説明

塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤及びその製造方法

【課題】塩酸フェニレフリンと、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとを組み合わせて、口腔内で速やかに溶解することの可能なフィルム製剤を提供すること。
【解決手段】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤1は、樹脂フィルム3と、1又は2以上の遮蔽層5と、1又は2以上の薬物含有層7とを備えることを特徴とする。遮蔽層5は、樹脂フィルム3上に形成されており、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しないものである。また、薬物含有層7は、遮蔽層5上に形成されており、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有するものである。また、本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤1は、所望により、薬物含有層7上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層5を備えていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸フェニレフリンは、日本薬局方においてPhenylephrine Hydrochoride又はフェニレフリン塩酸塩とも称されており、交感神経末梢刺激による末梢血管の収縮によって昇圧作用を示し、交感神経興奮薬、昇圧薬、血管収縮薬、散瞳薬等として利用されている。
従来、塩酸フェニレフリンを含有する経口用製剤は、例えば、特許文献1〜4に開示されているように、打錠機により圧縮成型されるものがほとんどであった。特許文献1の実施例2においては、塩酸フェニレフリンを含有する組成物を顆粒状に造粒した上で、打錠機で圧縮成型して錠剤としている。また、特許文献2〜4においては、薬物として塩酸フェニレフリンが記載されているが、実施例等において塩酸フェニレフリンの投与を目的とした錠剤は実質的に検討されていない。
【0003】
近年、塩酸フェニレフリンを含有するフィルム製剤が提案されている。例えば、特許文献5には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びメチルセルロース(MC)を含水エタノールに溶解した混合液から溶媒を留去して形成された均質な一層からなるシート状の口腔内貼付剤が提案されており、その実施例17に塩酸フェニレフリンを使用した処方が具体的に記載されている。また、特許文献6には、可食性高分子物質としてプルランを含有する一層からなる急速溶解性口内消耗性フィルムが提案されており、実施例21B、21C、22D及び22Gには塩酸フェニレフリンを含有するフィルム製剤が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−95675公報
【特許文献2】特公平6−88900公報
【特許文献3】特開2003−290319公報
【特許文献4】特表2002−517430公報
【特許文献5】特開2006−316009号公報
【特許文献6】特表2002−525306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5の実施例17の処方にしたがって、フィルム製剤の作製を試みたところ次のような問題が生じた。すなわち、重合度の低いHPC、PVP及びMCを含水エタノールに溶解した塗工液(キャスティング液)を調製し、これをシリコーンで表面が剥離処理されたPETフィルムに塗布すると、塗工液がPETフィルム表面ではじかれて均質なフィルム製剤が得られず、また剥離処理されていないPETフィルムに塗工液を塗工し乾燥して得られたフィルム製剤は、PETフィルムを剥離し難いという問題が生じた。特許文献5に記載の方法では、剥離処理されたPETフィルム上に、重合度の高いHPC等を含む塗工液を塗工することで初めて均質なフィルム製剤を得ることができるが、フィルム製剤の速溶性が損なわれてしまう(後掲の比較例1参照)。
【0006】
また、特許文献6では、可食性高分子物質としてプルランを使用するが、プルランは水溶性であるため、エタノールや、エタノール−水系の溶媒を使用することができない。塩酸フェニレフリンは苦味があるため、塩酸フェニレフリンを含有する場合にはメントール等の水不溶性の矯味剤を多用する。そのため、プルランを使用する場合には、他の有効成分が水溶性のものに限定されてしまう。また、プルランを単独でPETフィルム上に塗工してフィルムを形成する際に過乾燥になると、簡単に塗膜がPETフィルムから浮き上がり部分剥離を生じやすくなる。そうなると、乾燥後に加工することが困難になる。このような不具合を解消するために、特許文献6では、フレーバー付与剤及びオイル類(例えば、涼感剤、メントール、オリーブ油)を添加する際に、精製水に界面活性剤(polysorbate 80 NF、Atomos 300等)や、キサンタンガム、ローカストビーンガム等のガム物質を加えてフィルムに柔らかさと粘着性を付与しプルランの乾燥を制御しているが、得られたフィルム製剤は柔らか過ぎて剤形を保持することが難しい上に、包装体に付着しやすく実用に耐え得るものとは言い難い(後掲の比較例2参照)。
【0007】
本発明者は、上述の問題点に鑑み、エタノールと水の両方の溶媒を使用でき、幅広い添加物の配合が可能なHPC及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、別名:ヒプロメロース)を用いて塩酸フェニレフリンを含有する速溶性のフィルム製剤を開発すべく、樹脂フィルム上に、塩酸フェニレフリンと、HPC又はHPMCとを含有する塗工液を塗工し乾燥してフィルム製剤を作製したところ、上記した特許文献5と同様の問題が生じた。
このように、塩酸フェニレフリンと、HPC及び/又はHPMCとを組み合わせた速溶性のフィルム製剤が未だ存在しないのが実情である。
【0008】
したがって、本発明は、塩酸フェニレフリンと、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとを組み合わせて、口腔内で速やかに溶解することの可能なフィルム製剤を提供することにある。本発明はまた、樹脂フィルムを容易に剥離でき、簡便に製造することの可能な塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、塩酸フェニレフリンと、HPC及び/又はHPMCとを含む塗工液を樹脂フィルムに塗工し乾燥して得られるフィルム製剤において、樹脂フィルムを剥離し難くなる原因が塩酸フェニレフリンにあるとの知見を得た(後掲の実験1及び2参照)。本発明者は、更に詳細に研究を進めたところ、塩酸フェニレフリンとHPC及び/又はHPMCとを含有する薬物含有層と、樹脂フィルムとの間に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない遮蔽層を設けることで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(i)及び(ii)に記載の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤を提供するものである。
(i)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と、該遮蔽層上に形成された、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層と、所望により、該薬物含有層上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層とを備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤。
(ii)樹脂フィルムと、該樹脂フィルム上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と、該遮蔽層上に形成された、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層と、所望により、該薬物含有層上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層とを備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤。この場合、樹脂フィルムは、少なくとも遮蔽層の形成面が剥離処理されていなくてもよい。
【0011】
また、本発明は、下記(iii)及び(iv)に記載の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法を提供するものである。
(iii)樹脂フィルム上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層を形成する第1の遮蔽層形成工程と、上記遮蔽層上に、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも一種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層を形成する薬物含有層形成工程と、所望により、上記薬物含有層上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層を形成する第2の遮蔽層形成工程と、上記樹脂フィルムを必要により剥離する剥離工程とを備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法。
(iv)樹脂フィルム上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層を形成する遮蔽層形成工程と、上記遮蔽層上に、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層を形成する薬物含有層形成工程と、上記遮蔽層及び上記薬物含有層が形成された2つの樹脂フィルムを、上記薬物含有層が対向するように重ね合わせて圧着する圧着工程と、上記2つの樹脂フィルムのうちの少なくとも一方を剥離する剥離工程とを備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤は、口腔内で速やかに溶解することが可能であるため、交感神経興奮薬、昇圧薬、血管収縮薬、散瞳薬等として有用である。また、本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤が樹脂フィルムを有する場合、樹脂フィルムと、薬物含有層との間に遮蔽層を備えるため、樹脂フィルムを容易に剥離することが可能である。更に、本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤は、薬物含有層にエタノール系溶媒(エタノールと水との混合液を含む)と水の両方に溶解可能なヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するため、幅広く添加物を選択することが可能となり、特にメントール等の水不溶性の添加剤を含有させることができる。
また、本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法によれば、当該フィルム製剤を破損することなく、樹脂フィルムを容易に剥離することが可能であるため、当該フィルム製剤を歩留まりよく、簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤)
本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤(以下、単に「フィルム製剤」ともいう)は、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と、該遮蔽層上に形成された、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層と、所望により、該薬物含有層上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層とを備えることを特徴とする。
また、本発明のフィルム製剤は、一方の遮蔽層側に樹脂フィルムを備えていてもよく、その場合、樹脂フィルムは少なくとも遮蔽層の形成面が剥離処理されていなくてもよい。
【0014】
可食性高分子物質としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・カリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びアルギン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0015】
また、可食性高分子物質としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが下記(a)、(b)及び(c)から選ばれる少なくとも1種であり、ヒドロキシプロピルセルロースが下記(d)、(e)及び(f)から選ばれる少なくとも1種である場合、薬物含有層の少なくとも一方の面に形成された遮蔽層の厚みt1(μm)が下記式(1)に示す関係を満たすことが好ましい。
【0016】
(a)20℃における2質量%水溶液の動粘度が2.5〜3.5mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(b)20℃における2質量%水溶液の動粘度が5.2〜7.0mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(c)20℃における2質量%水溶液の動粘度が12.5〜17.5mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(d)20℃における2質量%水溶液の動粘度が2.0〜2.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース
(e)20℃における2質量%水溶液の動粘度が3.0〜5.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース
【0017】
1≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)]×W÷A (1)
【0018】
(式中、Aは当該製剤の面積(cm2)を、E1は遮蔽層の全質量に対する上記(a)の含有量(質量%)を、R1は遮蔽層の全質量に対する上記(b)の含有量(質量%)を、S1は遮蔽層の全質量に対する上記(c)の含有量(質量%)を、E2は遮蔽層の全質量に対する上記(d)の含有量(質量%)を、R2は遮蔽層の全質量に対する上記(e)の含有量(質量%)を、Wは薬物含有層中の塩酸フェニレフリンの含有量(mg)を、それぞれ示す。)
【0019】
また、薬物含有層の少なくとも一方の面に形成された遮蔽層が糖類及び/又は賦形剤を更に含む場合、該遮蔽層の厚みt2(μm)は下記式(2)に示す関係を満たすことが好ましい。
【0020】
2≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)+0.288×M−0.160×T]×W÷A (2)
【0021】
(式中、Mは遮蔽層の全質量に対する糖類の含有量(質量%)を、Tは遮蔽層の全質量に対する賦形剤の含有量(質量%)を、それぞれ示し、A、E1、E2、R1、R2、S1及びWは、上記と同義である。)
【0022】
また、本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤は、口腔内で速やかに溶解することが可能であるが、例えば、口腔内で2分以内に溶解又は崩壊することが好ましく、また日本薬局方一般試験法崩壊試験法による崩壊時間が5分以内とすることが好ましい。さらに、遮蔽層の一方面に設けられている樹脂フィルムを、10cm/minの速さで剥離したときの剥離強度を80gf/25mm巾(SI単位換算値:0.78N/25mm巾)以下とするのが好ましい。
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0024】
図1は、本発明のフィルム製剤の一実施形態を示す断面図である。図2は、本発明のフィルム製剤の他の実施形態を示す断面図である。
【0025】
図1(a)に示すフィルム製剤1aは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された遮蔽層5と、該遮蔽層5上に形成された薬物含有層7とを備えるものであり、遮蔽層5及び薬物含有層7はそれぞれ一つの層で構成されている。また、図2(a)に示すように、樹脂フィルムを有していなくてもよく、遮蔽層5と、薬物含有層7とから構成される2層型のフィルム製剤2aであってもよい。
図1(b)に示すフィルム製剤1bは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された2つの遮蔽層5(第1及び第2の遮蔽層)と、該遮蔽層5上に形成された薬物含有層7とを備えるものであり、遮蔽層5が複数層で構成され、かつ遮蔽層5が薬物含有層の片面に配置された構造を有している。また、図2(b)に示すように、樹脂フィルムを有しない、2つの遮蔽層5と、1つの薬物含有層7とから構成される3層型のフィルム製剤2bであってもよい。
図1(c)に示すフィルム製剤1cは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された3つの遮蔽層5(第1、第2及び第3の遮蔽層)と、該遮蔽層5上に形成された薬物含有層7とを備えるものであり、遮蔽層5が複数層で構成され、かつ遮蔽層5が薬物含有層の片面に配置された構造を有している。また、図2(c)に示すように、樹脂フィルムを有しない、3つの遮蔽層5と、1つの薬物含有層7とから構成される4層型のフィルム製剤2cであってもよい。
【0026】
図1(d)に示すフィルム製剤1dは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された遮蔽層5と、該遮蔽層5上に形成された2つの薬物含有層7と、薬物含有層7上に形成された遮蔽層5とを備えるものであり、薬物含有層7が複数層で構成され、かつ薬物含有層7の両側に1つの遮蔽層5がそれぞれ配置された構造を有している。また、図2(d)に示すように、樹脂フィルムを有しない、1つの遮蔽層5と、2つの薬物含有層7と、1つの遮蔽層5が順次積層された4層型のフィルム製剤2dであってもよい。
図1(e)に示すフィルム製剤1eは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された2つの遮蔽層5と、該遮蔽層5上に形成された薬物含有層7と、薬物含有層7上に形成された遮蔽層5とを備えるものであり、薬物含有層7の両側に遮蔽層5が配置され、かつ樹脂フィルム3側に配置された遮蔽層5が複数層により構成されている。また、図2(e)に示すように、樹脂フィルムを有しない、2つの遮蔽層5と、1つの薬物含有層7と、1つの遮蔽層5が順次積層された4層型のフィルム製剤2eであってもよい。
【0027】
図1(f)に示すフィルム製剤1fは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された2つの遮蔽層5と、該遮蔽層5上に形成された2つの薬物含有層7と、薬物含有層7上に形成された2つの遮蔽層5とを備えるものであり、遮蔽層5及び薬物含有層7がそれぞれ複数層で構成され、かつ薬物含有層7の両側に遮蔽層5が配置された構造を有している。また、図2(f)に示すように、樹脂フィルムを有しない、2つの遮蔽層5と、2つの薬物含有層7と、2つの遮蔽層5が順次積層された6層型のフィルム製剤2fであってもよい。
図1(h)に示すフィルム製剤1hは、樹脂フィルム3と、該樹脂フィルム3上に形成された3つの遮蔽層5と、該遮蔽層5上に形成された2つの薬物含有層7と、薬物含有層7上に形成された3つの遮蔽層5とを備えるものであり、遮蔽層5及び薬物含有層7が複数層で構成され、かつ薬物含有層7の両側に複数層の遮蔽層5が配置された構造を有している。また、図2(h)に示すように、樹脂フィルムを有しない、3つの遮蔽層5と、2つの薬物含有層7と、3つの遮蔽層5が順次積層された8層型のフィルム製剤2hであってもよい。
このように、本発明のフィルム製剤には、遮蔽層5及び薬物含有層7から構成されるものだけでなく、その一方の面に樹脂フィルム3を備えるものも包含される。樹脂フィルム3を備えるフィルム製剤1の場合、遮蔽層5及び薬物含有層7には、形状を画定する切断線が設けられていてもよい。これにより、患者が、フィルム製剤を切断線に沿って分離し、樹脂フィルム3を剥離することで、可食性のフィルム製剤として服用することが可能になる。
【0028】
樹脂フィルム3は、支持体として機能し、適度な強度を有するものが選択される。樹脂フィルム3としては、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート等が例示される。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエステル等が例示され、ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が例示される。セルロース系樹脂としては、アセテート、トリアセテート等が例示され、ビニル系樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等が例示される。中でも、ポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、樹脂フィルム3の大きさは、適宜選択することが可能である。
【0029】
樹脂フィルム3は、樹脂フィルムの両面が剥離処理されていないものだけでなく、樹脂フィルムの遮蔽層の形成面が剥離処理されておらず、遮蔽層形成面の反対面が剥離処理されているものも使用することができる。本明細書において、「剥離処理」とは、樹脂フィルムの表面にシリコーン系やフッ素系の剥離剤をコーティングして、樹脂フィルムの表面を剥離剤で被覆する処理をいう。なお、「剥離剤」は、樹脂フィルムの表面を型枠と捉えて、「離型剤」とも称されている。また、本明細書において、「非剥離処理面」とは、剥離処理をしていない樹脂フィルムの表面をいう。なお、シリコーン樹脂やフッ素樹脂は、剥離処理をしたものと同じ作用を有するので、「剥離処理をしていない樹脂フィルム」に包含されない。
【0030】
遮蔽層5は、少なくとも可食性高分子物質を含有し、塩酸フェニレフリンを含有しないものである。
可食性高分子物質としては、フィルム形成能を有し、かつ可食性であれば特に限定されないが、エタノール及び/又は水に溶解するものが好適に使用される。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、プルラン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(CMC−Na)、カルボキシメチルセルロース・カルシウム(CMC−Ca)、カルボキシメチルセルロース・カリウム(CMC−K)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギン酸ナトリウム(アルギン酸Na)が例示され、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、HPMC、HPC、CMC−Na、PVP、アルギン酸Na、プルランがより好ましく、HPMC、HPCが特に好ましい。
【0031】
好適に使用されるHPMCとしては、メトキシル基の含有量が、例えば、19〜30質量%程度であり、ヒドロキシプロポキシル基の含有量が、例えば、4〜32質量%程度のものが例示される。具体的には、
日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース1828(メトキシル基含有量16.5〜20質量%、ヒドロキシプロポキシル基含有量23〜32質量%)、
日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(メトキシル基含有量19〜24質量%、ヒドロキシプロポキシル基含有量4〜12質量%)、
日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906(メトキシル基含有量27〜30質量%、ヒドロキシプロポキシル基含有量4〜7.5質量%)、
日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910[メトキシル基含量28〜30質量%(メトキシル基の平均置換度約1.1〜2.0)、ヒドロキシプロポキシル基含量7〜12質量%(ヒドロキシプロポキシル基平均置換度約0.1〜0.34)]等
が例示され、中でも、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が好適である。
【0032】
また、HPMCは、2質量%水溶液の動粘度が20℃において1〜100,000mPa・sである、各種規格のHPMCを商業的に入手できるが、好適に使用されるHPMCとしては動粘度が1〜60mPa・s程度のものであり、より好ましくは1〜20mPa・s程度のものある。このような低粘度のHPMCを用いることで、フィルム製剤の速溶性をより確実に実現することができる。ここで、本明細書において、「動粘度」とは、日本薬局方一般試験法粘度測定法第1法(20℃、2質量%水溶液)における動粘度をいう。
このような低粘度のHPMCは、商業的に入手することが可能であり、例えば、下記のものが例示される。
HPMC2910 TC−5E、TC−5EW(商品名、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:2.5〜3.5mPa・s,平均分子量:16,000)、
HPMC2910 TC−5MW(商品名、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:3.6〜5.1mPa・s,平均分子量:22,000)、
HPMC2910 TC−5R、TC−RW、TC−5RG(商品名、信越化学工業製,20℃における2質量%水溶液の動粘度:5.2〜7.0mPa・s、平均分子量:35,600)、
HPMC2910 TC−5S(商品名、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:12.5〜17.5mPa・s,平均分子量:60,000)、
HPMC2208 SB−4(商品名、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:3.2〜4.8mPa・s)、HPMC2906 65SH−50(商品名、信越化学工業製,20℃における動粘度:40〜60mPa・s)、
HPMC2910 60SH−50(商品名、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:40〜60mPa・s)
中でも、下記(a)〜(c)が好適である。
(a)20℃における2質量%水溶液の動粘度が2.5〜3.5mPa・sであるもの
(b)20℃における2質量%水溶液の動粘度が5.2〜7.0mPa・sであるもの
(c)20℃における2質量%水溶液の動粘度が12.5〜17.5mPa・sであるもの
【0033】
HPCは、セルロースのヒドロキシプロピルエーテルであり、ヒドロキシプロポキシル基を53.4〜77.5質量%含有する。HPCは、一般の高分子物質と同様に、その分子の重合度によって粘度が変わる。HPCの2質量%水溶液の動粘度が、20℃において2〜4000mPa・sである、各種規格のHPCを商業的に入手することが可能であり、例えば、下記のものが例示される。
HPC−SSL(商品名、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:2.0〜2.9mPa・s、平均分子量:約30000)、
HPC−SL(商品名、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:3.0〜5.9mPa・s、平均分子量:約70000〜100000)、
HPC−L(商品名、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度:6.0〜10.0mPa・s、平均分子量:約100000〜160000)
中でも、好適に使用されるHPCは、動粘度が2〜10mPa・s程度のものであり、より好ましくは2〜6mPa・s程度のものであり、具体的には、下記のものが挙げられる。
(d)20℃における2質量%水溶液の動粘度が2.0〜2.9mPa・sであるもの
(e)20℃における2質量%水溶液の動粘度が3.0〜5.9mPa・sであるもの
である。このような低粘度のHPCを用いることによって、フィルム製剤の速溶性をより確実に実現することができる。また、樹脂フィルムをより確実に容易に剥離する観点から、樹脂フィルムの直上に形成される遮蔽層、すなわち樹脂フィルムに隣接する遮蔽層は、HPC以外の可食性高分子物質により構成することが望ましい。
【0034】
遮蔽層5は可食性高分子物質のみで構成されていてもよく、また遮蔽層5が所望により後述の添加剤を含有する場合、可食性高分子物質の含有量は、遮蔽層の全質量基準で、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは55〜95質量%、更に好ましくは59〜90質量%である。
【0035】
薬物含有層7は、HPMC及びHPCから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する。HPMC及びHPCとしては、遮蔽層5において例示したHPMC及びHPCと同様のものを好適に使用できる。中でも、HPMCとしては上記した(a)〜(c)が特に好適であり、またHPCとしては上記した(d)及び(e)が特に好適である。
【0036】
薬物含有層7中における塩酸フェニレフリンの含有量は、樹脂フィルムを剥離する際の剥離強度に大きな影響を与える。かかる観点から、塩酸フェニレフリンの含有量は、薬物含有層の全質量基準で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下とすることが望ましい。なお、塩酸フェニレフリンの含有量が少なすぎると、薬理効果を十分得難くなるため、かかる含有量の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1質量%、更に好ましくは5質量%とすることが望ましい。
HPMC及びHPCの合計含有量は、薬物含有層の全質量基準で、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは25〜75質量%、更に好ましくは40〜60質量%である。
また、薬物含有層7には、塩酸フェニレフリン以外の薬物、例えば抗ヒスタミン剤、副交感神経遮断剤等を含有することも可能であり、抗ヒスタミン剤としては、例えばd-マレイン酸クロルフェニラミン等が、副交感神経遮断剤としては、例えばベラドンナ総アルカロイド等が例示される。
【0037】
遮蔽層5及び薬物含有層7には、所望により、可食性の各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、崩壊剤、賦形剤、難水溶性高分子物質、着色剤、可塑剤、抗酸化剤、矯味剤、精油、香料等が例示される。これら添加剤を適宜選択することで、例えば、遮蔽層5に支持層、コーティング層、保護層、矯味剤層等としての機能を付与し、多機能とすることができる。
崩壊剤としては、例えば、糖類、カルメロース及びその塩、セルロース、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ゼラチン、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸及びその塩、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、マクロゴール等が例示され、中でも、糖類、マクロゴールが好適である。
なお、糖類としては、例えば、蔗糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖(マルトース)、乳糖、白糖、糖アルコール(マルチトール(還元麦芽糖水アメ)、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール等)、トレハロース、還元パラチノースが例示され、中でも、糖アルコールが好適である。
【0038】
賦形剤としては、例えば、酸化チタン、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、無水硫酸ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、含水無晶形酸化ケイ素、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機系賦形剤、アメ粉、デンプン、果糖、カラメル、カンテン、キシリトール、グリセリン、パラフィン、セルロース、ソルビトール、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マクロゴール(商品名:マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000)、マルチトール、マルトース等の有機系賦形剤が例示され、中でも、無機系賦形剤、マクロゴールが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。
難水溶性高分子物質としては、例えば、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP、別名:ヒプロメロースフタル酸エステル)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシビニルポリマー等が例示される。
【0039】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、カラメル、黒酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄、タール色素、アルミニウムレーキ色素、銅クロロフィリンナトリウム等が例示され、中でも、酸化チタン、アルミニウムレーキ色素が好適である。
可塑剤としては、例えば、グリセリン、ゴマ油、ソルビトール、ヒマシ油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート80(商品名:NIKKOL TO−10MV)、マクロゴール400(商品名)、マクロゴール600(商品名)、マクロゴール1500(商品名)、マクロゴール4000(商品名)、マクロゴール6000(商品名)等が例示され、中でも、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール400が好適である。
【0040】
抗酸化剤としては、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、天然ビタミンE、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール等が例示され、中でも、アルコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールが好適に用いられる。
【0041】
なお、可食性の崩壊剤及び賦形剤は、一製剤あたり、合わせて好ましくは0〜49質量%の範囲で添加することができる。可食性の難水溶性高分子物質は、一製剤あたり、好ましくは0〜5質量%の範囲で添加することができる。可食性の可塑剤は、一製剤あたり、好ましくは0〜10質量%の範囲で添加することができる。可食性の抗酸化剤は、一製剤あたり、好ましくは0〜10質量%の範囲で添加することができる。
【0042】
矯味剤とは、酸味剤、甘味剤及び清涼剤からなる群より選ばれる1種類以上のことである。酸味剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種類以上が使用できる。甘味剤としては、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン及びその塩からなる群より選ばれる1種類以上が使用できる。清涼剤は、ウイキョウ油、カンフル、ハッカ油、ハッカ水、ミント、ペパーミント及びメントールからなる群より選ばれる1種類以上が使用できる。矯味剤の一製剤当たりの添加量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。
精油としては、上記清涼剤を除いたアニス油、ユーカリ油、オレンジ油、セージ油、タイム油、レモン油等を例示することができ、添加量は適宜選択することができる。
香料としては、メントール、バニラ、オレンジ、ストロベリー、ラズベリー、チョコレート、グレープフルーツ、クランベリー、ウメ、コクトウ、ハーブ、コーヒー、紅茶、シナモン、ハチミツレモン等のフレーバーが例示され、中でも、メントール、オレンジ、グレープフルーツが好適である。
【0043】
本発明者は、塩酸フェニレフリンが、樹脂フィルムの剥離を阻害する要因であることを明らかにすべく、次の実験を行った。なお、本実験で使用した材料は以下のとおりである。
【0044】
・HPMC(a):HPMC2910(商品名;TC−5E、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度;2.5〜3.5mPa・s、平均分子量;16000)
・HPMC(b):HPMC2910(商品名;TC−5R、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度;5.2〜7.0mPa・s、平均分子量;35600)
・HPMC(c):HPMC2910(商品名;TC−5S、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度;12.5〜17.5mPa・s、平均分子量;60000)
・HPC(d):商品名:HPC SSL、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度2.0〜2.9mPa・s、平均分子量:約30000
・香料:クーリングフレーバー298306、シムライズ株式会社製
【0045】
[実験1]
遮蔽層/薬物含有層/薬物含有層/遮蔽層からなる4層型のフィルム製剤A、B、C及びDを下記の如く作製した。
1−1.フィルム製剤Aの作製
(塩酸フェニレフリン、d-マレイン酸クロルフェニラミン及びベラドンナ総アルカロイドを有効成分としたフィルム製剤)
水24gに塩酸フェニレフリン5.25g、d-マレイン酸クロルフェニラミン2g、ベラドンナ総アルカロイド0.2g、エリスリトール1g、サッカリンナトリウム1g及び亜硫酸水素ナトリウム0.2gを溶解し、この液に無水エタノール16gを加えた。そして、この液にHPC(d) 10.6g及び香料0.03gを加え薬物含有層調製液を得た。
水16.8gに粉末還元麦芽糖水アメ2.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.01gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール11.2gに酸化チタン1.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)6gを加え遮蔽層調製液を得た。
【0046】
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ18μmの可食性の遮蔽層を形成した。次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して、PETフィルム上に遮蔽層及び薬物含有層を備える中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ、圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、2つの薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
そして、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離し、試験用のフィルム製剤Aを得た。なお、一方のPETフィルムのみを剥がしても、他方のPETフィルムが製剤層をサポートしている状態なので強制的に剥がすことができた。
【0047】
1−2.フィルム製剤Bの作製
(製剤Aから有効成分として塩酸フェニレフリンを除いた製剤)
水24gにd-マレイン酸クロルフェニラミン2g、ベラドンナ総アルカロイド0.2g、エリスリトール1g、サッカリンナトリウム1g及び亜硫酸水素ナトリウム0.2gを溶解し、この液に無水エタノール16gを加えた。そして、この液にHPC(d)10.6g及び香料0.03gを加え薬物含有層調製液を得た。
水16.8gに粉末還元麦芽糖水アメ2.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.01gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール11.2gに酸化チタン1.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)6gを加え遮蔽層調製液を得た。
上記で得られた各層の調製液を使用し、薬物層調製液を製剤1枚当たりの面積(2.72cm2)における乾燥後の質量が7.52mgになるように、遮蔽層上に塗工したこと以外は、製剤Aと同様の方法によりフィルム製剤Bを得た。
【0048】
1−3.フィルム製剤Cの作製
(製剤Aから有効成分としてd-マレイン酸クロルフェニラミンを除いたフィルム製剤)
水24gに塩酸フェニレフリン5.25g、ベラドンナ総アルカロイド0.2g、エリスリトール1g、サッカリンナトリウム1g及び亜硫酸水素ナトリウム0.2gを溶解し、この液に無水エタノール16gを加えた。そして、この液にHPC(d)10.6g及び香料0.03gを加え薬物含有層調製液を得た。
水16.8gに粉末還元麦芽糖水アメ2.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.01gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール11.2gに酸化チタン1.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)6gを加え遮蔽層調製液を得た。
上記で得られた各層の調製液を使用し、薬物含有層調製液を製剤1枚当たりの面積(2.72cm2)における乾燥後の質量が9.14mgになるように、遮蔽層上に塗工したこと以外は、フィルム製剤Aと同様の方法によりフィルム製剤Cを得た。
【0049】
1−4.フィルム製剤Dの作製
(製剤Aから有効成分としての塩酸フェニレフリン、d-マレイン酸クロルフェニラミン及びベラドンナ総アルカロイドのすべてを除いたプラセボフィルム製剤)
水24gにエリスリトール1g、サッカリンナトリウム1g及び亜硫酸水素ナトリウム0.2gを溶解し、この液に無水エタノール16gを加えた。そして、この液にHPC(d)10.6g及び香料0.03gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水16.8gに粉末還元麦芽糖水アメ2.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.01gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール11.2gに酸化チタン1.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)6gを加えて遮蔽層調製液を得た。
上記で得られた各層の調製液を使用し、薬物含有層調製液を製剤1枚当たりの面積(2.72cm2)における乾燥後の質量が6.42mgになるように、遮蔽層上に塗工したこと以外は、フィルム製剤Aと同様の方法によりフィルム製剤Dを得た。
なお、得られたフィルム製剤A、B、C及びDのフィルム製剤1枚(2.72cm2)当たりの成分量を表1にまとめて示す。なお、製剤A及びCの1cm2当たりの塩酸フェニレフリン含有量は、5.25mg÷2.72cm2≒1.93mg/cm2である。
本明細書において、遮蔽層の厚みとは、薬物含有層の一方面に形成された遮蔽層の厚みをいい、該遮蔽層が2以上の積層構造を有する場合には、該積層構造を構成する各積層体の厚みの合計をいう。
【0050】
【表1】

【0051】
製剤A及びCは、吸着パットでPETフィルムから製剤のみを吸い取ることはできなかった。爪で製剤の一部を引掻いて手でPETフィルムから剥がすことができたが、フィルム製剤を爪で引掻く際に傷付けることがあった。他方、製剤B及びDは、吸着パットでPETフィルムから吸い取ることができ、手でPETフィルムから製剤のみを容易に剥離することができた。
製剤A及びCは共に塩酸フェニレフリンを含有するのに対し、製剤B及びDは共に塩酸フェニレフリンを含有していない。このことから、製剤をPETフィルムから剥がし難くする原因は塩酸フェニレフリンにあることが明らかとなった。
【0052】
次に、フィルム製剤の単位面積当たりの塩酸フェニレフリン含有量を変えると剥離特性がどのように変化するのか検討した。
【0053】
[実験2]
(試料の作製)
実験1のダイロールでカッティングする前の製剤A及び製剤Dを用いると共に、新たに塩酸フェニレフリンの含有量を2mgに変えた製剤Eを作製した。製剤Aは、1枚(14×20mm、R=3mm、面積=2.72mm2)中に、塩酸フェニレフリンを5.25mg含む。また、製剤Dは有効成分を含まないプラセボフィルム製剤である。製剤Eは、以下のようにして作製した。
【0054】
製剤E作製
(塩酸フェニレフリン2mg含有の製剤)
製剤1枚当たりの塩酸フェニレフリンの含有量を製剤Aの5.25mgから2mgになるように変更し、製剤1枚当たりの面積(2.72cm2)における乾燥後の質量が8.52mgになるように、遮蔽層上に塗工したこと以外は、製剤Aと同様の方法により製剤Eを作製した。
得られたフィルム製剤A、E及びDの製剤1枚当たりの成分量を表2にまとめて示す。
【0055】
【表2】

【0056】
製剤Aの1cm2当たりの塩酸フェニレフリン含量:5.25mg÷2.72cm2≒1.93mg/cm2
製剤Eの1cm2当たりの塩酸フェニレフリン含量:2.00mg÷2.72cm2≒0.74mg/cm2
【0057】
(剥離強度の測定)
以下に説明する装置を用いて、PETフィルムからフィルム製剤を剥離するに必要な力(剥離強度)を測定した。
2−1.測定装置
剥離強度の測定装置として、図7に示したレオメータ(株式会社レオテック製、RT−3020D−CW型)を使用した。測定装置本体40側面の上方に固定されたロードセル41の下端には、紐42を介して、試験片であるフィルム製剤の端部を挟むためのクリップ43が固定されている。測定装置本体40側面の下方には、移動架台44が所望の一定速度で上下動可能に設けられている。移動架台44上には試験片のPETフィルム端部を固定するためのアダプター45が取付けられている。
【0058】
2−2.測定方法
PETフィルム上に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層及び遮蔽層が順次積層された4層型のフィルム製剤A、E及びDをそれぞれPETフィルムごと25×70mmに切断して試験片を得た。図8に示すように、25×70mmに切断した試験片の下端20mmをPETフィルムと製剤とに手で分離し、剥離面を布粘着テープで被覆した。クリップ43に試験片の製剤側端部を固定し、次に移動架台44を上方向へ移動させてアダプター45に、試験片のPETフィルム側端部を固定した。次いで、移動架台44を10cm/minの速度で下降させた。これにより、1分間に10cmの速さで連続して試験片の製剤をPETフィルムから引き剥がす状態になる。試験片が剥離に至るまでのロードセル41の荷重を付属するレコーダーで記録し、その最大引張強力を求めた。同様の操作を3回繰り返し、最大引張強力の平均値を剥離強度とした。測定結果を表3に示す。
なお、本明細書において、剥離強度とは、上記方法により測定される引張強力をいう。
【0059】
【表3】

【0060】
剥離強度の大きさは、製剤A>製剤E>製剤Dとなった。また、塩酸フェニレフリン含有量をX軸に、剥離強度をY軸にプロットしたグラフを図3に示す。その結果、製剤をPETフィルムから引き剥がす剥離強度の大きさは、製剤の単位面積当たりの塩酸フェニレフリンの含有量と比例関係にあることがわかった。
【0061】
次に、遮蔽層をHPMCのみで構成した場合において、PETフィルムを容易に剥離するために必要な遮蔽層の厚さは、HPMCの重合度の違いによってどのように変化するかを検討した。
【0062】
[実験3]
(試料の作製)
遮蔽層/薬物含有層/薬物含有層/遮蔽層を備える4層型のフィルム製剤F−1、F−2、F−3、G−1、G−2、G−3、G−4、H−1、H−2及びH−3を下記の如く作製した。
【0063】
3−1.フィルム製剤F−1の作製
(遮蔽層がHPMC(a)のみからなる4層型フィルム製剤)
<塗工液の調製>
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水60gに無水エタノール240gを加えた。そして、この液にHPMC(a)150gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ27μmの可食性の遮蔽層を形成した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して、PETフィルム上に遮蔽層及び薬物含有層を備える中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ、圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、2つの薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
そして、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離し、25mm×70mmに切断し、フィルム製剤F−1を得た。
【0064】
3−2.フィルム製剤F−2の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを36μmとしたこと以外は、フィルム製剤F−1と同様の方法によりフィルム製剤F−2を得た。
3−3.フィルム製剤F−3の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを44μmとしたこと以外は、フィルム製剤F−1と同様の方法によりフィルム製剤F−3を得た。
【0065】
3−4.フィルム製剤G−1の作製
(遮蔽層がHPMC(b)のみからなる4層型フィルム製剤)
フィルム製剤G−1の薬物含有層調製液は、上記した製剤F群の薬物含有層調製液と全く同一である。すなわち、水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて、薬物含有層調製液を得た。
一方、フィルム製剤G−1の遮蔽層調製液は、上記した製剤F群の遮蔽層調製液と異なる。すなわち、水90gに無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPMC(b)150gを加えて遮蔽層調製液を得た。
この遮蔽層調製液を用いて塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを26μmとしたこと以外は、フィルム製剤F−1と同様の方法によりフィルム製剤G−1を作製した。
【0066】
3−5.製剤G−2の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを35μmとしたこと以外は、フィルム製剤G−1と同様の方法によりフィルム製剤G−2を作製した。
3−6.フィルム製剤G−3の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを38μmとしたこと以外は、フィルム製剤G−1と同様の方法によりフィルム製剤G−3を作製した。
3−7.フィルム製剤G−4の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを54μmとしたこと以外は、フィルム製剤G−1と同様の方法によりフィルム製剤G−4を作製した。
【0067】
3−8.フィルム製剤H−1の作製
(遮蔽層がHPMC(c)のみからなる4層型フィルム製剤)
フィルム製剤H−1の薬物含有層調製液は、上記したフィルム製剤F群及びフィルム製剤G群の薬物含有層調製液と全く同一である。すなわち、水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
一方、フィルム製剤H−1の遮蔽層調製液は、上記したフィルム製剤F群及びフィルム製剤G群の遮蔽層調製液と異なる。すなわち、水120gに無水エタノール480gを加えた。そして、この液にHPMC(c)150gを加えて遮蔽層調製液を得た。
この遮蔽層調製液を用いて塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを22μmとしたこと以外は、フィルム製剤F−1と同様の方法によりフィルム製剤H−1を作製した。
【0068】
3−9.フィルム製剤H−2の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを28μmとしたこと以外は、フィルム製剤H−1と同様の方法によりフィルム製剤H−2を作製した。
3−10.フィルム製剤H−3の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを40μmとしたこと以外は、フィルム製剤H−1と同様の方法によりフィルム製剤H−3を作製した。
【0069】
得られたフィルム製剤F−1、F−2、F−3、G−1、G−2、G−3、G−4、H−1、H−2及びH−3のフィルム製剤1枚当たりの成分量を表4にまとめて示す。なお、各製剤1cm2当たりの塩酸フェニレフリン含有量は、5.25mg÷2.72cm2≒1.93mg/cm2である。
【0070】
【表4】

【0071】
(剥離強度の測定)
実験2と同様の方法により剥離強度を測定した。すなわち、フィルム製剤とPETフィルムとに分離するに至るまでのロードセル41の荷重を付属するレコーダーで記録し、その最大引張強力を求めた。同様の操作を3回繰り返し、最大引張強力の平均値を剥離強度とした。その結果を表5に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
フィルム製剤F-1〜F-3、フィルム製剤G-1〜G-4及びフィルム製剤H-1〜H-3における、遮蔽層の厚みと、剥離強度との関係を図4に示す。
フィルム製剤F群、フィルム製剤G群及びフィルム製剤H群の遮蔽層は、それを構成するHPMCの重合度が相違する。フィルム製剤F群のHPMCは最も重合度が低く、製剤G群、H群の順に高くなる。図4から明らかな如く、剥離強度を所定の値に固定すると、フィルム製剤F群、フィルム製剤G群、フィルム製剤H群の順に、すなわち重合度が高くなるほど、遮蔽層が薄くてもよいことが理解される。この関係より、フィルム製剤の剥離強度は遮蔽層を構成する可食性高分子物質の重合度に依存し、重合度が高いほど剥離強度が小さくなる傾向にある。
PETフィルムを剥離する際の剥離強度(引張速度10cm/min)が、好ましくは80gf/25mm巾以下、より好ましくは50gf/25mm巾以下、更に好ましくは30gf/25mm巾であれば、使用時あるいは工業的製造においてPETフィルムを容易に剥離できることが実験を通して明らかとなった。
次に、図4の縦軸の剥離強度80gf/25mm巾、50gf/25mm巾及び30gf/25mm巾における遮蔽層厚さを読み取った。そして、フィルム製剤F群、G群及びH群について、読み取った遮蔽層厚さを、フィルム製剤1cm2中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たりに換算した。その結果を表6に示す。表6中の単位は、μm/塩酸フェニレフリン含有量(mg)/フィルム製剤の面積(cm2)である。
【0074】
【表6】

【0075】
表6より、遮蔽層がHPMC(a)で構成される場合、PETフィルムと薬物含有層との間に存在する遮蔽層の厚さは、フィルム製剤の単位面積(1cm2)中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たり、好ましくは17.7μm以上、より好ましくは18.2μm以上、更に好ましくは18.6μm以上であれば、容易にPETフィルムを剥離することができる。
また、遮蔽層がHPMC(b)で構成される場合、PETフィルムと薬物含有層との間に存在する遮蔽層の厚さは、フィルム製剤の単位面積(1cm2)中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たり、好ましくは14.3μm以上、より好ましくは16.2μm以上、更に好ましくは17.4μm以上であれば、容易にPETフィルムを剥離することができる。
さらに、遮蔽層がHPMC(c)で構成される場合、PETフィルムと薬物含有層との間に存在する遮蔽層の厚さは、フィルム製剤の単位面積(1cm2)中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たり、好ましくは10.1μm以上、より好ましくは12.2μm以上、更に好ましくは13.6μm以上であれば、容易にPETフィルムを剥離することができる。
【0076】
この結果から、各HPMC1質量%当たりの遮蔽層の厚みを求めると、以下のようになる。
遮蔽層がHPMC(a)で構成される場合、剥離強度80gf/25mm巾において、17.7÷100=0.177μmの厚みが必要となり、また剥離強度50gf/25mm巾において、18.2÷100=0.182μmの厚みが必要となり、更に剥離強度30gf/25mm巾において、18.6÷100=0.186μmの厚みが必要となる。
遮蔽層がHPMC(b)で構成される場合、剥離強度80gf/25mm巾において、0.143μmの厚みが必要となり、また剥離強度50gf/25mm巾において、0.162μmの厚みが必要となり、更に剥離強度30gf/25mm巾において、0.174μmの厚みが必要となる。
遮蔽層がHPMC(c)で構成される場合、剥離強度80gf/25mm巾において、0.101μmの厚みが必要となり、また剥離強度50gf/25mm巾において、0.122μmの厚みが必要となり、更に剥離強度30gf/25mm巾において、0.136μmの厚みが必要となる。
よって、PETフィルムの剥離を容易にするために必要な遮蔽層の厚みt1は、下記式(1)により求めることができる。なお、HPCにおいてもHPMCと同様に、剥離強度はフィルム製剤の単位面積当たりの塩酸フェニレフリン含有量と比例関係にあり、下記式(1)に示す関係が成立することを確認している(後掲の実験5参照)。
【0077】
1≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)]×W÷A (1)
【0078】
上記式中、Aはフィルム製剤の面積(cm2)を、E1は遮蔽層の全質量に対するHPMC(a)の含有量(質量%)を、R1は遮蔽層の全質量に対するHPMC(b)の含有量(質量%)を、S1は遮蔽層の全質量に対するHPMC(c)の含有量(質量%)を、E2は遮蔽層の全質量に対するHPC(d)の含有量(質量%)を、R2は遮蔽層の全質量に対するHPC(e)の含有量(質量%)を、Wは薬物含有層中の塩酸フェニレフリンの含有量(mg)を、それぞれ示す。
【0079】
この場合において、PETフィルムをより一層容易に剥離するために、遮蔽層の厚みt1を、好ましくは下記式(1−2)、より好ましくは下記式(1−3)により求めるのが望ましい。下記式(1−2)の場合、剥離強度を50gf/25mm巾(SI単位換算値:0.49N/25mm巾)以下とすることが可能であり、下記式(1−3)の場合、剥離強度を30gf/25mm巾(SI単位換算値:0.29N/25mm巾)以下とすることができる。なお、式中の各記号は、上記と同義である。
【0080】
1≧[0.182×E1+0.162×(R1+E2)+0.122×(S1+R2)]×W÷A (1-2)
1≧[0.186×E1+0.174×(R1+E2)+0.136×(S1+R2)]×W÷A (1-3)
【0081】
次に、遮蔽層中に添加物を含む場合、その添加物が剥離強度に与える影響を検討した。
【0082】
[実験4]
(試料の作製)
実験3のフィルム製剤G−1、G−2、G−3及びG−4を用いると共に、新たに遮蔽層/薬物含有層/薬物含有層/遮蔽層を備える4層型のフィルム製剤I−1、I−2、I−3、J−1、J−2、J−3、J−4及びJ−5を下記の如く作製した。
4−1.製剤I−1の作製
(遮蔽層がHPMC(b)及び糖類を含有してなる4層型フィルム製剤)
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水252gに粉末還元麦芽糖水アメ(別名:マルチトール)60gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール168gを加えた。そして、この液にHPMC(b) 90gを加え遮蔽層調製液を得た。
塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを23μmとしたこと以外は、実験3のフィルム製剤F−1と同様の方法によりフィルム製剤I−1を作製した。
4−2.製剤I−2の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを33μmとしたこと以外は、フィルム製剤I−1と同様の方法によりフィルム製剤I−2を作製した。
4−3.製剤I−3の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚さを49μmとしたこと以外は、フィルム製剤I−1と同様の方法によりフィルム製剤I−3を作製した。
【0083】
4−4.製剤J−1の作製
(遮蔽層がHPMC(b)及び酸化チタンを含有してなる4層型フィルム製剤)
フィルム製剤J−1の薬物含有層調製液は、フィルム製剤I群の薬物含有層調製液と全く同一である。すなわち、水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
一方、フィルム製剤J−1の遮蔽層調製液は、フィルム製剤I群の遮蔽層調製液と異なる。すなわち、水252gに、無水エタノール168gに酸化チタン60gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)90gを加えて遮蔽層調製液を得た。
この遮蔽層調製液を用いて塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを5μmとしたこと以外は、フィルム製剤I−1と同様の方法によりフィルム製剤J−1を作製した。
【0084】
4−5.製剤J−2の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを7μmとしたこと以外は、フィルム製剤J−1と同様の方法によりフィルム製剤J−2を作製した。
4−6.製剤J−3の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを21μmとしたこと以外は、フィルム製剤J−1と同様の方法によりフィルム製剤J−3を作製した。
4−7.製剤J−4の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを28μmとしたこと以外は、フィルム製剤J−1と同様の方法によりフィルム製剤J−4を作製した。
4−8.製剤J−5の作製
塗工乾燥後の遮蔽層の厚みを37μmとしたこと以外は、フィルム製剤J−1と同様の方法によりフィルム製剤J−5を作製した。
なお、得られたフィルム製剤I−1、I−2、I−3、J−1、J−2、J−3、J−4、J−5、G−1、G−2、G−3及びG−4のフィルム製剤1枚当たりの成分量を表7にまとめて示す。各製剤1cm2当たりの塩酸フェニレフリン含有量は、5.25mg÷2.72cm2≒1.93mg/cm2である。
【0085】
【表7】

【0086】
(剥離強度の測定)
実験2と同様の方法により剥離強度を測定した。すなわち、フィルム製剤とPETフィルムとに分離するに至るまでのロードセル41の荷重を付属するレコーダーで記録し、その最大引張強力を求めた。同様の操作を3回繰り返し、最大引張強力の平均値を剥離強度とした。その結果を表8に示す。
【0087】
【表8】

【0088】
フィルム製剤G群の遮蔽層はHPMCのみで構成されているのに対し、フィルム製剤I群はフィルム製剤G群の遮蔽層の40質量%を、粉末還元麦芽糖水アメ(別名:マルチトール)に換えたものであり、フィルム製剤J群はフィルム製剤G群の遮蔽層の40質量%を、酸化チタンに換えたものである。フィルム製剤I-1〜I-3、フィルム製剤J-1〜J-5及びフィルム製剤G-1〜G-4はそれぞれ遮蔽層の厚さのみが異なる。フィルム製剤I-1〜I-3、フィルム製剤J-1〜J-5及びフィルム製剤G-1〜G-4における、遮蔽層の厚みと、剥離強度との関係を図5に示す。
フィルム製剤G群とフィルム製剤I群とを比較すると、フィルム製剤G群の方がより遮蔽層が薄い状態でも剥離強度は小さくて済むことが理解される。このことから、粉末還元麦芽糖水アメ(別名:マルチトール)の遮蔽能力はHPMCより小さいことがわかる。
また、フィルム製剤J群とフィルム製剤G群とを比較すると、フィルム製剤J群の方が遮蔽層が薄い状態でも剥離強度は小さくて済むことが理解される。このことから、酸化チタンはHPMCより遮蔽能力が高いことがわかる。
前述したように、PETフィルムを剥離する際の剥離強度(引張速度10cm/min)が、好ましくは80gf/25mm巾以下、より好ましくは50gf/25mm巾以下、更に好ましくは30gf/25mm巾であれば、使用時あるいは製造時において容易に剥離できるとの知見が得られているので、図5の縦軸の剥離強度80gf/25mm巾、50gf/25mm巾及び30gf/25mm巾における遮蔽層厚さを読み取った。そして、フィルム製剤G群、I群及びJ群について、読み取った遮蔽層厚さを、フィルム製剤1cm2中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たりに換算した。その結果を表9に示す。表9中の単位は、μm/塩酸フェニレフリン含有量(mg)/フィルム製剤の面積(cm2)である。
【0089】
【表9】

【0090】
表9より、遮蔽層が60質量%のHPMC(b)と40質量%の粉末還元麦芽糖水アメ(別名:マルチトール)とから構成されるフィルム製剤I群は、PETフィルムと薬物含有層との間に存在する遮蔽層の厚さが、フィルム製剤の単位面積(1cm2)中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たり、好ましくは20.1μm以上、より好ましくは24.9μm以上、更に好ましくは28.0μm以上であれば、容易にPETフィルムを剥離することができる。
また、遮蔽層が60質量%のHPMC(b)と40質量%の酸化チタンとから構成されるフィルム製剤J群は、フィルム製剤の単位面積(1cm2)中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たり、好ましくは2.2μm以上、より好ましくは4.2μm以上、更に好ましくは8.4μm以上であれば、容易にPETフィルムを剥離することができる。
【0091】
この結果から、粉末還元麦芽糖水アメ及び酸化チタンの各1質量%当たりの遮蔽層の厚みを求めると、以下のようになる。
まず、剥離強度80gf/25mm巾における粉末還元麦芽糖水アメ添加による遮蔽層の厚みを求める。フィルム製剤I群の遮蔽層には60質量%のHPMC(b)が添加されているので、実験3から得られた剥離強度80gf/25mm巾におけるHPMC(b)の1質量%当たりの遮蔽層の厚み0.143μmを用いると、40質量%の粉末還元麦芽糖水アメを添加したことによる遮蔽層の厚みは、20.1−0.143×60=20.1−8.58=11.52μmとなる。したがって、剥離強度80gf/25mm巾重における粉末還元麦芽糖水アメ1質量%の当たりの遮蔽層の厚みは、11.52÷40=0.288μmとなる。
同様に、剥離強度50gf/25mm巾においては、実験3から得られた剥離強度50gf/25mm巾におけるHPMC(b)の1質量%当たりの遮蔽層の厚み0.162μmを用いると、40質量%の粉末還元麦芽糖水アメを添加したことによる遮蔽層の厚みは、15.18μmとなる。したがって、剥離強度50gf/25mm巾における粉末還元麦芽糖水アメ1質量%の当たりの遮蔽層の厚みは、0.380μmとなる。
さらに、剥離強度30gf/25mm巾においては、実験3から得られた剥離強度30gf/25mm巾におけるHPMC(b)の1質量%当たりの遮蔽層の厚み0.174μmを用いると、40質量%の粉末還元麦芽糖水アメを添加したことによる遮蔽層の厚みは、17.56μmとなる。したがって、剥離強度30gf/25mm巾における粉末還元麦芽糖水アメ1質量%の当たりの遮蔽層の厚みは、0.439μmとなる。
【0092】
同様にして、酸化チタンの1質量%当たりの遮蔽層の厚みを求める。
まず、剥離強度80gf/25mm巾における酸化チタン添加による遮蔽層の厚さを求める。フィルム製剤J群の遮蔽層には60質量%のHPMC(b)が添加されているので、実験3から得られた剥離強度80gf/25mm巾におけるHPMC(b)の1質量%当たりの遮蔽層の厚み0.143μmを用いると、40質量%の酸化チタンを添加したことによる遮蔽層の厚さは、2.2−0.143×60=2.2−8.58=−6.38μmとなる。したがって、剥離強度80gf/25mm巾における酸化チタンの1質量%の当たりの遮蔽層の厚みは、−6.38÷40=−0.160μmとなる。
同様に、剥離強度50gf/25mm巾においては、実験3から得られた剥離強度50gf/25mm巾におけるHPMC(b)の1質量%当たりの遮蔽層の厚み0.162μmを用いると、40質量%の酸化チタンを添加したことによる遮蔽層の厚みは、−5.52μmとなる。したがって、剥離強度50gf/25mm巾における酸化チタン1質量%の当たりの遮蔽層の厚さは、−0.138μmとなる。
さらに、剥離強度30gf/25mm巾においては、実験3から得られた剥離強度30gf/25mm巾におけるHPMC(b)の1質量%当たりの遮蔽層の厚み0.174μmを用いると、40質量%の酸化チタンを添加したことによる遮蔽層の厚みは、−2.04μmとなる。したがって、剥離強度30gf/25mm巾における酸化チタン1質量%の当たりの遮蔽層の厚みは、−0.051μmとなる。よって、PETフィルムの剥離を容易にするために必要な遮蔽層の厚みt2は、下記式(2)により求めることができる。
【0093】
2≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)+0.288×M−0.160×T]×W÷A (2)
【0094】
上記式中、Mは遮蔽層の全質量に対する糖類の含有量(質量%)を、Tは遮蔽層の全質量に対する賦形剤の含有量(質量%)を、それぞれ示し、A、E1、E2、R1、R2、S1及びWは上記と同義である。
【0095】
この場合において、PETフィルムをより一層容易に剥離するために、遮蔽層の厚みt2を、好ましくは下記式(2−2)により、より好ましくは下記式(2−3)により求めるのが望ましい。下記式(2−2)の場合、剥離強度を50gf/25mm巾以下とすることが可能であり、下記式(2−3)の場合、剥離強度を30gf/25mm巾以下とすることができる。なお、式中の各記号は、上記と同義である。また、糖類と賦形剤の含有量は、遮蔽層の全質量基準で、それぞれ好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0096】
2≧[0.182×E1+0.162×(R1+E2)+0.122×(S1+R2)+0.380×M−0.138×T]×W÷A (2-2)
2≧[0.186×E1+0.174×(R1+E2)+0.136×(S1+R2)+0.439×M−0.051×T]×W÷A (2-3)
【0097】
次に、遮蔽層が複数層で構成される場合の遮蔽層の厚さと、剥離強度との関係を検討した。併せて、低重合度のHPCによる遮蔽層効果を検討した。
【0098】
[実験5]
(試料の作製)
実験1及び実験2のフィルム製剤Aを用いると共に、新たに遮蔽層/遮蔽層/薬物含有層/薬物含有層/遮蔽層/遮蔽層を備える6層型のフィルム製剤K−1、K−2、K−3、L−1、L−2、M−1、M−2及びM−3を下記の如く作製した。
【0099】
5−1.フィルム製剤K−1の作製
(第1の遮蔽層がHPMC(b)、糖類、酸化チタン及び色素を含有してなり、第2の遮蔽層がHPMC2910(a)のみで構成される6層型フィルム製剤)
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水150gに無水エタノール150gを加えた。そして、この液にHPMC(a)100gを加えて第2の遮蔽層調製液を得た。
水252gに粉末還元麦芽糖水アメ37.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.15gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール168gに酸化チタン22.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)90gを加えて第1の遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に第1の遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に第1の遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ18μmの可食性の第1の遮蔽層を形成した。
次いで、第1の遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、第1の遮蔽層上に第2の遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ7μmの第2の遮蔽層を形成し、中間製品4を得た。
次いで、中間製品4を再度巻き出し軸にセットし、中間製品4上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して、PETフィルム上に第1の遮蔽層と、第2の遮蔽層と、薬物含有層とを備える中間製品5を得た。
次いで、中間製品5の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ、圧着し、2つのPETフィルム間に、第1の遮蔽層、第2の遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、第2の遮蔽層、第1の遮蔽層を備える中間製品6を得た。
そして、中間製品6の一方のPETフィルムのみを手で剥離し、25mm×70mmに切断し、フィルム製剤K−1を得た。
【0100】
5−2.フィルム製剤K−2の作製
塗工乾燥後の第1の遮蔽層厚みを18μmとし、第2の遮蔽層の厚みを16μmとし、遮蔽層の厚みを34μmとしたこと以外は、フィルム製剤K−1と同様の方法によりフィルム製剤K−2を作製した。
5−3.フィルム製剤K−3の作製
塗工乾燥後の第1の遮蔽層の厚みを18μmとし、第2の遮蔽層の厚みを26μmとし、遮蔽層の厚みを44μmとしたこと以外は、フィルム製剤K−1と同様の方法によりフィルム製剤K−3を作製した。
【0101】
5−4.フィルム製剤L−1の作製
(第1の遮蔽層がHPMC(b)、糖類、酸化チタン及び色素を含有してなり、第2の遮蔽層がHPMC2910(c)のみで構成される6層型フィルム製剤)
フィルム製剤L−1の薬物含有層調製液は、上記製剤K群のフェニレフリン含有層調製液と全く同一である。すなわち、水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして。この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
フィルム製剤L−1の第1の遮蔽層調製液も、フィルム製剤K群の第1の遮蔽層調製液と全く同一である。すなわち、水252gに粉末還元麦芽糖水アメ37.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.15gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール168gに酸化チタン22.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)90gを加えて第1の遮蔽層調製液を得た。
一方、フィルム製剤L−1の第2の遮蔽層調製液は、フィルム製剤K群の第2の遮蔽層調製液と異なる。すなわち、水200gに無水エタノール200gを加え、この液にHPMC(c)100gを加えて第2の遮蔽層調製液を得た。このHPMC(c)は、フィルム製剤K群で用いたHPMC(a)よりも重合度が高い。
各層の調製液を用いて塗工乾燥後の第1の遮蔽層厚みを18μmとし、第2の遮蔽層の厚みを5μmとし、遮蔽層の厚みを23μmとしたこと以外は、フィルム製剤K−1と同様の方法によりフィルム製剤L−1を作製した。
【0102】
5−5.フィルム製剤L−2の作製
塗工乾燥後の第1の遮蔽層の厚みを18μmとし、第2の遮蔽層の厚みを13μmとし、遮蔽層の厚みを31μmとしたこと以外は、フィルム製剤L−1と同様の方法によりフィルム製剤L−2を作製した。
【0103】
5−6.製剤M−1の作製
(第1の遮蔽層がHPMC(b)、糖類、酸化チタン及び色素を含有してなり、第2の遮蔽層がHPC(d)のみで構成される6層型フィルム製剤)
フィルム製剤M−1の薬物含有層調製液は、フィルム製剤K群及びフィルム製剤L群の薬物含有層調製液と全く同一である。すなわち、水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360gを加えた。そして、この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
フィルム製剤M−1の第1の遮蔽層調製液も、フィルム製剤K群及びフィルム製剤L群の第1の遮蔽層調製液と全く同一である。すなわち、水252gに粉末還元麦芽糖水アメ37.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.15gを加えた。次いで、この液に、無水エタノール168gに酸化チタン22.5gを分散した液を加えた。そして、この液にHPMC(b)90gを加えて第1の遮蔽層調製液を得た。
一方、フィルム製剤M−1の第2の遮蔽層調製液は、フィルム製剤K群及びフィルム製剤L群の第2の遮蔽層調製液と異なる。すなわち、水15gに無水エタノール135gを加え、この液にHPC(d)75gを加えて第2の遮蔽層調製液を得た。
各層の調製液を用いて塗工乾燥後の第1の遮蔽層厚みを18μmとし、第2の遮蔽層の厚みを4μmとし、遮蔽層の厚みを22μmとしたこと以外は、フィルム製剤K−1と同様の方法によりフィルム製剤L−1を作製した。
5−7.製剤M−2の作製
塗工乾燥後の樹脂上遮蔽層厚さを18μmおよび中間遮蔽層の厚さを15μmとし、中間製品4の総遮蔽層厚さを33μmとした以外は、製剤M−1と同様にして製剤M−2の試験片を調製した。
【0104】
5−8.製剤M−3の作製
塗工乾燥後の第1の遮蔽層厚みを18μmとし、第2の遮蔽層の厚みを31μmとし、遮蔽層の厚みを49μmとしたこと以外は、フィルム製剤M−1と同様の方法によりフィルム製剤M−3を作製した。
なお、得られたフィルム製剤A、K−1、K−2、K−3、L−1、L−2、M−1、M−2及びM−3のフィルム製剤1枚当たりの成分量を表10にまとめて示す。なお、各製剤1cm2当たりの塩酸フェニレフリン含有量は、5.25mg÷2.72cm2≒1.93mg/cm2である。
【0105】
【表10】

【0106】
(剥離強度の測定)
実験2と同様の方法により剥離強度を測定した。すなわち、試験片の製剤とPETフィルムとを分離するに至るまでのロードセル41の荷重を付属するレコーダーで記録し、その最大引張強力を求めた。同様の操作を3回繰り返し、最大引張強力の平均値を剥離強度とした。その結果を表11に示す。
【0107】
【表11】

【0108】
フィルム製剤Aは、遮蔽層と薬物含有層とから構成されている。このフィルム製剤Aの遮蔽層と薬物含有層とは、フィルム製剤K-1〜K-3、フィルム製剤L-1〜L-2及びフィルム製剤M-1〜M-3の第1の遮蔽層と薬物含有層と共通である。したがって、フィルム製剤Aに第2の遮蔽層を設けると、フィルム製剤K-1〜K-3、フィルム製剤L-1〜L-2及び製剤M-1〜M-3となる。第2の遮蔽層は、フィルム製剤K-1〜K-3の場合、HPMC(a)で構成されており、フィルム製剤L-1〜L-2の場合、HPMC(c)で構成されており、フィルム製剤M-1〜M-3の場合、HPC(d)で構成されている。フィルム製剤K-1〜K-3、フィルム製剤L-1〜L-2及びフィルム製剤M-1〜M-3における、遮蔽層の厚みと、剥離強度との関係を図6に示す。
前述したように、PETフィルムを剥離する際の剥離強度(引張速度10cm/min)が、好ましくは80gf/25mm巾以下、より好ましくは50gf/25mm巾以下、更に好ましくは30gf/25mm巾であれば、使用時あるいは製造時において容易に剥離できるとの知見が得られているので、図6の縦軸の剥離強度80gf/25mm巾、50gf/25mm巾及び30gf/25mm巾における遮蔽層厚さを読み取った。そして、フィルム製剤K群、L群及びM群について、読み取った遮蔽層厚さを、フィルム製剤1cm2中の塩酸フェニレフリン含有量1mg当たりに換算した。その結果を表12に示す。表12中の単位は、μm/塩酸フェニレフリン含有量(mg)/フィルム製剤の面積(cm2)である。
【0109】
【表12】

【0110】
フィルム製剤K群、M群及びL群は、第1の遮蔽層上に第2の遮蔽層が積層され、更にその上に薬物含有層を備える中間製品を貼り合わせた6層型のフィルム製剤であるが、いずれのフィルム製剤においても遮蔽層を厚くすると剥離強度が小さくなり、遮蔽能力は複数層でも単層でもトータル厚さに依存する。
フィルム製剤群Mは第2の遮蔽層がHPCである。フィルム製剤M群の剥離強度は、フィルム製剤K群と、フィルム製剤L群との間に位置する。このフィルム製剤M群の第2の遮蔽層を構成するHPC(d)の遮蔽能力は、フィルム製剤K群の第2の遮蔽層を構成するHPMC(a)と、フィルム製剤L群の第2の遮蔽層を構成するHPMC(c)との間にあるので、実験3で遮蔽能力が明らかになっているHPMC(b)とほぼ同等である。
【0111】
本明細書において、「速溶性」とは、フィルム製剤が口腔内で速やかに溶解又は崩壊し、水なしで服用できることをいうが、フィルム製剤は、例えば、口腔内で2分以内、好ましくは1分以内に溶解又は崩壊することが可能であり、また日本薬局方一般試験法崩壊試験法による崩壊時間を5分以内、好ましくは2分以内にすることができる。
なお、本明細書において、口腔内での溶解・崩壊時間及び所定の試験方法による崩壊時間は、下記の方法により測定したものである。
【0112】
<口腔内溶解時間試験方法>
所定の大きさ(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm、面積2.72cm2)に裁断したフィルム製剤を、健康な成人の口腔内に水なしで含ませ、フィルム製剤が口腔内の唾液のみで完全に崩壊分散するまでの時間を測定した。試験は5名以上のパネラーの服用に要した時間を平均し、その値を口腔内溶解時間とした。
【0113】
<崩壊試験法>
試験液として精製水を用い、第15改正日本薬局方 [B]一般試験法 6.製剤試験法 6.09崩壊試験法に準じて行った。すなわち、所定の大きさ(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm、面積2.72cm2)に裁断したフィルム製剤を、第15改正日本薬局方 [B]一般試験法 6.製剤試験法 6.10溶出試験法の図6.10−2aに示されているシンカーに入れ、フィルム製剤を収容したシンカーを崩壊試験法で使用する試験器の下端が網面で、上端が開口している管に挿入した状態にする。崩壊試験法で規定されているように、この試験器を精製水が所定量入れられたビーカー内で所定の上下運動をさせた。その際、最初に試験器の底面が水面に接したときに測定を開始し、目視にてフィルム製剤が崩壊分散しシンカーの内側と外側で同じ分散状態になったときを終点とし、その経過時間を溶解・崩壊時間とした。試験は5回行い、その平均値を崩壊時間とした。
【0114】
フィルム製剤の溶解時間又は崩壊時間に影響を及ぼす要因として、フィルム製剤の厚みと、賦形剤や崩壊剤等の遮蔽層5への添加が挙げられる。ここでいうフィルム製剤の厚みとは、図2に示す遮蔽層5及び薬物含有層7から構成されるフィルム製剤2全体の厚みをいう。
フィルム製剤の厚みを、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜500μm、更に好ましくは30〜300μmとするのが望ましい。これにより、口腔内において速やかに溶解し、塩酸フェニレフリンの物理化学的性質により消化管吸収が行われ、塩酸フェニレフリンの薬理作用が速やかに発現される。
口腔内での溶解又は崩壊時間を2分以内、あるいは上記試験方法による崩壊時間を5分以内とするには、賦形剤や崩壊剤等を添加しない場合、フィルム製剤の厚みを10〜100μmにすることが好ましく、賦形剤や崩壊剤等を遮蔽層5に添加する場合、フィルム製剤の厚みを30〜1000μmにすることが好ましい。また、薬物含有層7の厚みは、フィルム製剤の厚みが上記範囲内になるように、遮蔽層5の厚みに基づいて決定される。
【0115】
(塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法)
次に、本発明のフィルム製剤の製造方法について説明する。
本発明のフィルム製剤の製造方法は、遮蔽層形成工程と、薬物含有層形成工程と、剥離工程とを備えるか、あるいは遮蔽層形成工程と、薬物含有層形成工程と、圧着工程と、剥離工程とを備えるものである。
【0116】
(遮蔽層形成工程及び薬物含有層形成工程)
遮蔽層形成工程は、樹脂フィルム上に1又は2以上の遮蔽層を形成する工程であり、薬物含有層形成工程は、遮蔽層上に1又は2以上の薬物含有層を形成する工程である。
遮蔽層及び薬物含有層の形成には、塗工液を使用することができる。そして、これらの塗工液を樹脂フィルム上に順次塗工し乾燥することで形成することができる。本明細書において、「塗工」とは、「塗布」や「展延」と同義に解するものとし、最も広義に解するものとする。
塗工液としては、上述した可食性の各成分を溶媒に溶解又は分散させたものを用いることができる。溶媒としては、例えば、水、エタノール、酢酸、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、ギ酸、1−プロパノール、2−プロパノール、塩化メチレン等を使用することができるが、中でも、エタノール、水、又はこれらの混合溶媒(例えば、エタノール−水混合物)が好適に使用される。
【0117】
HPC及びHPMCは、エタノール系溶媒(エタノールと水の混合液を含み、エタノール濃度30質量%以上のもの)と、水との両方の溶媒に溶解又は膨潤する高分子化合物である。HPMC、又はHPMCとHPCとの混合物は、無水エタノールに溶解しないが、水分が多少あれば、エタノールに溶解又は膨潤して使用可能となる。したがって、遮蔽層又は薬物含有層を形成するには、エタノール系溶媒と、水との両方の溶媒が使用可能となり、幅広い添加物の選択が可能となる。特に、メントール等の水不溶性の矯味剤などの添加が簡単になる。
【0118】
この特性を利用し、遮蔽層及び薬物含有層を形成する場合、エタノール系溶媒と、水溶媒とを使い分けることができる。
例えば、薬物含有層の形成にエタノール系溶媒(エタノールと水の混合液を含む)を使用する場合、遮蔽層を形成すべき溶媒としてエタノール系溶媒及び水溶媒のいずれをも使用することができる。これにより、エタノール系溶媒にメントール等のアルコール混和系の添加剤を単に添加するだけで、薬物含有層に容易に当該添加物を含有させることができる。一方、薬物含有層の形成に水を使用する場合、遮蔽層を形成すべき溶媒としてエタノール系溶媒を用いればよい。これにより、メントール等のアルコール混和系の添加剤を容易に遮蔽層に含有させることができ、また薬物含有層にメントール等のアルコール混和系の添加剤を加えた場合とほぼ同等の作用効果を得ることができる。
【0119】
遮蔽層形成工程及び薬物含有層形成工程には、公知の塗工装置を使用することができる。図19は、塗工装置の一例を示す模式図である。塗工装置10においては、巻き出し軸11から巻き出された樹脂フィルム12が乾燥炉13を通って巻き取り軸14で巻き取られることにより、樹脂フィルムが連続的に移動できるように構成されており、この間に、塗工液供給用ダム部15に貯められた塗工液16が所定の厚みになるように樹脂フィルム上に塗工され乾燥される。このようにして、遮蔽層及び薬物含有層が樹脂フィルム表面に形成される。塗工液の塗布量の制御は、ダム部15におけるドクターロール17と、樹脂フィルムとのクリアランスを調整することで行うことができる。
【0120】
遮蔽層及び/又は薬物含有層を複数層形成する場合には、塗工装置10を用いて、塗工液の塗工・乾燥を複数回繰り返せばよい。また、同一成分又は異種成分の塗工液を使用し、塗工・乾燥を複数回繰り返すことで、所望の厚みを調整しやすくなり、また層ごとに異なる特性を付与することが可能である。なお、塗工・乾燥の回数が多すぎると、塗工液の塗布量が不正確になり、また乾燥に要する時間が長くなるため、塗工・乾燥の繰り返しを2〜3回程度にすることが望ましい。
【0121】
前述したように、遮蔽層の厚みは、樹脂フィルムの剥離に大きな影響を与える。樹脂フィルムの剥離強度は、フィルム製剤の単位面積あたりの塩酸フェニレフリン含有量と比例関係にあり、また遮蔽層を構成する可食性高分子物質の重合度や添加剤の種類に依存する。そのため、所望の剥離強度が得られるように上記式(1)又は(2)に基づいて遮蔽層の厚みを決定することが望ましい。
【0122】
このようにして、遮蔽層及び薬物含有層が形成された樹脂フィルム18は、巻き取り軸14でロール状に巻かれてロールフィルムとされる。そして、ロールフィルムは、後述する圧着工程や剥離工程に供される。
【0123】
(圧着工程)
圧着工程は、遮蔽層及び薬物含有層が形成された2つの樹脂フィルムを、薬物含有層が対向するように重ね合わせて圧着する工程である。圧着工程には、公知の圧着装置を用いることができる。図20は、圧着装置の一例を示す模式図である。
圧着装置20は、例えば、図19の塗工装置10を用いて製造されたロールフィルム21の一つを上部巻き出し軸23にセットし、もう一つのロールフィルム22を下部巻き出し軸24にセットする。これらのロールフィルム21、22をそれぞれ所定速度で巻き出し、薬物含有層が互いに対向するように重ね合わせた状態で一対のヒーターを内蔵した押圧ロール25の間を通過させることで、樹脂フィルムの裏面側が加圧され、薬物含有層同士が密着される。その結果、2つの樹脂フィルム間に、遮蔽層及び薬物含有層を有する圧着品26が得られる。
【0124】
この圧着装置20の原理は、少なくとも熱可塑性の性質を呈する高分子物質を1種類以上含み、かつその熱可塑性物質のガラス転移点よりわずかに高い温度に加温すると、薬物含有層がゴム状弾性域に至る。この状態で薬物含有層を互いに対向させた状態で樹脂フィルムの裏面を加圧すると、薬物含有層同士が密着して多層構造の積層体が形成されることによる。熱可塑性物質としては、アミロース、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸アルキルエステル、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、オイドラキット、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルセルロース、カンテン、ゼラチン、セラック、デキストラン、デキストリン、デンプン、トラガント、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸共重合体、メチルセルロースフタレート等が挙げられる。
【0125】
(剥離工程)
圧着工程で得られた圧着品26をフィルム剥離ロール27に通過させて、一方の樹脂フィルム26aのみを剥離する。そして、剥離した樹脂フィルムの先端を巻き取り軸28により巻き取る。これにより、圧着品26から一方の樹脂フィルムのみを連続的に剥離することができる。かくして得られた圧着品26b、すなわち遮蔽層及び薬物含有層を1又は2以上備える樹脂フィルムは、巻き取り軸29によりロール状に巻き取られ、ロールフィルム30とされる。そして、ロールフィルム30は、後述する成形工程に供される。
【0126】
(成形工程)
図21、図22及び図23は、成形装置の一例を示す模式図である。
遮蔽層及び薬物含有層形成工程で得られたロールフィルム、又は剥離工程で得られたロールフィルムは、必要によりスリッター等により長手方向に切断され細幅のロールフィルム71とされる。そして、ロールフィルム71は、成形装置により、フィルム製剤として所定の寸法にカッティングされる。
図21に示す成形装置70においては、ロールフィルム71が間欠的に巻き出され、残された樹脂フィルム3をフィルム剥離ロール73によって剥離し、遮蔽層及び薬物含有層からなる可食性層72とする。
次いで、この可食性層72を打ち抜き装置74により、例えば、直径15mmの円形に打ち抜く。打ち抜き装置74は、上下に往復移動する切断刃74aと、この切断刃74aが貫通する貫通孔を備えた固定板74bとからなり、間欠移動してきた可食性層72が打ち抜き装置74の位置で静止したときに、切断刃74aが上方に移動して固定板74bの貫通孔を貫通することで、可食性層72から直径15mmの円形のフィルム製剤が打ち抜かれる。フィルム製剤は、固定板74bの上方に配設された吸着パッド75により吸い取られ、コンベア(図示せず)上に落とされて包装工程へ送られる。フィルム製剤が引き剥がされた後の残余72bは、巻き取りロール76に巻き取られる。
【0127】
図22に示す成形装置80においては、ロールフィルム71が連続して巻き出され、打ち抜き装置81へ送られる。打ち抜き装置81は、回転するロール外周面に、例えば、直径15mmの円形の切断刃82aが突出している切断刃ロール82と、アンビルロール83とからなり、これらのロール82、83の間にロールフィルム71が連続して挿入され、ロール82と83の間に挟まれた状態でロールフィルム71が静止したときに、切断刃ロール82から突出する切断刃82aにより、樹脂フィルム3の裏面まで到達しないように、可食性層72のみを打ち抜く。切断刃82aによる切断深さは、切断刃ロール82とアンビルロール83とのクリアランスを調整することで制御することができる。図22においては、理解しやすくするために切断刃ロール82とアンビルロール83との距離を離して図示しているが、実際の切断動作は切断刃ロール82を一点鎖線で示す位置に配置して行われる。切断刃82aで可食性層72のみが打ち抜かれた状態は、切断刃の形状に対応する円形の切り込み72aが可食性層72に形成されているだけで、可食性層72は樹脂フィルム3の表面に保持されたままである。この状態で、樹脂フィルム3と可食性層72がアンビルロール83の回転に伴って回動し、吸着パッド84の配設位置まで移動したときに、吸着パッド84がアンビルロール83方向に移動し、円形の切り込み72aで囲まれた可食性層72を吸い取り樹脂フィルム71を剥離してフィルム製剤が製造される。フィルム製剤は、コンベア(図示せず)上に落とされて包装工程へ送られる。フィルム製剤が引き剥がされた後の残余72bは、樹脂フィルムとともにカス巻き取りロール85として巻き取られる。
このように、成形装置70や80により製造された可食性層72は樹脂フィルムが全て剥離されると、フィルム製剤となる。
【0128】
また、図23に示すように、可食性層72を有する樹脂フィルム3を、適当なカッティング機に用いて樹脂フィルム3を破損することなく、可食性層72中に形状を画定する切断線93を形成してもよい。例えば、12個の可食性層72aを一つのグループになるようにカッティングし、これを包装材料の中に封じ込め最終製品とすることができる。これにより、切断線93が形成された可食性層72aを服用時に取り出し可能にしたフィルム製剤とすることができる。
【0129】
図9〜18は、本発明のフィルム製剤の製造工程を示す断面図である。図9〜18を参照しつつ、フィルム製剤の製造方法について説明する。
図9は、フィルム製剤1a、2aの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(2)遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(3)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0130】
図10は、フィルム製剤1b、2bの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの第1の遮蔽層5を形成する;
(2)第1の遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を更に塗工し乾燥して所定の厚みの第2の遮蔽層5を形成する;
(3)第2の遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(4)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0131】
フィルム製剤1b、2bは、図11に示す工程によっても製造することができる。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(2)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(3)工程(1)で形成された遮蔽層5と、工程(2)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、遮蔽層5同士を密着させた後、2つの樹脂フィルム3のうちの一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(4)遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(5)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0132】
図12は、フィルム製剤1c、2cの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(2)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(3)工程(1)で形成された遮蔽層5と、工程(2)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、遮蔽層5同士を密着させた後、2つの樹脂フィルム3のうちの一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(4)工程(3)で形成された遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を所定量塗工し乾燥して遮蔽層5を形成する;
(5)工程(4)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(6)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0133】
図13は、フィルム製剤1d、2dの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(2)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(3)工程(1)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(4)工程(2)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(5)工程(3)で形成された薬物含有層7と、工程(4)で形成された薬物含有層7とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、薬物含有層7同士を密着させる;
(6)最外層に配置された2つの樹脂フィルム3のうち、一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(7)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0134】
図14は、フィルム製剤1e、2eの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの第1の遮蔽層5を形成する;
(2)第1の遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を更に塗工し乾燥して所定の厚みの第2の遮蔽層5を形成する;
(3)第2の遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(4)薬物含有層7上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を更に塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(5)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0135】
フィルム製剤1e、2eは、図15に示す工程によっても製造することが可能である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの第1の遮蔽層5を形成する;
(2)第1の遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を更に塗工し乾燥して所定の厚みの第2の遮蔽層5を形成する;
(3)第2の遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(4)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(5)工程(3)で形成された薬物含有層7と、工程(4)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、薬物含有層7と遮蔽層5とを密着させる;
(6)最外層に配置された2つの樹脂フィルム3のうち、一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(7)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0136】
図16は、フィルム製剤1f、2fの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの第1の遮蔽層5を形成する;
(2)第1の遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を更に塗工し乾燥して所定の厚みの第2の遮蔽層5を形成する;
(3)第2の遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(4)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの第1の遮蔽層5を形成する;
(5)第1の遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しな塗工液を更に塗工し乾燥して所定の厚みの第2の遮蔽層5を形成する;
(6)第2の遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(7)工程(3)で形成された薬物含有層7と、工程(6)で形成された薬物含有層7とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、薬物含有層7同士を密着させる;
(8)最外層に配置された2つの樹脂フィルム3のうち、一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(9)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0137】
フィルム製剤1f、2fは、図17に示す工程によっても製造することが可能である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(2)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(3)工程(1)で形成された遮蔽層5と、工程(2)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、遮蔽層5同士を密着させた後、2つの樹脂フィルム3のうちの一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(4)工程(3)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(5)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(6)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(7)工程(5)で形成された遮蔽層5と、工程(6)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、遮蔽層5同士を密着させた後、2つの樹脂フィルム3のうちの一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(8)工程(7)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(9)工程(4)で形成された薬物含有層7と、工程(8)で形成された薬物含有層7とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、薬物含有層7同士を密着させる;
(10)最外層に配置された2つの樹脂フィルム3のうち、一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(11)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0138】
図18は、フィルム製剤1h、2hの製造工程を示す図である。
(1)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(2)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(3)工程(1)で形成された遮蔽層5と、工程(2)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、遮蔽層5同士を密着させた後、2つの樹脂フィルム3のうちの一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(4)工程(3)で形成された遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を所定量塗工し乾燥して遮蔽層5を形成する;
(5)工程(4)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(6)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(7)可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を樹脂フィルム3上に直接塗工し乾燥して所定の厚みの遮蔽層5を形成する;
(8)工程(6)で形成された遮蔽層5と、工程(7)で形成された遮蔽層5とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、遮蔽層5同士を密着させた後、2つの樹脂フィルム3のうちの一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(9)工程(8)で形成された遮蔽層5上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない塗工液を所定量塗工し乾燥して遮蔽層5を形成する;
(10)工程(9)で形成された遮蔽層5上に、HPC及び/又はHPMCと、塩酸フェニレフリンとを含有する塗工液を所定量塗工し乾燥して薬物含有層7を形成する;
(11)工程(5)で形成された薬物含有層7と、工程(10)で形成された薬物含有層7とを互いに対向するように重ね合わせて樹脂フィルム3の裏面から加圧することにより、薬物含有層7同士を密着させる;
(12)最外層に配置された2つの樹脂フィルム3のうち、一方の樹脂フィルム3を剥離する;
(13)遮蔽層5と薬物含有層7とを一体的に保った状態で、所定の寸法にカッティングし、樹脂フィルム3を剥離する。
【0139】
本実施形態においては、説明の便宜上、薬物含有層が複数層で構成される場合について各層が独立したものとして説明したが、本発明においてはこれに限定されず、各層が互いに密着し一体となって実質的に一層の薬物含有層を構成していてもよい。なお、遮蔽層についても同様である。
【実施例】
【0140】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本実施例で使用した材料は以下のとおりである。
・HPMC(a):HPMC2910(商品名;TC−5E、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度;2.5〜3.5mPa・s、平均分子量;16000)
・HPMC(b):HPMC2910(商品名;TC−5R、信越化学工業製、20℃における2質量%水溶液の動粘度;5.2〜7.0mPa・s、平均分子量;35600)
・HPC(d):商品名:HPC SSL、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度2.0〜2.9mPa・s、平均分子量:約30000
・HPC(e):商品名:HPC SL、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度3.0〜5.9mPa・s、平均分子量:約70000〜100000
・HPC(f):商品名:HPC L、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度6.0〜10.0mPa・s、平均分子量:約100000〜160000
・HPC(g):商品名:HPC M、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度150〜400mPa・s、平均分子量:約400000〜800000
・HPC(h):商品名:HPC H、日本曹達製、20℃における2質量%水溶液の動粘度1000〜4000mPa・s、平均分子量:約1200000
・プルラン:商品名;PI20、林原製
・PVP(K−90):ポリビニルピロリドン、商品名;コリドン90F、BASFジャパン製
・PVP(K−30):ポリビニルピロリドン、商品名;アイフタクトK−30PH、第一工業製薬製
・アルギン酸Na:アルギン酸ナトリウム、商品名:ULV−1、キミカ製
・CMC:カルボキシメチルセルロース、商品名;1105、ダイセル化学工業製
・CMC−Na:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、商品名;セロゲンF−5A
、第一工業製薬製
・MC:メチルセルロース、商品名;SM−15、信越化学工業製
・香料:クーリングフレーバー298306、シムライズ株式会社製
【0141】
[実施例1]
6層型フィルム製剤の製造
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解させ、この液に無水エタノール360gを加えた。この液にHPC(d)318gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水168gに粉末還元麦芽糖水アメ25gを溶解した。この液に酸化チタン15g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.1gを無水エタノール112gに分散した液を加え、更にHPMC(b)60gを加えて第1の遮蔽層調製液を得た。
無水エタノール150gにl-メントール6gを溶解させ、この液に水150gを加えた。この液にHPMC(a)97gを加えて第2の遮蔽層調製液を得た。
【0142】
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に第1の遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に第1の遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ18μmの可食性の第1の遮蔽層を形成し、中間製品1を得た。
次いで、中間製品1を再度巻き出し軸にセットし、ダム部に第2の遮蔽層調製液を供給して、第1の遮蔽層の表面に第2の遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し第1の遮蔽層上に厚さ16μmの可食性の第2の遮蔽層を形成し、中間製品2を得た。これにより、厚み34μmの遮蔽層が形成されたが、遮蔽層の厚みは、上記式(2)より29.02μm以上必要であることに基づいて決定した。
次いで、中間製品2を再度巻き出し軸にセットし、第2の遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し温風にて乾燥して第2の遮蔽層上に薬物含有層を形成し、中間製品3を得た。
次いで、中間製品3の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着して、2つのPETフィルム間に、第1の遮蔽層、第2の遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、第2の遮蔽層、第1の遮蔽層が順次積層された中間製品4を得た。製剤の処方を表13に示す。
【0143】
【表13】

【0144】
次いで、中間製品4の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ128μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。このことから、遮蔽層の厚みt2を求める上記式(2)の有効性が確認された。
【0145】
[実施例2]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水40gにプルラン20gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ20μmの可食性の遮蔽層を形成した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を形成した。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着して、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
次いで、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ100μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。
【0146】
[実施例3]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水80gにPVP(K-90)20gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ25μmの可食性の遮蔽層を形成した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着して、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
次いで、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ110μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。
【0147】
[実施例4]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水80gにアルギン酸Na20gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ20μmの可食性の遮蔽層を形成した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
次いで、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ100μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。
【0148】
[実施例5]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水80gにCMC20gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ25μmの可食性の遮蔽層を形成した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ110μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。
【0149】
[実施例6]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水80gにCMC-Na20gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ25μmの可食性の遮蔽層を形成した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。
次いで、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ110μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。
【0150】
[実施例7]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
無水エタノール30g及び水12gの混合液にHPC(d)7g、HPMC(b)7gおよび酸化チタン6gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ45μmの可食性の遮蔽層を形成した。遮蔽層の厚みは、上記式(2)より10.06μm以上必要であることに基づいて決定した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。製剤の処方を表14に示す。
【0151】
【表14】

【0152】
次いで、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。なお、PETフィルムの剥離は、何の影響もなく円滑にできた。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ150μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。このことから、遮蔽層の厚みt2を求める上記式(2)の有効性が確認された。
【0153】
[実施例8]
4層型フィルム製剤の作製
水540gに塩酸フェニレフリン157.5g、d-マレイン酸クロルフェニラミン60g、ベラドンナ総アルカロイド6g、エリスリトール30g、サッカリンナトリウム30g及び亜硫酸水素ナトリウム6gを溶解し、この液に無水エタノール360g及びl-メントール1.8gを加えた。この液にHPC(d)316.2gを加えて薬物含有層調製液を得た。
水252gに粉末還元麦芽糖水アメ37.5g及び食用青色1号アルミニウムレーキ0.15gを加えた。この液に、無水エタノール168gに酸化チタン22.5gを分散した液を加えた。この液にHPMC(b) 90gを加えて遮蔽層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に遮蔽層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に遮蔽層調製液を塗工した後、温風にて乾燥し厚さ46μmの可食性の遮蔽層を形成した。これにより、厚み46μmの遮蔽層が形成されたが、遮蔽層の厚みは、上記式(2)より25.80μm以上必要であることに基づいて決定した。
次いで、遮蔽層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、遮蔽層上に薬物含有層調製液を、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が10.14mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1の薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルム間に、遮蔽層、薬物含有層、薬物含有層、遮蔽層が順次積層された中間製品2を得た。製剤の処方を表15に示す。
【0154】
【表15】

【0155】
次いで、中間製品2の一方のPETフィルムのみを手で剥離した。実験2と同様の方法にて速溶性フィルム製剤の剥離強度を測定した。測定の結果、剥離強度は、29.6gf/mm巾であった。PETフィルムは、容易に剥離できることが確認された。
次いで、PETフィルムが片面に付着した状態で、打ち抜きカッターにより14mm×20mm、角四隅r=3mmのサイズに打ち抜いた。そして、PETフィルムを吸引パットにより剥離して、厚さ152μmの速溶性フィルム製剤を得た。なお、PETフィルムは、吸引パットで容易に剥離することができた。このことから、遮蔽層の厚みt2を求める上記式(2)の有効性が確認された。
【0156】
[比較例1]
特許文献5(特開2006−316009号公報)の実施例17に記載のフィルム製剤が、速溶性でないことを明らかにすべく、下記の実験を行った。
先ず、特許文献5の実施例17に準じて、下記の5つのキャスティング溶液を調製した。
1.キャスティング溶液Aの調製
塩酸フェニレフリン10g、マレイン酸クロルフェニラミン4g、ベラドンナ総アルカロイド0.2g、アスパルテーム0.02g、キシリトール3g、サッカリンナトリウム5gを水70gに溶解した。この液に無水カフェイン26.7g、ユーカリ油3g、レモン油4g、ペパーミント油3g、l-メントール15g、ポリソルベート80 1g、モノステアリン酸デカグリセリル2g及び無水エタノール520gを加えた。更にこの液にHPC(d)20g、PVP(K-30)25g、MC4gを加えてキャスティング溶液Aを得た。
2.キャスティング溶液Bの調製
キャスティング溶液AのHPC(d)をHPC(e)に変更したこと以外は、キャスティング溶液Aと同様の方法によりキャスティング溶液Bを得た。
3.キャスティング溶液Cの調製
キャスティング溶液AのHPC(d)をHPC(f)に変更したこと以外は、キャスティング溶液Aと同様の方法によりキャスティング溶液Cを得た。
4.キャスティング溶液Dの調製
キャスティング溶液AのHPC(d)をHPC(g)に変更したこと以外は、キャスティング溶液Aと同様の方法によりキャスティング溶液Dを得た。
5.キャスティング溶液Eの調製
キャスティング溶液AのHPC(d)をHPC(h)に変更したこと以外は、キャスティング溶液Aと同様の方法によりキャスティング溶液Eを得た。
【0157】
次いで、キャスティング溶液A〜EをPETフィルムのシリコーン非剥離処理面及びシリコーン剥離処理面に、乾燥後の厚みが200μmになるように塗工し、塗工適性を下記の基準にて評価した。また塗工適性が良好であった場合、PETフィルムからの剥離性を下記の基準にて評価した。その結果を表16に示した。
【0158】
(塗工性)
○:溶液の均一な塗工が可能であった。
×:溶液がはじかれ塗工できなかった。
【0159】
(剥離性)
○:樹脂フィルムを容易に剥離できた。
×:樹脂フィルムの剥離が困難であった。
−:塗工適性が悪いため、評価不能であった。
【0160】
【表16】

【0161】
以上の結果より、特許文献5に記載の処方の中で、キャスティング溶液DをPETフィルムのシリコーン剥離処理面に塗工乾燥する場合が、最も速く溶解可能なフィルム製剤になると推察される。崩壊試験を実施するために、キャスティング溶液DをPETフィルムのシリコーン剥離処理面に塗工し乾燥してフィルム製剤を得た。なお、実施例1と比較するために、製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)において塗工乾燥後の質量が133mgになるように、塗工し乾燥した。
【0162】
(口腔内溶解・崩壊試験)
実施例1及び比較例1で得たフィルム製剤を14×20mm(R=3mm、面積2.72cm2)のサイズにカットし、それを5人パネラーの口腔内に水なしで含ませ、フィルム製剤が口腔内の唾液のみで完全に崩壊分散するまでの時間(口腔内溶解時間)を測定し、平均値を算出した。また、同一サイズのカット製剤をシンカーに入れ、日本薬局方一般試験法崩壊試験法に準じてフィルム製剤の崩壊時間を測定(n=5)し、平均値を算出した。これらの測定結果を表17に示す。
【0163】
【表17】

【0164】
比較例1のフィルム製剤は、口腔内溶解時間が7分以上、崩壊時間が19分以上であり、速溶性ではないことが確認された。よって、特許文献5の実施例17記載の処方では、速溶性の製剤を作製することができないことが判明した。また、打ち抜いたフィルム製剤をアルミ袋に封入し、80℃の恒温槽に12時間保管したところ、保管後のフィルム製剤はアルミ袋の内面に付着したものも確認された。
【0165】
[比較例2]
特許文献6(特表2002−525306号公報)の実施例21Bに記載のフィルム製剤の特性を確認すべく、下記の実験を行った。
特許文献6の実施例21Bの処方にしたがって、調製液を作製した。すなわち、安息香酸ナトリウム0.0954g、アセスルファムカリウム0.6814g、アスパルテーム1.9078gを水100gに溶解した。この液に酸化チタン0.3407g及び塩酸フェニレフリン10.0000gを加えた。更にこの液にローカストビーンガム0.0954g、キサンタンガム0.0818g及びカラジーナン0.4088gを加えた。次いで涼感剤(クーリングフレーバー)0.1363g、l-メントール2.7255g、ポリソルベート80 0.4770g、エキセルP-40(花王株式会社製)0.4770g、PG4.0882g、オリーブ油0.6814gをこの液に加えた。最後にプルラン21.8036gを加え、撹拌し、調製液を得た。
次いで、調製液をPETフィルムの非離型処理面に300μmのクリアランスで塗工後、温風乾燥してPETフィルム上に薬物含有層を形成し、フィルム製剤を得た。
特許文献6の実施例21Bの処方で薬物含有層を形成することが可能であったが、打ち抜きカッターを用いてフィルム製剤を所定の大きさ(14mm×20mm、r=3mm)に打ち抜きを試みたところ、薬物含有層が刃に張り付き易く、また刃に張り付いた薬物含有層を無理に引き剥がそうとすると、薬物含有層が柔らか過ぎて伸びてしまった。このことから、比較例2のフィルム製剤は形態保持性が極めて悪いことがわかった。また、打ち抜いたフィルム製剤ををアルミ袋に封入し、80℃の恒温槽に12時間保管したところ、保管後のフィルム製剤はアルミ袋の内面に張り付いたものも確認された。
【0166】
[比較例3]
HPMCで構成される薬物含有層のみからなる1層型製剤の作製
塩酸フェニレフリン5.25g、d-マレイン酸クロルフェニラミン2.00g、ベラドンナ総アルカロイド0.20g、サッカリンナトリウム1.00g、亜硫酸水素ナトリウム0.20g及びエリスリトール1.00gを精製水18.00gに溶解した。この液に無水エタノール12.00g及びHPMC(a)10.60gを加えて薬物含有層調製液を得た。
次いで、裏面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機の巻き出し軸にセットし、ダム部に薬物含有層調製液を供給して、PETフィルムの非剥離処理面に薬物含有層調製液を製剤1枚当たりの面積(長方形14mm×20mm、角四隅r=3mm 、面積2.72cm2)における乾燥後の質量が20.28mgになるように、塗工し、温風にて乾燥して中間製品1を得た。
次いで、中間製品1を吸着パットで吸引し、PETフィルムから薬物含有層の剥離を試みたが、吸着パットでPETフィルムからフィルム製剤のみを吸い取ることはできなかった。爪でフィルム製剤の一部を引掻いてむりやり手でPETフィルムから剥がすと、フィルム製剤は爪で引掻く際に傷つき、また手でむりやり剥がすと伸びてしまい剤形を保持できず、一部は切れてしまうものもあった。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】塩酸フェニレフリン含有フィルム製剤中の塩酸フェニレフリン含有量と剥離強度との関係を示す図である。
【図4】塩酸フェニレフリン含有フィルム製剤の遮蔽層の厚みと剥離強度との関係の一例を示す図である。
【図5】塩酸フェニレフリン含有フィルム製剤の遮蔽層の厚みと剥離強度との関係の一例を示す図である。
【図6】塩酸フェニレフリン含有フィルム製剤の遮蔽層の厚みと剥離強度との関係の一例を示す図である。
【図7】剥離強度の測定方法の説明図である。
【図8】剥離強度の測定に使用する試験片を示す図である。
【図9】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図10】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図11】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図12】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図13】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図14】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図15】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図16】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図17】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図18】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造工程の一例を示す図である。
【図19】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造に使用する塗工装置の一例を示す説明図である。
【図20】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造に使用する圧着装置の一例を示す説明図である。
【図21】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造に使用する成形装置の一例を示す説明図である。
【図22】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造に使用する成形装置の一例を示す説明図である。
【図23】本発明の塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造に使用する成形装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0168】
1(1a〜1h)、2(2a〜2h):塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤
3:樹脂フィルム
5:遮蔽層
7:薬物含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と、
該遮蔽層上に形成された、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層と、
所望により、該薬物含有層上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と
を備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤。
【請求項2】
樹脂フィルムと、
該樹脂フィルム上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と、
該遮蔽層上に形成された、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層と、
所望により、該薬物含有層上に形成された、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層と
を備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、少なくとも前記遮蔽層の形成面が剥離処理されていないものである、請求項2記載の製剤。
【請求項4】
前記可食性高分子物質がヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・カリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びアルギン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記可食性高分子物質としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを含み、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが下記(a)、(b)及び(c)から選ばれる少なくとも1種であり、前記ヒドロキシプロピルセルロースが下記(d)及び(e)から選ばれる少なくとも1種であり、
(a)動粘度が2.5〜3.5mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(b)動粘度が5.2〜7.0mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(c)動粘度が12.5〜17.5mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(d)動粘度が2.0〜2.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース
(e)動粘度が3.0〜5.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース
前記薬物含有層の少なくとも一方の面に形成された遮蔽層の厚みt1(μm)が下記式(1);
1≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)]×W÷A (1)
(式中、
Aは、当該製剤の面積(cm2)を示し、
1は、遮蔽層の全質量に対する前記(a)の含有量(質量%)を示し、
1は、遮蔽層の全質量に対する前記(b)の含有量(質量%)を示し、
1は、遮蔽層の全質量に対する前記(c)の含有量(質量%)を示し、
2は、遮蔽層の全質量に対する前記(d)の含有量(質量%)を示し、
2は、遮蔽層の全質量に対する前記(e)の含有量(質量%)を示し、
Wは、薬物含有層中の塩酸フェニレフリンの含有量(mg)を示す。)
に示す関係を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記薬物含有層の少なくとも一方の面に形成された遮蔽層が糖類及び/又は賦形剤を更に含み、かつ該遮蔽層の厚みt2(μm)が下記式(2);
2≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)+0.288×M−0.160×T]×W÷A (2)
(式中、
Mは、遮蔽層の全質量に対する糖類の含有量(質量%)を示し、
Tは、遮蔽層の全質量に対する賦形剤の含有量(質量%)を示し、
A、E1、E2、R1、R2、S1及びWは、前記と同義である。)
に示す関係を満たす、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
口腔内で2分以内に溶解又は崩壊するものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
日本薬局方一般試験法崩壊試験法による崩壊時間が5分以内となる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
樹脂フィルム上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層を形成する第1の遮蔽層形成工程と、
前記遮蔽層上に、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも一種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層を形成する薬物含有層形成工程と、
所望により、前記薬物含有層上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層を形成する第2の遮蔽層形成工程と、
前記樹脂フィルムを必要により剥離する剥離工程と
を備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法。
【請求項10】
樹脂フィルム上に、可食性高分子物質を含有し、かつ塩酸フェニレフリンを含有しない1又は2以上の遮蔽層を形成する遮蔽層形成工程と、
前記遮蔽層上に、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と、塩酸フェニレフリンとを含有する1又は2以上の薬物含有層を形成する薬物含有層形成工程と、
前記遮蔽層及び前記薬物含有層が形成された2つの樹脂フィルムを、前記薬物含有層が対向するように重ね合わせて圧着する圧着工程と、
前記2つの樹脂フィルムのうちの少なくとも一方を剥離する剥離工程と
を備える、塩酸フェニレフリン含有速溶性フィルム製剤の製造方法。
【請求項11】
前記可食性高分子物質がヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・カリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びアルギン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
前記可食性高分子物質としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを含み、
該ヒドロキシプロピルメチルセルロースが下記(a)、(b)及び(c)から選ばれる少なくとも1種であり、該ヒドロキシプロピルセルロースが下記(d)及び(e)から選ばれる少なくとも1種であり、
(a)動粘度が2.5〜3.5mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(b)動粘度が5.2〜7.0mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(c)動粘度が12.5〜17.5mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
(d)動粘度が2.0〜2.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース
(e)動粘度が3.0〜5.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース
前記遮蔽層の厚みt1(μm)が下記式(1);
1≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)]×W÷A (1)
(式中、
Aは、当該製剤の面積(cm2)を示し、
1は、遮蔽層の全質量に対する前記(a)の含有量(質量%)を示し、
1は、遮蔽層の全質量に対する前記(b)の含有量(質量%)を示し、
1は、遮蔽層の全質量に対する前記(c)の含有量(質量%)を示し、
2は、遮蔽層の全質量に対する前記(d)の含有量(質量%)を示し、
2は、遮蔽層の全質量に対する前記(e)の含有量(質量%)を示し、
Wは、薬物含有層中の塩酸フェニレフリンの含有量(mg)を示す。)
に示す関係を満たす、請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項13】
前記薬物含有層の少なくとも一方の面に形成された遮蔽層が糖類及び/又は賦形剤を更に含み、かつ該遮蔽層の厚みt2(μm)が下記式(2);
2≧[0.177×E1+0.143×(R1+E2)+0.101×(S1+R2)+0.288×M−0.160×T]×W÷A (2)
(式中、
Mは、遮蔽層の全質量に対する糖類の含有量(質量%)を示し、
Tは、遮蔽層の全質量に対する賦形剤の含有量(質量%)を示し、
A、E1、E2、R1、R2、S1及びWは、前記と同義である。)
に示す関係を満たす、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
10cm/minの速さで前記樹脂フィルムを剥離したときの剥離強度が80gf/25mm巾以下となる、請求項12又は13記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−84177(P2009−84177A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254054(P2007−254054)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(000161714)救急薬品工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】