塵埃収集装置及び塵埃分析方法
【課題】対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することを可能として、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化を実現する。
【解決手段】減圧チャンバ1による減圧環境下で製品11の表面にガス又はガスと微量な液体との混合物を拭き付け、当該表面に付着した塵埃12を剥離除去し、ポンプ10を用いて集塵フィルタ8に剥離除去された塵埃12を回収し、集塵フィルタ8に付着した塵埃12を観察して分析する。
【解決手段】減圧チャンバ1による減圧環境下で製品11の表面にガス又はガスと微量な液体との混合物を拭き付け、当該表面に付着した塵埃12を剥離除去し、ポンプ10を用いて集塵フィルタ8に剥離除去された塵埃12を回収し、集塵フィルタ8に付着した塵埃12を観察して分析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置や微小レンズ等、各種の微小な機械部品に付着した微小な塵埃を剥離除去する塵埃収集装置及び塵埃分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や磁気ディスク装置を始めとする多くの製品では微細化が進み、洗浄工程においてもこれに応じた高い清浄度が要求されている。そこで、洗浄した製品の清浄度を定量的に評価する方法が重要視されている。
清浄度を評価する場合、直接的に製品の表面を観察することが最も確実な方法ではある。しかしながら、製品の形状や表面状態は様々であり、これを効率よく観察する装置は存在しない。市販の観察装置を用いたとしても、評価には非常に多くの時間を要することになるため、当該製品の製造現場に適用することは困難である。
【0003】
このように、製品表面の清浄度の直接的評価は難しいため、製品に残存した塵埃を一旦剥離し、これを回収して観察する間接的な手法が現実的である。これは、LPC法と呼ばれており、この方法が一般的に用いられている。LPC法は、超音波洗浄機を用いて製品を洗浄し、純水中に剥離した塵埃数を液中パーティクルカウンタで測定する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−225625号公報
【特許文献2】特開2007−294938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらLPC法は、純水中のわずか2%程度を測定する部分測定法である。そのため、清浄度の高い部品に対しては塵埃の検出が困難であり、その数値の定量性が疑問視されているという問題がある。また、全量を測定するには処理に長時間を要するために現実的ではなく、新規の評価手法が望まれている。
【0006】
LPC法に対する要素技術として、空気中で製品表面の塵埃を剥離する手法が知られている。代表的な手法としては、高圧のエアを製品に吹き付けるエアブロー法がある。エアブロー法のうち、特にエアナイフ法と呼ばれる手法がある。エアナイフ法は、図1に示すように、製品101の表面にノズル102から高圧のエアをライン状に吹き付け、剥離した塵埃103を吸引部104で吸引する手法である。
【0007】
製品表面の空気層の様子を図2に示す。この空気層は、空気の粘性により製品の最表面に形成される境界層と、境界層上の遷移層及び乱流層とからなる。境界層は、粘性の影響を受けて流体の速度が乱流層又は遷移層に比べて低下する領域である。そのため、エアを吹き付けても徐々に気流速度が低下し、製品の最表面に届き難い。エアブロー法又はエアナイフ法では、この境界層を打ち破ることができず、表面の微小な塵埃まで空気が到達しないために塵埃を剥離できないという問題がある。エアブロー法又はエアナイフ法では、数十μmオーダー(例えば70μm以上)の大きな塵埃は剥離できるが、上記した空気の粘性の影響でそれ以下の数μmオーダーの塵埃の除去は困難である。
【0008】
この境界層を打ち破るべく、超音波エア法も提案されている。超音波エア法は、図3に示すように、製品111の表面にエア放出部112から超音波で振動させた高圧のエアを吹き付け、塵埃113を振動させて製品111の表面から剥離し、塵埃113を吸引部114で吸引する手法である。しかしながら超音波エア方式は、エア放出部の近傍でのみ効果を発揮する方式であるため、主に平面に対してのみ有効な方法である。従って、対象物が複雑な形状を有する場合には、凹部に沈積した塵埃の除去が困難となるという問題がある。
【0009】
その他、特許文献1,2の手法が提案されている。特許文献1では、被洗浄物である基板又はシート等を搬送しつつ、その一面に対してプラスイオンを含む空気を吹き付けて、付着する塵埃或いは汚染微粒子を剥離させ、当該空気を吹き付けられた面を除電して中性化する除塵方法が開示されている。特許文献2では、渦流空気流を吹き付けることで、被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を除去するクリーニング方法が開示されている。しかしながら特許文献1,2の手法でも、上記と同様の理由で境界層を打ち破ることができず、微小な塵埃を除去することは困難である。
【0010】
以上のように、数μmオーダーの大きさの塵埃をドライ環境で汎用的に除去することができる塵埃収集の手法は存在せず、これを利用した塵埃分析の手法も存在しないのが現状である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することを可能として、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化を実現する塵埃収集装置及び塵埃分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
塵埃収集装置の一態様は、チャンバと、前記チャンバ内で対象物を保持する保持機構と、前記チャンバ内に設けられ、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付けるノズルと、前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第1の排気機構と、前記チャンバと接続し、前記チャンバ内の塵埃を集める集塵フィルタとを含む。
【0012】
塵埃分析方法の一態様は、対象物をチャンバ内の保持機構に保持し、前記チャンバ内を排気し、前記チャンバ内に設けられたノズルにより、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付け、前記対象物から剥離された塵埃を前記チャンバに接続された集塵フィルタに収集し、前記集塵フィルタに付着した前記塵埃を分析する。
【発明の効果】
【0013】
上記の諸態様によれば、対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エアナイフ法を説明するための模式図である。
【図2】製品表面の空気層の様子を示す模式図である。
【図3】超音波エア法を説明するための模式図である。
【図4】第1の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【図6】製品に到達するノイズからのガスの風圧を評価した結果を示す特性図である。
【図7】第1の実施形態の変形例1による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】第1の実施形態の変形例2による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図9】第1の実施形態の変形例3による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】第1の実施形態の変形例4による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図11】パルス駆動を行った際のガスの風圧の変化を示す特性図である。
【図12】第2の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】第2の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【図14】第2の実施形態の変形例による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態による塵埃収集装置の構成について説明する。
図4は、第1の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【0017】
この塵埃収集装置において、1は、例えば内容量5L程度の減圧チャンバである。2は、減圧チャンバ1内で対象物である製品11を保持する保持機構である。3は、減圧チャンバ1内に設けられ、製品11の表面に所定の気体(ガス)を吹き付ける、例えば内径4mm程度のノズルである。4は、ノズル3へガスを導入するための開閉を行うバルブである。5は、ノズル3に導入されるガスをろ過するフィルタであり、例えば0.1μm程度のろ過性能を持つ例えば中空糸フィルタである。バルブ6及びポンプ7を備えて第1の排気機構が構成される。バルブ6は、減圧チャンバ1内の真空封止のために排気の開閉を行うものである。ポンプ7は例えばダイアフラム型の排気ポンプである。8は、減圧チャンバ1と接続されて減圧チャンバ1内の塵埃12を集める集塵フィルタである。バルブ9及びポンプ10を備えて第2の排気機構が構成される。バルブ9は、減圧チャンバ1内の塵埃を含むガスを排気するための開閉を行うものである。ポンプ10は例えばダイアフラム型の排気ポンプである。集塵フィルタ8は、評価対象である塵埃に応じた孔径を持つメンブレンフィルタであり、減圧チャンバ1とバルブ9との間に設けられる。
【0018】
次に、第1の実施形態による、塵埃収集方法を含む塵埃分析方法について説明する。
図5(a)は、第1の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【0019】
先ず、大気圧に開放した減圧チャンバ1内において、保持機構2に製品11を設置する(ステップS1)。
続いて、バルブ4を閉じ、バルブ6を開いて、ポンプ7を動作させて減圧チャンバ1内を排気して減圧する(ステップS2)。所定の圧力、例えば1×102Pa程度の真空状態まで減圧した後、バルブ6を閉じてポンプ7を停止する。
【0020】
続いて、バルブ4を開いて、ノズル3から製品11の表面にガスを吹き付ける(ステップS3)。
用いるガスとしては、例えば窒素ガスとし、ノズル3から噴出するガスの圧力を0.1MPa程度、ガスの流量を70L/分程度とする。5秒〜6秒間のガスの導入で減圧チャンバ1内の圧力は大気状態となる。その後、バルブ4を閉じる。
【0021】
続いて、バルブ9を開き、ポンプ10を動作させて減圧チャンバ1内のガスを排気する(ステップS4)。
このとき、排気されたガスは製品11の表面に付着していた塵埃12を含んでおり、減圧チャンバ1とバルブ9との間に設けられた集塵フィルタ8によりろ過され、集塵フィルタ8に塵埃12が全て回収される。集塵フィルタ8によるガスのろ過は、液体をろ過する場合に比べて極めて短時間(液体のろ過の場合よりも数桁程度の短時間)で行うことができる。
本実施形態の塵埃収集方法は、上記のステップS1〜S4により構成される。
【0022】
続いて、集塵フィルタ8を取り外し、集塵フィルタ8に付着した塵埃12を観察して分析する(ステップS5)。集塵フィルタ8を取り外した後、バルブ6より減圧チャンバ1をリークして減圧チャンバ1内を大気開放し、製品11を取り出す。
集塵フィルタ8に付着した塵埃12を、所定の評価システムを用いて観察及び分析する。評価システムとしては例えば、光学顕微鏡、CCD等の撮像装置、画像処理装置等を備えたものを用いる。光学顕微鏡及び撮像装置を用いて、集塵フィルタ8上をステップ&リピートにより自動撮影する。画像処理装置を用いて、撮影された画像に対して例えば所定の閾値による画像(画素)情報を1と0の2値に分ける二値化処理を施す。これにより塵埃を認識して摘出し、塵埃の寸法及び塵埃数の評価を行う。評価内容にもよるが、光学顕微鏡の他、電子顕微鏡又は元素分析装置等を併用した評価も可能である。
【0023】
本実施形態では、評価対象である製品及び塵埃に応じて評価基準が異なることを考慮して、例えば図5(b)に示すように、上記のステップS2〜S4を所定の複数回繰返す(ステップS6)ようにしても良い。ステップS2〜S4を所定回数行った後、上記のステップS5を実行する。これにより、製品及び塵埃に応じた確実な集塵及び評価が可能となる。
【0024】
ここで、上記した塵埃収集装置及び塵埃分析方法における減圧チャンバ内の圧力について説明する。
本実施形態では、基本的には製品の表面の単位面積当たりに加わる力が大きくなるように、ノズルの形状を選定し、ガス流量等を設定する。これらの条件は製品のサイズにも依存し、製品が大きい場合には相応のガス吹き付け面積が得られるように、各条件を選定する必要がある。
【0025】
本実施形態における最重要事項の1つは、減圧チャンバ内の圧力である。基本的に減圧環境下による塵埃の剥離を促進する効果は、大気圧から僅かでも低下した領域から現れ、例えば104Paのオーダーでも明確に見られる。
【0026】
図6は、製品表面に到達するガスの風圧を評価した結果を示す特性図である。
ここでは、ノズルから噴出するガスの圧力を0.1MPa、0.2MPa、0.3MPaとした夫々の場合において、減圧チャンバ内の圧力とガスの風圧との関係を示している。図6の結果によれば、減圧チャンバ内の圧力が大気圧(約105Pa)から1桁低下するだけで、風圧は数倍に増加し、その効果が明確に確認できる。減圧環境下では、ガス分子の平均自由行程が圧力に反比例して大きくなるため、ガス分子同士の衝突確率が少なく、圧力差によりガス分子の速度も上昇するためと考えられる。減圧チャンバ内の圧力が103Pa以下付近から風圧が飽和する傾向が見られているが、これは粘性流領域を外れ、ガス分子同士の影響を受け難くなる中間領域に差し掛かるためと考えられる。このように、減圧チャンバ内の減圧によって、製品表面に到達するガスの風圧が大きくなることが確認された。
【0027】
また、図2にも示したが、物体の表面を気体が流れる場合、境界層と呼ばれる粘性によって発生する層が形成される。条件にもよるが通常大気圧下では10μm〜数十μmオーダーの厚みの境界層が形成されていると考えられる。境界層の厚みは、気体の粘性力に依存して変化し、粘性力が小さくなると薄くなる傾向がある。大気圧を含む高い圧力下では、粘性力は略一定であるが、102Pa以下の領域では、圧力に比例して粘性力が小さくなる。即ち、102Pa以下の圧力下では、境界層の厚みが実効的に低減する。
【0028】
先に述べた風圧に関する考察は、気体に関するマクロ的な特徴を示すものであり、僅かな減圧環境下でも十分な効果を発揮する。加えて後に述べた境界層の影響に関する考察は言わばミクロ的な特徴を示すものであり、102Pa以下で効果が現れるものである。
従って、減圧チャンバ内の圧力条件の選定は塵埃の大きさ及び比重、その付着状態の他、ガスの吹き付け条件にも依存するが、製品表面の効率的な塵埃除去に最大の効果を発揮する減圧チャンバ内の圧力は102Pa以下である。
【0029】
本実施形態では、減圧環境下における製品表面ではガス分子密度が大気状態に比べて希薄となることを利用し、減圧チャンバ内の圧力を102Pa以下に設定し、製品表面にノズルからガスを吹き付ける。102Pa以下の圧力下では、粘性力が圧力に比例して小さくなるために境界層が等価的に薄層化し、ノズルから噴出したガスを効率良く製品表面に到達させることが可能となる。このため、製品表面に付着した、例えば数μm以下の微小な塵埃が容易且つ確実に剥離される。
【0030】
また、減圧環境下ではガス分子の平均自由行程が圧力に反比例して大きくなるため、ガス分子同士の衝突確率が小さく、圧力差により気体分子の速度も上昇する。そのため、ノズルと製品表面との離間距離を大きく(例えば数mm〜数十mm程度)確保することができ、製品表面が複雑な形状である場合でも、製品表面に付着した塵埃の十分な剥離効果を得ることができる、製品表面の高い洗浄効果が達成される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、製品11の表面に付着した塵埃12を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃12を回収分析することで、製品11の表面の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【0032】
以下、本実施形態の諸変形例について説明する。
なお、諸変形例の塵埃収集装置において、図4に示されたものと同様の構成部材については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0033】
(変形例1)
図7は、第1の実施形態の変形例1による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図7では便宜上、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、減圧チャンバ1内において、保持機構2に代えて設けられた保持機構13に複数(図示の例では4つ)の製品11が並んで設置される。各製品11に対応して、複数(図示の例では4本)のノズル14が図4のノズル3に代えて設けられている。第1の実施形態と同様に減圧チャンバ1内を減圧した状態で、バルブ4を開けて、フィルタ5を通ってろ過されたガスを各ノズル14から各製品11の表面に吹き付け、表面に付着した塵埃を剥離する。
【0034】
製造現場では、複数個の製品11を1バッチとして処理し、1バッチ中に何個の塵埃が残存しているか否かを評価の指標として用いる場合がある。本実施形態では、このような場合に対応している。勿論、製品11の寸法に対してノズル14の開口が大きい場合等では、製品数に対してノズル数を少なくすることも可能である。その一方で、大きな製品を評価する場合には、1つの製品11に対して複数のノズル14を配置することも可能である。また本例では、1本の配管上にフィルタ5及びバルブ4を設け、下流側で分岐して複数のノズル14を配置したが、この構成に限定されるものではない。例えば、分岐した複数のノズルごとに夫々フィルタ及びバルブを配置することができる。また、夫々のノズルをガスの供給源から完全に独立した形状とすることも可能である。
【0035】
(変形例2)
図8は、第1の実施形態の変形例2による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図8では便宜上、フィルタ5、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、保持機構2に製品11の回動機構15が設けられている。回動機構15は、ノズル3に対する製品11の向きを図示の矢印方向に可変(回動自在)とするステージ機構である。回動機構15により、ガスの吹き付け方向に対して製品11の表面を変えることで、実効的な境界層の厚みを変えることができる。また、表面がフラットではない製品の場合に特に効果がある。本例では、回動機構15として一方向への回動自在な機構のみを保持機構2に組み込んだ場合を示したが、複数方向への回動機構、或いはX−Yステージ機構等、製品又は目的に応じて様々な可動機構を組み込むことが可能である。
【0036】
(変形例3)
図9は、第1の実施形態の変形例3による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図9では便宜上、フィルタ5、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、保持機構2に製品11の加振機構である振動子16が設けられ、ノズル3内にガスの除電機構である放電針17が設けられている。
【0037】
振動子16は、保持機構2に設置された製品11を振動させるものである。振動子16には、振動を制御する不図示の信号発生器が設けられており、低周波領域から超高周波(超音波)領域までの振動を振動子16に発生させることができる。また、振動子16に連続的な振動を発生させることに代わり、或いはこれに加え、例えば1パルスが数msオーダーのパルス信号を用いたインパクト振動を振動子16に発生させ、塵埃12の製品11の表面からの脱離を促すこともできる。
【0038】
放電針17は、いわゆるイオナイザと呼ばれるものである。放電針17をノズル3内に組み込むことにより、製品11に吹き付けるガスの電荷バランスを中和して静電気を除去する。これにより、塵埃12の製品11の表面からの脱離が促進される。放電針17と接続する不図示の交流高圧電源を減圧チャンバ1の外部に設け、放電針17を高周波AC方式により駆動する。
【0039】
本例では、加振機構及び除電機構の双方を設ける場合について例示したが、いずれか一方のみを設けるようにしても良い。
また、塵埃12の製品11の表面からの脱離を促す方法として、ハロゲンランプ等を減圧チャンバ1内に設け、製品11を加熱することも有効である。
【0040】
(変形例4)
図10は、第1の実施形態の変形例4による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図10では便宜上、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、ノズル3からのガスの噴出をパルス駆動するパルス駆動部18が設けられている。パルス駆動部18が、バルブ4と接続されており、バルブ4の開閉をパルス駆動する。これにより、塵埃12の製品11の表面からの脱離が促進される。
【0041】
図11は、パルス駆動を行った際の、製品表面に到達するガスの風圧の変化を示す特性図である。
ここでは、バルブ4を1秒回に5回パルス駆動した場合の結果を例示する。バルブ4を開いた瞬間、ノズルから噴出するガスの圧力がオーバーシュートする傾向がある。本例では、この特性を利用し、瞬間的に定常状態におけるガスの風圧の2倍程度のガスの風圧が得られる。そのため、ノズル3から噴出するガスの圧力を変えることなく、製品11の表面からの塵埃12の高い剥離効果を得ることができる。
【0042】
なお、上記した変形例1〜4は、これらのうちから2つ以上の変形例を選択して適宜組み合わせて塵埃収集装置を構成することもできる。
具体的には、以下のような実施態様を採ることが可能である。
【0043】
変形例1+2として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設けると共に、回動機構15を設ける。
変形例1+3として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設けると共に、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設ける。
変形例1+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設けると共に、パルス駆動部18を設ける。
変形例2+3として、図4の塵埃収集装置に、回動機構15を設けると共に、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設ける。
変形例2+4として、図4の塵埃収集装置に、回動機構15を設けると共に、パルス駆動部18を設ける。
変形例3+4として、図4の塵埃収集装置に、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設けると共に、パルス駆動部18を設ける。
変形例1+2+3として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、回動機構15を設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設ける。
変形例1+2+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、回動機構15を設け、パルス駆動部18を設ける。
変形例1+3+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設け、パルス駆動部18を設ける。
変形例2+3+4として、図4の塵埃収集装置に、回動機構15を設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設け、パルス駆動部18を設ける。
変形例1+2+3+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、回動機構15を設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設け、パルス駆動部18を設ける。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、上記した第1の実施形態と略同様に塵埃収集装置が構成され、略同様に塵埃収集及び塵埃分析を行うが、ノズルから噴出するガスに微量の液体を含有させる点で第1の実施形態と相違する。
なお、本実施形態の塵埃収集装置において、図4に示されたものと同様の構成部材については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0045】
図12は、第2の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
この塵埃収集装置は、第1の実施形態の図4の装置構成に加え、ノズル3内に液体を導入するためのノズル21と、ノズル21へ液体を導入するための開閉を行うバルブ22とを備えている。バルブ4と共にバルブ22を開けることにより、ノズル21へ液体を導入し、ノズル4から液体を含有するガス(以下、混合物と言う。)を噴出して、減圧チャンバ1内の保持機構2に設置された製品11の表面に混合物を吹き付ける。
【0046】
次に、第2の実施形態による、塵埃収集方法を含む塵埃分析方法について説明する。
図13(a)は、第2の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【0047】
先ず、図5(a)のステップS1,S2と同様のステップS11,S12を順次実行する。
続いて、バルブ4及びバルブ22を共に開いて、ノズル3から製品11の表面に混合物を吹き付ける(ステップS13)。
混合物に用いるガスとしては、例えば窒素ガスとし、ノズル3から噴出するガスの圧力を0.1MPa程度、ガスの流量を70L/分程度とする。混合物に用いる液体としては、例えば純水とし、1Lの窒素ガスの流量に対して0.1cc程度の割合で純水を導入する。純水の場合、その割合が混合物の1%を超えると液体が揮発せず、集塵フィルタ8に溜まってしまい著しく塵埃回収能力が低下する。従って、混合物の純水含有率としては1%以下が好ましく、更には0.5%以下とすることが望ましい。0.1%の純水含有量でも、製品11の表面における塵埃12の剥離効果は増加するため、ここでは0.1ccとしている。なお、純水の比抵抗は1MΩ・cm以下であることが好ましく、超純水を使用する場合には、窒素ガスにCO2ガス等を添加することで比抵抗の調整を行うことが望ましい。これにより、超純水の帯電を防止することができる。
【0048】
混合物に用いる液体としては、純水の代わりに、イソプロピルアルコール又はエチルアルコール等のアルコールを用いることも有効である。これらは沸点がそれぞれ約82℃、約78℃と水よりも低く、揮発性も高い。そのため、純水よりも気体に混合する際には有利となる。また、これらの液体以外にも、水よりも揮発性が高いか、或いは沸点が低い液体を用いても良い。
【0049】
5秒〜6秒間の混合物の導入で減圧チャンバ1内の圧力は大気状態となる。その後、バルブ4及びバルブ22を共に閉じる。
その後、図5(a)のステップS4,S5と同様のステップS14,S15を順次実行する。
【0050】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、評価対象である製品及び塵埃に応じて評価基準が異なることを考慮して、例えば図13(b)に示すように、上記のステップS12〜S14を所定の複数回繰返す(ステップS16)ようにしても良い。ステップS12〜S14を所定回数行った後、上記のステップS15を実行する。これにより、製品及び塵埃に応じた確実な集塵及び評価が可能となる。
【0051】
本実施形態では、高い吹き付け圧力でガスを吹き付ける際に、混合物に含まれる微量の液体は、分散しながら製品11の表面へと叩き付けられる。ガス分子に比べて質量の大きな液体粒が製品11の表面に衝突するため、当該表面に付着した塵埃12をはじき飛ばす能力は、ガス分子に比べて数倍も大きく、塵埃12の剥離能力が大幅に増大する。
また、液体のガスへの含有量を気化し易いレベルの微量としたり、アルコール等の揮発し易い液体を利用することで、製品11の表面に衝突した後に液体が容易に気化する。従って、減圧チャンバ1内に液体が残留することはなく、減圧チャンバ1の真空排気及び剥離した塵埃12の回収に影響を与えることもない。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、製品11の表面に付着した塵埃12をより効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃12を回収分析することで、製品11の表面の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【0053】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例について説明する。
なお、変形例の塵埃収集装置において、図12に示されたものと同様の構成部材については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0054】
図14は、第2の実施形態の変形例による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図14では便宜上、減圧チャンバ1内の様子(保持機構2等)、ノズル3及びバルブ4、フィルタ5、ノズル21及びバルブ22、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
【0055】
本例では、減圧チャンバ1と集塵フィルタ8との間に加熱機構であるヒータ23が設けられている。混合物を製品11の表面に吹き付けて当該表面から塵埃を剥離した際に、混合物において気化した液体が減圧チャンバ1内で再び液化する可能性もある。本例では、ヒータ23を用いて減圧チャンバ1内を加熱することにより、混合物内の液体の気化を促し、結露も防止することができる。
【0056】
なお、第1の実施形態の変形例1〜4を、本実施形態の図13の構成、又は変形例の図14の構成にそれぞれ適用することもできる。
また、第1の実施形態の変形例1〜4を、これらのうちから2つ以上の変形例を選択して適宜組み合わせ、本実施形態の図13の構成、又は変形例の図14の構成にそれぞれ適用することも可能である。
【0057】
以下、諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0058】
(付記1)チャンバと、
前記チャンバ内で対象物を保持する保持機構と、
前記チャンバ内に設けられ、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付けるノズルと、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第1の排気機構と、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内の塵埃を集める集塵フィルタと
を含むことを特徴とする塵埃収集装置。
(付記2)前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第2の排気機構を更に含み、
前記集塵フィルタは、前記チャンバと前記第2の排気機構との間に設けられることを特徴とする付記1に記載の塵埃収集装置。
(付記3)前記ガスは窒素ガスであることを特徴とする付記1又は2に記載の塵埃収集装置。
(付記4)前記液体は水、水よりも揮発性の高い液体若しくは水よりも沸点の低い液体であることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記5)前記保持機構は、前記ノズルに対する前記対象物の向きを可変とする可動機構を有することを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記6)前記保持機構は、前記対象物を振動させる加振機構を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記7)前記ガス又は前記混合物の静電気を除去する除電機構を更に含むことを特徴とする付記1〜6のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記8)前記チャンバと前記フィルタの間に加熱機構を更に含むことを特徴とする付記1〜7のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記9)前記ノズルからの前記ガス又は前記混合物の噴出をパルス駆動する駆動機構を更に含むことを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記10)対象物をチャンバ内の保持機構に保持し、
前記チャンバ内を排気し、
前記チャンバ内に設けられたノズルにより、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付け、
前記対象物から剥離された塵埃を前記チャンバに接続された集塵フィルタに回収し、
前記集塵フィルタに付着した前記塵埃を分析する
ことを特徴とする塵埃分析方法。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本件によれば、対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【符号の説明】
【0060】
1 減圧チャンバ
2,13 保持機構
3,14,21 ノズル
4,6,9,22 バルブ
5 フィルタ
7,10 ポンプ
8 集塵フィルタ
11 製品
12 塵埃
15 回動機構
16 振動子
17 放電針
18 パルス駆動部
23 ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置や微小レンズ等、各種の微小な機械部品に付着した微小な塵埃を剥離除去する塵埃収集装置及び塵埃分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や磁気ディスク装置を始めとする多くの製品では微細化が進み、洗浄工程においてもこれに応じた高い清浄度が要求されている。そこで、洗浄した製品の清浄度を定量的に評価する方法が重要視されている。
清浄度を評価する場合、直接的に製品の表面を観察することが最も確実な方法ではある。しかしながら、製品の形状や表面状態は様々であり、これを効率よく観察する装置は存在しない。市販の観察装置を用いたとしても、評価には非常に多くの時間を要することになるため、当該製品の製造現場に適用することは困難である。
【0003】
このように、製品表面の清浄度の直接的評価は難しいため、製品に残存した塵埃を一旦剥離し、これを回収して観察する間接的な手法が現実的である。これは、LPC法と呼ばれており、この方法が一般的に用いられている。LPC法は、超音波洗浄機を用いて製品を洗浄し、純水中に剥離した塵埃数を液中パーティクルカウンタで測定する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−225625号公報
【特許文献2】特開2007−294938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらLPC法は、純水中のわずか2%程度を測定する部分測定法である。そのため、清浄度の高い部品に対しては塵埃の検出が困難であり、その数値の定量性が疑問視されているという問題がある。また、全量を測定するには処理に長時間を要するために現実的ではなく、新規の評価手法が望まれている。
【0006】
LPC法に対する要素技術として、空気中で製品表面の塵埃を剥離する手法が知られている。代表的な手法としては、高圧のエアを製品に吹き付けるエアブロー法がある。エアブロー法のうち、特にエアナイフ法と呼ばれる手法がある。エアナイフ法は、図1に示すように、製品101の表面にノズル102から高圧のエアをライン状に吹き付け、剥離した塵埃103を吸引部104で吸引する手法である。
【0007】
製品表面の空気層の様子を図2に示す。この空気層は、空気の粘性により製品の最表面に形成される境界層と、境界層上の遷移層及び乱流層とからなる。境界層は、粘性の影響を受けて流体の速度が乱流層又は遷移層に比べて低下する領域である。そのため、エアを吹き付けても徐々に気流速度が低下し、製品の最表面に届き難い。エアブロー法又はエアナイフ法では、この境界層を打ち破ることができず、表面の微小な塵埃まで空気が到達しないために塵埃を剥離できないという問題がある。エアブロー法又はエアナイフ法では、数十μmオーダー(例えば70μm以上)の大きな塵埃は剥離できるが、上記した空気の粘性の影響でそれ以下の数μmオーダーの塵埃の除去は困難である。
【0008】
この境界層を打ち破るべく、超音波エア法も提案されている。超音波エア法は、図3に示すように、製品111の表面にエア放出部112から超音波で振動させた高圧のエアを吹き付け、塵埃113を振動させて製品111の表面から剥離し、塵埃113を吸引部114で吸引する手法である。しかしながら超音波エア方式は、エア放出部の近傍でのみ効果を発揮する方式であるため、主に平面に対してのみ有効な方法である。従って、対象物が複雑な形状を有する場合には、凹部に沈積した塵埃の除去が困難となるという問題がある。
【0009】
その他、特許文献1,2の手法が提案されている。特許文献1では、被洗浄物である基板又はシート等を搬送しつつ、その一面に対してプラスイオンを含む空気を吹き付けて、付着する塵埃或いは汚染微粒子を剥離させ、当該空気を吹き付けられた面を除電して中性化する除塵方法が開示されている。特許文献2では、渦流空気流を吹き付けることで、被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を除去するクリーニング方法が開示されている。しかしながら特許文献1,2の手法でも、上記と同様の理由で境界層を打ち破ることができず、微小な塵埃を除去することは困難である。
【0010】
以上のように、数μmオーダーの大きさの塵埃をドライ環境で汎用的に除去することができる塵埃収集の手法は存在せず、これを利用した塵埃分析の手法も存在しないのが現状である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することを可能として、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化を実現する塵埃収集装置及び塵埃分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
塵埃収集装置の一態様は、チャンバと、前記チャンバ内で対象物を保持する保持機構と、前記チャンバ内に設けられ、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付けるノズルと、前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第1の排気機構と、前記チャンバと接続し、前記チャンバ内の塵埃を集める集塵フィルタとを含む。
【0012】
塵埃分析方法の一態様は、対象物をチャンバ内の保持機構に保持し、前記チャンバ内を排気し、前記チャンバ内に設けられたノズルにより、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付け、前記対象物から剥離された塵埃を前記チャンバに接続された集塵フィルタに収集し、前記集塵フィルタに付着した前記塵埃を分析する。
【発明の効果】
【0013】
上記の諸態様によれば、対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エアナイフ法を説明するための模式図である。
【図2】製品表面の空気層の様子を示す模式図である。
【図3】超音波エア法を説明するための模式図である。
【図4】第1の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【図6】製品に到達するノイズからのガスの風圧を評価した結果を示す特性図である。
【図7】第1の実施形態の変形例1による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】第1の実施形態の変形例2による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図9】第1の実施形態の変形例3による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】第1の実施形態の変形例4による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図11】パルス駆動を行った際のガスの風圧の変化を示す特性図である。
【図12】第2の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】第2の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【図14】第2の実施形態の変形例による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態による塵埃収集装置の構成について説明する。
図4は、第1の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
【0017】
この塵埃収集装置において、1は、例えば内容量5L程度の減圧チャンバである。2は、減圧チャンバ1内で対象物である製品11を保持する保持機構である。3は、減圧チャンバ1内に設けられ、製品11の表面に所定の気体(ガス)を吹き付ける、例えば内径4mm程度のノズルである。4は、ノズル3へガスを導入するための開閉を行うバルブである。5は、ノズル3に導入されるガスをろ過するフィルタであり、例えば0.1μm程度のろ過性能を持つ例えば中空糸フィルタである。バルブ6及びポンプ7を備えて第1の排気機構が構成される。バルブ6は、減圧チャンバ1内の真空封止のために排気の開閉を行うものである。ポンプ7は例えばダイアフラム型の排気ポンプである。8は、減圧チャンバ1と接続されて減圧チャンバ1内の塵埃12を集める集塵フィルタである。バルブ9及びポンプ10を備えて第2の排気機構が構成される。バルブ9は、減圧チャンバ1内の塵埃を含むガスを排気するための開閉を行うものである。ポンプ10は例えばダイアフラム型の排気ポンプである。集塵フィルタ8は、評価対象である塵埃に応じた孔径を持つメンブレンフィルタであり、減圧チャンバ1とバルブ9との間に設けられる。
【0018】
次に、第1の実施形態による、塵埃収集方法を含む塵埃分析方法について説明する。
図5(a)は、第1の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【0019】
先ず、大気圧に開放した減圧チャンバ1内において、保持機構2に製品11を設置する(ステップS1)。
続いて、バルブ4を閉じ、バルブ6を開いて、ポンプ7を動作させて減圧チャンバ1内を排気して減圧する(ステップS2)。所定の圧力、例えば1×102Pa程度の真空状態まで減圧した後、バルブ6を閉じてポンプ7を停止する。
【0020】
続いて、バルブ4を開いて、ノズル3から製品11の表面にガスを吹き付ける(ステップS3)。
用いるガスとしては、例えば窒素ガスとし、ノズル3から噴出するガスの圧力を0.1MPa程度、ガスの流量を70L/分程度とする。5秒〜6秒間のガスの導入で減圧チャンバ1内の圧力は大気状態となる。その後、バルブ4を閉じる。
【0021】
続いて、バルブ9を開き、ポンプ10を動作させて減圧チャンバ1内のガスを排気する(ステップS4)。
このとき、排気されたガスは製品11の表面に付着していた塵埃12を含んでおり、減圧チャンバ1とバルブ9との間に設けられた集塵フィルタ8によりろ過され、集塵フィルタ8に塵埃12が全て回収される。集塵フィルタ8によるガスのろ過は、液体をろ過する場合に比べて極めて短時間(液体のろ過の場合よりも数桁程度の短時間)で行うことができる。
本実施形態の塵埃収集方法は、上記のステップS1〜S4により構成される。
【0022】
続いて、集塵フィルタ8を取り外し、集塵フィルタ8に付着した塵埃12を観察して分析する(ステップS5)。集塵フィルタ8を取り外した後、バルブ6より減圧チャンバ1をリークして減圧チャンバ1内を大気開放し、製品11を取り出す。
集塵フィルタ8に付着した塵埃12を、所定の評価システムを用いて観察及び分析する。評価システムとしては例えば、光学顕微鏡、CCD等の撮像装置、画像処理装置等を備えたものを用いる。光学顕微鏡及び撮像装置を用いて、集塵フィルタ8上をステップ&リピートにより自動撮影する。画像処理装置を用いて、撮影された画像に対して例えば所定の閾値による画像(画素)情報を1と0の2値に分ける二値化処理を施す。これにより塵埃を認識して摘出し、塵埃の寸法及び塵埃数の評価を行う。評価内容にもよるが、光学顕微鏡の他、電子顕微鏡又は元素分析装置等を併用した評価も可能である。
【0023】
本実施形態では、評価対象である製品及び塵埃に応じて評価基準が異なることを考慮して、例えば図5(b)に示すように、上記のステップS2〜S4を所定の複数回繰返す(ステップS6)ようにしても良い。ステップS2〜S4を所定回数行った後、上記のステップS5を実行する。これにより、製品及び塵埃に応じた確実な集塵及び評価が可能となる。
【0024】
ここで、上記した塵埃収集装置及び塵埃分析方法における減圧チャンバ内の圧力について説明する。
本実施形態では、基本的には製品の表面の単位面積当たりに加わる力が大きくなるように、ノズルの形状を選定し、ガス流量等を設定する。これらの条件は製品のサイズにも依存し、製品が大きい場合には相応のガス吹き付け面積が得られるように、各条件を選定する必要がある。
【0025】
本実施形態における最重要事項の1つは、減圧チャンバ内の圧力である。基本的に減圧環境下による塵埃の剥離を促進する効果は、大気圧から僅かでも低下した領域から現れ、例えば104Paのオーダーでも明確に見られる。
【0026】
図6は、製品表面に到達するガスの風圧を評価した結果を示す特性図である。
ここでは、ノズルから噴出するガスの圧力を0.1MPa、0.2MPa、0.3MPaとした夫々の場合において、減圧チャンバ内の圧力とガスの風圧との関係を示している。図6の結果によれば、減圧チャンバ内の圧力が大気圧(約105Pa)から1桁低下するだけで、風圧は数倍に増加し、その効果が明確に確認できる。減圧環境下では、ガス分子の平均自由行程が圧力に反比例して大きくなるため、ガス分子同士の衝突確率が少なく、圧力差によりガス分子の速度も上昇するためと考えられる。減圧チャンバ内の圧力が103Pa以下付近から風圧が飽和する傾向が見られているが、これは粘性流領域を外れ、ガス分子同士の影響を受け難くなる中間領域に差し掛かるためと考えられる。このように、減圧チャンバ内の減圧によって、製品表面に到達するガスの風圧が大きくなることが確認された。
【0027】
また、図2にも示したが、物体の表面を気体が流れる場合、境界層と呼ばれる粘性によって発生する層が形成される。条件にもよるが通常大気圧下では10μm〜数十μmオーダーの厚みの境界層が形成されていると考えられる。境界層の厚みは、気体の粘性力に依存して変化し、粘性力が小さくなると薄くなる傾向がある。大気圧を含む高い圧力下では、粘性力は略一定であるが、102Pa以下の領域では、圧力に比例して粘性力が小さくなる。即ち、102Pa以下の圧力下では、境界層の厚みが実効的に低減する。
【0028】
先に述べた風圧に関する考察は、気体に関するマクロ的な特徴を示すものであり、僅かな減圧環境下でも十分な効果を発揮する。加えて後に述べた境界層の影響に関する考察は言わばミクロ的な特徴を示すものであり、102Pa以下で効果が現れるものである。
従って、減圧チャンバ内の圧力条件の選定は塵埃の大きさ及び比重、その付着状態の他、ガスの吹き付け条件にも依存するが、製品表面の効率的な塵埃除去に最大の効果を発揮する減圧チャンバ内の圧力は102Pa以下である。
【0029】
本実施形態では、減圧環境下における製品表面ではガス分子密度が大気状態に比べて希薄となることを利用し、減圧チャンバ内の圧力を102Pa以下に設定し、製品表面にノズルからガスを吹き付ける。102Pa以下の圧力下では、粘性力が圧力に比例して小さくなるために境界層が等価的に薄層化し、ノズルから噴出したガスを効率良く製品表面に到達させることが可能となる。このため、製品表面に付着した、例えば数μm以下の微小な塵埃が容易且つ確実に剥離される。
【0030】
また、減圧環境下ではガス分子の平均自由行程が圧力に反比例して大きくなるため、ガス分子同士の衝突確率が小さく、圧力差により気体分子の速度も上昇する。そのため、ノズルと製品表面との離間距離を大きく(例えば数mm〜数十mm程度)確保することができ、製品表面が複雑な形状である場合でも、製品表面に付着した塵埃の十分な剥離効果を得ることができる、製品表面の高い洗浄効果が達成される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、製品11の表面に付着した塵埃12を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃12を回収分析することで、製品11の表面の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【0032】
以下、本実施形態の諸変形例について説明する。
なお、諸変形例の塵埃収集装置において、図4に示されたものと同様の構成部材については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0033】
(変形例1)
図7は、第1の実施形態の変形例1による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図7では便宜上、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、減圧チャンバ1内において、保持機構2に代えて設けられた保持機構13に複数(図示の例では4つ)の製品11が並んで設置される。各製品11に対応して、複数(図示の例では4本)のノズル14が図4のノズル3に代えて設けられている。第1の実施形態と同様に減圧チャンバ1内を減圧した状態で、バルブ4を開けて、フィルタ5を通ってろ過されたガスを各ノズル14から各製品11の表面に吹き付け、表面に付着した塵埃を剥離する。
【0034】
製造現場では、複数個の製品11を1バッチとして処理し、1バッチ中に何個の塵埃が残存しているか否かを評価の指標として用いる場合がある。本実施形態では、このような場合に対応している。勿論、製品11の寸法に対してノズル14の開口が大きい場合等では、製品数に対してノズル数を少なくすることも可能である。その一方で、大きな製品を評価する場合には、1つの製品11に対して複数のノズル14を配置することも可能である。また本例では、1本の配管上にフィルタ5及びバルブ4を設け、下流側で分岐して複数のノズル14を配置したが、この構成に限定されるものではない。例えば、分岐した複数のノズルごとに夫々フィルタ及びバルブを配置することができる。また、夫々のノズルをガスの供給源から完全に独立した形状とすることも可能である。
【0035】
(変形例2)
図8は、第1の実施形態の変形例2による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図8では便宜上、フィルタ5、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、保持機構2に製品11の回動機構15が設けられている。回動機構15は、ノズル3に対する製品11の向きを図示の矢印方向に可変(回動自在)とするステージ機構である。回動機構15により、ガスの吹き付け方向に対して製品11の表面を変えることで、実効的な境界層の厚みを変えることができる。また、表面がフラットではない製品の場合に特に効果がある。本例では、回動機構15として一方向への回動自在な機構のみを保持機構2に組み込んだ場合を示したが、複数方向への回動機構、或いはX−Yステージ機構等、製品又は目的に応じて様々な可動機構を組み込むことが可能である。
【0036】
(変形例3)
図9は、第1の実施形態の変形例3による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図9では便宜上、フィルタ5、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、保持機構2に製品11の加振機構である振動子16が設けられ、ノズル3内にガスの除電機構である放電針17が設けられている。
【0037】
振動子16は、保持機構2に設置された製品11を振動させるものである。振動子16には、振動を制御する不図示の信号発生器が設けられており、低周波領域から超高周波(超音波)領域までの振動を振動子16に発生させることができる。また、振動子16に連続的な振動を発生させることに代わり、或いはこれに加え、例えば1パルスが数msオーダーのパルス信号を用いたインパクト振動を振動子16に発生させ、塵埃12の製品11の表面からの脱離を促すこともできる。
【0038】
放電針17は、いわゆるイオナイザと呼ばれるものである。放電針17をノズル3内に組み込むことにより、製品11に吹き付けるガスの電荷バランスを中和して静電気を除去する。これにより、塵埃12の製品11の表面からの脱離が促進される。放電針17と接続する不図示の交流高圧電源を減圧チャンバ1の外部に設け、放電針17を高周波AC方式により駆動する。
【0039】
本例では、加振機構及び除電機構の双方を設ける場合について例示したが、いずれか一方のみを設けるようにしても良い。
また、塵埃12の製品11の表面からの脱離を促す方法として、ハロゲンランプ等を減圧チャンバ1内に設け、製品11を加熱することも有効である。
【0040】
(変形例4)
図10は、第1の実施形態の変形例4による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図10では便宜上、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
本例では、ノズル3からのガスの噴出をパルス駆動するパルス駆動部18が設けられている。パルス駆動部18が、バルブ4と接続されており、バルブ4の開閉をパルス駆動する。これにより、塵埃12の製品11の表面からの脱離が促進される。
【0041】
図11は、パルス駆動を行った際の、製品表面に到達するガスの風圧の変化を示す特性図である。
ここでは、バルブ4を1秒回に5回パルス駆動した場合の結果を例示する。バルブ4を開いた瞬間、ノズルから噴出するガスの圧力がオーバーシュートする傾向がある。本例では、この特性を利用し、瞬間的に定常状態におけるガスの風圧の2倍程度のガスの風圧が得られる。そのため、ノズル3から噴出するガスの圧力を変えることなく、製品11の表面からの塵埃12の高い剥離効果を得ることができる。
【0042】
なお、上記した変形例1〜4は、これらのうちから2つ以上の変形例を選択して適宜組み合わせて塵埃収集装置を構成することもできる。
具体的には、以下のような実施態様を採ることが可能である。
【0043】
変形例1+2として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設けると共に、回動機構15を設ける。
変形例1+3として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設けると共に、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設ける。
変形例1+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設けると共に、パルス駆動部18を設ける。
変形例2+3として、図4の塵埃収集装置に、回動機構15を設けると共に、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設ける。
変形例2+4として、図4の塵埃収集装置に、回動機構15を設けると共に、パルス駆動部18を設ける。
変形例3+4として、図4の塵埃収集装置に、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設けると共に、パルス駆動部18を設ける。
変形例1+2+3として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、回動機構15を設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設ける。
変形例1+2+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、回動機構15を設け、パルス駆動部18を設ける。
変形例1+3+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設け、パルス駆動部18を設ける。
変形例2+3+4として、図4の塵埃収集装置に、回動機構15を設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設け、パルス駆動部18を設ける。
変形例1+2+3+4として、図4の塵埃収集装置に、保持機構2に代えて設けられた保持機構13を、ノズル3に代えて複数のノズル14をそれぞれ設け、回動機構15を設け、加振機構である振動子16及び除電機構である放電針17の一方又は双方を設け、パルス駆動部18を設ける。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、上記した第1の実施形態と略同様に塵埃収集装置が構成され、略同様に塵埃収集及び塵埃分析を行うが、ノズルから噴出するガスに微量の液体を含有させる点で第1の実施形態と相違する。
なお、本実施形態の塵埃収集装置において、図4に示されたものと同様の構成部材については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0045】
図12は、第2の実施形態による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。
この塵埃収集装置は、第1の実施形態の図4の装置構成に加え、ノズル3内に液体を導入するためのノズル21と、ノズル21へ液体を導入するための開閉を行うバルブ22とを備えている。バルブ4と共にバルブ22を開けることにより、ノズル21へ液体を導入し、ノズル4から液体を含有するガス(以下、混合物と言う。)を噴出して、減圧チャンバ1内の保持機構2に設置された製品11の表面に混合物を吹き付ける。
【0046】
次に、第2の実施形態による、塵埃収集方法を含む塵埃分析方法について説明する。
図13(a)は、第2の実施形態による塵埃分析方法をステップ順に示すフロー図である。
【0047】
先ず、図5(a)のステップS1,S2と同様のステップS11,S12を順次実行する。
続いて、バルブ4及びバルブ22を共に開いて、ノズル3から製品11の表面に混合物を吹き付ける(ステップS13)。
混合物に用いるガスとしては、例えば窒素ガスとし、ノズル3から噴出するガスの圧力を0.1MPa程度、ガスの流量を70L/分程度とする。混合物に用いる液体としては、例えば純水とし、1Lの窒素ガスの流量に対して0.1cc程度の割合で純水を導入する。純水の場合、その割合が混合物の1%を超えると液体が揮発せず、集塵フィルタ8に溜まってしまい著しく塵埃回収能力が低下する。従って、混合物の純水含有率としては1%以下が好ましく、更には0.5%以下とすることが望ましい。0.1%の純水含有量でも、製品11の表面における塵埃12の剥離効果は増加するため、ここでは0.1ccとしている。なお、純水の比抵抗は1MΩ・cm以下であることが好ましく、超純水を使用する場合には、窒素ガスにCO2ガス等を添加することで比抵抗の調整を行うことが望ましい。これにより、超純水の帯電を防止することができる。
【0048】
混合物に用いる液体としては、純水の代わりに、イソプロピルアルコール又はエチルアルコール等のアルコールを用いることも有効である。これらは沸点がそれぞれ約82℃、約78℃と水よりも低く、揮発性も高い。そのため、純水よりも気体に混合する際には有利となる。また、これらの液体以外にも、水よりも揮発性が高いか、或いは沸点が低い液体を用いても良い。
【0049】
5秒〜6秒間の混合物の導入で減圧チャンバ1内の圧力は大気状態となる。その後、バルブ4及びバルブ22を共に閉じる。
その後、図5(a)のステップS4,S5と同様のステップS14,S15を順次実行する。
【0050】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、評価対象である製品及び塵埃に応じて評価基準が異なることを考慮して、例えば図13(b)に示すように、上記のステップS12〜S14を所定の複数回繰返す(ステップS16)ようにしても良い。ステップS12〜S14を所定回数行った後、上記のステップS15を実行する。これにより、製品及び塵埃に応じた確実な集塵及び評価が可能となる。
【0051】
本実施形態では、高い吹き付け圧力でガスを吹き付ける際に、混合物に含まれる微量の液体は、分散しながら製品11の表面へと叩き付けられる。ガス分子に比べて質量の大きな液体粒が製品11の表面に衝突するため、当該表面に付着した塵埃12をはじき飛ばす能力は、ガス分子に比べて数倍も大きく、塵埃12の剥離能力が大幅に増大する。
また、液体のガスへの含有量を気化し易いレベルの微量としたり、アルコール等の揮発し易い液体を利用することで、製品11の表面に衝突した後に液体が容易に気化する。従って、減圧チャンバ1内に液体が残留することはなく、減圧チャンバ1の真空排気及び剥離した塵埃12の回収に影響を与えることもない。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、製品11の表面に付着した塵埃12をより効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃12を回収分析することで、製品11の表面の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【0053】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例について説明する。
なお、変形例の塵埃収集装置において、図12に示されたものと同様の構成部材については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0054】
図14は、第2の実施形態の変形例による塵埃収集装置の概略構成を示す模式図である。図14では便宜上、減圧チャンバ1内の様子(保持機構2等)、ノズル3及びバルブ4、フィルタ5、ノズル21及びバルブ22、バルブ6及びポンプ7、集塵フィルタ8、バルブ9及びポンプ10の図示を省略する。
【0055】
本例では、減圧チャンバ1と集塵フィルタ8との間に加熱機構であるヒータ23が設けられている。混合物を製品11の表面に吹き付けて当該表面から塵埃を剥離した際に、混合物において気化した液体が減圧チャンバ1内で再び液化する可能性もある。本例では、ヒータ23を用いて減圧チャンバ1内を加熱することにより、混合物内の液体の気化を促し、結露も防止することができる。
【0056】
なお、第1の実施形態の変形例1〜4を、本実施形態の図13の構成、又は変形例の図14の構成にそれぞれ適用することもできる。
また、第1の実施形態の変形例1〜4を、これらのうちから2つ以上の変形例を選択して適宜組み合わせ、本実施形態の図13の構成、又は変形例の図14の構成にそれぞれ適用することも可能である。
【0057】
以下、諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0058】
(付記1)チャンバと、
前記チャンバ内で対象物を保持する保持機構と、
前記チャンバ内に設けられ、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付けるノズルと、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第1の排気機構と、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内の塵埃を集める集塵フィルタと
を含むことを特徴とする塵埃収集装置。
(付記2)前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第2の排気機構を更に含み、
前記集塵フィルタは、前記チャンバと前記第2の排気機構との間に設けられることを特徴とする付記1に記載の塵埃収集装置。
(付記3)前記ガスは窒素ガスであることを特徴とする付記1又は2に記載の塵埃収集装置。
(付記4)前記液体は水、水よりも揮発性の高い液体若しくは水よりも沸点の低い液体であることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記5)前記保持機構は、前記ノズルに対する前記対象物の向きを可変とする可動機構を有することを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記6)前記保持機構は、前記対象物を振動させる加振機構を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記7)前記ガス又は前記混合物の静電気を除去する除電機構を更に含むことを特徴とする付記1〜6のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記8)前記チャンバと前記フィルタの間に加熱機構を更に含むことを特徴とする付記1〜7のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記9)前記ノズルからの前記ガス又は前記混合物の噴出をパルス駆動する駆動機構を更に含むことを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
(付記10)対象物をチャンバ内の保持機構に保持し、
前記チャンバ内を排気し、
前記チャンバ内に設けられたノズルにより、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付け、
前記対象物から剥離された塵埃を前記チャンバに接続された集塵フィルタに回収し、
前記集塵フィルタに付着した前記塵埃を分析する
ことを特徴とする塵埃分析方法。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本件によれば、対象物の表面に付着した塵埃を効率良く確実に剥離することができ、剥離した塵埃を回収分析することで、対象物の清浄度を高感度且つ高精度に評価することが可能となり、製造現場の洗浄工程に適用することで製造条件や洗浄条件の最適化が実現する。
【符号の説明】
【0060】
1 減圧チャンバ
2,13 保持機構
3,14,21 ノズル
4,6,9,22 バルブ
5 フィルタ
7,10 ポンプ
8 集塵フィルタ
11 製品
12 塵埃
15 回動機構
16 振動子
17 放電針
18 パルス駆動部
23 ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内で対象物を保持する保持機構と、
前記チャンバ内に設けられ、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付けるノズルと、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第1の排気機構と、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内の塵埃を集める集塵フィルタと
を含むことを特徴とする塵埃収集装置。
【請求項2】
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第2の排気機構を更に含み、
前記集塵フィルタは、前記チャンバと前記第2の排気機構との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の塵埃収集装置。
【請求項3】
前記保持機構は、前記対象物を振動させる加振機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塵埃収集装置。
【請求項4】
前記ガス又は前記混合物の静電気を除去する除電機構を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
【請求項5】
前記ノズルからの前記ガス又は前記混合物の噴出をパルス駆動する駆動機構を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
【請求項6】
対象物をチャンバ内の保持機構に保持し、
前記チャンバ内を排気し、
前記チャンバ内に設けられたノズルにより、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付け、
前記対象物から剥離された塵埃を前記チャンバに接続された集塵フィルタに回収し、
前記集塵フィルタに付着した前記塵埃を分析する
ことを特徴とする塵埃分析方法。
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内で対象物を保持する保持機構と、
前記チャンバ内に設けられ、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付けるノズルと、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第1の排気機構と、
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内の塵埃を集める集塵フィルタと
を含むことを特徴とする塵埃収集装置。
【請求項2】
前記チャンバと接続し、前記チャンバ内を排気する第2の排気機構を更に含み、
前記集塵フィルタは、前記チャンバと前記第2の排気機構との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の塵埃収集装置。
【請求項3】
前記保持機構は、前記対象物を振動させる加振機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塵埃収集装置。
【請求項4】
前記ガス又は前記混合物の静電気を除去する除電機構を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
【請求項5】
前記ノズルからの前記ガス又は前記混合物の噴出をパルス駆動する駆動機構を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塵埃収集装置。
【請求項6】
対象物をチャンバ内の保持機構に保持し、
前記チャンバ内を排気し、
前記チャンバ内に設けられたノズルにより、前記対象物にガス又はガスと液体の混合物を吹き付け、
前記対象物から剥離された塵埃を前記チャンバに接続された集塵フィルタに回収し、
前記集塵フィルタに付着した前記塵埃を分析する
ことを特徴とする塵埃分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−264341(P2010−264341A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115925(P2009−115925)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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