説明

塩酸ブプロピオンの放出調節錠剤

【課題】本発明は、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩、好ましくは塩酸ブプロピオンの放出調節錠剤に関する。
【解決手段】(i)有効量の塩酸ブプロピオン、結合剤、滑沢剤を含むコアと、および(ii)前記コアを取り囲む制御放出性コートと、および(iii)前記制御放出性コートを取り囲む防湿層とを含み、ウェルブトリン(登録商標)またはザイバン(登録商標)/ウェルブトリン(登録商標)SR錠と生物学的に同等である塩酸ブプロピオンの放出調節錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩、好ましくは塩酸ブプロピオンの放出調節錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブプロピオンは、三環系薬剤、四環系薬剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、または他の知られている抗うつ剤と化学的に無関係な抗うつ剤である。この薬物は、生体内におけるその神経化学的および挙動的なプロファイルの点からすると精神刺激薬に似ているが、臨床的に処方される投与量でヒトにおいて刺激薬のような効果を確実には生じない。その構造は、ジエチルプロピオンの構造によく似ており、フェニルエチルアミンに関係している。ブプロピオンは、(±)−1−(3−クロロフェニル)−2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−1−プロパノン塩酸塩と命名され、その一般名塩酸アンフェブタモンによって表記される。塩酸ブプロピオンは、即時放出形態(ウェルブトリン(Wellbutrin)(登録商標))および持続放出形態(ウェルブトリン(登録商標)SRおよびザイバン(Zyban)(登録商標))として市販されている。ウェルブトリン(登録商標)SRとザイバン(登録商標)は共に、化学的および薬学的に同一である。
【0003】
ブプロピオンの抗うつ効果の神経化学的メカニズムはあまり知られていない。ブプロピオンは、モノアミン酸化酵素を阻害しない。ブプロピオンは、神経が互いにメッセージを送るのに使用する脳内の化学物質に影響を及ぼす。これらの化学的メッセンジャーは、神経伝達物質と呼ばれる。神経によって放出される神経伝達物質は、再使用のためにそれらを放出する神経によって再び取り込まれる(これは、再取り込みと呼ばれる)。多くの専門家は、放出される神経伝達物質量の不均衡によってうつ病が引き起こされると考えている。ブプロピオンは、神経伝達物質であるドーパミン、セロトニン、およびノルエピネフリンの再取り込みを阻害することによって機能し、その作用は、他の神経にメッセージを伝達するのに利用できるようにされるより多くのドーパミン、セロトニン、およびノルエピネフリンをもたらすと考えられている。したがって、ブプロピオンは、その主な効果がドーパミンに対してであるという点で独特であり、その効果は、SSRI(例えば、パロキセチン(パキシル(登録商標))、フルオキセチン(プロザック(登録商標))、セルトラリン(ゾロフト(登録商標)))または三環系抗うつ剤またはTCA(例えば、アミトリプチリン(エラビル(登録商標))、イミプラミン(トフラニル(登録商標))、デシプラミン(ノルプラミン(登録商標)))と共通していない。
【0004】
ウェルブトリン(登録商標)およびウェルブトリン(登録商標)SRは、うつ病の管理に使用される。ザイバン(登録商標)は、喫煙をやめたいと思っている患者に対する援助手段として承認されている。ブプロピオンの即時放出製剤であるウェルブトリン(登録商標)は、1日3回、好ましくは投与の間を6時間以上あけて投与される。1日に300mgを超えるブプロピオンを必要とする患者の場合、各投与量は150mgを超えてはならない。これには、投与の間を少なくとも4時間あけて1日に少なくとも4回、錠剤の投与が必要である。即時放出製剤は、約45分の間に溶出媒体中への75%を超えるブプロピオンの放出をもたらし、ブプロピオンの主な副作用の1つは発作の発生とされており、この副作用は、1つには、系内へのブプロピオンの即時的な放出と強く関係しているようである。したがって、発作の発生を避けるために持続放出製品が開発された。持続放出製品は、1日2回投与される。
【0005】
一般的に、患者コンプライアンスは、複数回投与処方を必要とする投薬に関連する問題であり、うつ病にかかっている者では特に問題とされる。持続放出製剤は、投与処方を単純化し、患者コンプライアンスを高めたが、投与処方をさらに単純化し、投与処方に対する患者の順守をさらに改善する余地が依然として存在する。認可された安定な1日1回放出調節ブプロピオン製剤の開発は、当技術分野における前進になるであろう。
【0006】
ブプロピオンの持続放出錠剤形態は、従来技術において報告されている。米国特許第4,687,660号は、コアおよびコーティングの形状をしており、コアが、塩酸ブプロピオンと、1種または複数の賦形剤と、場合により浸透促進剤(osmotic enhancing agent)とを共に含み、コーティングが、非水溶性透水性皮膜形成ポリマー(water−insoluble,water−permeable film−forming polymer)(酢酸セルロースなど)と、細孔形成剤(微細ラクトースおよび炭酸ナトリウムなど)と、場合によりいわゆる透水性促進剤(ポリエチレングリコールなど)と、やはり場合により可塑剤(plasticizer)とを含む錠剤を開示している。
【0007】
米国特許第5,358,970号および第5,427,798号は、マトリックス技術に基づく塩酸ブプロピオンの持続放出製剤について記載している。マトリックスという用語は、マトリックスと呼ばれる非崩壊性コアを作る賦形剤中に薬物が包埋されている錠剤を指す。薬物の拡散は、このコアを通して起きる。塩酸ブプロピオンは不安定であるため、上記2件の特許に記載の製品は、十分な安定性を得るための安定化剤を必要とする。この安定化剤は、酸性化合物、好ましくは塩酸システインである。マトリックスシステムの主な欠点は、それらが、一般に一次放出プロファイルを示すことである。すなわち、錠剤の表面にある薬物粒子が最初に溶出され、薬物が急速に放出される。その後、錠剤の表面からの距離が遠い順に薬物粒子が溶出され、細孔における拡散によって錠剤の外部へ放出される。したがって、薬物の拡散距離は、放出プロセスが進行するにつれて増加することになる。通常、一次放出プロファイルよりむしろ、ゼロ次またはゼロ次に近い放出プロファイルが得られることが好ましい。ゼロ次放出システムは、確定した時間にわたる一定速度の薬物放出をもたらす。主に、このシステムは、活性な薬物化合物の一定な血中濃度をより少ない投与で維持できるように、半減期の短い薬物について使用される。
【0008】
米国特許第6,589,553号および国際公開WO02/062299は、コーティングされたペレットの2つの集団を有し、各々が異なるpHで塩酸ブプロピオンを放出する、1日1回のカプセル製剤について記載している。ペレットの一方の集団は、約4.8以下に相当するpHで薬物を放出するようにコーティングされる。ペレットのこの集団からの薬物の放出は、上部胃腸管において起きると予想される。ペレットの他方の集団は、7以上のpHで薬物を放出するようにコーティングされる。この集団からのブプロピオンの放出は、下部胃腸管において起きると予想される。示された一例において、ブプロピオンのザイバン(登録商標)に対する相対的バイオアベイラビリティーは、Cmax比に関しては40%に過ぎず、AUC0-inf比に関しては80%に過ぎなかった。示された別の例において、ブプロピオンのザイバン(登録商標)に対する相対的バイオアベイラビリティーは、CmaxおよびAUC0-infに関して48%および59%に過ぎなかった。さらに、この参考文献は、コーティングされていない活性なペレットの第3の集団の導入について記載しており、ブプロピオン放出のさらなる修正および改善をもたらすといわれている。これらの参考文献の図3および4に示される平均血漿中濃度−時間プロファイルに基づき、コーティングされていない活性なペレットの導入が1日1回の生物学的に同等な製剤につながることは容易には明らかでない(基準製品は、ザイバン(登録商標)である)。また、2件の参考文献のどちらも、薬物の安定性データを一切示していない。
【0009】
米国特許第6,033,686号は、基本的に塩酸ブプロピオン、結合剤(binder)および滑沢剤(lubricant)からなるコアと、ならびに非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー、可塑剤および水溶性ポリマーを含むコーティングとを含み、安定化剤を含まず、細孔形成剤を含まない制御放出錠剤について記載している。この‘686特許に由来する製品は、1日2回の製品である。
【0010】
米国特許第6,096,341号と第6,143,327号は共に、塩酸ブプロピオンの遅延放出製剤に関する。米国特許第6,096,341号は、基本的に塩酸ブプロピオン、結合剤および滑沢剤からなるコアと、ならびに基本的に非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー、可塑剤および水溶性ポリマーからなるコーティングとを含み、安定化剤を含まず、細孔形成剤を含まない制御放出錠剤を提供している。米国特許第6,143,327号は、基本的に塩酸ブプロピオン、結合剤および滑沢剤からなるコアと、基本的に非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー、可塑剤および水溶性ポリマーからなる制御放出性コート(control−releasing coat)と、ならびに基本的にメタクリルポリマーおよび可塑剤からなる第2のコートとを含み、安定化剤を含まず、細孔形成剤を含まない制御放出錠剤を提供している。しかしながら、米国特許第6,143,327号に記載の製剤は、生物学的同等性に関するFDAのガイドラインに適合していない(本明細書中の実施例8を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,687,660号
【特許文献2】米国特許第5,358,970号
【特許文献3】米国特許第5,427,798号
【特許文献4】米国特許第6,589,553号
【特許文献5】国際公開WO02/062299
【特許文献6】米国特許第6,033,686号
【特許文献7】米国特許第6,096,341号
【特許文献8】米国特許第6,143,327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在のところ、認可された市販の安定な1日1回の投薬形態のブプロピオン剤形は存在しない。したがって、ブプロピオンまたは薬学的に許容できるその塩の安定な1日1回の投薬形態の生物学的に同等な製剤が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(定義)
「放出調節剤形」は、USPにより、時間経過および/または位置に関する薬物放出特性が、従来の形態によって提供されない治療上または利便性の目的を達成するために選択される剤形と定義される。延長放出(extended−release)剤形は、投与回数の半減または患者コンプライアンスもしくは治療実績の向上を可能にする。USPは、制御放出、長期放出および持続放出などの用語が延長放出と互換性があると考えている。したがって、「放出調節(modified−release)」、「制御放出(controlled−release)」、「長期放出(prolonged−release)」、「延長放出(extended−release)」、および「持続放出(sustained−release)」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0014】
「ブプロピオンの薬学的に許容できる塩」という用語には、患者によって生理的に容認される塩が含まれる。通常、そのような塩は、無機酸もしくは塩基および/または有機酸または塩基から調製される。そのような酸および塩基の例は、当業者によく知られている。本発明は、塩酸ブプロピオンの使用を特に企図しているが、他の薬学的に許容できる塩の使用は、本発明の範囲内にある。本明細書で使用する「有効量」という用語は、「薬学的有効量」を意味する。「薬学的有効量」は、患者に投与された場合に明らかな生物学的反応を引き出すのに十分であるブプロピオンの薬学的に許容できる塩の量または数量である。当然のことながら、正確な治療量は、患者の年齢および状態ならびに治療される状態の性質に左右され、付き添う医師の最終的な判断によることになる。
【0015】
本明細書で使用する「防湿層(moisture barrier)」という用語は、湿気の吸収を妨害するか、あるいは遅延させるバリアーである。塩酸ブプロピオンは、極めて吸湿性が高いため、比較的不安定で、高湿度条件下では特に時間と共に分解を受けやすいことが知られている。防湿層の構成成分の比率および制御放出性コートの上に塗布される防湿層の量は、この防湿層が、腸溶性コート(enteric coat)に関するUSPの定義および要件に含まれないようにする。防湿層は、腸溶性および/またはアクリルポリマー、好ましくはアクリルポリマー、場合により可塑剤、および浸透促進剤を含むことが好ましい。浸透促進剤は、コーティングの物理的破壊なしに水を入れさせる親水性物質である。防湿層は、他の従来型不活性賦形剤をさらに含有してもよく、本明細書に記載の放出調節製剤の加工を改善してもよい。
【0016】
本明細書で使用する「全不純物」は、塩酸ブプロピオンの分解から生じるすべての分解産物を意味する。「分解産物」には、USP第26版の281ページに列挙されている分解産物およびアッセイ中にクロマトグラム上にピークとして現れる可能性のあるその他の分解産物が含まれる。
【0017】
本発明の放出調節錠剤は、ウェルブトリン(登録商標)またはザイバン(登録商標)/ウェルブトリン(登録商標)SR錠と生物学的に同等(bioequivalent)である。「生物学的に同等な」という用語は、適切に設計された試験において類似の条件下で同じモル投与量で投与された場合に、薬物作用部位において薬学的等価体または薬学的代替物中の活性成分または活性部分が利用可能となる速度および程度に有意差が存在しないことを意味する。速度に意図的な差が存在する場合(例えば、特定の延長放出剤形において)、特定の薬学的等価体または代替物は、薬物作用部位において各製品由来の活性な成分または部分が利用可能になる程度に有意差がなければ生物学的に同等であると見なされる。このことは、活性な成分または部分が薬物作用部位において利用可能になる速度の差が意図的であり、かつラベリング案に反映されており、慢性使用による有効な体内薬物濃度の達成にとって本質的に違いがなく、その薬物にとって医学的に重要でないと見なされる場合に限って当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明のある実施形態による3種の異なる放出速度を持つ150mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤についての溶出プロファイルを図示するグラフである。
【図1B】本発明のある実施形態による3種の異なる放出速度を持つ300mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤についての溶出プロファイルを図示するグラフである。
【図2A】HDPEボトル(7ct、40ccおよび30ct、100cc)中、25℃±2℃/60%RH±5%RHにおいて保存された本発明のある実施形態による150mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤における相対感度係数(RRF)で補正した全不純物含有量についての統計分析を図示するグラフである。
【図2B】HDPEボトル(7ct、40ccおよび30ct、100cc)中、25℃±2℃/60%RH±5%RHにおいて保存された本発明のある実施形態による300mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤における相対感度係数(RRF)で補正した全不純物含有量についての統計分析を図示するグラフである。
【図3A】本発明のある実施形態による2×150mg(q.d.)および1×300mg(q.d.)用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤投与後における用量強度同等性試験での平均血漿中ブプロピオン濃度を図示するグラフである。
【図3B】本発明のある実施形態による2×150mg(q.d.)および1×300mg(q.d.)用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤投与後における用量強度同等性試験での平均血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度を図示するグラフである。
【図3C】本発明のある実施形態による2×150mg(q.d.)および1×300mg(q.d.)用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤投与後における用量強度同等性試験での平均血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度を図示するグラフである。
【図3D】本発明のある実施形態による2×150mg(q.d.)および1×300mg(q.d.)用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤投与後における用量強度同等性試験での平均血漿中ブプロピオンエリスロアミノアルコール濃度を図示するグラフである。
【図4A】本発明のある実施形態による150mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤単回投与後の平均血漿中ブプロピオン濃度に対する食品の効果を図示するグラフである。
【図4B】図4Aで示した平均血漿中ブプロピオン濃度を、従来技術の150mgザイバン(登録商標)錠単回投与後の平均血漿中ブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図4C】本発明のある実施形態による150mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤単回投与後の平均血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度を、従来技術の150mgザイバン(登録商標)錠単回投与後の平均血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図4D】本発明のある実施形態による150mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤単回投与後の平均血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度を、従来技術の150mgザイバン(登録商標)錠単回投与後の平均血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図4E】本発明のある実施形態による150mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤単回投与後の平均血漿中ブプロピオンエリスロアミノアルコール濃度を、従来技術の150mgザイバン(登録商標)錠単回投与後の平均血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図5A】本発明のある実施形態による単回投与1日1回300mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の平均血漿中ブプロピオン濃度に対する食品の効果を図示するグラフである。
【図5B】本発明のある実施形態による1日1回単回投与300mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の平均血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度に対する食品の効果を図示するグラフである。
【図5C】本発明のある実施形態による1日1回単回投与300mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の平均血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度に対する食品の効果を図示するグラフである。
【図5D】本発明のある実施形態による1日1回単回投与300mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の平均血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度に対する食品の効果を図示するグラフである。
【図6A】絶食状態で患者に投与された場合の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオン濃度を図示するグラフである。
【図6B】図5Aに示した平均定常状態血漿中ブプロピオン濃度を、絶食状態における従来技術のウェルブトリン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図6C】絶食状態で患者に投与された場合の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度を、絶食状態における従来技術のウェルブトリン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図6D】絶食状態で患者に投与された場合の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度を、絶食状態における従来技術のウェルブトリン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度と比較するグラフである。
【図6E】絶食状態で患者に投与された場合の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンエリスロアミノアルコール濃度を、絶食状態における従来技術のウェルブトリン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンエリスロアミノアルコール濃度と比較するグラフである。
【図7A】絶食条件下の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオン濃度を図示するグラフである。
【図7B】図7Aに示した平均定常状態血漿中ブプロピオン濃度を、絶食条件下の従来技術の150mg(b.i.d.)ザイバン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図7C】絶食条件下の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度を、絶食条件下の従来技術の150mg(b.i.d.)ザイバン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ヒドロキシブプロピオン濃度と比較するグラフである。
【図7D】絶食条件下の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度を、絶食条件下の従来技術の150mg(b.i.d.)ザイバン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンスレオアミノアルコール濃度と比較するグラフである。
【図7E】絶食条件下の本発明のある実施形態による1日1回300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンエリスロアミノアルコール濃度を、絶食条件下の従来技術の150mg(b.i.d.)ザイバン(登録商標)錠の複数回投与後の平均定常状態血漿中ブプロピオンエリスロアミノアルコール濃度と比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の概要)
本発明は、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩、好ましくは塩酸ブプロピオンの放出調節錠剤に関する。従来技術の市販ウェルブトリン(登録商標)またはザイバン(登録商標)/ウェルブトリン(登録商標)SR錠によって得られない本発明の放出調節錠剤の利点は、この放出調節錠剤が1日1回の投与処方を可能にし、市販の従来技術錠剤と生物学的に同等であり、食事の影響を示さないことである。
【0020】
本発明の一態様によれば、(i)有効量のブプロピオンの薬学的に許容できる塩、結合剤、滑沢剤を含むコアと、(ii)前記コアを取り囲む制御放出性コートと、(iii)前記制御放出性コートを取り囲む防湿層とを含む放出調節錠剤であって、生物学的に同等であり、約2時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約20%以下、好ましくは約2%〜約18%、より好ましくは約4%〜約8%、最も好ましくは約5%が放出され、約4時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約15%〜約45%、好ましくは約21%〜約37%、より好ましくは約28%〜約34%、最も好ましくは約32%が放出され、約8時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約40%〜約90%、好ましくは約60%〜約85%、より好ましくは約68%〜約74%、最も好ましくは約74%が放出され、約16時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約80%以上、好ましくは約93%以上、より好ましくは約96%以上、最も好ましくは約99%以上が放出されるような溶出プロファイルを示す放出調節錠剤が提供される。
【0021】
一実施形態において、防湿層は、USP試験により、腸溶層でコーティングされた錠剤に必要とされる、0.1N HCl中に1時間置かれた場合、放出される薬物の総量が10%を超えず、pH6.8緩衝液中、45分では薬物の75%以上が放出されると定義される腸溶性コートとしての役割を果たさない。
【0022】
本発明の一実施形態において、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩は、乾燥コア重量の少なくとも約94重量%存在する。本発明の放出調節錠剤は、塩酸ブプロピオン約50mg〜約450mgを含有することが好ましい。本発明の錠剤は、塩酸ブプロピオン約150mgまたは300mgを含有することが最も好ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態において、結合剤の量は、乾燥コア重量の好ましくは約1重量%〜約6重量%、より好ましくは約3重量%存在する。結合剤は、ポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0024】
本発明の別の実施形態において、滑沢剤は、乾燥コア重量の好ましくは約1重量%〜約6重量%、より好ましくは約3重量%存在する。本発明の錠剤にとって有用な滑沢剤は、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、水素化植物油(hydrogenated vegetable oils)およびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。好ましい滑沢剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0025】
本発明の別の実施形態において、制御放出性コートは、基本的に非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマーからなり、存在する量は、制御放出性コート乾燥重量の約35重量%〜約60重量%と変わってもよい。非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマーの量は、150mg投与量の場合は制御放出性コート乾燥重量の約50重量%、300mg投与量の場合は制御放出性コート乾燥重量の約45重量%存在することが好ましい。非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマーは、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリビニルアルコールおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。好ましい非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマーは、エチルセルロースであり、エチルセルロースグレードPR100、エチルセルロースグレードPR20、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。好ましい非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマーは、エチルセルロースグレードPR100である。
【0026】
本発明の別の実施形態において、可塑剤の量は、制御放出性コート乾燥重量の約6重量%〜約30重量%、より好ましくは約12重量%存在する。本発明の錠剤にとって有用な可塑剤は、ポリオール、有機エステル、油/グリセリドおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。好ましい可塑剤は、ポリエチレングリコール1450である。
【0027】
本発明の別の実施形態において、存在する水溶性ポリマーの量は、制御放出性コート乾燥重量の約25重量%〜約50重量%と変わってもよい。水溶性ポリマーは、制御放出性コートの約43重量%存在することが好ましい。水溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。好ましい水溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドンである。
【0028】
本発明の別の実施形態において、本発明の150mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の場合の非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー:可塑剤:水溶性ポリマーの比は、約3:1:4〜約5:1:3と変化してもよく、好ましい比は、4:1:3である。
【0029】
本発明の別の実施形態において、本発明の300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の場合の非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー:可塑剤:水溶性ポリマーの比は、約7:2:6〜約19:5:18と変化してもよく、好ましい比は、13:4:12である。
【0030】
本発明の別の実施形態において、制御放出性コートで錠剤コアをコーティングした後に増加する重量は、乾燥錠剤コア重量の3%〜約30%と変化してもよい。本発明の放出調節錠剤の150mg投与量の場合、増加する重量は、乾燥錠剤コア重量の約13%〜約16%と変わってもよく、好ましい重量増加は、乾燥錠剤コア重量の約15%である。本発明の300mg投与量放出調節錠剤の場合、制御放出性コートの塗布後に増加する重量は、乾燥錠剤コア重量の約8%〜約10%と変わってもよく、9%の重量増加が好ましい。
【0031】
本発明の別の実施形態において、防湿層は、腸溶性および/またはアクリルポリマー、可塑剤ならびに浸透促進剤を含み、約13:2:5の比で存在する。腸溶性および/またはアクリルポリマーは、アクリルポリマーであることが好ましく、オイドラギット(登録商標)L30D−55として市販されているメタクリル酸コポリマーであることが好ましい。存在するメタクリル酸コポリマーの量は、防湿層乾燥重量の約30重量%〜約90重量%と変わってもよいが、防湿層乾燥重量の約66%存在することが好ましい。
【0032】
本発明の別の実施形態において、可塑剤は、ポリオール、有機エステル(organic esters)、油/グリセリドおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。防湿層において使用するのに好ましい可塑剤は、ポリオールと有機エステルの組合せである。組合せにおける好ましいポリオールは、ポリエチレングリコール1450であり、この場合の組合せではクエン酸トリエチルが好ましい有機エステルとなる。有機エステルのポリオールに対する比は、1:2であることが好ましい。可塑剤は、防湿層乾燥重量の約1重量%〜約30重量%、より好ましくは約10重量%存在することが好ましい。
【0033】
本発明の別の実施形態において、浸透促進剤は、親水性物質であり、二酸化ケイ素、コロイド状シリコン、ラクトース、親水性ポリマー、塩化ナトリウム、酸化アルミニウム、コロイド状酸化アルミニウム、シリカ、微結晶性セルロースおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択してもよい。浸透促進剤は、二酸化ケイ素であることが好ましく、防湿層乾燥重量の約20重量%〜約40重量%、より好ましくは約25重量%存在する。
【0034】
本発明の別の実施形態において、防湿層は、防湿層の塗布後に増加する重量が、本発明の150mgと300mg投与量放出調節錠剤のどちらの場合も、錠剤乾燥重量の約6%以下、好ましくは約2.5%以下であるように塗布される。
【0035】
本発明の別の実施形態において、本発明の放出調節錠剤は、25℃±2℃/60%RH±5%RHにおける約12カ月の保存後に、塩酸ブプロピオンの少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約97.5%、さらには98.5%、さらには99%が安定なままであるような安定な塩酸ブプロピオン製剤を提供する。
【0036】
本発明の別の実施形態において、本発明の放出調節錠剤は、25℃±2℃/60%RH±5%RHにおける約18カ月の保存後に、塩酸ブプロピオンの少なくとも約95%、好ましくは少なくとも97.5%、さらには98.5%、さらには99%が安定なままであるような安定な塩酸ブプロピオン製剤を提供する。
【0037】
本発明の別の実施形態において、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤は、ウェルブトリン(登録商標)またはザイバン(登録商標)/ウェルブトリン(登録商標)SR錠と生物学的に同等であり、食事の影響を示さない。
【0038】
本発明の別の態様において、防湿層は、錠剤中への湿気の吸収を実質的に妨害するか、あるいは遅延させ、それによって塩酸ブプロピオンの安定性を高める。
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載の本発明は、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩および従来型賦形剤を含むコアであって、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩の放出を制御する制御放出性コートによって取り囲まれたコアと、および制御放出性コートを取り囲む防湿層とを有する放出調節錠剤に関する。本発明の放出調節錠剤は、生物学的に同等である。
1.コア
放出調節錠剤のコアは、有効量のブプロピオンの薬学的に許容できる塩、結合剤、および滑沢剤を含み、他の従来型の不活性賦形剤を含有してもよい。存在する活性薬物の量は、錠剤乾燥重量の約50重量%〜約90重量%、好ましくは錠剤乾燥重量の約70重量%〜約90重量%の量で変わってもよい。ブプロピオンの薬学的に許容できる塩は、塩酸ブプロピオンであることが好ましい。この錠剤は、約50mg〜約450mgと変わり得る量の塩酸ブプロピオンを含む。この錠剤は、塩酸ブプロピオン150mgまたは300mgを含むことが好ましい。150mg投与量錠剤の場合、塩酸ブプロピオンは、錠剤乾燥重量の約78重量%である。300mg投与量の場合、塩酸ブプロピオンの量は、錠剤乾燥重量の約83重量%存在する。本発明の150mgと300mg投与量塩酸ブプロピオン放出調節錠剤のどちらの場合も、塩酸ブプロピオンの量は、各投与量について乾燥コアの約94重量%存在する。
【0039】
必要な機械的強度によって顆粒および錠剤を形成できることを保証するため、結合剤(固着剤と呼ばれることもある)が薬物−充填剤混合物に添加される。結合剤は、様々な方法、すなわち(1)湿式造粒(wet agglomeration)前に他の成分と混合される乾燥粉末として、(2)湿式造粒中に造粒液として使用され、溶液結合剤と呼ばれる溶液として、および(3)圧縮前に他の成分と混合される乾燥粉末として製剤に添加することができる。この形態において、結合剤は、乾燥結合剤と呼ばれる。一般的に、溶液結合剤が最も有効であると考えられ、したがって、溶液結合剤は、顆粒中に結合剤を組み入れる最も一般的な方法である。本明細書で使用される結合剤は、溶液結合剤の形態をとる。コアにとって有用な結合剤の非限定的な例には、加工デンプン(modified starch)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)など)およびポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーが含まれる。存在する結合剤の量は、錠剤乾燥重量の約0.5重量%〜約15重量%、好ましくは錠剤乾燥重量の約1重量%〜約6重量%、最も好ましくは錠剤乾燥重量の約3重量%と変わってもよい。150mgと300mg投与量錠剤のどちらの場合も、結合剤の量は、好ましくは各乾燥コア重量の約1重量%〜約6重量%、より好ましくは各乾燥コア重量の約3重量%存在することがある。好ましい結合剤は、ポリビニルアルコールである。
【0040】
固形物とダイ壁との摩擦を低くして、錠剤形成および排出が起きることを保証するため、滑沢剤が医薬製剤に添加される。打錠中の高い摩擦は、不十分な錠剤品質(排出中の錠剤のキャッピングさらには崩壊も、および錠剤縁部の垂直な擦過痕)を含む一連の問題を引き起こすことがあり、生産を中止することさえある。したがって、本明細書に記載の塩酸ブプロピオン錠剤製剤を含むほぼすべての錠剤製剤に滑沢剤が添加される。コアにとって有用な滑沢剤の非限定的な例には、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、水素化植物油(水素化綿実油(ステロテックス(登録商標))、水素化ダイズ油(ステロテックス(登録商標)HM)、および水素化ダイズ油&カスターワックス(ステロテックス(登録商標)K)など)、ステアリルアルコール、ロイシンおよびポリエチレングリコール(MW4000以上)が含まれる。滑沢剤は、ベヘン酸グリセリルであることが好ましい。存在する滑沢剤の量は、錠剤乾燥重量の約1重量%〜約5重量%、好ましくは錠剤乾燥重量の約2重量%〜約3重量%、最も好ましくは錠剤乾燥重量の約2.5重量%と変わってもよい。本発明の150mgと300mg投与量放出調節錠剤のどちらの場合も、滑沢剤は、両用量について、乾燥錠剤重量の約2.5重量%、好ましくは乾燥コア重量の約1重量%〜約6重量%、より好ましくは乾燥コア重量の約3重量%存在する。
【0041】
この段階で、コア製剤は、即時放出製剤であり、1時間以内に塩酸ブプロピオンの100%溶出をもたらす(データ省略)。コアは、有効な薬学的量のブプロピオンの薬学的に許容できる塩、結合剤、好ましくはポリビニルアルコール、および滑沢剤、好ましくはベヘン酸グリセリルのみを含むことが理想的である。しかしながら、必要ならば、本発明の目的と一致する追加の不活性賦形剤をコア製剤に添加してもよい。本明細書に記載の最終的な放出調節塩酸ブプロピオン剤形の調製を容易にし、かつ/または患者の認容性を改善するために、追加の不活性賦形剤を添加してもよい。追加の不活性賦形剤は、当業者によく知られており、関連文献、例えばthe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに見いだすことができる。そのような賦形剤の非限定的な例には、噴霧乾燥ラクトース、ソルビトール、マンニトール、および任意のセルロース誘導体が含まれる。
【0042】
本明細書に記載の本発明の放出調節錠剤のコアを形成するために圧縮される顆粒は、湿式造粒法によって製造されることが好ましい。基本的に、湿式造粒は、液体(溶液結合剤)の存在下で従来のように粉末(活性薬物)をかき混ぜ、続いて乾燥するものである。錠剤コアへ最終的に圧縮される顆粒を形成するためには、塩酸ブプロピオンは、まず、好ましくは溶液結合剤と共に、例えば、グラット(ドイツ)またはエアロマティック(スイス)製の流動層造粒機のような流動層造粒機が好ましいがそれらとは限らない造粒機によって粒状にされる。
【0043】
結合剤、好ましくはポリビニルアルコールを、まず、適当な溶媒、好ましくは水に溶かすか、あるいは分散させる。次いで、造粒機、好ましくは流動層造粒機中の薬物の上に溶液結合剤を噴霧する。別の方法として、造粒は、従来型または高剪断ミキサー中で行うこともできる。必要ならば、造粒ステップに先立って、例えば充填剤などの追加の不活性賦形剤を塩酸ブプロピオンと混ぜることができる。
【0044】
続いて、形成された顆粒を乾燥し、次いで顆粒を滑沢剤と混ぜ合わせる前にふるいにかける。乾燥顆粒は、1.4mmメッシュのスクリーンを通してふるいにかけられることが好ましい。次いで、ふるいにかけた顆粒を、滑沢剤、および、必要ならば、本発明の放出調節錠剤の加工を改善すると思われるその他の追加の不活性賦形剤と混ぜ合わせる。顆粒と滑沢剤、および、必要ならば、例えば流動促進剤などの任意に追加した不活性賦形剤との混合は、Vブレンダーまたはその他の適当な混合機器で行うことができる。流動促進剤は、粉末の流動性を改善する。このことは、高い生産速度の錠剤生産および直接圧縮中には特に重要である。しかしながら、十分な流動を得るための要件が高いため、流動促進剤は、打錠前の造粒に添加されることも多い。続いて、混ぜ合わされた顆粒は錠剤に圧縮され、これ以後のものは錠剤コアと呼ばれる。錠剤コアは、当業者によく知られている標準的な技法および設備の使用により得ることができる。錠剤コアは、適当なパンチが取り付けられたロータリープレス(マルチステーションプレスとも呼ばれる)によって得られることが理想的であるが、必ずしもそうである必要はない。
2.錠剤コーティング
錠剤コアは、2段階でコーティングされる。制御放出性コーティングは、錠剤コアの表面上に直接塗布され、ブプロピオンの薬学的に許容できる塩の放出を制御する役割を果たす。防湿層は、制御放出性コートの表面上に直接塗布され、湿気の吸収を妨害するか、あるいは遅延させる。
2.1 制御放出性コート
制御放出性コートは、非水溶性、透水性皮膜形成ポリマー、可塑剤および水溶性ポリマーを含む半透性コートである。
【0045】
制御放出性コートにとって有用な非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの非限定的な例には、セルロースエーテル、セルロースエステル、およびポリビニルアルコールが含まれる。好ましい非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーは、エチルセルロースであり、エチルセルロースグレードPR100、エチルセルロースグレードPR20およびそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。エチルセルロースグレードPR100が好ましい非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーである。非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約1重量%〜約8重量%、好ましくは、錠剤乾燥重量の約2重量%〜約6重量%と変わってもよい。本発明の150mg投与量塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の場合、非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約3重量%〜約6重量%と変わってもよい。非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約6.3重量%存在することが好ましい。制御放出性コート自体に関しては、非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、制御放出性コート乾燥重量の約35重量%〜約60重量%と変わってもよい。非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、制御放出性コート乾燥重量の約50重量%存在することが好ましい。本発明の300mg投与量塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の場合、非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約2重量%〜約5重量%と変わってもよい。非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約3.6重量%存在することが好ましい。制御放出性コート自体に関しては、非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーは、制御放出性コート乾燥重量の約45重量%存在する。
【0046】
一般的に、ポリマーの物理的特性を変えてより有効にするため、可塑剤が皮膜コーティング製剤に添加される。可塑剤の量および選択は、錠剤の硬さの一因となり、その溶出または崩壊特性、ならびにその物理的および化学的安定性に影響を及ぼすことさえある。可塑剤の1つの重要な特性は、コーティングに弾力性および柔軟性を与えることによってコーティングの脆性を減少させる能力である。本明細書に記載の制御放出性コートにとって有用な可塑剤の非限定的な例には、様々な分子量のポリエチレングリコールなどのポリオール、フタル酸ジエチルまたはクエン酸トリエチルなどの有機エステル、分留ココナツ油またはヒマシ油などの油/トリグリセリドが含まれる。制御放出性コートのための可塑剤の量は、錠剤乾燥重量の約0.5重量%〜約2重量%の量で変わってもよい。好ましい可塑剤は、ポリエチレングリコール1450である。本発明の150mg投与量塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の場合、制御放出性コート中に存在する可塑剤の量は、錠剤乾燥重量の約1重量%〜約1.5重量%と変わってもよい。可塑剤の量は、錠剤乾燥重量の約1.5重量%存在することが好ましい。本発明の300mg投与量塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の場合、存在する可塑剤の量は、錠剤乾燥重量の約0.5重量%〜約2重量%と変わ
ってもよい。150mgと300mg剤形のどちらの場合も、可塑剤は、好ましくは制御放出性コート乾燥重量の約6重量%〜約30重量%、より好ましくは制御放出性コート乾燥重量の約12重量%存在する。
【0047】
制御放出性コートにとって有用な水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。好ましい水溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドンであり、その量は、錠剤乾燥重量の約1.5重量%〜約6重量%と変わってもよい。制御放出性コート自体に関しては、存在する水溶性ポリマーの量は、制御放出性コート乾燥重量の約25重量%〜約55重量%と変わってもよい。本発明の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の150mg投与量の場合、存在する水溶性ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約3重量%〜約5重量%または制御放出性コート乾燥重量の約25重量%〜約50重量%と変わってもよい。本発明の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の300mg投与量の場合、存在する水溶性ポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約2%〜約5%および制御放出性コート乾燥重量の約43%と変わってもよい。
【0048】
本明細書に記載の本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の150mg投与量の場合、非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー:可塑剤:水溶性ポリマーの比は、約3:1:4〜約5:1:3と変化してもよい。好ましい比は、約4:1:3である。本明細書に記載の本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の300mg投与量の場合、非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー:可塑剤:水溶性ポリマーの比は、約7:2:6〜約19:5:18と変化してもよい。好ましい比は、約13:4:12である。
【0049】
一般的に、制御放出性コートの調製および塗布は、以下の通りである。非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー、好ましくはエチルセルロース、および可塑剤、好ましくはポリエチレングリコール1450を、エチルアルコールとイソプロピルアルコールの混合物などの有機溶媒に溶かす。次に、可塑剤、好ましくはポリビニルピロリドンを、均一な混合物が得られるまで加える。次いで、得られる制御放出性コート溶液を、望ましい重量増加が得られるまで、錠剤コーター、流動層装置または当技術分野において知られているその他の適当なコーティング装置を用い、錠剤コア上に噴霧する。続いて、制御放出性コートでコーティングされた錠剤コアを乾燥し、防湿層を塗布する。
【0050】
当業者は当然のことながら、透過性を制御することによって、塩酸ブプロピオンの放出および/または錠剤コアに塗布されるコーティングの量を制御できることを理解できるだろう。制御放出性コートの透過性は、非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー:可塑剤:水溶性ポリマーの比および/または錠剤コアに塗布されるコーティングの量を変えることによって変化させることができる。一般的に、より多量の非水溶性、透水性皮膜形成ポリマーにより、より延長された放出が得られる。錠剤コアへの他の賦形剤の追加も、制御放出性コートの透過性を変化させることがある。例えば、錠剤コアが膨張剤をさらに含むことが望ましい場合、膨張剤によって柔軟性の低いコートにかかる圧力がコートを破裂させるため、制御放出性コート中の可塑剤の量を増やしてコートをより柔軟にしなければならない。さらに、非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマーおよび水溶性ポリマーの比率も、より速い溶出および/または放出プロファイルか、より遅い溶出および/または放出プロファイルのどちらが望まれるかによって変化させなければならない。
【0051】
望まれる溶出または生体内放出プロファイルにより、制御放出性コートで錠剤コアをコーティングした後に増加する重量は、乾燥錠剤コアの重量の約3%〜約30%と変わってもよい。本発明の150mg投与量放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の場合、重量増加は、乾燥錠剤コアの重量の約13%〜約16%と変わってもよい。重量増加は、乾燥錠剤コアの重量の約15%であることが好ましい。本発明の300mg投与量放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の場合、重量増加は、乾燥錠剤コアの重量の約8%〜約10%と変わってもよい。重量増加は、乾燥錠剤コアの重量の約9%であることが好ましい。
2.2 防湿層
防湿層は、制御放出性コート上に直接塗布され、腸溶性および/またはアクリルポリマー、浸透促進剤および場合により可塑剤を含む。
【0052】
腸溶性ポリマーは、アクリルポリマーであることが好ましい。アクリルポリマーは、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)(例えば、オイドラギットL30D−55)の商品名で市販されているメタクリル酸コポリマータイプC(copolymer type C)[ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)1:1]であることが好ましい。メタクリル酸コポリマーは、錠剤乾燥重量の約1%〜約3%、および防湿層乾燥重量の約55%〜約70%と変わってもよい量で存在する。本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の150mg投与量の場合、メタクリル酸コポリマーは、錠剤乾燥重量の約2%〜約3%と変わってもよい。メタクリル酸コポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約2.5%存在することが好ましい。防湿層自体に関しては、メタクリル酸コポリマーの量は、好ましくは防湿層乾燥重量の約30重量%〜約90重量%、より好ましくは防湿層乾燥重量の約66重量%存在する。本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の300mg投与量の場合、メタクリル酸コポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約1.5%〜約3%と変わってもよい。メタクリル酸コポリマーの量は、錠剤乾燥重量の約2重量%存在することが好ましい。コーティング自体に関しては、メタクリル酸コポリマーは、本発明の300mg投与量放出調節錠剤の場合、好ましくは防湿層乾燥重量の約30重量%〜約90重量%、より好ましくは防湿層乾燥重量の約66重量%存在する。
【0053】
当技術分野では、メタクリル酸コポリマーに脆化の傾向があるため、可塑剤を必要とすることが知られている。本明細書に記載の制御放出性コートにとって有用な可塑剤の非限定的な例には、様々な分子量のポリエチレングリコールなどのポリオール、フタル酸ジエチルまたはクエン酸トリエチルなどの有機エステル、分留ココナツ油またはヒマシ油などの油/グリセリドが含まれる。好ましい可塑剤は、クエン酸トリエチルとポリエチレングリコール1450の組合せである。クエン酸トリエチルのポリエチレングリコール1450に対する比は、約1:2である。可塑剤は、錠剤乾燥重量の約0.2%〜約0.5%、好ましくは約0.2%〜約0.4%と変わってもよい量で存在する。可塑剤は、150mg錠剤の場合には錠剤乾燥重量の約0.35%、300mg錠剤の場合には錠剤乾燥重量の約0.2%〜約0.4%存在する。防湿層自体に関しては、可塑剤は、本発明の150mgと300mg投与量放出調節塩酸ブプロピオン錠剤のどちらの場合も、好ましくは防湿層乾燥重量の約1重量%〜約30重量%、より好ましくは防湿層乾燥重量の約10%存在する。当技術分野では、意図した主な機能に応じ、錠剤で使用される賦形剤は、様々な
グループに下位範疇化されることはよく知られている。しかしながら、1つの賦形剤は、一連の方法で全体として薬物または錠剤の特性に影響を及ぼすことができ、したがって、錠剤製剤で使用される多くの物質は、多機能性を有するものとして記述できる。すなわち、防湿層のための可塑剤の組合せに使用されるポリエチレングリコール1450は、防湿層の親水性を高めるばかりでなく、流動促進剤としての役割も果たす。
【0054】
ポリエチレングリコール1450に加え、浸透促進剤は、流動促進剤としての役割も果たし、防湿層の親水性も高める。浸透促進剤は、親水性物質であり、二酸化ケイ素、コロイド状シリコン、ラクトース、親水性ポリマー、塩化ナトリウム、酸化アルミニウム、コロイド状酸化アルミニウム、シリカ、微結晶性セルロースおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。二酸化ケイ素が好ましい浸透促進剤である。存在する浸透促進剤の量は、錠剤乾燥重量の約0.5重量%〜約1重量%と変化してもよく、防湿層乾燥重量の約25重量%である。本発明の150mg投与量放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の場合、浸透促進剤は、錠剤乾燥重量の約0.9%、および防湿層乾燥重量の約20重量%〜約40重量%、好ましくは約25重量%の量で存在する。本発明の300mg投与量放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の場合、浸透促進剤は、錠剤乾燥重量の約0.5重量%〜約1重量%と変化してもよく、好ましくは防湿層乾燥重量の約20重量%〜約40重量%、好ましくは約25重量%存在する量で存在する。
【0055】
メタクリル酸コポリマー:可塑剤:浸透促進剤の比は、約13:2:5であることが好ましい。
【0056】
一般的に、防湿層プロセスの調製および塗布は、以下の通りである。まず、可塑剤、好ましくはポリエチレングリコール1450とクエン酸トリエチルの組合せを水に添加し、混合物を混ぜて均一にする。次に、メタクリル酸コポリマー、好ましくはオイドラギット(登録商標)L30D−55をふるいにかけ、可塑剤混合物に加え、混ぜて均一にする。別の容器では、均一な混合物が得られるまで、浸透促進剤、好ましくは二酸化ケイ素を水に溶かす。次いで、可塑剤とメタクリル酸コポリマーの混合物を浸透促進剤溶液と混ぜ合わせ、混ぜて均一にする。次いで、得られる防湿層溶液を、望ましい重量増加が得られるまで、錠剤コーター、流動層装置または当技術分野において知られているその他の適当なコーティング機器を用い、制御放出性コートでコーティングされた錠剤コア上に噴霧する。続いて、防湿層でコーティングされた錠剤を乾燥し、包装する。
【0057】
防湿層は、重量増加が、本発明の150mgと300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤双方の錠剤乾燥重量の約6%以下、好ましくは約2.5%以下であるように制御放出性にコーティングされた錠剤コアに塗布される。塗布される防湿層の量は、本明細書に記載の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤を胃液に対して抵抗性にすることはなく、薬物放出特性に対して有意な影響を及ぼさない。
【0058】
本明細書で使用する防湿層は、腸溶性コートとしての役割を果たさない。たとえ、メタクリル酸コポリマー、オイドラギット(登録商標)L30D−55が当技術分野における腸溶性コーティング製剤において言及および使用されていても、その機能性は、製剤に依存し、塗布される材料の量に依存する。当技術分野において知られているように、腸溶性コーティングは、薬物が胃液によって破壊されるか、あるいは不活性化される場合、または薬物が、胃粘膜を刺激することがある場合に塗布される。腸溶性コートの要件を満たすには、USPに記載のテスト(方法AまたはB)は、酸性媒体(0.1N HCl)中で2時間後、少なくとも6回の実験のうちどの値も溶出された活性薬物が10%を超えず、pH6.8において45分で75%以上が溶出されると規定している。塩酸ブプロピオンは、酸性媒体中で悪影響を受けることも、胃粘膜を刺激することもないが、防湿層は、以下の理由でこの要件を満たさない。(1)オイドラギット(登録商標)L30D−55を含有する皮膜で腸溶性保全を得るためには、用量単位当たりの乾燥ポリマーに基づく約6%〜約8%の重量増加が推奨される。制御放出性にコーティングされた錠剤コア上に塗布されるオイドラギット(登録商標)L30D−55固体の量は、6%以下、好ましくは2.5%以下である。(2)腸溶性保全が必要とされる場合、2時間時点における最終製品(すなわち、防湿層でコーティングされた錠剤コア)に関する溶出試験は、20%以下の制限を規定しないであろう。(3)最終の2層コート製品に対して行われる分析試験は、製品が、USP試験方法によって定義される腸溶性コーティング製品としてのすべての試験要件を満たさないことを示している。防湿層は、制御放出性コート上に直接塗布されるため、即時放出錠剤コア上に直接塗布された防湿層が腸溶性コートとしての役割を果たしているか否かを判定するため試験を行った。試験は、0.1N HClにおいて、1時間後には40%を超える塩酸ブプロピオンが錠剤コアから放出され、よって、即時放出錠剤コア上に直接塗布された防湿層は腸溶性コートに関するUSPの定義に含まれないことを示している(実施例2を参照)。また、防湿層の機能性は、開放ガラス皿において加速条件(40℃±2℃/75%RH±5%RH)下で10日間、制御放出性コートおよび防湿層で個々にコーティングされた錠剤コアのカールフィッシャー(KF)試験を用いて含水量を測定することによって確認した(実施例2を参照)。結果は、制御放出性にコーティングされた錠剤コアに関する含水量は、防湿層でコーティングされた錠剤コアよりも高いことを示している。累積的に、これらのデータは、USPによって定義される腸溶性コートとしてではなく湿気の吸収を実質的に妨害するか、あるいは遅延させるコートとしての防湿層の機能性を証明している。
【0059】
本発明の錠剤は、製剤中に細孔形成剤が存在しないにもかかわらず、塩酸ブプロピオンの延長放出を提供する。また、上記製剤は、約2時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約20%以下、好ましくは約2%〜約18%、より好ましくは約4%〜約8%、最も好ましくは約5%が放出され、約4時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約20%〜約45%、好ましくは約21%〜約37%、より好ましくは約28%〜約34%、最も好ましくは約32%が放出され、約8時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約40%〜約90%、好ましくは約60%〜約85%、より好ましくは約68%〜約74%、最も好ましくは約74%が放出され、約16時間後には、塩酸ブプロピオン含有量の約80%以上、好ましくは約93%以上、より好ましくは約96%以上、最も好ましくは約99%以上が放出されるような安定な塩酸ブプロピオン製剤を提供する。
【0060】
本明細書に記載の製剤の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の安定性に対する好ましい影響は、加速条件(40℃±2℃/75%RH±5%RH)下で6カ月間、ならびに25℃±2℃/60%RH±5%RHにおける12カ月および18カ月間の長期安定性を通して150mgあるいは300mg剤形において存在する全不純物を評価するために行われた試験において明らかである。安定性試験は、錠剤における全不純物に値の低下(ウェルブトリンSRに比べ)を示した。
【0061】
例えば、本発明の150mgと300mg用量強度放出調節錠剤のどちらの場合も、7カウント、40ccおよび30カウント、100ccのHDPEボトルにおいて、存在する全不純物は、25℃±2℃/60%RH±5%RHにおける少なくとも12カ月間の長期安定性を通して、錠剤中の塩酸ブプロピオンの量の約2.5重量%以下、好ましくは約1.5%以下、最も好ましくは約0.6%以下でなければならない。25℃±2℃/60%RH±5%RHにおける18カ月間の長期安定性において、存在する全不純物は、錠剤中の塩酸ブプロピオンの量の約2.5重量%以下、好ましくは錠剤中の塩酸ブプロピオンの量の約1.5重量%以下、最も好ましくは約0.7重量%以下でなければならない。すなわち、本発明による放出調節塩酸ブプロピオン錠剤は、薬局および薬品戸棚において通常遭遇する湿度および温度条件、すなわち、室温および35〜60%の湿度の下での長期安定性に関する12または18カ月間の保存後に、非分解塩酸ブプロピオンを少なくとも約95%w/w、より好ましくは少なくとも98%、さらには少なくとも99%含有する。すなわち、例えば錠剤などの薬学的調製物で使用される場合、35〜60%の湿度で室
温(15℃〜25℃)における1年の保存後、その効力の少なくとも95%、好ましくはその効力の少なくとも98%、さらには少なくとも99%は依然として保持されるであろう。例えば、調製時点で、錠剤が最初に300mgの塩酸ブプロピオン(標示量)を含有している場合、1年の保存後に、少なくとも285mgの塩酸ブプロピオン、好ましくは294mg以上が錠剤中に残るであろう。
【0062】
7カウント、40ccHDPEボトル配置で少なくとも6カ月間での加速条件下で保存された場合、本発明の150mg用量強度錠剤についてのKF含水量および塩酸ブプロピオンの不純物の全量は、約1%以下でなければならない。同じ加速条件下で保存された300mg用量強度(strength)についての同じボトルおよび錠剤配置は、少なくとも6カ月間は約1%以下のKF含水量および約0.6%以下の全不純物を有していなければならない。30カウント、100ccHDPEボトル配置で保存される150mg錠剤は、少なくとも6カ月間加速条件下で保存された場合、有するKF含水量は約1%以下、および全不純物は約1.2%以下でなければならない。同じ時間、同じ条件下、同じ配置で保存される300mg用量強度錠剤は、約1%以下のKF含水量および約0.8%以下の全不純物を有していなければならない。開放ガラス皿内に保存された場合、本発明の300mg用量強度放出調節錠剤のKF含水量は、加速条件下で保存された場合、3日後に約0.8%以下、好ましくは10日後に0.45%以下でなければならない。しっかり密栓されたガラスボトル中に保存された場合、KF含水量は、3日後に0.45%以下、好ましくは10日後に約0.4%以下でなければならない。
(実施例)
以下の実施例は、本発明を例示するためであって、本発明の範囲を限定する意図はない。
実施例1
1.放出調節錠剤
150mgおよび300mgの放出調節塩酸ブプロピオン錠剤それぞれに対して、異なる3つのコア製剤を表1に示すように調製した。
【0063】
【表1】

【0064】
最初に水を60±5℃に加熱する。次にその水に結合剤(ポリビニルアルコール)を均一に溶解し、0.7mmメッシュのスクリーンを通し、温度を約30℃以下に冷却させる。塩酸ブプロピオンを、例えばGlatt GPCG1流動層造粒装置などの流動層装置の上部噴霧チャンバーの中に置く。塩酸ブプロピオン上に、表2に示す製造過程パラメータに従って結合剤溶液(すなわちポリビニルアルコール溶液)を噴霧する。
【0065】
【表2】

【0066】
いったん造粒が完了したなら、顆粒を乾燥させて、温度を約35℃以下に冷却させる。次に、塩酸ブプロピオン顆粒を1.4mmメッシュの篩に通す。
【0067】
篩過した顆粒と共に滑沢剤(ベヘン酸グリセリル)を、V−ブレンダーの中で混合物が均一になるまで混合する。得られた混合物は、ロータリー打錠機(Manesty Unipress)を用いて打錠して錠剤コアとするが、150mg錠剤コアでは平均硬度約8Sc〜約25Scおよび平均厚さは約3.9mm〜約4.5mmであり、300mg錠剤コアでは平均硬度約12Sc〜約33Scおよび平均厚さ約4.8mm〜約5.4mmである。双方の用量強度に対する錠剤コアの破砕性は、0.8%以下である。次に錠剤コアを表3に示す制御放出性コート剤で被覆する。
【0068】
【表3】

【0069】
可塑剤(ポリエチレングリコール1450)を変性エチルアルコールとイソプロピルアルコールとの混合液の一部に添加し、その後非水溶性かつ透水性皮膜形成ポリマー(エチルセルロース100)を添加する。いったん混合したなら、上記の混合物に水溶性ポリマーを、大きな粒子あるいは凝集を避けるために徐々に添加する。溶液を混合して均一にする。次にコート剤混合液に変性エチルアルコールとイソプロピルアルコールとの混合液の残部を添加して、均一な溶液が得られるまで混合を継続する。コート剤溶液を、DeBeeHomogenizer(ノズルサイズ7、プロセス圧8500±2000psiおよび背圧1000±250psi)に通過させる。次に、均一なコート剤溶液を、錠剤被覆機(O’Hara 36 Side Vent)の中で表4に示したプロセスパラメータに従って錠剤コアに噴霧する。
【0070】
【表4】

【0071】
制御放出性コート剤溶液での錠剤コアの被覆は、150mgおよび300mgの錠剤コアそれぞれに対して約24mg(湿潤コート幅は約22〜約26mg)および約29mg(湿潤コート幅は約27〜約31mg)の増量を達成するまで継続する。いったん所望の重量増加を達成したなら、被覆を停止して、入口空気温度約35±2℃でパンスピードを約2rpmに設定してコート錠剤コアを乾燥する。次に乾燥冷却したコート錠剤コアを、表5に示す防湿層製剤で被覆する。
【0072】
【表5】

【0073】
可塑剤の組合せは、ポリエチレングリコール1450とクエン酸トリエチルが好ましいが、最初にこれを精製水の一部に溶解して均一に混合する。可塑剤溶液を混合している間に、メタクリル酸コポリマーは、オイドラギット(登録商標)L30D−55が好ましいが、これを0.3mmメッシュのスクリーンを通して別の容器に入れる。次に可塑剤溶液をメタクリル酸コポリマーに添加して、均一な溶液が得られるまで混合する。メタクリル酸コポリマー/可塑剤溶液を混合している間に、浸透促進剤は、好ましくは二酸化ケイ素であるが、これを精製水の残部に溶解して高速せん断混合機によって懸濁液が均一になるまで混合する。防湿層最終溶液は、浸透促進剤溶液をメタクリル酸コポリマー/可塑剤溶液と混合することによって得られる。次に、均一な防湿層溶液を、表6に示すプロセスパラメータに従って、パンコーティング装置の中で制御放出性コート錠剤コア上に噴霧する。
【0074】
【表6】

【0075】
防湿層は、150mgおよび300mg用量の放出調節錠剤それぞれに対して、約7mg(湿潤コート錠の範囲は約6.3〜約7.7mg)および約10.5mg(湿潤コート錠の範囲は約9.5〜11.5mg)の増量を達成するまで塗布される。いったん所望の重量増加を達成したなら、被覆を停止して、入口空気温度約35±2℃でパンスピードを2rpmに設定してコート錠剤を乾燥する。
【0076】
最後に、コート錠剤には、例えばOpacode(登録商標)S−1−8090の黒インクなどの適切な黒インクを用いて、錠剤打刻機(Print International)を使用して適切な表示を押印する。
【0077】
溶出性プロファイルは、150mgおよび300mgの用量のそれぞれ3つに対して、以下の溶出条件のもとに決定した。
【0078】
試験液:0.1N塩酸900mL
試験方法:米国薬局方I型装置(150mg用量)/米国薬局方II型装置(300mg用量)、75rpm、温度37℃
結果は、コート錠剤中の塩酸ブプロピオン全含有量の平均放出率として表7に示す。
【0079】
【表7】

【0080】
150mgおよび300mgの異なる3つの放出調節塩酸ブプロピオン錠剤に対する平均溶出性プロファイルを、それぞれ図1Aおよび1Bに示す。以後のすべての試験および製造には、150mgおよび300mgの剤形に対して製剤CおよびC’を選択した。
2.放出調節錠製剤の安定性
本製剤は、安定剤を含有しない。安定剤非存在下での塩酸ブプロピオンの安定性を決定するために、加速条件および長期条件の双方下で安定性試験を実施した。加速条件は40℃±2℃/75%RH±5%RHで6カ月、長期条件は25℃±2℃/60%RH±5%RHで12および18カ月であった。所定期間の終了時に、本錠剤について、塩酸ブプロピオンの分解により生じた不純物をHPLCによって分析した。分解産物には、米国薬局方(第26版、281頁)収載物やクロマトグラム上に現れた任意のその他のピークすべてが含まれた。150mgおよび300mgの剤形の双方に対する加速および長期の双方の条件下での安定性分析の結果を、表8、9および10に示す。
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
【表10】

【0084】
48カ月までの安定性のデータは、放出調節錠剤の用量強度それぞれに対する統計的有効分析によって評価した。有効プロットを図2Aおよび2Bに示す。信頼区間の上限を48カ月に投影して評価することによって、「データ駆動型」の規格を導出した。
実施例2
1.防湿層は腸溶コートではない
この研究の目的は、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤が腸溶コートされていないことを示すことであった。放出調節製剤は、塩酸ブプロピオン、結合剤、および滑沢剤を含む錠剤コアをベースとする。錠剤コアは、放出調節コートで被覆されており、コートには塩酸ブプロピオンの放出を制御する機能がある。制御放出性コート錠剤コアは、続いて防湿層で被覆されるが、防湿層は水分の吸収を実質的に妨害または遅延させる。
【0085】
錠剤の保全性(integrity)を評価するために、米国薬局方の腸溶コート溶出試験B法(バスケット法で75rpm)を用いた2段階の溶出法によって、分光光学的に薬剤の放出を測定した。試験の結果を表11および12に示す。
【0086】
【表11】

【0087】
【表12】

【0088】
酸性pH(0.1N塩酸)においては、2時間以内に約7%の塩酸ブプロピオンが放出される。しかし、pH6.8においては、1時間以内に約21%の塩酸ブプロピオンが放出される。したがって、本発明の放出調節錠剤は、溶解した活性な医薬成分の個々の値が、酸性試験液(0.1N塩酸)中で2時間後に10%を超えずpH6.8の緩衝液中で45分時に少なくとも75%となるという米国薬局方の腸溶コート錠剤の要件に適合しない。
【0089】
非腸溶性コートとしての防湿層の機能は、さらに、防湿層で直接被覆した150mg錠剤コアによって示された。表13は、溶出結果(酸性試験液中で最初の2時間)が米国薬局方の腸溶コート錠剤の要件に適合しないことを示す。
【0090】
試験液:0.1N塩酸900mL
試験方法:米国薬局方I型装置、75rpm、温度37℃
【0091】
【表13】

【0092】
酸性試験液中での放出が多かったため、緩衝液試験は実施しなかった。
2.防湿層は、水分吸収を実質的に妨害または遅延させる機能を果たす。
【0093】
水分吸収を実質的に妨害または遅延させるコートとしての防湿層の機能は、300mg錠剤コアに対する制御放出性コート錠剤コアまたは防湿層コート錠剤コアにおいて、Karl−Ficher法で含水量を求めることによって確認した。製剤の調製は、実施例1の記載と同様である。それぞれのコート錠剤を、加速条件(40℃±2℃/75%RH±5%RH)下に10日間、無蓋ガラス皿の上に別々に置いた。表14に示すように、制御放出性コート錠剤コアの含水量は、防湿層コート錠剤コアより高かった。
【0094】
【表14】

【0095】
表13および14に示すデータは、防湿層が米国薬局方によって規定された腸溶コートとして機能しないことを示す。代わりに、データはコートとしての防湿層の機能を示し、コートは吸水を実質的に妨害または遅延させるのである。
実施例3
この研究の目的は、塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の150mgおよび300mgの製品強度に対する以下の試験における用量強度の同等性を、絶食条件下に調べることであった。本発明の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤の2つの強度(150mgおよび300mg)の2元、交差、非盲検、1用量、絶食下の用量強度同等性試験を実施した。本発明の放出調節錠剤を、非喫煙の男女健常被験者に1日1回投与した。
【0096】
試験デザインは、絶食条件下での2期間、2処理、1用量、交差のデザインであった。試験期間は、3週間のウォッシュアウト期間によって分割された。被験者総数36名(男性19名、女性17名)が試験に登録され、うち被験者35名(男性19名、女性16名)が試験を終了した。被験者には以下の治療を実施した。
【0097】
A)少なくとも10時間の一晩絶食後に、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン150mg錠2錠を、室温の水240mLと共に1日1回経口投与。
【0098】
B)少なくとも10時間の一晩絶食後に、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン300mg錠1錠を、室温の水240mLと共に1日1回経口投与。
【0099】
150mg剤形2錠を1日1回および300mg剤形1錠を1日1回で投与した後、120時間の期間にわたるブプロピオンならびにその代謝物ヒドロキシブプロピオン、ブプロピオントレオ型アミノアルコール、およびエリトロ型アミノアルコールの平均血漿濃度(ng/ml)プロファイルのグラフを、図3A〜Dにそれぞれ示す。
【0100】
表15a〜dは、150mg用量強度錠剤2錠を1日1回投与または300mg用量強度錠剤を1日1回投与した後におけるブプロピオンに対する薬物動態学的データの平均(±SD)を提供する。
【0101】
【表15】

【0102】
【表16】

【0103】
【表17】

【0104】
【表18】

【0105】
自然対数を用いて変換したAUC0-inf、AUC0-t、およびCmaxに対する絶食条件下における相対的(150mg2錠(1日1回)対300mg1錠(1日1回))バイオアベイラビリティー分析の結果を、ブプロピオンおよびその代謝物に関して表16に要約する。
【0106】
【表19】

【0107】
データは、本明細書および実施例1に記載する本発明の放出調節錠剤において、1日1回2錠を投与した150mg用量強度錠剤および1日1回投与した300mg用量強度錠剤の双方が、ブプロピオンおよびその代謝物に対するその薬物動態学的パラメータに関しては相互に同等であることを示す。
実施例4
本明細書および実施例1に記載する塩酸ブプロピオン放出調節150mg錠剤およびザイバン(登録商標)150mg錠剤に対する4元、交差、非盲検、1用量での絶食と食事の影響の比較バイオアベイラビリティー試験を、非喫煙の男女健常被験者において実施した。この試験は、本明細書および実施例1に記載する150mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤を投与した後での、摂食および絶食状態におけるブプロピオンの吸収の速度および程度を評価するためにデザインした。並行して、この研究では、150mg用量強度のザイバン(登録商標)錠剤投与後のブプロピオン吸収の速度および程度も摂食および絶食状態で評価した。
【0108】
本試験デザインは、絶食および摂食状態下での2期間、2処理、1用量、交差のデザインに従った。試験期間は、2週間のウォッシュアウト期間によって分割された。被験者総数35名(男性24名、女性11名)が研究に登録され、うち被験者32名(男性22名、女性10名)が試験を終了した。被験者には以下の治療を実施した。
【0109】
A)絶食条件下に、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤150mgを1日1回、
B)摂食条件下に、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤150mgを1日1回、
C)絶食条件下に、ザイバン(登録商標)錠剤150mgを1日1回、および
D)摂食条件下に、ザイバン(登録商標)錠剤150mgを1日1回。
【0110】
本発明の放出調節錠剤150mg1錠を1日1回およびザイバン(登録商標)剤形150mg1錠を1日1回での投与後の72時間の期間にわたるブプロピオンならびにその代謝物ヒドロキシブプロピオン、ブプロピオントレオ型アミノアルコール、およびエリトロ型アミノアルコールの平均血漿濃度(ng/ml)プロファイルのグラフを、図4A〜Eに示す。
【0111】
表17は、150mg用量強度の本発明の放出調節錠剤または150mg用量強度の先行技術市販品であるザイバン(登録商標)錠剤を、絶食および摂食の条件下に投与した後におけるブプロピオンに対する薬物動態学的データの平均(±SD)を、ブプロピオンおよびその代謝物に関して提供する。
【0112】
【表20】

【0113】
【表21】

【0114】
【表22】

【0115】
【表23】

【0116】
自然対数を用いて変換したAUC0-inf、AUC0-t、およびCmaxに対する、絶食および絶食双方の条件下における相対的(本発明の放出調節錠剤 絶食対摂食)バイオアベイラビリティー分析の結果を、ブプロピオンおよびその代謝物に関して表18に要約する。
【0117】
【表24】

【0118】
表18のデータは、ブプロピオンおよびその代謝物のバイオアベイラビリティーが食事の影響を示さないことを示す。すなわち塩酸ブプロピオンを含有する本発明の放出調節錠剤は、食物の存在下または非存在下において生物学的に同等であり、絶食対摂食状態において、AUC0-inf(および適切な場合にはAUC0-t)およびCmaxに対する幾何平均の比率の90%CIが、FDA推奨範囲の80〜125%以内に収まる事実により明らかである。
実施例5
非喫煙の男女健常被験者における、本発明の300mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤に対する2元、交差、非盲検、1用量の食事の影響の比較バイオアベイラビリティー試験。
【0119】
試験は、本発明の300mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤1日1回での吸収の速度および程度に対する食品の効果を、1用量条件の下で評価するためにデザインした。本試験デザインは、絶食および摂食の条件下の2期間、2処理、1用量、交差のデザインに従った。試験期間は、2週間のウォッシュアウト期間によって分割された。被験者総数36名(男性26名、女性10名)が試験に登録され、うち被験者32名(男性23名、女性9名)が試験を終了した。被験者には以下を投与した。
【0120】
A)10時間の絶食後に、放出調節錠剤300mg1錠。
【0121】
B)高脂肪の朝食を完全摂食後に、放出調節錠剤300mg1錠。
【0122】
本発明の放出調節錠剤300mg1錠1日1回を、摂食および絶食の条件下に投与した後の120時間の期間にわたるブプロピオンならびにその代謝物ヒドロキシブプロピオン、ブプロピオントレオ型アミノアルコール、およびエリトロ型アミノアルコールの平均血漿濃度(ng/ml)プロファイルのグラフを、図5A〜Dにそれぞれ示す。
【0123】
表19は、本発明の300mg用量強度の放出調節錠剤を、摂食および絶食の条件下に投与した後におけるブプロピオンおよびその代謝物に対する薬物動態学的データの平均(±SD)を提供する。
【0124】
【表25】

【0125】
【表26】

【0126】
自然対数を用いて変換したAUC0-inf、AUC0-t、およびCmaxに対する相対的(摂食対絶食)バイオアベイラビリティー分析の結果を、絶食および絶食双方の条件下においてブプロピオンおよびその代謝物に関して表20に要約する。
【0127】
【表27】

【0128】
表20のデータは、本発明の300mg用量強度の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤からのブプロピオンおよびその代謝物のバイオアベイラビリティーが食事の影響を示さないことを示し、AUC0-inf(および適切にはAUC0-t)およびCmaxに対する幾何平均の比率の90%CIが、摂食対絶食状態においてはFDA推奨範囲の80〜125%以内に収まる事実により明らかである。
実施例6
本発明の塩酸ブプロピオン300mg放出調節錠剤1日1回対即時放出性ウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1日3回に関する、2元、交差、定常状態、複数用量、非盲検、絶食での比較バイオアベイラビリティー研究を、正常で健康な非喫煙の男女の被験者において実施した。この試験は、本発明の300mg用量強度の放出調節錠剤1日1回のバイオアベイラビリティーを、先行技術市販品である即時放出性ウェルブトリン(登録商標)錠剤1日3回と、定常状態、絶食条件下に比較して評価するためにデザインした。
【0129】
本試験は、絶食条件下の2期間、2処理、用量漸増、複数用量、交差の試験としてデザインしたが、2試験期間の間に2週間のウォッシュアウト期間があった。被験者総数40名(男性27名、女性13名)が試験に登録され、うち被験者30名(男性22名、女性8名)が試験を終了した。被験者には以下の投薬計画を実施した。
【0130】
A)ウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤は、1、2、および3日目(1日2回)の0.0時(午前7時開始)に、少なくとも10時間の一晩絶食後に、室温の水240mlと共に経口投与した。また2回目のウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1錠を、12.0時に、少なくとも1時間絶食後に、室温の水240mLと共に被験者全員に投与した。本発明の300mg用量強度の塩酸ブプロピオン放出調節錠剤1錠を、4〜13日目の0.0時(午前7時開始)に、少なくとも10時間の一晩絶食後に、室温の水240mlと共に被験者に投与した。
【0131】
B)ウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤は、1、2、および3日目(1日2回)の0.0時(午前7時開始)に、少なくとも10時間の一晩絶食後に、室温の水240mlと共に経口投与した。2回目のウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1錠を、12.0時に、少なくとも1時間絶食後に、室温の水240mlと共に被験者全員に投与した。ウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1錠を、4〜13日目の0.0時(午前7時開始)に、一晩少なくとも10時間の絶食後に、室温の水240mlと共に被験者に投与した。次いで、2回目のウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1錠を、6.0時に、少なくとも1時間の絶食後に、室温の水240mlと共に被験者全員に投与した。3回目のウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1錠を、12.0時に、少なくとも1時間絶食後に、室温の水240mlと共に被験者全員に投与した。
【0132】
本発明の300mgの放出調節錠剤1錠を1日1回およびウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤3錠の投与後における、ブプロピオンならびにその代謝物ヒドロキシブプロピオン、ブプロピオントレオ型アミノアルコール、およびエリトロ型アミノアルコールの本試験期間にわたる平均血漿濃度(ng/ml)プロファイルのグラフを、図6A〜Eにそれぞれ示す。
【0133】
表21は、本発明の300mg用量強度の放出調節錠剤1日1回または先行技術市販品であるウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤1日3回を投与した後のブプロピオンに対する薬物動態学的データの平均(±SD)を提供する。
【0134】
【表28】

【0135】
【表29】

【0136】
自然対数を用いて変換したブプロピオンおよびその代謝物に関してのAUC0-τおよびCmaxに対する相対的(本発明の放出調節錠剤対ウェルブトリン(登録商標))バイオアベイラビリティー分析の結果を表22に要約する。
【0137】
【表30】

【0138】
表21および22のデータは、本発明の300mg用量強度の放出調節錠剤1日1回投与が、100mg用量強度の即時放出性ウェルブトリン(登録商標)1日3回投与と生物学的に同等であることを示す。
実施例7
本発明の300mg放出調節塩酸ブプロピオン錠剤の先行技術の市販品である150mgザイバン(登録商標)製剤に対する、2元、定常状態、交差、非盲検、複数用量、絶食での比較バイオアベイラビリティー試験を、非喫煙の男女健常被験者において実施した。試験は、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤300mg剤形1日1回のバイオアベイラビリティーを、先行技術市販品であるザイバン(登録商標)錠剤150mg1日2回に対して比較するためにデザインした。
【0139】
試験デザインは、絶食条件下での2期間、2処理、複数用量、交差のデザインに従った。試験期間は、2週間のウォッシュアウト期間によって分割された。被験者総数54名(男性40名、女性14名)が試験に登録され、うち被験者49名(男性37名、女性12名)が試験を終了した。被験者にはザイバン(登録商標)錠剤150mgを1日1回、本研究の1〜3日目から投与した。4〜17日目は以下に従った。
A)本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤300mgを1日1回。
B)ザイバン(登録商標)錠剤150mgを1日2回。
【0140】
本発明の放出調節錠剤300mg1錠を1日1回およびザイバン(登録商標)錠剤150mg2錠(1日2回)を絶食条件下に投与した後のブプロピオンならびにその代謝物ヒドロキシブプロピオン、ブプロピオントレオ型アミノアルコール、およびエリトロ型アミノアルコールに関する試験期間にわたる平均血漿濃度(ng/ml)プロファイルのグラフを、図7A〜Eにそれぞれ示す。
【0141】
表23は、本発明の300mg用量強度の放出調節錠剤を1日1回または先行技術市販品であるザイバン(登録商標)錠剤150mgを1日2回投与した後のブプロピオンに対する薬物動態学的データの平均(±SD)を提供する。
【0142】
【表31】

【0143】
【表32】

【0144】
【表33】

【0145】
【表34】

【0146】
自然対数を用いて変換したAUC0-τ、CmaxおよびCminに対する相対的(本発明の放出調節錠剤対ザイバン(登録商標))バイオアベイラビリティー分析の結果を、ブプロピオンおよびその代謝物に関して表24に要約する。
【0147】
【表35】

【0148】
表23および24のデータは、本発明の放出調節塩酸ブプロピオン錠剤300mg(1日1回)用量強度の1錠が、先行技術市販品である徐放性ザイバン(登録商標)錠剤150mgの1日2回と生物学的に同等であることを示す。
実施例8(比較例)
塩酸ブプロピオンの150mgおよび300mg製剤は、米国特許第6,143,327号に教示されているように調製して、薬物動態学的パラメータおよび相対的バイオアベイラビリティーデータを生物学的同等性について評価した。コア、第1層、および第2層のコート製剤に用いた成分の比率は、表25に示すとおりである。
【0149】
【表36】

【0150】
【表37】

【0151】
本錠剤は、米国特許第6,143,327号の教示と同様に製造した。
【0152】
特許‘327号(「特許‘327号製剤」)に従って製造した塩酸ブプロピオン錠剤(150mg2錠1日1回)対市販品ザイバン(登録商標)徐放性錠剤(150mg1錠を1日2回)およびウェルブトリン(登録商標)錠剤(1日3回)に関する3元、複数用量、非盲検、絶食の予備比較バイオアベイラビリティー研究を、喫煙および非喫煙の男性健常志願者において実施した。本試験の目的は、327号製剤の塩酸ブプロピオン150mg(150mg2錠を1日1回)の相対的バイオアベイラビリティーを、ザイバン(登録商標)徐放性錠剤(150mg1錠を1日2回)およびウェルブトリン(登録商標)100mg錠剤(100mg1錠を1日3回)と比較して、1用量または定常状態での絶食条件下で評価することであった。
【0153】
表26は、ブプロピオンについての平均(±SD)血漿濃度(ng/ml)−時間の1用量条件下でのプロファイルを示す。
【0154】
【表38】

【0155】
【表39】

【0156】
表27は、表25に示した錠剤を投与した後のブプロピオンについての薬物動態学的データの平均(±SD)を提供する。
【0157】
【表40】

【0158】
自然アルゴリズムを用いて変換した表27に示したAUC0-24(ng・時間/ml)およびCmax(ng/ml)に関する相対的バイオアベイラビリティー分析の結果を、表28に要約する。
【0159】
【表41】

【0160】
表29は、表25に示した錠剤組成のブプロピオンについての平均(±SD)定常状態血漿濃度−時間のプロファイル(ng/ml)を示す。
【0161】
【表42】

【0162】
【表43】

【0163】
表30は、表25に示す錠剤投与後の定常状態下でのブプロピオンについての薬物動態学的データの平均(±SD)を示す。
【0164】
【表44】

【0165】
自然アルゴリズムを用いて変換した表30に示したAUC0-24(ng・時間/ml)およびCmax(ng/ml)に関する相対的バイオアベイラビリティー分析の結果を、表31に要約する。
【0166】
【表45】

【0167】
薬物動態学的および相対的バイオアベイラビリティーのデータは、特許‘327号に教示した製剤に対する90%CIが、製品を生物学に同等であるとする、FDA推奨の80%〜125%の範囲に収まらないことを示す。したがって、データは、‘327号製剤が市販品のザイバン(登録商標)/徐放性ウェルブトリン(登録商標)またはウェルブトリン(登録商標)の錠剤と生物学的に同等ではないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)有効量のブプロピオンの薬学的に許容できる塩、および従来型賦形剤を含むコアと、
(ii)前記コアを取り囲む第1の制御放出性コートと、
(iii)前記第1の制御放出性コートを取り囲む防湿層とを含む放出調節錠剤であって、
生物学的に同等であり、約2時間後には、ブプロピオン含有量の約20%以下が放出され、約4時間後には、ブプロピオン含有量の約15%〜約45%が放出され、約8時間後には、ブプロピオン含有量の約40%〜約90%が放出され、約16時間後には、ブプロピオン含有量の約80%以上が放出されるような溶出プロファイルを示す前記放出調節錠剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【公開番号】特開2011−140510(P2011−140510A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58725(P2011−58725)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【分割の表示】特願2005−507893(P2005−507893)の分割
【原出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願人】(504251366)バイオヴェイル ラボラトリーズ インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】BIOVAIL LABORATORIES INC.
【Fターム(参考)】