説明

増強剤

カンデサルタン・シレキシセルのようなレニン−アンジオテンシン系の阻害剤による腎疾患の治療または予防効果を増強する増強剤が開示されている。増強剤は、ベラプロストナトリウムのような、特定のプロスタグランジンI誘導体を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、腎疾患の治療または予防用医薬に関し、特に、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤投与による腎疾患の治療または予防効果の増強剤に関する。
【背景技術】
近年、腎障害を有する患者数はますます増加する傾向を示している。その理由として、生活環境の変化や高齢化、さらに近年の糖尿病患者の増大に伴う糖尿病性腎症の増加があげられる。腎の機能低下によって腎不全をきたし、透析を導入せざるを得ない患者数は年々増加している。透析療法は週2から3回の通院を余儀なくされるほか、赤血球の産生・成熟障害や、長期の透析に伴なうアルミニウムやβミクログロブリンなどの蓄積が原因となる合併症の出現、心血管病変の増加などなお多くの課題を残している。特に原疾患が糖尿病性腎症で透析に至った場合、以後の5年生存期間はわずか50%程度にすぎない。このため腎疾患の進行を抑制し、透析までの期間を有効にのばす薬剤が切望されている。
腎疾患の進行抑制のために、たとえば低タンパク食などの食事療法に加え、降圧療法が一般的に行われている。さらに糸球体腎炎では炎症反応を抑制するためにステロイド剤や免疫抑制剤の投与がおこなわれるほか、糖尿病性腎症では厳密な血糖コントロールを目的にインシュリンや経口糖尿病薬の処方がおこなわれている。
また腎不全に至った患者には、降圧療法に加え血液中の電解質の上昇を抑制する薬剤の投与、低タンパク食の処方が行われる。また腎性貧血をきたした場合には、エリスロポエチンの投与が行われる。また病態の進行を遅らせたり尿毒症状を改善するために、経口活性炭製剤が用いられることがある。
しかしながらこうした治療を行っていても、病態の進行を十分には阻止できないのが現状である。
腎炎や糖尿病性腎症、腎不全などの腎疾患では高血圧を伴うことが多く、また高血圧は腎疾患の悪化要因の一つと考えられているので、腎疾患の進行の抑制を期待して降圧剤の投与が行われている。なかでも、レニン−アンジオテンシン系阻害剤が特に注目を集めている。強力な血圧上昇作用をもつアンジオテンシンIIは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンIから生成される。このため、ACEを阻害する物質は降圧作用を有しており、広く降圧剤として用いられている。しかしながら、ACE阻害剤は共通に空咳などの副作用があることが知られている。他の型のレニン−アンジオテンシン系阻害剤として、アンジオテンシンII受容体拮抗剤がある。アンジオテンシンIIの受容体にはAT1とAT2の2種類のサブタイプが知られているが、このうちAT1受容体の拮抗剤がACEよりも副作用が少ない降圧剤として広く用いらるようになっている。
ACE阻害剤およびアンジオテンシンII受容体拮抗剤は、動物モデルや臨床において慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症の進行を抑制することが報告されている(Am J Med 1995 Nov;99(5):497−504、Diabetologia 1996 May;39(5):587−93、N Engl J Med 2001 Sep 20;345(12):861−9、J Hypertens 1993 Sep;11(9):969−75)。さらに、ACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤は、降圧作用によらない腎保護作用を併せ持つと考えられており、たとえばイルベサルタンの糖尿病性腎症の進行抑制効果は、カルシウム拮抗剤によって血圧をコントロールした場合に比較して優位であったとの報告がなされている(N Engl J Med 2001 Sep 20;345(12):851−60)。このため特に糖尿病性腎症患者においては、血圧が正常範囲であっても、ACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤が広く用いられている。
このように、ACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤をはじめとするレニン−アンジオテンシン系抑制剤の、腎疾患における有用性は臨床において広く認知されているといってよい。
しかしながら、ACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤の腎疾患進行抑制効果の限界もまた明らかになってきている。たとえば、代表的なアンジオテンシンII受容体拮抗剤であるロサルタンの糖尿病性腎症患者を対象とした臨床試験において、クレアチニンの倍加、透析への移行、死亡の複合リスクが軽減することが証明された。しかしそのリスク低減率はわずか16.1%であった(N Engl J Med 2001 Sep 20;345(12):861−9)。その抑制の程度が十分でないことは、ACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、降圧剤として既に広く腎疾患患者に用いられているにもかかわらず、新たに透析が必要となる患者が本邦だけでも年間3万人を越え、年々増え続けていることからも明らかである。
プロスタグランジンI誘導体のアイロプロストが、糸球体腎炎モデルであるThy1誘発の腎炎モデルで、尿タンパクを低下させることが報告されている(Am J Pathol 1993 Feb;142(2):441−50)。また、プロスタグランジンI誘導体のベラプロストナトリウムが糸球体腎炎モデルラット(Kidney Int 1998 May;53(5):1314−20)、糖尿病性腎症患者(Nephron 2002 Dec;92(4):788−96)の尿タンパクを低下させる。さらにシカプロストが、ストレプトゾトシンによって誘発した糖尿病性腎症ラットや(J Hypertens Suppl 1993 Dec;11 Suppl 5:S208−9)、片腎摘出と高ナトリウムおよび高タンパク負荷による腎機能障害を抑制することが報告されている(Am J Hypertens 1997 10:209−16)。
WO00/67748には、ベラプロストナトリウムを含むm−フェニレンPGI誘導体が腎不全治療に有効であることが、WO99/13880には、ベラプロストナトリウムを含むm−フェニレンPGI誘導体が腎炎、糸球体腎炎、糖尿病性腎症に有効であることが、またWO02/080929にはベラプロストナトリウムを含むm−フェニレンPGI誘導体が間質性腎炎に有効であることが記載されている。
しかしならがら、こうした文献中には、それぞれプロスタグランジンI誘導体単独での腎障害の進行に対する効果が記載されているだけで、このプロスタグランジンI誘導体とレニン−アンジオテンシン系の抑制剤の併用については全く触れられていない。
また、天然型とは異なる特殊な構造を有する新規プロスタノイン酸型の化合であるインタ−フェニレン−9−チア−11−オキソ−12−アザプロスタノイン酸化合物と、アンジオテンシン変換酵素阻害剤との新規組成物が報告されている。これらの化合物が特に強い腎血管の拡張作用をもつこと、この組成物が高血圧の治療に有用であることが記載されている。しかしながら、本特許文献中の化合物はプロスタグランジン類とは異なることに加え、本化合物がアンジオテンシン変換酵素阻害剤の腎疾患の抑制効果を増強するかどうかについて、何ら触れられていない(特開昭60−23324)。
さらに、プロスタグランジンI誘導体の一種のシカプロストとACE阻害剤の一種であるフォシノプリル(fosinopril)を、糖尿病モデルラットに併用し、糖尿病性腎症の進展を評価した結果が報告されている(Am J Hypertens.1997 10:202−8)。本文献によれば、それぞれの薬剤を単独で投与した群ではコントロール群に比較して、尿タンパクなどの腎機能パラメータや、腎組織の障害が軽度であったが、両者を併用しても、それぞれの薬剤を単独投与した際以上の効果は認められず、併用の効果がなかったとされている。
【発明の開示】
本発明の目的は、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤投与による腎疾患の治療または予防効果の増強剤を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、特定のプロスタグランジンI誘導体が、レニン−アンジオテンシン系の阻害薬の腎障害進行抑制効果を、きわめて特徴的に増強することを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、一般式(I)で表されるプロスタグランジンI誘導体を有効成分として含有する、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤投与による腎疾患の治療または予防効果の増強剤である。
一般式(I)

[式中、
は、
(A)COOR、ここでRは、
水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン、
2)炭素数1〜12の直鎖アルキルまたは炭素数3〜14の分岐アルキルZ−R、ここでZは原子価結合、またはC2tで表される直鎖または分岐アルキレンであり、tは1〜6の整数を示し、Rは炭素数3〜12のシクロアルキルまたはRの1〜3個で置換された炭素数3〜12の置換シクロアルキルであり、Rは水素または炭素数1〜5のアルキル、
−(CHCHO)CH、ここで、nは1〜5の整数、
−Z−Ar、ここでZは前記定義に同じ、Arはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、α−フリル、β−フリル、α−チエニル、β−チエニルまたは置換フェニル(ここで置換基は少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニル、フェノキシ、p−アセトアミドベンズアミド、−CH=N−NH−C(=O)−NH、−NH−C(=O)−Ph、−NH−C(=O)−CH若しくは−NH−C(=O)−NHであるもの)、
−C2tCOOR、ここでC2t、Rは前記定義に同じ、
−C2tN(R、ここでC2t、Rは前記定義に同じ、
−CH(R)−C−(=O)−R、ここでRは水素またはベンゾイル、Rはフェニル、p−ブロモフェニル、p−クロロフェニル、p−ビフェニル、p−ニトロフェニル、p−ベンズアミドフェニル、2−ナフチル、
−C2p−W−R、ここで、Wは−CH=CH−、−CH=CR−または−C≡C−であり、Rは水素、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐アルキルまたは炭素数1〜30のアラルキルであり、pは1〜5の整数、または、
10)−CH(CHOR、ここでRは炭素数1〜30のアルキルまたはアシル、
(B)−CHOH、
(C)−C(=O)N(R
ここでRは水素、炭素数1〜12の直鎖アルキル、炭素数3〜12の分岐アルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数4〜13のシクロアルキルアルキレン、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルまたは−SO10を表わし、R10は炭素数1〜10のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルを表わし、2つのRは同一でも異なっていてもよいが、一方が−SO10を表わす場合は他のRは−SO10ではないものとする、または、
(D)−CHOTHP(THPはテトラヒドロピラニル基)であり、
Aは、
−(CH−、
−CH=CH−CH−、
−CH−CH=CH−、
−CH−O−CH−、
−CH=CH−、
−O−CH−または
7) −C≡C−であり、ここで、mは1から3の整数を示し、
Yは、水素、炭素数1〜4のアルキル、塩素、臭素、フッ素、ホルミル、メトキシまたはニトロであり、
Bは、−X−C(R11)(R12)OR13、ここで、R11は水素または炭素数1〜4のアルキルであり、R13は水素、炭素数1〜14のアシル、炭素数6〜15のアロイル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1−エトキシエチルまたはt−ブチルであり、
Xは、
−CH−CH−、
−CH=CH−、または
−C≡C−であり、
12は、
炭素数1〜12の直鎮アルキル、炭素数3〜14の分岐アルキル、
−Z−ArここでZは前記定義に同じ、Arはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、または少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニル、
−C2tOR14、ここでC2tは前記定義に同じ、R14は炭素数1〜6の直鎖アルキル、炭素数3〜6の分岐アルキル、フェニル、少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、または、炭素数1〜4の直鎖アルキルの1〜4個で置換されたシクロペンチル若しくはシクロヘキシル、
−Z−R、ここでZ、Rは前記定義に同じ、
−C2t−CH=C(R15)R16、ここでC2tは前記定義に同じ、R15及びR16は互いに独立に水素、メチル、エチル、プロピル若しくはブチル、または
6) −C2u−C≡C−R17、ここでuは1〜7の整数であり、C2uは直鎖若しくは分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わし、
Eは、水素または−OR18、ここでR18は炭素数1〜12のアシル、炭素数7〜15のアロイル若しくはR(ここでRは前記定義に同じ)を表わし、
一般式はd体、l体またはdl体を表わす]
を提供する。
また、本発明は、上記本発明の増強剤と、レニン−アンジオテンシン系阻害剤とを有効成分として含む、腎疾患の治療又は予防剤を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の増強剤と、レニン−アンジオテンシン系阻害剤を有効成分として含む薬剤とを別個に含み、該増強剤及びレニン−アンジオテンシン系阻害剤を同時に又は時間をずらして投与するための、腎疾患の治療又は予防用薬剤キットを提供する。さらに本発明は、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤を投与される患者に、上記本発明の増強剤を投与することを含む、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤による腎疾患の治療または予防効果の増強方法を提供する。さらに本発明は、上記本発明の腎疾患の治療若しくは予防剤、又は腎疾患の治療若しくは予防用薬剤キットに含まれる薬剤を投与することを含む、腎疾患の治療又は予防方法を提供する。さらに、本発明は、上記一般式(I)で表されるプラスタグランジンI誘導体の、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤投与による腎疾患の治療または予防効果の増強剤を製造するための使用を提供する。
本発明により、レニン−アンジオテンシン系阻害剤のもつ優れた腎疾患の進行抑制効果が増強されることが明らかになった。したがって、所定の効果を得るために必要な投与量を互いに減少させることができるほか、互いの副作用を低減することができ、服用に関するコンプライアンスを向上させることができる。また、従来のレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果が十分でない、腎疾患を有効かつ安全に治療することが可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施例及び比較例の組成物の、腎炎誘発ラットモデルにおける薬理効果を示す図である。
図2は、本発明の実施例及び比較例の組成物の、腎炎誘発ラットモデルにおける薬理効果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の増強剤に有効成分として含有されるプロスタグランジンI誘導体は、上記一般式(I)で表されるものである。
上記一般式(I)で表される化合物の中でも、
は、COOR
ここでRは、水素または薬理学的に受け入れられる陽イオンであり、
Aは、
1)−(CH
2)−CH−CH=CH−
ここで、mは1から3の整数を示す、であり、
Yは、水素であり、
Bは、−X−C(R11)(R12)OR13
ここで、R11、R13は水素であり、Xは、
1)−CH=CH−
2)−C≡C−であり、
12は、
1)−Z−Ar
ここでZは原子価結合、またはC2tで表される直鎖または分岐アルキレンであり、tは1〜6の整数を示し、Arはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、または少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニルを表わし、または、
2)−Z−R
ここでZは前記定義に同じ、Rは炭素数3〜12のシクロアルキルを表し、または、
3)−C2u−C≡C−R17
ここでuは1〜7の整数であり、C2uは直鎖または分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わす、一般式はd体、l体またはdl体を表わす。
が好ましい。
さらに好ましい化合物として、上記一般式(I)で表される化合物の中でも
は、COOR、ここでRは、水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン、
Aは、−(CH−であり、ここで、mは1から3の整数を示し、
Yは、水素、であり、
Bは、−X−C(R11)(R12)OR13、ここで、R11及びR13は水素であり、
Xは、−CH=CH−、であり、
12は、−C2u−C≡C−R17、ここでuは1〜7の整数であり、
2uは直鎖若しくは分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わし、
Eは、水素または−OR18、ここでR18はR(ここでRは前記定義に同じ)を表わし、
一般式はd体、l体またはdl体を表わす、で表わされる化合物があげられる。
特に下記式で示されるベラプロストまたはそれらの塩若しくはエステル類等が挙げられるが、これに限定されるわけではない。

本発明において、一般式(I)で表される化合物またはその塩、特にベラプロストナトリウムは、長期間安定であるほか、経口投与でのバイオアベイラビリティが高い。このため腎疾患患者、特に慢性腎疾患患者では、長期にわたる服用が求められるため、特に好ましく用いることができる。
上記一般式(I)で表される4,8−インタ−m−フェニレンプロスタグランジンI誘導体は、公知であり、例えば特公平1−53672号公報に記載されている公知の方法で製造することができる。
上記した一般式(I)で表される4,8−インタ−m−フェニレンプロスタグランジンI誘導体は、単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
またプロスタグランジンI誘導体として、次の化合物を使用することも可能である、イロプロスロト(iloprost)、エポプロステノールナトリウム(epoprostenol sodium)、カルバサイクリン(carbacycin)、シカプロスト(cicaprost)、エプタプロスト(eptaprost)、アタプロスト(ataprost)、シプロステン(ciprostene)、タプロステン(taprostene)、クリンプロスト(clinprost)、ニレプロスト(nileprost)、ナクサプロステン(naxaprostene)、トレプロスチニル(treprostinil)、ピミルプロスト(pimilprost)、CS−570(明日の新薬2003年4月24日)、TY−11223(明日の新薬2003年4月24日)、TTC909(明日の新薬2003年4月24日)、OP−2507(明日の新薬2003年4月24日)。
さらに、以下のプロスタグランジンI誘導体を使用することも可能である。KP−10614、CH−5084、SC−43350、RS−93427、U−68215、RO−23−6416、CH−169、TEI−9063、AFP−07、サイロプロスト、CS570、M−19791、Hoe892、R−59274、CG4203。
また、(16S)−15−デオキシ−16−ヒドロキシ−16−メチル−9(O)−メタノ−Δ6(9α)−プロスタグランジンI、9(O)−メタノ−Δ6(9α)−プロスタグランジンIメチルエステル、17(S),20−ジメチル−9(O)−メタノ−Δ6(9α)−プロスタグランジンIメチルエステル、特開平8−245498号公報に記載の15R−イソカルバサイクリン誘導体、特願平9−160320号に記載の15R−16−m−トリル−17,18,19,20−テトラノルイソカルバサイクリンまたはそのメチルエステルも使用できる。
さらに、プロスタグランジンIと同様の作用例えば、血小板作用や血管拡張作用をもつことが報告されている、サミキソグレル(samixogrel:明日の新薬2003年4月24日)、BMY−42239(明日の新薬2003年4月24日)、BMY−45778(明日の新薬2003年4月24日)、ONO−1301(明日の新薬2003年4月24日)、さらには、EP0542203、EP0548959、EP0578847、EP0558062、EP0581187、WO9813356、特開2000−191523、WO02/088084、特許第3245864号に記載された化合物があり、これらも用いることができる。
本発明において、対象となるレニン−アンジオテンシン系の阻害剤としては、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、キマーゼ阻害薬およびレニン阻害薬があげられるが、特にACE阻害剤およびアンジオテンシンII受容体拮抗剤が好ましく用いられる。
特に広く臨床使用され、その安全性と有効性が腎疾患において示されている薬剤が好ましく用いられる。
本発明に用いることのできるACE阻害剤の具体例として、次の各種低分子化合物があるがこれらに限定されない。
エナラプリル(enalapril maleate)、アラセプリル(alacepril)、デラプリル(delapril)、ラミプリル(ramipril)、カプトプリル(captopril)、リシノプリル(lisinopril)、ベナゼプリル(benazepril hydrochloride)、リベンザプリル(libenzapril)、キナプリル(quinaprilat)、イミダプリル(imidapril hydrochloride)、ゾフェノプリル(zofenopril calcium)、フォシノプリル(fosinopril sodium)、シラザプリル(cilazapril)、テモカプリル(temocapril hydrochloride)、スピラプリル(spirapril hydrochloride)、ペリンドプリル(perindopril erbumine)、モエキシプリル(moexipril hydrochloride)、トランドラプリル(trandolapril)、オマパトリラート(omapatrilat)、セロナプリル(ceronapril hydrate)、イドラプリル(idrapril)、ミザンプリル(mixanpril)、モベルチプリル(moveltipril calcium)、レンチアプリル(rentiapril)、ウチバプリル(utibapril)、シネコル(synecor)、スピラプリラト(spiraprilat)、ザビシプリル(zabicipril hydrochloride)、E−4030(Drug Data Report,Vol.22,p510,2000)、セラノプリル、デラプリル、プレンチル(prentyl)、ラマプリル、ゾフェノプリル、サムパトリラト(Sampatrilat)、ペントプリル(Pentopril)、リベンザプリル(Libenzapril)、ペリンドプリラト(Perindoprilat)、スピラプリラト(Spiraprilat)、BRL−36378(N−[4−(2,3−Dihydrobenzofuran−2−yl)−1−(ethoxycarbonyl)butyl]−L−alanyl−L−proline)、ゾフェノプリラト(Zofenoprilat arginine)、ファジドイリル(Fasidotril)、MDL−100240(4S,7S,12bR)−7−[2(S)−(Acetylsulfanyl)−3−phenylpropionamido]−6−oxo−1,2,3,4,6,7,8,12b−octahydropyrido[2,1−a][2]benzazepine−4−carboxylic acid、S−21402(N−[2(S)−(Mercaptomethyl)−3(R)−phenylbutyl]−L−alanine)、ゲモパリラト(Gemopatrilat)、AVE−7688(CAS No473289−62−2:(4S,7S,12bR)−7−[2(S)−(Acetylsulfanyl)−3−methylbutyramido]−6−oxo−1,2,3,4,6,7,8,12b−octahydropyrido[2,1−a][2]benzazepine−4−carboxylic acid)があげられる。
これらのうち、好ましくはエナラプリル(enalapril maleate)、アラセプリル(alacepril)、デラプリル(delapril)、ラミプリル(ramipril)、カプトプリル(captopril)、リシノプリル(lisinopril)、ベナゼプリル(benazepril hydrochloride)、リベンザプリル(libenzapril)、ウチバプリル(utibapril)、シネコル(synecor)、スピラプリル(spiraprilat)、ザビシプリル(zabicipril hydrochioride)、キナプリル(quinaprilat)、イミダプリル(imidapril hydrochloride)、ゾフェノプリル(zofenopril calcium)、フォシノプリル(fosinopril sodium)、シラザプリル(cilazapril)、テモカプリル(temocapril hydrochloride)、スピラプリル(spirapril hydrochloride)、ペリンドプリル(perindopril erbumine)、セロナプリル(ceronapril hydrate)、モエキシプリル(moexipril hydrochloride)、トランドラプリル(trandolapril)、イドラプリル(idrapril)、オマパトリラト(omapatrilat)、ペントプリル(Pentopril)、リベンザプリル(Libenzapril)、ペリンドプリラト(Perindoprilat)、スピラプリラト(Spiraprilat)、BRL−36378(N−[4−(2,3−Dihydrobenzofuran−2−yl)−1−(ethoxycarbonyl)butyl]−L−alanyl−L−proline)、サンパリラト(Sampatrilat)、ゾフェノプリラト(Zofenoprilat arginine)、ファジドイリル(Fasidotril)、MDL−100240:(4S,7S,12bR)−7−[2(S)−(Acetylsulfanyl)−3−phenylpropionamido]−6−oxo−1,2,3,4,6,7,8,12b−octahydropyrido[2,1−a][2]benzazepine−4−carboxylic acid、S−21402(N−[2(S)−(Mercaptomethyl)−3(R)−phenylbutyl]−L−alanine)、ゲモパリラト(Gemopatrilat)、AVE−7688((4S,7S,12bR)−7−[2(S)−(Acetylsulfanyl)−3−methylbutyramido]−6−oxo−1,2,3,4,6,7,8,12b−octahydropyrido[2,1−a][2]benzazepine−4−carboxylic acid)が用いられる。
特に好ましくは、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル、ラミプリル、カプトプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、リベンザプリル、キナプリル、イミダプリル、ゾフェノプリル、フォシノプリル、シラザプリル、テモカプリル、スピラプリル、ペリンドプリル、モエキシプリル、トランドラプリル、オマパトリラト、セロナプリル、ウチバプリルおよびサムパトリラトが用いられる。
また、こうした化合物の薬理学的に許容される塩を用いることももちろん可能である。
これらのACE阻害剤は、いずれも公知であり、公知の方法によって作ることができる。
本発明において、レニン−アンジオテンシン系阻害剤として用いることができるアンジオテンシンII受容体拮抗剤とは、細胞膜上のアンジオテンシンII受容体、特にそのサブタイプであるAT1受容体において、アンジオテンシンIIの結合を競合的、または非競合的に阻害し、アンジオテンシンIIにより誘導される血管収縮作用や血管平滑筋増殖作用を減弱し、高血圧の症状を緩和させる作用を有する薬剤のことをいう。
本発明で用いられるアンジオテンシンII受容体拮抗作用を有する化合物は、ペプチド性でも非ペプチド性でもよいが、非ペプチド性の化合物が好ましい。アンジオテンシンII受容体拮抗作用を有する化合物としては、次に例示するものがあるが特にこれらに限定されるものではない。例えば、ロサルタン(losartan)、エプロサルタン(eprosartan)、カンデサルタン シレキセチル(candesartan cilexetil)、バルサルタン(vaisartan)、テルミサルタン(telmisartan)、イルベサルタン(irbesartan)、タソサルタン(tasosartan)、オルメサルタン(olmesartan medoxomil)、EXP−3174(Drug Data Report,Vol.14,p396,1992)、ゾラサルタン(zolasartan)、サプリサルタン(saprisartan)、エリサルタン(elisartan potassium)、リピサルタン(ripisartan)、ミファサルタン(milfasartan)、フォラサルタン(forasartan)、エンブサルタン(embusartan)、BMS−184698(Drug Data Report,Vol.16,p449,1994)、3−(2’−(テトラゾル−5−イル)−1,1’−ビフェン−4−イル)メチル−5,7−ジメチル−2−エチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン、BAY106734(Drug Data Report,Vol.18,p518,1996)、BIBR363(Drug Data Report,Vol.18,p139,1996)、CL329167(2−ブチル−6−(1−メトキシ−1−メチルエチル)−3−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]キナゾリン−4(3H)−オン:Drug Data Report,Vol.16,p728,1994)、E4177(3−(2’−カルボキシビフェニル−4−イルメチル)−2−シクロプロピル−7−メチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンまたは4’−(2−シクロプロピル−7−メチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イルメチル)ビフェニル−2−カルボン酸:Drug Data Report,Vol.14,p981,1992)、EMD73495、HN65021(Drug Data Report,Vol.16,p914,1994)、HR720(Drug Data Report,Vol.17,p147,1995)、HOE720、LRB081(Drug Data Report,Vol.16,p1002,1994)、SC52458(Drug Data Report,Vol.15,p632,1993)、SL910102、UP2696(Drug Data Report,Vol.16,p1004,1994)、YM358(2,7−ジエチル−5−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾールカリウム塩一水塩:Drug Data Report,Vol.15,p533,1993)、EMD66397、ME3221(3−メトキシ−2,6−ジメチル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメトキシ]ピリジン:Drug Data Report,Vol.16,p636,1994)、TAK536(2−エトキシ−1−[2’−(5−オキソ−2,5−ジヒドロ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニル−4−イルメチル]ベンズイミダゾール−7−カルボン酸:Drug Data Report,Vol.17,p435,1995)、CGP42112A(Drug Data Report,Vol.12,p794,1990)、CGP49870、CP148130、E4188、EMD66684、EXP9954、FR1153332、GA0050、KT3579(Drug Data Report,Vol.15,p631,1993)、LF70156、LRB057(Drug Data Report,Vol.15,p922,1993)、LY266099、LY301875(Drug Data Report,Vol.16,p538,1994)、PD123177(Drug Data Report,Vol.13,p123,1994)、PD126055(Drug Data Report,Vol.16,p543,1994)、SC51757(Drug Data Report,Vol.16,p453,1994)、SC54629(Drug Data Report,Vol.16,p542,1994)、U96849、UK77778、WAY126227(Drug Data Report,Vol.15,p1024,1993)、WK1260(Drug Data Report,Vol.15,p635,1993)、WK1492、YH1498およびYM31472(Drug Data Report,Vol.15,p1024,1993)、さらにはポミサルタン(Pomisartan)、オルメサルタン ハイドレート(Olmesartan hydrate)、KRH−594(2−[[5−エチル−3−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−1,3,4−チアジアゾール−2−イリデン]アミノカルボニル]−1−シクロペンテンカルボン酸二カリウム塩)、UR−7247(3−イソプロピル−1−プロピル−5−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸)、EXP−3174(2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾロ−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]イミダゾール−5−カルボン酸)、L−159282(N−[4’−(2−エチル−5,7−ジメチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イルメチル)ビフェニル−2−スルホニル]ベンズアミド)、CL−329167、DuP−532(4−ペンタフルオロエチル−2−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]イミダゾール−5−カルボン酸)、ICl−D8731(2−エチル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメトキシ]キノリン塩酸塩)、ICl−D6888(2−エチル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメトキシ]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン塩酸塩)、Cl−996(2−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−[2−(トリフルオロアセチル)ピロール−1−イル]イミダゾール−5−カルボン酸)、および、場合によってはこれらの代謝活性物質(カンデサルタンなど)があげられる。また、こうした化合物の薬理学的に許容される塩を用いることももちろん可能である。
このうち、ロサルタン(losartan)、エプロサルタン(eprosartan)、カンデサルタン シレキセチル(candesartan cilexetil)、バルサルタン(valsartan)、テルミサルタン(telmisartan)、イルベサルタン(irbesartan)、タソサルタン(tasosartan)、オルメサルタン(olmesartan medoxomil)、EXP−3174、ゾラサルタン(zolasartan)、サプリサルタン(saprisartan potassium)、エリサルタン(elisartan potassium)、リピサルタン(ripisartan)、ミファサルタン(milfasartan)、フォラサルタン(forasartan)、エンブサルタン(embusartan)、CL329167、E4177、ME3221、TAK536、ポミサルタン(Pomisartan)、オルメサルタン ハイドレート(Olmesartan hydrate)、KRH−594、UR−7247、EXP−3174、L−159282、CL−329167、DuP−532、ICl−D8731、ICl−D6888、Cl−996および、場合によってはこれらの代謝活性物質(カンデサルタンなど)が好ましく用いられる。また、こうした化合物の薬理学的に許容される塩を用いることももちろん可能である。
さらに、ロサルタン(Losartan)、エプロサルタン(Eprosartan)、カンデサルタン シレキセチル(Candesartan cilexetil)、バルサルタン(Valsartan)、テルミサルタン(Telmisartan)、イルベサルタン(Irbesartan)、タソサルタン(Tasosartan)、オルメサルタン(Olmesartan medoxomil)、ゾラサルタン(zolasartan)、ミファサルタン(milfasartan)、フォラサルタン(forasartan)および、場合によってはこれらの代謝活性物質(カンデサルタンなど)およびその薬理学的に許容できる塩が特に好ましく用いられる。
非ペプチド型アンジオテンシンII受容体拮抗剤を構造によって分類すると、ビフェニルテトラゾール系と非ビフェニルテトラゾール系に大別される。前者にはロサルタン、カンデサルタン シレキセチル、バルサルタンが含まれる。一方後者には、エプロサルタン、ゾラサルタン、テルミサルタンが含まれる。本発明においては、両系の薬剤とも好適に用いることができることは実施例に例示しているとおりである。
これらのアンジオテンシンII受容体拮抗剤はいずれも公知であり、公知の方法によって作ることができる。
さらに、レニン−アンジオテンシン系阻害剤として、キマーゼ阻害薬があげられる。キマーゼはセリンプロテアーゼの1種であり、ACEとともにアンジオテンシンIから昇圧作用を有するアンジオテンシンIIへ変換する作用をもつため、キマーゼの選択的な阻害薬の降圧剤として可能性が報告されている。低分子のキマーゼ阻害剤として、3−(2−ナフチルカルボニル)−5−[2−[5−[[(1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾリル)−5−チオ]メチル]]フリルメチリデン]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−クロロベンセンスルフォニル)−1−(4−クロロフェニル)イミダゾリジン−2,4−ジオン、3−(3−アリルオキシカルボニルメチルベンゼンスルフォニル)−1−フェニル−イミダゾリジン−2,4−ジオン、7−[6−(6−ビオチニルアミノカプロイル)アミノカプロイル]アミノ−4−クロロ−3−(2−フェニルエトキシ)イソクマリン等を挙げることができ、これらは、特開2000−95770、WO98/09949、WO93−25574、USP 5306824、WO96−4248に記載されている。
また、レニン−アンジオテンシン系阻害剤として、レニン阻害活性を持つ化合物も好ましく用いられる。レニンは腎臓の傍糸球体細胞から分泌されるタンパク質分解酵素であり、レニン−アンジオテンシン系においてアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIに変換する。体内でアンジオテンシンIは強力な昇圧物質であるアンジオテンシンIIに変換されるため、レニン阻害物は高血圧の治療に用い得る。このためレニン阻害活性を持つ低分子化合物の降圧剤としての可能性が指摘されている。レニン阻害活性を持つ低分子化合物の具体例として、アリスキレン(aliskiren)及びレミキレン(remikiren)、並びに(2S,3R,4S)−2−((2R)−2−(1−(4−モルホリニルカルボニル)メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミノ)カルボニルメチル−4−メチルペンチオニル)アミノ−1−シクロヘキシル−3,4−ジヒドロキシ−6−メチルヘプタン等の特開平5−32602に記載されている化合物があげられる。
上記したレニン−アンジオテンシン系阻害剤は、単独で用いることもできるし2種以上を組み合わせて用いられていても良い。上記した異なるカテゴリーに属する2種以上のレニン−アンジオテンシン系阻害剤を組み合わせて用いることももちろん可能である。
特に近年、ACE阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤を同時に投与した場合に腎疾患の進行がさらに抑制されることが報告されていることから(WO97/02032)、本発明のプロスタグランジンI誘導体を、ACE阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤の両者を併用した上にさらに投与することによって、腎疾患の進行をさらに確実に抑制できる。
逆に、すでにプロスタグランジンI誘導体を投与されている腎疾患患者に対して、レニン−アンジオテンシン系阻害薬を投与することもきわめて有用である。
本発明により予防または治療できる腎疾患としては、糖尿病性腎症をはじめ、急性糸球体腎炎および慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、ループス腎炎、間質性腎炎、急性尿細管間質性腎炎、慢性尿細管間質性腎炎、急性腎不全および慢性腎不全があげられる。また、慢性糸球体腎炎として分類される微小糸球体変化性腎炎、巣状/分節状糸球体腎炎、びまん性糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、びまん性管内性増殖性腎炎、半月体形成性腎炎、びまん性硬化性糸球体腎炎、IgA腎炎にも有効である。
また、レニン−アンジオテンシン阻害剤の効果が不十分であった、糖尿病性腎症の顕性期や、血清クレアチニン上昇が認められる保存期腎不全といった、より進行した腎疾患において投与を始めても腎機能低下抑制作用を示す。
本発明の効果は、腎の濾過機能の最も重要な指標であるGFR(glomerular filtration rate:糸球体濾過量)を指標としたときに最も明確に捕らえることができる。GFRは、クレアチニンやイヌリンのクリアランスを測定することで評価できる。また簡便には、血中のクレアチニン値から換算式によって推定することも可能である。
また腎の低分子濾過機能の低下に伴い、血中のクレアチニンやBUN(血中尿素窒素)が上昇することから、血清クレアチニン値やBUN値によっても、本発明の腎障害抑制効果を明確に捕らえることができる。特に血中のクレアチニン値の逆数の時間変化をとるとほぼ直線的に低下することから、この傾きから腎機能の低下速度を推定することが臨床的にも実施され、例えば活性炭製剤の腎不全期の薬効の評価にも用いられている(Biomater Artif Cells Immobilization Biotechnol.1991;19(1):147−66、Am J Kidney Dis.2003 Mar;41(3 Suppl 1):S35−7.)。
これらのクレアチニンによる評価方法は、腎疾患が進行してクレアチニンの上昇をきたすステージ、すなわち腎不全期とくに保存期腎不全での評価に適当である。
また、血中クレアチニンやBUNの上昇をきたさない、より早期の腎障害患者における薬効の評価は、広く用いられている尿中のタンパク量を用いてもよく、特に糖尿病性腎症の評価においては、より早期の病態をとらえることができる尿中の微量アルブミンによって、本発明の効果を判断してもよい。
本発明におけるレニン−アンジオテンシン系阻害剤の投与量としては、それぞれの患者において降圧効果が得られる用量を設定することが望ましい。一方プロスタグランジンI誘導体の投与量としては、副作用が許容できる範囲でできるだけ高用量を用いることが望ましい。本発明で示されるように、両者を併用した場合には、プロスタグランジンI誘導体とレニン−アンジオテンシン系阻害剤の両者が相乗的に腎疾患の進行抑制効果を示すために、より低用量で腎疾患の進行抑制が期待できる。
特に本発明におけるプロスタグランジンI誘導体の投与量を上げると、顔面紅潮、ほてり、頭重感、動悸などの血管拡張に伴う副作用の他、嘔吐、下痢などの消化器症状、顎の痛みなどの副作用が発現するため、その高用量の使用が制限される場合には、本発明の効果によってプロスタグランジンI誘導体の投与量も減らすことが可能である。
レニン−アンジオテンシン系阻害剤の投与量としては血圧低下作用を示す用量が好ましいが、より低用量であっても、本発明における相乗効果によってより低い用量を設定可能である。
このため、ACE阻害剤の副作用である空咳をはじめ、過度の血圧低下、強いめまいや立ちくらみ、高カリウム血症、血管浮腫、顔や口の中ノドの腫れ、肝障害などの副作用の軽減が期待できる。また腎不全患者において薬剤の飲み始めに見られる腎機能の一時的な悪化、特に高カリウム血症の軽減にも有効である。またアンジオテンシンII受容体拮抗剤の副作用として知られる、過度の血圧低下による立ちくらみ、高カリウム血症、血管浮腫、顔や口の中ノドの腫れ、肝障害、腎機能の一時的な悪化の軽減にも有効である。
本発明において、レニン−アンジオテンシン系阻害剤の投与量としては、成人(体重50kg)に経口投与する場合、有効成分を有する化合物、そのプロドラッグまたはその塩を通常1回量(組成物1単位)として0.01〜1000mg、好ましくは0.1〜100mgであり、この量を1日1回〜3回投与するのが望ましい。
また、プロスタグランジンI誘導体、とりわけ4,8−インタ−m−フェニレンプロスタグランジンI誘導体の投与量としては、通常1回量(組成物1単位)で成人に対して0.01〜5000μg程度であり、好ましくは0.1〜500μgであればよく、これを1日1〜3回程度投与するのが好ましい。特にベラプロストナトリウムの場合には、ヒトの腎不全患者の投与量としては1日投与量として、0.02μg〜500μgを1日2から4回投与するのが適当である。
本発明におけるプロスタグランジンI誘導体の製剤としては、賦形剤、例えば澱粉類、ラクトース、スクロース、葡萄糖、マンニトール、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等:結合剤、例えば、澱粉類、デキストリン、アラビアゴム、トラガンド、メチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等、崩壊剤、例えば、澱粉類、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース等、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク等:着色剤、香料等を加えることで作成可能である。
本発明において、プロスタグランジンI誘導体とアンジオテンシン系阻害剤を、それぞれ別々の製剤として、同時に、別個にまたは時間をずらして投与することができる。より利便性を高めるために、両製剤をふくむキットや、両製剤と単剤を組み合わせたキット製剤も用いることができる。特にプロスタグランジンI誘導体製剤と、アンジオテンシン系阻害剤製剤ではその用法が異なる場合が多いために、服用が煩雑になりがちであり、このようなキット製品は特に好ましく用いることができる。さらにそれぞれの薬剤の顆粒を含むカプセル剤として投与することも可能である。
また、各薬剤の特性によっては、個別に徐放化、放出遅延化等の放出制御させることももちろん可能である。特にプロスタグランジンI誘導体を徐放性製剤とすることは、より安全にプロスタグランジンI誘導体の用量を上げることができるため好ましい結果をもたらす。
本発明の投与形態としては、各種剤形を使用できるが、具体的には経口投与の場合、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、液剤、シロップ剤、カプセル剤、丸剤、スプレー剤などの従来用いられる剤形が挙げられ、好ましくは、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、液剤、シロップ剤、カプセル剤、が挙げられる。
また、本剤は殺菌溶液等の形で非経口的に投与しても良く、また他の溶質、例えば液を等張にするに十分な塩化ナトリウムまたはグルコース等を用いることもできる。本発明の治療および予防薬は上記経口用の製剤の他、各種注射剤、坐剤など非経口的にも幅広い投与法を応用できる。経口投与及び非経口投与のための製剤は、医薬分野において広く行われている常法により行うことができる。
本薬の適応はヒトに限定されず、愛玩用として飼育されるほ乳類をはじめとする、各種の動物にも適応可能である。
以下本発明を実施例にもとづきより具体的に説明する。
実施例1 日本チャールズリバーから入手した9週齢WKYラットに、ウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清(NTS、10倍希釈、3mL/kg)を投与して糸球体腎炎を誘発した。2週後に採尿、採血を行ない、尿タンパク量、血清クレアチニン値を基に以下の6群に動物を振り分け、薬物投与を開始した。この時点で既に血清クレアチニン値が上昇しており、もはや腎不全期に分類されると判断された。腎機能の評価は血清クレアチニンによった。
1)対照群:溶媒のみ投与、n=6
2)BPS100群(比較例):ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID:本用量を1日2回投与)、n=6
3)BPS300群(比較例):ベラプロストナトリウム300μg/kg(BID)、n=6
4)カンデサルタン10群(比較例):カンデサルタン・シレキシセル10mg/kg(OAD:本用量を1日1回投与)、n=6
5)カンデサルタン30群(比較例):カンデサルタン・シレキシセル30mg/kg(OAD)、n=6
6)BPS100+カンデサルタン10群(本発明):
ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)+カンデサルタン・シレキセチル・10mg/kg(OAD)、n=7
薬物投与開始後1週おきに採血を行ない血清クレアチニン値を測定した。結果を図1に示す。
図1に示すようにBPS100群、カンデサルタン10群での腎炎の進行抑制効果は対照群とほとんど差が認められなかった。一方、両薬を配合したBPS100+カンデサルタン10群では、以後の血清クレアチニンの上昇がほぼ完全に抑制された。一方、それぞれの薬剤の用量を増やしても(カンデサルタン30群、およびBPS300群)その腎障害進行抑制効果は、BPS100+カンデサルタン10群と比べて弱かった。
このように、単剤では全く腎疾患の進行を抑制することのない低用量のBPSとカンデサルタン・シレキセチルとを配合することにより、それぞれの単剤を高用量の使用時に比べても腎不全の進行抑制作用が劇的に改善された。この結果より2剤の配合剤の本疾患への優れた有用性が示唆された。
この際、尿中のPGF1αの産生はカンデサルタンの投与により変化しておらず、本現象に内因性のプロスタグランジンI産生の上昇が寄与している可能性がないことが確認された。また血漿中のフィブリノゲン濃度を測定したが各群間に特に差を認めなかった。
【実施例2】
9週齢WKYラットにウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清を投与して腎炎を誘発した。抗血清の投与から2週間後に動物を以下の4群に分け、薬物投与を開始した。
1)対照群:0.5%CMC(OAD)+蒸留水(BID)、n=6
2)テルミサルタン群(比較例):テルミサルタン・40mg/kg(OAD)+蒸留水(BID)、n=5
3)BPS群(比較例):0.5%CMC(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=5
4)テルミサルタン+BPS群(本発明):テルミサルタン・40mg/kg(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6。
表1に示すようにBPS群における腎不全の進行は対照群とほとんど差が認められなかった。テルミサルタン群およびテルミサルタン+BPS群では腎不全の進行が抑制され、その作用はテルミサルタン+BPS群で強かった。一方、薬物投与終了の1週後に再び血清クレアチニン値を測定したところ、テルミサルタン群では腎不全が進行していたのに対し、テルミサルタン+BPS群では血清クレアチニン値がほぼ正常動物程度に抑制されていた。このように、併用群では薬剤の投与を終了しても血清クレアチニン値の上昇が認められないばかりか逆に低下しており、併用のきわめて高い有用性が認められた。

【実施例3】
9週齢WKYラットにウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清を投与して腎炎を誘発した。抗血清の投与から2週間後に動物を以下の4群に分け、薬物投与を開始した。
1)対照群:0.5%CMC(BID)+蒸留水(BID)、n=6
2)ロサルタン群(比較例):ロサルタン・30mg/kg(BID)+蒸留水(BID)、n=5
3)BPS群(比較例):0.5%CMC(BID)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6
4)ロサルタン+BPS群(本発明):ロサルタン・30mg/kg(BID)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=5
誘発6週後に血清クレアチン値を測定し、腎不全の進行の程度を評価した。表2に示すように、本投与量においてロサルタン群、BPS群での腎不全進行抑制効果は対照群と差が認められなかった。一方、両薬を配合したロサルタン+BPS群では、腎不全の進行が対照群に比較して有意に抑制された(p<0.05)。このように、単剤では効果がない用量のBPSとARBのロサルタンを併用することによって、著明な腎不全の進行抑制効果が求められた。

【実施例4】
9週齢WKYラットにウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清を投与して腎炎を誘発した。抗血清の投与から2週間後に動物を以下の4群に分け、薬物投与を開始した。
1)対照群:0.5%CMC(OAD)+蒸留水(BID)、n=6
2)エナラプリル群(比較例):マレイン酸エナラプリル・10mg/kg(OAD)+蒸留水(BID)、n=5
3)BPS群(比較例):0.5%CMC(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6
4)エナラプリル+BPS群(本発明):マレイン酸エナラプリル・10mg/kg(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6
薬物投与開始後1週おきに採血を行い、血清クレアチニン値を測定した。薬物投与開始から5週間後までの血清クレアチニン値の逆数を縦軸に、横軸に時間をとってプロットし、漸近線の傾きを個体毎の腎不全の進行速度とした。結果を表3に示す。
表3に示すように、本投与量においてエナラプリル群、BPS群での腎不全進行抑制効果は対照群と差が認められなかった。一方、両薬を配合したエナラプリル+BPS群では、腎不全の進行が対照群に比較して有意に抑制された(p<0.05)。このように、単剤では効果がない用量のBPSとACE阻害剤のエナラプリルを併用することによって、著明な腎不全の進行抑制効果が求められた。

【実施例5】
9週齢WKYラットにウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清を投与して腎炎を誘発した。抗血清の投与から2週間後に動物を以下の4群に分け、薬物投与を開始した。
1)対照群:0.5%CMC(OAD)+蒸留水(BID)、n=6
2)リシノプリル群(比較例):リシノプリル・10mg/kg(OAD)+蒸留水(BID)、n=5
3)BPS群(比較例):0.5%CMC(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=5
4)リシノプリル+BPS群(本発明):リシノプリル・10mg/kg(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6
薬物投与開始後1週おきに採血を行い、血清クレアチニン値を測定した。薬物投与開始から5週間後までの血清クレアチニン値の逆数を縦軸に、横軸に時間をとってプロットし、漸近線の傾きを個体毎の腎不全の進行速度とした。結果を表4に示す。
表4に示すようにリシノプリル群、BPS群での腎不全進行抑制効果は対照群とほとんど差が認められなかった。一方、両薬を配合したリシノプリル+BPS群では、腎不全の進行が対照群に比較して有意に抑制された(p<0.05)

【実施例6】
9週齢WKYラットにウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清を投与して腎炎を誘発した。抗血清の投与から2週間後に動物を以下の4群に分け、薬物投与を開始した。
1)対照群:0.5%CMC(OAD)+蒸留水(BID)、n=6
2)ペリンドプリル群(比較例):ペリンドプリルエルブミン・10mg/kg(OAD)+蒸留水(BID)、n=6
3)BPS群(比較例):0.5%CMC(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6
4)エナラプリル+BPS群(本発明):ペリンドプリルエルブミン・10mg/kg(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=6
薬物投与開始後1週おきに採血を行い、血清クレアチニン値を測定した。薬物投与開始から6週間後までの血清クレアチニン値の逆数を縦軸に、横軸に時間をとってプロットし、漸近線の傾きを個体毎の腎不全の進行速度とした。結果を表5に示す。
表5に示すようにペリンドプリル群、BPS群での腎不全進行抑制効果は対照に比較して抑制傾向が認められた。さらに、両薬を配合したペリンドプリル+BPS群では、腎不全の進行が対照に比較してさらに強い抑制傾向が認められた。

【実施例7】
9週齢WKYラットにウサギ抗ラット糸球体基底膜抗血清を投与して腎炎を誘発した。抗血清の投与から2週間後に動物を以下の4群に分け、薬物投与を開始した。
1)対照:0.5%CMC(OAD)+蒸留水(BID)、n=11
2)カンデサルタン群(比較例):カンデサルタン・シレキセチル・10mg/kg(OAD)+蒸留水(BID)、n=11
3)BPS群(比較例):0.5%CMC(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=11
4)カンデサルタン+BPS群(本発明):カンデサルタン・シレキセチル・10mg/kg(OAD)+ベラプロストナトリウム100μg/kg(BID)、n=12。
図2に示すように、本投与量においてカンデサルタン群、BPS群における死亡率は対照群と差が認められなかった。一方、両薬を配合したカンデサルタン+BPS群では、生存率が対照群に比較して有意に改善された(p<0.05)。このように、単剤では効果がない用量のARBのカンデサルタンとBPSを併用することによって、腎不全による死亡の著明な改善効果が認められた。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるプロスタグランジンI誘導体を有効成分として含有する、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤投与による腎疾患の治療または予防効果の増強剤。
一般式(I)

[式中、
は、
(A)COOR、ここでRは、
水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン、
2)炭素数1〜12の直鎖アルキルまたは炭素数3〜14の分岐アルキルZ−R、ここでZは原子価結合、またはC2tで表される直鎖または分岐アルキレンであり、tは1〜6の整数を示し、Rは炭素数3〜12のシクロアルキルまたはRの1〜3個で置換された炭素数3〜12の置換シクロアルキルであり、Rは水素または炭素数1〜5のアルキル、
−(CHCHO)CH、ここで、nは1〜5の整数、
−Z−Ar、ここでZは前記定義に同じ、Arはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、α−フリル、β−フリル、α−チエニル、β−チエニルまたは置換フェニル(ここで置換基は少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニル、フェノキシ、p−アセトアミドベンズアミド、−CH=N−NH−C(=O)−NH、−NH−C(=O)−Ph、−NH−C(=O)−CH若しくは−NH−C(=O)−NHであるもの)、
−C2tCOOR、ここでC2t、Rは前記定義に同じ、
−C2tN(R、ここでC2t、Rは前記定義に同じ、
−CH(R)−C−(=O)−R、ここでRは水素またはベンゾイル、Rはフェニル、p−ブロモフェニル、p−クロロフェニル、p−ビフェニル、p−ニトロフェニル、p−ベンズアミドフェニル、2−ナフチル、
−C2p−W−R、ここで、Wは−CH=CH−、−CH=CR−または−C≡C−であり、Rは水素、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐アルキルまたは炭素数1〜30のアラルキルであり、pは1〜5の整数、または、
10)−CH(CHOR、ここでRは炭素数1〜30のアルキルまたはアシル、
(B)−CHOH、
(C)−C(=O)N(R
ここでRは水素、炭素数1〜12の直鎖アルキル、炭素数3〜12の分岐アルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数4〜13のシクロアルキルアルキレン、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルまたは−SO10を表わし、R10は炭素数1〜10のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルを表わし、2つのRは同一でも異なっていてもよいが、一方が−SO10を表わす場合は他のRは−SO10ではないものとする、または、
(D)−CHOTHP(THPはテトラヒドロピラニル基)であり、
Aは、
−(CH−、
−CH=CH−CH−、
−CH−CH=CH−、
−CH−O−CH−、
−CH=CH−、
−O−CH−または
7) −C≡C−であり、ここで、mは1から3の整数を示し、
Yは、水素、炭素数1〜4のアルキル、塩素、臭素、フッ素、ホルミル、メトキシまたはニトロであり、
Bは、−X−C(R11)(R12)OR13、ここで、R11は水素または炭素数1〜4のアルキルであり、R13は水素、炭素数1〜14のアシル、炭素数6〜15のアロイル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1−エトキシエチルまたはt−ブチルであり、
Xは、
−CH−CH−、
−CH=CH−、または
−C≡C−であり、
12は、
炭素数1〜12の直鎮アルキル、炭素数3〜14の分岐アルキル、
−Z−ArここでZは前記定義に同じ、Arはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、または少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニル、
−C2tOR14、ここでC2tは前記定義に同じ、R14は炭素数1〜6の直鎖アルキル、炭素数3〜6の分岐アルキル、フェニル、少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、または、炭素数1〜4の直鎖アルキルの1〜4個で置換されたシクロペンチル若しくはシクロヘキシル、
−Z−R、ここでZ、Rは前記定義に同じ、
−C2t−CH=C(R15)R16、ここでC2tは前記定義に同じ、R15及びR16は互いに独立に水素、メチル、エチル、プロピル若しくはブチル、または
6) −C2u−C≡C−R17、ここでuは1〜7の整数であり、C2uは直鎖若しくは分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わし、
Eは、水素または−OR18、ここでR18は炭素数1〜12のアシル、炭素数7〜15のアロイル若しくはR(ここでRは前記定義に同じ)を表わし、
一般式はd体、l体またはdl体を表わす]。
【請求項2】
前記一般式(I)において、
は、COOR
ここでRは、水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン、であり、
Aは、
1)−(CH
2)−CH−CH=CH−
ここで、mは1から3の整数を示す、であり、
Yは、水素であり、
Bは、 −X−C(R11)(R12)OR13
ここで、R11、R13は水素であり、Xは、
1)−CH=CH−
2)−C≡C−であり、
12は、
1)−Z−Ar
ここでZは原子価結合、またはC2tで表される直鎖または分岐アルキレンであり、tは1〜6の整数を示し、Arはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、または少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニルを表わし、または、
2)−Z−R
ここでZは前記定義に同じ、Rは炭素数3〜12のシクロアルキルを表し、または、
3)−C2u−C≡C−R17
ここでuは1〜7の整数であり、C2uは直鎖または分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わす、
一般式はd体、l体またはdl体を表わす、請求項1記載の増強剤。
【請求項3】
前記一般式(I)に於いて、
は、COOR、ここでRは、水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン、
Aは、−(CH−であり、ここで、mは1から3の整数を示し、
Yは、水素、であり、
Bは、−X−C(R11)(R12)OR13、ここで、R11及びR13は水素であり、
Xは、−CH=CH−、であり、
12は、−C2u−C≡C−R17、ここでuは1〜7の整数であり、C2uは直鎖若しくは分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わし、
Eは、水素または−OR18、ここでR18はR(ここでRは前記定義に同じ)を表わし、
一般式はd体、l体またはdl体を表わす、で表わされる化合物である、請求項1記載の増強剤。
【請求項4】
前記プロスタグランジンI誘導体が、ベラプロストまたは薬理学的に許容できる塩またはエステルである請求項1記載の増強剤。
【請求項5】
前記レニン−アンジオテンシン系の阻害物質がACE阻害剤である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項6】
前記ACE阻害剤が、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル、ラミプリル、カプトプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、リベンザプリル、キナプリル、イミダプリル、ゾフェノプリル、フォシノプリル、シラザプリル、テモカプリル、スピラプリル、ペリンドプリル、モエキシプリル、トランドラプリル、セロナプリル、ウチバプリル、オマパトリラト、サムパトリラトおよび、それぞれの化合物の薬理学的に許容できる塩から成る群から選択される請求項5記載の増強剤。
【請求項7】
前記レニン−アンジオテンシン系の阻害物質がアンジオテンシンII受容体拮抗作用を有する化合物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項8】
前記アンギオテンシンII受容体拮抗作用を有する化合物が、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン シレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、オルメサルタン、EXP−3174、ゾラサルタン、サプリサルタン、エリサルタン、リピサルタン、ミファサルタン、フォラサルタン、エンブサルタン、フォンサルタン、E4177、YM358、ICI−D8731、TAK−536、CL−329167、ポミサルタン、カンデサルタンおよびそれぞれの化合物の薬理学的に許容できる塩から成る群から選択される請求項7記載の増強剤。
【請求項9】
前記アンギオテンシンII受容体拮抗作用を有する化合物が、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン シレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、オルメサルタン、EXP−3174、ゾラサルタン、サプリサルタン、エンブサルタン、カンデサルタンおよび、それぞれの化合物の薬理学的に許容できる塩から成る群から選択される請求項8記載の増強剤。
【請求項10】
腎疾患が糖尿病性腎症、糸球体腎炎、間質性腎炎、急性腎不全、慢性腎不全である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項11】
腎疾患が慢性腎不全である請求項9記載の増強剤。
【請求項12】
レニン−アンジオテンシン系阻害剤投与による、腎疾患時の血清クレアチニンの経時的な上昇抑制効果を増強する請求項1ないし11のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項13】
レニン−アンジオテンシン系の阻害物質投与による、血清クレアチニンの逆数の経時的な低下の抑制効果を増強する請求項1ないし11のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項14】
レニン−アンジオテンシン系の阻害物質投与による、腎疾患時の糸球体濾過量の経時的な低下抑制効果を増強する請求項1ないし11のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の増強剤と、レニン−アンジオテンシン系阻害剤とを有効成分として含む、腎疾患の治療又は予防剤。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の増強剤と、レニン−アンジオテンシン系阻害剤を有効成分として含む薬剤とを別個に含み、該増強剤及びレニン−アンジオテンシン系阻害剤を同時に又は時間をずらして投与するための、腎疾患の治療又は予防用薬剤キット。
【請求項17】
レニン−アンジオテンシン系の阻害剤を投与される患者に、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の増強剤を投与することを含む、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤による腎疾患の治療または予防効果の増強方法。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の腎疾患の治療若しくは予防剤、又は腎疾患の治療若しくは予防用薬剤キットに含まれる薬剤を投与することを含む、腎疾患の治療又は予防方法。
【請求項19】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプラスタグランジンI誘導体の、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤投与による腎疾患の治療または予防効果の増強剤を製造するための使用。
【請求項20】
前記増強剤が、請求項5ないし14のいずれか1項に記載の増強剤である請求項19記載の使用。

【国際公開番号】WO2004/098611
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506029(P2005−506029)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006412
【国際出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】