説明

変形制限部を備えた平坦シール

少なくとも一つの金属層であって、断面で見たときに該金属層の一側面上における波形状構造(5a)を有するプロファイル部(5)を少なくとも部分的に有するという少なくとも一つの金属層(1)を備えた平坦シールが開示される。波形状構造(5a)の反対側に位置する側面にてプロファイル部(5)は、丸形区画と角度付き部分を備えた区画とが交互に配置された外郭形状部(5b、5c、5d)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの金属層を備えた平坦シールに関し、特に、変形制限部として使用される平坦シールの金属層に関する。該金属製平坦シールは、特に内燃エンジンにおける各構成要素を密閉するために使用される如きシリンダヘッド用シールとして使用されうるだけでなく、フランジシールの如き他の形式のシールとしても構成されうる。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッド用シールは、内燃エンジンシステムにおけるエンジンブロックとシリンダヘッドとの間に挟持される。その主な役割は、燃焼室、オイル管路、および、冷却剤領域を密閉することである。それは更に、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間の力伝達部材として使用される。エンジンが運転されているときに生ずるシール間隙の変動は、弾性的に補償されねばならない。
【0003】
特に、たとえば燃焼室の開口、または、冷却剤およびエンジンオイルの通路などの貫通開口の回りにおけるシリンダヘッド用シールの領域におけるシリンダヘッド用シールのシール効果を確実としまたは高めるために、シリンダヘッド用シールの少なくとも一層は概して、これらの開口をほぼ完全に囲繞するビーディング(beading)もしくは突出部を備える。該ビーディングもしくは突出部によれば、必要とされるシリンダヘッド用シールの弾性も確実とされる。
【0004】
ビーディングの弾性的変形能力は本質的に構成要素の剛性に依存し、すなわち、ビーディングは概略的にシリンダヘッドおよびエンジンブロックの剛性に依存して変形される。但し、ビーディングのこの弾性的特性は経時的に減少する。過剰なシール間隙変動は付加的に、ビーディングの過負荷に繋がりうる。それは、ビーディング強度及び潜在的弾性の低減、または、ビーディングの亀裂にさえ帰着しうる。この故に現在は、“ストッパ”もしくは“インストップ(INSTOP)”とも称される変形制限部が習用的に使用されている。これによれば、完全な塑性変形が阻止され、且つ、耐久性および弾性挙動に関する最適条件が達成される。これらの変形制限部は、たとえば複数の金属層の内の一つの金属層を曲げることにより達成されうるか、または、シールの各機能層間に更なるストッパ層が挿入される。
【0005】
特許文献1は、波形ストッパとして知られるもの、および、台形状ストッパとして知られるものを開示している。波形ストッパは波形状が型押しされた金属層であり、且つ、台形状ストッパは、夫々の波の頂部および谷部が平坦化もしくは平準化された波形ストッパである。波形ストッパおよび台形状ストッパは、それらが、与えられた張力、温度および剛性の条件に対して理想的に適合すると同時に、与えられた設置空間を最適に利用するという事実により特徴付けられる。
【0006】
波形ストッパは、その波状形状の故に、大きくて可変的な範囲の弾性を有している。波形ストッパは、金属層の高さ、型押しされた波形状の振幅、および、型押しされた波形状の半径の如き、該波形ストッパのパラメータを変更することにより、与えられたエンジン剛性に対して適合されうる。この挙動は、各動作状態の間における圧縮ピークが均等化され且つ各構成要素の圧縮が調和されることを意味する。
【0007】
表面圧力の圧縮振幅を減少しうるために、波形状に加えて、台形状として知られるものが開発された。この改変された波形ストッパは、独特の弾性的/塑性的挙動と同時に、低減された表面圧力を有している。その担持面は、要件に従い適合かつ分布されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1290364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、波形ストッパの利点と台形状ストッパの利点とを組み合わせたストッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に依れば、角度付き部分を備える区画および丸み付けされた区画を有する外郭形状部であって、対応する圧力およびシール条件に対して非常に可変的に整合されうるという外郭形状部が特定される。本発明に係るストッパは、実際の作動領域において波形ストッパよりも更に堅固に挙動することから、溶接されたストッパになり代わるというその機能を更に良好に満足する。本発明に係るストッパの外郭形状部の更なる利点は、波形ストッパを型押しするために従前に使用していた工具を継続して使用できるということである。このことは、コスト効率的な解決策が得られることを意味する。
【0011】
本発明の第1の見地に依れば、少なくとも部分的にプロファイル部(profile)を有する少なくとも一つの金属層を有する平坦シールが提供される。プロファイル部は例えば金属層へと型押しされ、且つ、該プロファイル部は、断面で見たときに金属層の一側面上における波形状構造を有する。プロファイル部は、波形状構造の反対側に位置する側面が、角度付き部分を備えた区画と丸形区画とが交互に配置された外郭形状部を有する、ということを特徴とする。該外郭形状部の丸型要素および波形状構造は必ずしも正弦波形状を有する必要はなく、他の波形状も可能である。更に、外郭形状部の区画であって角度付き部分を備えるという区画は、角度付き部分の個数に関して又は一定の角度に対して限定されるものでない。波形状構造と外郭形状部との組み合わせによれば、両側にて丸み付けされたストッパとは異なる変形挙動が引き起こされる。これにより、本発明に係るストッパの剛性は高められる。
【0012】
少なくとも一つの金属層は好適には、プロファイル部に隣接してビーディングを有する。この配置は、本発明に係るプロファイル部は平坦シールが一層のみからなるときでさえもビーディングに対する変形制限部もしくはストッパとして作用しうることを意味する。
【0013】
プロファイル部の高さであって、波形状構造の振幅と外郭形状部の高さとから構成されるという高さは好適には、ビーディングの高さよりも小さい。これにより、ビーディングの完全なシール効果は確実に維持される。
【0014】
一つの好適実施形態において、波形状構造の波頂部同士および/または外郭形状部の丸形区画同士は、均一な間隔を有している。このことは、シリンダヘッドもしくはエンジンブロック上の圧力分布が均一に維持されうることを意味している。
【0015】
更なる好適実施形態において、波形状構造の波頂部同士および/または外郭形状部の丸形区画同士は、異なる間隔を有している。このことは、ストッパは平坦シールに関する夫々の要件に対して適合されうることを意味している。特に、平坦シールの弾性およびバネ剛性は、局所的かつ個別的に調節されうる。
【0016】
波形状構造の波頂部および外郭形状部の丸形区画は好適には、金属層に本質的に垂直に整列する。このことは、波形状構造の波頂部または丸形区画が配置される箇所における金属層の箇所における材料の断面が、純粋な波形ストッパにおける同一の箇所よりも厚寸であることを意味する。これは、平坦シールの剛性の増大に帰着する。
【0017】
更なる実施形態に依れば、プロファイル部高さは該プロファイル部内において変化する。このことは、波形状構造の振幅、および、プロファイル部内における丸形区画の高さが、平坦シールおよび周囲のエンジン部品の夫々の幾何学形状に対して個別的に適合されうることを意味する。これにより、平坦シールの弾性およびバネ剛性は局所的に調整されうる。
【0018】
更なる見地に依れば、平坦シールは第1の金属層と類似したプロファイル部を備えた更なる金属層を有する。このことは、平坦シールに対し、一定の厚み比率および圧力比率が考慮されうることを意味する。
【0019】
更なる金属層は好適には、第1の金属層と鏡面対称的に配置される。このことは、平坦シールの弾性および剛性に関する良好な特性が保持されることを意味する。プロファイル部を夫々備える2つの金属層に依ればビーディングが省略されうるが、それでもなお、十分な挟持力により所望のシール効果が保持されうる。この場合、隣接するシール層もしくは隣接するエンジン部品に対するストッパの担持面、および、該ストッパの弾性および剛性は、2つの層の配向に依存して、増大する。
【0020】
更なる実施形態に依れば、第1の金属層のプロファイル部および更なる金属層のプロファイル部は、相互に関してオフセットして配置される。このことは、シール挙動が目標限定様式で更に調整されうることを意味する。
【0021】
2つの金属層は、異なるプロファイル部を有しうる。該2つの層は、それらの波形状構造の長さ、深度、振幅、角度、間隔、および、外郭形状部の丸形区画の高さ、角度、半径、角度付き部分の個数、および、間隔に関して異なりうる。このことは、平坦シールの圧力変化特性が個々の要件および条件に関して個別的に設計されうることを意味する。
【0022】
金属層の少なくとも一つは好適には、弾性バネ鋼から作製される。但し、たとえば冷間変形され且つ焼き戻しで硬化されうる鋼鉄などの、他の任意で適切な材料が使用されうる。
【0023】
当然ながら、平坦シールに対しては、本発明に係るプロファイル部を備えたストッパを含む更なる層が導入されうる。
【0024】
次に本発明が、本発明の種々の実施形態の図面を用いて更に詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ビーディングに対するストッパとして作用する本発明に係るプロファイル部を備えた平坦シールの一部分を通る概略的な側断面図である。
【図2】ビーディングに対するストッパとして作用する本発明に係る更なるプロファイル部を備えた平坦シールの一部分を通る概略的な側断面図である。
【図3】ビーディングに対するストッパとして作用する本発明に係る更なるプロファイル部を備えた平坦シールの一部分を通る概略的な側断面図である。
【図4】三層式平坦シールの一部分を通る概略的な側断面図である。
【図5a】本発明に係るプロファイル部を備えた2つの層を有する平坦シールの一部分を通る概略的な側断面図である。
【図5b】本発明に係るプロファイル部を備えた2つの層を有する平坦シールの一部分を通る概略的な側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、平坦シールにおける金属層1の詳細を示している。該金属層に対してはストッパとしてプロファイル部5が型押しされ、該プロファイル部は一側面上の波形状構造5aと他側面上の外郭形状部5bとを有し、該外郭形状部は、波の谷部の底部が平坦化された波形状構造からなる。プロファイル部の高さ10は、波形状構造の振幅と、外郭形状部の波頂部の振幅との間に延在する。ストッパに隣接して、高さ20を有するビーディング7が配置される。ビーディングのこの高さ20は、プロファイル部の高さ10よりも大きい。ビーディングは、必ずしも波形状構造と同一方向において金属層に対して型押しされる必要はなく、それは外郭形状部の方向にも延在しうる。
【0027】
図2は、本発明に係るプロファイル部の更なる実施形態を備えた平坦シールの一部分を通る概略的な側断面を示している。平坦シールの金属層1は、プロファイル部5を有している。プロファイル部5は、波形状構造5aおよび外郭形状部5cを備え、該外郭形状部においては、角度付き部分を備えた非対称区画と、非対称的な丸形区画とが交互に配置される。このプロファイル部の高さ10は、波形状構造の振幅と、丸形区画の高さとの間に延在する。ストッパに隣接して、高さ20を有するビーディング7が配置される。プロファイル部の高さ10は、ビーディングの高さ20よりも小さい。
【0028】
図3は、本発明に係るプロファイル部の更なる実施形態を備えた平坦シールの一部分を通る概略的な側断面を示している。図1および図2におけるのと同様に、金属層1はプロファイル部5を有している。この場合にプロファイル部は波形状構造5aに加えて外郭形状部5dを備え、該外郭形状部において、夫々の丸形区画は角度付き部分にて波形状構造の波頂部の中央部に遭遇している。この場合にも、プロファイル部にはビーディング7が隣接している。波形状構造の振幅から外郭形状部の丸形区画の高さまで延在するプロファイル部の高さ10は、この場合にもビーディング7の高さより小さい。
【0029】
図4は、三層式平坦シールの一部分を通る概略的な側断面を示している。2つの外側位置層30は夫々、ビーディング35を有している。2つのビーディング付き層の間には、本発明に係るプロファイル部を備えた金属層1が配置される。金属層1は、2つのビーディング付き層30に対するストッパとして作用する。この目的の為に、金属層1に対してはストッパとしてプロファイル部が型押しされ、該プロファイル部は一側面上の波形状構造5aと他側面上の外郭形状部5bとを有し、該外郭形状部は、波の谷部の底部が平坦化された波形状構造からなる。
【0030】
図5aは、2つの金属層1および40を備えた平坦シールの一部分を示している。2つの層はいずれも本発明に係るプロファイル部5を有し、該プロファイル部は、一側面上における波形状構造5aと、波の谷部の底部が平坦化された波形状構造からなるという他側面上における外郭形状部5bとを備える。2つの層は、層40の波頂部が層1の波頂部に位置する様に鏡面対称的に配置される。
【0031】
図5bは、平坦シールの一部分を形成する2つの金属層1および50を示している。両方の層は、一側面上における波形状構造5aと他側面上における外郭形状部5bとを備える本発明に係るプロファイル部5を有している。2つの層は鏡面対称的に配置されるが、図5aと対照的に、この場合に該2つの層は、層50の波頂部が層1の波の谷部に位置する様に、相互に関してオフセットされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの金属層であって、断面で見たときに該金属層の一側面上における波形状構造(5a)を有するプロファイル部(5)を少なくとも部分的に有するという少なくとも一つの金属層(1)を備えた平坦シールにおいて、
前記波形状構造(5a)の反対側に位置する側面にて前記プロファイル部(5)は、角度付き区画と丸形区画とが交互に配置された外郭形状部(5b、5c、5d)を有する、ことを特徴とする平坦シール。
【請求項2】
前記少なくとも一つの金属層(1)は、前記プロファイル部(5)に隣接してビーディング(7)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の平坦シール。
【請求項3】
前記プロファイル部(5)の高さ(10)は、前記ビーディング(7)の高さ(20)よりも小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の平坦シール。
【請求項4】
前記波形状構造(5a)の波頂部同士は、少なくとも部分的に均一な間隔を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項5】
前記波形状構造(5a)の波頂部同士は、少なくとも部分的に異なる間隔を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項6】
前記外郭形状部(5b、5c、5d)の丸形区画同士は、少なくとも部分的に均一な間隔を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項7】
前記外郭形状部(5b、5c、5d)の丸形区画同士は、少なくとも部分的に異なる間隔を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項8】
前記波形状構造(5a)の波の谷部および前記外郭形状部(5b、5d)の丸形区画は、前記金属層に本質的に垂直に整列する、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項9】
前記プロファイル部高さ(10)は、前記プロファイル部(5)内において変化する、ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項10】
第1の金属層(1)と類似したプロファイル部を有する更なる金属層(40、50)が配設される、ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。
【請求項11】
前記更なる金属層(40)は、前記第1の金属層(1)と鏡面対称的に配置される、ことを特徴とする請求項10に記載の平坦シール。
【請求項12】
前記第1の金属層(1)の前記プロファイル部および前記更なる金属層(50)の前記プロファイル部は、相互に関して少なくとも部分的にオフセットして配置される、ことを特徴とする請求項10に記載の平坦シール。
【請求項13】
前記金属層の少なくとも一つは、弾性バネ鋼から作製される、ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一つの請求項に記載の平坦シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2010−506107(P2010−506107A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530764(P2009−530764)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005687
【国際公開番号】WO2008/043400
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(595157503)フェデラル−モーグル シーリング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Sealing Systems GmbH
【Fターム(参考)】