説明

変位測定装置付転がり軸受ユニット及び荷重測定装置付転がり軸受ユニット

【課題】各列の転動体3、3に付与した予圧の変動に拘らず、ハブ2に外嵌固定したエンコーダ4cと、外輪1に支持したセンサユニット15の検出部との軸方向のずれを補償する。そして、上記予圧の変動が、上記外輪1とハブ2とのアキシアル方向の相対変位に関する測定値のずれに結び付く事を防止する。
【解決手段】上記エンコーダ4cの両端部を、上記ハブ2を構成するハブ本体18と内輪19とに、それぞれ締り嵌めで外嵌固定する。予圧変動に基づく、これらハブ本体18と内輪19との軸方向に関する変動が生じると、上記エンコーダ4cの両端部が逆方向に同じだけ変位する。この結果、このエンコーダ4cの中間部外周面に設けた被検出面は軸方向に変位しないので、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る変位測定装置付転がり軸受ユニット及び荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、例えば車両(自動車)の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪に加わる荷重の大きさを測定して、車両の安定運行の確保に利用する。或は、各種工作機械の主軸を支持する為の転がり軸受ユニットに組み込んで、この主軸に加わる荷重を測定し、工具の送り速度等を適切に調節する為に利用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為に、転がり軸受ユニットを使用する。又、車両の走行安定性を確保する為に、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)等の車両の走行状態安定化装置が広く使用されている。これらABSやTCS等の走行状態安定化装置によれば、制動時や加速時に於ける車両の走行状態を安定させる事はできるが、より厳しい条件でもこの安定性の確保を図る為には、車両の走行安定性に影響するより多くの情報を取り入れて、ブレーキやエンジンの制御を行なう事が必要になる。
【0003】
即ち、上記ABSやTCS等の従来の走行状態安定化装置の場合には、タイヤと路面との滑りを検知してブレーキやエンジンを制御する、所謂フィードバック制御を行なっている為、これらブレーキやエンジンの制御が一瞬とは言え遅れる。言い換えれば、厳しい条件下での性能向上を図るべく、所謂フィードフォワード制御により、タイヤと路面との間に滑りが発生しない様にしたり、左右の車輪の制動力が極端に異なる所謂ブレーキの片効きを防止する事はできない。
【0004】
この様な問題に対応すべく、上記フィードフォワード制御等を行なう為には、懸架装置に対して車輪を支持する為の転がり軸受ユニットに、この車輪に加わるアキシアル荷重を測定する為の荷重測定装置を組み込む事が考えられる。この様な場合に使用可能な荷重測定装置付車輪支持用転がり軸受ユニットとして従来から、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
【0005】
このうちの特許文献1に記載された従来構造の第1例の場合、外輪の外周面に設けた固定側フランジの内側面複数個所で、この固定側フランジをナックルに結合する為のボルトを螺合する為のねじ孔を囲む部分に、それぞれ荷重センサを添設している。上記外輪を上記ナックルに支持固定した状態でこれら各荷重センサは、このナックルの外側面と上記固定側フランジの内側面との間で挟持される。この様な従来構造の第1例の転がり軸受ユニットの荷重測定装置の場合、車輪と上記ナックルとの間に加わるアキシアル荷重は、上記各荷重センサにより測定される。
【0006】
又、特許文献2には、外輪の円周方向4個所位置に支持した変位センサユニットとハブに外嵌固定した断面L字形の被検出リングとにより、上記4個所位置での、上記外輪に対する上記ハブの、ラジアル方向及びアキシアル方向の変位を検出し、各部の検出値に基づいて、このハブに加わる荷重の方向及びその大きさを求める構造が記載されている。
【0007】
更に、特許文献3には、一部の剛性を低くした外輪相当部材に動的歪みを検出する為のストレンゲージを設け、このストレンゲージが検出する転動体の通過周波数から転動体の公転速度を求め、この公転速度から、転がり軸受に加わるアキシアル荷重を測定する方法が記載されている。
【0008】
上述の特許文献1に記載された従来構造の第1例の場合、ナックルに対し外輪を支持固定する為のボルトと同数だけ、荷重センサを設ける必要がある。この為、荷重センサ自体が高価である事と相まって、転がり軸受ユニットの荷重測定装置全体としてのコストが相当に嵩む事が避けられない。又、特許文献2に記載された構造は、外輪の周方向4個所位置にセンサを設置する為、上記特許文献1に記載された構造よりも更にコストが嵩む。更に、特許文献3に記載された方法は、外輪相当部材の一部の剛性を低くする必要があり、この外輪相当部材の耐久性確保が難しくなる可能性がある。
【0009】
この様な事情に鑑みて特願2005−147642号には、荷重の作用方向に配置された1対のセンサの出力信号の位相差に基づき、転がり軸受ユニットに加わる荷重の大きさを測定する発明が開示されている。図6〜13は、上記出願に開示された先発明のうちの2例の構造を示している。これら各先発明に係る構造は、何れも、図6、10に示す様に、懸架装置に支持された状態で回転しない外輪相当部材である外輪1の内径側に、車輪を支持固定(結合固定)する内輪相当部材であるハブ2を、複数個の転動体3、3を介して回転自在に支持している。そして、このハブ2の中間部にエンコーダ4、4aを外嵌固定すると共に、上記外輪1の軸方向中間部で複列に配置された上記各転動体3、3の間部分にセンサ5、5aを、それぞれの検出部を、被検出面である上記エンコーダ4、4aの外周面に近接対向させた状態で、それぞれ1対ずつ設けている。尚、上記センサ5、5aの検出部には、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子を組み込む事が適切である。
【0010】
図6〜9に示した、先発明の第1例の構造の場合、上記エンコーダ4として、永久磁石製のものを使用している。被検出面である、このエンコーダ4の外周面には、N極に着磁した部分とS極に着磁した部分とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置している。これらN極に着磁された部分とS極に着磁された部分との境界は、上記エンコーダ4の軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダ4の軸方向中間部を境に互いに逆方向としている。従って、上記N極に着磁された部分とS極に着磁された部分とは、軸方向中間部が円周方向に関して最も突出した(又は凹んだ)、「く」字形となっている。
【0011】
又、上記両センサ5、5の検出部が上記エンコーダ4の外周面に対向する位置は、このエンコーダ4の円周方向に関して同じ位置としている。言い換えれば、上記両センサ5、5の検出部は、上記外輪1の中心軸を含む仮想平面上に配置されている。又、この外輪1と上記ハブ2との間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記N極に着磁された部分とS極に着磁された部分との軸方向中間部で円周方向に関して最も突出した部分(境界の傾斜方向が変化する部分)が、上記両センサ5、5の検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材4、5、5の設置位置を規制している。この様に、上記境界の傾斜方向が変化する部分を上記中央位置に存在させる事で、内外輪の温度差や熱膨張等の変形による誤差(変位が生じていなくても内外輪の温度差によって位相差が生じる、所謂オフセット)を小さく抑えられる様にしている。尚、先発明の第1例の場合には、上記エンコーダ4として永久磁石製のものを使用しているので、上記両センサ5、5側に永久磁石を組み込む必要はない。
【0012】
上述の様に構成する先発明の第1例の場合、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用すると、上記両センサ5、5の出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用しておらず、上記外輪1と上記ハブ2とが相対変位していない、中立状態では、上記両センサ5、5の検出部は、図9の(A)の実線イ、イ上、即ち、上記最も突出した部分から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ5、5の出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。
【0013】
これに対して、上記エンコーダ4を固定したハブ2に、図9の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用し{外輪1とハブ2とがアキシアル方向(軸方向)に相対変位し}た場合には、上記両センサ5、5の検出部は、図9の(A)の破線ロ、ロ上、即ち、上記最も突出した部分からの軸方向に関するずれが互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ5、5の出力信号の位相は、同図の(B)に示す様にずれる。更に、上記エンコーダ4を固定したハブ2に、図9の(A)で上向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ5、5の検出部は、図9の(A)の鎖線ハ、ハ上、即ち、上記最も突出した部分からの軸方向に関するずれが、逆方向に互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ5、5の出力信号の位相は、同図の(D)に示す様にずれる。
【0014】
上述の様に先発明の第1例の場合には、上記両センサ5、5の出力信号の位相が、上記外輪1とハブ2との間に加わるアキシアル荷重の方向に応じた方向にずれる。又、このアキシアル荷重により上記両センサ5、5の出力信号の位相がずれる程度(変位量)は、このアキシアル荷重が大きくなる程大きくなる。従って第1例の場合には、上記両センサ5、5の出力信号の位相ずれの有無、ずれが存在する場合にはその方向及び大きさに基づいて、上記外輪1とハブ2との間に作用しているアキシアル荷重の方向及び大きさを求められる。
【0015】
次に、図10〜13に示した、先発明の第2例の構造の場合には、ハブ2の中間部に、磁性金属板製のエンコーダ4aを外嵌固定している。被検出面である、このエンコーダ4aの外周面には、スリット状の透孔6a、6bと柱部7a、7bとを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置している。これら各透孔6a、6bと各柱部7a、7bとは、上記エンコーダ4aの軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダ4aの軸方向中間部を境に互いに逆方向としている。即ち、このエンコーダ4aは、軸方向片半部に、上記軸方向に対し所定方向に同じだけ傾斜した透孔6a、6aを形成すると共に、軸方向他半部に、この所定方向と逆方向に同じ角度だけ傾斜した透孔6b、6bを形成している。
【0016】
一方、外輪1の軸方向中間部で複列に配置された転動体3、3同士の間部分に、前記1対のセンサ5a、5aを設置し、これら両センサ5a、5aの検出部を、上記エンコーダ4aの外周面に近接対向させている。これら両センサ5a、5aの検出部がこのエンコーダ4aの外周面に対向する位置は、このエンコーダ4aの円周方向に関して同じ位置としている。又、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記各透孔6a、6b同士の間に位置し、全周に連続するリム部8が、上記両センサ5a、5aの検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材4a、5a、5aの設置位置を規制している。尚、先発明の第2例の場合には、上記エンコーダ4aが単なる磁性材製である為、上記両センサ5a、5aの側に永久磁石を組み込む必要がある。
【0017】
上述の様に構成する先発明の第2例の場合、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用(し外輪1とハブ2とがアキシアル方向に相対変位)すると、前述した先発明の第1例の場合と同様に、上記両センサ5a、5aの出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用していない状態では、上記両センサ5a、5aの検出部は、図13の(A)の実線イ、イ上、即ち、上記リム部8から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ5a、5aの出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。
【0018】
これに対して、上記エンコーダ4aを固定したハブ2に、図13の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ5a、5aの検出部は、図13の(A)の破線ロ、ロ上、即ち、上記リム部8からの軸方向に関するずれが互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ5a、5aの出力信号の位相は、同図の(B)に示す様にずれる。更に、上記エンコーダ4aを固定したハブ2に、図13の(A)で上向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ5a、5aの検出部は、図13の(A)の鎖線ハ、ハ上、即ち、上記リム部8からの軸方向に関するずれが、逆方向に互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ5a、5aの出力信号の位相は、同図の(D)に示す様にずれる。
【0019】
上述の様に先発明の第2例の場合も、前述の先発明の第1例の場合と同様に、上記両センサ5a、5aの出力信号の位相が、上記外輪1とハブ2との間に加わるアキシアル荷重の方向に応じた方向にずれる。又、このアキシアル荷重により上記両センサ5a、5aの出力信号の位相がずれる程度は、このアキシアル荷重が大きくなる程大きくなる。従って第2例の場合も、上記両センサ5a、5aの出力信号の位相ずれの有無、ずれが存在する場合にはその方向及び大きさに基づいて、上記外輪1とハブ2との間に作用しているアキシアル荷重の方向及び大きさを求められる。
【0020】
又、図14〜15は、先発明に則して考えた構造の1例を示している。この構造の場合には、エンコーダ4bとして、磁性金属板を折り曲げる事により、断面クランク形で全体を円環状に形成したものを使用している。上記エンコーダ4bは、互いに同心である小径円筒部12の軸方向端縁と大径円筒部13の軸方向端縁とを、円輪部14により連続させたもので、上記小径円筒部12をハブ2の中間部外周面に締り嵌めで外嵌する事により、このハブ2に固定している。又、上記大径円筒部13には、それぞれが「く」字形である多数の透孔6c、6cを、円周方向に関して等間隔に形成している。これら各透孔6c、6cは、それぞれの両半部が、前述の図10〜13に示したエンコーダ4aに形成した透孔6a、6a或いは透孔6b、6bとして機能する。
【0021】
又、上記図14〜15に示した構造の場合、1対のセンサを、単一のセンサユニット15に組み込んでいる。即ち、それぞれがセンサの検出部として機能する1対の磁気検出素子を、合成樹脂製のホルダ16の先端部で、組み付け状態で外輪1の内周面から突出する部分に包埋支持している。上記センサユニット15をこの外輪1に設けた取付孔17に挿通した状態では、上記両磁気検出素子が、上記エンコーダ4bに形成した、上記各透孔6c、6cの片半部と他半部とに近接対向する。
この様な図14〜15に示した構造の場合も、前述の図10〜13に示した先発明の第2例の構造の場合と同様にして、上記外輪1と上記ハブ2とのアキシアル方向に関する相対変位、延てはこれら外輪1とハブ2との間に加わるアキシアル荷重を求められる。
【0022】
ところで、上述の様にして外輪1とハブ2との間のアキシアル方向の変位、更にはこれら外輪1とハブ2との間に加わるアキシアル荷重を求める、複列転がり軸受ユニットには、所定の予圧を付与している。この様な予圧の付与は、車輪等の回転部材の支持剛性を高め、この回転部材の回転精度を向上させる為に必要である。又、先発明に係る変位測定装置付転がり軸受ユニットにより、この転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重を求める場合、転がり軸受ユニットは、予圧を付された複列転がり軸受ユニットである事が重要になる。予圧を付与されていない(正の内部隙間を有する)転がり軸受ユニットの場合、アキシアル荷重の大きさとアキシアル方向に関する変位との間に、明確な相関関係がない為、このアキシアル荷重を求める事はできない。
【0023】
この為、先に述べた図6、10、14に示した構造は、何れも、ハブ2として、ハブ本体18と内輪19とをナット20により結合固定したものを使用して、各転動体3、3に背面組み合わせ形の接触角と共に予圧を付与する様にしている。即ち、上記ハブ本体18の小径段部21に外嵌した上記内輪19を、上記ナット20によりこの小径段部21の端部に存在する段差面22に向け抑え付けている。そして、このナット20の締め付けトルクを規制する事により、上記ハブ2の外周面に設けられた複列の内輪軌道23、23同士の間隔が、上記外輪1の内周面に設けられた複列の外輪軌道24、24の間隔との関係で適正値になる様にして、上記各転動体3、3に所望の(適正値の)予圧を付与する様にしている。
【0024】
この様にしてこれら各転動体3、3に付与した予圧が適正値のままであれば、特に問題を生じる事はない。但し、上記ハブ本体18に対する上記内輪19の嵌合位置は、車両の走行に伴って車輪が路面の凹凸に乗り上げる等により、転がり軸受ユニットに加わる瞬間的な過大荷重や振動等により、僅かとは言え、軸方向にずれる可能性がある。そして、上記嵌合位置が軸方向にずれた場合には、上記外輪1に対する上記エンコーダ4、4a、4bの軸方向位置が、この外輪1と上記ハブ2とのアキシアル方向(軸方向)の変位の有無に関係なく、ずれる可能性がある。この点に就いて、図14に示した構造を例にして説明する。
【0025】
図14に示した状態が、上記各転動体3、3に適切な予圧が付与されている状態とする。この状態から、上記内輪19が上記ハブ本体18に対し、図14の右方に変位し、1対の内輪軌道23、23同士の距離が、適切な予圧が付与された状態からδ分だけ広がって、上記各転動体3、3に付与された予圧が低下したが喪失していない状態を考える。両列の転動体3、3の接触角を同じとした場合、作用・反作用の法則から、両列の予圧は同じとなるから、上記δ分の変位に基づいて、両列の転動体3、3の予圧は均等に低下する。この場合でも、上記外輪1と上記ハブ2とは、例えばこれら両部材の軸方向中央位置同士を比較した場合には、相対変位はしていない。
【0026】
但し、上記ハブ2のうちのハブ本体18側に支持固定した上記エンコーダ4bの位置は、上記外輪1に対して、δ/2分だけ、図14の左方にずれる。そして、このδ/2分のずれに基づいて、上記エンコーダ4bの外周面にその検出部を対向させた、前記センサユニット15の出力信号が変動する。言い換えれば、上記外輪1と上記ハブ2とが変位していないにも拘らずこの出力信号が変化する、所謂ドリフトが発生する。
この様なドリフトは、仮に生じたとしても僅少ではあるが、元々、アキシアル荷重に基づく、上記外輪1と上記ハブ2との間の相対変位量も僅かである。この為、例えば自動車の走行安定性確保の為の制御をより高精度に行なう為には、上記ドリフトを抑える事が好ましい。
【0027】
【特許文献1】特開平3−209016号公報
【特許文献2】特開2004−3918号公報
【特許文献3】特公昭62−3365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、予圧変動に拘らず、内輪相当部材に支持固定したエンコーダの外周面に設けた被検出部と、外輪相当部材に支持したセンサの検出部との軸方向のずれを補償する構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の変位測定装置付転がり軸受ユニット及び荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、転がり軸受ユニットと変位測定装置又は荷重測定装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し使用状態でも回転しない外輪相当部材と、外周面に複列の内輪軌道を有し使用状態で回転する内輪相当部材と、これら両外輪軌道と両内輪軌道との間に、予圧を付与された状態で、各列毎に複数個ずつ設けられた転動体とを備える。
又、上記変位測定装置又は荷重測定装置は、少なくとも1個のエンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備える。
そして、このうちのエンコーダは、上記内輪相当部材の一部にこの内輪相当部材と同心に支持されたもので、外周面に設けた被検出部の特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この被検出部の特性が円周方向に関して変化するパターンを軸方向に関して連続的に変化させている。
又、上記センサは、上記外輪相当部材に支持され、検出部を上記エンコーダの外周面に対向させて、この外周面の特性変化に対応してその出力信号を変化させる。
又、上記演算器は、上記センサの検出信号が変化するパターンに基づいて、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との相対変位の方向及び量、又は、これら外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重の方向及び大きさを算出する。
そして、上記各転動体に付与した予圧に関連した変動(予圧自体の変動、或は、予圧を一定に保つ為の軌道輪部材同士の相対変位)に基づく、上記エンコーダと上記センサとの位置関係の変動を補償する機能を有する。
【発明の効果】
【0030】
上述の様に構成する本発明の変位測定装置付転がり軸受ユニット及び荷重測定装置付転がり軸受ユニットによれば、予圧に関連した変動に拘らず、内輪相当部材に支持固定したエンコーダの外周面に設けた被検出部と、外輪相当部材に支持したセンサの検出部との軸方向のずれを補償できる。この為、これら外輪相当部材と内輪相当部材とが変位していないにも拘らずセンサの出力信号が変化する事を防止して、これら外輪相当部材と内輪相当部材との間の相対変位量、又は、これら外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重の方向及び大きさを正確に求められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施する場合に、例えば請求項2、7に記載した様に、内輪相当部材を、一方の内輪軌道を有する第一の内輪部材と、他方の内輪軌道を有する第二の内輪部材とを、互いに同心に、軸方向に突き合わせた状態で結合して構成する。そして、板材により造られて軸方向両端部に設けた嵌合筒部同士の距離を調節可能とされたエンコーダの軸方向一端側の嵌合筒部を上記第一の内輪部材に、同じく軸方向他端側の嵌合筒部を上記第二の内輪部材に、それぞれ外嵌等により固定する。
【0032】
この様な構成を採用した場合、第一、第二の内輪部材の外周面に設けた第一、第二の内輪軌道同士の間隔がずれて、各列の転動体に付与している予圧が変動した場合でも、上記エンコーダの軸方向両端部の嵌合筒部が、軸方向一端側と他端側とに、ほぼ同じ量だけ変位する。この為、上記エンコーダの軸方向中間部外周面に設けた被検出部の軸方向位置が、外輪相当部材に対し軸方向にずれ動く事はない。
【0033】
或いは、請求項3、8に記載した様に、1対ずつのセンサ及びエンコーダを備える。そして、このうちの両エンコーダは、それぞれの被検出部の特性を円周方向に関して交互に且つ互いに同じピッチで変化させる。又、この被検出部の特性が円周方向に関して変化する位相を軸方向に関して連続的に、軸方向に対する傾斜方向を上記両エンコーダ同士の間で互いに逆方向として、且つ、この軸方向に対する傾斜角度を互いに同じとした状態で変化させる。
又、内輪相当部材は、一方の内輪軌道を有する第一の内輪部材と、他方の内輪軌道を有する第二の内輪部材とを、互いに同心に、軸方向に突き合わせた状態で結合して成るものとする。
又、上記一方のエンコーダを上記第一の内輪部材に、上記他方のエンコーダを上記第二の内輪部材に、それぞれ外嵌等により固定する。
そして、演算器は、上記両センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、外輪相当部材と上記内輪相当部材との相対変位の方向及び量、又は、これら外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重の方向及び大きさを算出する。
【0034】
この様な構成を採用した場合、第一、第二の内輪部材の外周面に設けた第一、第二の内輪軌道同士の間隔がずれて、各列の転動体に付与している予圧が変動した場合でも、上記両エンコーダが、軸方向に関して互いに反対方向(互いに離れる方向或いは近づく方向)に、ほぼ同じ量だけ変位する。この変位に伴って、上記両センサの検出部が対向する、上記両エンコーダの被検出面の円周方向に関する位相がずれる。但し、この様な予圧変化に伴う位相のずれは、上記両センサに関して、同方向に同じ量だけ生じる。従って、この予圧変化に伴う位相のずれが、上記両センサの出力信号同士の間に存在する位相差に影響する事はない。この為、この位相差に基づく、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との相対変位の方向及び量、又は、これら外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重の方向及び大きさの算出は、上記予圧変化に影響されずに、正確に行なえる。
【0035】
又、本発明のうちの請求項1〜3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した様に、演算器に、算出した相対変位量に基づき、外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重を算出する機能を持たせる。
又、この様な請求項4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した様に、転がり軸受ユニットを自動車の車輪支持用のハブユニットとする。そして、使用状態で外輪相当部材を自動車の懸架装置に支持し、内輪相当部材であるハブに車輪を結合固定する。
この様な構造によれば、厳しい条件でも車両の安定性の確保を図る為に必要な情報を取り入れて、ブレーキやエンジンの制御を行なう事ができる。
尚、上記外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重を求める為には、必ずしもこれら外輪相当部材と内輪相当部材との相対変位量を求める必要はない。即ち、請求項6に記載した様に、演算器に、第一、第二のセンサの出力信号に基づいて、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との間に作用する荷重を直接(上記相対変位量を求める過程を経る事なく)算出する機能を持たせる事もできる。
【実施例1】
【0036】
図1〜2は、請求項1、2、4、5、6、7、9に対応する、本発明の実施例1を示している。尚、本実施例の特徴は、複列に配置した転動体3、3に付与している予圧の変動に拘らず、内輪相当部材であるハブ2の外周面に支持固定したエンコーダ4cの外周面に形成した被検出部の、外輪1に支持したセンサユニット15に対する軸方向位置がずれる事を防止すべく、上記ハブ2に対する上記エンコーダ4cの取り付け構造を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図6〜15に示した、先発明の構造若しくはこの先発明に則した構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略し、以下、本実施例の特徴部分を中心に説明する。
【0037】
本実施例に組み込む、上記エンコーダ4cは、軟鋼板等の磁性金属板を折り曲げる事により、断面略凸字形で全体を円環状に形成している。上記エンコーダ4cは、軸方向両端部に設けられた、互いに同心の1対の小径円筒部12a、12bの互いに対向する側の軸方向端縁と、軸方向中央部に設けられた大径円筒部13aの軸方向両端縁とを、1対の円輪部14a、14bにより連続させて成る。この様なエンコーダ4cのうち、一方(図1〜2の左方)の小径円筒部12aは、第一の内輪部材であるハブ本体18の中間部に、締り嵌めにより外嵌固定している。これに対して、他方(図1〜2の右方)の小径円筒部12bは、第二の内輪部材である内輪19の軸方向外端部(軸方向に関して外とは、自動車への組み付け状態で幅方向外側となる端部で、図1、3、6、10、14の左端部)に、締り嵌めにより外嵌固定している。要するに、上記エンコーダ4cは、上記ハブ2を構成するハブ本体18と内輪19とに掛け渡す状態で、このハブ2の中間部周囲に支持固定している。
【0038】
上述の様に構成する本実施例によれば、上記複列に配置した転動体3、3の予圧変動に拘らず、上記ハブ2に支持固定した上記エンコーダ4cを構成する上記大径円筒部13aの外周面に設けた被検出部と、外輪1に支持したセンサユニット15の検出部との軸方向のずれを補償できる。この点に就いて、以下に説明する。
【0039】
仮に、図1、及び、図2に実線で示した状態が、上記各転動体3、3に適切な予圧が付与されている状態とする。この状態から、上記ハブ2の外周面に設けた1対の内輪軌道23、23同士の距離が、適切な予圧が付与された状態からδ分だけ広がって、上記各転動体3、3に付与された予圧が低下した場合、上記両小径円筒部12a、12b同士の間隔が、上記δ分広がる。この場合、前述した様に、両列の転動体3、3の予圧は互いに等しくなるので、上記両小径円筒部12a、12bは、前記両円輪部14a、14bの両端縁と、上記両小径円筒部12a、12b及び前記大径円筒部13aの端縁との連結部を変形させつつ、δ/2分ずつ、互いに反対方向に変位して、互いの間隔を、上記δ分広げる。従って、これら両小径円筒部12a、12b同士の間に存在する、上記大径側円筒部13aの軸方向位置は変化しない。この為、この大径側円筒部13aの外周面に設けた被検出部の軸方向位置が、上記センサユニット15の検出部に対し軸方向にずれ動く事はない。この結果、上記外輪1と上記ハブ2とが変位していないにも拘らず上記センサユニット15の出力信号が変化する、所謂ドリフトが発生する事がなくなる。
【実施例2】
【0040】
図3は、請求項1、3、4、5、6、8、9に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例の場合には、それぞれが軟鋼板等の磁性金属板により、断面クランク形で全体を円環状に形成した1対のエンコーダ4d、4eを、ハブ2を構成するハブ本体18の軸方向中間部と内輪19の軸方向外端部とに、それぞれ締り嵌めにより外嵌固定している。上記両エンコーダ4d、4eは、互いに同心である小径円筒部12cの軸方向端縁と大径円筒部13bの軸方向端縁とを、円輪部14cにより連続させたもので、この大径円筒部13bに多数の透孔6d、6dを、円周方向に関して等間隔に形成している。これら各透孔6d、6dは、それぞれ、軸方向に対し同じ角度だけ傾斜している。傾斜方向は、一方のエンコーダ4dと他方のエンコーダ4eとで互いに逆にしている。そして、外輪1に支持したセンサユニット15に設けた、それぞれがセンサに相当する1対の磁気検出素子の検出部を、上記両エンコーダ4d、4eの大径円筒部13bの外周面に近接対向させている。
【0041】
この様な本実施例の構造の場合には、上記ハブ2を構成するハブ本体18と内輪19との外周面に設けた1対の内輪軌道23、23同士の間隔がずれて、各列の転動体3、3に付与している予圧が変動した場合でも、上記両エンコーダ4d、4eが、軸方向に関して互いに反対方向(互いに離れる方向或いは近づく方向)に、ほぼ同じ量だけ変位する。この点に就いて、以下に説明する。
【0042】
仮に、図3に示した状態が、上記各転動体3、3に適切な予圧が付与されている状態とする。この状態から、上記ハブ2の外周面に設けた1対の内輪軌道23、23同士の距離が、適切な予圧が付与された状態からδ分だけ広がって、上記各転動体3、3に付与された予圧が低下した場合、上記両エンコーダ4d、4e同士の間隔が、上記δ分広がる。この場合、前述した様に、両列の転動体3、3の予圧は互いに等しくなるので、上記両エンコーダ4d、4eは、δ/2分ずつ、互いに反対方向に変位して、互いの間隔を、上記δ分広げる。この変位に伴って、上記両磁気検出素子の検出部が対向する、上記両エンコーダ4d、4eの被検出面の円周方向に関する位相、即ち、これら両エンコーダ4d、4eの円周方向に関する、前記各透孔6d、6dの円周方向端縁の位置がずれる。但し、この様な予圧変化に伴う位相のずれは、上記両磁気検出素子に関して、同方向に同じ量だけ生じる。従って、この予圧変化に伴う位相のずれが、これら両磁気検出素子の特性変化に対応して、前記センサユニット15から出力される1対の出力信号同士の間に存在する位相差に影響する事はない。従って、この位相差に基づく、上記外輪1と上記ハブ2との相対変位の方向及び量、又は、これら外輪1とハブ2との間に作用する荷重の方向及び大きさの算出は、上記予圧変化に影響されずに、正確に行なえる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
図1、3に示した構造は、磁性金属板製のエンコーダの外周面のうちで軸方向に離隔した2個所位置に、それぞれ1対のセンサの検出部を対向させた構造に就いて示している。但し、本発明は、この様な構造に限らずに実施できる。例えば、前述の図6〜9に示した先発明の第1例の構造の様に、永久磁石製のエンコーダを使用する構造に就いて、本発明を実施する事も可能である。この場合には、例えば図4に示す様に、金属板製で、前述の図1〜2に示した実施例1のエンコーダと同様の断面形状を有する芯金25の外周面に、上記図6〜9に示した様なパターンで着磁した永久磁石製のエンコーダ本体26を全周に亙り添着固定して、エンコーダ4fとする。そして、上記芯金25を、ハブ2の中間部外周面に、このハブ2を構成するハブ本体18と内輪19(図1、3参照)とに掛け渡す様に外嵌支持する。
【0044】
又、外輪1とハブ2とのアキシアル方向の変動に伴って変化する、1個のエンコーダの出力信号のデューティ比に応じて、この変動の方向及び量(又は、作用する荷重の方向及び大きさ)を求める構造に、本発明を適用する事もできる。この場合には、例えば図5に示す様なエンコーダ4gを使用する。このエンコーダ4gは、前述の図2に示したエンコーダ4cと同様に、略凸字形の断面形状を有する。但し、上記エンコーダ4gの場合には、大径側円筒部13aに、それぞれが台形である多数の透孔6e、6eを、円周方向に関して等間隔に形成している。この様な透孔6e、6eを形成した、上記大径側円筒部13aの外周面に検出部を対向させたセンサの出力信号のデューティ比(1周期中での高電位継続時間の割合)は、上記エンコーダ4gと上記センサの検出部との軸方向変位に対応して変化する。そこで、上記デューティ比に基づいて、上記変動の方向及び量(又は、作用する荷重の方向及び大きさ)を求められる。
【0045】
この様な構造でも、予圧変動に伴って上記エンコーダ4gが上記センサに対し軸方向に変位すると、上記アキシアル方向の変動の方向及び量(又は、作用する荷重の方向及び大きさ)を正確には求められなくなる。これに対して、上記エンコーダ4gを、前述の図1に示す様な構造で、上記ハブ2に対し支持固定すれば、上記予圧の変動が、上記アキシアル方向の変動の方向及び量(又は、作用する荷重の方向及び大きさ)の測定精度を悪化させる事を防止できる。
尚、前記図4に示した構造で、永久磁石製のエンコーダ本体の外周面の着磁領域を台形とした(円周方向に隣り合うS極とN曲との境界を軸方向に対し傾斜させた)エンコーダと1個のセンサとを組み合わせた場合も、同様にして、予圧の変動がアキシアル方向の変動の方向及び量(又は、作用する荷重の方向及び大きさ)の測定精度を悪化させる事を防止できる。
【0046】
又、前述の図3に示した構造では、1対のエンコーダ4d、4eを、複列に配置した転動体3、3の間部分に設置しているが、この間部分に十分な空間容積を確保できない場合には、何れか一方のエンコーダをこの間部分に配置すると共に他方のエンコーダを上記複列に配置した転動体3、3に対して上記間部分と反対側に配置する事もできる。更には、両方のエンコーダを、これら複列に配置した転動体3、3に対して上記間部分と反対側に配置する事もできる。
【0047】
又、エンコーダとセンサとの組み合わせは、磁気検知式のものに限るものではない。例えば、渦電流式のセンサや光学式のセンサを使用する事もできる。
更には、転がり軸受ユニットの構造に就いても、図示の様な玉軸受ユニットに限らず、複列円すいころ軸受ユニットとする事もできる。又、予圧付与の構造に就いても、図示の様な定位置予圧構造に限らず、定圧予圧構造とする事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1を示す断面図。
【図2】実施例1に組み込むエンコーダを取り出して示す部分断面図。
【図3】本発明の実施例2を示す断面図。
【図4】本発明の実施例3に組み込むエンコーダを取り出して示す部分断面図。
【図5】本発明の実施例4に組み込むエンコーダを径方向から見た図。
【図6】先発明に係る変位測定装置付転がり軸受ユニットの第1例を示す断面図。
【図7】この第1例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図8】同じく展開図。
【図9】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図10】先発明の第2例を示す断面図。
【図11】この第2例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図12】同じく展開図。
【図13】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図14】先発明に則して考えた構造の1例を示す断面図。
【図15】この構造に組み込むエンコーダを取り出して示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
1 外輪
2 ハブ
3 転動体
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g エンコーダ
5、5a センサ
6a、6b、6c、6d、6e 透孔
7a、7b 柱部
8 リム部
12、12a、12b、12c 小径円筒部
13、13a、13b 大径円筒部
14、14a、14b、14c 円輪部
15 センサユニット
16 ホルダ
17 取付孔
18 ハブ本体
19 内輪
20 ナット
21 小径段部
22 段差面
23 内輪軌道
24 外輪軌道
25 芯金
26 エンコーダ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受ユニットと変位測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し使用状態でも回転しない外輪相当部材と、外周面に複列の内輪軌道を有し使用状態で回転する内輪相当部材と、これら両外輪軌道と両内輪軌道との間に、予圧を付与された状態で、各列毎に複数個ずつ設けられた転動体とを備えたものであり、
上記変位測定装置は、少なくとも1個のエンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備えたものであり、
このうちのエンコーダは、上記内輪相当部材の一部にこの内輪相当部材と同心に支持されたもので、外周面に設けた被検出部の特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この被検出部の特性が円周方向に関して変化するパターンを軸方向に関して連続的に変化させたものであり、
上記センサは、検出部を上記エンコーダの外周面に対向させた状態で上記外輪相当部材に支持され、この外周面の特性変化に対応してその出力信号を変化させるものであり、
上記演算器は、上記センサの検出信号が変化するパターンに基づいて、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との相対変位の方向及び量を算出するものであり、
上記各転動体に付与した予圧に関係した変動に基づく、上記エンコーダと上記センサとの位置関係の変動を補償する機能を有する
変位測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項2】
内輪相当部材は、一方の内輪軌道を有する第一の内輪部材と、他方の内輪軌道を有する第二の内輪部材とを、互いに同心に、軸方向に突き合わせた状態で結合して成るものであり、板材により造られて軸方向両端部に設けた嵌合筒部同士の距離を調節可能とされたエンコーダの軸方向一端側の嵌合筒部を上記第一の内輪部材に、同じく軸方向他端側の嵌合筒部を上記第二の内輪部材に、それぞれ固定した、請求項1に記載した変位測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項3】
1対ずつのセンサ及びエンコーダを備え、このうちの両エンコーダは、それぞれの被検出部の特性を円周方向に関して交互に且つ互いに同じピッチで変化させると共に、この被検出部の特性が円周方向に関して変化する位相を軸方向に関して連続的に、軸方向に対する傾斜方向を上記両エンコーダ同士の間で互いに逆方向として、且つ、この軸方向に対する傾斜角度を互いに同じとした状態で変化させており、内輪相当部材は、一方の内輪軌道を有する第一の内輪部材と、他方の内輪軌道を有する第二の内輪部材とを、互いに同心に、軸方向に突き合わせた状態で結合して成るものであり、上記一方のエンコーダを上記第一の内輪部材に、上記他方のエンコーダを上記第二の内輪部材に、それぞれ固定しており、演算器は、上記両センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、外輪相当部材と上記内輪相当部材との相対変位の方向及び量を算出する、請求項1に記載した変位測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項4】
演算器が、算出した相対変位量に基づき、外輪相当部材と内輪相当部材との間に作用する荷重を算出する機能を有する、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した変位測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項5】
転がり軸受ユニットが自動車の車輪支持用のハブユニットであり、使用状態で外輪相当部材が自動車の懸架装置に支持され、内輪相当部材であるハブに車輪が結合固定される、請求項4に記載した変位測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項6】
転がり軸受ユニットと荷重測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し使用状態でも回転しない外輪相当部材と、外周面に複列の内輪軌道を有し使用状態で回転する内輪相当部材と、これら両外輪軌道と両内輪軌道との間に、予圧を付与された状態で、各列毎に複数個ずつ設けられた転動体とを備えたものであり、
上記荷重測定装置は、少なくとも1個のエンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備えたものであり、
このうちのエンコーダは、上記内輪相当部材の一部にこの内輪相当部材と同心に支持されたもので、外周面に設けた被検出部の特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この被検出部の特性が円周方向に関して変化するパターンを軸方向に関して連続的に変化させたものであり、
上記センサは、検出部を上記エンコーダの外周面に対向させた状態で上記外輪相当部材に支持され、この外周面の特性変化に対応してその出力信号を変化させるものであり、
上記演算器は、上記センサの検出信号が変化するパターンに基づいて、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との間に作用する荷重の方向及び大きさを算出するものであり、
上記各転動体に付与した予圧に関係した変動に基づく、上記エンコーダと上記センサとの位置関係の変動を補償する機能を有する
荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項7】
内輪相当部材は、一方の内輪軌道を有する第一の内輪部材と、他方の内輪軌道を有する第二の内輪部材とを、互いに同心に、軸方向に突き合わせた状態で結合して成るものであり、板材により造られて軸方向両端部に設けた嵌合筒部同士の距離を調節可能とされたエンコーダの軸方向一端側の嵌合筒部を上記第一の内輪部材に、同じく軸方向他端側の嵌合筒部を上記第二の内輪部材に、それぞれ固定した、請求項6に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項8】
1対ずつのセンサ及びエンコーダを備え、このうちの両エンコーダは、それぞれの被検出部の特性を円周方向に関して交互に且つ互いに同じピッチで変化させると共に、この被検出部の特性が円周方向に関して変化する位相を軸方向に関して連続的に、軸方向に対する傾斜方向を上記両エンコーダ同士の間で互いに逆方向として、且つ、この軸方向に対する傾斜角度を互いに同じとした状態で変化させており、内輪相当部材は、一方の内輪軌道を有する第一の内輪部材と、他方の内輪軌道を有する第二の内輪部材とを、互いに同心に、軸方向に突き合わせた状態で結合して成るものであり、上記一方のエンコーダを上記第一の内輪部材に、上記他方のエンコーダを上記第二の内輪部材に、それぞれ固定しており、演算器は、上記両センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、外輪相当部材と上記内輪相当部材との間に作用する荷重の方向及び大きさを算出する、請求項6に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項9】
転がり軸受ユニットが自動車の車輪支持用のハブユニットであり、使用状態で外輪相当部材が自動車の懸架装置に支持され、内輪相当部材であるハブに車輪が結合固定される、請求項6〜8のうちの何れか1項に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−284568(P2006−284568A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63576(P2006−63576)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】