説明

変形硬貨判別方法および硬貨処理装置

【課題】金種識別時に用いる画像情報を用いて専用のセンサを設ける必要がないことによって硬貨処理装置にかかる製造コストを削減できるとともに、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出すること。
【解決手段】変形した硬貨を検出する硬貨処理装置に適用される変形硬貨判別方法であって、硬貨の画像を取得し、取得された画像の特徴に基づいて硬貨の中心を設定し、設定された硬貨の中心について極座標変換した画像を取得し、取得された画像に基づいて硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出し、検出された欠損量に基づいて硬貨が変形しているか否かを判別するよう変形硬貨判別方法および硬貨処理装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変形硬貨を検出する変形硬貨判別方法および硬貨処理装置に関し、特に、硬貨処理装置にかかる製造コストを削減するとともに、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出することができる変形硬貨判別方法および硬貨処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨の画像をカメラで撮像し、撮像された画像に基づいて硬貨の変形レベルを判定し、判定した変形レベルによって変形硬貨であるか否かを判別する変形硬貨判別手法が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、カメラで撮像された画像に基づいて長径と短径との比率によって変形硬貨であるか否かを判別する変形硬貨判別手法が開示されている。また、特許文献1には、光学式の厚みセンサによって硬貨の高さを検出し、検出された高さに基づいて変形硬貨であるか否かを判別する変形硬貨判別手法も開示されている。
【0004】
かかる変形硬貨判別手法では、長径および短径の比率が所定の閾値以上である場合や、検出された硬貨の高さが所定の閾値以上である場合に変形硬貨であると判別する。また、かかる変形硬貨判別手法は、カメラで撮像された画像に基づいて偽の硬貨であるか否か、すなわち「正貨」または「偽貨」の判別も行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−251109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置には、硬貨識別を行う硬貨識別部分の大きさを小型化することができないという問題があった。具体的には、従来の硬貨処理装置は、金種を識別するための磁気センサと光学式の厚みセンサとを備える必要があるので、必然的に硬貨識別部分が大きくなってしまう。
【0007】
また、従来の変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置は、硬貨識別部分が大きくなるとともに、硬貨処理装置の筐体も大きくなる。これにより、装置にかかる製造コストも膨らんでしまう。また、従来の硬貨処理装置は、磁気センサと厚みセンサとを備えるためのコストもかかることとなる。
【0008】
さらに、従来の硬貨処理装置では、長径および短径の比率のみによる変形硬貨の判別手法であるため精度が悪いという問題があった。
【0009】
これらのことから、硬貨処理装置にかかる製造コストを削減するとともに、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出することができる変形硬貨判別方法および硬貨処理装置をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0010】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、硬貨処理装置にかかる製造コストを削減するとともに、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出することができる変形硬貨判別方法および硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、変形した硬貨を検出する硬貨処理装置に適用される変形硬貨判別方法であって、前記硬貨の画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の中心を設定する中心設定工程と、前記中心設定工程によって設定された前記硬貨の中心について極座標変換した画像を取得する極座標画像取得工程と、前記極座標画像取得工程によって取得された画像に基づいて前記硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出する欠損量検出工程と、前記欠損量検出工程によって検出された前記欠損量に基づいて前記硬貨が変形しているか否かを判別する判別工程とを含んだことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記中心設定工程は、前記画像取得工程によって取得された前記画像の特徴に基づいて設定された仮の中心について極座標変換した画像から検出される前記外周部の軌道に基づき、前記仮の中心を真の中心へ補正することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記欠損量検出工程は、前記硬貨における外周部の軌道の欠損長を検出し、前記判別工程は、前記欠損長を前記外周部で除した値が所定の閾値以上である場合、前記硬貨が変形していると判別することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記欠損量検出工程は、前記硬貨における外周部の軌道の欠損部分を円弧とする内角を欠損角として検出し、前記判別工程は、前記欠損角が所定の閾値以上である場合、前記硬貨が変形していると判別することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記極座標画像取得工程によって取得された画像の特徴に基づいて前記硬貨の金種を識別する識別工程をさらに備え、前記判別工程は、前記閾値として前記識別工程によって識別された前記硬貨の金種ごとに予め記憶される閾値を用いることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、変形した硬貨を検出する硬貨処理装置であって、搬送路上に前記硬貨を順次搬送させ、ベルト状の押さえ機構で前記硬貨を押さえつけつつ搬送する硬貨搬送手段と、前記硬貨の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の中心を設定する中心設定手段と、前記中心設定手段によって設定された前記硬貨の中心について極座標変換した画像を取得する極座標画像取得手段と、前記極座標画像取得手段によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の種類を識別する識別手段と、前記極座標画像取得手段によって取得された前記画像に基づいて前記硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出する欠損量検出手段と、前記識別手段によって識別された前記硬貨の金種と前記欠損量検出手段によって検出された前記欠損量とに基づいて前記硬貨が変形しているか否かを判別する判別手段と、前記識別手段によって識別された識別結果および/または前記判別手段によって判別された判別結果に基づいて前記硬貨を収納部または返却口へ分別する分別手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変形した硬貨を検出する硬貨処理装置に適用される変形硬貨判別方法であって、硬貨の画像を取得し、取得された画像の特徴に基づいて硬貨の中心を設定し、設定された硬貨の中心について極座標変換した画像を取得し、取得された画像に基づいて硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出し、検出された欠損量に基づいて硬貨が変形しているか否かを判別することとしたので、変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置にかかる製造コストを削減するとともに、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明によれば、取得された画像の特徴に基づいて設定された仮の中心について極座標変換した画像から検出される外周部の軌道に基づき、仮の中心を真の中心へ補正することとしたので、変形部分を検出する際に、補正した中心に基づいて検出された外周部は直線となり、精度良く変形部分を検出することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明によれば、硬貨における外周部の軌道の欠損長を検出し、欠損長を外周部で除した値が所定の閾値以上である場合、硬貨が変形していると判別することとしたので、精度良く変形部分を検出することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、硬貨における外周部の軌道の欠損部分を円弧とする内角を欠損角として検出し、欠損角が所定の閾値以上である場合、硬貨が変形していると判別することとしたので、精度良く変形部分を検出することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明によれば、取得された画像の特徴に基づいて硬貨の金種を識別し、閾値として識別された硬貨の金種ごとに予め記憶される閾値を用いることとしたので、硬貨の金種ごとの特徴による変形率の違いを包含することが可能となり、より高精度に変形部分を検出することができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、変形した硬貨を検出する硬貨処理装置であって、搬送路上に硬貨を順次搬送させ、ベルト状の押さえ機構で硬貨を押さえつけつつ搬送し、硬貨の画像を取得し、取得された画像の特徴に基づいて硬貨の中心を設定し、設定された硬貨の中心について極座標変換した画像を取得し、取得された画像の特徴に基づいて硬貨の種類を識別し、取得された画像に基づいて硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出し、識別された硬貨の金種と検出された欠損量とに基づいて硬貨が変形しているか否かを判別し、さらに、識別された識別結果および/または判別手段によって判別された判別結果に基づいて硬貨を収納部または返却口へ分別することとしたので、挿入された硬貨を搬送路上に1枚ずつ搬送することができるとともに硬貨の浮きを防止することができるという効果を奏する。また、このようにすることによって、変形硬貨が誤って払出しされることがないだけでなく、硬貨処理装置の硬貨詰まり等による障害の発生を低減することによって硬貨処理装置の利用客に対して不利益を負わせることがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る変形硬貨判別手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る硬貨処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、閾値情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、硬貨処理装置の側面図である。
【図5】図5は、仮の中心の設定手法について説明する図である。
【図6】図6は、部分画像の切り出しの一例を示す図である。
【図7】図7は、部分画像の極座標変換処理について説明する図である。
【図8】図8は、中心位置の補正手法について説明する図である。
【図9】図9は、仮の中心の補正手法の一例を示す図である。
【図10】図10は、硬貨処理装置が実行する変形硬貨判別処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る変形硬貨判別方法および硬貨処理装置の実施例を詳細に説明する。まず、実施例の詳細な説明に先立って、本発明に係る変形硬貨判別手法の概要について図1を用いて説明する。
【0025】
本発明に係る変形硬貨判別手法では、硬貨が変形している場合に、外周部の画像に含まれる変形部分の長さ(以下、「欠損長」と記載する)または欠損角によって変形硬貨であるかを判別することに主たる特徴がある。なお、欠損角とは、変形部分の両端と硬貨の中心とを結んでできる円弧の内角のことである。
【0026】
本発明に係る変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置は、欠損長と硬貨の外周長との比率または欠損角を算出し、算出された比率によって変形硬貨であるかを判別する。ここでは、欠損長を用いた場合について説明するが、欠損角を用いた場合についても同様に適用することができる。以下では、図1を用いて、本発明に係る変形硬貨判別手法について概要について説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る変形硬貨判別手法の概要を示す図である。図1の(A)に示したように、まず、本発明に係る変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置は、硬貨の画像を撮像し(図1の(1)参照)、撮像された画像の特徴に基づいて金種等を識別する(図1の(2)参照)。
【0028】
具体的には、硬貨処理装置は、画像に映る硬貨の大きさや模様等によって金種や表裏を識別し、また、予め用意されている金種ごとの標準画像と比較する等の識別処理によって正貨または偽貨であるかの識別も行う。
【0029】
ここで、硬貨が歪みや欠損により変形していた場合には、硬貨は、外周部の一部が欠損した画像が撮像される。たとえば、図1の(A)に示したように、右下の欠損部が変形部分の画像となる。
【0030】
つづいて、硬貨処理装置は、図1の(B)の破線に示したように、2つの同心円に囲まれた部分の硬貨の画像を切り出す(図1の(3)参照)。なお、切り出される部分画像には少なくとも硬貨の外周部が含まれるように、2つの同心円の径を調整するものとする。
【0031】
そして、硬貨処理装置は、図1の(C)に示したように、切り出しされた部分画像を極座標変換し、極座標で表される形式から2次元の直交座標平面上へ変換された画像から欠損長を検出する。なお、図1の(C)には、極座標変換された画像とともに、硬貨の中心方向を示す矢印を示している。
【0032】
その後、硬貨処理装置は、検出された欠損長と予め用意してある金種ごとの外周長とに基づいて変形硬貨であるか否かを判別する(図1の(4)参照)。具体的には、硬貨処理装置では、欠損長を外周長で除算した値(以下、「欠損長比率」と記載する)が、所定の閾値を超えた場合に、変形硬貨であると判別する。
【0033】
このように、本発明に係る変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置では、撮像された硬貨の変形部分を示す欠損長と金種ごとの外周長とによって変形硬貨であるか否かを精度よく判別することができる。
【0034】
以下では、図1を用いて説明した変形硬貨判別手法を適用した硬貨処理装置についての実施例を詳細に説明する。まず、本実施例に係る硬貨処理装置10の構成について図2を用いて説明する。
【0035】
図2は、本実施例に係る硬貨処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図2では、硬貨処理装置10の特徴点を説明するために必要な構成要素のみを抜粋して示している。
【0036】
硬貨処理装置10は、撮像部11と、リジェクト部12と、収納部13と、記憶部14と、制御部15とを備えている。また、記憶部14は、画像情報14aと、標準画像情報14bと、閾値情報14cとを記憶し、制御部15は、画像取得部15aと、外周部切り出し部15bと、金種識別部15cと、欠損長検出部15dと、変形硬貨判別部15eとをさらに備えている。
【0037】
撮像部11は、硬貨に対して緑光等の可視光や赤外光のうち1光源または複数の光源を照射する光照射装置と光照射装置から照射した光が硬貨に反射した反射光を受光するCCD(Charge Coupled Device)カメラ/CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラとを備えている。そして、撮像部11は、硬貨の画像を撮像し、撮像された画像データを画像取得部15aへ渡す。
【0038】
リジェクト部12は、変形硬貨判別部15eによって変形硬貨であると判別された硬貨や金種識別部15cや図示しない識別部によって正常な硬貨ではないと識別された硬貨の返却口である。
【0039】
収納部13は、制御部15によって正常な硬貨であると判別された硬貨を収納する収納部である。また、収納部13は、複数備えることとしてもよく、金種別の収納部13へ硬貨が金種ごとに収納されてもよい。
【0040】
記憶部14は、RAM(Random Access Memory)や不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、画像情報14a、標準画像情報14b、および、閾値情報14cを記憶する。画像情報14aは、撮像部11で撮像された硬貨の画像データである。
【0041】
標準画像情報14bは、金種ごとの硬貨の外周長である。変形硬貨判別部15eでは、欠損長検出部15dで検出された欠損長と金種識別部15cで識別された金種に対応する標準画像情報14bとに基づいて変形硬貨であるか否かを判別する。
【0042】
閾値情報14cは、変形硬貨の判別の際に使用する閾値データである。変形硬貨判別部15eでは、算出した欠損長比率が閾値情報14cの閾値を超えた場合に変形硬貨であると判別する。ここで、閾値情報14cの詳細について図3を用いて説明しておく。
【0043】
図3は、閾値情報14cの一例を示す図である。図3に示すように、閾値情報14cは、「金種」項目と、「閾値」項目とを含んでいる。
【0044】
「金種」ごとに、「閾値」を設定しておき、算出された欠損長比率と閾値とを比較する際、硬貨の金種によってかかる金種に対応する閾値を用いる。たとえば、1円硬貨は材質が柔らかく変形しやすいので、ある程度の欠損長であっても想定内とし、変形硬貨と判別しないとするならば、閾値を他の硬貨より高めに設定することとしてもよい。
【0045】
また、サイズの大きい硬貨は、サイズの小さい硬貨と比べて、欠損長比率が同じであっても欠損長が長い。したがって、いずれの硬貨についても同一の欠損長を変形硬貨とする場合には、閾値はサイズの大きい硬貨ほど高く(長く)設定することとなる。
【0046】
これにより、硬貨処理装置10では、硬貨の金種ごとの特徴による変形率の違いを包含することが可能となり、より高精度に変形部分を検出することができる。なお、閾値情報14cの閾値は、金種ごとではなく、1種類のみでもよい。
【0047】
図2の説明に戻り、硬貨処理装置10についての説明をつづける。制御部15は、硬貨処理装置10の全体制御を行う制御部である。画像取得部15aは、撮像部11で撮像された硬貨の画像データを取得し、記憶部14の画像情報14aへ渡す処理を行う処理部である。
【0048】
外周部切り出し部15bは、外周部を含む部分画像を切り出す処理を行う処理部である。また、外周部切り出し部15bは、切り出した部分画像を、画像情報14aから設定された中心に基づいて極座標変換する処理を併せて行う。
【0049】
具体的には、外周部切り出し部15bは、画像情報14aに映る硬貨の仮の中心を設定し、画像情報14aの外周部を含む部分画像を切り出し、外周部を検出する。その後、外周部切り出し部15bは、検出された外周部の軌道に基づいて硬貨の中心位置を補正し、補正した中心位置によって極座標変換を行う。ここで、極座標変換とは横軸に偏角θを、縦軸に半径をとって、各要素には画素の輝度を表わすように変換する。なお、外周部の切り出し手法の詳細については後述することとする。
【0050】
金種識別部15cは、外周部切り出し部15bによって補正された中心位置および画像情報14aに映る硬貨の大きさや模様等によって金種、硬貨の表裏を識別する処理を行う処理部である。また、金種識別部15cは、記憶部14に予め記憶される金種ごとの標準画像との比較によって正貨であるか否かを識別する処理を併せて行う。なお、金種識別部15cは、金種を識別する際、硬貨の重さや厚み等によって識別することとしてもよい。
【0051】
欠損長検出部15dは、外周部切り出し部15bによって極座標変換された画像から外周部を検出し、検出された外周部の欠損長を検出する処理を行う処理部である。
【0052】
具体的には、欠損長検出部15dは、外周部切り出し部15bによって極座標変換された画素を所定の方向に検索し、画素の輝度が2画素連続で所定の閾値を超えた場合に外周部と判定し、検出する。そして、欠損長検出部15dは、検出された外周部から変形部分を示す欠損部分の長さ、すなわち欠損長を検出する。
【0053】
変形硬貨判別部15eは、金種識別部15cで識別された金種に対応する標準画像情報14bの外周長と欠損長検出部15dで検出された欠損長に基づいて欠損長比率を算出する処理を行う処理部である。具体的には、欠損長比率は、欠損長を外周長で除算した値で、式(1)のようになる。
【0054】
欠損長比率=欠損長/外周長 …(1)
【0055】
そして、変形硬貨判別部15eは、算出された欠損長比率が閾値情報14cの閾値を超えた場合に変形硬貨であると判別する。また、変形硬貨であると判別された硬貨は、リジェクト部12へと排出される。一方、変形硬貨ではないと判別された硬貨は、収納部13へ収納される。なお、変形硬貨であると判別された硬貨は、リジェクト部12へ排出されることとしたが、リサイクル使用しないこととして、収納部13へ収納されてもよい。また、リジェクト用の収納部を硬貨処理装置10内に別に設け、変形硬貨であると判別された硬貨はリジェクト用の収納部へ分別されて収納されてもよい。
【0056】
つぎに、硬貨処理装置10の概要構成を説明するために、図4を用いて硬貨処理装置10の内部構造について説明する。図4は、硬貨処理装置の側面図である。
【0057】
図4に示すように、硬貨処理装置10は、略直方体形状の筐体20と、筐体20の外部から内部に硬貨を投入するための投入口21と、投入口21に投入された硬貨を後述する硬貨繰出ユニット24へ供給するための供給部22とを備えている。さらに、硬貨処理装置10に備える筐体20内部には、制御部15が設けられ、各構成要素を制御する。
【0058】
また、硬貨処理装置10は、供給部22から供給された硬貨を貯留するとともに硬貨を繰出す硬貨繰出ユニット24をさらに備える。硬貨繰出ユニット24には、繰出された硬貨を筐体20の内部で搬送する搬送部25が接続されている。
【0059】
搬送部25には、略水平方向に延びる搬送路26が設けられ、硬貨繰出ユニット24から繰出された硬貨が搬送路26に沿って1枚ずつ搬送される。搬送路26の上方には図示しないベルト状の硬貨押さえ機構が設けられ、搬送路26上で搬送される硬貨の浮きを防止する。
【0060】
また、搬送部25の上流側には、撮像部11が設けられ、撮像部11を通過する硬貨の画像が撮像される。一方、搬送部25の下流側には、選別部27が設けられ、搬送部25から搬送路26経由で搬送された硬貨が、金種識別部15cによって識別された識別結果等に基づいて選別され、各開口部28a,28b,28c,28dへ送られる。
【0061】
具体的には、変形硬貨判別部15eによって変形硬貨であると判別された硬貨、金種識別部15cによって識別することができない硬貨、または、正貨でないと識別された硬貨は、リジェクト硬貨としてリジェクト部12へ排出される。
【0062】
その際、リジェクト硬貨は、選別部27の下方に設けられるリジェクト硬貨開口部28aおよびリジェクト硬貨シュート31を介して筐体20の外部からアクセス可能なリジェクト部12へ排出されることとなる。
【0063】
また、金種識別部15cによって識別された金種ごとに、硬貨は、選別部27の下方に設けられる開口部28b、28c、28dおよびシュート29を介して金種別の収納部13へ収納される。
【0064】
なお、金種ごとに選別されて収納部13へ収納されることとしたが、複数金種が混合状態で収納されてもよい。収納部13に収納された硬貨は、筐体20の扉23を開けることにより、現金の回収業務を行う銀行の行員等によって回収されることとなる。
【0065】
また、硬貨繰出ユニット24の下方には、異物排出シュート30が設けられており、硬貨繰出ユニット24から異物排出シュート30へ送られた異物等は、リジェクト硬貨シュート31を介してリジェクト部12へ排出される。
【0066】
ここで、開口部28b,28c,28dと収納部13との間に、図示しない一時貯留部を設けてもよく、一時貯留部に貯留された硬貨を、所定時に収納部13へ収納することとしてもよい。
【0067】
このように、硬貨処理装置10では、投入口21に投入された硬貨は、硬貨繰出ユニット24へ送られ、硬貨繰出ユニット24から繰出された硬貨は、搬送路26上に備える撮像部11を通過後、選別部27によって選別される。
【0068】
具体的には、制御部15によって変形硬貨であると判別された場合、リジェクト硬貨としてリジェクト部12へ返却され、正常な硬貨は収納部13へ収納される。
【0069】
つぎに、外周部切り出し部15bが実行する外周部切り出し手法の詳細について図5〜図10を用いて説明する。まず、仮の中心の設定手法について、つづいて、外周部の切り出し手法、中心位置の補正手法について説明する。
【0070】
まず、硬貨処理装置10が実行する仮の中心の設定手法の詳細について、図5を用いて説明する。図5は、仮の中心の設定手法について説明する図である。図5に示すように、搬送路26上では、矢印で示した搬送方向に硬貨が搬送されるとする。
【0071】
まず、図5の右下に示すように、外周部切り出し部15bは、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の輝度を搬送方向と平行な方向に加算した水平ヒストグラムを作成する。そして、外周部切り出し部15bは、図5に示した水平ヒストグラムの左右両端から検索し、水平ヒストグラムの値が所定の閾値(ここでは閾値A)を越えた場合に、かかる画素を左右それぞれの外周部とする。
【0072】
このように、右方向から左にむかって検索した際に検出された外周部を右外周部、左方向から右にむかって検索した際に検出された外周部を左外周部とし、図5では、それぞれ「三角」印で示した。
【0073】
つぎに、外周部切り出し部15bは、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の輝度を搬送方向と垂直な方向に加算した垂直ヒストグラムを作成する。ここで、搬送路上には連続して硬貨が搬送されるので、硬貨の搬送方向の先端部または末端部に別の硬貨が重なって搬送される場合がある。
【0074】
このような重複部分を含む画素の輝度では正確な外周部を検出することはできない。したがって、硬貨の重複部分の値を除くため、搬送方向の先端部から末端部の最大幅よりも少ない幅で外周部を検出する必要がある。
【0075】
また、処理時間を短縮するため、および、ベルトの映り込みを除外することにより正確に中心を得るために、外周部を検出する部分の加算する画素数を少なくする。上記したことを考慮して、外周部切り出し部15bは、図5の直方体で示した窓領域内の各画素について垂直ヒストグラムを作成する。
【0076】
外周部切り出し部15bは、図5に示した垂直ヒストグラムの上下両端から検索し、垂直ヒストグラムの値が所定の閾値(ここでは閾値B)を越えた場合に、かかる画素を上下それぞれの外周部とする。なお、図5では、それぞれ「丸」印で示した。
【0077】
そして、外周部切り出し部15bは、右外周部と左外周部との中点を仮の中心の搬送方向に垂直な軸の座標とし、上外周部と下外周部との中点を仮の中心の搬送方向と平行な軸の座標と設定する。
【0078】
つづいて、硬貨処理装置10が実行する外周部の切り出し手法の詳細について、図6および図7を用いて説明する。図6は、部分画像の切り出しの一例を示す図であり、図7は、部分画像の極座標変換処理について説明する図である。
【0079】
まず、部分画像の切り出し処理について説明する。外周部切り出し部15bは、撮像部11で撮像された画像情報14aから仮の中心を中心とする2つの同心円に囲まれ、かつ、外周部を含む部分画像を切り出す。
【0080】
たとえば、図6の(A)に示すように、切り出される部分画像には、金種のなかで最大の500円玉の外周部を含み、また、図6の(B)に示すように、切り出される部分画像には、金種のなかで最小の1円玉の外周部が含まれる。このように、金種によって大きさの違う硬貨のいずれの外周部を含む画像を切り出すことができるように同心円の半径を設定しておく。
【0081】
ここでは、図6の(A)の破線に示すように、外周部切り出し部15bは、仮の中心を円の中心として、半径が50画素の円と半径が120画素(50画素+70画素=120画素)の円とに囲まれる部分画像を切り出す。
【0082】
なお、半径が50画素の円と半径が120画素の円とに囲まれる部分画像を切り出すこととしたが、通貨によって硬貨の大きさの最大値と最小値とが異なるので、硬貨処理装置10を使用する国の通貨に合わせて同心円の半径を変化させることとしてもよい。
【0083】
つづいて、部分画像の極座標変換処理について図7を用いて説明する。図7の(A)は切り出す部分画像を、図7の(B)および(C)は、極座標変換を行った画像であり、以下では同図右に示すような座標軸を適宜用いて説明を行うこととする。
【0084】
外周部切り出し部15bは、切り出した部分画像(図7の(A)参照)を仮の中心に基づいて極座標で表される形式から2次元の直交座標平面上へ変換(以下、「極座標変換」と記載する)を行う(図7の(B)参照)。具体的には、所定の半径と偏角θで表わされる極座標から直行座標のX軸は偏角θが対応し、Y軸は半径が対応して変換されるものとする。
【0085】
ここでは、図7の(B)に示すように、Y軸の負方向が円の中心側であり、Y軸の負方向から正方向にむかって同一径上の50画素目から120画素目までの画像データが変換され、X軸方向には同一半径の円周を構成する画素が変換される。また、所定の半径の円周を構成する画素数が512画素であるとすると、偏角は0.703度(360÷512=0.703)間隔で変換されることとなる。なお、撮像部11の精度等によって、かかる画素数は変化するものとする。
【0086】
ここで、X軸方向に512画素およびY軸方向に71画素の配列に変換されたすべての画素値を使用すると、硬貨処理装置10が行う中心位置を補正する処理に時間がかかってしまう。
【0087】
したがって、外周部切り出し部15bでは、補正処理時間を短縮するために、X軸については所定間隔で画素を抽出して処理の対象とすることとした。ここでは、X軸方向について32等分した位置の円周を構成する画素値を抽出する場合について説明するが、所定の数で等分、たとえば、64等分した位置を利用することとしてもよい。
【0088】
この場合、角度が11.25°間隔(360÷32=11.25)で半径方向の画素値を抽出することとなる。X軸の負方向の端を0度として、図7の(B)の黒い部分は、抽出対象とするn番目の角度(11.25*n°)の画素を示す。
【0089】
外周部切り出し部15bは、32等分の画素値を抽出する際、硬貨の画像とともに映ってしまったゴミ等による画素値のぶれ(以下、「ノイズ」と記載する)を補正するために、X軸方向に配列される画素について以下の処理を行う。
【0090】
外周部切り出し部15bは、角度11.25*n°である画素とX軸正方向に隣接する2画素およびX軸負方向に隣接する2画素(図7の(B)の斜線部分参照)の合計5画素分の画素値を加算した値を抽出する画素値とする。
【0091】
このように、外周部切り出し部15bは、極座標変換を行った画素値(512画素×71画素)から、X軸方向に32画素およびY軸方向に71画素の配列で表現される画素値を抽出する(図7の(C)参照)。
【0092】
そして、外周部切り出し部15bは、縦方向、すなわちY軸方向の1列71画素について、Y軸の正方向から負方向にむかって各画素の輝度を検索し、画像データの輝度が2箇所連続で所定の閾値を超えた場合に外周部と判定することとした。
【0093】
外周部切り出し部15bは、上述した判定処理を、X軸幅の32箇所分の画像データについてそれぞれ行うことによって外周部を検出する。なお、外周部切り出し部15bは、画像データの輝度が2箇所連続で所定の閾値を超えた場合に外周部と判定することとしたが、1回または所定回数連続で超えた場合に、外周部と判定することとしてもよい。
【0094】
つぎに、硬貨処理装置10が実行する中心位置の補正手法の詳細について、図8および図9を用いて説明する。図8は、中心位置の補正手法について説明する図であり、図9は、仮の中心の補正手法の一例を示す図である。
【0095】
まず、外周部切り出し部15bは、図8の(A)に示したような変形部分が含まれる画像情報14aに基づいて外周部を検出した場合、かつ、仮の中心が真の中心位置とは異なる場合には、検出された外周部は、図8の(B)に示すような軌道となる。
【0096】
そこで、外周部切り出し部15bは、外周部の軌道は所定の周期関数で表わされることから、外周部の軌道上の値を周期関数へ代入することによって中心位置を補正する。その後、外周部切り出し部15bは、補正された中心位置によって再度外周部を切り出す。
【0097】
具体的には、外周部切り出し部15bでは、以下に示す処理を行う。先に説明したように、外周部切り出し部15bで検出された外周部は、図8の(B)に示すような軌道となる。
【0098】
しかし、変形部分がある硬貨の場合には、外周部切り出し部15bでは、図8の(B)に示した破線で囲まれた部分のように、変形部分の外周について誤った位置を外周部と判定してしまうことがある。なお、図8の(B)に示した丸印は、外周部切り出し部15bで判定した32箇所分の外周部を示す。
【0099】
そこで、外周部切り出し部15bは、基準となる直径(以下、「基準径」と記載する)を求めて、基準径によって表わされる所定の周期関数に基づいて外周部の軌道を平滑化して補間処理をすることとした(図8の(C)参照)。
【0100】
ここで、基準径の算出手法について、以下に説明する。外周部切り出し部15bは、検出した32箇所の外周部について、所定の外周部と角度差が180°となる外周部(以下、「対角」と記載する)とに基づいて直径(以下、「対角径」と記載する)を求める。
【0101】
そして、外周部切り出し部15bは、求められた16本分の対角径を径長でソートし、中央の4本の径長の平均を算出して基準径長とする。ここでは、中央の4本の平均を算出することとしたが、中央の所定本数、たとえば中央の2本の平均を算出して基準径長とすることとしてもよい。
【0102】
このようにして、外周部切り出し部15bによって算出された基準径長と16本の対角径長との差分をそれぞれ算出して、差分によって外周部の軌道を平滑化する。具体的には、外周部切り出し部15bは、差分が所定の値以上であったならば、対角径の半径長をチェックし、長さに異状があれば前後のデータから推定して求めることによって、外周部の軌道が平滑になるよう補正する。
【0103】
さらに、外周部切り出し部15bは、対角径の両端部分の外周部について算出される2つの半径と基準径長/2と比較することによって、2つの半径をそれぞれ補正する。また、所定の周期関数を積分した値を外周部の値と比較してゴミ等の異物部分を補正することとしてもよい。このように、外周部に含まれる変形部分を補正することによって、後述する中心位置の補正を高精度に行うことができる。
【0104】
そして、外周部切り出し部15bは、補正された外周部について以下の処理を行い、仮の中心を補正する。外周部切り出し部15bは、16本分の対角径について対角径の両端部分の外周部に基づいて算出される2つの半径と基準径長/2との差分をそれぞれ算出し、差分の絶対値を加算する(以下、この値を「振幅和」と記載する)。
【0105】
ここで、外周部切り出し部15bは、算出した振幅和の最大値が所定値より小さい場合は、中心位置の補正を必要としないと判断する。また、外周部切り出し部15bは、算出した振幅和の最大値が所定値より大きい場合は、仮の中心を補正する。
【0106】
ここで、仮の中心の補正手法の詳細について、図9を用いて説明する。図9は、仮の中心の補正手法の一例を示す図である。
【0107】
図9に示すように、外周部切り出し部15bは、設定された仮の中心を点A(x,y)として、算出された振幅和の最大となる2箇所の外周部が点Bおよび点Cであったとする。ここで、仮の中心Aから外周部の点Bおよび点Cへの長さが長い方(線分AB)をrmax、短い方(線分AC)をrminとし、線分ABとX軸とのなす偏角をθmax、線分ACとX軸とのなす偏角をθminとする。
【0108】
この場合、補正後の中心を(X,Y)とした場合に、補正後の中心座標(X,Y)は式(2)および式(3)のようになる。
X=x+(rmax−rmin)/2*cos(θmax)…(2)
Y=y+(rmax−rmin)/2*sin(θmin)…(3)
【0109】
このように、外周部切り出し部15bでは、仮の中心を補正する。図8の説明に戻り、中心位置の補正手法についての説明をつづける。
【0110】
外周部切り出し部15bでは、中心位置を補正した後、再度外周部を含む部分画像を切り出し、切り出された画像データから外周部を検出すると、図8の(D)に示すように、直線で描かれる外周部が検出され、直線で描かれる外周部に基づいて高精度に欠損長を求めることができる。
【0111】
なお、外周部切り出し部15bで設定された仮の中心が真の中心位置とは異なる場合について説明したが、仮の中心が真の中心位置と一致する場合は、検出される外周部は図8の(D)に示すような直線で描かれるので、中心位置の補正は不要となる。
【0112】
つぎに、上記した硬貨処理装置10が実行する変形硬貨判別処理手順について図10を用いて説明する。図10は、硬貨処理装置が実行する変形硬貨判別処理手順を示すフローチャートである。
【0113】
図10に示すように、画像取得部15aは、撮像部11で撮像された硬貨の画像を取得し(ステップS101)、記憶部14の画像情報14aへ渡す。
【0114】
その後、外周部切り出し部15bは、画像情報14aに基づいて硬貨の仮の中心を設定し(ステップS102)、仮の中心によって硬貨の外周部の切り出しを行う(ステップS103)。
【0115】
そして、外周部切り出し部15bは、ステップS103で切り出した外周部によって中心位置を補正し(ステップS104)、補正した中心によって再度外周部の切り出しを行う(ステップS105)。
【0116】
つづいて、金種識別部15cは、ステップS104で補正された中心位置および画像情報14aに映る硬貨の大きさや模様等によって金種、硬貨の表裏を識別する(ステップS106)。
【0117】
また、欠損長検出部15dは、外周部切り出し部15bによって切り出された外周部の連続性がない部分の長さ、すなわち欠損長を検出する(ステップS107)。
【0118】
そして、変形硬貨判別部15eは、ステップS107で検出した欠損長とステップS106で識別した金種に対応する標準画像情報14bの外周長とに基づいて欠損長比率を算出する(ステップS108)。
【0119】
変形硬貨判別部15eは、ステップS108で算出した欠損長比率と金種に対応する閾値情報14cとに基づいて変形硬貨であるか否かの判別を行う(ステップS109)。変形硬貨判別部15eは、変形硬貨であると判別した場合(ステップS109,Yes)、かかる硬貨をリジェクト部12へ排出し(ステップS110)、硬貨処理装置10が実行する変形硬貨判別処理を終了する。
【0120】
一方、変形硬貨判別部15eは、変形硬貨ではなく正常な硬貨であると判別した場合(ステップS109,No)、かかる硬貨を収納部13へ収納し(ステップS111)、硬貨処理装置10が実行する変形硬貨判別処理を終了する。
【0121】
上述してきたように、本実施例では、変形硬貨を検出する変形硬貨判別方法および硬貨処理装置であって、硬貨の画像を取得し、取得した画像に基づいて外周部を切り出し、さらに切り出された外周部から欠損長を検出し、検出された欠損長と硬貨の外周長と比率に基づいて変形硬貨であるか否かを判別することとした。
【0122】
したがって、本発明に係る変形硬貨判別方法では、別途センサを設けることなく金種判定用の画像処理によって変形硬貨であるか否かを判別することができる。これにより、本発明に係る変形硬貨判別方法では、硬貨処理装置にかかる製造コストを削減するとともに、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出することができる。
【0123】
なお、上述した実施例では、欠損長を用いて変形硬貨を判別する場合について説明したが、欠損角を用いた場合についても同様に適用することができる。たとえば、変形硬貨判別部15eは、外周部切り出し部15bによって32分割、若しくは、64分割に極座標変換された画像に基づいて変形部分の始端および終端の偏角の差より欠損角を算出する。そして、変形硬貨判別部15eは、算出された欠損角が所定角度を超えた場合に変形硬貨であると判別する。
【0124】
また、偏角の差によって算出した欠損角によって変形硬貨であるか否かを判別することとしたが、外周部切り出し部15bによって分割して極座標変換された画像の変形部分の分割数によって判別することとしてもよい。具体的には、変形硬貨判別部15eは、64分割に極座標変換された画像のうち、変形部分が4分割分以上あった場合に、変形硬貨であると判別する。
【0125】
また、上述した実施例では、硬貨処理装置に適用した変形硬貨判別方法の例を説明したが、円形状に加工される部品、たとえば、ねじ山やワッシャー等の円形部品の形成精度を検査する装置、または、偏芯度を検査する装置等にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明に係る変形硬貨判別方法および硬貨処理装置は、硬貨識別を行う硬貨識別部分や硬貨処理装置の筐体を小型化しつつ精度良く変形硬貨を検出する場合に有用である。
【符号の説明】
【0127】
10 硬貨処理装置
11 撮像部
12 リジェクト部
13 収納部
14 記憶部
14a 画像情報
14b 標準画像情報
14c 閾値情報
15 制御部
15a 画像取得部
15b 外周部切り出し部
15c 金種識別部
15d 欠損長検出部
15e 変形硬貨判別部
20 筐体
21 投入口
22 供給部
23 扉
24 硬貨繰出ユニット
25 搬送部
26 搬送路
27 選別部
28a 開口部
28b 開口部
28c 開口部
28d 開口部
29 シュート
30 異物排出シュート
31 リジェクト硬貨シュート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形した硬貨を検出する硬貨処理装置に適用される変形硬貨判別方法であって、
前記硬貨の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の中心を設定する中心設定工程と、
前記中心設定工程によって設定された前記硬貨の中心について極座標変換した画像を取得する極座標画像取得工程と、
前記極座標画像取得工程によって取得された画像に基づいて前記硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出する欠損量検出工程と、
前記欠損量検出工程によって検出された前記欠損量に基づいて前記硬貨が変形しているか否かを判別する判別工程と
を含んだことを特徴とする変形硬貨判別方法。
【請求項2】
前記中心設定工程は、
前記画像取得工程によって取得された前記画像の特徴に基づいて設定された仮の中心について極座標変換した画像から検出される前記外周部の軌道に基づき、前記仮の中心を真の中心へ補正することを特徴とする請求項1に記載の変形硬貨判別方法。
【請求項3】
前記欠損量検出工程は、
前記硬貨における外周部の軌道の欠損長を検出し、
前記判別工程は、
前記欠損長を前記外周部で除した値が所定の閾値以上である場合、前記硬貨が変形していると判別することを特徴とする請求項1または2に記載の変形硬貨判別方法。
【請求項4】
前記欠損量検出工程は、
前記硬貨における外周部の軌道の欠損部分を円弧とする内角を欠損角として検出し、
前記判別工程は、
前記欠損角が所定の閾値以上である場合、前記硬貨が変形していると判別することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の変形硬貨判別方法。
【請求項5】
前記極座標画像取得工程によって取得された画像の特徴に基づいて前記硬貨の金種を識別する識別工程
をさらに備え、
前記判別工程は、
前記閾値として前記識別工程によって識別された前記硬貨の金種ごとに予め記憶される閾値を用いることを特徴とする請求項3または4に記載の変形硬貨判別方法。
【請求項6】
変形した硬貨を検出する硬貨処理装置であって、
搬送路上に前記硬貨を順次搬送させ、ベルト状の押さえ機構で前記硬貨を押さえつけつつ搬送する硬貨搬送手段と、
前記硬貨の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の中心を設定する中心設定手段と、
前記中心設定手段によって設定された前記硬貨の中心について極座標変換した画像を取得する極座標画像取得手段と、
前記極座標画像取得手段によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の種類を識別する識別手段と、
前記極座標画像取得手段によって取得された前記画像に基づいて前記硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出する欠損量検出手段と、
前記識別手段によって識別された前記硬貨の金種と前記欠損量検出手段によって検出された前記欠損量とに基づいて前記硬貨が変形しているか否かを判別する判別手段と、
前記識別手段によって識別された識別結果および/または前記判別手段によって判別された判別結果に基づいて前記硬貨を収納部または返却口へ分別する分別手段と
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−253463(P2011−253463A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128245(P2010−128245)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】