説明

塵芥処理装置

【課題】塵芥の加熱処理を自動化することができる塵芥処理装置を提供する。
【解決手段】炭化物生成機1を、塵芥投入部111の下方に投入側端部15Aが位置するとともに滓収納部112の上方に搬出側端部15Bが位置する可動型加熱装置14を有する構成とし、この可動型加熱装置14を、耐熱製のクローラ15を含み構成し、クローラ15で囲われた空間にガス供給管13及び電気発熱体12を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミなどの塵芥を燻焼することで炭化物を生成して処理する塵芥処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミなどの雑芥を燻焼することで炭化し、この炭化に際して発生する有害物質を無害化する炭化装置がある(特許文献1)。
この特許文献1で示される従来例は、内部に塵芥が投入されるとともに、マイナスイオンのガスを供給するガス供給管及び電気発熱体が設けられた炭化物生成機と、この炭化物生成機で生じたガスを高温で加熱するために電気発熱体を有する電気分解装置と、この電気分解装置からガスを吸引しガスに含まれている有害生物を吸着材で吸着する吸着部とを備えている。特許文献1では、炭化物生成機に所定の量の塵芥を投入し、加熱処理後、滓が取り出される。
一方で、ゴミの焼却を連続して実施するために、焼却炉の内部にクローラを設けるものがある(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
これらの従来例では、クローラの上に配置された塵芥を加熱処理するためにバーナが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3796719号公報
【特許文献2】特開平8−285244号公報
【特許文献3】特開2004−337806号公報
【特許文献4】特開2005−172386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で示される従来例では、炭化物生成機の内部に塵芥を投入した後、ガス供給管からマイナスイオンを供給しながら電気発熱体で加熱し、その後、生じた滓を排出するので、各工程が終了した後に次の工程に移ることになり、作業の自動化が図れない。
特許文献2〜4で示される従来例では、塵芥を加熱処理するためにバーナを用いるものであって、電気発熱体を用いるものではなく、かつ、塵芥の加熱処理にマイナスイオンを用いるものではないので、電気発熱体やマイナスイオンを噴射させるガス供給管の効率的な配置についての示唆がない。
仮に、電気発熱体やガス供給管がクローラの上方に配置されるとすると、落下する塵芥などによって破損等の問題を生じ、処理の自動化を確実に図ることができない。
【0005】
本発明の目的は、塵芥の加熱処理を自動化することができる塵芥処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塵芥処理装置は、塵芥が投入される塵芥投入部、マイナスイオンのガスを供給するガス供給管、塵芥を加熱する電気発熱体、及び前記塵芥を加熱した際に生じる滓を収納する滓収納部が設けられた炭化物生成機と、この炭化物生成機で生じたガスを加熱する電気発熱体を有する電気分解装置と、この電気分解装置から送られた煙に含まれている有害生物を吸着する吸着材とを備え、前記炭化物生成機は、前記塵芥投入部の下方に投入側端部が位置するとともに前記滓収納部の上方に搬出側端部が位置する可動型加熱装置を有し、この可動型加熱装置は、耐熱製のクローラを含み、このクローラで囲われた空間に前記ガス供給管及び前記電気発熱体が配置されることを特徴とする。
この構成の本発明では、炭化物生成機において、塵芥投入部から投入された塵芥が電気発熱体で加熱されるとともにガス供給管から供給されるマイナスイオンによって塵芥の燃焼(完全な酸化)が防止されて炭化状態となる。この炭化に伴って生じる排ガスにはダイオキシン等の有害物質を含むことがあるが、このガスは電気分解装置の電気発熱体によって加熱され、ガスに含まれる有害物質が電気発熱体の表面に吸着されるとともに燃焼によってある程度、無害化され、さらに、吸着材によって完全に吸着される。
しかも、本発明では、炭化物生成機において、クローラの一端部で塵芥を受けるとともに、クローラの回転に伴って、塵芥が移動しながら加熱される。クローラは、その上部で塵芥を加熱するため、可動する加熱床として機能する。クローラの上部で塵芥が加熱されて生じた滓はクローラの他端部から滓収納部に落下される。これにより、各工程が連続して実施できることになり、塵芥処理を自動化することができる。その上、クローラの二次元寸法及び送り速度を調整することで、所定時間の処理量、例えば、1日あたりの必要な処理量を容易に設定することが可能となる。
そして、電気発熱体とガス供給管とはクローラの内部に配置されているから、塵芥投入部から落下される塵芥が直接に電気発熱体やガス供給管に衝突することがないので、装置の故障を防止できる。
【0007】
本発明では、前記ガス供給管は、下方に向けて開口されたガス噴出口を有する構成が好ましい。
この構成の本発明では、クローラを複数の金属板がピンを介して接続して構成された際に、金属板同士の隙間から塵芥が落下しても、ガス噴出口を塞ぐことがない。
【0008】
前記クローラは、上下に複数段配置されており、上段のクローラの一端部で塵芥を受け、次段のクローラの一端部は上段のクローラの他端部から落下する塵芥を受ける構成が好ましい。
この構成の本発明では、上段のクローラの他端部から落下した塵芥は下段のクローラに反転した状態で落下されるから、燻焼が効率的に行われる。
【0009】
前記滓収納部は前記炭化物生成機の中心に対して電気分解装置から離れて配置されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、滓を処理する際に、電気分解装置の発熱の影響を受けにくいことになり、作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる塵芥処理装置の一部を破断した正面図。
【図2】前記塵芥処理装置の一部を破断した背面図。
【図3】クローラの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には本実施形態にかかる塵芥処理装置を示す一部を破断した正面図が示され、図2には、その背面図が示されている。
図1及び図2において、塵芥処理装置は、内部に塵芥が投入される炭化物生成機1と、この炭化物生成機1で炭化されて生じた排ガスを高温で加熱する電気分解装置2と、この電気分解装置2から排ガスを吸引しこの排ガスに含まれている有害物質を吸着する吸着装置3と、これらの装置を制御する制御装置(図示せず)とを備えている。
【0012】
炭化物生成機1は、塵芥が収納される生成機本体11と、この生成機本体11の内部に設けられ塵芥を加熱する複数本(図では8本)の電気発熱体12と、生成機本体11の内部に設けられ塵芥の延焼を防ぐためにマイナスイオンのガスを生成機本体11の内部に供給する複数本(図では8本)のガス供給管13と、塵芥を移動させながら加熱する可動型加熱装置14とを有する。
生成機本体11は、大鋸屑や他の焼却灰とともに、塵芥である廃棄食品、野菜屑、建築木材廃棄物や、有害物質を含んだ汚泥、火山灰、プラスチック、廃タイヤ等の石油化学製品、医療廃棄物、水分が大量に含まれた食品の残飯等のようにあらゆる塵芥を投入できる投入機である。本実施形態では、塵芥に大鋸屑を含めることで、塵芥に含まれる水分を吸着し、生成機本体11の内部に発生する排ガスの発熱量を高める効果がある。
【0013】
生成機本体11は、内部に塵芥を収納する大きな空間が形成された加熱炉110と、この加熱炉110の上部において塵芥を投入するために設けられた塵芥投入部111と、塵芥投入部111の直下において滓を排出するために設けられた滓収納部112とを備える。これらの塵芥投入部111及び滓収納部112は、生成機本体11の中心より電気分解装置2から離れた位置、つまり、図1中右側に配置されている。
塵芥投入部111は、ホッパー111Aと、ホッパー111Aの下部に形成された投入口111Bを開閉するシャッター111Cとを有する。
滓収納部112は、加熱炉110の底部に形成された凹部112Aと、この凹部112Aに収納された滓を外部に排出するための排出口112Bとを備え、この排出口112Bには図示しないシャッターが設けられている。
【0014】
可動型加熱装置14は、上下に複数段(図では4段)配置されたモリブデン製のクローラ15と、これらのクローラ15を駆動する駆動機構16とを備えている。
複数段のクローラ15のうち、最上段である第1段のクローラ15は、その搬送方向Pの上流側が塵芥投入部111の下方に位置する投入側端部15Aとされ、搬送方向Pの下流側が搬出側端部15Bとされる。第1段のクローラ15の直下に位置する第2段のクローラ15は、その搬送方向Pの上流側が最上段のクローラ15から落下する塵芥を受ける投入側端部15Aとされ、その搬送方向Pの下流側は搬出側端部15Bとされる。第2段のクローラ15の直下に位置する第3段のクローラ15は、その搬送方向Pの上流側が第2段のクローラ15から落下する塵芥を受ける投入側端部15Aとされ、その搬送方向Pの下流側が搬出側端部15Bとされる。第3段のクローラ15の直下に位置する第4段のクローラ15は、その搬送方向Pの上流側が第3段のクローラ15から落下する塵芥を受ける投入側端部15Aとされ、その搬出方向の下流側が滓収納部112の直上に位置する搬出側端部15Bとされる。
これらのクローラ15は、それぞれ搬送方向Pが水平方向とされ、このうち、奇数段のクローラ15の水平方向位置は同じであり、偶数段のクローラ15の水平方向の位置は同じである。
【0015】
クローラ15は、エンドレスベルト状の帯体150と、この帯体150の内部において互いに対向配置された駆動軸部151及び従動軸部152と、帯体150の上部の下面を支持する複数の転動軸部153とを有し、駆動軸部151の回転により、帯体150が一方向に回動される。本実施形態では、駆動軸部151は搬送方向Pの下流側に位置し、従動軸部152は搬送方向Pの上流側に位置する。駆動軸部151、従動軸部152及び転動軸部153のそれぞれの両端部は、加熱炉110の壁部に回動自在に支持されている。各クローラ15の駆動軸部151の一端部は、加熱炉110の壁部を貫通しており、壁部から突出された部分には歯車151Gが結合されている(図2参照)。
【0016】
図2において、駆動機構16は、第4段のクローラ15の駆動軸部151を回動させる回転機構161と、第4段のクローラ15の駆動軸部151からの回転力を第3段のクローラ15の駆動軸部151、第2段のクローラ15の駆動軸部151及び第1段のクローラ15の駆動軸部151に伝達する伝達機構162とを備える。
回転機構161は、ケーシング161Aに収納されたモーター161Bと、このモーター161Bに噛合されるとともに第4段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gに噛合される歯車機構161Cとを有する。
伝達機構162は、第4段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gと第3段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gとを連結する第1チェーン1621と、第3段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gと第2段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gとを連結する第2チェーン1622と、第2段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gと第1段のクローラ15の駆動軸部151の歯車151Gとを連結する第3チェーン1623とを有する。
以上の構成によって、駆動機構16のモーター161Bが作動すると、歯車機構161Cによって第4段のクローラ15の駆動軸部151が回転され、さらに、伝達機構162によって、第3段から第1段の各クローラ15の駆動軸部151がそれぞれ回転されて第1段から第4段の各クローラ15が同期して回転する。
【0017】
クローラ15の具体的な構成が図3に示されている。
図3において、クローラ15の帯体150は、複数の長尺状のモリブデン製金属板をそれぞれピンでつないで形成されており、その内周面には駆動軸部151と従動軸部152との外周面に噛合する噛合部(図示せず)が設けられている。
電気発熱体12とガス供給管13とは、それぞれ2本ずつ帯体150で囲われた空間に配置され、これらは、同一高さかつ駆動軸部151及び従動軸部152と平行に配置されている。
2本の電気発熱体12で生じた熱は、クローラ15の帯体150の上部に伝達され、この帯体150の上部に配置された塵芥に伝達される。つまり、帯体150の上面部は、塵芥を加熱するための加熱床として機能する。
本実施形態では、クローラ15の数、帯体150の平面上の幅W及び搬送方向Pの長さL、クローラ15の送り速度、並びに、電気発熱体12の発生熱量によって、所定時間の処理量、例えば、1日あたりの必要な処理量が設定される。
【0018】
電気発熱体12は、高純度、再結晶SiCよりなる細長い円柱状の炭化ケイ素発熱体であり、単位面積当たりの発熱量が極めて大きい。
生成機本体11に使用する電気発熱体12の表面温度は、1100℃から1150℃の温度が好ましく、他の熱源であるニクロム線等の電気発熱体の5倍から10倍の熱量を得ることができる。これにより、生成機本体11の内部温度は、適宜な温度、例えば、200℃から600℃とされる。
ガス供給管13は、燃焼や延焼を防止するガスであるマイナスイオンガスを外部装置から吸引できる管で、その下方に向けて複数のガス噴出口13Aが開口されている。加熱炉110の内部にマイナスイオンガスを充満させることにより、塵芥を燃焼するのに必要な酸素が供給されるのを防ぎ、塵芥が炎を上げて酸化するのを抑えることができる。これにより塵芥が灰化せずに炭化する。
【0019】
ガス供給管13とクローラ15の帯体150の上部との間にはモリブデン製のカバー17が設けられている。
このカバー17は、クローラ15の帯体150を構成する軌板同士の隙間から落下する塵芥等によってガス供給管13が破損し、あるいは、ガス噴出口13Aが詰まらないようにするために、ガス供給管13の上方に配置された傘状の庇である。カバー17の長さはガス供給管13の長さと同じである。カバー17により、マイナスイオンガスの効果が常に維持されているので、塵芥投入部111を空けて酸素が入ったとしても炎が上がらず、安全性が高いものとなる。
【0020】
図1及び図2に戻り、電気分解装置2は、生成機本体11の背面から外方にかけて屈曲するとともに下方に垂下して折り曲げながら設けた煙導部20と、塵芥を燻焼した際に生じる有害物質を含んだ排ガスを加熱する加熱装置本体21とを備える。
煙導部20は、有害ガスを含んだ排ガスを生成機本体11から加熱装置本体21まで誘導するものであり、第1煙導201と、この第1煙導201から垂下して設けられた連結煙導20Aと、この連結煙導20Aの下部に扇状に設けた第2煙導202と、この第2煙導202から加熱装置本体21まで傾斜して設けられた第3煙導203とを備えている。この第3煙導203は加熱装置本体21の下部に接続する連結管20Bを有する。
加熱装置本体21は、鉄製の上蓋211と、この上蓋211の下部に密着し煙導部20から送られた排ガスを高温に加熱する鉄製の容器212と、この容器212を一定の高さに保持する鉄製の取付台213とを備え、容器212の側面には棒状の電気発熱体22が複数本(図では3本)設けられている。
これらの電気発熱体22は、容器212の側面に対して水平方向に差込むことができる。電気発熱体22は電気発熱体12と同じ構造である。
電気発熱体22の表面温度は1100℃以上であり、生成機本体11から流れ込んだ排気ガスを全て電気発熱体22の表面に吸着するとともに高温でダイオキシン等の有害物質を含んだ排気ガスを燃焼してある程度無害化するためのものである。
【0021】
吸着装置3は、上流から下流にかけて配置されそれぞれ鉄製の第1吸着筒31、第2吸着筒32、第3吸着筒33及び第4吸着筒34を備える。
第1吸着筒31及び第2吸着筒32の内部には吸着材30としてゼオライト等が設けられている。吸着材30は図示しないケースに収納された状態で、第1吸着筒31及び第2吸着筒32の内部に設けられている。
第3吸着筒33は、略T字状のカバー33Aと、筒の中央に設けた導管33Bとを備え、導管33Bに第2吸着筒32の導管32Aを連結するとともに、上面に煙を排出するための第1ファン35が取り付けられている。この第1ファン35は、内部に小型のファン本体(図示せず)が内蔵され、側面にファンを回転するためのモーター35Aが取り付けられている。第1ファン35の上面と下面は、それぞれ開口されている。
【0022】
第4吸着筒34は、筒の上面に設けられた略T字状のカバー34Aと、筒の上面に設けられた開口部34Bと、この開口部34Bに向かって無害化した煙を外に排出するファン35Cと、このファン35Cの下方に取り付けられ排ガスの温度を下げ、かつ、排ガスに含まれる物質を完全に吸着除去するため吸着材35Dが設けられた取付部材35Eとを有する。
吸着材35Dはゼオライトからなる。第4吸着筒34を通過した煙は無色透明、かつ無害の排ガスとなり、ファン35Cにより大気中に強制的に排出される。排出された煙の温度は20℃前後であるが、この温度は限定されるものではない。
【0023】
制御装置は、生成機本体11、加熱装置本体21、吸着装置3及び駆動機構16の各装置と接続され、燻焼温度等をセンサー等によりコントロールできる装置である。
制御装置は、内部に制御盤(図示せず)を備えており、制御盤には複数の表示灯、自動/手動切替スイッチ、運転開始ボタン、運転停止ボタンに加え、電源表示灯、過電流警報灯、ヒューズ断警報、過電流警報灯、非常停止灯、運転表示灯、停止表示灯、自動表示灯、手動表示灯、自動/手動切替スイッチ等を備えている。
制御装置は、停電時に生成機本体11が約10秒前後で再度作動するよう自家発電装置(図示せず)を備えている。よって、生成機本体11の内部の塵芥の燻焼温度が急激に低下しない。なお、自家発電装置に代えてソーラーパネル等から電力を得る太陽光発電システム(図示せず)に代えることができる。
なお、生成機本体11、電気分解装置2及び吸着装置3の内部には、ダイオキシンが発生することを未然に防ぎ、燻焼温度の低下を防止するために制御装置に接続した温度センサー(図示せず)等を複数取り付けることができる。
【0024】
次に、本実施形態にかかる塵芥処理方法について説明する。
制御装置からの信号によって、駆動機構16並びに電気発熱体12,22等を作動させるとともに、ガス供給管13からマイナスイオンを放出する。
駆動機構16が作動することで、第4段のクローラ15、第3段のクローラ15,第2段のクローラ15及び第1段のクローラ15が回転駆動することになり、かつ、加熱炉110の内部の温度が上昇する。
【0025】
加熱炉110の内部が350℃程度になったら、投入口111Bを開放して塵芥を大鋸屑とともに加熱炉110の内部に所定量を続けて投入する。投入された塵芥は、第1段のクローラ15の帯体150の投入側端部15Aに堆積されることになり、その状態で、下流側に送られる。クローラ15の上面に積載された塵芥Qは、電気発熱体12により、帯体150を介して加熱される。
必要量の塵芥が投入されたら、投入口111Bを閉塞する。塵芥投入後は、電気発熱体12の温度を1100℃程度まで上昇させて、通常の炭化処理を行う。
投入された塵芥は、クローラ15の帯体150の上に堆積されることになり、帯体150からの熱が伝達されて炭化される。ガス供給管13から排出されるマイナスイオンによって、塵芥の燃焼(完全な酸化)が防止されて炭化状態となる。
塵芥Qの炭化により、加熱炉110の内部の塵芥Qが少なくなったら、適宜、処理対象となる塵芥Qを追加投入する。
【0026】
第1段のクローラ15で加熱された塵芥は、帯体150に近い下部を中心に加熱される。塵芥は第1段のクローラ15で搬送されながら加熱されるが、その搬出側端部15Bから第2段のクローラ15の投入側端部15Aに排出される。この際、第1段のクローラ15から第2段のクローラ15まで落差があるため、第1段のクローラ15で加熱された塵芥Qは、第2段のクローラ15に堆積される際に、天地がひっくりかえることになり、加熱されて高温となっている部位が上方に、高温となっていない部分が第2段のクローラ15の帯体150に近い下方となる。天地がひっくりかえった塵芥は、第2段のクローラ15で搬送されながら加熱され、第3段のクローラ15及び第4段のクローラ15で搬送されながら加熱し、第4段のクローラ15の搬出側端部15Bでは、残存滓となり、滓収納部112に落下する。
塵芥処理がさらに進行することによって、塵芥自体の残存滓を加熱炉110の滓収納部112から外部に排出する。
【0027】
炭化に伴って生じる排ガスにはダイオキシン等の有害物質を含むことがある。この排ガスは、電気分解装置2の煙導部20を通過した後、加熱装置本体21に送られる。電気分解装置2の煙導部20を通過する状態では、排ガスの温度は低下するが、この排ガスが加熱装置本体21に送られると、電気発熱体22によって1100℃程度まで上昇する。すると、排ガスに含まれる有害物質は電気発熱体22の表面に吸着されるとともに燃焼によってある程度、無害化される。
電気分解装置2から送られる排ガスは吸着装置3に送られ、吸着材30によってダイオキシン等の有害物質が吸着されて完全に除去される。この有害物質が除去された排気ガスは20℃程度まで降温されて外部に排出される。
【0028】
従って、第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)塵芥Qが投入される塵芥投入部111、塵芥Qを加熱する電気発熱体12、マイナスイオンのガスを供給するガス供給管13、及び塵芥Qを加熱した際に生じる滓を収納する滓収納部112が設けられた炭化物生成機1と、この炭化物生成機1で生じたガスを加熱する電気発熱体22を有する電気分解装置2と、この電気分解装置2から送られた煙に含まれている有害生物を吸着する吸着材30とを備えて塵芥処理装置を構成した。そのため、塵芥投入部111から投入された塵芥Qが電気発熱体12で加熱されるとともにガス供給管13から供給されるマイナスイオンによって塵芥Qの燃焼(完全な酸化)が防止されて炭化状態となり、この炭化に伴って生じる排ガスに含まれるダイオキシン等の有害物質が電気分解装置2の電気発熱体22によって加熱されて無害化され、さらに、吸着材30によって完全に無害化される。
【0029】
(2)炭化物生成機1は、塵芥投入部111の下方に投入側端部15Aが位置するとともに滓収納部112の上方に搬出側端部15Bが位置する可動型加熱装置14を有し、この可動型加熱装置14は、耐熱金属製のクローラ15を含み構成されるから、塵芥Qの堆積、加熱、排出の一連の工程を連続して実施できることになり、塵芥処理を自動化することができる。その上、クローラ15の幅方向及び搬送方向Pの二次元寸法及び送り速度を調整することで、所定時間の処理量、例えば、1日あたりの必要な処理量を容易に設定することが可能となる。
【0030】
(3)クローラ15で囲われた空間にガス供給管13及び電気発熱体12が配置されるから、塵芥投入部111から落下される塵芥が直接に電気発熱体12やガス供給管13に衝突することがないので、装置の故障を防止できる。
【0031】
(4)ガス供給管13は、下方に向けて開口されたガス噴出口13Aを有するから、クローラの金属板同士の隙間から塵芥Qが落下しても、ガス噴出口13Aを塞ぐことがない。そのため、安定してマイナスイオンを加熱炉110の内部に供給することができる。
【0032】
(5)クローラ15は上下に複数段配置されており、上段のクローラ15の他端部から落下した塵芥Qを下段のクローラ15で受けるようにしたから、上段から下段のクローラ15に塵芥Qが落下する際に反転することで、加熱ムラがなくなり、燻焼が効率的に行われる。
【0033】
(6)滓収納部112は炭化物生成機1の中心に対して電気分解装置2から離れた位置に配置されているから、滓を処理する際に、電気分解装置2の発熱の影響を受けにくいことになり、作業を容易に行える。
【0034】
(7)クローラ15は、エンドレスベルト状の帯体150と、この帯体150の内部において互いに対向配置された駆動軸部151及び従動軸部152とを有し、この駆動軸部151が搬送方向Pの下流側に配置されているから、帯体150の上部の撓みを防止することができる。そのため、帯体150の平らな面で塵芥Qを堆積させることができるので、塵芥Qを安定した状態で移動することができる。
【0035】
(8)クローラ15は帯体150の上部の下面を支持する複数の転動軸部153を有するから、重い塵芥Qを帯体150の上部で堆積しても、帯体150が撓むことがないから、この点からも、塵芥Qを安定した状態で移動することができる。
【0036】
(9)クローラ15の駆動軸部151を回転駆動する駆動機構16を備え、この駆動機構16は、1つのクローラ15の駆動軸部151を回動させる回転機構161と、このクローラ15の駆動軸部151からの回転力を他のクローラ15の駆動軸部151に伝達する伝達機構162とを備えた構成としたから、各クローラ15の動きを同期させることができるので、塵芥Qの移動がスムーズに行える。
【0037】
(10)クローラ15をモリブデンから構成したから、モリブデンは耐熱性が高く、硬い金属であるため、加熱炉110でも塵芥Qを高温で加熱することができる。
(11)ガス供給管13とクローラ15の帯体150の上部との間にカバー17を設けたから、帯体150を構成する複数の金属板の隙間から塵芥Qが落下しても、ガス供給管13に当たることがないから、ガス供給管13の破損を防止できる。
【0038】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態では、4段のクローラ15を備えて可動型加熱装置14を構成したが、本発明では、2段又は3段のクローラ15や、5段以上のクローラ15を備えて可動型加熱装置14を構成してもよく、あるいは、1段のみのクローラ15から可動型加熱装置14を構成するものでもよい。奇数段の場合では、塵芥投入部111及び滓収納部112は生成機本体11の中心より電気分解装置2に近い位置に設けられることになる。
【0039】
前記実施形態では、駆動機構16を第4段のクローラ15の駆動軸部151を回動させる回転機構161と、第4段のクローラ15の駆動軸部151からの回転力を他のクローラ15の駆動軸部151に伝達する伝達機構162とを備える構成としたが、本発明では、各クローラ15を個別に駆動する駆動機構を設ける構成としてもよい。
前記実施形態では、回転機構161を、モーター161Bと、このモーター161Bに噛合される歯車機構161Cとを備えて構成したが、歯車機構161Cに代えてチェーンを用いてもよい。
さらに、前記実施形態では、伝達機構162を、複数のクローラ15の駆動軸部151の間を連結するチェーンから構成したが、本発明では、チェーンに代えて歯車機構を用いてもよい。
【0040】
クローラは耐熱製であれば、モリブデンに限定されるものではなく、他の耐熱製金属や、セラミックス等の耐熱製材料から構成されるものでもよい。
さらに、処理する塵芥Qを生成機本体11へ投入するにあたり、必ずしも大鋸屑を混入させる必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ダイオキシン等の有害物質を含む塵芥の処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…炭化物生成機、2…電気分解装置、3…吸着装置、11…生成機本体、111…塵芥投入部、112…滓収納部、12,22…電気発熱体、13…ガス供給管、13A…ガス噴出口、14…可動型加熱装置、15…クローラ、15A…投入側端部、15B…搬出側端部、16…駆動機構、150…帯体、151…駆動軸部、152…従動軸部、17…カバー、30…吸着材、Q…塵芥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥が投入される塵芥投入部、マイナスイオンのガスを供給するガス供給管、塵芥を加熱する電気発熱体、及び前記塵芥を加熱した際に生じる滓を収納する滓収納部が設けられた炭化物生成機と、この炭化物生成機で生じたガスを加熱する電気発熱体を有する電気分解装置と、この電気分解装置から送られた煙に含まれている有害生物を吸着する吸着材とを備え、
前記炭化物生成機は、前記塵芥投入部の下方に投入側端部が位置するとともに前記滓収納部の上方に搬出側端部が位置する可動型加熱装置を有し、この可動型加熱装置は、耐熱製のクローラを含み、このクローラで囲われた空間に前記ガス供給管及び前記電気発熱体が配置されることを特徴とする塵芥処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された塵芥処理装置において、
前記ガス供給管は、下方に向けて開口されたガス噴出口を有することを特徴とする塵芥処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された塵芥処理装置において、
前記クローラは、上下に複数段配置されており、上段のクローラの一端部で塵芥を受け、次段のクローラの一端部は上段のクローラの他端部から落下する塵芥を受けることを特徴とする塵芥処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された塵芥処理装置において、
前記滓収納部は前記炭化物生成機の中心に対して電気分解装置から離れて配置されていることを特徴とする塵芥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−241092(P2012−241092A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111479(P2011−111479)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(594046754)山崎金属株式会社 (6)
【出願人】(510230595)恒栄テクノサービス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】