説明

増圧給水システム

【課題】低層階用の給水装置と高層階用の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクの封入圧力の低下を検知することができる増圧給水システムを提供する。
【解決手段】増圧給水システムは、水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置BP1と、第1の給水装置BP1に直列に連結され、第1の給水装置BP1よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置BP2と、第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2とを連結する配水管に接続された圧力タンク30とを備える。第1の給水装置BP1および第2の給水装置BP2はそれぞれポンプを有しており、第2の給水装置BP2は、該第2の給水装置BP2のポンプ始動時に第2の給水装置BP2の吸込側圧力が所定の圧力低下検出値にまで低下した場合は、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビルやマンションなどの建物に水を供給するための増圧給水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルやマンションなどの建物に水(水道水)を供給するための装置として給水装置が広く使用されている。この給水装置は、一般に、水を圧送するための遠心ポンプと、この遠心ポンプを駆動するためのモータと、このモータの運転を制御する制御部とを備えている。遠心ポンプの吸込口は水道本管に接続され、水道本管により導入された水は遠心ポンプにより昇圧された後、建物内部に設けられた配水管を介して各給水栓に供給される。このような水道本管に直結された給水装置は、一般に、直結式給水装置と呼ばれている。
【0003】
最近では、高層建築物への給水に直結式給水装置を用いた増圧給水システムが使用されつつある。この増圧給水システムは、低層階用の第1の給水装置と、高層階用の第2の給水装置とを備えており、これらは直列に連結されている。第1の給水装置の吸込口は水道本管に直結されており、建物の低層階には、この第1の給水装置によって水が供給される。一方、第2の給水装置は建物の中間層階に配置され、第1の給水装置から供給された水を増圧して高層階に供給する。
【0004】
2つの給水装置を持つ増圧給水システムにおいては、それぞれが独立して運転されるため、次のような問題が起こりうる。すなわち、第1の給水装置が停止している状態で第2の給水装置が運転されると、第1の給水装置と第2の給水装置とを連結する配水管に負圧が形成されることがある。この状態で、配水管に連通する給水栓が開かれると、その給水栓から空気が吸い込まれてしまう。
【0005】
そこで、特許文献1に示すように、第1の給水装置と第2の給水装置との間に圧力タンクを設けて第1の給水装置と第2の給水装置との間の配水管内の圧力低下を防止することが従来から行なわれている。圧力タンクは、一般に、その内部にダイヤフラムを有しており、ダイヤフラムによって仕切られた圧力室には空気などの圧縮性の気体が充填されている。圧力タンクに流入した水は、ダイヤフラムを介して圧力室内の気体を圧縮し、圧縮された気体の圧力により配水管内の水の圧力が保持される。
【0006】
このような圧力タンクを設けることにより、第1の給水装置が停止している状態で第2の給水装置が運転されても、配水管内の圧力が維持され、給水栓からの空気の吸い込みが防止される。しかしながら、圧力タンクに充填されている気体は時間の経過とともに少しずつ抜けていくため、定期的に気体を圧力室に補充して圧力タンクの封入圧力を維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−223269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、低層階用の給水装置と高層階用の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクの封入圧力の低下を検知することができる増圧給水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、建物に給水する増圧給水システムであって、水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置と、前記第1の給水装置に直列に連結され、前記第1の給水装置よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置と、前記第1の給水装置と前記第2の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクとを備え、前記第1の給水装置および前記第2の給水装置はそれぞれポンプを有しており、前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が所定の圧力低下検出値にまで低下した場合は、前記圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が前記圧力低下検出値にまで低下した回数をカウントし、前記回数が予め設定された回数に達した場合は、前記警報を発することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、建物に給水する増圧給水システムであって、水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置と、前記第1の給水装置に直列に連結され、前記第1の給水装置よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置と、前記第1の給水装置と前記第2の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクとを備え、前記第1の給水装置および前記第2の給水装置はそれぞれポンプを有しており、前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が所定の圧力上昇検出値にまで上昇した場合は、前記圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が前記圧力上昇検出値にまで上昇した回数をカウントし、前記回数が予め設定された回数に達した場合は、前記警報を発することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、建物に給水する増圧給水システムであって、水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置と、前記第1の給水装置に直列に連結され、前記第1の給水装置よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置と、前記第1の給水装置と前記第2の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクとを備え、前記第1の給水装置および前記第2の給水装置はそれぞれポンプを有しており、前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が最も低下した最低圧力と前記第2の給水装置の吸込側圧力が最も上昇した最高圧力との圧力差を算出し、前記圧力差が所定の圧力差検出値に達した場合は、前記圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記圧力差が前記圧力差検出値に達した回数をカウントし、前記回数が予め設定された回数に達した場合は、前記警報を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
圧力タンクの封入圧力が大きく低下すると、第2の給水装置のポンプの始動に伴って第2の給水装置の吸込側圧力が大きく変動する。本発明によれば、圧力タンクの封入圧力を直接測定することなく、この第2の給水装置の吸込側圧力に基づいて圧力タンクの封入圧力の低下を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る増圧給水システムを示す模式図である。
【図2】第1の給水装置を示す模式図である。
【図3】第2の給水装置を示す模式図である。
【図4】圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にあるときの第1の給水装置の吐出側圧力、第2の給水装置の吸込側圧力および吐出側圧力、および第2の給水装置の吐き出し流量の変化を示すグラフである。
【図5】圧力タンクの封入圧力が正常範囲外にあるときの第1の給水装置の吐出側圧力、第2の給水装置の吸込側圧力および吐出側圧力、および第2の給水装置の吐き出し流量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る増圧給水システムについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る増圧給水システムを示す模式図である。この増圧給水システムは、高層建築物(例えば、16階以上の建物)に使用される直結式の増圧給水システムである。図1に示すように、この増圧給水システムは、水道本管2に連結された第1の給水装置BP1と、第1の給水装置BP1に直列に連結された第2の給水装置BP2とを有している。第1の給水装置BP1は、グランドレベルまたは地下に設置されており、第2の給水装置BP2は、建物1の中間層階に設置されている。
【0015】
第1の給水装置BP1の吸込口は、導入管5を介して水道本管2に接続されている。第1の給水装置BP1の吐出口と第2の給水装置BP2の吸込口とは第1の配水管7によって連結されており、この第1の配水管7は、建物1の低層階の各給水栓9に枝管12を介して連通している。第2の給水装置BP2の吐出口には、第2の配水管15が接続されており、この第2の配水管15は、建物1の高層階の各給水栓10に枝管13を介して連通している。第1の給水装置BP1は、水道本管2からの水を増圧して建物1の低層階の各給水栓9に水を供給し、第2の給水装置BP2は、第1の給水装置BP1から移送された水を増圧して建物1の高層階の各給水栓10に水を供給するようになっている。
【0016】
第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2との間には、圧力タンク30が設けられている。より具体的には、圧力タンク30は、第2の給水装置BPの吸込側に配置されており、第1の配水管7に接続されている。この圧力タンク30は、第1の配水管7内の圧力を保持するための圧力保持装置である。圧力タンク30の内部にはダイヤフラムが設けられており、ダイヤフラムによって仕切られた圧力室には空気などの圧縮性の気体が充填されている。第1の配水管7から圧力タンク30内に流入した水は、ダイヤフラムを介して圧力室内の気体を圧縮し、圧縮された気体の圧力により第1の配水管7内の圧力が保持される。
【0017】
図2は、第1の給水装置BP1を示す模式図である。図2に示すように、第1の給水装置BP1は、導入管5を介して水道本管2に連結されるポンプP1と、このポンプP1を駆動する駆動源としてのモータM1と、モータM1の回転速度を増減するインバータINV1と、ポンプP1の吸込側に配置された圧力センサPS11と、ポンプP1の吐出側に配置された逆止弁CV1と、逆止弁CV1の吐出側に配置されたフロースイッチSW1、圧力センサPS12、および圧力タンクPT1とを備えている。これら構成要素は、キャビネットCB1内に収容されている。本実施形態では、2組のポンプP1、モータM1,インバータINV1,逆止弁CV1,およびフロースイッチSW1が並列に配置されているが、1組の、または3組以上のポンプ、モータ,インバータ,逆止弁、およびフロースイッチを設けてもよい。
【0018】
逆止弁CV1は、ポンプP1の吐出口に接続された吐出管L1に設けられており、ポンプP1が停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチSW1は吐出管L1を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知する流量検知器である。圧力センサPS11は、第1の給水装置BP1の吸込側圧力を測定するための水圧測定器である。圧力センサPS12は、第1の給水装置BP1の吐出側圧力を測定するための水圧測定器である。圧力タンクPT1は、ポンプP1が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0019】
ポンプP1の吸込口には減圧式逆流防止器20が接続されている。この減圧式逆流防止器20は、水道本管2への水の逆流を確実に防止するために設置することが義務付けられているものである。なお、減圧式逆流防止器とは、逃し弁が配置された中間室を2つの逆止弁が挟むように配置された構成を有する逆流防止器である。
【0020】
第1の給水装置BP1は、給水動作を制御する制御部(コントローラ)CN1をさらに備えており、インバータINV1、フロースイッチSW1、圧力センサPS11,PS12は、制御部CN1に信号線を介して接続されている。フロースイッチSW1により水の流量が所定の値にまで低下したことが検知されると、制御部CN1はポンプP1の運転速度を一時的に上げるようインバータINV1に指令を出し、吐出側圧力を所定の停止圧力にまで昇圧してからポンプP1の運転を停止させるようになっている。一方、吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部CN1はポンプP1の運転を開始するようインバータINV1に指令を出す。この始動圧力は、ポンプP1を始動させるトリガーとなるしきい値である。
【0021】
この第1の給水装置BP1においては、フロースイッチSW1や圧力センサPS12の出力信号に基づいて、ポンプP1がインバータINV1によって可変速駆動される。一般的には、圧力センサPS12により測定された圧力信号が設定された目標圧力と一致するようにポンプP1の運転速度を制御してポンプP1の吐出側圧力が一定になるように制御する吐出圧力一定制御や、ポンプP1の吐出側圧力の目標値を適切に変化させることにより末端の給水栓における供給水圧を一定に制御する推定末端圧力一定制御などが行われる。これらの制御によれば、その時々の需要水量に見合った回転速度でポンプP1が駆動されるので、省エネルギーを達成することができる。
【0022】
図3は、第2の給水装置BP2を示す模式図である。第2の給水装置BP2の基本的な構成および動作は、上述した第1の給水装置BP1と同様であり、同一の構成要素には対応する符号が付されている。この第2の給水装置BP2は、逆流防止器を備えていない点で第1の給水装置BP1と相違する。これは、水道本管2に直結されていない第2の給水装置BP2には、逆流防止器を設けることは義務付けられていないからである。ただし、第2の給水装置BP2の逆止弁CV2が故障した場合を考慮して、第2の給水装置BP2にも逆流防止器を設けてもよい。
【0023】
上述した圧力タンク30は、第2の給水装置BP2の吸込側に設けられており、第2の給水装置BP2とほぼ同じ高さに位置している。第1の給水装置BP1が故障などの理由で停止しているときに第2の給水装置BP2のポンプP2が運転された場合でも、しばらくの間は圧力タンク30から水が供給され、第1の配水管7内の圧力が維持される。この圧力タンク30の圧力室に充填されている気体は時間の経過とともに少しずつ抜けていくため、定期的に気体を圧力室に補充して圧力タンク30の封入圧力(すなわち圧力タンク30の気体の充填量)を維持する必要がある。圧力タンク30の封入圧力が大きく低下していると、圧力を高く保ったまま圧力タンク30内に保持できる水量が大きく減っていることになり、少量の水が流れ出るだけで配水管7内の圧力が大きく低下してしまう。そのため、ポンプP2の始動とともに第2の給水装置BP2の吸込側圧力が大きく変動する。そこで、第2の給水装置BP2の制御部CN2は、第2の給水装置BP2の吸込側圧力に基づいて圧力タンク30の封入圧力の低下を検知する。
【0024】
図4は、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内にあるときの第1の給水装置BP1の吐出側圧力、第2の給水装置BP2の吸込側圧力および吐出側圧力、および第2の給水装置BP2の吐き出し流量の変化を示すグラフである。図4のグラフにおいて、縦軸は揚程(m)すなわち圧力を表し、および第2の給水装置BP2の吐出流量(L/min)を表している。また、図4のグラフの横軸は時間を表している。
【0025】
建物1の高層階で給水栓10が開かれると、第2の給水装置BP2の吐出側圧力が徐々に低下する。この吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下したとき、制御部CN2はインバータINV2に指令を発してポンプP2を始動させる。圧力センサPS22の出力値(すなわち、第2の給水装置BP2の吐出側圧力)が所定の始動圧力に達した時点からポンプP2が実際に始動される時点までの間には若干のタイムラグがある。このため、図4に示すように、第2の給水装置BP2の吐出側圧力がポンプP2の始動圧力よりも低下した後にポンプP2が始動される。ポンプP2の始動後は、制御部CN2は、圧力センサPS22の出力値と所定の目標圧力との偏差に基づいたフィードバック制御を行なう。
【0026】
圧力タンク30の封入圧力が正常であると、ポンプP2が運転されるにしたがって、図4のグラフに示すように、第1の給水装置BP1の吐出側圧力が徐々に低下する。これは、圧力タンク30の封入圧力によって圧力タンク30から水が少しずつ吐き出されるからである。そして、第1の給水装置BP1の吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下したときに、制御部CN1はインバータINV1に指令を発してポンプP1を始動させる。第2の給水装置BP2の吸込側圧力と第1の給水装置BP1の吐出側圧力は、第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2との間の揚程差だけ異なるが、互いに同じように変化する。
【0027】
一方、図5は、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲外にあるときの第1の給水装置BP1の吐出側圧力、第2の給水装置BP2の吸込側圧力および吐出側圧力、および第2の給水装置BP2の吐き出し流量の変化を示すグラフである。この場合、ポンプP2が始動されると、第2の給水装置BP2の吸込側圧力および第1の給水装置BP1の吐出側圧力は急激に低下する。これは、圧力タンク30の封入圧力が低下した結果、第1の配水管7内の圧力を圧力タンク30が維持できないからである。このため、グラフに示すように、ポンプP2が始動された直後に第2の給水装置BP2の吸込側圧力および第1の給水装置BP1の吐出側圧力が急激に低下する。第1の給水装置BP1の圧力センサPS12の出力値が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部CN1はインバータINV1に指令を発し、ポンプP1を始動させる。圧力センサPS12の出力値が所定の始動圧力に達した時点からポンプP1が実際に始動される時点までの間には若干のタイムラグがあるため、図5に示すように、第1の給水装置BP1の吐出側圧力は、ポンプP1の始動圧力よりもさらに低下する。
【0028】
ポンプP1が始動されると、第2の給水装置BP2の吸込側圧力および第1の給水装置BP1の吐出側圧力は上昇に転じる。ポンプP1が始動された時点では、圧力タンク30の封入圧力が低下しているために、給水装置BP1の吐出側圧力は、ポンプP1の始動圧力を下回った低い値となっている。このため、所定の目標圧力と第1の給水装置BP1の吐出側圧力との偏差が大きく、制御部CN1はインバータINV1に指令を出してポンプP1の回転速度を急上昇させる。その結果、図5に示すように、第1の給水装置BP1の吐出側圧力が大きく上昇する。
【0029】
第2の給水装置BP2の吸込側圧力の動きは、第1の給水装置BP1の吐出側圧力の動きに連動している。図4のグラフと図5のグラフとを対比すると分かるように、圧力タンク30の封入圧力が低下していると、ポンプP2を始動した直後に第2の給水装置BP2の吸込側圧力が大きく低下し、その後大きく上昇する。第2の給水装置BP2の制御部CN2は、この第2の給水装置BP2の吸込側圧力の変動に基づいて圧力タンク30の封入圧力の低下を検知する。
【0030】
以下、圧力タンク30の封入圧力の低下を検知する制御部CN2の動作について説明する。制御部CN2には、所定の圧力低下検出値が予め記憶されている。制御部CN2は、圧力センサPS21の出力値に基づいて第2の給水装置BP2の吸込側圧力を監視している。圧力タンク30の封入圧力が低下していると、図5に示すように、ポンプP2が始動されるたびに第2の給水装置BP2の吸込側圧力が大きく低下する。そこで、制御部CN2は、ポンプP2の始動時に第2の給水装置BP2の吸込側圧力がこの圧力低下検出値にまで低下した場合には、圧力タンク30の封入圧力が許容限度を超えて低下したと判断する。そして、制御部CN2は、始動時の吸込側圧力が圧力低下検出値にまで低下したときに、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内に無いことを示す警報を発する。
【0031】
ここで、高層階での水の使われ方によっては(典型的には、大量の水が急激に使用された場合)、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内にあっても、始動時の吸込側圧力が圧力低下検出値まで低下してしまう可能性もある。よって、制御部CN2は、ポンプP2の始動時に第2の給水装置BP2の吸込側圧力がこの圧力低下検出値にまで低下した回数をカウントし、このカウントされた回数が予め設定された回数に達した場合に、圧力タンク30の封入圧力が許容限度を超えて低下したと判断してもよい。なお、回数のカウントは、ポンプP2の始動時毎に連続して第2の給水装置BP2の吸込側圧力が圧力低下検出値まで低下した回数をカウントしてもよく、また、高層階での水の使われ方によっては(典型的には、フロースイッチSW2の設定値である少水量に近い水量で継続的に使用された場合)、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内になくても、始動時の吸込側圧力が圧力低下検出値までは低下しない可能性があるため、ポンプP2の始動時毎の連続性は考慮せずに、単純に圧力低下検出値まで低下した回数をカウントしてもよい。
【0032】
次に、圧力タンク30の封入圧力の低下を検知する制御部CN2の動作の他の例について説明する。制御部CN2には、所定の圧力上昇検出値が予め記憶されている。圧力タンク30の封入圧力が大きく低下していると、図5に示すように、ポンプP2が始動された直後にポンプP1が始動される。さらに、ポンプP1が始動された直後に第2の給水装置BP2の吸込側圧力が大きく上昇する。そこで、制御部CN2は、ポンプP2の始動時に第2の給水装置BP2の吸込側圧力がこの圧力上昇検出値にまで上昇した場合には、圧力タンク30の封入圧力が許容限度を超えて低下したと判断する。そして、制御部CN2は、始動時の吸込側圧力が圧力上昇検出値にまで上昇したときに、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内に無いことを示す警報を発する。
【0033】
この例においても、第2の給水装置BP2の吸込側圧力が上記圧力上昇検出値にまで上昇した回数に基づいて、圧力タンク30の封入圧力低下を検出することもできる。すなわち、制御部CN2は、ポンプP2の始動時に第2の給水装置BP2の吸込側圧力が上記圧力上昇検出値にまで上昇した回数をカウントし、このカウントされた回数が予め設定された回数に達した場合に、圧力タンク30の封入圧力が許容限度を超えて低下したと判断してもよい。回数のカウントは、ポンプP2の始動時毎に連続して第2の給水装置BP2の吸込側圧力が圧力上昇検出値まで上昇した回数をカウントしてもよく、また、ポンプP2の始動時毎の連続性は考慮せずに、単純に圧力上昇検出値まで上昇した回数をカウントしてもよい。
【0034】
次に、圧力タンク30の封入圧力の低下を検知する制御部CN2の動作のさらに他の例について説明する。制御部CN2には、所定の圧力差検出値が予め記憶されている。圧力タンク30の封入圧力が大きく低下していると、図5に示すように、ポンプP2が始動された直後に第2の給水装置BP2の吸込側圧力が大きく低下し、さらにポンプP1が始動された直後に第2の給水装置BP2の吸込側圧力が大きく上昇する。そこで、制御部CN2は、ポンプP2の始動時に、第2の給水装置BP2の吸込側圧力が最も低下した最低圧力と、第2の給水装置BP2の吸込側圧力が最も上昇した最高圧力との圧力差(絶対値)を算出し、この圧力差が所定の圧力差検出値に達した場合には、圧力タンク30の封入圧力が許容限度を超えて低下したと判断する。そして、制御部CN2は、上記圧力差が所定の圧力差検出値に達したときに、圧力タンク30の封入圧力が正常範囲内に無いことを示す警報を発する。
【0035】
この例においても、上記圧力差が所定の圧力差検出値に達した回数に基づいて、圧力タンク30の封入圧力低下を検出することもできる。すなわち、制御部CN2は、ポンプP2の始動時に上記圧力差が所定の圧力差検出値に達した回数をカウントし、このカウントされた回数が予め設定された回数に達した場合に、圧力タンク30の封入圧力が許容限度を超えて低下したと判断してもよい。回数のカウントは、ポンプP2の始動時毎に連続して上記圧力差が所定の圧力差検出値に達した回数をカウントしてもよく、また、ポンプP2の始動時毎の連続性は考慮せずに、単純に上記圧力差が所定の圧力差検出値に達した回数をカウントしてもよい。
【0036】
このような制御部CN2の検知動作により、第2の給水装置BP2は、圧力タンク30の封入圧力を直接計測することなく、圧力タンク30の封入圧力の異常低下を検知することができる。したがって、圧力タンク30のメンテナンス性が向上する。さらに、制御部CN2から発せられる警報により、圧力タンク30への気体の補充が促されるので、圧力タンク30の封入圧力低下に起因する給水動作の異常を未然に防止することができる。
【0037】
なお、本実施形態では圧力タンク30を一つのみ設けたが、複数の圧力タンクを設けても良い。複数の圧力タンクが第1の配水管7に接続されている場合は、それら複数の圧力タンク全体としての封入圧力の低下(圧力を高く保ったまま保持できる水量の減少)を検出することとなる。また、圧力タンクPT1は給水装置BP1内に設けられた圧力タンクではあるが、第1の配水管7に接続されている。従って、圧力タンクPT1の封入圧力も検出の対象となるが、通常は圧力タンク30の容積は圧力タンクPT1の容積よりもかなり大きいため、検出される封入圧力の低下は圧力タンク30の封入圧力の低下が支配的となる。ただし、給水装置BP1内に十分な設置スペースがあれば、圧力タンクPT1の容積を大きくすることで、圧力タンク30の設置を省略することもできる。
【0038】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0039】
1 建物
2 水道本管
5 導入管
7 第1の配水管
9,10 給水栓
12,13 枝管
15 第2の配水管
20 減圧式逆流防止器
30 圧力タンク
BP1,BP2 給水装置
M1,M2 モータ
INV1,INV2 インバータ
CV1,CV2 逆止弁
SW1,SW2 フロースイッチ
PS11,PS12,PS21,PS22 圧力センサ
PT1,PT2 圧力タンク
CN1,CN2 制御部
CB1,CB2 キャビネット
L1,L2 吐出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に給水する増圧給水システムであって、
水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置と、
前記第1の給水装置に直列に連結され、前記第1の給水装置よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置と、
前記第1の給水装置と前記第2の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクとを備え、
前記第1の給水装置および前記第2の給水装置はそれぞれポンプを有しており、
前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が所定の圧力低下検出値にまで低下した場合は、前記圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発することを特徴とする増圧給水システム。
【請求項2】
前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が前記圧力低下検出値にまで低下した回数をカウントし、前記回数が予め設定された回数に達した場合は、前記警報を発することを特徴とする請求項1に記載の増圧給水システム。
【請求項3】
建物に給水する増圧給水システムであって、
水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置と、
前記第1の給水装置に直列に連結され、前記第1の給水装置よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置と、
前記第1の給水装置と前記第2の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクとを備え、
前記第1の給水装置および前記第2の給水装置はそれぞれポンプを有しており、
前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が所定の圧力上昇検出値にまで上昇した場合は、前記圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発することを特徴とする増圧給水システム。
【請求項4】
前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が前記圧力上昇検出値にまで上昇した回数をカウントし、前記回数が予め設定された回数に達した場合は、前記警報を発することを特徴とする請求項3に記載の増圧給水システム。
【請求項5】
建物に給水する増圧給水システムであって、
水道本管に連結される低層階用の第1の給水装置と、
前記第1の給水装置に直列に連結され、前記第1の給水装置よりも高い位置に配置される高層階用の第2の給水装置と、
前記第1の給水装置と前記第2の給水装置とを連結する配水管に接続された圧力タンクとを備え、
前記第1の給水装置および前記第2の給水装置はそれぞれポンプを有しており、
前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記第2の給水装置の吸込側圧力が最も低下した最低圧力と前記第2の給水装置の吸込側圧力が最も上昇した最高圧力との圧力差を算出し、前記圧力差が所定の圧力差検出値に達した場合は、前記圧力タンクの封入圧力が正常範囲内にないことを示す警報を発することを特徴とする増圧給水システム。
【請求項6】
前記第2の給水装置は、該第2の給水装置のポンプ始動時に前記圧力差が前記圧力差検出値に達した回数をカウントし、前記回数が予め設定された回数に達した場合は、前記警報を発することを特徴とする請求項5に記載の増圧給水システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate