説明

壁紙及びその製造方法

【課題】エンボス柄再現性、耐不陸性、厚さ保持率及び表面強度に優れた壁紙及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の壁紙1は、基材1上に形成された塩化ビニル樹脂層3を含む壁紙であって、前記塩化ビニル樹脂層3は、熱膨張型マイクロカプセルを含有した塩化ビニル系ペーストゾルにより少なくとも2層形成され、発泡され、且つメカニカルエンボス加工されており、前記塩化ビニル樹脂層3は、前記基材1側から順番に形成された第一塩化ビニル樹脂層4と第二塩化ビニル樹脂層5とを含み、前記第二塩化ビニル樹脂層5の発泡倍率は、前記第一塩化ビニル樹脂層4の発泡倍率より相対的に低く、壁紙の全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙及びその製造方法に関する。特に、エンボス柄再現性、耐不陸性、出角・入角性、厚さ保持率、表面強度などの性能が格段に改良され、これらの性能が高度にバランスされた壁紙及びその製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マンション、一般家屋などの建築物の壁、天井、柱などの表面を装飾する目的で、塩化ビニル樹脂を主体とする樹脂層を基材上に積層した塩化ビニル壁紙が一般に使用され、特に、意匠性、耐不陸性などの点から、発泡塩化ビニル樹脂層を積層した塩化ビニル壁紙が広く使用されている。さらに、その意匠性を高めるために、種々の印刷やエンボス加工により表面に凹凸模様を施されている。例えば、特許文献1には、熱分解性化学発泡剤を配合した合成樹脂から構成された発泡合成樹脂層及びその上に形成された連続気泡性発泡体層を含み、エンボス模様が施された装飾シートが提案されている。また、特許文献2には、カプセル発泡剤を使用した発泡樹脂層面に互いにエンボス深度が異なる2種類のエンボス模様が同時に付与されたエンボス化粧材が提案されている。また、特許文献3には、カプセル発泡剤を含む発泡塩化ビニル樹脂層及びその上に形成された柄印刷層を含み、エンボス加工された内装用化粧シートが提案されている。一方、壁紙は、比較的に長期間使用されるため、耐久性のための表面強度が要求される。例えば、特許文献4には、ペースト用塩化ビニル系樹脂を含む発泡層の表面に樹脂コーティング層を形成し、表面を強化した壁紙が提案されている。
【特許文献1】特開平4−140200号公報
【特許文献2】特許第3089781号公報
【特許文献3】特開平9−300507号公報
【特許文献4】特開2007−92197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の装飾シートは、エンボス柄再現性や耐不陸性が不十分であるという問題点があった。また、上記の特許文献2に記載のエンボス化粧材及び特許文献3に記載の内装用化粧シートは、表面強度やエンボス柄再現性が不十分であるという問題点があった。また、上記の特許文献4に記載の内装用化粧シートは、エンボス柄再現性が不十分であるという問題点があった。
【0004】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、エンボス柄再現性、耐不陸性、厚さ保持率及び表面強度に優れた壁紙及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の壁紙は、基材上に形成された塩化ビニル樹脂層を含む壁紙であって、前記塩化ビニル樹脂層は、熱膨張型マイクロカプセルを含有した塩化ビニル系ペーストゾル(以下、ペーストゾルと記す)により少なくとも2層形成され、発泡され、且つメカニカルエンボス加工されており、前記塩化ビニル樹脂層は、前記基材側から順番に形成された第一塩化ビニル樹脂層(以下、第一層と記す)と第二塩化ビニル樹脂層(以下、第二層と記す)とを含み、前記第二層の発泡倍率は、前記第一層の発泡倍率より相対的に低く、壁紙の全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmであることを特徴とする。
【0006】
本発明の壁紙の製造方法は、基材上に熱膨張型マイクロカプセルを含有したペーストゾルからなる塩化ビニル樹脂層を少なくとも2層形成し、発泡し、且つメカニカルエンボス加工した壁紙の製造方法であり、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して熱膨張型マイクロカプセル8〜15重量部を含むペーストゾルを用いて前記基材上の一方の主面に第一層を形成し、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して熱膨張型マイクロカプセル1〜8重量部を含むペーストゾルを用いて前記第一層上に第二層を形成し、且つ前記第二層の発泡倍率を前記第一層の発泡倍率より相対的に低くすることにより、壁紙の全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmである壁紙を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンボス柄再現性、耐不陸性、厚さ保持率及び表面強度に優れた壁紙を提供できる。また、本発明によれば、好ましくは、防火性能に優れ、耐汚染性に優れた壁紙を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の壁紙の全壁紙重量は220〜370g/m2であればよい。ここで、全壁紙重量とは、基材と塩化ビニル樹脂層とを含む壁紙全体の重量を意味する。また、基材の重量を60〜80g/m2とし、塩化ビニル樹脂層の重量を160〜310g/m2にすることが好ましい。なお、基材重量が重い場合は、塩化ビニル樹脂層を形成するペーストゾルの塗工量を調節して全壁紙重量を上記範囲に調節すれば良い。全壁紙重量が220g/m2未満の場合は、耐不陸性が劣る傾向があり、また、耐不陸性を改善するため、発泡倍率を高くすると、表面が粗面になり、エンボス柄再現性が劣る傾向となる。更に、耐不陸性を改善するため、エンボス圧を低くすると、エンボス柄再現性が劣る結果となる。一方、全壁紙重量が370g/m2を越えると、塩化ビニル樹脂などの有機物質が増加することにより、防火性能が劣る傾向となる。また、全壁紙重量を220〜370g/m2にすることにより、エンボス柄再現性、耐不陸性、出角・入角性などの性能バランスに優れた壁紙が得られる。ここで、「出角・入角性」とは、壁紙を石膏ボード、コンクリート壁などの壁材における梁や柱などの出角や入角に貼り付ける際の壁材形状に対する追従性、壁材への接着性などの施工性を示すものである。また、「耐不陸性」とは、壁紙を石膏ボード、コンクリート壁などの壁材に貼り付ける際の、壁材の凹凸などを隠蔽する壁紙の性能を示すものである。
【0009】
また、本発明の壁紙の厚さは0.7〜1.3mmであればよい。ここで、壁紙の厚さとは、基材と塩化ビニル樹脂層とを含む壁紙全体の総厚をいい、シックネスゲージなどで測定する。前記壁紙の厚さが0.7mm未満であると、耐不陸性が劣り、壁紙を石膏ボード、コンクリート壁などの壁材に貼った時に壁材の凹凸などが壁紙上にそのまま現れ、見栄えがよくない傾向がある。一方、壁紙の厚さが1.3mmを越えると、壁紙が厚くなりすぎ、壁紙を壁材に貼る際、出角・入角における施工が困難となると共に、塩化ビニル樹脂などの有機物質が増加することにより、防火性能が劣る傾向がある。さらに、前記壁紙の厚さが1.3mmを越え、壁紙重量が重過ぎると、天井への施工などが困難となる傾向がある。
【0010】
また、本発明の壁紙のループステフネス剛性は7〜15g/cmであればよい。ここで、「ループステフネス剛性」とは、壁紙の施工性(曲げ易さ/柔軟性)を数値化して定量的に示すパラメータである。JIS A 6921では、施工性試験として、壁材に直接試験片を貼って一定時間経過後の浮き、剥がれを観察する方法が定められているが、数値化できないため、本発明においては、「ループステフネス剛性」というパラメータを用いて、壁紙の施工性(曲げ易さ/柔軟性)を数値化して定量的に示す。前記ループステフネス剛性は、ループステフネステスター(例えば、ループステフネステスターD型、株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定する。具体的には、幅10mm、長さ200mmの短冊状の試験片を水に5分間浸漬した後、ループ状にループステフネステスターにセットし、圧縮速度5mm/秒で、前記ループの直径方向を押しつぶした時のつぶれ抵抗(荷重)を測定する。
【0011】
本発明において、壁紙のループステフネス剛性が7〜15g/cmであることにより、壁紙を壁や天井などの壁材の平坦部、出角、入角などに貼る時、浮き、剥がれがなく施工できる。壁紙のループステフネス剛性が7g/cm未満である場合は、剛性が不足するために、平面貼付の際、気泡閉じ込めなどの施工不良が発生し易くなると共に、耐不陸性が低下する傾向がある。一方、壁紙のループステフネス剛性が15g/cmを越えると、剛性が強すぎて、出角・入角貼り付けの際、壁紙の浮き、剥がれなどの不具合が発生し易くなる傾向がある。
【0012】
本発明において、前記塩化ビニル樹脂層が熱膨張型マイクロカプセルを含有したペーストゾルにより少なくとも2層形成され、発泡され、且つメカニカルエンボス加工されており、また、基材側から順番に形成された第一層及び第二層のうち、前記第二層の発泡倍率が前記第一層の発泡倍率より相対的に低いことにより、壁紙の腰即ちループステフネス剛性を好適範囲にすることができ、それゆえ適度な柔軟性を有し、施工性に優れた壁紙が得られる。
【0013】
以下、本発明の壁紙を図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の壁紙の一実施形態を示す説明図である。本実施形態の壁紙1は、基材2と、基材2上に形成された塩化ビニル樹脂層3を含む。前記塩化ビニル樹脂層3は、熱膨張型マイクロカプセルを含有したペーストゾルにより形成され、発泡され、且つエンボス加工されており、基材2側から順番に形成された第一層4と、第二層5とを含む。
【0015】
基材2としては、従来から壁紙の基材として使用されている素材であればよく、特に限定されない。例えば、紙、織布、網布、編布、不織布、合成樹脂シート、又はこれらの複合素材を基材2として使用できる。
【0016】
前記基材2の厚さは、特に制限されないが、0.1〜0.13mmであることが好ましい。また、前記基材2は、重量が80g/m2以下であればよく、60〜80g/m2であることが好ましい。基材の重量が80g/m2を越えると、壁紙重量が相対的に重くなって経済性に劣ると共に出角・入角性が低下する傾向がある。一方、60g/m2以上であると、壁紙を張り替える際の壁紙の剥がれ易さ(耐剥離性)が向上するため好ましい。
【0017】
中でも、前記基材2としては、厚さが0.1〜0.13mmであり、重量が60〜80g/m2である一般紙を使用することが特に好ましい。
【0018】
塩化ビニル樹脂層3は、熱膨張型マイクロカプセルを含有したペーストゾルにより形成される。ここで、「ペーストゾル」とは、塩化ビニル系ペースト樹脂、可塑剤、熱安定剤、充填剤、及びその他の添加剤を配合してなるゾルのことをいい、従来公知のものを使用できる。
【0019】
本発明において、前記ペーストゾルは、熱膨張型マイクロカプセルを含むことが必要である。ここで、「熱膨張型マイクロカプセル」とは、熱可塑性樹脂カプセル中に気化性物質を内包した微小球のことをいい、従来公知のものを使用できる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類などのモノマーを単独重合又は共重合してなるポリマーカプセル中に、加熱発泡時に気化する内包物質を閉じ込めた微粒子状物質を使用できる。前記加熱発泡時に気化する内包物質としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素類などを使用でき、必要に応じてこれらを混合して使用してもよい。
【0020】
前記熱膨張型マイクロカプセルの粒径は、特に限定されないが、第一層の厚み保持性、第二層のエンボス柄再現性及び表面強度を確保するという観点から、15〜30μmであることが好ましい。また、前記熱膨張型マイクロカプセルは、市販のものを利用でき、例えば、松本油脂製薬株式会社製のF−102D、F−82Dなどが挙げられる。
【0021】
前記熱膨張型マイクロカプセルの含有量は、特に限定されないが、第一層4を形成するペーストゾルにおいては、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して8〜15重量部であることが好ましく、8〜12重量部であることがさらに好ましい。第一層4を形成するペーストゾルにおいて、前記熱膨張型マイクロカプセルの含有量が8重量部未満では、発泡倍率が不足してエンボス柄再現性、耐不陸性が低下する傾向があり、一方、15重量部を越えると、経済性に劣ると共に発泡倍率が過多となり表面強度が低下する傾向がある。また、前記熱膨張型マイクロカプセルの含有量は、第二層5を形成するペーストゾルにおいては、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して1〜8重量部であることが好ましく、2〜4重量部であることがさらに好ましい。第二層5を形成するペーストゾルにおいて、前記熱膨張型マイクロカプセルの含有量が1重量部未満では、発泡倍率が不足してエンボス柄再現性が低下する傾向があり、一方、8重量部を越えると、発泡倍率が過多となり表面強度が低下する傾向がある。
【0022】
前記塩化ビニル系ペースト樹脂は、塩化ビニルホモポリマーペースト樹脂又は塩化ビニルモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂を単独又は混合して使用できる。前記塩化ビニルモノマーと共重合し得るモノマーは特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、塩化ビニリデンなどのビニリデン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジルなどの不飽和カルボン酸エステル類、スチレン、αーメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、更にはジアリルフタレートなどの架橋性モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーの使用量は、塩化ビニルモノマーとの混合物中50重量%未満であることが好ましい。
【0023】
中でも、表面強度とエンボス柄再現性などとの性能バランスが優れている点から、第一層を形成するペーストゾルに含まれる塩化ビニル系ペースト樹脂は塩化ビニルホモポリマーペースト樹脂であり、第二層を形成するペーストゾルに含まれる塩化ビニル系ペースト樹脂は塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーペースト樹脂又は塩化ビニルホモポリマーペースト樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーペースト樹脂との混合物であることが好ましい。また、前記塩化ビニルホモポリマーペースト樹脂は、市販品として入手でき、例えば、株式会社カネカ製のカネビニールペーストPSL−675、カネビニールペーストPSL−684、カネビニールペーストPSL−685などが挙げられる。また、前記塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーペースト樹脂も、市販品として入手でき、例えば、株式会社カネカ製のカネビニールペーストPCH−12、カネビニールペーストPCH−178、カネビニールペーストPCH−179などが挙げられる。
【0024】
前記可塑剤は、一般にペーストゾルに用いられるものであれば特に制限されず、例えば、1次可塑剤としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェートなどのリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのアジピン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸エステル、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、ポリエステル系可塑剤などを用いることができる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、またクエン酸エステル、グリコール酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤などの2次可塑剤と併用してもよい。中でも、粘度低減効果などの観点から、クエン酸エステル、ジイソノニルフタレート、アジピン酸エステルなどを併用するのが好ましい。また、前記可塑剤の含有量は、特に限定されないが、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対し、40〜70重量部であることが好ましく、50〜60重量部であることがさらに好ましい。
【0025】
前記熱安定剤は、一般にペーストゾルに用いられるものであれば特に制限されず、例えば有機燐化合物、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫メルカプトなどの有機錫系安定剤やステアリン酸鉛、安息香酸鉛などの鉛系安定剤、カルシウム亜鉛系熱安定剤、バリウム亜鉛系熱安定剤、ハイドロタルサイトやゼオライトなどの無機系安定剤などを用いることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。中でも、衛生性などの観点から、バリウム亜鉛系熱安定剤が特に好ましい。また、前記熱安定剤の含有量は、特に限定されないが、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対し、1〜6重量部であることが好ましく、2〜4重量部であることがさらに好ましい。
【0026】
前記充填剤は、一般にペーストゾルに用いられるものであれば特に制限されず、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウムなどを用いることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、難燃性と経済性の観点から、平均粒子径が2〜20μmの炭酸カルシウムが好ましい。また、前記充填剤の含有量は、特に限定されないが、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対し、30〜150重量部であることが好ましく、50〜90重量部であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明のペーストゾルの調整方法は特に制限されず、塩化ビニル系ペースト樹脂、可塑剤、熱安定剤、充填剤などを配合し、ディゾルバー式混練機などの混練機による調整などの種々の方法により得られる。なお、本発明のペーストゾルは、必要に応じて、減粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、密着付与剤、チキソトロープ剤及び防カビ剤などを含んでもよい。
【0028】
基材2上に塩化ビニル樹脂層3を形成する方法は、特に限定されないが、2層塗工することにより形成する。例えば、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ロータリースクリーンなどを使用して第一層4の形成に用いるペーストゾル(以下、第一層用ペーストゾルと記す)を基材2上に塗工し、乾燥させることで第1塗膜を得る。前記乾燥は、第一層用ペーストゾルに含まれている熱膨張型マイクロカプセルがほとんど発泡しない条件且つ前記第一層用ペーストゾルがゲル化して塗膜となる条件で行うことが好ましい。また、前記乾燥条件は、前記第一層用ペーストゾルに含まれている熱膨張型マイクロカプセル及びその他の配合成分の種類や配合割合により異なり、特に限定されないが、例えば、130〜180℃で10〜45秒間処理することが好ましく、140〜170℃で12〜25秒間処理することが特に好ましい。次に、上記と同様に、前記第1塗膜上に第二層5の形成に用いるペーストゾル(以下、第二層用ペーストゾルと記す)を塗工して第2塗膜を形成し、原反を得る。なお、本発明の壁紙の厚さが0.7〜1.3mmであり、全壁紙重量が220〜370g/m2であるという点から、前記第一塗膜の厚さは0.07〜0.15mmであり、重量は110〜235g/m2であることが好ましく、前記第二塗膜の厚さは0.03〜0.05mmであり、重量は45〜70g/m2であることが好ましい。
【0029】
続いて、前記原反を加熱することで前記第1塗膜及び第2塗膜を発泡させて発泡原反を作製し、その後前記発泡原反にメカニカルエンボス加工を施す。
【0030】
前記発泡は、加熱することにより、前記熱膨張型マイクロカプセル中の気化性内包物質が気化することによって発泡することをいい、熱風循環式発泡炉、赤外線加熱式発泡炉などの発泡炉において、前記第1塗膜及び第2塗膜を同時に加熱して発泡させることにより行うことが好ましい。また、前記発泡は、特に限定されないが、発泡炉内の循環熱風温度160〜200℃で25〜60秒間加熱処理することにより行うのが好ましく、170〜190℃で25〜35秒間加熱処理することにより行うのがさらに好ましい。
【0031】
また、前記発泡における発泡倍率は、加熱処理前の原反の厚さH1と加熱処理後の発泡原反の厚さH2の比率H2/H1で表される。本発明において、前記第二層5の発泡倍率が前記第一層4の発泡倍率より相対的に低ければよく、特に限定されない。本発明において、熱膨張型マイクロカプセルを含有するペーストゾルで塩化ビニル樹脂層を形成すると共に、第二層の発泡倍率を第一層の発泡倍率より相対的に低くすることにより、エンボス柄再現性、耐不陸性、厚さ保持率及び表面強度などの性能バランスが大きく向上した壁紙を得ることができる。
【0032】
また、第一層4の発泡倍率は、より耐不陸性とエンボス柄再現性に優れるという点から、6〜10が好ましく、7〜9であることが特に好ましい。前記第一層の発泡倍率が6未満であると耐不陸性が劣ると共にエンボス柄再現性が劣る傾向があり、一方、前記第一層の発泡倍率が10を越えると表面強度が劣ると共にエンボス柄再現性が劣る傾向がある。
【0033】
また、第二層5の発泡倍率は1.5〜3.5であることが好ましく、1.5〜3であることがさらに好ましい。前記第二層の発泡倍率が1.5未満であるとエンボス柄再現性が劣るという傾向がある。一方、前記第二層の発泡倍率が3.5を越えると、表面が粗面となってエンボス柄再現性が劣ると共に表面強度も劣るという傾向がある。
【0034】
前記メカニカルエンボス加工とは、エンボスロールを使用して、発泡原反にエンボス柄を押圧・転写する加工をいう。前記メカニカルエンボス加工としては、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。
【0035】
なお、本発明において、「塩化ビニル樹脂層」とは、上記の原反、発泡原反及び壁紙のいずれの状態の塩化ビニル樹脂層も含むものである。また、本発明の塩化ビニル樹脂層の構成は、第一層4と第二層5との2層構造に限定されず、必要に応じて、他の層を含んでもよい。例えば、第二層5の表面に壁紙の製造に通常的に用いられる印刷層を施すことも可能であるし、耐汚染性、吸放湿性、消臭性、抗菌性、表面強化などの機能を付与するために表面改質層を設けることもできる。
【0036】
以下、本発明の壁紙の製造方法を説明する。
【0037】
本発明の壁紙の製造方法は、基材上に熱膨張型マイクロカプセルを含有したペーストゾルからなる塩化ビニル樹脂層を少なくとも2層形成し、発泡し、且つメカニカルエンボス加工した壁紙の製造方法である。
【0038】
上記のとおり、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して熱膨張型マイクロカプセル8〜15重量部を含むペーストゾルを用いて前記基材2上の一方の主面に第一層4を形成し、また、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して熱膨張型マイクロカプセル1〜8重量部を含むペーストゾルを用いて前記第一層4上に第二層5を形成する。さらに、前記第二層5の発泡倍率を前記第一層4の発泡倍率より相対的に低くすることにより、全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmである壁紙を得ることができる。
【0039】
本発明の壁紙の製造方法において、前記メカニカルエンボス加工における壁紙の厚さ保持率は、80〜100%であることが好ましい。前記壁紙の厚さ保持率が80%未満の場合は、エンボス柄再現性が劣ると共に、耐不陸性が低下する傾向がある。ここで、「厚さ保持率」とは、一般式(1)厚さ保持率(%)=T2/T1×100(但し、一般式(1)の中、T1はメカニカルエンボス加工前の発泡原反の厚さを示し、T2はメカニカルエンボス加工後の壁紙の厚さを示す)により算定されるものであり、エンボス加工における押圧によって発泡原反が変形する割合を示すものである。
【0040】
エンボス柄を精度よく転写・再現するためには、強い圧力で押圧する必要があるが、圧力を強くすると壁紙が薄くなって、耐不陸性が低下する傾向がある。なお、耐不陸性を向上させるため、壁紙を厚くすると、ペーストゾルの塗工量が増加し、防火性能が低下する傾向がある。また、ペーストゾルの塗工量をそのままにし、弱い圧力で押圧すると、精度のよいエンボス柄の転写・再現ができず、3D表現などの多彩な意匠性を表現できなくなる傾向がある。本発明の壁紙の製造方法においては、上記のように熱膨張型マイクロカプセルを含有するペーストゾルで塩化ビニル樹脂層を形成すると共に、第二層の発泡倍率を第一層の発泡倍率より相対的に低くすることにより、強い圧力の押圧でも80%以上の厚さ保持率を保持でき、それにより優れた耐不陸性及びエンボス柄再現性を有する壁紙を得ることができる。
【0041】
また、本発明の壁紙の製造方法において、前記メカニカルエンボス加工におけるエンボス柄再現性比は0.8〜1であることが好ましい。ここで、「エンボス柄再現性比」は、前記メカニカルエンボス加工に用いるエンボス版の深さ(版深)L1と、メカニカルエンボス加工後の壁紙におけるエンボス模様深さL2との比率L2/L1で表される。ここで、「エンボス版の深さ(版深)L1」とは、エンボス版の型の最も深い凹部の深さをいい、「エンボス模様深さL2」とは、壁紙におけるエンボス模様において、前記エンボス版の型の最も深い凹部に対応する部分の深さをいう。前記エンボス柄再現性比が0.8以上であることにより、エンボス柄再現性に優れ、それゆえ優れた意匠性を有する壁紙を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
先ず、実施例で用いた測定方法及び評価方法を説明する。
【0044】
<壁紙の全壁紙重量>
電子天秤(東洋精機製作所(株)製)を用いて、全壁紙重量を測定した。
【0045】
<壁紙の厚さ>
シックネスゲージ(テクロック(株)製)を用いて、壁紙の総厚を測定し、壁紙の厚さとする。
【0046】
<発泡倍率>
シックネスゲージを用いて、それぞれ、原反における第一層及び第二層の厚さH1、並びに発泡原反における第一層及び第二層の厚さH2を測定し、H2/H1により、第一層及び第二層の発泡倍率を算定した。
【0047】
<ループステフネス剛性>
壁紙から切り取った幅10mm、長さ200mmの短冊状の試験片を水に5分間浸漬した後、ループ状にループステフネステスターD型(東洋精機製作所製)にセットし、圧縮速度5mm/秒の条件で、前記ループの直径方向を押しつぶした時のつぶれ抵抗(荷重)を測定した。
【0048】
<厚さ保持率>
シックネスゲージにより、メカニカルエンボス加工前の発泡原反の厚さT1及びメカニカルエンボス加工後の壁紙の厚さT2を測定し、上記の式(1)により厚さ保持率を算定した。
【0049】
エンボス柄再現性は、以下のとおり官能評価及びエンボス柄再現性比により評価する。
【0050】
<エンボス柄再現性の官能評価>
エンボス版の柄と壁紙の柄を目視で比較し、壁紙におけるエンボス柄の三次元形状及び微細形状の転写・再現の状態を、以下の基準で判断し、A及びBを合格とした。
A エンボス柄の微細形状を含む三次元形状が完全に再現されている
B エンボス柄の三次元形状は再現されているが、微細形状の表現がやや不完全である
C エンボス柄の三次元形状は一応再現されているが、微細形状の表現が不完全である
D エンボス柄の三次元形状は一応再現されているが、深さなどの立体感や微細形状が表現されていない
E エンボス柄の三次元形状がほとんど再現されていない。
【0051】
<エンボス柄再現性比>
メカニカルエンボス加工に用いるエンボス版の深さ(版深)L1と、メカニカルエンボス加工後の壁紙におけるエンボス模様深さL2を測定し、L2/L1で表されるエンボス柄再現性比を算定し、80%以上を合格とした。
【0052】
<表面強度>
壁装問屋協議会及び壁紙製品規格協議会の「表面強化壁紙性能規定」に基づいて、壁紙の表面強度を測定した。具体的には、壁紙から幅25mm、長さ250mmの試験片を切り取り、温度20±2℃、湿度65±20%の条件で、24時間養生する。養生後、前記試験片をJIS L 0849で規定する摩擦試験機II形に付け、続いて同摩擦試験機II形に所定の摩擦子(荷重200g)を取り付けて試験片上を5回往復させて傷付き具合を、光度2000LXの標準光源のもと、目視により、以下の基準で評価し、3〜5級を合格とした。
5級 変化無し
4級 表面に少し変化あり
3級 表面が破けて見える
2級 表面が破けて壁紙の基材がやや見える
1級 表面が破けて壁紙の基材が見える。
【0053】
<耐汚染性試験方法>
壁装問屋協議会及び壁紙製品規格協議会の「汚れ防止壁紙性能規定」に基づいて、壁紙の耐汚染性を測定した。具体的には、壁紙から幅210mm、長さ297mmの試験片を切り取り、温度20±5℃、湿度:65±20%の条件で、24時間養生後、その表面に市販の汚染物質(コーヒー、醤油)を滴下し、前記条件で24時間放置する。その後、水を染み込ませた布で汚染物質をそれぞれ拭き取り、試験片の表面の汚れ状態を、目視により、以下のように評価した。また、壁紙から幅30mm、長さ220mmの試験片を切り取り、温度20±5℃、湿度:65±20%の条件で、24時間養生後、その表面に市販の汚染物質(水性ペン、クレヨン)で記入し、前記条件で24時間放置した後、市販の中性洗剤を染み込ませた布で汚染物質をそれぞれ拭き取り、試験片の表面の汚れ状態を、目視により、以下のように評価し、3〜5級を合格とした。
5 汚れが残らない
4 ほとんど汚れが残らない
3 やや汚れが残る
2 かなり汚れが残る
1 汚れが濃く残る。
【0054】
<耐不陸性>
壁紙の施工基材である壁材(石膏ボード)に、厚さが0.1mm、直径が20mmである粘着性の丸ラベルを1〜3枚重ねて貼り付けた後、丸ラベルの上に壁紙を施工した。48時間後斜光にてラベルの形状を目視し、耐不陸性を以下の基準で判断し、A及びBを合格とした。
A 丸ラベルが3枚の場合はやや見えるが、1〜2枚の場合は見えない
B 丸ラベルが3枚の場合は見え、2枚の場合はやや見えるが、1枚の場合は見えない
C 丸ラベルが2枚の場合は見え、1枚の場合はやや見える
D 丸ラベルが1枚の場合も見える。
【0055】
実施例及び比較例において用いた化合物は以下のとおりである。塩化ビニル系ペースト樹脂としては、カネビニールペーストPSL−675(株式会社カネカ製、以下PSL−675と記す)及びカネビニールペーストPCH−12(株式会社カネカ製、酢酸ビニル含有率5重量%、以下PCH−12と記す)を用いた。また、発泡剤としては、熱膨張型マイクロカプセルであるF−102D(松本油脂製薬(株)製、以下MBと記す)及び化学発泡剤であるアゾジカルボンアミド(AC−#99、永和化成工業(株)製、以下ADCAと記す)を用いた。また、熱安定剤として、No.9895(昭島化学工業(株)製)を用い、可塑剤として、DINP((株)ジェイプラス製)を用い、充填剤として、NA−300T((株)ニッチツ製)を用いた。また、その他の添加剤として、酸化チタン(R−21、堺化学工業(株)製)、減粘剤(BYK−5110、ビッグケミ(株)製)を用いた。また、基材として、一般紙NI−62A(日本製紙(株)製)を用いた。下記表1及び表2に、それぞれ、実施例及び比較例で用いた塩化ビニル系ペーストゾルの配合成分及び配合割合を示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
(実施例1)
上記表1に示す配合成分を上記表1に示す配合割合で配合し、ディゾルバー混練機で混練することにより、実施例1の壁紙の第一層の形成に用いる熱膨張型マイクロカプセルを含有する第一層用ペーストゾル及び第二層の形成に用いる熱膨張型マイクロカプセルを含有する第二層用ペーストゾルを得た。次に、一般紙基材上に、コンマコーターを用い、上記で得られた第一層用ペーストゾルを110g/m2の塗工量で塗工し、150℃で、15秒間処理することで乾燥させ、第1塗膜を形成した。続いて、前記第1塗膜上に、コンマコーターを用いて上記で得られた第二層用ペーストゾルを45g/m2の塗工量で塗工して第2塗膜を形成し、原反を得た。その後、上記の原反を180℃で30秒間処理することにより、加熱発泡させ、発泡原反を得た。最後に、エンボスロールを用い、4.5kg/cm2の圧力で押圧することによりエンボス加工をし、実施例1の壁紙を得た。
【0059】
(実施例2)
第一層用ペーストゾルを170g/m2の塗工量で塗工し、第二層用ペーストゾルを60g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、実施例2の壁紙を得た。
【0060】
(実施例3)
第一層用ペーストゾルを235g/m2の塗工量で塗工し、第二層用ペーストゾルを70g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、実施例3の壁紙を得た。
【0061】
(実施例4、5、7及び8)
第二層用ペーストゾルにおけるMBの配合割合をそれぞれ上記表1に示す配合割合にし、第一層用ペーストゾルを170g/m2の塗工量で塗工し、第二層用ペーストゾルを60g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、実施例4、5、7及び8の壁紙を得た。
【0062】
(実施例6)
第二層用ペーストゾルにおける樹脂を上記表1に示す塩化ビニルホモポリマーのみにし、第一層用ペーストゾルを170g/m2の塗工量で塗工し、第二層用ペーストゾルを60g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、実施例6の壁紙を得た。
【0063】
(比較例1)
第一層用ペーストゾルを90g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、比較例1の壁紙を得た。
【0064】
(比較例2)
第一層用ペーストゾルを245g/m2の塗工量で塗工し、第二層用ペーストゾルを70g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、比較例2の壁紙を得た。
【0065】
(比較例3)
実施例1と同様にし、比較例3の壁紙の製造に用いる第一層用ペーストゾルを得た。次に、一般紙基材上に、コンマコーターを用いて上記で得られた第一層用ペーストゾルを230g/m2の塗工量で塗工し、180℃で30秒間処理することにより加熱発泡させ、発泡原反を得た。最後に、エンボスロールを用いて、エンボス加工をして比較例3の壁紙を得た。
【0066】
(比較例4)
第一層用ペーストゾルにおけるMBの配合割合を上記表2に示す配合割合にし、第一層用ペーストゾルを90g/m2の塗工量で塗工し、第二層用ペーストゾルを45g/m2の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にし、比較例4の壁紙を得た。
【0067】
(比較例5)
第二層用ペーストゾルにおける発泡剤として、MBの代わりにADCAを用いた以外は、実施例6と同様にし、比較例5の壁紙を得た。
【0068】
(比較例6)
第一層用ペーストゾルにおける発泡剤として、MBの代わりにADCAを上記表2に示す配合割合で配合した以外は、実施例2と同様にし、比較例6の壁紙を得た。
【0069】
(比較例7)
第一層用ペーストゾルにおける発泡剤として、MBの代わりにADCAを上記表2に示す配合割合で配合した以外は、比較例3と同様にし、比較例7の壁紙を得た。
【0070】
(比較例8)
第一層用ペーストゾルにおける発泡剤として、MBの代わりにADCAを上記表2に示す配合割合で配合した以外は、比較例3と同様にし、比較例8の壁紙を得た。
【0071】
得られた実施例1〜8の壁紙における、全壁紙重量、基材重量、第一層及び第二層の塗工量、厚さ、第一層及び第二層の発泡倍率、ループステフネス、厚さ保持率、エンボス柄再現性の官能評価、エンボス柄再現性比、表面強度、耐汚染性及び耐不陸性を測定又は評価し、その結果を下記表3に示した。
【0072】
【表3】

【0073】
また、得られた比較例1〜8の壁紙における、全壁紙重量、基材重量、第一層及び第二層の塗工量、厚さ、第一層及び第二層の発泡倍率、ループステフネス、厚さ保持率、エンボス柄再現性の官能評価、エンボス柄再現性比、表面強度、耐汚染性及び耐不陸性を測定又は評価し、その結果を下記表4に示した。
【0074】
【表4】

【0075】
上記表3及び表4から、熱膨張型マイクロカプセルを含有したペーストゾルにより形成され、発泡され、メカニカルエンボス加工されている第一層及び第二層を含み、且つ第二層の発泡倍率が前記第一層の発泡倍率より相対的に低く、また、壁紙の全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmである実施例1〜8の壁紙は、厚さ保持率、エンボス柄再現性、表面強度、耐汚染性及び耐不陸性の全てにおいて優れていることがわかる。また、第二層の発泡倍率が1.5〜3の範囲である実施例2〜6の壁紙のエンボス柄再現性及び耐不陸性が、第二層の発泡倍率が1.3である実施例7の壁紙に比較し、より優れていることがわかる。また、第二層の発泡倍率が1.5〜3の範囲である実施例1〜6の壁紙のエンボス柄再現性、表面強度及び耐汚染性が、第二層の発泡倍率が4である実施例8の壁紙に比較し、より優れていることがわかる。
【0076】
一方、表3及び表4から、塩化ビニル樹脂層を一層しか含んでない比較例3、7及び8の壁紙は、エンボス柄再現性、表面強度及び耐汚染性の全てにおいて実施例より劣っていることが分る。中でも、発泡剤として化学発泡剤を用いた比較例7及び8の壁紙は、厚さ保持率も劣っていることが分る。特に、壁紙の厚さが0.7mm未満である比較例7の壁紙は、耐不陸性も悪いことが分る。また、基材上に形成された塩化ビニル樹脂層のいずれか一つが化学発泡剤を含有したペーストゾルからなる比較例5及び6の壁紙は、エンボス柄再現性、表面強度及び耐汚染性の全てにおいて実施例より劣っていることが分る。中でも、壁紙の厚さが0.7mm未満である比較例6の壁紙は、耐不陸性も悪いことが分る。また、全壁紙重量が200g/m2であり、厚さが0.6mmである比較例1の壁紙は、エンボス柄再現性や耐不陸性が劣っていることが分る。また、壁紙の厚さは0.7mmであるが、壁紙の全壁紙重量が200g/m2である比較例4の壁紙は、耐不陸性は改善したものの、エンボス柄再現性が劣っていることが分る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態の壁紙の説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 壁紙
2 基材
3 塩化ビニル樹脂層
4 第一塩化ビニル樹脂層(第一層)
5 第二塩化ビニル樹脂層(第二層)
6 エンボス凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された塩化ビニル樹脂層を含む壁紙であって、前記塩化ビニル樹脂層は、熱膨張型マイクロカプセルを含有した塩化ビニル系ペーストゾルにより少なくとも2層形成され、発泡され、且つメカニカルエンボス加工されており、
前記塩化ビニル樹脂層は、前記基材側から順番に形成された第一塩化ビニル樹脂層と第二塩化ビニル樹脂層とを含み、前記第二塩化ビニル樹脂層の発泡倍率は、前記第一塩化ビニル樹脂層の発泡倍率より相対的に低く、
壁紙の全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmであることを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記第二塩化ビニル樹脂層の発泡倍率が、1.5〜3の範囲である請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記第一塩化ビニル樹脂層の発泡倍率が、6〜10の範囲である請求項1又は2に記載の壁紙。
【請求項4】
前記第一塩化ビニル樹脂層を形成する塩化ビニル系ペーストゾルに含まれる塩化ビニル系ペースト樹脂が塩化ビニルホモポリマーペースト樹脂であり、前記第二塩化ビニル樹脂層を形成する塩化ビニル系ペーストゾルに含まれる塩化ビニル系ペースト樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーペースト樹脂又は塩化ビニルホモポリマーペースト樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーペースト樹脂との混合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の壁紙。
【請求項5】
基材上に熱膨張型マイクロカプセルを含有した塩化ビニル系ペーストゾルからなる塩化ビニル樹脂層を少なくとも2層形成し、発泡し、且つメカニカルエンボス加工した壁紙の製造方法であり、
塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して熱膨張型マイクロカプセル8〜15重量部を含む塩化ビニル系ペーストゾルを用いて前記基材上の一方の主面に第一塩化ビニル樹脂層を形成し、
塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して熱膨張型マイクロカプセル1〜8重量部を含む塩化ビニル系ペーストゾルを用いて前記第一塩化ビニル樹脂層上に第二塩化ビニル樹脂層を形成し、
且つ前記第二塩化ビニル樹脂層の発泡倍率を前記第一塩化ビニル樹脂層の発泡倍率より相対的に低くすることにより、
壁紙の全壁紙重量が220〜370g/m2であり、厚さが0.7〜1.3mmであり、且つループステフネス剛性が7〜15g/cmである壁紙を得ることを特徴とする壁紙の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1)で表される壁紙の厚さ保持率が、80〜100%である請求項5に記載の壁紙の製造方法。
厚さ保持率(%)=T2/T1×100 (1)
但し、一般式(1)の中、T1はメカニカルエンボス加工前の発泡原反の厚さを示し、T2はメカニカルエンボス加工後の壁紙の厚さを示す。
【請求項7】
前記メカニカルエンボス加工に用いるエンボス版の深さ(版深)L1と、メカニカルエンボス加工後の壁紙におけるエンボス模様深さL2との比率L2/L1で表される壁紙のエンボス柄再現性比が、0.8〜1である請求項5又は6に記載の壁紙の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−281112(P2009−281112A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136997(P2008−136997)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(398061197)東武化学工業株式会社 (1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】