説明

変位制限装置の設置方法、変位制限構造、及び変位制限装置

【課題】施工性に優れ、作業上の安全も図ることができる変位制限装置の設置方法、変位制限構造、及び変位制限装置を提供する。
【解決手段】橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に凹部材6の分割体7のうち1又は2以上の分割体を取付ける方法であり、凹部材6の一部を設置する第1次凹部設置工程と、橋桁と支持躯体のうち他方にストッパが収容空間内に係合されるように凸部材5を設置する凸部設置工程と、凹部材6の一部を設置した橋桁又は支持躯体に分割体7のうち残りの分割体を第1次凹部設置工程で取り付けられた分割体とは連結することなく分離して、且つストッパが収容空間内に係合されるように取付けることで凹部材6の設置を完成させる第2次凹部設置工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、橋桁が地震などによって大きく変位することを防ぎ、橋台や橋脚からの落下を抑止する変位制限装置に関するものであり、具体的には、構成部材のひとつである凹部材が2以上の分割体からなる変位制限装置、その設置方法、及びこれが設置された構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋台や橋脚など橋桁を支持する構造物(以下、「支持躯体」という。)から橋桁が落下すること(以下、「落橋」という。)はかねてから問題視されていたが、兵庫県南部地震以来、従前にも増してこの落橋への対策が注目されるようになってきた。なお「落橋」という語は、橋梁における種々の損壊現象について広く用いられるものであるが、本書ではあくまで便宜上の理由から、支持躯体から橋桁が落下することを「落橋」とした。
【0003】
落橋は、おもに橋桁が大きく変位することによって生ずる。橋桁の変位への対策として最も代表的なものに支承(沓)が挙げられる。この支承には、橋桁を含む上部工から伝達される鉛直荷重を橋台等の下部工に伝える機能と、温度変化に伴う上部工の伸縮や、車両等による衝撃荷重・制動荷重に伴う水平変位に追随する機能が求められる。この水平変位に追随する機能(以下、単に「追随機能」という。)によって、橋桁の視点における応力集中を防ぎ、かつ所定の変位を吸収することができる。
【0004】
また支承は、構成材料によってゴム支承や鋼製支承などに分類され、目的によって固定支承や可動支承に分類され、さらに対応する地震レベルによってタイプAとタイプBに分類される。タイプAの支承は、レベル1の地震(供用中に1〜2回発生すると考えられる比較的規模の小さな地震)に対しては追随機能を発揮するが、レベル2の地震(兵庫県南部地震等を含み、発生確率が極めて低い大規模な地震)に対しては変位制限装置と補完しあって追随機能を発揮するものである。一方、タイプBの支承は、レベル1の地震はもちろん、レベル2の地震まで単独で追随機能を発揮する。
【0005】
このようにタイプAの支承を設置する場合、あわせて変位制限装置が設置されることが多く、またタイプBの支承を設置する場合も、橋軸直角方向の水平変位に追随するため変位制限装置が設置されることもある。
【0006】
従来から用いられている変位制限装置の機構について説明すれば、概ね以下のとおりである。構成要素は、突起状のストッパとこれが係合されるポット部であり、ストッパは支持躯体に設置されてポット部は橋桁に設置されることが多い。そして、ストッパはポット部内の収容空間に係合されており、すなわちストッパはこの収容空間内の限られたスペースしか移動できないため、これによってストッパの変位が制限され、結果的に橋桁と支持躯体の相対的な変位を制限することができる。
【0007】
変位制限装置はとくに兵庫県南部地震のあと広く用いられ、これまで種々工夫が重ねられており、例えば特許文献1では、水平方向の変位のみならず鉛直方向の変位も制限できるものが提案されている。また、本願発明で着眼している「ポット部の分割」についても、解決しようとする課題や作用・効果は異なるものの、特許文献1や特許文献2の中で示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−25243号公報
【特許文献2】特開2005−139705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で示される落橋防止構造は、上部工に設置された第1部材(ポット部)と、下部工に設置された第2部材(ストッパ)で構成され、第2部材が具備する凸部に拡張頭部が設けられている。この拡張頭部が、第1部材の下縁に係止されることで、上部工の鉛直方向の変位に抵抗しようとするものである。
【0010】
一方、特許文献2で示される発明は、浮島等に連結される浮体橋の支承に関するものであり、鉛直方向と水平方向に自在に案内できる支承に関するものである。
【0011】
特許文献1は変位制限装置で特許文献2は支承と、それぞれ対象技術は異なるものの、両者ともに、大きく2つの部材で構成され一方の部材が分割されているという内容が示されている。特許文献1では、第1部材が前方構造体と後方構造体に分割されていることが示され、特許文献2では、軸受本体が2つの半割体に分割されていることが示されている。そして、いずれの特許文献でも分割されたピースは、ボルト等で連結・一体化して使用されるものとしている。すなわち、特許文献1では、前方構造体と後方構造体を組み合わせてボルトで固定することが記載されており、特許文献2では、2つの半割体が突き合わされて鍔部においてボルトで一体化されることが記載されている。
【0012】
特許文献1を含め従来の変位制限装置は、次のような問題を抱えていた。すなわち、変位制限装置は上部工と下部工の完成後に設置されることが多く、上部工と下部工の間という限られた施工スペースで比較的大きな寸法・重量の変位制限装置を設置するため、設置作業が困難であるという問題と、作業員の安全性に劣るという問題を抱えていた。特に、特許文献1のように、ストッパ(第2部材)に拡張頭部が設けられている場合、あらかじめ拡張頭部をポット部(第1部材)に収容させた上で設置する必要があることから、さらに施工上の困難性が増し、作業安全上の安全性が低下することとなる。
【0013】
特許文献1及び特許文献2では、ポット部(第1部材、軸受本体)を2分割されることは示されているものの、これらは連結・一体化して使用されるものであるから、結局、変位制限装置の寸法・重量の軽減を図ることはできず、つまり前記した施工上の困難性や作業安全上の安全性に関する問題は改善されない。
【0014】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消するものであって、極めて施工性に優れ、作業上の安全も図ることができる変位制限装置の設置方法、変位制限構造、及び変位制限装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、凸部材と凹部材からなる変位制限装置において、分割した凹部材を連結することなく分離して構造物に設置するという点に着目して開発したものであり、従前からの「凹部材は一体化されて使用されるものである」という固定観念から脱却したものである。
【0016】
本願発明の変位制限装置の設置方法は、橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限装置の設置方法において、前記変位制限装置は、ストッパを具備する凸部材と、このストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材を備え、橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に設置された凹部材が、橋桁と支持躯体のうち他方に設置された凸部材の移動を制限するものであって、且つ凹部材は2以上の分割体で構成され、橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に、前記凹部材の分割体のうち1又は2以上の分割体を取付けることで凹部材の一部を設置する第1次凹部設置工程と、橋桁と支持躯体のうち他方に、前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、前記凸部材を設置する凸部設置工程と、前記凹部材の一部を設置した橋桁又は支持躯体に、前記分割体のうち残りの分割体を、前記第1次凹部設置工程で取り付けられた分割体とは連結することなく分離して、且つ前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、取付けることで凹部材の設置を完成させる第2次凹部設置工程と、を備え、前記第1次凹部設置工程、前記凸部設置工程、前記第2次凹部設置工程、の順で実施される方法である。
【0017】
本願発明の変位制限装置の設置方法は、橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限装置の設置方法において、前記変位制限装置は、ストッパを具備する凸部材と、このストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材を備え、橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に設置された凹部材が、橋桁と支持躯体のうち他方に設置された凸部材の移動を制限するものであって、且つ凹部材は2以上の分割体で構成され、橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に、前記凸部材を設置する凸部設置工程と、橋桁と支持躯体のうち他方に、前記凹部材の分割体のうち1又は2以上の分割体を、前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、取付けることで凹部材の一部を設置する第1次凹部設置工程と、前記凹部材の一部を設置した橋桁又は支持躯体に、前記分割体のうち残りの分割体を、前記第1次凹部設置工程で取り付けられた分割体とは連結することなく分離して、且つ前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、取付けることで凹部材の設置を完成させる第2次凹部設置工程と、を備え、前記凸部設置工程、前記第1次凹部設置工程、前記第2次凹部設置工程、の順で実施される方法とすることもできる。
【0018】
本願発明の変位制限構造は、橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限構造において、橋桁と支持躯体のうち一方に、ストッパを具備する凸部材が設置され、橋桁と支持躯体のうち他方に、ストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材が設置され、前記凹部材を構成する2以上の分割体が、それぞれ連結されることなく分離して取り付けられて、橋桁又は支持躯体に凹部材が設置され、それぞれの前記分割体が有する収容壁によって、前記収容空間が形成され、前記凹部材内に係合された前記ストッパが、前記収容壁に衝突することで凸部材の移動が制限され、この移動制限によって橋桁と支持躯体との相対変位が制限されるものである。
【0019】
この場合、凹部材に、水平又は略水平方向に向けられた障害板が設けられ、収容空間は、前記障害板と、鉛直又は略鉛直方向に向けられた収容壁と、によって形成され、凸部材のストッパは、鉛直又は略鉛直方向に立設する突起物であり、ストッパの一部には、水平又は略水平方向に張り出すストッパ拡張部が設けられ、前記収容空間内に係合されたストッパが、前記収容壁又は前記障害板に衝突することで橋桁と支持躯体における水平又は略水平方向の相対変位が制限され、前記収容空間内に収容された前記ストッパ拡張部が、障害板に衝突することで凸部材の鉛直又は略鉛直方向の移動が制限され、この移動制限によって橋桁と支持躯体における鉛直又は略鉛直方向の相対変位が制限される構造とすることもできる。
【0020】
本願発明の変位制限装置は、橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限装置において、ストッパを具備する凸部材と、このストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材と、を備え、前記凸部材と凹部材のうち、一方は橋桁に設置されて、他方は支持躯体に設置され、前記凹部材は、2以上の分割体からなるものであって、これら分割体が連結されることなく分離して取り付けられることによって構成されるものであり、前記収容空間は、それぞれ前記分割体が有する収容壁によって形成され、前記凹部材内に係合させた前記ストッパを、前記収容壁に衝突させることで凸部材の移動を制限し、この移動制限によって橋桁と支持躯体との相対変位を制限し得るものである。
【0021】
この場合、凹部材に、水平又は略水平方向に向けられた障害板が設けられ、収容空間は、前記障害板と、鉛直又は略鉛直方向に向けられた収容壁と、によって形成され、凸部材のストッパは、鉛直又は略鉛直方向に立設された突起物であり、ストッパの一部には、水平又は略水平方向に張り出すストッパ拡張部が設けられ、前記収容空間内に係合させたストッパを、収容壁又は前記障害板に衝突させることで橋桁と支持躯体における水平又は略水平方向の相対変位を制限し、前記収容空間内に収容させた前記ストッパ拡張部を、前記障害板に衝突させることで凸部材の鉛直又は略鉛直方向の移動を制限し、この移動制限によって橋桁と支持躯体における鉛直又は略鉛直方向の相対変位を制限し得る装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の変位制限装置の設置方法、変位制限構造、及び変位制限装置には、次のような効果がある。
(1)凹部材内に係合されたストッパが収容壁に衝突することで凸部材の移動が制限され、これによって確実に橋桁と支持躯体との相対変位を制限することができる。さらに、凹部材に障害板を備え、凸部材にストッパ拡張部を備えると、鉛直方向の相対変位を制限することもできる。
(2)凹部材が2以上の分割体に分割されているので、小運搬や設置作業が容易となり、結果的に、作業上の安全性も向上する。
(3)とくに、鉛直方向の変位を制限するために障害板とストッパ拡張部を備えた場合、分割体を部分的に設置、凸部材を設置、残りの分割体を設置、という手順で進めることができるので、あらかじめ凸部材と凹部材を一体化させる必要がなく、従来に比べると著しく作業性と作業安全性に優れる。
(4)設置した凹部材は分割体ごとに取り外すことができ、すなわち凹部材あるいは凸部材を容易に取り外すことができるので、取替えが容易となって維持管理性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の変位制限装置が設置された橋梁を側面から見た全体図。
【図2】(a)は変位制限装置の取付け箇所の詳細を示す側面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図。
【図3】凸部材を説明する斜視図。
【図4】(a)はストッパの胴部外周面に取り付けられた緩衝材を示す断面図、(b)はストッパの胴部外周面及び上面に取り付けられた緩衝材を示す断面図、(c)はストッパの胴部外周面及びストッパ拡張部の下面に取り付けられた緩衝材を示す断面図、(d)は凹部材に取り付けられた緩衝材を示す断面図。
【図5】(a)は凸部材が係合される前の状態の凹部材を示す斜視図、(b)は凸部材が係合された後の状態の凹部材を示す斜視図である。
【図6】(a)は変位制限装置の設置状態を上方側から見た平面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図、(c)は(a)のY−Y矢視断面図。
【図7】凹部材が4つの分割体からなる変位制限装置の設置状態を下方側から見た平面図。
【図8】(a)は橋台と橋桁に相対的水平変位が生じたときの変位制限装置の作用について説明するモデル図、(b)は橋台と橋桁に相対的鉛直変位が生じたときの変位制限装置の作用について説明するモデル図。
【図9】(a)は凹部材のうち一部の分割体を設置する第1次凹部設置工程を説明する断面図、(b)は凸部材を橋台に設置する凸部設置工程を説明する断面図、(c)は残りの分割体7を取り付けて凹部材6の設置を完成させる第2次凹部設置工程を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態]
本願発明の変位制限装置の設置方法、変位制限構造、及び変位制限装置の一実施形態を図に基づいて説明する。
【0025】
(全体構成)
まず本願発明の全体構成について簡単に説明する。なお図1は、本願発明の変位制限装置1(図2(a))が設置された橋梁を側面から見た全体図、図2は図1に示すD部詳細図であり、図2(a)は変位制限装置の取付け箇所の詳細を示す側面図、図2(b)は図2(a)のA−A矢視断面図、図2(c)は図2(a)のB−B矢視断面図である。
【0026】
図1で示す橋梁は単純梁形式の跨川橋であり、左岸,右岸それぞれに構築された橋台2が、支承4を介して橋桁3を支持している。支承4の一方(図では左側)は固定支承4a(fix)であり、他方(図では右側)は可動支承4b(move)である。
【0027】
変位制限装置1は、固定支承4a側の橋台2(図1では左側)と橋桁3との上下間に設置され、例えば図2(a)に示すように、橋軸方向に向けて支承4と並べて設置することができる。この図では、橋台2にボルト固定されたブラケットBrの上に変位制限装置1を設置しているが、もちろんブラケットBrを設けることなく橋台2上に直接設置してもよい。また、変位制限装置1と支承4を橋軸方向に並べて設置する場合に限らず、支承4周辺の任意の位置に(例えば支承4と橋軸直角方向に並べて)設置することができる。
【0028】
ここでは、図1に示すように、変位制限装置1が固定支承4a側の橋台2と橋桁3の間に設置された場合で説明しているが、変位制限装置1の設置場所はこれに限定されるものではない。例えば、可動支承4b側の橋台2(図1では右側)と橋桁3の間に変位制限装置1を設置することもできるし、橋台2に代えて橋脚と橋桁3の間に設置することもできる。つまり、上部工(橋桁3など)と下部工(橋台2や橋脚といった支持躯体)の間であれば任意の場所で、変位制限装置1を設置することができる。もちろん単純梁形式の跨川橋に限らず、あらゆる構造形式(多径間形式など)や桁形式(版桁や箱桁、場打ちコンクリートの桁、鋼製桁やPC桁といった工場製作の桁、など)の橋梁、高架橋,跨道橋,跨線橋など種々の用途の橋梁、新設橋や既設橋、といった様々な橋梁に本願発明の変位制限装置1を設置することができる。
【0029】
本願発明の変位制限装置1は、大きく2つの部材で構成されており、一つは凸部材5で、他の一つは凹部材6である(図2(c))。そして凸部材5は橋台2に固定され、一方の凹部材6は橋桁3に固定される。凸部材5は、凹部材6の収容空間(後に詳述)内で係合されており、この収容空間内であれば自由に移動することができる。換言すれば、凸部材5はその移動範囲を凹部材6の収容空間内に限定されており、この結果、凸部材5を固定している橋台2と橋桁3の相対的な水平方向の変位が制限される。なお、ここでいう相対的な水平方向の変位(以下、「相対的水平変位」という。)とは、一方(例えば橋台2)から見た他方(例えば橋桁3)の変位を意味するものであり、橋台2と橋桁3が同じ方向に同じ量だけ同時に移動した場合は相対的な変位は生じていないこととなる。また、ここで説明した相対的水平変位とは、水平方向(厳密な水平方向に限らず略水平方向も含む)の変位を意味するが、水平面内であればあらゆる方向(橋軸方向、橋軸直角方向、など)の変位が含まれる。
【0030】
前記のとおり、変位制限装置1は凸部材5と凹部材6との組み合わせであり、凸部材5と凹部材6のうちどちらか一方を橋台2に設置し、他方を橋桁3に設置して使用する。図2(a)に示すように、橋台2に凸部材5を設置して橋桁3に凹部材6を設置する場合に限らず、橋台2に凹部材6を設置して橋桁3に凸部材5を設置してもよい。ただし、凹部材6は水が溜まりやすい形状を呈しているので、橋台2など下部工側に凹部材6を設置する場合は、水抜き孔など排水手段を設けることが望ましい。
【0031】
本願発明の変位制限装置1を構成する凹部材6は、図5(a)に示すように複数の分割体7からなる。一般に変位制限装置1は既設橋に設置されることが多く、この場合、橋台2と橋桁3との間の狭いスペースで、しかも大きくて重い部材を扱うこととなって、作業者は常に怪我の危険を伴う。凹部材6を分割することで、取り扱う部材が軽量かつ小さくなり、作業上の安全性と施工性が向上する、という効果が期待できる。なお、凹部材6の分割数、つまり一つの凹部材6を構成する分割体7の数は、2以上であれば任意の数とすることができるが、設置する現場の状況や製作コストなどを考慮して適切な分割数で設計することが望ましい。ここでは便宜上、凹部材6を2分割した場合で説明する。
【0032】
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0033】
(凸部材)
図3は、凸部材5を説明する斜視図である。なおこの図では、説明上、凸部材5を主な部品ごとに分解した状態を示している。凸部材5は、直接的あるいは(ブラケットBrを介して)間接的に橋桁3へ固定され、凸部材5と橋台2は一体となって挙動する。すなわち、凸部材5の変位を制限することができれば、橋桁3の変位も制限することができる。
【0034】
凸部材5は、図3に示すように、固定プレート51と、ストッパ52で構成される。固定プレート51は鋼製のプレートであり、橋台2にボルト固定するためのボルト孔51aが所定数(図では4個)設けられている。ストッパ52は、固定プレート51よりも小面積の底面を持つ直方体であり、やはり鋼材で作成される。ストッパ52の底面部分が、固定プレート51に溶接されて、凸部材5となる。
【0035】
本願発明に使用される凸部材5は、固定プレート51に対して立設する突起物であるストッパ52のみが必須の部材である。このストッパ52の形状は、橋台2に設置した際に立設した突起物となれば、図3の直方体に限らず、円柱,楕円柱,多角形体,その他任意の形状とすることができる。また、橋桁3の変位を制限することができれば、溶接以外の従来手法で固定プレート51に固定することもできるし、固定プレート51を介さず直接橋台2に固定することもできる。また、ストッパ52の材質も鋼材に限らず、強度上の設計要件を満足すれば種々の材料を使用することができる。
【0036】
ストッパ52には、ストッパ拡張部53を設けることもできる。後述するように、このストッパ拡張部53を設けることで、橋台2と橋桁3の相対的な鉛直方向の変位(以下、「相対的鉛直変位」という。)を制限することができる。このストッパ拡張部53は、ストッパ52の軸方向(図3では上下方向)に対して垂直に張り出すもので、凸部材5が橋台2に設置された状態で説明すると、鉛直方向(略鉛直方向も含む)に立設するストッパ52に対して、ストッパ拡張部53は水平方向(略水平方向も含む)に張り出す。図3では、ストッパ52の断面よりも大きな面積の鋼製プレートからなるストッパ拡張部53が、ストッパ52の頂部(上面)に溶接固定されている。ここでの固定方法も溶接手段に限らずボルト固定等種々の手法を用いることができ、ストッパ拡張部53の材質も強度上の設計要件を満足すれば鋼製のものに限らず種々のものを採用することができる。さらに、ストッパ拡張部53をストッパ52と別体としてそれぞれを固定する場合のほか、ストッパ52の製造段階でその一部を拡張してストッパ拡張部53を設けることもできる。
【0037】
橋台2に設置された凸部材5は、ストッパ52が凹部材6に係合しており、橋台2と橋桁3の間で相対的水平変位が生じると、ストッパ52が凹部材6の一部に衝突する。その際ストッパ52が受ける衝撃を緩和するために、ストッパ52周辺に緩衝材54を取り付けることができる。この緩衝材54は、クロロプレンゴムなど様々な材質のゴム製とすることが可能で、そのほか種々の樹脂をはじめあらゆる弾性体材料を選択することができる。
【0038】
ストッパ52に緩衝材54を取り付けておくと、橋台2と橋桁3の間で相対的水平変位が生じた際、ストッパ52に代わって緩衝材54が凹部材6の一部に衝突する。その衝撃力で緩衝材54は弾性変形を生じ、その変形によって衝撃エネルギーが低減され、この結果、ストッパ52や凹部材6が受ける衝撃力も緩和される。
【0039】
緩衝材54は、ストッパ52と凹部材6との間であればあらゆる場所に設けることができる。図4は、緩衝材54の設置箇所を例示した断面図である。図4(a)はストッパ52の胴部外周面(側面)に取り付けられた緩衝材54を示し、図4(b)はストッパ52の胴部外周面及び上面に取り付けられた緩衝材54を示している。図4(c)はストッパ52にストッパ拡張部53が設けられた場合であり、ストッパ52の胴部外周面及びストッパ拡張部53の下面(背面)に取り付けられた緩衝材54を示している。また、緩衝材54は、ストッパ52に取り付ける場合に限らず、図4(d)に示すように、凹部材6に取り付けることもできる。
【0040】
(凹部材)
図5は凹部材6を説明する詳細図であり、(a)は凸部材5が係合される前の状態の凹部材6を示す斜視図、(b)は凸部材5が係合された後の状態の凹部材6を示す斜視図である。なお図6(b)は、凹部材6の設置状態を橋桁3側(つまり上方側)から見た状態であり、実際には橋桁3に遮られて見えないが、便宜上、ここでは橋桁3を省略して表している。この図に示すように、凹部材6は複数(図では2つ)の分割体7で構成されるものである。
【0041】
図5(a)に示すように、それぞれの分割体7は収容壁71によって形成されている。また図5(b)に示すように、2つの収容壁71を組み合わせると、収容壁71に周囲を囲まれた空間(以下、「収容空間72」という。)が形成され、この収容空間72内に凸部材5が係合される。なお図6(b)では、ストッパ拡張部53を含むストッパ52が、収容空間72内に係合されているが、ストッパ拡張部53も設けない場合はストッパ52が収容空間72内に係合されることとなる。なおここでいう「係合」とは、ストッパ52等の一部または全部が収容されている状態を意味する。
【0042】
収容壁71には、貫通するボルト孔71aが所定数(図では5個ずつ)設けられている。図2(a)に示すように、凹部材6は橋桁3の下フランジ部分に設置される。このとき収容壁71のボルト孔71aを利用して、2つの分割体7それぞれが橋桁3にボルト固定される。これら2つの分割体7は独立して設置されるものであり、お互いの分割体7を連結する必要はない。詳しくは、図5(b)や図6(a)に示すように、2つの分割体7の間に離隔Sを設けて、それぞれを分離して設置する。なお、凹部材6を設置する場所は、下フランジに限らず橋桁3の任意の場所とすることが可能で、設置する手段もボルト固定に限らず溶接など従来から用いられている種々の手段を採用できる。
【0043】
図6は変位制限装置1を橋桁3に設置した状態を示す詳細図であり、図6(a)は変位制限装置1の設置状態を下方側から見た平面図、図6(b)は図6(a)のX−X矢視断面図、図6(c)は図6(a)のY−Y矢視断面図である。図6(a)に示すように、それぞれの分割体7は、平面視でコ字状を呈している。この分割体7は鋼製であり、収容壁71を一体としてコ字状に製造される。あるいは、コ字の3辺をそれぞれ別体の収容壁71とし、溶接等によって組み合わせた加工品とすることもできる。また、分割体7は鋼製のほか、強度上の設計要件を満足すれば種々の材料を使用することができる。
【0044】
分割体7の形状はコ字状に限らず、L字状のほか種々の形状とすることができるし、図7に示すように、凹部材6を4つの分割体7からなるものとするなど、3以上の分割数とすることもできる。
【0045】
図6(a)に示すように2つの分割体7を橋桁3に設置すると、収容壁71で囲まれた収容空間72が形成される。この収容空間72内には、図6(b)に示すようにストッパ拡張部53を含むストッパ52が係合される。
【0046】
図6(c)に示すように、一方の分割体7の収容壁71と、他方の分割体7の収容壁71との間には、離隔Sが設けられ、2つの分割体7は分離して設置されている。また、これらの分割体7はお互いを連結する必要がない。なお、図7に示すように4分割された分割体7を設置する場合は、全て連結しない全部分離とすることもできるし、橋軸方向(あるいは橋軸直角方向)に並んだ分割体7同士のみを連結するなど一部連結とすることもできる。
【0047】
分割体7同士の間に設けられる離隔Sの幅は、任意に設計することができるものであり、略接触する程度の微小幅とすることも可能である。また図6(a)では、それぞれの分割体7が橋軸直角方向に並べられ、橋軸方向に2箇所の離隔Sが設けられる配置としているが、このような配置に限らず、それぞれの分割体7を橋軸方向に並べて橋軸直角方向に2箇所の離隔Sが設けられるような配置(図6(a)を90度回転した配置)とすることもできる。
【0048】
分割体7には、図5(a),図6(a)に示される障害板73を設けることもできる。この障害板73は鋼製であり、分割体7に溶接固定されている。凹部材6を橋桁3に設置したときに、障害板73と橋桁3との間(収容空間72内)にストッパ拡張部53を収容するため、障害板73は分割体7の下端付近(凹部材6設置時)に設けられる。なお、障害板73は鋼製のほか、強度上の設計要件を満足すれば種々の材料を使用することができるし、障害板73も分割体7の一体として(一部として)製造することもできる。
【0049】
凹部材6を橋桁3に設置すると、収容壁71と障害板73によって収容空間72が形成され(図9(c)の破線範囲)、図5(b)に示すようにストッパ拡張部53がこの収容空間72内に収容される。図6(b)からもわかるように、2つの障害板73の間に形成される間隙はストッパ拡張部53の幅よりも狭小であるため、ストッパ拡張部53は障害板73の間を通過できず、つまりストッパ拡張部53は収容空間72内から下方側へ抜け出すことができない。換言すれば、ストッパ拡張部53を具備する凸部材5は、鉛直方向の移動範囲を凹部材6の収容空間72内に限定されており、この結果、凸部材5を固定している橋台2と、凹部材6が設置された橋桁3との、相対的鉛直変位が制限されることとなる。
【0050】
(変位制限装置)
本願発明の変位制限装置1の作用について、図8に基づいて説明する。図8のうち、(a)は橋台2と橋桁3に相対的水平変位が生じたときの変位制限装置1の作用について説明するモデル図であり、(b)は橋台2と橋桁3に相対的鉛直変位が生じたときの変位制限装置1の作用について説明するモデル図である。
【0051】
まず、図8(a)に基づいて変位制限装置1の作用を説明する。地震等により橋梁に水平荷重が作用すると、橋台2は水平方向(矢印H方向)に振動し、また橋桁3も同じく水平方向に振動する。通常、橋台2と橋桁3の固有振動数は異なるので、橋台2と橋桁3との間には相対的水平変位が生じる。一方、橋台2に設置された凸部材5のストッパ52と、橋桁3に設置された凹部材6の収容壁71との間には、図に示すように水平クリアランスδが設けられている。すなわち、橋台2と橋桁3との間で相対的水平変位が生じると、ストッパ52(あるいは橋桁3側の収容壁71)は水平クリアランスδの分だけ自由に水平移動することができる。換言すれば、ストッパ52が水平クリアランスδを超えて移動すると、ストッパ52又はストッパ拡張部53(あるいはこれらに取り付けられた緩衝材54)が収容壁71(あるいは障害板73)に衝突するため、ストッパ52は収容壁71(あるいは障害板73)に遮られてそれ以上移動することができない。このように変位制限装置1は、ストッパ52(あるいは収容壁71)の変位量を水平クリアランスδ以下に制限することが可能であり、すなわち橋台2と橋桁3との間の相対的水平変位を水平クリアランスδ以下に制限することができるのである。
【0052】
次に、図8(b)に基づいて変位制限装置1の作用を説明する。地震等により橋梁に鉛直荷重が作用すると、橋台2は鉛直方向(矢印V方向)に振動し、また橋桁3も同じく鉛直方向に振動し、橋台2と橋桁3との間には相対的鉛直変位が生じる。一方、凸部材5のストッパ拡張部53と、凹部材6の障害板73との間には、図に示すように鉛直クリアランスδが設けられている。すなわち、橋台2と橋桁3との間で相対的鉛直変位が生じると、ストッパ拡張部53(あるいは橋桁3側の障害板73)は鉛直クリアランスδの分だけ自由に鉛直移動することができる。換言すれば、ストッパ拡張部53が鉛直クリアランスδを超えて移動すると、ストッパ拡張部53は障害板73が障害となってそれ以上移動することができない。このように変位制限装置1は、ストッパ拡張部53(あるいは障害板73)の変位量を鉛直クリアランスδ以下に制限することが可能であり、すなわち橋台2と橋桁3との間の相対的鉛直変位を鉛直クリアランスδ以下に制限することができるのである。
【0053】
(変位制限装置の設置手順)
本願発明の変位制限装置1を既設橋に設置する手順について、図9(a)〜(c)に基づいて説明する。なおここで、説明する手順はあくまで一例であり、本願発明の変位制限装置1は必ずしもこの手順で設置されなければならないものではない。またここでは、橋桁3がI形鋼であり、このI形鋼の下フランジに変位制限装置1を設置する場合を例示しているが、もちろんI形鋼以外の橋桁3に設置する場合でも、橋台2などの下部工に設置する場合でも、この設置手順を採用することができる。
【0054】
まず図9(a)で示すように、凹部材6を構成する分割体7を橋桁3にボルト固定する。なおこの段階では、凹部材6を構成する複数の分割体7のうち一部のみ設置するものであり、図では2分割されたうち一方の分割体7(図では左側)を取り付けている。このように、凹部材6の一部、つまり一方の分割体7を設置する工程を、第1次凹部設置工程と呼ぶ。
【0055】
つぎに図9(b)で示すように、凸部材5を橋台2(又は橋台2に設けた鋼製ブラケット)にボルト固定する。ここで取り付ける凸部材5は、鋼製の固定プレート51,鋼製のストッパ52,鋼製のストッパ拡張部53,クロロプレンゴム製の緩衝材54が一体に形成されたものである。
【0056】
凸部材5を橋台2に設置する際は、所定の位置に、つまりストッパ52が収容空間72内に係合されるように配置する必要がある。とくに、ストッパ拡張部53が下向きに変位するときに、障害板73が確実に障害となって変位制限されるような配置となるよう留意する。このように凸部材5を橋台2に設置する工程を、凸部設置工程と呼ぶ。
【0057】
最後に図9(c)で示すように、凹部材6を構成する残りの分割体7を橋桁3にボルト固定する。残りの分割体7とは、第1次凹部設置工程で取り付けた分割体7を除く分割体7のことであり、図では左側の分割体7を取り付けている。左側の分割体7を取り付ける際は、ストッパ52が収容空間72内に係合されるように左側の分割体7を配置する。また、ストッパ拡張部53の下方に障害板73が位置する配置となるよう留意する。このように、残りの分割体7を取り付けて凹部材6の設置を完成させる工程を、第2次凹部設置工程と呼ぶ。
【0058】
なおこのとき、第1次凹部設置工程で取り付けた分割体7と、第2次凹部設置工程で取り付けた分割体7とは、それぞれ分離して設置し、例えば離隔Sを設けて設置する。そして、分離して設置された後もそれぞれの分割体7(図では左右の分割体7)を連結する必要はない。
【0059】
ここでは、第1次凹部設置工程、凸部設置工程、第2次凹部設置工程、の順で取り付ける方法を示したが、これに代えて、凸部設置工程の後に、第1次凹部設置工程、第2次凹部設置工程、の順で取り付けることもできる。この場合の凸部設置工程では、ストッパ52が収容空間72内に係合されるように配慮する必要がなく、単に、凸部材5を橋台2(又は橋台2に設けた鋼製ブラケット)にボルト固定する。一方、第1次凹部設置工程では、ストッパ52が収容空間72内に係合されるように、分割体7を配置する必要がある。この点に配慮して、分割体7(凹部材6を構成する複数の分割体7のうち一部のみ)は橋桁3にボルト固定される。もちろんこの場合も、離して設置された(第1次凹部設置工程と第2次凹部設置工程で設置された)分割体7を連結する必要はない。
【0060】
ここで示した設置手順によれば、あらかじめ凸部材5と凹部材6を組み合わせた状態(ストッパ52を収容空間72内に係合させた状態)で変位制限装置1を設置する必要がないため、極めて設置作業が容易となる。加えて、凹部材6が分割されているので、従来よりもコンパクトで軽量の分割体7を取り扱うこととなり、施工性が向上するとともに、狭隘な作業空間であっても安全に作業できるという効果がある。なお、ここでは設置手順について説明したが、取り外す場合も同様の効果を奏するので、取替えが容易となって維持管理性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明の変位制限装置の設置方法、変位制限構造、及び変位制限装置は、道路橋や鉄道橋、河川橋や高架橋など、種々の橋に利用することができる。また、橋桁と橋台など支持躯体と橋桁との連結に限られず、トンネル坑門や擁壁、あるいはビル等の建築構造物など、様々な構造物間に取り付けて応用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 変位制限装置
2 橋台
3 橋桁
4 支承
4a 固定支承
4b 可動支承
5 凸部材
51 固定プレート
51a (固定プレートの)ボルト孔
52 ストッパ
53 ストッパ拡張部
54 緩衝材
6 凹部材
7 分割体
71 収容壁
71a (収容壁の)ボルト孔
72 収容空間
73 障害板
Br ブラケット
S 離隔
δ 水平クリアランス
δ 鉛直クリアランス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限装置の設置方法において、
前記変位制限装置は、ストッパを具備する凸部材と、このストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材を備え、橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に設置された凹部材が、橋桁と支持躯体のうち他方に設置された凸部材の移動を制限するものであって、且つ凹部材は2以上の分割体で構成され、
橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に、前記凹部材の分割体のうち1又は2以上の分割体を取付けることで凹部材の一部を設置する第1次凹部設置工程と、
橋桁と支持躯体のうち他方に、前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、前記凸部材を設置する凸部設置工程と、
前記凹部材の一部を設置した橋桁又は支持躯体に、前記分割体のうち残りの分割体を、前記第1次凹部設置工程で取り付けられた分割体とは連結することなく分離して、且つ前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、取付けることで凹部材の設置を完成させる第2次凹部設置工程と、を備え、
前記第1次凹部設置工程、前記凸部設置工程、前記第2次凹部設置工程、の順で実施される、ことを特徴とする変位制限装置の設置方法。
【請求項2】
橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限装置の設置方法において、
前記変位制限装置は、ストッパを具備する凸部材と、このストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材を備え、橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に設置された凹部材が、橋桁と支持躯体のうち他方に設置された凸部材の移動を制限するものであって、且つ凹部材は2以上の分割体で構成され、
橋桁と支持躯体のうちいずれか一方に、前記凸部材を設置する凸部設置工程と、
橋桁と支持躯体のうち他方に、前記凹部材の分割体のうち1又は2以上の分割体を、前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、取付けることで凹部材の一部を設置する第1次凹部設置工程と、
前記凹部材の一部を設置した橋桁又は支持躯体に、前記分割体のうち残りの分割体を、前記第1次凹部設置工程で取り付けられた分割体とは連結することなく分離して、且つ前記ストッパが前記収容空間内に係合されるように、取付けることで凹部材の設置を完成させる第2次凹部設置工程と、を備え、
前記凸部設置工程、前記第1次凹部設置工程、前記第2次凹部設置工程、の順で実施される、ことを特徴とする変位制限装置の設置方法。
【請求項3】
橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限構造において、
橋桁と支持躯体のうち一方に、ストッパを具備する凸部材が設置され、橋桁と支持躯体のうち他方に、ストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材が設置され、
前記凹部材を構成する2以上の分割体が、それぞれ連結されることなく分離して取り付けられて、橋桁又は支持躯体に凹部材が設置され、
それぞれの前記分割体が有する収容壁によって、前記収容空間が形成され、
前記凹部材内に係合された前記ストッパが、前記収容壁に衝突することで凸部材の移動が制限され、この移動制限によって橋桁と支持躯体との相対変位が制限される、ことを特徴とする変位制限構造。
【請求項4】
請求項3記載の変位制限構造において、
凹部材に、水平又は略水平方向に向けられた障害板が設けられ、
収容空間は、前記障害板と、鉛直又は略鉛直方向に向けられた収容壁と、によって形成され、
凸部材のストッパは、鉛直又は略鉛直方向に立設する突起物であり、ストッパの一部には、水平又は略水平方向に張り出すストッパ拡張部が設けられ、
前記収容空間内に係合されたストッパが、前記収容壁又は前記障害板に衝突することで橋桁と支持躯体における水平又は略水平方向の相対変位が制限され、
前記収容空間内に収容された前記ストッパ拡張部が、障害板に衝突することで凸部材の鉛直又は略鉛直方向の移動が制限され、この移動制限によって橋桁と支持躯体における鉛直又は略鉛直方向の相対変位が制限される、ことを特徴とする変位制限構造。
【請求項5】
橋桁と、これを支持する支持躯体と、の相対変位を制限し得る変位制限装置において、
ストッパを具備する凸部材と、このストッパが係合可能な収容空間を具備する凹部材と、を備え、
前記凸部材と凹部材のうち、一方は橋桁に設置されて、他方は支持躯体に設置され、
前記凹部材は、2以上の分割体からなるものであって、これら分割体が連結されることなく分離して取り付けられることによって構成されるものであり、
前記収容空間は、それぞれ前記分割体が有する収容壁によって形成され、
前記凹部材内に係合させた前記ストッパを、前記収容壁に衝突させることで凸部材の移動を制限し、この移動制限によって橋桁と支持躯体との相対変位を制限し得る、ことを特徴とする変位制限装置。
【請求項6】
請求項5記載の変位制限装置において、
凹部材に、水平又は略水平方向に向けられた障害板が設けられ、
収容空間は、前記障害板と、鉛直又は略鉛直方向に向けられた収容壁と、によって形成され、
凸部材のストッパは、鉛直又は略鉛直方向に立設された突起物であり、ストッパの一部には、水平又は略水平方向に張り出すストッパ拡張部が設けられ、
前記収容空間内に係合させたストッパを、収容壁又は前記障害板に衝突させることで橋桁と支持躯体における水平又は略水平方向の相対変位を制限し、
前記収容空間内に収容させた前記ストッパ拡張部を、前記障害板に衝突させることで凸部材の鉛直又は略鉛直方向の移動を制限し、この移動制限によって橋桁と支持躯体における鉛直又は略鉛直方向の相対変位を制限し得る、ことを特徴とする変位制限装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−184567(P2012−184567A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47363(P2011−47363)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(508036743)株式会社横河ブリッジ (9)
【Fターム(参考)】