説明

増殖性組織を治療するための二重壁バルーン・カテーテル

【課題】本発明は、放射線源と目標の間にある身体組織を過度に照射することなく、人体内の標的組織に放射線源から放射線を、所望の強度で放射線源から所定の距離で送達するために使用できる器具に関している。
【解決手段】近接照射療法(Brachy−therapy)で使用するための器具10は、カテーテル本体12の近位端の近くに配置された内側および外側膨張性球形チャンバ30、34の同心配置を有し、チャンバ30、34の一方は放射線吸収物質を入れ、他方のチャンバ30、34は放射性吸収材料を入れ、装置10は、腫瘍の除去によって作られた空洞を囲む組織により均一な吸収線量プロファイルをもたらす働きをする。代替実施形態は、それぞれの壁が表面全体にわたって等距離に離間している非球形の内側チャンバと外側チャンバを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して増殖性組織疾患の治療に使用するための装置に関し、さらに詳しくは、放射性物質および/または放射性放射を当てることによって身体内におけるこのような疾患を治療するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「Tumor Treatment(腫瘍の治療)」と題するWilliamsの特許文献1に、外科的に切除された腫瘍を取り囲む縁部に存在する癌細胞を殺すために、切除された腫瘍を取り囲む組織を放射性放出物で治療するための方法と装置が記載されている。上記特許によれば、膨張性のリザーバ即ち貯蔵部を画定するために遠位部に膨張可能なバルーンを有するカテーテルが提供される。腫瘍、たとえば脳または前胸部における腫瘍の外科的除去に続いて、腫瘍の除去後に残った外科的に作られたポケット中に収縮したバルーンを導入することができ、次いでカテーテルの内腔を通して1種または複数の放射性核種を含む流体を膨張性のリザーバ中に注入することによって、バルーンを膨張させる。
【特許文献1】米国特許第5429582号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放射線源の外部の一点における吸収された線量率は、放射線源と目標点との間の距離の二乗に反比例すると考えられるとき、膨張性のリザーバの壁に直接隣接する組織は、健康な組織の壊死が発生する可能性のある程度にまで過度に「ホット」になることがある。一般に、医師が望む放射線の量は、切除された腫瘍の壁から0〜3cmはなれた部位に送達されるある最低量である。この部位と膨張性のリザーバの間の空間で放射線をできるだけ均一に保って、リザーバ壁またはその近傍の組織に対する過度の照射を防止することが望ましい。新生物組織が一般に膀胱表面に位置する膀胱癌など他の癌を治療する際は、深い透過は必要ではなく、回避すべきである。
【0004】
放射線源と目標の間にある身体組織を過度に照射することなく、人体内の標的組織に放射線源から放射線を、所望の強度で放射線源から所定の距離で送達するために使用できる器具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人らは、カテーテルの遠位端において第1空間ボリューム即ち第1空間体積部を設け、ポリマー膜壁で第1空間ボリュームを囲むことによって第2空間ボリューム即ち第2空間体積部を設け、空間ボリューム即ち空間体積部と壁からの距離をこれらの全表面にわたってほぼ一定に保つことによって、放射能の源泉から所定の径方向距離に所望の放射線量を送達することが可能であることを見い出した。内側ボリューム即ち内側体積部と外側ボリューム即ち外側体積部の一方は1種または複数の放射性核種を含む流体または固体のいずれかで満たされ、2つのボリューム即ち体積部の他方は低い放射線吸収物質、たとえば空気、またはさらにX線造影液などさらに吸収性の物質を入れるように作られている。放射性物質がコアを含む場合には、周囲の放射線吸収物質は1種または複数の放射性核種を含む内側ボリュームと外側ボリュームの特定の1つからの放射性放射の径方向プロファイルを制御し、それによって外側チャンバ即ち外側室を取り囲む所定のボリュームに径方向により均一の放射線量を提供する働きをする。コアが吸収性物質を含む場合には、コアのサイズを調節することによって放射線透過の径方向深さを調整することができる。
【0006】
本発明の上述の特徴、目的、および利点は、好ましい実施形態についての下記に記載する詳細な説明から、特に添付の図面と併せて考察するとき、当業者には明らかになろう。
【実施例】
【0007】
まず図1を参照すると、生きている患者における増殖性組織に放射線治療を施すための外科器具が、全体的に数字10で示されている。管状本体部材12は第1内腔14と第2内腔16を有し(図2)、これらの内腔は、成形プラスチック・ハブ22における近位ポート18、20から管12の側壁を通じて形成された膨張ポート24、26にまで延び、膨張ポート24、26は内腔14、16にそれぞれ交差する。
【0008】
全体として球形のポリマー膜壁32によって画定することのできる内側空間ボリューム30が、管状本体12にこの遠位端28の近くで取り付けられている。チャンバ30の内部は膨張ポート26と流体連通している。空間ボリューム30の周囲には、2つのチャンバが膨張されまたはその他の形で充填され支持されるとき、内側チャンバ即ち内側室30の壁32から適切に離間される外側ポリマー膜壁36によって画定される外側チャンバ34がある。チャンバ34は膨張ポート24を包含している。
【0009】
図1の実施形態は、特に内側と外側に重なった2つの球形チャンバ30、34を含むものとして説明することができる。本発明の第1実施形態によれば、内側球形壁32と外側球形壁36との間の空間によって画定されるボリュームである外側チャンバ34は、空気または代わりに血管造影で使用される造影剤などの放射線吸収流体で満たすことができる。次いで内側チャンバ30は、所定の放射性核種、たとえばI−125、I−131、Yb−169、または光子、ベータ粒子、またはその他の治療用放射線を放出する放射性核種などのその他の放射線源を含む物質で満たされる。
【0010】
32におけるように全体的に球形のポリマー膜壁によって画定される内側空間ボリューム30を設ける代わりに、カテーテル本体部材12は固体の球形放射性放射物質を有し、この場合に固体球形は、空気、水、または造影物質などの放射線吸収物質によって空間ボリュームが占められた外側球形壁によって囲まれることは、当業者には理解されよう。
【0011】
またさらにこれは、単一の固体球形を含む内側空間ボリュームを有する代わりに、すべての方向にほぼ同じ強度で放射するように、内側空間ボリュームの内部に戦略的に置かれた複数の放射性粒子を含むことも企図されている。図5は、複数のワイヤの遠位端に取り付けた複数の放射性ビード(radioactive beads)によって内側空間ボリュームが占められたカテーテルを示し、これら複数のワイヤはカテーテル本体の壁を通っており、カテーテル本体の壁を通って形成され内腔に達する複数のポートから出ている。この配置によって、所望のプロファイル結果を生成するように位置決めすべき個々の放射線源の正確な位置決めが可能になる。
【0012】
内側チャンバの壁と外側チャンバの壁との間の間隔が一般に一定のままである限り、チャンバ30、34が図3に示すような球形壁を有することは、本発明には必須ではない。
【0013】
図4を見ると、外科的に切除された腫瘍の縁部38の内部に配置された内側球形壁32と外側球形壁36とによって画定された図1の2つの同心球形チャンバが示されている。コア32から放射される放射線が縁部38から約0〜3mmに位置で吸収されるある最低線量を送達できることが望まれる。曲線40は、球形壁32によって画定される内側チャンバが存在せず、壁36によって画定される球形チャンバのボリューム全体が放射性流体によって満たされた場合に得られる、径方向の距離と吸収された線量との関係をプロットしたものである。プロット42は、放射性流体が内側チャンバの内部に入れられ、気体またはさらに放射線を吸収する物質のいずれかによって囲まれているとき、吸収線量の分布を径方向の距離の関数として反映する。プロット40と42を比較すると、図の同心配置を提供することによって、2cmの部位と外側バルーン壁の間の空間における吸収線量のプロファイルははるかに均一に維持され、それによって器具の外側壁36における、またはその近くの人体組織の過剰処置が防止される。すなわち、2cmの所で同じ端点吸収線量を得るには、両方の構成で同じ放射性核種を使用すると想定して、(表面36に対して)完全に満たされた構成に使用されるものに比べて、線源の放射能を増加することが必要となる。
【0014】
制限を意図するものではないが、膨張性ポリマー・チャンバは、シラスティック・ゴム(Silastic rubbers)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PVC、C−フレックス(C−Flex)など生物学的適合性のある耐放射線性のポリマーを含むことができる。内側チャンバ32の内部に入れられた放射性流体は、1種または複数の放射性核種を含む溶液、例えばI−125またはI−131の溶液から作ることができる。放射性流体は、Au−198、Y−90などの固体放射性核種の小さな粒子を含む適当な流体のスラリーを使用して製造することもできる。
【0015】
上述の実施形態では、1種または複数の放射性核種を含む物質は内側チャンバに位置する。本発明はまた、外側チャンバ34は中に放射性核種を有する物質を含むが、内側チャンバ30は放射線吸収性の物質を含むことも企図している。この構成は、透過のより少ない組織表面でより高い強度を示すプロファイルが望まれる場合には有利である。この手法を使用することによって、装置の全ボリュームが放射性物質によって満たされた場合よりも必要な放射性物質の量は少なくなる。そのうえ、外側チャンバ壁は球形である必要はなく、それでも均一なプロファイルを得ることができる。前述のWilliamsの特許第5429582号におけるように、単一の膨張性チャンバだけを使用するときに得られるよりも、内側チャンバ30中に放射線減衰流体を使用するとより急な径方向吸収線源勾配が得られることが実験により判明した。本発明はまた、内側コアにおける放射性物質を、固体放射性核種を含有する粒子を含むコアで置き換えることができることも企図している。たとえば、ミネソタ州St.Paulの3M社から入手可能なタイプの放射性微小球状物を流体の代わりに使用することができる。この放射線源は、製造時に予めカテーテル中に装入し、または切除された腫瘍によって占められていた空間中に装入した後に装置に装入することができる。このような固体放射性コアの構成は、液体に限られる場合よりも広い範囲の放射性核種が使用可能になるという利点を提供する。本発明の送達装置で使用できる固体放射性核種は、現在一般に近接照射療法(brachytherapy)放射線源として入手可能である。
【0016】
図1の同心球形の実施形態または図3の非球形の実施形態のいずれにおいても、内側チャンバと外側チャンバの間の間隔は「ホット・スポット」を防止するためにある程度一定に保つ必要がある。この結果は、精密ブロー・ポリマー・パリソンの入念な配置、または圧縮可能なフォームもしくは内壁32を外壁36に接合するウェブの形の機械的スペーサを使用することによって達成可能である。
【0017】
特許法に従い、新しい原理を適用し、必要とされる専用構成部品を製造し使用するのに必要な情報を当業者に提供するために、本発明をかなり詳細に説明した。しかしながら、本発明は具体的に異なる機器および装置により実施可能であり、本発明自体の範囲を逸脱することなく機器と操作手順に関して、様々な変更が達成できることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】放射性放射を身体組織に送達するための装置の側面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った断面図である。
【図3】第2実施形態による放射線療法を施すための装置の部分断面図である。
【図4】本発明による装置の作動を理解するのに役立つグラフである。
【図5】本発明のさらに別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10 外科器具
12 管状本体部材
14 第1内腔
16 第2内腔
18 近位ポート
20 近位ポート
22 成形プラスチック・ハブ
24 膨張ポート
26 膨張ポート
28 遠位端
30 内側室
32 壁
34 チャンバ
36 外側ポリマー膜壁
38 縁部
40 プロット
42 プロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある身体位置に放射性放射物を均一の放射線プロファイルで送達するための装置であって、
(a)近位端と遠位端を有するカテーテル本体部材と、
(b)カテーテル本体部材の遠位端の近くに配置された内側空間体積部と、
(c)本体部材の遠位端の近くに配置された放射線透過壁によって、前記内側空間体積部と放射線透過壁との間に一定の所定間隔を設けて、前記内側空間体積部を取り囲む位置関係で画定された、閉じた外側膨張性チャンバと、
(d)内側空間体積部に配置された放射性核種を含む物質と、
(e)内側空間体積部と外側チャンバの一方に配置され、外側チャンパを取り巻く所定の体積部において放射物の径方向吸収線量プロファイルを均一にする手段と、
を含む装置。
【請求項2】
前記内側空間体積部が別の放射線透過壁によって画成される閉じた内側チャンバである請求項1記載の装置。
【請求項3】
吸収線量プロファイルを均一にする手段が放射線減衰物質である請求項1に記載の装置。
【請求項4】
放射線減衰物質が硫酸バリウム、水、およびX線造影剤から成るグループから選択される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
放射性核種が流体状である請求項2に記載の装置。
【請求項6】
流体がヨウ素の同位体を含む請求項5に記載の装置。
【請求項7】
放射性核種が固体同位体の粒子を含む流体のスラリーである請求項1に記載の装置。
【請求項8】
内側チャンバが放射性物質を含む請求項2に記載の装置。
【請求項9】
外側チャンバが放射性物質を含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
放射性物質が流体である請求項8に記載の装置。
【請求項11】
放射性物質が固体である請求項8に記載の装置。
【請求項12】
放射性核種を含む物質が、所望の複合放射線プロファイルを提供するために、内側空間体積部内部の所定の位置に置かれた複数の放射性固体粒子を含む請求項1に記載の装置。
【請求項13】
内側チャンバおよび外側チャンバが球形であり同心である請求項2に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−26443(P2006−26443A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297129(P2005−297129)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【分割の表示】特願2000−503899(P2000−503899)の分割
【原出願日】平成10年6月22日(1998.6.22)
【出願人】(500034217)プロクシマ セラピューティックス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】