのが好ましい。
【0020】
UV吸光度は、紫外吸収スペクトルを測定し、CPVC中の異種構造である、−CH=CH−C(=O)−及び−CH=CH−CH=CH−が吸収をもつ、波長216nmのUV吸光度の値を読み取る方法で測定される。
【0021】
CPVCでは、UV吸光度の値により、塩素化反応時の分子鎖中の異種構造を定量化し、熱安定性の指標とすることができる。CPVCでは、二重結合した炭素の隣の炭素に付いた塩素原子は不安定であることから、そこを起点として、脱HClが起こる、つまり、UV吸光度の値が大きいほど、脱HClが起こり易く、熱安定性が低いことになる。UV吸光度の値が0.8を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなるため、その結果、熱安定性に劣るようになるので、UV吸光度は0.8以下が好ましい。
【0022】
更に、上記CPVCは、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間が50秒以上であるのが好ましい。
【0023】
CPVCでは、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間により、熱安定性の指標とすることができる。CPVCは高温にさらされると熱分解を起こすが、その際、HClガスが発生する。つまり、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間が短くなるほど、熱安定性が低いことになり、50秒未満であると、熱安定性が大きく損なわれてしまうので、50秒以上が好ましく、より好ましくは60秒以上であり、更に好ましくは70秒以上である。
【0024】
請求項6記載の塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩素含有量が70重量%以上、72重量%未満であり、分子構造中に含まれる−CCl2 −が17.0モル%以下、−CHCl−が46.0モル%以上、且つ、−CH2 −が37.0モル%以下であることを特徴とする。
【0025】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂(CPVC)は、塩素含有量が70重量%以上、72重量%未満である以外は請求項1記載のCPVCと同一である。塩素含有量が70重量%以上、72重量%未満であるため、特に高い耐熱性を必要とする用途に適しているが、70重量%未満であると、耐熱性の向上が不十分であり、72重量%以上であると成形加工性が著しく困難となる。
【0026】
一般的にCPVCはその塩素化度が高くなるにつれて、−CCl2 −が多くなり、塩素化状態の不均一性がより大きくなる傾向にあるため、熱安定性が大きく損なわれてしまうので、上記CPVCは分子構造中に含まれる−CCl2 −が17.0モル%以下、−CHCl−が46.0モル%以上、且つ、−CH2 −が37.0モル%以下であり、好ましくは−CCl2 −が16.0モル%以下、−CHCl−が53.5モル%以上、且つ、−CH2 −が30.5モル%以下である。
【0027】
上記CPVCは、分子構造中に含まれる4連子以上の塩化ビニル単位は18.0モル%を超えると、脱HCl反応が起こり易くなり、熱安定性が大きく損なわれてしまうので、18.0モル%以下が好ましい。
【0028】
一般的に塩素化度の高いCPVCを得るには、塩素化の際に、長時間触媒や紫外線にさらされたり、高温中に長時間置かれることになるため、CPVC分子鎖中の異種構造が多くなり、熱安定性が大きく損なわれてしまう傾向にあるが、UV吸光度の値が8.0を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、熱安定性に劣るようになるので、上記CPVCのUV吸光度は8.0以下が好ましい。
【0029】
更に、上記CPVCは、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間が100秒以上であるのが好ましい。
【0030】
一般にCPVCはその塩素化度が高くなるにつれて未塩素化PVC単位であるVC単位が減少するため、その脱HCl量は減少する傾向にある。しかし、同時に不均一な塩素化状態や異種構造の増加が起こり、熱安定性が低下するため、脱HCl量を少なく抑える必要がある。190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間が100秒未満であると、熱安定性が大きく低下してしまうので100秒以上が好ましく、より好ましくは120秒以上であり、更に好ましくは140秒以上である。
【0031】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂(CPVC)は、塩化ビニル系樹脂(PVC)が塩素化されてなる樹脂であり、塩素化は従来公知の任意の方法で行わればよいが、反応器内においてPVCを水性溶媒中で懸濁状態となした状態で、反応器内に液体塩素又は気体塩素を導入して塩素化されるのが好ましい。
【0032】
上記塩素化反応に用いる反応器の材質は、グラスライニングが施されたステンレス製反応器の他、チタン製反応器等、一般に使用されているものが適用できる。
【0033】
上記PVCを懸濁状態に調整する方法は、特に限定されず、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状のPVCを用いてもよいし、乾燥させたものを再度、水性媒体で懸濁化してもよく、あるいは、重合系中より、塩素化反応に好ましくない物質を除去した懸濁液を使用してもよいが、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状の樹脂を用いるのが好ましい。反応器内に仕込む水性媒体の量は、特に限定されないが、一般にPVCの100重量部に対して2〜10重量部が好ましい。
【0034】
塩素の導入は、工程上液体塩素を導入することが効率的である。反応途中の圧力調整の為、又、塩素化反応の進行に伴う塩素の補給については、液体塩素の他、気体塩素を適宜吹き込むこともできる。又、ボンベ塩素の5〜10重量%をパージした後の塩素を用いるのが好ましい。上記反応器内のゲージ圧力は、特に限定されないが、塩素圧力が高いほど塩素がPVC粒子の内部に浸透し易いため、0.3〜2MPaの範囲が好ましい。
【0035】
上記懸濁した状態でPVCを塩素化する方法は、特に限定されず、例えば、熱によりPVCの結合や塩素を励起させて塩素化を促進する方法(以下、熱塩素化という)、光を照射して光反応的に塩素化を促進する方法(以下、光塩素化という)等が挙げられる。熱エネルギーにより塩素化する際の加熱方法は、特に限定されず、例えば、反応器壁からの外部ジャケット方式による加熱が効果的である。又、紫外光線等の光エネルギーを使用する場合は、高温、高圧下の条件下での紫外線照射等の光エネルギー照射が可能な装置が必要である。光塩素化の場合の塩素化反応温度は、40〜80℃が好ましい。
【0036】
上記塩素化方法の中では、紫外線照射を行わない熱塩素方法が好ましく、熱のみ又は熱及び過酸化水素により塩化ビニル系樹脂の結合や塩素を励起させ塩素化反応を促進する方法が好ましい。
【0037】
紫外線照射による塩素化反応の場合、PVCが塩素化されるのに必要な光エネルギーの大きさは、PVCと光源との距離に大きく影響を受ける事になり、PVC粒子の表面と内部では、そのエネルギーの大きさに違いが生じるため、均一な塩素化を行うのがより難しくなる。これに対し、紫外線照射を行わず、熱のみ又は熱及び過酸化水素によりPVCの結合や塩素を励起させ塩素化する方法では、より均一な塩素化反応が可能となり、CPVCの熱安定性の向上が可能となる。
【0038】
加熱のみで塩素化する場合には、温度が低くなると塩素化速度が低下し、高くなりすぎると塩素化反応と並行して脱HCl反応が起こり、得られたCPVCが着色するので、70〜140℃が好ましく、より好ましくは100〜135℃である。
【0039】
過酸化水素の添加量は、少なくなると塩素化の速度を向上させる効果が無くなり、多くなると得られたCPVCの耐熱性が低下するので、PVCに対して1時間当たり5〜500ppmが好ましい。又、過酸化水素添加の場合の反応温度は、過酸化水素を添加することにより、塩素化速度が向上するので60〜140℃が好ましく、より好ましくは65〜110℃である。
【0040】
上記PVCの塩素化の際に、最終塩素含有量が65重量%以上、68重量%未満のCPVCを得る場合は、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点以降の塩素化を塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を0.010〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲にて、又、3重量%手前に達した時点以降の塩素化を塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を0.005〜0.010kg/PVC−Kg・5minの範囲にて行うと、塩素化状態の不均一性が少なく、熱安定性の優れたCPVCが得られるので好ましい。
【0041】
又、最終塩素含有量が70重量%以上、72重量%未満のCPVCを得る場合は、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点以降の塩素化を塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を0.015〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲にて、又、3重量%手前に達した時点以降の塩素化を塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲にて行うと、塩素化状態の不均一性が少なく、熱安定性の優れたCPVCが得られるので好ましい。
【0042】
請求項13記載の成形体は、請求項1〜12のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂を成形したことを特徴とする。
【0043】
上記成形体の製造方法は、従来公知の任意の製造方法が採用されてよく、例えば、押出成形法、射出成形法等が挙げられ、得られた成形体は、請求項1〜12のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂を成形した成形体であるので、熱安定性が優れている。
【0044】
上記成形体には必要に応じて、安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などの添加剤が添加されていてもよい。
【0045】
上記安定剤としては、特に限定されず、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤などが挙げられる。上記熱安定剤としては、特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;バリウム−カドミウム系安定剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記安定化助剤としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記加工助剤としては、特に限定されず、例えば重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0052】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0053】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
【0054】
又、上記成形体には成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加されていてもよいが、成形体の耐熱性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0055】
更に、上記成形体には施工性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーが添加されていてもよい。上記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR) 、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA) 、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO) 、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0056】
上記添加剤をCPVCに混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0057】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の構成は上記の通りであり、不安定構造が少なく、熱安定性が優れている。又、その成形体は熱安定性が優れているので、建築部材、管工機材、住宅資材等の用途で好適に用いられる。特に、耐熱性と熱安定性が要求される、大型の耐熱部材に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
塩素化塩化ビニル樹脂の調製
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50重量部を供給し、攪拌して塩化ビニル樹脂をイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、90℃に昇温した。
【0060】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を1時間当たり1重量部(320ppm/時間)添加しながら塩素化反応を行い、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が66.9重量%になるまで反応を行った。
【0061】
塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が62重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり0.1重量部(200ppm/時間)に減少し、平均塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、64重量%(3重量%手前)に達した時に0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppm/時間に減少し、平均塩素消費速度が0.008kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進め、塩素含有量が66.9重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0062】
塩素化塩化ビニル系樹脂成形体の作製
得られた塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名「ONZ−100F」)1.5重量部、衝撃改質剤(鐘淵化学社製、商品名「M511」)8重量部、滑剤(三井化学社製、商品名「Hiwax2203A」)1重量部及び滑剤(理研ビタミン社製、商品名「SL800」)0.5重量部を添加し、攪拌混合して、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を押出機(長田製作所社製、商品名「SLM−50」)に供給し、押出樹脂温度205℃、スクリュー回転数19.5rpmで押出成形を行い、外径20mm、厚さ3mmのパイプ状成形体を作製した。
【0063】
(実施例2)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50重量部を供給し、攪拌して塩化ビニル樹脂をイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、100℃に昇温した。
【0064】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を1時間当たり1重量部(320ppm/時間)添加しながら塩素化反応を行い、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が67.3重量%になるまで反応を行った。
【0065】
塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が62重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり0.1重量部(200ppm/時間)に減少し、平均塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、64重量%(3重量%手前)に達した時に0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppmに減少し、塩素消費速度が0.008kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進め、塩素含有量が67.3重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いて、実施例1で行ったと同様にしてパイプ状成形体を作製した。
【0066】
(実施例3)
塩素化塩化ビニル樹脂の調製
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50重量部を供給し、攪拌して塩化ビニル樹脂をイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、100℃に昇温した。
【0067】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を1時間当たり1重量部(320ppm/時間)添加しながら塩素化反応を行い、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が70.7重量%になるまで反応を行った。
【0068】
塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が66重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppmに減少し、平均塩素消費速度が0.016kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、68重量%(3重量%手前)に達した時に0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり200ppmに減少し、塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進め、塩素含有量が70.7重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0069】
塩素化塩化ビニル系樹脂成形体の作製
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名「ONZ−100F」)2.0重量部、衝撃改質剤(鐘淵化学社製、商品名「M511」)8重量部、滑剤(三井化学社製、商品名「Hiwax2203A」)1.5重量部及び滑剤(理研ビタミン社製、商品名「SL800」)1.0重量部を添加し、攪拌混合して、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を押出機(長田製作所社製、商品名「SLM−50」)に供し、押出樹脂温度205℃、スクリュー回転数19.5rpmで押出成形を行い、外径20mm、厚さ3mmのパイプ状成形体を作製した。
【0070】
(実施例4)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50重量部を供給し、攪拌して塩化ビニル樹脂をイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、110℃に昇温した。
【0071】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を1時間当たり1重量部(320ppm/時間)添加しながら塩素化反応を行い、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が70.9重量%になるまで反応を行った。
【0072】
塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が66重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり0.1重量部(150ppm/時間)に減少し、平均塩素消費速度が0.016kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、68重量%(3重量%手前)に達した時に0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり200pmに減少し、塩素消費速度が0.010kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進め、塩素含有量が70.9重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いて、実施例3で行ったと同様にしてパイプ状成形体を作製した。
【0073】
(比較例1)
内部に光照射設備を有する、内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50重量部を供給し、攪拌して塩化ビニル樹脂をイオン交換水中に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、60℃に昇温した。
【0074】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.05MPaになるように供給し、水銀灯を30kwhの強さで照射して塩素化反応を行い、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有率が67.3重量%になるまで反応を行った。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いて、実施例1で行ったと同様にしてパイプ状成形体を作製した。
【0075】
(実施例5)
塩素化塩化ビニル樹脂の調製
内部に光照射設備を有する、内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度800の塩化ビニル樹脂50重量部を供給し、攪拌して塩化ビニル樹脂をイオン交換水中に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、60℃に昇温した。
【0076】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.05MPaになるように供給し、水銀灯を30kwhの強さで照射して塩素化反応を行い、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有率が70.0重量%になるまで反応を行った。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いて、実施例3で行ったと同様にしてパイプ状成形体を作製した。
【0077】
上記実施例1〜5及び比較例1で得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量、UV吸光度及び脱HCl時間を測定し、分子構造解析を行って−CCl2 −、−CHCl−及び−CH2 −のモル比及び4連子以上のVC単位のモル比率を測定し、結果を表1に示した。又、得られたパイプ状成形体の熱安定性を測定し、結果を表1に示した。
【0078】
上記測定方法は以下の通りである。
(1)塩素含有量の測定
JIS K 7229に準拠して測定を行った。
【0079】
(2)分子構造解析
R.A.Komoroski,R.G.Parker,J.P.Shocker,Macromolecules,1985,18,1257−1265に記載のNMR測定方法に準拠して測定を行った。
【0080】
NMR測定条件は以下の通りである。
装置:FT−NMRJEOLJNM−AL−300
測定核: 13C(プロトン完全デカップリング)
パルス幅:90°
PD:2. 4sec
溶媒:o- ジクロロベンゼン:重水素化ベンゼン(C5D5)=3:1
試料濃度:約20%
温度:110℃
基準物質:ベンゼンの中央のシグナルを128ppmとした
積算回数:20000回
【0081】
(3)UV吸光度の測定(216nm)
216nmの波長におけるUV吸光度を下記測定条件で測定した。
装置:自記分光光度計日立製作所U−3500
溶媒:THF
濃度:試料20mg/THF25ml・・・800ppm(実施例1、2及び比較例1)
試料10mg/THF25ml・・・800ppm (実施例3〜5)
【0082】
(4)脱HCl時間
得られた塩素化塩化ビニル樹脂1gを試験管に入れ、オイルバスを使用して190℃で加熱、発生したHClガスを回収し100mlのイオン交換水に溶解させpHを測定した。pH値から塩素化塩化ビニル樹脂100万gあたり何gのHClが発生したかを算出し、この値が7000ppmに到達する時間を計測した。
【0083】
(5)熱安定性評価
得られたパイプ状成形体を2cm×3cmに切り出し、200℃のギアオーブンに所定枚数を入れ、10分ごとに取り出し、黒化時間を計測した。
【0084】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有量が65重量%以上、68重量%未満であり、分子構造中に含まれる−CCl2 −が6.2モル%以下、−CHCl−が58.0モル%以上、且つ、−CH2 −が35.8モル%以下であることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項2】
分子構造中に含まれる−CCl2 −が5.9モル%以下、−CHCl−が59.5モル%以上、且つ、−CH2 −が34.6モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項3】
分子構造中に含まれる4連子以上の塩化ビニル単位が30.0モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項4】
216nmの波長におけるUV吸光度が0.8以下である請求項1、2又は3記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項5】
190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間が50秒以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項6】
塩素含有量が70重量%以上、72重量%未満であり、分子構造中に含まれる−CCl2 −が17.0モル%以下、−CHCl−が46.0モル%以上、且つ、−CH2 −が37.0モル%以下であることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項7】
分子構造中に含まれる−CCl2 −が16.0モル%以下、−CHCl−が53.5モル%以上、且つ、−CH2 −が30.5モル%以下であることを特徴とする請求項6記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項8】
分子構造中に含まれる4連子以上の塩化ビニル単位が18.0モル%以下であることを特徴とする請求項7又は8記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項9】
216nmの波長におけるUV吸光度が8.0以下である請求項6,7又は8記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項10】
190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間が100秒以上である請求項6〜9のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項11】
塩化ビニル系樹脂を水性溶媒中で懸濁状態となした状態で、反応器内に液体塩素又は気体塩素を導入し塩素化することにより得られたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項12】
塩素化が、紫外線照射を行わず、熱のみ又は熱及び過酸化水素により塩化ビニル系樹脂の結合や塩素を励起させて行われたことを特徴とする請求項11記載の塩素化塩化ビニル系樹脂。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂を成形したことを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2006−328166(P2006−328166A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151933(P2005−151933)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000224949)徳山積水工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】