説明

塵芥収集車の上部カバー

【課題】外観の見栄えを損なうことなく塵芥収容箱と塵芥投入箱との連設部分上部間の隙間を覆って雨水などの浸入を防止する。
【解決手段】前端が塵芥収容箱4の後端上部に回動自在に連結された鋼板製の前カバー8と、前カバー8の後端に前端が回動自在に連結されるとともに、後端が塵芥投入箱5の前端上部に回動自在に連結された鋼板製の後カバー8とから構成される。そして、塵芥収集車1の走行時において、前カバー8および後カバー9は、略水平に連続して塵芥収容箱4および塵芥投入箱5の連設部分上部を被覆する。一方、塵芥収容箱4に対する塵芥投入箱5の傾動時において、前カバー8および後カバー9がそれらの連結部を中心として上方に屈曲して、塵芥投入箱5の傾動に連動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塵芥収集車において、塵芥収容箱および該塵芥収容箱の後部に傾動自在に連設された塵芥投入箱の上部にわたって設けられた上部カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車枠上に塵芥収容箱を傾動自在に搭載するとともに、塵芥収容箱の後面開口部に塵芥積込装置を備えた塵芥投入箱を傾動可能に連設した塵芥収集車が広く採用されている。このような塵芥収集車においては、塵芥積込装置を作動させて塵芥を塵芥収容箱に積込む一方、塵芥を排出する場合は、塵芥収容箱に対して塵芥投入箱を上方に傾動させて塵芥収容箱の後部を開放させるとともに、塵芥投入箱を傾動させた状態で塵芥収容箱を上方に傾動させることにより塵芥を外部に排出するようにしている。
【0003】
ところで、塵芥排出時には、塵芥収容箱に対して塵芥投入箱を傾動させる必要があることから、塵芥収容箱と塵芥投入箱との連設部分上部間には構造上隙間が発生し、この隙間から雨水などが浸入することを避けることができない。このため、塵芥収集車においては、塵芥収容箱に対する塵芥投入箱の傾動を許容するとともに、塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部間の隙間を通して雨水などが浸入するのを防止するため、柔軟性を有するキャンバスシートからなるカバーを塵芥投入箱と塵芥収容箱との上部間にわたって配設している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部を柔軟なシートによって被覆する構造では、耐久性に乏しい上に、波打った外観を呈することから、塵芥収集車のデザインの向上を図る上で見栄えが低下するという問題があった。また、柔軟なシートでは、水密構造とすることは困難であり、雨水などの浸入を確実に防止することができないものであった。
【0005】
このような問題に対応して、出願人は、先にプラスチック製カバーを塵芥収容箱の後端上部にヒンジ金具を介して回動自在に連結し、塵芥投入箱の傾動に連動してしカバーをヒンジ金具回りに回動させることにより、塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部間の隙間を被覆して雨水などの浸入を防止することを提案している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平1−78604号公報
【特許文献2】特開2005−330075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したプラスチック製カバーによって塵芥収容箱および塵芥投入箱との連設部分上部を被覆するものでは、カバーを強度上厚みのあるボックス形状に形成する必要がある他、塵芥収容箱の上方に突出する後端上部を覆うとともに、後方に延設されて塵芥投入箱の前端上部を覆う構造となっていることから、カバーの分だけ車高が大きくなるとともに、カバーが上方に突出して外観の見栄えを損なうという欠点があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、外観の見栄えを損なうことなく塵芥収容箱と塵芥投入箱との連設部分上部間の隙間を覆って雨水などの浸入を防止することのできる塵芥収集車の上部カバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車枠上に搭載された塵芥収集車の後面開口部に塵芥積込装置を備えた塵芥投入箱が傾動可能に連設されてなる塵芥収集車において、前端が塵芥収容箱の後端上部に回動自在に連結された鋼板製の前カバーと、前カバーの後端に前端が回動自在に連結されるとともに、後端が塵芥投入箱の前端上部に回動自在に連結された鋼板製の後カバーとからなり、走行時において、前カバーおよび後カバーが略水平に連続して塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部を被覆する一方、塵芥収容箱に対する塵芥投入箱の傾動時において、前カバーおよび後カバーがそれらの連結部を中心として上方に屈曲することを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、走行時においては、前カバーおよび後カバーが略水平に連続して塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部を被覆することから、塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部間に発生する隙間を覆って雨水などの浸入を確実に防止することができる。しかも、塵芥収容箱の後端から塵芥投入箱の前端にかけてあたかも略水平な一枚の板材が配設される構成となって上方への突出部分を発生させることもないことから、塵芥収集車の外観の見栄えを損なうこともない。
【0010】
なお、塵芥収容箱に対する塵芥投入箱の傾動時においては、前カバーおよび後カバーがそれらの連結部を中心として互いに回動して上方に向けてく字状に屈曲することから、塵芥投入箱の傾動に連動させることができる。
【0011】
この結果、外観の見栄えを損なうことなく塵芥収容箱と塵芥投入箱との連設部分上部間の隙間を覆って雨水などの浸入を防止することができる。
【0012】
本発明において、前記前カバーに、該前カバーを塵芥収容箱との連結部回りに回動するように付勢する付勢部材が設けられると、塵芥投入箱の傾動時、前カバーおよび後カバーがそれらの連結部を中心として互いに上方に向けてく字状に屈曲する方向に回動するよう付勢することから、同方向に確実に回動させることができる。
【0013】
ここで、付勢部材としては、トーションバーを挙げることができる。
【0014】
本発明において、前記前カバーの後端または後カバーの前端のいずれか一方に、他方のカバーの端縁部に跨がるシール板が設けられることが好ましい。これにより、前カバーの後端と後カバーの前端に発生する隙間を覆うことができ、それらの隙間を通して雨水などが浸入することを防止できる。
【0015】
本発明において、前記塵芥投入箱に、後カバーの前端を支持する緩衝部材が設けられることが好ましい。これにより、後カバーを前カバーと連続する平面を形成するように緩衝しつつ支持することができる。
【0016】
ここで、緩衝部材としては、クッションゴムを挙げることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外観の見栄えを損なうことなく塵芥収容箱と塵芥投入箱との連設部分上部間の隙間を覆って雨水などの浸入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明の上部カバーを備えた塵芥収集車1の一実施形態が示されている。
【0020】
この塵芥収集車1は、車枠2の前部に運転席3が配置される一方、その後部に塵芥投入箱5を連設した塵芥収容箱4が搭載されて構成されている。具体的には、塵芥収容箱4の後面は開放された開口部になされており、この開口部には塵芥投入箱5が当該塵芥投入箱5と塵芥収容箱4との間に連結された図示しない傾動シリンダにより枢軸6(図2参照)を以て傾動可能に連設されている。
【0021】
塵芥投入箱5内には図示しない従来周知の塵芥積込装置が装備されており、当該塵芥積込装置により塵芥投入箱5の後部に形成された投入部51から投入した塵芥を塵芥収容箱4に積み込むようになされている。
【0022】
一方、前記塵芥収容箱4は、車枠2に傾動自在に軸支されており、車枠2と塵芥収容箱4間に配設された図示しないダンプシリンダの伸縮作動によって軸支部回りに傾動し、あるいは、伏倒するようになっている。
【0023】
したがって、塵芥積込装置によって塵芥収容箱4内へ塵芥を積み込むことができる。また、塵芥投入箱5を上方に傾動させて塵芥収容箱4の後面を開放した状態で塵芥収容箱4を上方に傾動させることによって塵芥を外部に排出することができる(図1の鎖線状態参照)。
【0024】
ところで、前記塵芥収容箱4と前記塵芥投入箱5の連設部分上部間には本発明の上部カバー7が設けられている。
【0025】
この上部カバー7は、図2および図3に示すように、前述した塵芥収容箱4と塵芥投入箱5の連設部分上部間を全幅方向にわたって被覆する鋼板製の前カバー8および後カバー9から構成されている。
【0026】
前カバー8は、図4に詳細に示すように、その前端が塵芥収容箱4の後端上部にL字状ステー14を介して設けられたヒンジ金具13の一端に連結されている他、その内面には付勢部材としてのトーションバー10が配設されている。このトーションバー10は、その一端部が前カバー8に固定され、他端部が塵芥収容箱4の後端上面に自由に当接してねじり力を発生するように設定されている。したがって、前カバー8は、トーションバー10の他端部が塵芥収容箱4の後端上面に当接してねじり力が作用するとき、その反力によって塵芥収容箱4に対してヒンジ金具13回りに回動するように付勢される。この場合、ステー14およびヒンジ金具13は、幅方向に所定の間隔をおいて複数個設けられている。
【0027】
一方、後カバー9は、前端が前カバー8の後端にヒンジ金具13を介して互いに回動自在に連結されるとともに、後端が塵芥投入箱5の前端上部にヒンジ金具13を介して回動自在に連結されている。そして、塵芥投入箱5の左右側板上部にブラケット15を介して緩衝部材としてのクッションゴム11が設けられており、後カバー9の前端の幅方向両端部がクッションゴム11によって緩衝しつつ支持されるようになっている。この場合、後カバー9は、前端がクッションゴム11に支持された際に、略水平面を形成するように設定されるとともに、後カバー9にヒンジ金具13を介して連結された前カバー8が後カバー9に連続して水平面を形成するように設定されている。これらのヒンジ金具13も、前述したヒンジ金具13の間隔と同じ間隔をおいて複数個設けられている。
【0028】
なお、前カバー8の後端には、該前カバー8の幅と同幅の鋼板製のシール板12の前端が連結されており、該シール板12の後端は、後カバー9の前端に跨がるように後方に向けて延設されている。このように、シール板12を設けることにより、前カバー7の後端および後カバー9の前端をヒンジ金具13を介して連結する際に、それらの後端縁および前端縁間に形成される隙間をシール板12によって覆うことができ、該隙間を通して雨水などが浸入することを可及的に抑制することができる。
【0029】
また、前カバー8の後端は、前方に向かって折り返された後、下方に向けて折曲されることにより強度アップが図られている。同様に、後カバー9の前端も、後方に向かって折り返された後、下方に向けて折曲されることに強度アップが図られている。さらに、前カバー8および後カバー9の幅方向の各端縁には、帯状のフラップ8a,9aがそれぞれ垂設されており、側方からの雨水などの浸入を防止している(図2参照)。
【0030】
次に、このように構成された上部カバー7の作動について説明する。
【0031】
まず、塵芥収集車1の走行状態においては、図1および図2に示すように、上部カバーを構成する前カバー8および後カバー9は、略水平に連続するように配置されて、塵芥収容箱4と塵芥投入箱5の連設部分上部間を全幅方向にわたって被覆している。これにより、塵芥収容箱4と塵芥投入箱5の連設部分上部間の隙間を通して雨水などが浸入することを防止している。しかも、前カバー8の後端縁および後カバー9の前端縁間の隙間もシール板12によって覆っており、この隙間からの雨水などの浸入も防止している。また、前カバー8および後カバー9は、あたかも1枚の略水平な板材に形成されて上方への突出部分が発生しないことにより、外観の見栄えを損なうこともない。
【0032】
一方、塵芥を排出するため、塵芥収容箱4に対して枢軸6回りに塵芥投入箱5を傾動させると、塵芥投入箱5にヒンジ金具13を介して連結された後カバー9の後端が枢軸6を中心として回動を開始する。これにより、後カバー9の後端は、ヒンジ金具13を介して塵芥投入箱5との相対的な角度変化が吸収されるとともに、その前端もヒンジ金具13を介して前カバー8との相対的な角度変化を吸収する。このとき、前カバー8は、図7において、トーションバー10によってその前端がヒンジ金具13について反時計回り方向に回動するように付勢されており、その付勢力によって後端にヒンジ金具13を介して連結されている後カバー9の前端をクッションゴム11から離脱させるように押し上げる(図7参照)。以下、塵芥投入箱5の傾動を継続することにより、後カバー9は、その後端がヒンジ金具13回りに回動して塵芥投入箱5との相対的な角度変化を吸収して立ち上げられる一方、前カバー8も、ヒンジ金具13を介して連結されている後カバー9に規制されつつその前端がヒンジ金具13回りに回動して塵芥収容箱4との相対的な角度変化を吸収して立ち上げられ、結局、前カバー8および後カバー9は、上方に向けてく字状に屈曲し、塵芥収容箱4に対する塵芥投入箱5の傾動に連動することができる。
【0033】
塵芥投入箱5の傾動が終了すれば、その後、塵芥収容箱4を傾動させることにより、塵芥収容箱4の内部に積み込まれた塵芥が落下し、外部に排出することができる。この場合、塵芥収容箱4に対する塵芥投入箱5の相対的な位置関係は変化しないことから、上部カバー7を構成する前カバー8および後カバー9は、図8に示した関係を保持している。
【0034】
塵芥の排出が終了すれば、塵芥収容箱4を伏倒させるとともに、塵芥投入箱5を伏倒させて塵芥収容箱4に連接させることにより、再び塵芥の収集作業を行うことができる。このとき、上部カバー7は、塵芥投入箱5の回動に連動して後カバー9が徐々に立ち上げ角度を小さくするように倒伏し、合わせて後カバー9とのなす角度を相対的に大きくなるように前カバー8を牽引する。そして、塵芥投入箱5が塵芥収容箱4の後面開口部に連接するとき、後カバー9の前端がクッションゴム11に緩衝しつつ支持されて水平姿勢となるとともに、後カバー9に連結された前カバー8も連続する水平面を形成するように水平姿勢となる。この際、トーションバー10が塵芥収容箱4の後端上面に当接してねじり力が蓄えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の上部カバーを備えた塵芥収集車の全体側面図である。
【図2】図1の上部カバーを拡大して示す側面図である。
【図3】図2の上部カバーの平面図である。
【図4】図1の上部カバーにおける前カバーの前端を一部省略して示す側面図である。
【図5】図1の上部カバーにおける前カバーの後端および後カバーの前端を一部省略して示す側面図である。
【図6】図1の上部カバーにおける後カバーの後端を一部省略して示す側面図である。
【図7】塵芥投入箱傾動開始時の上部カバーの作動を一部省略して説明する側面図である。
【図8】塵芥投入箱傾動終了時の上部カバーの作動を一部省略して説明する側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 塵芥収集車
4 塵芥収容箱
5 塵芥投入箱
7 上部カバー
8 前カバー
9 後カバー
10 トーションバー
11 クッションゴム
12 シール板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車枠上に搭載された塵芥収集車の後面開口部に塵芥積込装置を備えた塵芥投入箱が傾動可能に連設されてなる塵芥収集車において、前端が塵芥収容箱の後端上部に回動自在に連結された鋼板製の前カバーと、前カバーの後端に前端が回動自在に連結されるとともに、後端が塵芥投入箱の前端上部に回動自在に連結された鋼板製の後カバーとからなり、走行時において、前カバーおよび後カバーが略水平に連続して塵芥収容箱および塵芥投入箱の連設部分上部を被覆する一方、塵芥収容箱に対する塵芥投入箱の傾動時において、前カバーおよび後カバーがそれらの連結部を中心として上方に屈曲することを特徴とする塵芥収集車の上部カバー。
【請求項2】
前記前カバーに、該前カバーを塵芥収容箱との連結部回りに回動するように付勢する付勢部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の塵芥収集車の上部カバー。
【請求項3】
前記前カバーの後端または後カバーの前端のいずれか一方に、他方のカバーの端縁部に跨がるシール板が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の塵芥収集車の上部カバー。
【請求項4】
前記塵芥投入箱に、後カバーの前端を支持する緩衝部材が設けられることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の塵芥収集車の上部カバー。
【請求項5】
前記付勢部材がトーションバーであることを特徴とする請求項2記載の塵芥収集車の上部カバー。
【請求項6】
前記緩衝部材がクッションゴムであることを特徴とする請求項4記載の塵芥収集車の上部カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−285318(P2008−285318A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134469(P2007−134469)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】