説明

壁紙裏打ち用抄合わせ不織布及びその製造方法

【課題】本発明は、ポリ塩化ビニル等が塗布加工され壁紙として使われる壁紙裏打ち用抄合わせ不織布に関し、壁面から壁紙を剥離する際のピール特性が良好であると共に、ポリ塩化ビニルコーティング時の欠点となる毛羽立ちが少なくコーティング適性が良好で、さらに寸法安定性が良好な壁紙裏打ち用の抄合わせ不織布を提供することを目的とする。
【解決手段】2層構造の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層は有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用抄合わせ不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙用裏打ち紙として使用される2層構造の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布に関する。さらに詳しくは、第2層表面に壁紙の表層が設けられて壁紙として使用され、壁紙の表層が設けられる第2層表面とは反対側の第1層表面を、壁面に糊を用いて貼り付ける2層構造の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布において、寸法安定性が良好であって施工性が良好であり、接着後の実用時の剥がれ等の問題がなく、ピール特性に優れ、かつ毛羽立ちの問題がなく、印刷やコーティング適性を有する壁紙裏打ち用抄合わせ不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低価格である上に、印刷加工、発泡加工、エンボス加工等の種々の加工適性を持ち合わせていることから、デザイン性、色柄等が豊富であるビニル壁紙等が室内装飾用内装材として広く用いられている。
【0003】
壁紙を壁に施工する際、壁紙裏面に澱粉や酢酸ビニルエマルジョンやメチルセルロース等の水溶性の糊をロールコーターで塗布し、糊付けした壁紙の糊面を内側にして折り畳み、壁に貼るまで暫く放置した後、壁面への貼り付け作業を行う。この糊付けから施工までの放置された状態では、壁紙用裏打ち紙は水溶性の糊によってカールしたり、伸びたりする現象が起こる。また、石膏ボードやコンクリート等の壁面に貼り付けて数日後に完全に糊が乾燥すると、逆に収縮する現象が起こる。そのため、壁紙用裏打ち紙には乾燥状態と湿潤状態での寸法変化が小さいことが要求される。この対策として、ポリアルキレングリコールを塗布した壁紙(例えば、特許文献1参照)、スルファミン酸グアニジン誘導体、表面サイズ剤、バインダーからなる混合液を含浸した壁紙(例えば、特許文献2参照)が開示されている。また、寸法変化が小さい内装材としては、紙基材に合成繊維または無機質材料を添加して、防カビを目的とした水中伸度が1%未満の壁紙等の内装材が提案されているが、これは、壁紙として通気性を確保するものであった(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、近年、居住空間の高級化と多様化が進んでおり、これに伴い新築住宅に比べ既設住宅のリフォームによる壁紙の貼り替え需要が多くなってきている。リフォームを行う際に問題となるのは、壁紙を壁から剥がす際の作業性である。従って、壁紙を壁面から剥がす際の剥離強度が弱い、いわゆるピール特性に優れた壁紙が求められている。ピール特性に優れた壁紙としては、糊にメチルセルロースを用いた壁紙が開示されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、壁紙にはデザイン、意匠性を高めるための印刷やボリューム感を高めるための発泡性ポリ塩化ビニル樹脂のコーティングが行われ、表層が設けられる。そのため、壁紙用裏打ち紙の印刷やポリ塩化ビニル樹脂コーティングが施される側には、印刷適性やコーティング適性が必要となる。
【0005】
しかしながら、パルプ繊維のみからなる壁紙用裏打ち紙、紙基材に単に合成繊維または無機質材料を添加した壁紙用裏打ち紙では、層間強度が弱いために壁紙の層間で剥離してしまい、壁面に壁紙の一部がランダムに残り作業性を低下させるばかりでなく、貼り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまうという問題があった。また、毛羽立ちによって、印刷適性やコーティング適性が不十分だという問題があった。
【特許文献1】特開2001−81700号公報
【特許文献2】特開平10−273896号公報
【特許文献3】特開2001−303491号公報
【特許文献4】特開2005−154968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、寸法安定性が良好であると共に、ピール特性を有し、印刷やコーティング適性をも有する壁紙裏打ち用抄合わせ不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、この課題を解決するため研究を行った結果、2層構造の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層は有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用抄合わせ不織布により顕著な効果が得られるという知見をもって本発明を完成するに至った。さらに、第2層の繊維状バインダーの一部または全てがポリビニルアルコール繊維(以下、PVA繊維という)である壁紙裏打ち用抄合わせ不織布、第2層表面に顔料が付与されている壁紙裏打ち用抄合わせ不織布を見出した。
【0008】
また、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーを含み、第2層は有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーを含んでなる壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の製造方法において、第2層の抄造に引き続き、第1層を抄合わせてプレスした後、第2層表面をヤンキードライヤーに当てて乾燥することを特徴とする壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の製造方法を見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂コーティングや印刷等の加工がなされて壁紙として使われる壁紙裏打ち用抄合わせ不織布に関し、第1層と第2層とで機能分離することにより、第2層が印刷やコーティング時の欠点となる毛羽立ちを抑え、コーティング適性を備え、第1層が壁面から壁紙を剥離する際のピール特性を付与し、さらに両層で寸法安定性を良好に備えた壁紙裏打ち用の抄合わせ不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の2層構造の壁紙裏打ち用不織布は、石膏ボードやコンクリート等からなる壁面または壁紙用裏打ち用不織布の第1層表面に塗布された糊によって、壁面に貼り付けられる。本発明の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の第1層は、パルプ繊維を含むことで、繊維状バインダーを含んでいても、親水性に調整されている。また、適度に叩解されたパルプ繊維を用いることにより繊維間に一定の空隙部を有し、吸水性が調整されている。パルプ繊維の叩解度は、300mlCSF以上が好ましく、400mlCSF以上がより好ましい。叩解度が300mlCSF未満の場合には、空隙部分が少なくなって吸水性が低下することがあり、糊が入り込みにくくなって直ぐに乾いてしまい、作業性が低下する場合がある。
【0011】
パルプ繊維は、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。これらの繊維は、本発明の性能を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等を使用してもよい。本発明の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の第1層に配合されるパルプ繊維の比率は、第1層全体に対して、50〜97質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜93質量%がさらに好ましい。50質量%未満の場合、強度維持、寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増すことがある。一方、97質量%を超えると、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあり、また、貼り替え時に層間剥離を起こしてしまうことがある。さらに、寸法安定性が得られないこともある。
【0012】
第1層に配合される繊維状バインダーは、断面が扁平なパルプ繊維とは異なり、真円状または真円状に近い形状であり、パルプ繊維同士の間に存在させることによって、空隙部を増す働きをすると共に、耐水性に乏しいパルプ繊維同士を接着させることによって湿潤状態においても強度を維持し、糊が塗布されたときの伸びや施工されて乾燥した後の収縮等の寸法変化を抑える働きがある。また、石膏ボードやコンクリート等の壁面に施工された壁紙をリフォーム時に剥がす際には、壁面と壁紙の間に存在する糊層で剥離させることが重要であるが、繊維状バインダーを配合しないパルプ繊維のみの場合やパルプ繊維と合成繊維のみの場合には、層間強度が弱いために壁紙の層間で剥離してしまい、壁面に壁紙の一部がランダムに残り作業性を低下させるばかりでなく、貼り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまう。本発明では、繊維状バインダーを第1層に配合していることで、壁紙の層間剥離を抑制することが可能となっている。本発明において、第1層に配合される繊維状バインダーの比率は、第1層全体に対して、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。3質量%未満の場合、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、貼り替え時に層間剥離を起こしてしまうこともある。また、寸法安定性が得られない場合もある。一方、50質量%を超えると、強度維持、寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増すこともある。
【0013】
繊維状バインダーの繊度は、0.1〜5.6デシテックスが好ましく、0.6〜3.3デシテックスがより好ましく、1.1〜2.2デシテックスがさらに好ましい。0.1デシテックス未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、パルプ繊維との接点が少なくなり、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、均一な地合いが取れないことがある。繊維状バインダーの繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり、均一な地合いが得られないことがある。
【0014】
繊維状バインダーとしては、単成分からなる単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、不織布の空隙部を保持したまま、耐水強度を向上させることができる。繊維状バインダーとしては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリエステルの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、PVA繊維のような繊維状バインダーも使用することができる。特に、芯鞘繊維が空隙部確保と強度発現の両方を備えているので好ましい。
【0015】
本発明において、第1層には、パルプ繊維、繊維状バインダーに加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、バインダー性能を有しないパルプ繊維以外の繊維を配合することができ、その結果、さらに空隙部を増すことができる。パルプ繊維以外の繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。
【0016】
本発明の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の第2層は、パルプ繊維と繊維状バインダーと有機繊維を含む。この第2層表面は、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂等が表面にコーティングされたり、印刷がなされたりする面であることから、第2層は繊維状バインダーで寸法安定性を保たせ、有機繊維で適当な空隙部を保持してボリューム感を出し、パルプ繊維で目を詰めてコーティングや印刷時の過剰な浸透を押さえて平坦性を良好なものに保たせている。さらに、繊維状バインダーの一部をPVA繊維にすることによって、毛羽立ちのより少ない平坦な表面が得られることから、コーティングや印刷後の表面も平滑になる。
【0017】
第2層において、パルプ繊維と繊維状バインダーと有機繊維の配合量を合計で100質量%とした場合に、繊維状バインダーの配合率は2〜50質量%、好ましくは4〜40質量%、より好ましくは6〜30質量%である。2質量%未満であると寸法安定性が悪く、50質量%を超えるとコーティングや印刷時に浸透量が過剰となってしまうという問題が発生する場合がある。
【0018】
有機繊維は、パルプ繊維と繊維状バインダー以外の合成繊維であり、空隙部を埋め易い断面形状が扁平な繊維を除く。有機繊維を配合することによって、さらに空隙部を増やすことができる。有機繊維としては、再生繊維としてのレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等が、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ナイロン系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。有機繊維の配合比率は特に限定しないが、パルプ繊維と繊維状バインダーと有機繊維の配合量を合計で100質量%とした場合に、2〜50質量%が好ましく、4〜40質量%がより好ましく、6〜30質量%がさらに好ましい。2質量%未満であると空隙部保持効果が少なくなる場合があり、50質量%を超えると空隙部が過剰となってコーティングや印刷時に浸透量が過剰となってしまうという問題が発生することがある。有機繊維の他に、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維も性能を阻害しない範囲で加えることができる。
【0019】
有機繊維の繊度は、0.1〜11デシテックスが好ましく、0.6〜5.6デシテックスがより好ましく、1.1〜3.3デシテックスがさらに好ましい。0.1デシテックス未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、11デシテックスを超えた場合、空隙が過剰になる場合があり、また均一な地合いが取れないことがある。有機繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり均一な地合いが得られないことがある。
【0020】
パルプ繊維の配合比率は、パルプ繊維と繊維状バインダーと有機繊維の配合量を合計で100質量%とした場合に、50〜96質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜85質量%がさらに好ましい。50質量%未満の場合、空隙部が多すぎるため、ポリ塩化ビニルのコーティング時に浸透量が過剰となってしまうことがあり、一方、96質量%を超えると寸法安定性が悪くなることがある。
【0021】
本発明において、第2層で使用するパルプ繊維としては、上記の第1層に用いるパルプ繊維を使用できる。また、第2層で使用する繊維状バインダーとしては、上記の第1層に用いる繊維状バインダーを使用できる。芯鞘繊維を好ましく使用できる。さらに、PVA繊維を単独または芯鞘繊維と併用することがより好ましい。PVA繊維は、適当な原料PVAを用いて適当な条件で製造した繊維であり、常温の水ではほとんど溶解しないで繊維形態を保っているが、抄紙後のヤンキードライヤー面に第2層表面が接して加熱されると容易に溶解し始め、その瞬間にタッチロールのごとき設備で加圧することにより、繊維間にまたがって繊維状バインダーとなり、その後の脱水乾燥によって再凝固し、芯鞘繊維のみでは得られない毛羽立ちの少ない平滑な面が得られる。また、高温水中でなければ容易に離れない強力な紙層構成繊維となる。
【0022】
このPVA繊維の接着力に及ぼす影響は色々考えられるが、大別して水中軟化点、繊度、繊維長の3点から考えることができる。まず、水中軟化点について説明する。水中軟化点は、実際抄紙の場合、湿紙がドライヤーにより熱を受け、繊維状バインダーが溶け始めて接着機能を示す温度を大体示している。水中軟化点の低いPVA繊維を使用する程、接着の前提条件である繊維状バインダーの溶解が容易となり接着効果が大きくなる。水中軟化点の低い方が、接着効果の点からはよいが、ドライヤーへの付着は起こり易い。PVA繊維が溶解するためには、その水中軟化点以上に湿紙の温度が高くなる必要があり、従って乾燥温度が高い程接着効果が大きく、強度は向上する。湿紙中の水温がPVA繊維の水中軟化点以下では、繊維状バインダーの溶解が起こらず、従ってバインダー効果はまったく失われる。ヤンキードライヤーの場合、ドライヤーのスチーム温度は100〜160℃程度で、これに接触している湿紙の温度は60〜90℃と考えられるから、PVA繊維の水中軟化点として65〜85℃のものを選定すると十分な接着力を得ることができる。
【0023】
次に、繊度については、細くなるに従って強度は向上する。このことは同一質量比で添加した場合、細い繊維を用いると、添加本数が多くなって接着点の数が増えるため、接着力が大きくなるからである。但し、あまり繊度が小さくなりすぎると、不織布が緻密になりすぎることがある。PVA繊維の繊度は、特に限定しないが、0.1〜5.6デシテックスが好ましく、0.3〜3.3デシテックスがより好ましく、0.6〜2.2デシテックスがさらに好ましい。最後に、PVA繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり均一な地合いが得られないことがある。
【0024】
本発明の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の坪量は、特に限定しないが、15g/m2以上が好ましく、60g/m2以上がより好ましい。15g/m2未満では、引張強度、硬さに問題があり、コーティングや印刷の際にカールの発生や断紙を起こす恐れがある。一方、カールや断紙の抑制効果は、坪量が200g/m2を超えた領域ではほとんど変わらないため、坪量は200g/m2以下とすることが好ましく、150g/m2以下としてもよい。
【0025】
第1層の坪量は、5g/m2以上が好ましく、20g/m2以上がより好ましい。5g/m2未満の場合、第1層表面に水溶性の糊を塗布する際に、第2層にまで糊が達してしまい、第1層の役割を果たさなくなってしまうことがある。一方、糊の浸透を抑制する効果は、坪量が100g/m2を超えた領域ではほとんど変わらないため、第1層の坪量は100g/m2以下とすることが好ましく、80g/m2以下としてもよい。
【0026】
第2層の坪量は、10g/m2以上が好ましく、30g/m2以上がより好ましい。10g/m2未満の場合、均一な地合いを得ることが困難となり、毛羽立ちが発生する恐れがある。一方、150g/m2を超えた領域では、毛羽立ちの抑制効果はほとんど変わらないため、第2層の坪量は150g/m2以下とすることが好ましく、120g/m2以下としてもよい。
【0027】
本発明の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布には、必要に応じてサイズ剤を配合することができる。サイズ剤としては、本発明の所望の効果を損なわないものであれば、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、合成サイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)など公知のサイズ剤のいずれをも用いることができる。
【0028】
この他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、従来から使用されている各種アニオン性、ノニオン性、カチオン性、あるいは両性の歩留り向上剤、濾水剤、分散剤、紙力向上剤や粘剤が必要に応じて適宜選択して使用される。なお、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を目的に応じて適宜添加することも可能である。
【0029】
また、必要に応じて、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の填料や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の自己消火性を有する填料等も配合できる。特にコンクリートや石膏ボード等の壁面が透けて見えないようにするために隠蔽性、不透明度を高めるためには二酸化チタンが有用である。これら填料の添加量は、隠蔽性、難燃性、不織布の強度等を考慮して、上記の抄合わせ不織布100質量%に対し、5〜30質量%である。
【0030】
本発明の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の第1層は、石膏ボードやコンクリート等の壁面に接着される面であり、第2層は印刷されたり、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂をコーティングされたりする面である。坪量比率は、特に限定されないが、壁紙としての印刷適性、コーティング適性、ボリューム感を付与することを考慮して、第1層より第2層の坪量を大きくすることが好ましい。
【0031】
本発明における壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の製造方法は、例えば、以下のように行うことができる。第2層は、水に叩解後のパルプ繊維、繊維状バインダー、有機繊維、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、パルプスラリーとして貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ抄紙機に送り、目標の坪量となる様に第2層を先に抄造する。次に、第1層は、水に叩解後のパルプ繊維、繊維状バインダー、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、貯蔵タンクに送り、このスラリーを第1層用として一定量ずつ抄紙機に送り、先に抄造した第2層に第1層の目標の坪量となる様に抄合わせる。さらに、この抄合わせたシートをプレス後、第2層面がヤンキードライヤー面に当たる様にして乾燥し壁紙裏打ち用抄合わせ不織布とすることができる。
【0032】
本発明において得られた抄合わせ不織布の第2層表面には、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂や印刷の目止め、毛羽立ちの抑制といった目的で、さらに顔料を付与することができる。顔料の付与は、顔料とバインダーを含む塗液を第2層表面に含浸または塗工することによって可能である。顔料としては、抄紙工程で填料として添加可能なクレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン等を使用できる。特にコンクリートや石膏ボード等の壁面が透けて見えないようにするために、隠蔽性、不透明度を高めるには二酸化チタンが有用である。また、自己消火性をもたせるために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を使用できる。壁紙裏打ち用抄合わせ不織布100質量%に対して、付与する顔料の割合は3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。
【0033】
顔料を付与する方法としては、抄紙工程の中間に設置された2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター等の含浸または塗工装置による処理が可能であるが、これに限定されるものではない。また、抄紙後にオフマシン装置での含浸または塗工処理も可能である。
【実施例】
【0034】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0035】
実施例1
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)、有機繊維(帝人社製、ポリエステル繊維、1.7デシテックス×5mm)を85:10:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量70g/m2となる様に第2層を先に抄造した。
【0036】
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を97:3の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量30g/m2となる様に抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層表面がヤンキードライヤー面に当たる様にして乾燥し、坪量100g/m2の抄合わせ不織布を得た。
【0037】
実施例2
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを90:10の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2の抄合わせ不織布を得た。
【0038】
実施例3
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを70:30の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例3の抄合わせ不織布を得た。
【0039】
実施例4
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを50:50の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の抄合わせ不織布を得た。
【0040】
実施例5
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを40:60の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例5の抄合わせ不織布を得た。
【0041】
(比較例1)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを100:0の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして比較例1の抄合わせ不織布を得た。
【0042】
(比較例2)
実施例1の第1層の芯鞘状繊維状バインダーの代わりに帝人社製ポリエステル繊維(1.7デシテックス×5mm、有機繊維)を用いて、パルプ繊維、有機繊維を90:10の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして比較例2の抄合わせ不織布を得た。
【0043】
実施例6
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)、有機繊維(帝人社製、ポリエステル繊維、1.7デシテックス×5mm)、繊維状バインダー(商品名:VPB107、クラレ社製、1.1デシテックス×3mm、PVA繊維)を89:3:5:3の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量80g/m2となる様に第2層を先に抄造した。
【0044】
次に、別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を80:20の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量20g/m2となる様に抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層面がヤンキードライヤー面に当たる様にして乾燥し、坪量100g/m2の抄合わせ不織布を得た。
【0045】
実施例7
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を85:10:5:0の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例7の抄合わせ不織布を得た。
【0046】
実施例8
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を80:10:5:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例8の抄合わせ不織布を得た。
【0047】
実施例9
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を62:30:5:3の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例9の抄合わせ不織布を得た。
【0048】
実施例10
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を85:0:5:10の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例10の抄合わせ不織布を得た。
【0049】
実施例11
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を98:0:1:1の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例11の抄合わせ不織布を得た。
【0050】
実施例12
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を96:0:2:2の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例12の抄合わせ不織布を得た。
【0051】
実施例13
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を35:0:55:10の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例13の抄合わせ不織布を得た。
【0052】
実施例14
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を35:45:10:10の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例14の抄合わせ不織布を得た。
【0053】
実施例15
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を70:10:10:10の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして実施例15の抄合わせ不織布を得た。
【0054】
(比較例3)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維を80:0:20:0の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして比較例3の抄合わせ不織布を得た。
【0055】
実施例16
顔料として二酸化チタン(商品名:W−10、石原産業社製)、バインダーとしてアクリルエマルジョン(商品名:ボンコートMAT−200−E、大日本インキ化学工業社製)及びポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、クラレ社製)をそれぞれ100:20:5の比率で水に分散、混合し顔料塗工液を作製した。本塗工液をエアナイフ塗工装置にて実施例8の抄合わせ不織布の第2層面に乾燥質量で25g/m2塗工後乾燥させ、実施例16の抄合わせ不織布を得た。
【0056】
実施例17
顔料をカオリン(商品名:ニュークレイ、エンゲルハード社製)に変えた以外は、実施例16と同様にして実施例17の抄合わせ不織布を得た。
【0057】
試験1(パルプの叩解度)
JIS P 8121に準じ、パルプのカナダ標準濾水度を測定した。
【0058】
試験2(寸法安定性)
抄合わせ不織布を温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間以上調湿し、サンプルの横方向の長さ(原寸)を正確に測定する。このサンプルを温度23℃の水中へ5分間浸した後、速やかにサンプルの長さを測定し、原寸に対する伸び率を求めた。0に近い程、寸法安定性がよい。従来の経験則より伸び率は0.6%以内が望ましく、最低でも1.0%以内が必要である。これらの結果を表1〜4に示した。
【0059】
試験3(毛羽立ち)
抄合わせ不織布を温度23℃、湿度50%RH環境下で24時間調湿した後、MD方向32cm×CD方向15cmとなるように裁断した。なお、サンプリングの際は紙面を擦らないよう十分注意をして行った。ガラス板上に坪量150g/m2の上質紙2枚を敷き、クリップにて固定した。次に幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属直方体(重さ400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙面を2回擦りガーゼ面をならした。上質紙上に抄合わせ不織布を、ポリ塩化ビニル塗工面となる第2層を上にしてのせ、第2層表面を用意したガーゼを巻きつけた金属直方体にて、自重によりMD方向に向かって1回擦った。抄合わせ不織布の向きを変え、先ほどとは逆方向に向かって1回擦った。この抄合わせ不織布の擦った場所に、アプリケーターを用い、塗工厚200μmの塩化ビニルペーストを塗工し、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化したポリ塩化ビニル層面の中央部に5cm×10cmの切り抜いた型紙をのせ、その中に発生した突起物の数を計測した。結果は、同様にして作製したサンプル4枚の計測値の合計(200cm2あたりの個数)を計測した。計測した突起物の数が25個以下を◎、26〜50個を○、51〜150個を△、151個以上を×と評価した。これらの結果を表1〜4に示した。
【0060】
試験4(ピール特性)
メチルセルロース系壁紙用粉末糊を5質量%濃度となるように水で希釈して十分撹拌した糊溶液を、抄合わせ不織布の第1層面にウェット塗工量が150g/m2になるように塗工し、厚さ12.5mmの準不燃石膏ボード(商品名:タイガーハイクリンボード、吉野石膏社製)貼着し、10日後に、幅5cm、長さ10cmの長方形に切れ目を入れて引き剥がし、剥がれた状態を観察した。石膏ボードと抄合わせ不織布の第1層面の間で綺麗に剥離できたものを○、石膏ボード表面に少量第1層面の一部が残るが全面剥離できたものを△、抄合わせ不織布の層間で剥離または切れたものを×と評価した。これらの結果を表1〜4に示した。
【0061】
試験5(不透明度)
抄合わせ不織布の不透明度をJIS P 8149:2000に準じて測定し、隠蔽性の評価を行った。抄合わせ不織布の不透明度が84%以上、好ましくは86%以上であれば隠蔽性が良好となり、壁紙メーカーにて改めて隠蔽性付与の工程を省略することが可能となる。これらの結果を表4に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
表1〜4の結果から明らかな様に、本発明の実施例1〜15の抄合わせ不織布は寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性の全てが良好であり、壁紙裏打ち用として有用に活用できる。さらに実施例16及び17は、第2層表面に顔料を付与していることから不透明度が高く、石膏ボードやコンクリート等の壁面の透けを防止できていた。比較例1及び2は、壁面に接する第1層に繊維状バインダーを配合していないため、ピール特性が悪かった。比較例3は、表層を設ける側の第2層に繊維状バインダーを配合していないため、毛羽立ちが悪かった。
【0067】
実施例5の抄合わせ不織布は、寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性の試験結果は良好であったが、試験4において、糊溶液を塗工した際に、糊溶液が浸透し易い傾向が確認された。実施例7と実施例10を比較すると、繊維状バインダーとしてPVA繊維を用いた実施例10の方が、毛羽立ちの抑制効果が高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の活用例として、寸法安定性が良好でピール特性を有し、印刷やコーティング適性を有する壁紙等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層構造の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層は有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用抄合わせ不織布。
【請求項2】
第2層の繊維状バインダーの一部または全てがポリビニルアルコール繊維である請求項1記載の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布。
【請求項3】
第2層表面に顔料が付与されている請求項1記載の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布。
【請求項4】
第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーを含み、第2層は有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーを含んでなる壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の製造方法において、第2層の抄造に引き続き、第1層を抄合わせてプレスした後、第2層表面をヤンキードライヤーに当てて乾燥することを特徴とする壁紙裏打ち用抄合わせ不織布の製造方法。

【公開番号】特開2009−179900(P2009−179900A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18846(P2008−18846)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】