説明

壁面塗装材用糊、その製造方法および壁面塗装材

【課題】壁面塗装材を回収して再利用可能な壁面塗装材用糊、その製造方法および壁面塗装材を提供する。
【解決手段】コンニャク粉とデンプンとにかわとを含む。コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを3〜5質量部、にかわを2.7〜4.5質量部含むことが好ましい。コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを5〜7質量部、にかわを4.5〜6.3質量部含んでいてもよい。コンニャク粉25〜35質量部に対して、デンプンを30〜50質量部、にかわを10〜20質量部含んでいてもよい。安息香酸、安息香酸ナトリウム、セルロースエーテルおよび竹酢液のうちの少なくとも1種類を含むことが好ましい。コンニャク粉と水とを撹拌して生成されたコンニャク糊と、デンプンと水とを撹拌して生成されたデンプン糊と、にかわと水とを混合して生成されたにかわ液とを混合して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面塗装材用糊、その製造方法および壁面塗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の壁面塗装材として、断熱機能や調湿機能、消臭機能などを有するものや、天然素材を使用したもの、質感に優れたものなど、様々な種類のものがある(例えば、特許文献1、2または3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−200508号公報
【特許文献2】特開2008−94659号公報
【特許文献3】特開2007−161504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2および3に記載のような従来の壁面塗装材は、薬品やサンドペーパーなどを使用して剥がす必要があり、下地の壁材も傷つくため、再利用されることなく壁材とともに廃棄されているという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、壁面塗装材を回収して再利用することができる壁面塗装材用糊、その製造方法および壁面塗装材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る壁面塗装材用糊は、コンニャク粉とデンプンとにかわとを含むことを、特徴とする。
本発明に係る壁面塗装材用糊は、壁面塗装材の原料となる、繊維素素材、ゼオライト、珪藻土、珪砂、パーライトなどの1種または2種以上の組み合わせ、またはその他の骨材と混ぜて使用される。本発明に係る壁面塗装材用糊を使用した壁面塗装材は、乾燥状態では、下地の壁材などに固く付着しているため、スクレーパー等で削っても、容易には剥がれない。しかし、この壁面塗装材に水を含ませて湿潤状態にすることにより、スクレーパー等により、下地の壁材などを傷つけることなく、容易に剥がすことができる。このため、本発明に係る壁面塗装材用糊によれば、壁面塗装材を回収して粉砕し再利用することができる。また、下地の壁材なども再利用することができる。
【0007】
本発明に係る壁面塗装材用糊は、天然素材の食品添加物から成っているため、廃棄したとしても環境に悪影響を与えず、環境への負荷が小さい。また、災害・緊急時の救難食料にすることもできる。
なお、本発明において、「コンニャク粉」の範疇には、グルコマンナンの粉末も含まれる。また、「にかわ」の範疇には、ゼラチンも含まれる。デンプンは、コーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、サツマイモデンプン、タピオカデンプンなどの植物由来のデンプンであっても、α化デンプン、β化デンプン、デキストリン、可溶性デンプンなどの変性デンプンであってもよい。
本発明に係る壁面塗装材用糊は、水に溶かして使用される。本発明に係る壁面塗装材用糊の水に対する混合比率は0.6〜12質量%が好ましく、1.7〜2.2質量%が特に好ましい。本発明に係る壁面塗装材用糊で、水全体に対するコンニャク粉の混合比率は0.2〜2質量%、デンプンの混合比率は0.2〜6質量%、にかわの混合比率は0.2〜6質量%が好ましく、コンニャク粉の混合比率は0.4質量%前後、デンプンの混合比率は0.67〜2質量%、にかわの混合比率は0.47〜1.8質量%が特に好ましい。水の量が多くなると粘度が小さくなって密着性が悪くなり、水の量が少なくなると粘度が大きくなって施工性が悪くなる。壁面塗装材用糊の水に対する混合比率は、骨材の種類に応じて適宜、調整することが好ましい。
【0008】
本発明に係る壁面塗装材用糊は、コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを3〜5質量部、にかわを2.7〜4.5質量部含むことが好ましい。この場合、ゼオライトと混ぜることにより、特に、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れた壁面塗装材を形成することができる。
【0009】
本発明に係る壁面塗装材用糊は、コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを5〜7質量部、にかわを4.5〜6.3質量部含んでいてもよい。この場合、珪藻土と混ぜることにより、特に、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れた壁面塗装材を形成することができる。
【0010】
また、本発明に係る壁面塗装材用糊は、コンニャク粉25〜35質量部に対して、デンプンを30〜50質量部、にかわを10〜20質量部含んでいてもよい。この場合、繊維素繊維と混ぜることにより、特に、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れた壁面塗装材を形成することができる。
【0011】
本発明に係る壁面塗装材用糊は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、セルロースエーテル、竹酢液およびニンニクのうちの少なくとも1種類を含んでいてもよい。この場合、安息香酸および安息香酸ナトリウムにより防腐、防カビ効果が得られ、セルロースエーテルにより粘度を高める増粘効果が得られ、竹酢液およびニンニクにより防虫効果が得られる。セルロースエーテルは、メチルセルロースであってもよい。素材が食品添加物から成り腐りやすいため、安息香酸または安息香酸ナトリウムによる防腐、防カビ作用が特に効果的である。また、素材が食品添加物から成り虫がつきやすいため、竹酢液による防虫作用が特に効果的である。
【0012】
本発明に係る壁面塗装材用糊の製造方法は、コンニャク粉と水とを撹拌して生成されたコンニャク糊と、デンプンと水とを撹拌して生成されたデンプン糊と、にかわと水とを混合して生成されたにかわ液とを混合することを、特徴とする。
本発明に係る壁面塗装材用糊の製造方法によれば、本発明に係る壁面塗装材用糊を容易に製造することができる。
【0013】
本発明に係る壁面塗装材は、前述のいずれかの壁面塗装材用糊と、ゼオライト、珪藻土または繊維素繊維との混合物から成ることを、特徴とする。
本発明に係る壁面塗装材は、乾燥状態では、下地の壁材などに固く付着しているため、スクレーパー等で削っても、容易には剥がれない。しかし、この壁面塗装材に水を含ませて湿潤状態にすることにより、スクレーパー等により、下地の壁材などを傷つけることなく、容易に剥がすことができる。このため、回収して粉砕し再利用することができる。また、下地の壁材なども再利用することができる。
本発明に係る壁面塗装材で、本発明に係る壁面塗装材用糊を水に溶かしたものに対する骨材の混合割合は、10〜200質量%が好ましい。骨材がゼオライトの場合、本発明に係る壁面塗装材用糊を水に溶かしたものに対するゼオライトの混合比率は40〜200質量%が好ましく、特に67〜87質量%が特に好ましい。骨材が珪藻土の場合、本発明に係る壁面塗装材用糊を水に溶かしたものに対する珪藻土の混合比率は20〜100質量%が好ましく、特に43質量%前後が特に好ましい。骨材が繊維素繊維の場合、本発明に係る壁面塗装材用糊を水に溶かしたものに対する繊維素繊維の混合比率は10〜50質量%が好ましく、特に20質量%前後が特に好ましい。
【0014】
本発明に係る壁面塗装材は、前記壁面塗装材用糊がコンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを3〜5質量部、にかわを2.7〜4.5質量部含む場合、ゼオライトとの混合物から成ることが好ましい。この場合、特に、ゼオライトを用いたもので、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れたものとなる。
また、本発明に係る壁面塗装材は、前記壁面塗装材用糊がコンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを5〜7質量部、にかわを4.5〜6.3質量部含む場合、珪藻土との混合物から成ることが好ましい。この場合、特に、珪藻土を用いたもので、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れたものとなる。
また、本発明に係る壁面塗装材は、前記壁面塗装材用糊がコンニャク粉25〜35質量部に対して、デンプンを30〜50質量部、にかわを10〜20質量部含む場合、繊維素繊維との混合物から成ることが好ましい。この場合、特に、繊維素繊維を用いたもので、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れたものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、壁面塗装材を回収して粉砕し再利用可能な壁面塗装材用糊、その製造方法および壁面塗装材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の壁面塗装材用糊、その製造方法および壁面塗装材について説明する。
本発明の実施の形態の壁面塗装材用糊は、コンニャク粉とデンプンとにかわとを含んでいる。本発明の実施の形態の壁面塗装材用糊は、コンニャク粉と水とを撹拌して生成されたコンニャク糊と、デンプンと水とを撹拌して生成されたデンプン糊と、にかわと水とを混合して生成されたにかわ液とを混合して製造される。
【0017】
本発明の実施の形態の壁面塗装材用糊の、各成分の配合量などを検討するために、施工性、密着性および剥離性について調べる試験を行った。試験は、まず壁面塗装材用糊の試験試料を壁面塗装材の原料と混合し、下地材として300mm×300mmの石膏ボード(吉野石膏株式会社製)に金ごてで塗布し、そのときの施工性を調べた。さらに、塗布後2昼夜乾燥させ、スクレーパーまたは皮スキで2〜3回こすって剥ぎ取り、密着性を調べた。また、塗布後2昼夜乾燥させたものに、霧吹きで清水を含ませ、10秒後、スクレーパーまたは皮スキで2〜3回こすって剥ぎ取り、剥離性を調べた。施工性、密着性および剥離性の評価基準を、表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
リサイクルして再利用する必要がない場合には、施工性および密着性に優れていれば良く、壁面塗装材用糊としては、施工性が○、密着性が○のものが好ましいことになる。しかしながら、再利用可能な壁面塗装材用糊としては、施工性および密着性に加えて、剥離性も優れている必要がある。また、吸湿したときに脆くなってすぐに剥がれるものは壁面塗装材として適さず、スクレーパーまたは皮スキで2〜3回こすることにより剥がれるもの、すなわち、剥離性が○のものが最適な壁面塗装材用糊であるといえる。
【0020】
試験に使用する壁面塗装材用糊としては、コンニャク粉と水とを撹拌して生成されたコンニャク糊、デンプンと水とを撹拌して生成されたデンプン糊、にかわと水とを混合して生成されたにかわ液の3種類について、それぞれ単独の試料、2種類を混ぜた試料、3種類を混ぜた試料を準備した。また、壁面塗装材の原料としては、微粒状のゼオライト(日東粉化工業株式会社製)、粉末状の珪藻土(昭和化学工業株式会社製)、粉末状の繊維素繊維(日本製紙株式会社製)の3種類を準備した。
【0021】
[コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液がそれぞれ単独の場合]
コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液がそれぞれ単独から成る糊を試験試料として、試験を行った。試験には、コンニャク糊に含まれるコンニャク粉の含有濃度、デンプン糊に含まれるデンプン粉の含有濃度、にかわ液に含まれるにかわの含有濃度を変化させたものを使用した。各試験試料に対して、ゼオライト、珪藻土、繊維素繊維をそれぞれ混合して壁面塗装材を作成し、試験を行った。各試験試料と壁面塗装材の原料との混合量を表2に、試験結果を表3に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
表2および表3に示すように、以下に示す結果が確認された。コンニャク糊(試料1、2)は、珪藻土の施工性が良いが、密着性が悪い。また、コンニャク糊の剥離性は、ゼオライトおよび繊維素繊維で良いが、珪藻土では悪い。なお、コンニャク糊は、約一週間程度保管しておくと、水が出て粘性が徐々に失われる傾向があり、保存性が悪い。デンプン糊(試料3〜6)は、デンプン粉の含有濃度が高くなると、ゼオライトおよび繊維素繊維の密着性が良くなるが、剥離性が悪くなり、ひび割れの原因にもなりやすい。また、デンプン糊は、珪藻土の剥離性が悪い。にかわ液(試料7〜9)は、ゼオライト、珪藻土、繊維素繊維ともに施工性が悪い。また、にかわ液は、ゼオライトおよび珪藻土の剥離性が悪い。
【0025】
ゼオライトは、コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液ともに、施工性が悪い。珪藻土は、コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液ともに、密着性が悪く、剥離性も悪い。繊維素繊維は、4%濃度のデンプン糊(試料4)のときを除いて、コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液ともに、施工性が悪い。4%濃度のデンプン糊(試料4)は、繊維素繊維とともに使用する場合、施工性および密着性が良く、再利用を考慮しなければ、繊維素繊維用の壁面塗装材用糊として好ましい。しかし、剥離性がやや悪いため、再利用するのは困難である。このように、コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液がそれぞれ単独から成る糊では、施工性、密着性および剥離性の全てを満足する結果は得られなかった。
【0026】
[コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液のうち2種類を混合した場合]
コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液のうち2種類を混合した糊を試験試料として、試験を行った。試験には、コンニャク糊に含まれるコンニャク粉の含有濃度、デンプン糊に含まれるデンプン粉の含有濃度、にかわ液に含まれるにかわの含有濃度を変化させたものを使用した。各試験試料に対して、ゼオライト、珪藻土、繊維素繊維をそれぞれ混合して壁面塗装材を作成し、試験を行った。各試験試料と壁面塗装材の原料との混合量を表4に、試験結果を表5に示す。
【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】
表4および表5に示すように、以下に示す結果が確認された。コンニャク糊とデンプン糊とを混合した糊(試料10〜12)は、珪藻土の施工性が良いが、密着性、剥離性が悪い。デンプン糊の含有濃度が高くなると、ゼオライトの剥離性、繊維素繊維の密着性が良くなるが、繊維素繊維の施工性、剥離性が悪くなる。コンニャク糊とにかわ液とを混合した糊(試料13〜15)は、珪藻土の施工性、繊維素繊維の密着性が良いが、珪藻土の密着性、剥離性が悪い。にかわ液の含有濃度が高くなると、ゼオライトの密着性、剥離性がやや良くなるが、繊維素繊維の施工性が悪くなる。デンプン糊とにかわ液とを混合した糊(試料16〜19)は、珪藻土の施工性、繊維素繊維の密着性が良いが、珪藻土の密着性、剥離性が悪い。デンプン糊およびにかわ液の含有濃度が高くなると、ゼオライトの密着性、繊維素繊維の施工性が良くなるが、ゼオライトの剥離性、繊維素繊維の剥離性が悪くなる。
【0030】
ゼオライトは、施工性がやや悪い。珪藻土は、施工性が良いが、密着性、剥離性が悪い。繊維素繊維は、密着性が良いが、剥離性がやや悪い。1.2%濃度のコンニャク糊と4%濃度のデンプン糊とを等量混合した糊(試料11)、および、1.2%濃度のコンニャク糊と1.8%濃度のにかわ液とを等量混合した糊(試料13)は、繊維素繊維とともに使用する場合、施工性および密着性が良く、再利用を考慮しなければ、繊維素繊維用の壁面塗装材用糊として好ましい。しかし、剥離性がやや悪いため、再利用するのは困難である。このように、コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液のうち2種類を混合した糊では、施工性、密着性および剥離性の全てを満足する結果は得られなかった。
【0031】
[コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液の3種類を混合した場合]
コンニャク糊、デンプン糊、にかわ液の3種類を混合した糊を試験試料として、試験を行った。試験には、コンニャク糊に含まれるコンニャク粉の含有濃度、デンプン糊に含まれるデンプン粉の含有濃度、にかわ液に含まれるにかわの含有濃度を変化させたものを使用した。各試験試料に対して、ゼオライト、珪藻土、繊維素繊維をそれぞれ混合して壁面塗装材を作成し、試験を行った。各試験試料と壁面塗装材の原料との混合量を表6に、試験結果を表7に示す。
【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
表6および表7に示すように、1.2%濃度のコンニャク糊と4%濃度のデンプン糊と3.6%濃度のにかわ液とを等量混合した糊(試料22)は、ゼオライトとともに使用する場合、施工性、密着性および剥離性の全てを満足する結果が得られた。このことから、コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを3〜5質量部、にかわを2.7〜4.5質量部含む壁面塗装材用糊は、ゼオライトと混ぜることにより、特に、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れた壁面塗装材を形成することができるといえる。
【0035】
また、表6および表7に示すように、1.2%濃度のコンニャク糊と6%濃度のデンプン糊と5.4%濃度のにかわ液とを等量混合した糊(試料23)は、珪藻土とともに使用する場合、施工性、密着性および剥離性の全てを満足する結果が得られた。このことから、コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを5〜7質量部、にかわを4.5〜6.3質量部含む壁面塗装材用糊は、珪藻土と混ぜることにより、特に、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れた壁面塗装材を形成することができるといえる。
【0036】
さらに、表6および表7に示すように、1.2%濃度のコンニャク糊と4%濃度のデンプン糊と1.4%濃度のにかわ液とを混合した糊(試料24)は、繊維素繊維とともに使用する場合、施工性、密着性および剥離性の全てを満足する結果が得られた。このことから、コンニャク粉25〜35質量部に対して、デンプンを30〜50質量部、にかわを10〜20質量部含む壁面塗装材用糊は、繊維素繊維と混ぜることにより、特に、塗りやすく施工性に優れ、乾燥時の密着性や、湿潤時の剥離性にも優れた壁面塗装材を形成することができるといえる。
【0037】
これらの壁面塗装材用糊を使用した壁面塗装材は、乾燥状態では、下地の壁材などに固く付着しているため、スクレーパー等で削っても、容易には剥がれない。しかし、この壁面塗装材に水を含ませて湿潤状態にすることにより、スクレーパー等により、下地の壁材などを傷つけることなく、容易に剥がすことができる。このため、これらの壁面塗装材用糊によれば、壁面塗装材を回収して粉砕し再利用することができる。また、下地の壁材なども再利用することができる。これらの壁面塗装材用糊は、天然素材の食品添加物から成っているため、廃棄したとしても環境に悪影響を与えず、環境への負荷が小さい。また、災害・緊急時の救難食料にすることもできる。
【0038】
本来、壁面塗装材用糊は、被塗装物に対して接着させるためにある。容易に剥がれるようでは、壁面塗装材用糊としての価値がない。このため、水を含ませてスクレーパー等で剥ぎ取る場合、容易には剥がれないものである。乾燥状態では、さらに剥がしにくくなる。そのうえ、下地を傷付けずに剥がすのは、かなり難しい。酢酸ビニル系糊やエマルジョン系糊のような石油合成糊では、接着力が強すぎるため、下地を傷付けずに剥がすことはほとんど不可能である。石油合成糊では、壁面塗装材のリサイクルも不可能である。
これに対し、本発明の実施の形態の壁面塗装材用糊は、施工性、密着性、剥離性が良好で、接着力が強く、かつ、下地材を傷付けずに剥がすことができ、また、廃棄に際し環境に悪影響を与えず、さらに、リサイクルも可能である。
【0039】
なお、1.2%濃度のコンニャク糊と2〜6%濃度のデンプン糊と1.4〜5.4%濃度のにかわ液とを混合した糊(試料20〜24)は、繊維素繊維とともに使用する場合、施工性および密着性が良く、再利用を考慮しなければ、繊維素繊維用の壁面塗装材用糊として好ましい。また、1.2%濃度のコンニャク糊と6%濃度のデンプン糊と5.4%濃度のにかわ液とを等量混合した糊(試料23)は、ゼオライトとともに使用する場合、施工性および密着性が良く、再利用を考慮しなければ、繊維素繊維用の壁面塗装材用糊として好ましい。しかし、これらは剥離性がやや悪いため、再利用するのは困難である。
【0040】
なお、本発明の実施の形態の壁面塗装材用糊は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、セルロースエーテル、竹酢液およびニンニクのうちの少なくとも1種類を含んでいてもよい。この場合、安息香酸および安息香酸ナトリウムにより防腐、防カビ効果が得られ、セルロースエーテルにより粘度を高める増粘効果が得られ、竹酢液およびニンニクにより防虫効果が得られる。素材が食品添加物から成り腐りやすいため、安息香酸または安息香酸ナトリウムによる防腐、防カビ作用が特に効果的である。また、素材が食品添加物から成り虫がつきやすいため、竹酢液による防虫作用が特に効果的である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャク粉とデンプンとにかわとを含むことを、特徴とする壁面塗装材用糊。
【請求項2】
コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを3〜5質量部、にかわを2.7〜4.5質量部含むことを、特徴とする請求項1記載の壁面塗装材用糊。
【請求項3】
コンニャク粉1.0〜1.4質量部に対して、デンプンを5〜7質量部、にかわを4.5〜6.3質量部含むことを、特徴とする請求項1記載の壁面塗装材用糊。
【請求項4】
コンニャク粉25〜35質量部に対して、デンプンを30〜50質量部、にかわを10〜20質量部含むことを、特徴とする請求項1記載の壁面塗装材用糊。
【請求項5】
安息香酸、安息香酸ナトリウム、セルロースエーテル、竹酢液およびニンニクのうちの少なくとも1種類を含むことを、特徴とする請求項1、2、3または4記載の壁面塗装材用糊。
【請求項6】
コンニャク粉と水とを撹拌して生成されたコンニャク糊と、デンプンと水とを撹拌して生成されたデンプン糊と、にかわと水とを混合して生成されたにかわ液とを混合することを、特徴とする壁面塗装材用糊の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載の壁面塗装材用糊と、ゼオライト、珪藻土または繊維素繊維との混合物から成ることを、特徴とする壁面塗装材。



【公開番号】特開2010−24256(P2010−24256A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183346(P2008−183346)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(301051884)
【Fターム(参考)】