増殖性疾患の治療のための方法および組成物
本発明は、ストレプトコッカス・インターメディウスのインターメジリシン(ILY)タンパク質のドメイン4を含むペプチドおよびその断片、ならびに抗体に基づく抗癌治療に対して癌細胞を感作するためのこれらのペプチドの使用を特徴とする。CD59受容体活性は、治療用抗体に対する低下した感受性と関連していた。ILYドメイン4ポリペプチドの投与は、完全長ILYに関連する全般的な毒性を回避しながら、CD59受容体活性を阻害するのに十分であることが望ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は異常細胞の未制御の増殖を特徴とする疾患である。癌細胞は、限界ある寿命を有する正常細胞においては課される障壁を克服したものであり、無制限に増殖する。癌細胞の増殖が続くにつれて、癌性細胞自身が、より進行的な増殖表現型を続行するようになるまで、遺伝子変化が持続する。治療しないまま放置すれば、リンパ系または血流による体内の遠くの領域への癌細胞の拡散、すなわち、転移が、健康な組織を確実に破壊し得る。
【0003】
CD59は、いくつかの癌細胞中で過剰発現されるグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合膜タンパク質である。CD59活性は、補体タンパク質C8およびC9に結合し、C9取込みおよび重合を防止することにより、補体の膜攻撃複合体(MAC)の形成を阻害する。補体は、抗体を介する癌細胞溶解のための主要なメディエーターである。CD59の上方調節および高い発現は、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療に用いられる抗CD20キメラMAbリツキシマブへの耐性などの抗体を介する癌治療に対する耐性のための主な理由の1つであると考えられる。
【0004】
ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)のインターメジリシン(ILY)は、感染症の発病において重要な役割を果たすと長く疑われていた、ストレプトコッカス・インターメディウス(SI)により分泌されるコレステロール依存的細胞溶解素である。グラム陽性細菌であるSIは、口および内部器官、特に、脳および肝臓における化膿性感染を引き起こし得る。脳および肝臓におけるSIによる感染は、膿瘍を誘導し得る。ILYは、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)により分泌されるニューモリシンとしてコレステロール依存的細胞溶解素ファミリーに割当てられており、ヒト赤血球に対してのみ特異的溶血活性を示すが、他の動物赤血球に対しては活性を示さない。
【発明の概要】
【0005】
一態様においては、本発明は、ILYドメイン4ポリペプチドを含む実質的に純粋なポリペプチドを特徴とする。
【0006】
別の態様においては、本発明は、実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドと治療用抗体を含む医薬組成物を特徴とする。
【0007】
別の態様においては、本発明は、実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドと治療用抗体を患者に投与することにより、増殖性疾患の治療を必要とする患者(例えば、ヒト)において増殖性疾患(例えば、CD59を発現する新生物細胞を特徴とする増殖性疾患)を治療する方法を特徴とする。ILYドメイン4ポリペプチドおよび治療用抗体を、共に増殖性疾患を治療するのに十分である量で、同時に、または互いに14日以内に投与する。この態様においては、ILYドメイン4ポリペプチドおよび治療用抗体を、一緒に、または別々に製剤化することができる。
【0008】
前記態様のいずれにおいても、実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドは、配列番号1および配列番号2から選択される配列、またはその断片を含んでもよい。この態様においては、前記断片は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上のアミノ酸長であってよい。この断片は、531、500、400、300、200、100、50、40、30、20、10以下のアミノ酸長であってもよい。
【0009】
前記態様のいずれにおいても、治療用抗体は、例えば、リツキシマブ、MT201、17-1A、ハーセプチン、アレムツズマブ、lym-1、ベバシズマブ、セツキシマブ、またはIL-2受容体αに対するモノクローナル抗体であってよい。
【0010】
「患者」とは、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ブタ、ウマ、イヌ、ネコまたはラットを意味する。
【0011】
「インターメジリシン」または「ILY」とは、ストレプトコッカス・インターメディウスのインターメジリシンポリペプチドの活性を有するポリペプチドを意味する。ILYを、ストレプトコッカス・インターメディウスから精製するか、または組換え生産することができる。ILYの核酸配列に対応するGenbankアクセッション番号の例はAB029317であり、ILYのポリペプチド配列に対応するGenbankアクセッション番号の例はBAE16324である。ILYとは、ILYポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドも意味する。さらに、およびあるいは、ILYは高ストリンジェントな条件下でILYの核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドと定義される。ILYを、任意のストレプトコッカス・インターメディウス株(例えば、株1208-1、UNS35、UNS46、およびATCC27335)から単離することができる。
【0012】
「ILYポリペプチドのドメイン4」または「ILYドメイン4ポリペプチド」とは、ILYドメイン4ポリペプチドの活性を有するILYの断片を含むタンパク質を意味する。この定義から特に排除されるのは、Genbankアクセッション番号BAE16324を有する完全長ILYタンパク質である。この用語は、ペプチド配列GALTLNHDGAFVARFYVYWEELGHDADGYETIRSRSWSGNGYNRGAHYSTTLRFKGNVRNIRVKVLGATGLAWEPWRLIYSKNDLPLVPQRNISTWGTTLHPQFEDKVVKDNTD (配列番号1)もしくはRNIRVKVLGATGLAWEPWRLIYSKNDLPLVPQRNISTWGTTLHPQFEDKVVKDNTD (配列番号2)を含むタンパク質、またはILYドメイン4活性を有する断片を含むことを意味する。ILYドメイン4ポリペプチドとは、配列番号1または2に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドも意味する。さらに、およびあるいは、ILYドメイン4ポリペプチドは、高ストリンジェンシー条件下でILYドメイン4ポリペプチドの核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドと定義される。この用語はまた、ILYドメイン4ポリペプチド中のアミノ酸残基の任意の保存的置換を含むことを意味する。用語「保存的置換」とは、化学的に類似する残基によるアミノ酸残基の置換、例えば、疎水性残基の別の疎水性残基への置換、荷電した残基の別の荷電した残基への置換などを指す。非極性R基の保存的置換の例は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンである。極性であるが、非荷電R基の置換の例は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、またはグルタミンである。負に荷電したR基の置換の例は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。正に荷電したR基の置換の例は、リジン、アルギニン、またはヒスチジンである。さらに、用語「ILYドメイン4ポリペプチド」は、非天然アミノ酸による保存的置換を含む。この用語は、完全長ILYを明確に排除する。
【0013】
「断片」とは、参照ポリペプチドの全長の好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上を含むポリペプチドの一部を意味する。断片は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または114個以上のアミノ酸を含んでもよい。
【0014】
「ILYドメイン4活性」とは、ヒトCD59に拮抗するが、本明細書に記載の溶解アッセイにおいてヒト赤血球(RBC)の実質的溶解を直接引き起こさないペプチドの活性を意味する。
【0015】
「ヒトCD59に拮抗する」とは、補体タンパク質C8およびC9に結合するヒトCD59を減少させ、補体の膜攻撃複合体(MAC)の形成の増加をもたらすことを意味する。
【0016】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」とは、本明細書に記載のように、天然もしくは非天然のポリペプチドもしくはペプチドの全部もしくは一部を構成する、翻訳後修飾(例えば、糖鎖付加もしくはリン酸化)に関係なく、3個以上の天然または非天然アミノ酸の任意の鎖を意味する。
【0017】
本明細書で用いられるように、天然アミノ酸は、天然タンパク質中で通常生じるものなどのL-配置を有する天然のα-アミノ酸である。非天然アミノ酸とは、通常はタンパク質中に生じないアミノ酸、例えば、L配置を有する天然のα-アミノ酸のエピマー、すなわち、非天然のD-配置を有するアミノ酸、もしくはその(D,L)-異性体混合物;またはそのようなアミノ酸の相同体、例えば、β-アミノ酸、α,α-二置換アミノ酸、またはアミノ酸側鎖が1個以上のメチレン基により短縮されたか、もしくは10個以下の炭素原子に延長されたα-アミノ酸、例えば、線状鎖中に5〜10個の炭素原子を有するα-アミノアルカノン酸、非置換もしくは置換芳香族(α-アリールもしくはα-アリール低級アルキル)、例えば、置換フェニルアラニンもしくはフェニルグリシンを指す。
【0018】
本明細書で用いられる「本発明のペプチド」とは、ILYドメイン4ポリペプチドのアミノ酸配列を含み、ペプチド結合により連結され、未保護の形態にある天然アミノ酸のみを含む線状化合物を指す。
【0019】
本発明はまた、本発明のペプチドの誘導体も提供する。そのような誘導体は、線状もしくは環状であってよく、非天然アミノ酸を有するペプチドを含む。本発明の誘導体はまた、本発明のペプチドが、置換、化学的、酵素的もしくは他の好適な手段により、別の原子または別のペプチドもしくはタンパク質を含む部分を用いて非共有的または好ましくは共有的に改変された分子も含む。この部分は、それが非天然アミノ酸であるか、または1個以上の天然アミノ酸が別の天然もしくは非天然アミノ酸で置換されている点で、上記で定義された本発明のペプチドにとって「外来」であってよい。別のペプチドもしくはタンパク質に共有結合された本発明のペプチドもしくは誘導体を含むコンジュゲートも、本明細書に包含される。別の部分の結合は、リンカーまたはスペーサー、例えば、アミノ酸またはペプチドリンカーを含んでもよい。本発明の誘導体はまた、1個、数個、または全部の可能性のある反応基、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、またはヒドロキシル基が保護された形態にあるペプチドを含む。
【0020】
本発明のペプチドを誘導体化する原子または部分は、分析目的で役立つ、例えば、本発明のペプチドの検出、該ペプチドの好ましい調製もしくは精製を容易にするか、または本発明の目的にとって明らかであるペプチドの特性を改善することができる。そのような特性としては、ヒトCD59への結合またはin vivoでの投与のための好適性、特に、酵素的分解に対する溶解性もしくは安定性が挙げられる。本発明の誘導体は、本発明のペプチドと別の化学部分との共有的もしくは凝集的コンジュゲート、本発明の非誘導体化ペプチドと本質的に同じ活性を示す誘導体、および本発明の任意のアミノ酸の三次元構造と類似するようにモデル化された「ペプチド模倣小分子」を含む。そのような模倣物質の例は、レトロ-インベルソ(retro-inverso)ペプチド(Chorevら、Acc. Chem. Res. 26: 266-273, 1993)である。公知の製薬上活性な化合物に対する模倣物質の設計は、「リード」化合物に基づく薬剤の設計に対する公知の手法である。これは、例えば、「元の」活性化合物を合成するのが難しいか、もしくは高価である場合、またはそれが特定の様式の投与にとって好適ではない、例えば、ペプチドは消化管中でプロテアーゼにより迅速に分解される傾向があるため、経口組成物にとって好適ではない活性薬剤であると考えられる場合に望ましい。
【0021】
上記の一般的定義内の誘導体のさらなる例としては、以下のものが挙げられる。
【0022】
(I)ジスルフィド架橋、チオエーテル架橋を有する化合物、またはラクタムなどの環状ペプチドまたは誘導体。典型的には、ジスルフィド結合を含む環状誘導体は、L-システインまたはD-システインであってよい2個のシステインを含むであろう。有利には、N末端アミノ酸およびC末端アミノ酸は両方ともシステインである。そのような誘導体においては、システインの代わりに、ペニシラミン(β,β-ジメチル-システイン)を用いることができる。チオエーテル架橋を含むペプチドは、例えば、一方の末端に遊離システイン残基を有し、他方の末端にブロモ含有構成単位(例えば、ブロモ酢酸)を有する出発化合物から取得できる。環状化を、システインの側鎖の選択的脱保護により、固相上で実行することができる。環状ラクタムを、例えば、グルタミン酸のγ-カルボキシ基と、リジンのε-アミノ基の間で形成させることができる。グルタミン酸の代わりに、アスパラギン酸を用いることができる。リジンの代わりに、オルニチンまたはジアミノ酪酸を用いることができる。また、C末端のアスパラギン酸もしくはグルタミン酸の側鎖とN末端アミノ酸のα-アミノ基の間でラクタムを作製することもできる。この手法は、β-アミノ酸(例えば、β-アラニン)にも拡張可能である。あるいは、N末端またはC末端のグルタミン残基を、側鎖窒素原子間でアルケネジル鎖と繋ぐことができる(Phelanら、J. Amer. Chem. Soc. 119:455-460, 1997)。
【0023】
(II)置換により改変された本発明のペプチド。一例においては、1個以上、好ましくは1個もしくは2個のアミノ酸を、別の天然もしくは非天然アミノ酸、例えば、対応するD-類似体、もしくは模倣物質と置換する。例えば、PheもしくはTyrを含むペプチドにおいては、PheもしくはTyrを、別の構成単位、例えば、別のタンパク質原性アミノ酸、または構造的に関連する類似体と置換することができる。特定の改変は、ペプチド中のコンフォメーションが維持されるようなものである。例えば、アミノ酸を、α,α-二置換アミノ酸残基(例えば、α-アミノイソ酪酸、1-アミノ-シクロプロパン-1-カルボン酸、1-アミノ-シクロペンタン-1-カルボン酸、1-アミノ-シクロヘキサン-1-カルボン酸、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、および1-アミノ-シクロヘプタン-1-カルボン酸)により置換することができる。
【0024】
(III)酵素、蛍光マーカー、化学発光マーカー、金属キレート、常磁性粒子、ビオチンなどで検出可能に標識された本発明のペプチド。そのような誘導体においては、本発明のペプチドを、直接的に、またはスペーサーもしくはリンカー基、例えば、(ペプチド性)親水性スペーサーにより、コンジュゲーションパートナーに結合させる。有利には、前記ペプチドをNまたはC末端アミノ酸に結合させる。例えば、ビオチンを、セリン残基またはテトラマーSer-Gly-Ser-Glyを介して、本発明のペプチドのN末端に結合させることができる。
【0025】
(IV)アミノ保護基、例えば、アセチル、またはカルボキシ保護基などの潜在的に反応性の側鎖基に1個以上の保護基を担持する本発明のペプチド。例えば、本発明の化合物のC末端カルボキシ基を、カルボキサミド官能基の形態で存在させることができる。好適な保護基は、当業界で一般的に公知である。そのような基を導入して、例えば、タンパク質溶解的分解に対する前記化合物の安定性を増強することができる。
【0026】
本発明のペプチドの「誘導体」とは、該ペプチドの改変または通常は該ペプチドの一部ではない追加の化学部分を含む化合物をも意味する。前記ペプチドの標的化されたアミノ酸残基と、選択された側鎖または末端残基と反応することができる有機誘導体化剤とを反応させることにより、改変を分子中に導入することができる。誘導体化の方法を以下に記載する。
【0027】
最も一般的には、システイニル残基を、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロ酢酸(および対応するアミン)と反応させて、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得る。また、システイニル残基を、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルリン酸、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリ安息香酸、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応により誘導体化する。
【0028】
一般的には、ジエチルプロカーボネートはヒスチジル側鎖にとって比較的特異的であるため、pH 5.5-7.0でのこの薬剤との反応により、ヒスチジル残基を誘導体化する。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用である;この反応を、pH 6.0で0.1 Mカコジル酸ナトリウム中で行うのが好ましい。
【0029】
リジニルおよびアミノ末端残基を、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの薬剤を用いる誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α-アミノを含有する残基を誘導体化するための他の好適な試薬としては、イミドエステル、例えばメチルピコリニミデート;リン酸ピリドキサル;ピリドキサル;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソウレア;2,4-ペンタンジオン;およびグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0030】
1種または数種の従来の試薬、特に、フェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応により、アルギニル残基を改変する。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基のpKaが高いため、アルカリ条件下で反応を行う必要がある。さらに、これらの試薬は、リジンの基ならびにアルギニンのε-アミノ基と反応し得る。
【0031】
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)を、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R'--N--C--N--R')との反応により選択的に改変する。アスパルチルおよびグルタミル残基を、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換することができる。
【0032】
グルタミニルおよびアスパラギニル残基を、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基に脱アミド化することが多い。あるいは、これらの残基を穏やかな酸性条件下で脱アミド化する。これらの残基のいずれかの形態も、本発明の範囲内にある。
【0033】
ポリペプチドまたはその誘導体を、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合ポリペプチドとして、別のタンパク質またはペプチドに融合または結合させることができる。他の一般的に用いられる融合ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、マルトース結合タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)プロテインA、ポリヒスチジン、およびセルロース結合タンパク質が挙げられる。
【0034】
ペプチドの「ペプチド模倣小分子」とは、ペプチド自身と実質的に同じILYドメイン4活性を示す小分子を意味する。
【0035】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、それに天然に付随する成分から分離されたポリペプチドまたはペプチドを意味する。典型的には、前記ポリペプチドは、それが天然に結合したタンパク質および天然の有機分子から、少なくとも60重量%遊離された場合、実質的に純粋である。好ましくは、前記ポリペプチドは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%純粋であるILYドメイン4ポリペプチドである。実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドを、例えば、天然の起源(例えば、線維芽細胞、神経細胞、もしくはリンパ球)からの抽出により、ILYドメイン4ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現により、または該ポリペプチドを化学的に合成することにより取得することができる。任意の好適な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により、純度を測定することができる。
【0036】
タンパク質は、それがその天然の状態でそれに付随する夾雑物から分離された場合、天然に結合した成分を実質的に含まない。かくして、化学的に合成されるか、またはそれが天然に生じる細胞とは異なる細胞系中で産生されるタンパク質は、その天然に結合した成分を実質的に含まないであろう。従って、実質的に純粋なポリペプチドは、真核生物に由来するが、大腸菌または他の原核生物中で合成されるものを含む。
【0037】
2つの核酸またはポリペプチド配列の「配列同一性%」を、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.(編)、Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.(編)、Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M.,およびGriffin, H. G.(編)、Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, Academic Press, 1987; ならびにSequence Analysis Primer, Gribskov、およびDevereux(編)、M. Stockton Press, New York, 1991; ならびにCarillo およびLipman, SIAM J. Applied Math. 48:1073, 1988に記載のものなどの公知の方法により容易に算出することができる。
【0038】
同一性を決定するための方法は、公共的に利用可能なコンピュータープログラム中で利用可能である。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータープログラム方法としては、限定されるものではないが、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic Acids Research 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA (Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403, 1990)が挙げられる。よく知られたSmith Watermanのアルゴリズムを用いて、同一性を決定することもできる。BLASTプログラムは、NCBIおよび他の供給源から公共的に入手可能である(BLAST Manual, Altschulら、NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894)。以下のもの:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/unfinishedgenome.html; またはhttp://www.tigr.org/cgi-bin/BlastSearch/blast.cgiなどのURLで検索を実行することができる。これらのソフトウェアプログラムは、種々の置換、欠失、および他の改変に相同性の程度を割り当てることにより、類似する配列を一致させる。典型的には、保存的置換は、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。
【0039】
「ハイブリダイズする」とは、様々なストリンジェンシー条件下で、相補的に対形成された核酸塩基配列、またはその一部を含む二本鎖複合体を形成することを意味する(例えば、WahlおよびBerger, Methods Enzymol. 152:399 (1987); Kimmel, Methods Enzymol. 152:507 (1987)を参照されたい)。
【0040】
「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」とは、ストリンジェントな塩濃度、ストリンジェントな温度の条件下で、またはホルムアミドの存在下であることを意味する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は通常、約750 mM以下のNaClおよび75 mMクエン酸三ナトリウム、好ましくは、約500 mM以下のNaClおよび50 mMクエン酸三ナトリウム、ならびに最も好ましくは、約250 mM以下のNaClおよび25 mMクエン酸三ナトリウムであろう。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを、有機溶媒、例えば、ホルムアミドの非存在下で得ることができるが、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを、少なくとも約35%のホルムアミド、および最も好ましくは、少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、および最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含むであろう。ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、および担体DNAの含有もしくは排除などの様々な追加パラメーターが、当業者にはよく知られている。様々なレベルのストリンジェンシーは、必要に応じてこれらの種々の条件を組み合わせることにより達成される。好ましい実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、750 mM NaCl、75 mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDS中で30℃で起こるであろう。より好ましい実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、500 mM NaCl、50 mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、および100μg/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中、37℃で起こるであろう。最も好ましい実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、250 mM NaCl、25 mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、および200μg/mlのssDNA中、42℃で起こるであろう。これらの条件に対する有用な変更は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0041】
多くの用途にとっては、ハイブリダイゼーション後の洗浄工程もストリンジェンシーが変化するであろう。洗浄ストリンジェンシー条件を、塩濃度および温度により定義することができる。上記のように、洗浄ストリンジェンシーを、塩濃度を低下させるか、または温度を上昇させることにより増加させることができる。例えば、洗浄工程のためのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30 mM以下のNaClおよび3 mMクエン酸三ナトリウム、ならびに最も好ましくは、約15 mM以下のNaClおよび1.5 mMクエン酸三ナトリウムであろう。洗浄工程のためのストリンジェントな温度条件は通常、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、および最も好ましくは、少なくとも約68℃の温度を含むであろう。好ましい実施形態においては、洗浄工程は、30 mM NaCl、3 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、25℃で起こるであろう。より好ましい実施形態においては、洗浄工程は、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、42℃で起こるであろう。最も好ましい実施形態においては、洗浄工程は、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、68℃で起こるであろう。これらの条件に対するさらなる変更は、当業者には容易に明らかとなるであろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者にはよく知られており、例えば、BentonおよびDavis (Science 196:180 (1977)); GrunsteinおよびHogness (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:3961 (1975)); Ausubelら(Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York (2001)); BergerおよびKimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, Academic Press, New York, (1987)); ならびにSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載されている。好ましくは、ハイブリダイゼーションは生理的条件下で起こる。典型的には、相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基間のWatson-Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合であってよい水素結合を介してハイブリダイズする。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を介して対形成する相補的核酸塩基である。
【0042】
「治療用抗体」とは、増殖性疾患を治療するために製剤化された抗体または抗体誘導体を含む医薬組成物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】ILYで処理した場合の赤血球(RBC)の溶解率(%)を示すグラフである。野生型(WT)マウスのものではなく、hCD59RBC+/-マウスのRBCは、ヒトRBCのものに匹敵するレベルで、ex vivoでILYを介する溶解に対して超感受性である。
【図1B】ILY(45 ngのILY/g体重)の尾静脈注入から得られるhCD59RBC+/-中での溶血の誘導を示すグラフである。血液をマウス尾静脈から回収し、以前に記載のようにヘマトクリット値を測定した。
【図1C】5匹のWTマウスに由来するサンプルではなく、5匹のhCD59RBC+/-マウスから回収されたサンプル中での可視的溶血を示す写真である。サンプルを、ILY注入(45 ng/g体重)の10分後にマウス尾静脈から得られたヘマトクリット管中で処理した。
【図1D】ILY投与(45 ngのILY/g体重)の5時間後および1日後の、WTマウスではなくhCD59RBC+/-マウス中でのヘモグロビン尿症を示す写真である。尿を、以前に記載のように代謝ケージ中に回収した。
【図2A】ILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。血清のILYを介する溶血に対するヒト血清の保護効果を評価するために、ILYの連続希釈液を、以前に記載のように異なる種に由来する血清の1〜8倍希釈液と共にインキュベートしたヒトRBCに添加した。
【図2B】ILYカラムから流出した溶出画分の機能的比較としてのILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。ILYカラムからの溶出画分(三角)および流出液(長方形)を透析し、ヒト血清の量と等しい容量まで濃縮し(十字型)、ILYカラム上に載せた。溶血アッセイのILY濃度は、1.6 x 10-9 Mである。このデータは、3回繰り返した実験を表す。
【図2C】ヒト血清からのILY結合タンパク質の単離を示すウェスタンブロットである。レーンを以下のようにロードした:1:0.8μlのヒト血清、2: ILY結合カラム上にロードされたヒト血清からの0.8μlの流出液、3:ILYカラム上にロードされたヒト血清の溶出画分に由来する10μgのタンパク質、4:0.8μlのマウス血清、5:ILY結合カラム上にロードされたマウス血清からの0.8μlの流出液、6:ILYカラム上にロードされたマウス血清の溶出画分に由来する10μgのタンパク質。矢印は、タンパク質配列決定のため切断されたバンドを示す。
【図2D】タンパク質配列決定情報を示す表である。
【図3A】プロテインGカラムを用いるILY結合ヒトIgGのさらなる単離を示すウェスタンブロットである。レーンを以下のようにロードした:1:タンパク質マーカー;2:ILYカラムから溶出した10μlの画分;3:プロテインGカラムを用いるさらなる精製後に溶出した20μlの画分;4:プロテインGカラムを用いるさらなる精製からの20μlの流出液。レーン2、3および4に用いたサンプルを、透析および濃縮により同じ容量に等量化した。レーン2、レーン3およびレーン4の各サンプルの合計の元の容量は等しい。
【図3B】ヒトILY結合IgGの阻害効果を有するILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。ILYカラムから溶出した画分の容量(十字型)、プロテインGカラムを用いるさらなる精製からの溶出液(長方形)、およびプロテインGカラムを用いるさらなる精製からの流出液(三角)を、透析および濃縮により等量化した。溶血アッセイのためのILY濃度は、1.6 x 10-9 Mである。このデータは、3回繰り返した実験を表す。
【図3C】マウスILY結合IgGの阻害効果の非存在下でのILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。ILY結合カラム上にロードされたマウスおよびヒト血清の容量は等しかった。マウス血清からの溶出した画分の合計容量(長方形)、マウス血清からの流出液(十字型)、およびヒト血清からの溶出画分(三角)を、透析および濃縮により等量化した。ILY濃度は、1.6 x 10-9 Mである。
【図3D】ヒトILY結合のFab領域に結合するILYを示すグラフである。200 ngのILYを用いて各ウェルをコーティングした。
【図4A】様々なILY断片を示す図である。各断片中に存在するドメイン(ドメイン1〜4)を示す。ILYドメイン1、2、3および4を、様々な影を有する四角形により表す。
【図4B】HISカラムを用いて細菌発現系から精製された組換えILYを示すクマシーブルーで染色されたSDS-PAGEゲルである。
【図5A】示されたILY断片で処理された細胞の溶解率(%)を示すグラフである。
【図5B】示されたILY断片濃度の関数としての溶解率(%)を示すグラフである。ヒト赤血球を、mILY3およびmILY4と共に、室温で30分間予備インキュベートした後、ILY(1.2 x 10-9 M)に曝露した。ILY断片と共に予備インキュベートしなかった細胞中では、この濃度は100%の細胞溶解を誘導するのに十分である。
【図6】hCD59RBCトランスジェニックマウス赤血球中のmILY3濃度の関数としての溶血率(%)を示すグラフである。抗体で感作されたThCD59RBCおよび野生型RBCを、様々な濃度のmILY3と共に予備インキュベートして、ヒト補体に曝露した。hCD59RBC赤血球中でのヒト補体を介する溶血に対する感受性の増加は、mILY3の濃度と相関する。
【図7】細胞数の関数としての蛍光強度を示すグラフである。影付の曲線は、二次FITC抗体のみで染色されたRAMOS細胞を表す。白い曲線は、抗ヒトCD59抗体およびFITC結合二次抗体で染色された細胞を表す。細胞を、リツキシマブおよび10%血清の示される濃度で処理した。
【図8A】示された濃度のmILY3および51.2μgのリツキシマブと共に予備インキュベートされたRAMOS細胞中でのmILY3ペプチド濃度の関数としての細胞死(%)を示すグラフである。
【図8B】示された濃度のmILY3、10μgのリツキシマブ、および10%の熱不活化ウシ胎仔血清で処理されたRAMOS細胞を含有するサンプル中のトリパンブルーで染色された細胞を示す一連の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一般的には、本発明は、ストレプトコッカス・インターメディウスのインターメジリシン(ILY)タンパク質のドメイン4を含むペプチド断片および抗体に基づく抗癌治療に対して癌細胞を感作するためのこれらの断片の使用を特徴とする。CD59受容体活性は、治療用抗体に対する感受性の低下と関連してきた。ILYドメイン4ポリペプチドの投与は、完全長ILYと関連する全般的な毒性を回避しながら、CD59受容体活性を阻害するのに十分である。
【0045】
I. 投与方法
本発明に従う治療を、単独で、または別の治療と組み合わせて実施することができ、家庭、医師の事務所、診療所、病院の外来診療部門、または病院で提供することができる。必要に応じて、治療は病院で始まるため、医師は治療の効果を密接に観察することができ、必要とされる任意の調整を行うか、または外来患者ベースで開始してもよい。治療の期間は、治療する疾患または障害の型、患者の年齢および症状、患者の疾患の段階および型、ならびにどのように患者が治療に応答するかに依存する。さらに、増殖性疾患を発症する危険性がより高い人は、症候の開始を阻害するか、または遅延させるための治療を受けてもよい。
【0046】
種々の実施形態のための投与経路としては、限定されるものではないが、局所、経皮、経頭蓋、経鼻、および全身投与(静脈内、筋肉内、皮下、吸入、直腸、頬、膣、腹腔内、関節内、眼内、耳、または経口投与など)が挙げられる。本明細書で用いられる「全身投与」とは、全ての非皮膚投与経路を指し、特に、局所および経皮投与経路を除く。
【0047】
用量
本発明のペプチドの用量は、投与方法、治療しようとする疾患、疾患の重篤度、疾患を治療するか、または予防するかどうか、ならびに治療しようとする人の年齢、体重、および健康などのいくつかの因子に依存する。さらに、特定の患者に関する薬理ゲノム(治療剤の薬物動態、薬力学もしくは効力プロフィールに対する遺伝子型の効果)情報も用いられる用量に影響し得る。
【0048】
本発明のペプチドを用いる連続的日投与は必要ないかもしれない。治療計画は薬剤を投与しない期間の周期を要するか、または治療を急性炎症の期間に必要に応じて提供してもよい。
【0049】
上記のように、本発明のペプチドを、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤もしくはシロップ剤の形態で経口的に、または座剤の形態で直腸的に投与することができる。また、前記ペプチドを、気泡、ローション、ドロップ、クリーム、軟膏、皮膚軟化剤、またはゲルの形態で局所的に投与することもできる。化合物の非経口投与を、例えば、塩水溶液の形態で、またはリポソーム中に組込んだ化合物を用いて、好適に実施する。
【0050】
II. 適応症
本発明の組成物および方法は、以下に記載のものなどの望ましくないヒトCD59活性を特徴とする任意の疾患を治療するのに有用である。
【0051】
本発明の化合物および方法は、癌および過剰増殖性細胞を特徴とする他の障害(増殖性疾患)の治療にとって有用である。これらの実施形態においては、ILYドメイン4ポリペプチドを、CD59を発現する新生物に直接的に、または新生物を有する被験体に全身的に投与することができる。好ましくは、ILYドメイン4ポリペプチドを、抗癌治療用抗体と共に投与する。
【0052】
別の実施形態においては、ILYドメイン4ポリペプチドを、CD59の細胞表面発現を特徴としない増殖性障害と診断された患者に投与することができる。ここで、ILYドメイン4ポリペプチドを、抗癌治療用抗体と共に投与して、治療用抗体に基づく治療に対する耐性を防止する。
【0053】
治療を、単独で、または別の治療(例えば、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、抗血管新生療法、もしくは遺伝子療法)と組み合わせて実施することができる。治療期間は、治療する疾患もしくは障害の型、患者の年齢および症状、患者の疾患の段階および型、ならびに患者が治療にどのように応答するかに依存する。治療を、患者の身体が未だに認められていない副作用からの回復の機会を得るように、休息期間を含む断続的周期で与えることができる。本発明の方法および組成物は、他の方法および組成物よりも有効であるのが望ましい。「より有効である」とは、方法、組成物、またはキットが、比較する別の方法、組成物、もしくはキットより高い効力を示し、より毒性が低い、より安全であり、より便利であり、より寛容性が高く、もしくはより費用が安いか、またはより高い治療満足度を提供することを意味する。
【0054】
癌としては、限定されるものではないが、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、ならびに肉腫および癌腫などの固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頸部癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)が挙げられる。
【0055】
III. 抗癌治療用抗体
本発明は、治療用抗体と組み合わせたILYドメイン4ポリペプチドの投与を介する増殖性疾患の治療を特徴とする。ILYドメイン4ポリペプチドの投与は、補体を介する細胞溶解に対する抗体治療により標的化される細胞を感作する。本発明の方法における使用のための治療用抗体の例を表1に記載する。
【表1】
【0056】
上記の抗体および適応症に加えて、本発明は、ヒトCD59活性の阻害により増強することができる任意の治療と組み合わせたILYドメイン4ポリペプチドの同時投与を特徴とする。
【0057】
IV. 実験結果
ストレプトコッカス・インターメディウス(SI)は、正常なヒト口腔微生物叢の一部であり、肝臓および脳の膿瘍を引き起こし得る。SIにより分泌されるILYは、CD59陽性ヒト細胞に特異的に結合し、これを溶解する。本発明者らの結果は、任意の他の試験した種に由来する血清ではなく、ヒト血清が、ILYの溶解機能を中和できることを証明する。本発明者らは、ex vivoおよびin vivoでのILYを介する溶血に対する機能的阻害効果を示すヒト血清から精製されたILY結合ヒト免疫グロブリン(IgG)を同定した。
【0058】
抗CD59抗体を用いるFACS分析およびRT-PCRを用いて、タンパク質およびmRNAレベルの両方で脂肪細胞の表面上でCD59発現が検出された。CD59はまた、精子細胞中でも高度に発現され、男性の生殖能力において重要な役割を果たすと疑われてきた。マウスCD59発現における欠損は、男性の生殖能力の進行的喪失をもたらし、男性の生殖におけるCD59の役割を示唆している。
【0059】
CD59はまた、前立腺腫、乳腺腫および胃腺腫ならびに腸型胃癌、ならびにB細胞リンパ腫などの様々な癌細胞中で高度に発現される。新生物細胞中でのCD59のより高い発現レベルは、特定の化学療法剤に対する細胞耐性と相関していた。本発明者らは、ILYがヒトCD59に特異的に結合し、細胞表面上にヒトCD59を発現するヒト細胞を溶解することを証明した。本発明者らは、ヒトが特異的免疫を生じ、ILYを介する細胞溶解から細胞を保護することを見出した。
【0060】
1. 実験モデル
本発明者らは、His Bind Purification Kit (Novagen)を用いて、細菌から組換えILYを発現させ、精製するためにHisタグ付ILYを含むプラスミドを用いた。hCD59がヒトRBC中でILYの唯一の受容体であることを示すために、本発明者らは、hCD59RBCを用いてex vivoおよびin vivo実験を行った。
【0061】
ex vivo試験については、本発明者らは、hCD59RBCトランスジェニックマウスのRBC中でのhCD59の発現により、hCD59RBC+/- mRBCがILYを介する溶解に対して超感受性になることを証明した。この溶解は、ヒトRBCのILYを介する溶解のレベルに匹敵する(図1A)。WT mRBCは、ILYを介する溶解に対して抵抗性である。in vivo試験については、本発明者らは、尾静脈注入により様々な用量のILYを投与した。ILYの3つの異なる用量(95、47、30 ng/g体重)を用いて、hCD59RBCトランスジェニックマウスのILYに誘導される細胞死の割合は、それぞれ、100%(15/15動物)、50%(8/16動物)および0%(0/6動物)であった。このデータに基づいて、本発明者らは、本発明者らのin vivo実験において、95 ng ILY/g体重の用量を致死用量(LD100)と考える。
【0062】
最も高いレベルの治療(3000 ng ILY/g体重)でも、WTマウス(0/6動物)に由来するRBCにおける細胞死は観察されなかった。ヘマトクリット値の低下ならびに可視的溶血およびヘモグロビン尿症により証明されるように、45 ng ILY/g体重の注入により、WTマウスではなく、hCD59RBC+/-において大量の溶血が誘導された。図1Bは、ILY注入の10分後、1日後、および4日後に、WTマウスと比較して、hCD59RBC+/-においてヘマトクリット値が有意に低下したことを示す。ILY注入の10分後に、5匹のWTマウスではなく、5匹のhCD59RBC+/-マウスにおいて可視的溶血が認められた(図1C)。ILY注入の5時間後および1日後に回収した場合、WTマウスではなく、hCD59RBC+/-に由来する尿において可視的ヘモグロビン尿症が認められた(図1D)。
【0063】
2. ヒト血清におけるインヒビターはILYの溶解効果を中和する
SIは、(1)正常なヒト口腔微生物叢の一部であり、(2)肝臓および脳の膿瘍を引き起こし、ならびに(3)ヒト細胞の表面中のhCD59の存在に起因して、該細胞を特異的に溶解するILYを分泌するため、本発明者らは、ヒトが、ILYを介する細胞溶解および病原性SI感染に対して保護するいくらかの免疫防御を生じ得ることを提唱する。この仮説を試験するために、本発明者らは、ヒトRBCを用いる溶血アッセイを行った。ヒトRBCを様々な濃度のILYと、様々な種に由来するPBS中の血清の1〜8倍希釈液と共にインキュベートした。図2Aは、他の11種の動物に由来する血清ではなく、ヒト血清がILYを介するヒトRBC溶解を有意に阻害したことを示す。
【0064】
ヒト血清からインヒビターを単離するために、本発明者らはILY結合セファロースカラムを用いた。溶血アッセイにより、本発明者らは、ヒト血清の流出液ではなく溶出画分が、ILYを介する溶血からヒトRBCを保護する機能的活性を有することを検証した(図2B)。ILYに結合した特異的タンパク質を、SDS-PAGEゲル上で分離し(図2C)、タンパク質配列決定のために単離した。本発明者らは、ヒトおよびマウス血清のILY溶出画分中にIgGを見出した。MAC-2BPタンパク質は、ヒト血清のILY溶出画分中にのみ認められた(図2D)。
【0065】
3. ILYインヒビターの単離およびその保護効果
MAC-2BPおよびSP40からヒトIgGまたはマウスIgGを分離するために、本発明者らは、IgGに結合する、プロテインGカラムと共にILY結合カラムから溶出された画分をさらに精製した(図3B)。本発明者らは溶血アッセイを用いて、ILYカラムおよびプロテインGカラム上で精製されたヒト血清に由来する溶出画分の機能的活性を試験した。図3Bは、プロテインGカラムに由来する溶出画分が、ILYカラムに由来する溶出画分のものと類似する機能的活性を有することを示す。本発明者らは、1 mlの各種の血清から、約300μgのILY結合ヒトIgGまたはマウスIgGを精製した。通常、ヒト血清中に、平均12 mg/mlの総ヒトIgGが存在する。従って、2.5%の総ヒトIgGがILYに結合することができる。マウス血清ではなく、ヒト血清に由来するILY結合IgGのみが、ILYを介する溶血からhRBCを保護する機能的活性を有する(図3B)。ILY結合マウスIgGはILYを介する溶解に対するいかなる保護活性も有さない(図3C)。
【0066】
ILYに特異的に結合する2.5%のマウスIgGがILYを介する細胞溶解を遮断しない理由に関する可能性のある説明は以下の通りである。第1に、SIはヒトにおいてのみ正常な微生物叢の一部であり、マウスや他の動物においてはそうではない。かくして、ヒト免疫系をILYに曝露し、ドメイン4(hCD59の結合部位)などのILYの機能的ドメインに特異的な抗体を産生させることができる。第2に、ILYと、ヒトおよび他の動物において正常微生物叢であるクロストリジウム、ストレプトコッカス、リステリア、およびバチルス属内の種を含む他のグラム陽性細菌により産生される細胞溶解毒素に対する抗体との交差反応性が存在し得る。ILYを含むこの毒素ファミリーのメンバーは、一次配列レベルで40〜80%の類似性を示す。ヒトおよび他の動物は、様々なこれらの毒素にとって特異的な抗体を産生し得る。これらの抗体は、ILY機能を中和するだけでなく、ILYの様々な領域と交差反応し得る可能性がある。
【0067】
このILY結合ヒトIgG分子がILYに結合する部分をさらに決定するために、200 ngのILYを用いて、96穴プレート中のウェルを被覆した後、ILY結合カラム上にロードされたヒト血清に由来する溶出液の連続希釈液と共にインキュベートした。飽和量の二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG FabまたはFcフラグメント-HRP抗体)を用いて、ILY被覆ウェルをヒト血清溶出液の連続希釈液と共に予備インキュベートした後、ウェル中の遊離結合部位を検出した。図3Dは、抗ヒトFab二次抗体よりも抗ヒトFc二次抗体のための遊離結合部位が有意により多いことを示す。この結果は、ILY結合ヒトIgGがILYに結合する部位が、Fab領域中に存在することを示唆している。さらに、ELISAを用いて、本発明者らは、ILYがヒトIgGのFc領域に結合しないことを証明した。この方法においては、ILYを用いて、96穴プレート中のウェルを被覆し、このウェルを様々な濃度の市販のヒトFcフラグメントと共にインキュベートし、抗ヒトFcフラグメント-HRP抗体を用いて、Fcフラグメント結合を検出した。この結果はさらに、ILY結合ヒトIgGがFab領域によりILYに結合するという結論をさらに支持する。
【0068】
ILY結合ヒトIgGのin vivoでの効果を決定するために、本発明者らは最初に、様々な用量のILY結合ヒトIgGの静脈内(IV)注入によりhCD59RBC+/-を処理した。15分後、本発明者らは、これらのマウスに285 ng ILY/g体重を注入した(未処理のhCD59RBC+/-マウス中で3倍致死用量(LD)のILY)。本発明者らは、1および0.75μgのILY結合ヒトIgG/g体重で予備処理されたhCD59RBC+/-の生存率(%)が、それぞれ89%(8/9)および62.5%(5/8)であることを見出した。この結果は、ILY結合ヒトIgGがin vivoでILY機能を遮断することを確認し、抗ILY抗体がSI感染症の治療にとって有用であり得ることを示唆している。
【0069】
4. 改変された組換えILYの機能的活性
本発明者らは、改変された組換えILY断片(mILY1-4)のパネルを作製した。該断片をコードする配列を、該断片がHisタグに融合されるように発現ベクター中にクローニングした(図4A)。mILY1断片は、ILYのN末端で欠失された約80アミノ酸を有する。mILY2断片は、ILYのN末端で欠失された約200アミノ酸を有する。これらのタンパク質を、大腸菌発現系中で発現させ、Hisカラムによりさらに精製した(図4B)。
【0070】
これらの断片を、上記のヒトRBC溶解アッセイ中において試験した。mILY1断片は、完全長ILYと類似する溶解活性を保持する。mILY2断片は、完全長ILYの溶解活性の1%未満を保持していた。mILY3およびmILY4断片は、103倍より高い濃度でもRBCの溶解を誘導しなかった(図5A)。
【0071】
mILY3またはmILY4のいずれかが完全長ILYの溶解効果を遮断することができるかどうかを試験するために、ヒト赤血球を様々な濃度のmILY3またはmILY4と共に予備インキュベートした後、完全長ILYと共にインキュベートした。予備インキュベーション後、mILY3断片はILYを介する溶解を遮断した(図5B)。これらのデータは、ドメイン4全体を含むmILY3が、ヒトCD59への結合に関する機能的特徴を保存することを示す。
【0072】
図6は、ILY3とThCD59RBCとの予備インキュベーションは、補体を介する溶血に対するhCD59RBCトランスジェニックマウス赤血球の感受性を増加させることを示す。この結果は、ILY3がhCD59機能を遮断することを確認する。
【0073】
5. RAMOS膜中でhCD59を過剰発現するリツキシマブ耐性RAMOS細胞系の作製
Takeiら(Leuk Res 30, 625-31 (2006))において開発された手順に従うことにより、本発明者らは、ヒトCD59を過剰発現するリツキシマブ耐性RAMOS細胞系を確立した。RAMOS、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞系を、in vitroで補体(ヒト血清)および徐々に増加する濃度のリツキシマブに繰り返し曝露した。これらの耐性細胞上でのCD59の発現を、フローサイトメトリーにより分析した。徐々に増加する濃度のリツキシマブ(0.2、0.8、3.2、12.8および51.2μg/ml)ならびに10%のヒト血清に対して抵抗性であるRAMOS細胞は、高レベルのヒトCD59を徐々に発現する(図7)。
【0074】
6. mILY3はリツキシマブ耐性RAMOS細胞中でのリツキシマブに対する耐性を低下させる
ILYのドメイン4から誘導されるペプチドがhCD59機能を阻害し、癌のリツキシマブ治療を容易にすることができるかどうかを試験するために、本発明者らは、mILY3を、最も高いレベルのヒトCD59を発現する51.2μg/mlのリツキシマブに耐性の細胞と共にインキュベートした。51.2μg/mlのリツキシマブに耐性のRAMOS細胞を、様々な濃度のmILY3(配列番号1)、10μg/mlのリツキシマブ、および10%のヒト血清で1時間処理し、死細胞を決定するための標準的な方法であるトリパンブルーを用いて細胞死を決定した(図8B)。
【0075】
様々な用量のmILY3で処理したRAMOS細胞は、mILY3で処理しなかった細胞と比較して、有意に増加した細胞死(%)を示した(図8Aおよび8B)。mILY3のIL50を、33 nMで算出した。これらのデータは、ILYドメイン4から誘導された、mILY3(配列番号1)が、in vitroでリツキシマブ耐性細胞中のリツキシマブ耐性を低下させることを示す(図2Aおよび2B)。有意には、様々な濃度のmILY3のみによるRAMOS細胞の処理は、細胞死を誘導せず(図8)、mILY3は単独ではこれらの細胞に対する毒性効果を有さないことを示唆している。
【0076】
他の実施形態
記載された本発明の方法および組成物の様々な改変および変更が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本発明を特定の望ましい実施形態と共に説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明がそのような特定の実施形態に過度に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際、医学、免疫学、薬理学、内分泌学の分野、または関連する分野における当業者には明らかである本発明を実行するための記載の様式の様々な改変は、本発明の範囲内にあると意図される。
【0077】
本明細書で言及される全ての刊行物は、それぞれの独立した刊行物が具体的かつ個々に参照により本明細書に組み入れられるのと同じ程度まで参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は異常細胞の未制御の増殖を特徴とする疾患である。癌細胞は、限界ある寿命を有する正常細胞においては課される障壁を克服したものであり、無制限に増殖する。癌細胞の増殖が続くにつれて、癌性細胞自身が、より進行的な増殖表現型を続行するようになるまで、遺伝子変化が持続する。治療しないまま放置すれば、リンパ系または血流による体内の遠くの領域への癌細胞の拡散、すなわち、転移が、健康な組織を確実に破壊し得る。
【0003】
CD59は、いくつかの癌細胞中で過剰発現されるグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合膜タンパク質である。CD59活性は、補体タンパク質C8およびC9に結合し、C9取込みおよび重合を防止することにより、補体の膜攻撃複合体(MAC)の形成を阻害する。補体は、抗体を介する癌細胞溶解のための主要なメディエーターである。CD59の上方調節および高い発現は、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療に用いられる抗CD20キメラMAbリツキシマブへの耐性などの抗体を介する癌治療に対する耐性のための主な理由の1つであると考えられる。
【0004】
ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)のインターメジリシン(ILY)は、感染症の発病において重要な役割を果たすと長く疑われていた、ストレプトコッカス・インターメディウス(SI)により分泌されるコレステロール依存的細胞溶解素である。グラム陽性細菌であるSIは、口および内部器官、特に、脳および肝臓における化膿性感染を引き起こし得る。脳および肝臓におけるSIによる感染は、膿瘍を誘導し得る。ILYは、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)により分泌されるニューモリシンとしてコレステロール依存的細胞溶解素ファミリーに割当てられており、ヒト赤血球に対してのみ特異的溶血活性を示すが、他の動物赤血球に対しては活性を示さない。
【発明の概要】
【0005】
一態様においては、本発明は、ILYドメイン4ポリペプチドを含む実質的に純粋なポリペプチドを特徴とする。
【0006】
別の態様においては、本発明は、実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドと治療用抗体を含む医薬組成物を特徴とする。
【0007】
別の態様においては、本発明は、実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドと治療用抗体を患者に投与することにより、増殖性疾患の治療を必要とする患者(例えば、ヒト)において増殖性疾患(例えば、CD59を発現する新生物細胞を特徴とする増殖性疾患)を治療する方法を特徴とする。ILYドメイン4ポリペプチドおよび治療用抗体を、共に増殖性疾患を治療するのに十分である量で、同時に、または互いに14日以内に投与する。この態様においては、ILYドメイン4ポリペプチドおよび治療用抗体を、一緒に、または別々に製剤化することができる。
【0008】
前記態様のいずれにおいても、実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドは、配列番号1および配列番号2から選択される配列、またはその断片を含んでもよい。この態様においては、前記断片は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上のアミノ酸長であってよい。この断片は、531、500、400、300、200、100、50、40、30、20、10以下のアミノ酸長であってもよい。
【0009】
前記態様のいずれにおいても、治療用抗体は、例えば、リツキシマブ、MT201、17-1A、ハーセプチン、アレムツズマブ、lym-1、ベバシズマブ、セツキシマブ、またはIL-2受容体αに対するモノクローナル抗体であってよい。
【0010】
「患者」とは、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ブタ、ウマ、イヌ、ネコまたはラットを意味する。
【0011】
「インターメジリシン」または「ILY」とは、ストレプトコッカス・インターメディウスのインターメジリシンポリペプチドの活性を有するポリペプチドを意味する。ILYを、ストレプトコッカス・インターメディウスから精製するか、または組換え生産することができる。ILYの核酸配列に対応するGenbankアクセッション番号の例はAB029317であり、ILYのポリペプチド配列に対応するGenbankアクセッション番号の例はBAE16324である。ILYとは、ILYポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドも意味する。さらに、およびあるいは、ILYは高ストリンジェントな条件下でILYの核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドと定義される。ILYを、任意のストレプトコッカス・インターメディウス株(例えば、株1208-1、UNS35、UNS46、およびATCC27335)から単離することができる。
【0012】
「ILYポリペプチドのドメイン4」または「ILYドメイン4ポリペプチド」とは、ILYドメイン4ポリペプチドの活性を有するILYの断片を含むタンパク質を意味する。この定義から特に排除されるのは、Genbankアクセッション番号BAE16324を有する完全長ILYタンパク質である。この用語は、ペプチド配列GALTLNHDGAFVARFYVYWEELGHDADGYETIRSRSWSGNGYNRGAHYSTTLRFKGNVRNIRVKVLGATGLAWEPWRLIYSKNDLPLVPQRNISTWGTTLHPQFEDKVVKDNTD (配列番号1)もしくはRNIRVKVLGATGLAWEPWRLIYSKNDLPLVPQRNISTWGTTLHPQFEDKVVKDNTD (配列番号2)を含むタンパク質、またはILYドメイン4活性を有する断片を含むことを意味する。ILYドメイン4ポリペプチドとは、配列番号1または2に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドも意味する。さらに、およびあるいは、ILYドメイン4ポリペプチドは、高ストリンジェンシー条件下でILYドメイン4ポリペプチドの核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドと定義される。この用語はまた、ILYドメイン4ポリペプチド中のアミノ酸残基の任意の保存的置換を含むことを意味する。用語「保存的置換」とは、化学的に類似する残基によるアミノ酸残基の置換、例えば、疎水性残基の別の疎水性残基への置換、荷電した残基の別の荷電した残基への置換などを指す。非極性R基の保存的置換の例は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンである。極性であるが、非荷電R基の置換の例は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、またはグルタミンである。負に荷電したR基の置換の例は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。正に荷電したR基の置換の例は、リジン、アルギニン、またはヒスチジンである。さらに、用語「ILYドメイン4ポリペプチド」は、非天然アミノ酸による保存的置換を含む。この用語は、完全長ILYを明確に排除する。
【0013】
「断片」とは、参照ポリペプチドの全長の好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上を含むポリペプチドの一部を意味する。断片は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または114個以上のアミノ酸を含んでもよい。
【0014】
「ILYドメイン4活性」とは、ヒトCD59に拮抗するが、本明細書に記載の溶解アッセイにおいてヒト赤血球(RBC)の実質的溶解を直接引き起こさないペプチドの活性を意味する。
【0015】
「ヒトCD59に拮抗する」とは、補体タンパク質C8およびC9に結合するヒトCD59を減少させ、補体の膜攻撃複合体(MAC)の形成の増加をもたらすことを意味する。
【0016】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」とは、本明細書に記載のように、天然もしくは非天然のポリペプチドもしくはペプチドの全部もしくは一部を構成する、翻訳後修飾(例えば、糖鎖付加もしくはリン酸化)に関係なく、3個以上の天然または非天然アミノ酸の任意の鎖を意味する。
【0017】
本明細書で用いられるように、天然アミノ酸は、天然タンパク質中で通常生じるものなどのL-配置を有する天然のα-アミノ酸である。非天然アミノ酸とは、通常はタンパク質中に生じないアミノ酸、例えば、L配置を有する天然のα-アミノ酸のエピマー、すなわち、非天然のD-配置を有するアミノ酸、もしくはその(D,L)-異性体混合物;またはそのようなアミノ酸の相同体、例えば、β-アミノ酸、α,α-二置換アミノ酸、またはアミノ酸側鎖が1個以上のメチレン基により短縮されたか、もしくは10個以下の炭素原子に延長されたα-アミノ酸、例えば、線状鎖中に5〜10個の炭素原子を有するα-アミノアルカノン酸、非置換もしくは置換芳香族(α-アリールもしくはα-アリール低級アルキル)、例えば、置換フェニルアラニンもしくはフェニルグリシンを指す。
【0018】
本明細書で用いられる「本発明のペプチド」とは、ILYドメイン4ポリペプチドのアミノ酸配列を含み、ペプチド結合により連結され、未保護の形態にある天然アミノ酸のみを含む線状化合物を指す。
【0019】
本発明はまた、本発明のペプチドの誘導体も提供する。そのような誘導体は、線状もしくは環状であってよく、非天然アミノ酸を有するペプチドを含む。本発明の誘導体はまた、本発明のペプチドが、置換、化学的、酵素的もしくは他の好適な手段により、別の原子または別のペプチドもしくはタンパク質を含む部分を用いて非共有的または好ましくは共有的に改変された分子も含む。この部分は、それが非天然アミノ酸であるか、または1個以上の天然アミノ酸が別の天然もしくは非天然アミノ酸で置換されている点で、上記で定義された本発明のペプチドにとって「外来」であってよい。別のペプチドもしくはタンパク質に共有結合された本発明のペプチドもしくは誘導体を含むコンジュゲートも、本明細書に包含される。別の部分の結合は、リンカーまたはスペーサー、例えば、アミノ酸またはペプチドリンカーを含んでもよい。本発明の誘導体はまた、1個、数個、または全部の可能性のある反応基、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、またはヒドロキシル基が保護された形態にあるペプチドを含む。
【0020】
本発明のペプチドを誘導体化する原子または部分は、分析目的で役立つ、例えば、本発明のペプチドの検出、該ペプチドの好ましい調製もしくは精製を容易にするか、または本発明の目的にとって明らかであるペプチドの特性を改善することができる。そのような特性としては、ヒトCD59への結合またはin vivoでの投与のための好適性、特に、酵素的分解に対する溶解性もしくは安定性が挙げられる。本発明の誘導体は、本発明のペプチドと別の化学部分との共有的もしくは凝集的コンジュゲート、本発明の非誘導体化ペプチドと本質的に同じ活性を示す誘導体、および本発明の任意のアミノ酸の三次元構造と類似するようにモデル化された「ペプチド模倣小分子」を含む。そのような模倣物質の例は、レトロ-インベルソ(retro-inverso)ペプチド(Chorevら、Acc. Chem. Res. 26: 266-273, 1993)である。公知の製薬上活性な化合物に対する模倣物質の設計は、「リード」化合物に基づく薬剤の設計に対する公知の手法である。これは、例えば、「元の」活性化合物を合成するのが難しいか、もしくは高価である場合、またはそれが特定の様式の投与にとって好適ではない、例えば、ペプチドは消化管中でプロテアーゼにより迅速に分解される傾向があるため、経口組成物にとって好適ではない活性薬剤であると考えられる場合に望ましい。
【0021】
上記の一般的定義内の誘導体のさらなる例としては、以下のものが挙げられる。
【0022】
(I)ジスルフィド架橋、チオエーテル架橋を有する化合物、またはラクタムなどの環状ペプチドまたは誘導体。典型的には、ジスルフィド結合を含む環状誘導体は、L-システインまたはD-システインであってよい2個のシステインを含むであろう。有利には、N末端アミノ酸およびC末端アミノ酸は両方ともシステインである。そのような誘導体においては、システインの代わりに、ペニシラミン(β,β-ジメチル-システイン)を用いることができる。チオエーテル架橋を含むペプチドは、例えば、一方の末端に遊離システイン残基を有し、他方の末端にブロモ含有構成単位(例えば、ブロモ酢酸)を有する出発化合物から取得できる。環状化を、システインの側鎖の選択的脱保護により、固相上で実行することができる。環状ラクタムを、例えば、グルタミン酸のγ-カルボキシ基と、リジンのε-アミノ基の間で形成させることができる。グルタミン酸の代わりに、アスパラギン酸を用いることができる。リジンの代わりに、オルニチンまたはジアミノ酪酸を用いることができる。また、C末端のアスパラギン酸もしくはグルタミン酸の側鎖とN末端アミノ酸のα-アミノ基の間でラクタムを作製することもできる。この手法は、β-アミノ酸(例えば、β-アラニン)にも拡張可能である。あるいは、N末端またはC末端のグルタミン残基を、側鎖窒素原子間でアルケネジル鎖と繋ぐことができる(Phelanら、J. Amer. Chem. Soc. 119:455-460, 1997)。
【0023】
(II)置換により改変された本発明のペプチド。一例においては、1個以上、好ましくは1個もしくは2個のアミノ酸を、別の天然もしくは非天然アミノ酸、例えば、対応するD-類似体、もしくは模倣物質と置換する。例えば、PheもしくはTyrを含むペプチドにおいては、PheもしくはTyrを、別の構成単位、例えば、別のタンパク質原性アミノ酸、または構造的に関連する類似体と置換することができる。特定の改変は、ペプチド中のコンフォメーションが維持されるようなものである。例えば、アミノ酸を、α,α-二置換アミノ酸残基(例えば、α-アミノイソ酪酸、1-アミノ-シクロプロパン-1-カルボン酸、1-アミノ-シクロペンタン-1-カルボン酸、1-アミノ-シクロヘキサン-1-カルボン酸、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、および1-アミノ-シクロヘプタン-1-カルボン酸)により置換することができる。
【0024】
(III)酵素、蛍光マーカー、化学発光マーカー、金属キレート、常磁性粒子、ビオチンなどで検出可能に標識された本発明のペプチド。そのような誘導体においては、本発明のペプチドを、直接的に、またはスペーサーもしくはリンカー基、例えば、(ペプチド性)親水性スペーサーにより、コンジュゲーションパートナーに結合させる。有利には、前記ペプチドをNまたはC末端アミノ酸に結合させる。例えば、ビオチンを、セリン残基またはテトラマーSer-Gly-Ser-Glyを介して、本発明のペプチドのN末端に結合させることができる。
【0025】
(IV)アミノ保護基、例えば、アセチル、またはカルボキシ保護基などの潜在的に反応性の側鎖基に1個以上の保護基を担持する本発明のペプチド。例えば、本発明の化合物のC末端カルボキシ基を、カルボキサミド官能基の形態で存在させることができる。好適な保護基は、当業界で一般的に公知である。そのような基を導入して、例えば、タンパク質溶解的分解に対する前記化合物の安定性を増強することができる。
【0026】
本発明のペプチドの「誘導体」とは、該ペプチドの改変または通常は該ペプチドの一部ではない追加の化学部分を含む化合物をも意味する。前記ペプチドの標的化されたアミノ酸残基と、選択された側鎖または末端残基と反応することができる有機誘導体化剤とを反応させることにより、改変を分子中に導入することができる。誘導体化の方法を以下に記載する。
【0027】
最も一般的には、システイニル残基を、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロ酢酸(および対応するアミン)と反応させて、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得る。また、システイニル残基を、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルリン酸、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリ安息香酸、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応により誘導体化する。
【0028】
一般的には、ジエチルプロカーボネートはヒスチジル側鎖にとって比較的特異的であるため、pH 5.5-7.0でのこの薬剤との反応により、ヒスチジル残基を誘導体化する。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用である;この反応を、pH 6.0で0.1 Mカコジル酸ナトリウム中で行うのが好ましい。
【0029】
リジニルおよびアミノ末端残基を、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの薬剤を用いる誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α-アミノを含有する残基を誘導体化するための他の好適な試薬としては、イミドエステル、例えばメチルピコリニミデート;リン酸ピリドキサル;ピリドキサル;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソウレア;2,4-ペンタンジオン;およびグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0030】
1種または数種の従来の試薬、特に、フェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応により、アルギニル残基を改変する。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基のpKaが高いため、アルカリ条件下で反応を行う必要がある。さらに、これらの試薬は、リジンの基ならびにアルギニンのε-アミノ基と反応し得る。
【0031】
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)を、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R'--N--C--N--R')との反応により選択的に改変する。アスパルチルおよびグルタミル残基を、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換することができる。
【0032】
グルタミニルおよびアスパラギニル残基を、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基に脱アミド化することが多い。あるいは、これらの残基を穏やかな酸性条件下で脱アミド化する。これらの残基のいずれかの形態も、本発明の範囲内にある。
【0033】
ポリペプチドまたはその誘導体を、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合ポリペプチドとして、別のタンパク質またはペプチドに融合または結合させることができる。他の一般的に用いられる融合ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、マルトース結合タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)プロテインA、ポリヒスチジン、およびセルロース結合タンパク質が挙げられる。
【0034】
ペプチドの「ペプチド模倣小分子」とは、ペプチド自身と実質的に同じILYドメイン4活性を示す小分子を意味する。
【0035】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、それに天然に付随する成分から分離されたポリペプチドまたはペプチドを意味する。典型的には、前記ポリペプチドは、それが天然に結合したタンパク質および天然の有機分子から、少なくとも60重量%遊離された場合、実質的に純粋である。好ましくは、前記ポリペプチドは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%純粋であるILYドメイン4ポリペプチドである。実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドを、例えば、天然の起源(例えば、線維芽細胞、神経細胞、もしくはリンパ球)からの抽出により、ILYドメイン4ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現により、または該ポリペプチドを化学的に合成することにより取得することができる。任意の好適な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により、純度を測定することができる。
【0036】
タンパク質は、それがその天然の状態でそれに付随する夾雑物から分離された場合、天然に結合した成分を実質的に含まない。かくして、化学的に合成されるか、またはそれが天然に生じる細胞とは異なる細胞系中で産生されるタンパク質は、その天然に結合した成分を実質的に含まないであろう。従って、実質的に純粋なポリペプチドは、真核生物に由来するが、大腸菌または他の原核生物中で合成されるものを含む。
【0037】
2つの核酸またはポリペプチド配列の「配列同一性%」を、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.(編)、Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.(編)、Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M.,およびGriffin, H. G.(編)、Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, Academic Press, 1987; ならびにSequence Analysis Primer, Gribskov、およびDevereux(編)、M. Stockton Press, New York, 1991; ならびにCarillo およびLipman, SIAM J. Applied Math. 48:1073, 1988に記載のものなどの公知の方法により容易に算出することができる。
【0038】
同一性を決定するための方法は、公共的に利用可能なコンピュータープログラム中で利用可能である。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータープログラム方法としては、限定されるものではないが、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic Acids Research 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA (Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403, 1990)が挙げられる。よく知られたSmith Watermanのアルゴリズムを用いて、同一性を決定することもできる。BLASTプログラムは、NCBIおよび他の供給源から公共的に入手可能である(BLAST Manual, Altschulら、NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894)。以下のもの:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/unfinishedgenome.html; またはhttp://www.tigr.org/cgi-bin/BlastSearch/blast.cgiなどのURLで検索を実行することができる。これらのソフトウェアプログラムは、種々の置換、欠失、および他の改変に相同性の程度を割り当てることにより、類似する配列を一致させる。典型的には、保存的置換は、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。
【0039】
「ハイブリダイズする」とは、様々なストリンジェンシー条件下で、相補的に対形成された核酸塩基配列、またはその一部を含む二本鎖複合体を形成することを意味する(例えば、WahlおよびBerger, Methods Enzymol. 152:399 (1987); Kimmel, Methods Enzymol. 152:507 (1987)を参照されたい)。
【0040】
「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」とは、ストリンジェントな塩濃度、ストリンジェントな温度の条件下で、またはホルムアミドの存在下であることを意味する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は通常、約750 mM以下のNaClおよび75 mMクエン酸三ナトリウム、好ましくは、約500 mM以下のNaClおよび50 mMクエン酸三ナトリウム、ならびに最も好ましくは、約250 mM以下のNaClおよび25 mMクエン酸三ナトリウムであろう。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを、有機溶媒、例えば、ホルムアミドの非存在下で得ることができるが、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを、少なくとも約35%のホルムアミド、および最も好ましくは、少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、および最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含むであろう。ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、および担体DNAの含有もしくは排除などの様々な追加パラメーターが、当業者にはよく知られている。様々なレベルのストリンジェンシーは、必要に応じてこれらの種々の条件を組み合わせることにより達成される。好ましい実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、750 mM NaCl、75 mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDS中で30℃で起こるであろう。より好ましい実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、500 mM NaCl、50 mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、および100μg/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中、37℃で起こるであろう。最も好ましい実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、250 mM NaCl、25 mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、および200μg/mlのssDNA中、42℃で起こるであろう。これらの条件に対する有用な変更は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0041】
多くの用途にとっては、ハイブリダイゼーション後の洗浄工程もストリンジェンシーが変化するであろう。洗浄ストリンジェンシー条件を、塩濃度および温度により定義することができる。上記のように、洗浄ストリンジェンシーを、塩濃度を低下させるか、または温度を上昇させることにより増加させることができる。例えば、洗浄工程のためのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30 mM以下のNaClおよび3 mMクエン酸三ナトリウム、ならびに最も好ましくは、約15 mM以下のNaClおよび1.5 mMクエン酸三ナトリウムであろう。洗浄工程のためのストリンジェントな温度条件は通常、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、および最も好ましくは、少なくとも約68℃の温度を含むであろう。好ましい実施形態においては、洗浄工程は、30 mM NaCl、3 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、25℃で起こるであろう。より好ましい実施形態においては、洗浄工程は、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、42℃で起こるであろう。最も好ましい実施形態においては、洗浄工程は、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、68℃で起こるであろう。これらの条件に対するさらなる変更は、当業者には容易に明らかとなるであろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者にはよく知られており、例えば、BentonおよびDavis (Science 196:180 (1977)); GrunsteinおよびHogness (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:3961 (1975)); Ausubelら(Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York (2001)); BergerおよびKimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, Academic Press, New York, (1987)); ならびにSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載されている。好ましくは、ハイブリダイゼーションは生理的条件下で起こる。典型的には、相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基間のWatson-Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合であってよい水素結合を介してハイブリダイズする。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を介して対形成する相補的核酸塩基である。
【0042】
「治療用抗体」とは、増殖性疾患を治療するために製剤化された抗体または抗体誘導体を含む医薬組成物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】ILYで処理した場合の赤血球(RBC)の溶解率(%)を示すグラフである。野生型(WT)マウスのものではなく、hCD59RBC+/-マウスのRBCは、ヒトRBCのものに匹敵するレベルで、ex vivoでILYを介する溶解に対して超感受性である。
【図1B】ILY(45 ngのILY/g体重)の尾静脈注入から得られるhCD59RBC+/-中での溶血の誘導を示すグラフである。血液をマウス尾静脈から回収し、以前に記載のようにヘマトクリット値を測定した。
【図1C】5匹のWTマウスに由来するサンプルではなく、5匹のhCD59RBC+/-マウスから回収されたサンプル中での可視的溶血を示す写真である。サンプルを、ILY注入(45 ng/g体重)の10分後にマウス尾静脈から得られたヘマトクリット管中で処理した。
【図1D】ILY投与(45 ngのILY/g体重)の5時間後および1日後の、WTマウスではなくhCD59RBC+/-マウス中でのヘモグロビン尿症を示す写真である。尿を、以前に記載のように代謝ケージ中に回収した。
【図2A】ILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。血清のILYを介する溶血に対するヒト血清の保護効果を評価するために、ILYの連続希釈液を、以前に記載のように異なる種に由来する血清の1〜8倍希釈液と共にインキュベートしたヒトRBCに添加した。
【図2B】ILYカラムから流出した溶出画分の機能的比較としてのILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。ILYカラムからの溶出画分(三角)および流出液(長方形)を透析し、ヒト血清の量と等しい容量まで濃縮し(十字型)、ILYカラム上に載せた。溶血アッセイのILY濃度は、1.6 x 10-9 Mである。このデータは、3回繰り返した実験を表す。
【図2C】ヒト血清からのILY結合タンパク質の単離を示すウェスタンブロットである。レーンを以下のようにロードした:1:0.8μlのヒト血清、2: ILY結合カラム上にロードされたヒト血清からの0.8μlの流出液、3:ILYカラム上にロードされたヒト血清の溶出画分に由来する10μgのタンパク質、4:0.8μlのマウス血清、5:ILY結合カラム上にロードされたマウス血清からの0.8μlの流出液、6:ILYカラム上にロードされたマウス血清の溶出画分に由来する10μgのタンパク質。矢印は、タンパク質配列決定のため切断されたバンドを示す。
【図2D】タンパク質配列決定情報を示す表である。
【図3A】プロテインGカラムを用いるILY結合ヒトIgGのさらなる単離を示すウェスタンブロットである。レーンを以下のようにロードした:1:タンパク質マーカー;2:ILYカラムから溶出した10μlの画分;3:プロテインGカラムを用いるさらなる精製後に溶出した20μlの画分;4:プロテインGカラムを用いるさらなる精製からの20μlの流出液。レーン2、3および4に用いたサンプルを、透析および濃縮により同じ容量に等量化した。レーン2、レーン3およびレーン4の各サンプルの合計の元の容量は等しい。
【図3B】ヒトILY結合IgGの阻害効果を有するILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。ILYカラムから溶出した画分の容量(十字型)、プロテインGカラムを用いるさらなる精製からの溶出液(長方形)、およびプロテインGカラムを用いるさらなる精製からの流出液(三角)を、透析および濃縮により等量化した。溶血アッセイのためのILY濃度は、1.6 x 10-9 Mである。このデータは、3回繰り返した実験を表す。
【図3C】マウスILY結合IgGの阻害効果の非存在下でのILYを介する溶血率(%)を示すグラフである。ILY結合カラム上にロードされたマウスおよびヒト血清の容量は等しかった。マウス血清からの溶出した画分の合計容量(長方形)、マウス血清からの流出液(十字型)、およびヒト血清からの溶出画分(三角)を、透析および濃縮により等量化した。ILY濃度は、1.6 x 10-9 Mである。
【図3D】ヒトILY結合のFab領域に結合するILYを示すグラフである。200 ngのILYを用いて各ウェルをコーティングした。
【図4A】様々なILY断片を示す図である。各断片中に存在するドメイン(ドメイン1〜4)を示す。ILYドメイン1、2、3および4を、様々な影を有する四角形により表す。
【図4B】HISカラムを用いて細菌発現系から精製された組換えILYを示すクマシーブルーで染色されたSDS-PAGEゲルである。
【図5A】示されたILY断片で処理された細胞の溶解率(%)を示すグラフである。
【図5B】示されたILY断片濃度の関数としての溶解率(%)を示すグラフである。ヒト赤血球を、mILY3およびmILY4と共に、室温で30分間予備インキュベートした後、ILY(1.2 x 10-9 M)に曝露した。ILY断片と共に予備インキュベートしなかった細胞中では、この濃度は100%の細胞溶解を誘導するのに十分である。
【図6】hCD59RBCトランスジェニックマウス赤血球中のmILY3濃度の関数としての溶血率(%)を示すグラフである。抗体で感作されたThCD59RBCおよび野生型RBCを、様々な濃度のmILY3と共に予備インキュベートして、ヒト補体に曝露した。hCD59RBC赤血球中でのヒト補体を介する溶血に対する感受性の増加は、mILY3の濃度と相関する。
【図7】細胞数の関数としての蛍光強度を示すグラフである。影付の曲線は、二次FITC抗体のみで染色されたRAMOS細胞を表す。白い曲線は、抗ヒトCD59抗体およびFITC結合二次抗体で染色された細胞を表す。細胞を、リツキシマブおよび10%血清の示される濃度で処理した。
【図8A】示された濃度のmILY3および51.2μgのリツキシマブと共に予備インキュベートされたRAMOS細胞中でのmILY3ペプチド濃度の関数としての細胞死(%)を示すグラフである。
【図8B】示された濃度のmILY3、10μgのリツキシマブ、および10%の熱不活化ウシ胎仔血清で処理されたRAMOS細胞を含有するサンプル中のトリパンブルーで染色された細胞を示す一連の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一般的には、本発明は、ストレプトコッカス・インターメディウスのインターメジリシン(ILY)タンパク質のドメイン4を含むペプチド断片および抗体に基づく抗癌治療に対して癌細胞を感作するためのこれらの断片の使用を特徴とする。CD59受容体活性は、治療用抗体に対する感受性の低下と関連してきた。ILYドメイン4ポリペプチドの投与は、完全長ILYと関連する全般的な毒性を回避しながら、CD59受容体活性を阻害するのに十分である。
【0045】
I. 投与方法
本発明に従う治療を、単独で、または別の治療と組み合わせて実施することができ、家庭、医師の事務所、診療所、病院の外来診療部門、または病院で提供することができる。必要に応じて、治療は病院で始まるため、医師は治療の効果を密接に観察することができ、必要とされる任意の調整を行うか、または外来患者ベースで開始してもよい。治療の期間は、治療する疾患または障害の型、患者の年齢および症状、患者の疾患の段階および型、ならびにどのように患者が治療に応答するかに依存する。さらに、増殖性疾患を発症する危険性がより高い人は、症候の開始を阻害するか、または遅延させるための治療を受けてもよい。
【0046】
種々の実施形態のための投与経路としては、限定されるものではないが、局所、経皮、経頭蓋、経鼻、および全身投与(静脈内、筋肉内、皮下、吸入、直腸、頬、膣、腹腔内、関節内、眼内、耳、または経口投与など)が挙げられる。本明細書で用いられる「全身投与」とは、全ての非皮膚投与経路を指し、特に、局所および経皮投与経路を除く。
【0047】
用量
本発明のペプチドの用量は、投与方法、治療しようとする疾患、疾患の重篤度、疾患を治療するか、または予防するかどうか、ならびに治療しようとする人の年齢、体重、および健康などのいくつかの因子に依存する。さらに、特定の患者に関する薬理ゲノム(治療剤の薬物動態、薬力学もしくは効力プロフィールに対する遺伝子型の効果)情報も用いられる用量に影響し得る。
【0048】
本発明のペプチドを用いる連続的日投与は必要ないかもしれない。治療計画は薬剤を投与しない期間の周期を要するか、または治療を急性炎症の期間に必要に応じて提供してもよい。
【0049】
上記のように、本発明のペプチドを、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤もしくはシロップ剤の形態で経口的に、または座剤の形態で直腸的に投与することができる。また、前記ペプチドを、気泡、ローション、ドロップ、クリーム、軟膏、皮膚軟化剤、またはゲルの形態で局所的に投与することもできる。化合物の非経口投与を、例えば、塩水溶液の形態で、またはリポソーム中に組込んだ化合物を用いて、好適に実施する。
【0050】
II. 適応症
本発明の組成物および方法は、以下に記載のものなどの望ましくないヒトCD59活性を特徴とする任意の疾患を治療するのに有用である。
【0051】
本発明の化合物および方法は、癌および過剰増殖性細胞を特徴とする他の障害(増殖性疾患)の治療にとって有用である。これらの実施形態においては、ILYドメイン4ポリペプチドを、CD59を発現する新生物に直接的に、または新生物を有する被験体に全身的に投与することができる。好ましくは、ILYドメイン4ポリペプチドを、抗癌治療用抗体と共に投与する。
【0052】
別の実施形態においては、ILYドメイン4ポリペプチドを、CD59の細胞表面発現を特徴としない増殖性障害と診断された患者に投与することができる。ここで、ILYドメイン4ポリペプチドを、抗癌治療用抗体と共に投与して、治療用抗体に基づく治療に対する耐性を防止する。
【0053】
治療を、単独で、または別の治療(例えば、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、抗血管新生療法、もしくは遺伝子療法)と組み合わせて実施することができる。治療期間は、治療する疾患もしくは障害の型、患者の年齢および症状、患者の疾患の段階および型、ならびに患者が治療にどのように応答するかに依存する。治療を、患者の身体が未だに認められていない副作用からの回復の機会を得るように、休息期間を含む断続的周期で与えることができる。本発明の方法および組成物は、他の方法および組成物よりも有効であるのが望ましい。「より有効である」とは、方法、組成物、またはキットが、比較する別の方法、組成物、もしくはキットより高い効力を示し、より毒性が低い、より安全であり、より便利であり、より寛容性が高く、もしくはより費用が安いか、またはより高い治療満足度を提供することを意味する。
【0054】
癌としては、限定されるものではないが、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、ならびに肉腫および癌腫などの固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頸部癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)が挙げられる。
【0055】
III. 抗癌治療用抗体
本発明は、治療用抗体と組み合わせたILYドメイン4ポリペプチドの投与を介する増殖性疾患の治療を特徴とする。ILYドメイン4ポリペプチドの投与は、補体を介する細胞溶解に対する抗体治療により標的化される細胞を感作する。本発明の方法における使用のための治療用抗体の例を表1に記載する。
【表1】
【0056】
上記の抗体および適応症に加えて、本発明は、ヒトCD59活性の阻害により増強することができる任意の治療と組み合わせたILYドメイン4ポリペプチドの同時投与を特徴とする。
【0057】
IV. 実験結果
ストレプトコッカス・インターメディウス(SI)は、正常なヒト口腔微生物叢の一部であり、肝臓および脳の膿瘍を引き起こし得る。SIにより分泌されるILYは、CD59陽性ヒト細胞に特異的に結合し、これを溶解する。本発明者らの結果は、任意の他の試験した種に由来する血清ではなく、ヒト血清が、ILYの溶解機能を中和できることを証明する。本発明者らは、ex vivoおよびin vivoでのILYを介する溶血に対する機能的阻害効果を示すヒト血清から精製されたILY結合ヒト免疫グロブリン(IgG)を同定した。
【0058】
抗CD59抗体を用いるFACS分析およびRT-PCRを用いて、タンパク質およびmRNAレベルの両方で脂肪細胞の表面上でCD59発現が検出された。CD59はまた、精子細胞中でも高度に発現され、男性の生殖能力において重要な役割を果たすと疑われてきた。マウスCD59発現における欠損は、男性の生殖能力の進行的喪失をもたらし、男性の生殖におけるCD59の役割を示唆している。
【0059】
CD59はまた、前立腺腫、乳腺腫および胃腺腫ならびに腸型胃癌、ならびにB細胞リンパ腫などの様々な癌細胞中で高度に発現される。新生物細胞中でのCD59のより高い発現レベルは、特定の化学療法剤に対する細胞耐性と相関していた。本発明者らは、ILYがヒトCD59に特異的に結合し、細胞表面上にヒトCD59を発現するヒト細胞を溶解することを証明した。本発明者らは、ヒトが特異的免疫を生じ、ILYを介する細胞溶解から細胞を保護することを見出した。
【0060】
1. 実験モデル
本発明者らは、His Bind Purification Kit (Novagen)を用いて、細菌から組換えILYを発現させ、精製するためにHisタグ付ILYを含むプラスミドを用いた。hCD59がヒトRBC中でILYの唯一の受容体であることを示すために、本発明者らは、hCD59RBCを用いてex vivoおよびin vivo実験を行った。
【0061】
ex vivo試験については、本発明者らは、hCD59RBCトランスジェニックマウスのRBC中でのhCD59の発現により、hCD59RBC+/- mRBCがILYを介する溶解に対して超感受性になることを証明した。この溶解は、ヒトRBCのILYを介する溶解のレベルに匹敵する(図1A)。WT mRBCは、ILYを介する溶解に対して抵抗性である。in vivo試験については、本発明者らは、尾静脈注入により様々な用量のILYを投与した。ILYの3つの異なる用量(95、47、30 ng/g体重)を用いて、hCD59RBCトランスジェニックマウスのILYに誘導される細胞死の割合は、それぞれ、100%(15/15動物)、50%(8/16動物)および0%(0/6動物)であった。このデータに基づいて、本発明者らは、本発明者らのin vivo実験において、95 ng ILY/g体重の用量を致死用量(LD100)と考える。
【0062】
最も高いレベルの治療(3000 ng ILY/g体重)でも、WTマウス(0/6動物)に由来するRBCにおける細胞死は観察されなかった。ヘマトクリット値の低下ならびに可視的溶血およびヘモグロビン尿症により証明されるように、45 ng ILY/g体重の注入により、WTマウスではなく、hCD59RBC+/-において大量の溶血が誘導された。図1Bは、ILY注入の10分後、1日後、および4日後に、WTマウスと比較して、hCD59RBC+/-においてヘマトクリット値が有意に低下したことを示す。ILY注入の10分後に、5匹のWTマウスではなく、5匹のhCD59RBC+/-マウスにおいて可視的溶血が認められた(図1C)。ILY注入の5時間後および1日後に回収した場合、WTマウスではなく、hCD59RBC+/-に由来する尿において可視的ヘモグロビン尿症が認められた(図1D)。
【0063】
2. ヒト血清におけるインヒビターはILYの溶解効果を中和する
SIは、(1)正常なヒト口腔微生物叢の一部であり、(2)肝臓および脳の膿瘍を引き起こし、ならびに(3)ヒト細胞の表面中のhCD59の存在に起因して、該細胞を特異的に溶解するILYを分泌するため、本発明者らは、ヒトが、ILYを介する細胞溶解および病原性SI感染に対して保護するいくらかの免疫防御を生じ得ることを提唱する。この仮説を試験するために、本発明者らは、ヒトRBCを用いる溶血アッセイを行った。ヒトRBCを様々な濃度のILYと、様々な種に由来するPBS中の血清の1〜8倍希釈液と共にインキュベートした。図2Aは、他の11種の動物に由来する血清ではなく、ヒト血清がILYを介するヒトRBC溶解を有意に阻害したことを示す。
【0064】
ヒト血清からインヒビターを単離するために、本発明者らはILY結合セファロースカラムを用いた。溶血アッセイにより、本発明者らは、ヒト血清の流出液ではなく溶出画分が、ILYを介する溶血からヒトRBCを保護する機能的活性を有することを検証した(図2B)。ILYに結合した特異的タンパク質を、SDS-PAGEゲル上で分離し(図2C)、タンパク質配列決定のために単離した。本発明者らは、ヒトおよびマウス血清のILY溶出画分中にIgGを見出した。MAC-2BPタンパク質は、ヒト血清のILY溶出画分中にのみ認められた(図2D)。
【0065】
3. ILYインヒビターの単離およびその保護効果
MAC-2BPおよびSP40からヒトIgGまたはマウスIgGを分離するために、本発明者らは、IgGに結合する、プロテインGカラムと共にILY結合カラムから溶出された画分をさらに精製した(図3B)。本発明者らは溶血アッセイを用いて、ILYカラムおよびプロテインGカラム上で精製されたヒト血清に由来する溶出画分の機能的活性を試験した。図3Bは、プロテインGカラムに由来する溶出画分が、ILYカラムに由来する溶出画分のものと類似する機能的活性を有することを示す。本発明者らは、1 mlの各種の血清から、約300μgのILY結合ヒトIgGまたはマウスIgGを精製した。通常、ヒト血清中に、平均12 mg/mlの総ヒトIgGが存在する。従って、2.5%の総ヒトIgGがILYに結合することができる。マウス血清ではなく、ヒト血清に由来するILY結合IgGのみが、ILYを介する溶血からhRBCを保護する機能的活性を有する(図3B)。ILY結合マウスIgGはILYを介する溶解に対するいかなる保護活性も有さない(図3C)。
【0066】
ILYに特異的に結合する2.5%のマウスIgGがILYを介する細胞溶解を遮断しない理由に関する可能性のある説明は以下の通りである。第1に、SIはヒトにおいてのみ正常な微生物叢の一部であり、マウスや他の動物においてはそうではない。かくして、ヒト免疫系をILYに曝露し、ドメイン4(hCD59の結合部位)などのILYの機能的ドメインに特異的な抗体を産生させることができる。第2に、ILYと、ヒトおよび他の動物において正常微生物叢であるクロストリジウム、ストレプトコッカス、リステリア、およびバチルス属内の種を含む他のグラム陽性細菌により産生される細胞溶解毒素に対する抗体との交差反応性が存在し得る。ILYを含むこの毒素ファミリーのメンバーは、一次配列レベルで40〜80%の類似性を示す。ヒトおよび他の動物は、様々なこれらの毒素にとって特異的な抗体を産生し得る。これらの抗体は、ILY機能を中和するだけでなく、ILYの様々な領域と交差反応し得る可能性がある。
【0067】
このILY結合ヒトIgG分子がILYに結合する部分をさらに決定するために、200 ngのILYを用いて、96穴プレート中のウェルを被覆した後、ILY結合カラム上にロードされたヒト血清に由来する溶出液の連続希釈液と共にインキュベートした。飽和量の二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG FabまたはFcフラグメント-HRP抗体)を用いて、ILY被覆ウェルをヒト血清溶出液の連続希釈液と共に予備インキュベートした後、ウェル中の遊離結合部位を検出した。図3Dは、抗ヒトFab二次抗体よりも抗ヒトFc二次抗体のための遊離結合部位が有意により多いことを示す。この結果は、ILY結合ヒトIgGがILYに結合する部位が、Fab領域中に存在することを示唆している。さらに、ELISAを用いて、本発明者らは、ILYがヒトIgGのFc領域に結合しないことを証明した。この方法においては、ILYを用いて、96穴プレート中のウェルを被覆し、このウェルを様々な濃度の市販のヒトFcフラグメントと共にインキュベートし、抗ヒトFcフラグメント-HRP抗体を用いて、Fcフラグメント結合を検出した。この結果はさらに、ILY結合ヒトIgGがFab領域によりILYに結合するという結論をさらに支持する。
【0068】
ILY結合ヒトIgGのin vivoでの効果を決定するために、本発明者らは最初に、様々な用量のILY結合ヒトIgGの静脈内(IV)注入によりhCD59RBC+/-を処理した。15分後、本発明者らは、これらのマウスに285 ng ILY/g体重を注入した(未処理のhCD59RBC+/-マウス中で3倍致死用量(LD)のILY)。本発明者らは、1および0.75μgのILY結合ヒトIgG/g体重で予備処理されたhCD59RBC+/-の生存率(%)が、それぞれ89%(8/9)および62.5%(5/8)であることを見出した。この結果は、ILY結合ヒトIgGがin vivoでILY機能を遮断することを確認し、抗ILY抗体がSI感染症の治療にとって有用であり得ることを示唆している。
【0069】
4. 改変された組換えILYの機能的活性
本発明者らは、改変された組換えILY断片(mILY1-4)のパネルを作製した。該断片をコードする配列を、該断片がHisタグに融合されるように発現ベクター中にクローニングした(図4A)。mILY1断片は、ILYのN末端で欠失された約80アミノ酸を有する。mILY2断片は、ILYのN末端で欠失された約200アミノ酸を有する。これらのタンパク質を、大腸菌発現系中で発現させ、Hisカラムによりさらに精製した(図4B)。
【0070】
これらの断片を、上記のヒトRBC溶解アッセイ中において試験した。mILY1断片は、完全長ILYと類似する溶解活性を保持する。mILY2断片は、完全長ILYの溶解活性の1%未満を保持していた。mILY3およびmILY4断片は、103倍より高い濃度でもRBCの溶解を誘導しなかった(図5A)。
【0071】
mILY3またはmILY4のいずれかが完全長ILYの溶解効果を遮断することができるかどうかを試験するために、ヒト赤血球を様々な濃度のmILY3またはmILY4と共に予備インキュベートした後、完全長ILYと共にインキュベートした。予備インキュベーション後、mILY3断片はILYを介する溶解を遮断した(図5B)。これらのデータは、ドメイン4全体を含むmILY3が、ヒトCD59への結合に関する機能的特徴を保存することを示す。
【0072】
図6は、ILY3とThCD59RBCとの予備インキュベーションは、補体を介する溶血に対するhCD59RBCトランスジェニックマウス赤血球の感受性を増加させることを示す。この結果は、ILY3がhCD59機能を遮断することを確認する。
【0073】
5. RAMOS膜中でhCD59を過剰発現するリツキシマブ耐性RAMOS細胞系の作製
Takeiら(Leuk Res 30, 625-31 (2006))において開発された手順に従うことにより、本発明者らは、ヒトCD59を過剰発現するリツキシマブ耐性RAMOS細胞系を確立した。RAMOS、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞系を、in vitroで補体(ヒト血清)および徐々に増加する濃度のリツキシマブに繰り返し曝露した。これらの耐性細胞上でのCD59の発現を、フローサイトメトリーにより分析した。徐々に増加する濃度のリツキシマブ(0.2、0.8、3.2、12.8および51.2μg/ml)ならびに10%のヒト血清に対して抵抗性であるRAMOS細胞は、高レベルのヒトCD59を徐々に発現する(図7)。
【0074】
6. mILY3はリツキシマブ耐性RAMOS細胞中でのリツキシマブに対する耐性を低下させる
ILYのドメイン4から誘導されるペプチドがhCD59機能を阻害し、癌のリツキシマブ治療を容易にすることができるかどうかを試験するために、本発明者らは、mILY3を、最も高いレベルのヒトCD59を発現する51.2μg/mlのリツキシマブに耐性の細胞と共にインキュベートした。51.2μg/mlのリツキシマブに耐性のRAMOS細胞を、様々な濃度のmILY3(配列番号1)、10μg/mlのリツキシマブ、および10%のヒト血清で1時間処理し、死細胞を決定するための標準的な方法であるトリパンブルーを用いて細胞死を決定した(図8B)。
【0075】
様々な用量のmILY3で処理したRAMOS細胞は、mILY3で処理しなかった細胞と比較して、有意に増加した細胞死(%)を示した(図8Aおよび8B)。mILY3のIL50を、33 nMで算出した。これらのデータは、ILYドメイン4から誘導された、mILY3(配列番号1)が、in vitroでリツキシマブ耐性細胞中のリツキシマブ耐性を低下させることを示す(図2Aおよび2B)。有意には、様々な濃度のmILY3のみによるRAMOS細胞の処理は、細胞死を誘導せず(図8)、mILY3は単独ではこれらの細胞に対する毒性効果を有さないことを示唆している。
【0076】
他の実施形態
記載された本発明の方法および組成物の様々な改変および変更が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本発明を特定の望ましい実施形態と共に説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明がそのような特定の実施形態に過度に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際、医学、免疫学、薬理学、内分泌学の分野、または関連する分野における当業者には明らかである本発明を実行するための記載の様式の様々な改変は、本発明の範囲内にあると意図される。
【0077】
本明細書で言及される全ての刊行物は、それぞれの独立した刊行物が具体的かつ個々に参照により本明細書に組み入れられるのと同じ程度まで参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ILYドメイン4ポリペプチドを含む実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項2】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが、配列番号1および配列番号2から選択される配列またはILYドメイン4活性を有するその断片を含む、請求項1に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項3】
前記断片の長さが少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100個のアミノ酸である、請求項2に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項4】
前記断片の長さが531、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10個以下のアミノ酸である、請求項2に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項5】
前記実質的に純粋なポリペプチドが融合タンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項6】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが配列番号1および配列番号2から選択される配列を含む、請求項1に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の実質的に純粋なポリペプチドと、治療用抗体とを含む医薬組成物。
【請求項8】
前記治療用抗体が、リツキシマブ、MT201、17-1A、ハーセプチン、アレムツズマブ、lym-1、ベバシズマブ、セツキシマブ、およびIL-2受容体αに対するモノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
増殖性疾患の治療を必要とする患者に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドおよび治療用抗体を投与することを含み、該ILYドメイン4ポリペプチドおよび該治療用抗体を、共に増殖性疾患を治療するのに十分である量で、同時に、または互いに14日以内に投与する、増殖性疾患の治療を必要とする患者における増殖性疾患の治療方法。
【請求項10】
前記治療用抗体が、リツキシマブ、MT201、17-1A、ハーセプチン、アレムツズマブ、lym-1、ベバシズマブ、セツキシマブ、およびIL-2受容体αに対するモノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ILYドメイン4ポリペプチドおよび前記治療用抗体を同時に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが、前記治療用抗体と一緒に製剤化されたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが、配列番号1および配列番号2から選択される配列またはILYドメイン4活性を有するその断片を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖性疾患がCD59を発現する新生物細胞を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
ILYドメイン4ポリペプチドを含む実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項2】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが、配列番号1および配列番号2から選択される配列またはILYドメイン4活性を有するその断片を含む、請求項1に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項3】
前記断片の長さが少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100個のアミノ酸である、請求項2に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項4】
前記断片の長さが531、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10個以下のアミノ酸である、請求項2に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項5】
前記実質的に純粋なポリペプチドが融合タンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項6】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが配列番号1および配列番号2から選択される配列を含む、請求項1に記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の実質的に純粋なポリペプチドと、治療用抗体とを含む医薬組成物。
【請求項8】
前記治療用抗体が、リツキシマブ、MT201、17-1A、ハーセプチン、アレムツズマブ、lym-1、ベバシズマブ、セツキシマブ、およびIL-2受容体αに対するモノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
増殖性疾患の治療を必要とする患者に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の実質的に純粋なILYドメイン4ポリペプチドおよび治療用抗体を投与することを含み、該ILYドメイン4ポリペプチドおよび該治療用抗体を、共に増殖性疾患を治療するのに十分である量で、同時に、または互いに14日以内に投与する、増殖性疾患の治療を必要とする患者における増殖性疾患の治療方法。
【請求項10】
前記治療用抗体が、リツキシマブ、MT201、17-1A、ハーセプチン、アレムツズマブ、lym-1、ベバシズマブ、セツキシマブ、およびIL-2受容体αに対するモノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ILYドメイン4ポリペプチドおよび前記治療用抗体を同時に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが、前記治療用抗体と一緒に製剤化されたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ILYドメイン4ポリペプチドが、配列番号1および配列番号2から選択される配列またはILYドメイン4活性を有するその断片を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖性疾患がCD59を発現する新生物細胞を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2010−523491(P2010−523491A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501023(P2010−501023)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/004193
【国際公開番号】WO2008/121402
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/004193
【国際公開番号】WO2008/121402
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
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