説明

変性ゴム組成物およびその調製方法

エラストマー成分並びにステロイドおよび/またはペプチドを含有する変性剤を含む変性ゴム組成物と、その製造方法に関する。このような変性ゴム組成物は、その特性が改良され、様々な物品、例えばタイヤの製造に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1以上の実施形態は、エラストマー成分、並びに、ステロイド、ペプチドまたはこれらの混合物を含有する変性剤を含む変性ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫ゴムの出現により、タイヤ組成物およびその製造は非常に進歩した。タイヤは、しばしば凸凹道に使用され、この場合、反復的に、高い圧力の影響が局部的にタイヤに生じるため、磨耗が生じ、タイヤに亀裂の形成、亀裂成長性をもたらす場合がある。従って、タイヤに含まれる、例えばカーボンブラック、シリカ、シリカ/シランおよび/または短繊維のような補強材は改良され、進歩してきた。シリカを不飽和エラストマーに結合するためにシランが用いられる一方で、タイヤにシリカを添加することで、亀裂の伸展方向を曲げ、これにより亀裂の進展が抑制されることが見出された。タイヤの添加剤として用いられる繊維としては、ナイロンおよびアラミド繊維が挙げられる。しかしながら、タイヤの添加剤のこのような進歩にも関わらず、ゴムの形成における引張強さの改良と耐摩耗性の改良の間には、依然妥協の必要性がある。これは、通常、軟性ゴムを使用することによる摩擦の上昇が原因であるため、一般的にはより硬質のゴムを用いて耐磨耗性を高めることにより改良される。従って、これら双方の課題を解決するための改良された添加剤が望まれる。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本発明の1つの実施形態は、エラストマー成分、並びに、ステロイド、ペプチドおよびこれらの混合物からなる群から選択される変性剤を含有するゴム組成物を含むタイヤに関するものであり、タイヤはタイヤの総量に対して0.1重量%以上の前記ゴム組成物を含む。
【0004】
本発明の他の実施形態は、タイヤの製造方法に関するものである。この実施形態に係る方法は:(a)エラストマー成分、並びに、ステロイド、ペプチドおよびこれらの混合物からなる群から選択される変性剤を含むゴム組成物を調製する工程、(b)前記ゴム組成物の少なくとも一部をタイヤ用モールドに導入する工程、および(c)前記ゴム組成物をタイヤ用モールド中で1以上の硬化条件に供し、当該タイヤを形成する工程を含む。
【0005】
また、本発明の他の実施形態は、ゴム組成物の製造方法に関する。この実施形態の方法は、(a)エラストマー成分およびシリカ充填剤を、初期の混合段階に供し、初期混合物を生成する工程;(b)前記初期の混合段階の後、ステロイドおよび/またはペプチドを初期混合物と組み合わせ、混合して、中間混合物を生成する工程;(c)1以上の硬化添加剤を前記中間混合物と組み合わせ、混合して、当該ゴム組成物を生成する工程を含む。
【0006】
本発明の1以上の実施形態によると、エラストマー成分、並びに、ステロイド、ペプチドおよびその混合物からなる群から選択される変性剤を含むゴム組成物を提供することができる。このようなゴム組成物は、多段階混合工程を用いて調製することができ、タイヤ等の様々な物品の製造に用いることができる。
【0007】
1以上の実施形態において、ゴム組成物はステロイドを添加して変性することができる。あらゆる既知のステロイドまたは将来的に発見されるであろうステロイドを用いることができる。例えば、式(I)に示されるような、置換または非置換、飽和性または非飽和性のステラン核を有するあらゆるステロイドを用いることができる。
【0008】
【化1】

式(I):
【0009】
このようなステロイドとしては、コレスタン(例えばコレステロール)、コラン(例えばコール酸およびコール酸塩)、プレグナン(例えばプロゲステロン)、アンドロスタン(例えばテストステロン)、エストラン(例えばエストラジオール)、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される1以上ものが挙げられる。
【0010】
1以上の実施形態において、ステロイドは、コレスタン、コレステン、これらの誘導体または2以上のこれらの混合物からなる群から選択される。かかる実施形態において、ステロイドとしては、コレステロール(別名3β−ヒドロキシ−5−コレステンまたは(3S,8S,9S,10R,13R,14R,17R)−10,13−ジメチル−17−[(2R)−6−メチルヘプタン−2−イル]−2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[α]フェナントレン−3−オル)、コレステロールの誘導体、または2以上のこれらの混合物を含み得る。様々な実施形態に使用するのに適切なコレステロール誘導体の例としては、コレステロールのエステル誘導体、ハロゲン化誘導体、および2以上のこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1以上の実施形態において、ゴム組成物を調製する際、変性剤として用いられるステロイドとしては、コレステロールが挙げられる。
【0011】
様々な実施形態においてゴム組成物を調製する際、変性剤として使用するのに適切なコレステロールのエステル誘導体は、式:
【0012】
【化2】

式(II):
【0013】
(式中、RはH,ハロゲン原子またはあらゆる直鎖、分岐鎖若しくは環状、置換若しくは非置換、飽和性若しくは不飽和性の炭素原子1〜30を有するアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基であり、ヘテロ原子を含むことができる)で表される。本明細書に使用するように、「アルキル」の用語は、炭化水素から水素原子を取り除いて形成される一価の基を示し、ヘテロ原子を含んでもよい。本明細書に使用するように「アリール」の用語は、環炭素原子から炭化水素を取り除いて形成されるアレーン由来の基を示し、ヘテロ原子を含んでもよい。本明細書に使用するように、「アラルキル」の用語は、1以上の水素原子をアリール基に置換することによって形成されるアルキルラジカル由来の一価の基を示す。1以上の実施形態において、RはC〜C30アルキル基またはアリール基である。さらに、Rは不飽和性、非置換、直鎖のC〜C30アルキル基である。また、他の実施形態において、Rは直鎖、分岐鎖若しくは環状、置換若しくは非置換、飽和性若しくは不飽和のC〜C12若しくはC〜Cアルキル基若しくはアリール基である。かかるコレステロールエステルの具体例としては、ギ酸コレステリル、酢酸コレステリル、プロピオン酸コレステリル、酪酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、ベヘン酸コレステリル、安息香酸コレステリル、カプリル酸コレステリル、ドデカン酸コレステリル、エライジン酸コレステリル、エルカ酸コレステリル、ヘプタン酸コレステリル、ヘキサン酸コレステリル、ラウリン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、リノールエライジン酸コレステリル、n−デカン酸コレステリル、n−バレール酸コレステリル、ネルボン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、パルミトエライジン酸コレステリル、ペラルゴン酸コレステリル、フェニル酢酸コレステリル、ステアリン酸コレステリルおよびクロロギ酸コレステリルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1以上の実施形態において、ゴム組成物を調製する際に用いられる変性剤は、酢酸コレステリル、クロロギ酸コレステリル、カプリル酸コレステリルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるコレステロールのエステル誘導体を含むことができる。
【0014】
様々な実施形態において、ゴム組成物を調製する際、変性剤として用いられる適切なコレステロールのハロゲン化誘導体は、式:
【0015】
【化3】

式(III):
【0016】
(式中、Xはハロゲン原子である)で表される。ハロゲン化コレステロールの誘導体の具体例としては、臭化コレステリル、塩化コレステリル、ヨウ化コレステリルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
ステロイドがゴム組成物の変性剤として用いられる場合、ステロイドは所望の濃度で存在することが望ましい。1以上の実施形態において、ステロイドはゴム組成物の前記エラストマー成分の重量に対して5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、または100重量%以上存在する。他の実施形態において、ステロイドは、ゴム組成物のエラストマー成分の重量に対して約5〜約重量%、約10〜約180重量%、約20〜約160重量%、約30〜約140重量%、約40〜約120重量%、約50〜約100重量%、または60〜80重量%存在する。
【0018】
下記に詳細に記載するように、ゴム組成物は、1以上の変性剤および付加的な任意の添加剤と共に、様々なエラストマー成分を含む。ゴム組成物の様々な含有物または成分の相互作用または反応の度合いの詳細は、確実には分かっていない。したがって、本明細書に記載されたゴム組成物は、含有物の単なる混合物、物理的引力若しくは化学的親和性によって生じる様々な含有物の複合体、含有物の化学反応産物またはこれらの組み合わせを包含することを意図する。なお、1以上の実施形態において、ステロイドの添加により、ステロイド、エラストマー成分および他の任意の成分の純度の高いゴム組成物の混合物が生成される。他の実施形態において、ステロイドの添加によって、必ずしもすべてのステロイドが反応する必要はないが、ステロイド、エラストマー成分および/または1以上の他の任意の成分の反応産物を含むゴム組成物が生成される。また、他の実施形態において、ステロイドの少なくとも一部を、実際に、例えばグラフト反応によって、エラストマー重合体鎖の一部とすることが可能である。
【0019】
1以上の実施形態において、ゴム組成物はペプチドの添加によって変性される。本明細書に使用されるように、「ペプチド」の用語は、ペプチド結合によって結合されるα−アミノ酸から形成され、平均鎖長50以下のモノマー残基を有するポリマーを示す。1以上の実施形態において、使用に適切なペプチドは、平均鎖長5〜50または10〜40モノマー残基である。あらゆる既知のペプチドまたは将来的に発見されるであろうペプチドを本明細書に記載の様々な実施形態に用いることができる。
【0020】
1以上の実施形態において、用いられるペプチドとしては、乳ペプチド、リボソームペプチド、非リボソームペプチド、ペプトン、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される1以上のものが挙げられる。また、本発明に使用できるペプチドとしては、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される1以上のアミノ酸を包含するあらゆるペプチドが挙げられる。
【0021】
ペプチドをゴム組成物の変性のために用いる場合、ペプチドは所望の濃度で存在させ得る。1以上の実施形態において、ペプチドは、ゴム組成物の前記エラストマー成分の重量に対して5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上または100重量%以上で存在させることができる。他の実施形態において、ペプチドは、ゴム組成物のエラストマー成分の重量に対して約0.1〜約200重量%、約1〜約180重量%、約10〜約160重量%、約20〜約140重量%、約30〜約120重量%、約30〜約100重量%、30〜80重量%存在する。
【0022】
上記のように、ゴム組成物の様々な含有物または成分の相互作用、または反応の度合いの詳細は、確実には明らかにはされていない。したがって、本明細書に記載されたゴム組成物は、含有物の単なる混合物、物理的引力若しくは化学的親和性によって生じる様々な含有物の複合体、含有物の化学反応産物またはこれらの組み合わせを包含することを意図する。したがって、1以上の実施形態において、ペプチドの添加によって、ペプチド、エラストマー成分および他の任意の成分の純度の高い混合物のゴム組成物が生成される。他の実施形態において、ペプチドの添加によって、全てのペプチドを必ずしも反応させる必要はないが、ペプチド、エラストマー成分および/または1以上の他の任意の成分の反応産物を含むゴム組成物が生成される。また、他の実施形態において、ペプチドの少なくとも一部を、実際に、例えばグラフト反応によって、エラストマー重合体鎖の一部とすることが可能である。
【0023】
上記のように、様々な実施形態において、ゴム組成物はエラストマー成分を含む。あらゆる既知のエラストマーまたは将来的に発見されるであろうエラストマーを、本明細書に記載の様々な実施形態に用いることができる。様々な実施形態において使用するのに適切なエラストマーの例としては、天然ゴム(即ち天然ポリイソプレン)、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレンアクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン三元重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴムおよびエチレンプロピレンジエンゴムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、エラストマーとしては、熱可塑性エラストマー、例えばスチレンブロック共重合体、ポリオレフィン混合物、エラストマー系アロイ、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステルおよび熱可塑性ポリアミドが挙げられる。このような熱可塑性エラストマーの具体例としては、(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)ブロック共重合体(“SEPS”)、(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)ブロック共重合体(“SEBS”)、EEBS、EEPE、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1以上の実施形態において、エラストマー成分は、スチレン−ブタジエンゴムを含むことができる。
【0024】
エラストマー成分は、所望の濃度でゴム組成物に配合することができる。1以上の実施形態において、エラストマーは、ゴム組成物の総量に対して、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上または40重量%以上存在させ得る。他の実施形態において、エラストマーはゴム組成物の総量に対して約10〜約80重量%、約20〜約70重量%、約30〜約60重量%、または40〜50重量%存在させ得る。
【0025】
上記のように、本明細書の様々な実施形態に記載のゴム組成物は、1以上の任意の成分を含む。このような成分としては、シリカ充填剤、カーボンブラック、増量剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、抗酸化物質、シランカップリング剤、硫黄、遅延剤および/または促進剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
カーボンブラック成分が本明細書に記載のゴム組成物に用いられる場合、それは約1〜約100pphe(pphe:エラストマー成分100部に対する割合)で配合され得る。カーボンブラックは、一般に入手可能な市販のカーボンブラックを含む。1以上の実施形態において、表面積が20m/g以上、または35m/g〜200m/gのカーボンブラックは、本発明の様々な実施形態に使用される。実用的なカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラックおよびランプブラックがある。2以上の前記ブラックの混合物は、本発明の様々な実施形態に用いられるカーボンブラックを調製する際、使用される。本発明の様々な実施形態において、有用なカーボンブラックの適した例としては、ASTM D1765−82aのN−110,N−220,N−339,N−330,N−352,N−550およびN−660が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
上記のように、シリカ充填剤は、本明細書に記載のゴム組成物に用いられる。本発明の様々な実施形態に使用することができるシリカ充填剤の例としては、湿潤シリカ(水和性ケイ酸)、乾燥シリカ(無水性ケイ酸)、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。これらのシリカ充填剤は市販されている。他の適切な充填剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。1実施形態において、沈殿非晶性湿式の水和性シリカが用いられる。シリカは、約1〜約100pphe、約5〜約90ppheまたは30〜80ppheで配合される。本発明の様々な実施形態に使用することができる市販のシリカ充填剤の例としては、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのPPG Industriesから製造されているHI−SIL 190、HI−SIL 210、HI−SIL 215、HI−SIL 233およびHI−SIL 243が挙げられるが、これらに限定されるものではない。数々の実用的な商用銘柄シリカは、DeGussa Corporation(例えばVN2、VN3)、Rhone Poulenc(例えばZEOSIL 1165 MP0)およびJ.M. Huber Corporationからも入手可能である。
【0028】
上記のように1以上の増量剤が、本明細書に記載のゴム組成物に用いられる。適切な増量剤としては、エキステンダー油および低分子量の化合物または成分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなエキステンダー油としては、従来技術において周知のもの、例えばナフテン酸、芳香油およびパラフィン、石油およびシリコーン油が挙げられる。
【0029】
本発明の様々な実施形態において、増量剤として有用な低分子量の有機化合物または成分の例は、数平均分子量20,000未満、10,000未満または5,000未満の低分子量の有機物質である。当該化合物または成分としては、市販品を使用可能である。用いられる物質の制限はないが、本発明に増量剤として用いることができる適切な物質の例は、以下の通りである(これらに限定しない)。
(1)柔軟剤、例えばゴムまたは樹脂用の芳香族ナフテン系およびパラフィン系の柔軟剤;
(2)可塑剤、例えばフタル酸;フタル酸、脂肪族、二塩基酸、グリコール、脂肪酸、リン酸エステルおよびステアリン酸エステルの混合物;エポキシ可塑剤;他のプラスチック用の可塑剤;並びにフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、リン酸、ポリエーテルおよびポリエステルのNBR用の可塑剤が挙げられるエステルから構成される可塑剤;
(3)粘着付与剤、例えばクマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油炭化水素およびロジン誘導体;
(4)オリゴマー、例えばクラウンエーテル、フッ素含有オリゴマー、ポリブテン、キシレン樹脂、塩化ゴム、ポリエチレンワックス、石油樹脂、ロジンエステルゴム、ポリアルキレングリコールジアクリレート、液状ゴム(ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリクロロプレン等)、シリコーンオリゴマーおよびポリ−α−オレフィン;
(5)潤滑油、例えば炭化水素潤滑油(例えばパラフィンおよびワックス)、脂肪酸潤滑油(例えばより高い脂肪酸およびヒドロキシ脂肪酸)、脂肪酸アミド潤滑油(例えば脂肪酸アミドおよびアルキレン−ビス脂肪酸アミド)、エステル潤滑油(例えば脂肪酸−低級アルコールエステル、脂肪酸−多価アルコールエステルおよび脂肪酸−ポリグリコールエステル)、アルコール性潤滑油(例えば脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコールおよびポリグリセロール)、金属せっけんおよび潤滑油の混合物;並びに
(6)石油炭化水素、例えば合成テルペン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂または脂環式石油樹脂、不飽和性炭化水素の重合体および水素化炭化水素樹脂。
【0030】
増量剤として使用するのに適切な他の適当な低分子量の有機物質としては、ラテックス、エマルジョン、液晶、瀝青組成物およびホスファゼンが挙げられる。なお、2以上の上記物質は、本発明の様々な実施形態において増量剤として組み合わせて使用してもよい。
【0031】
増量剤が上記組成物に用いられる場合、増量剤は0.5pphe以上、約1〜約80pphe、約3〜約50ppheまたは5〜30pphe配合することができる。
【0032】
上記のようにステアリン酸は、本発明の様々な実施形態においてゴム組成物の成分として任意に用いることができる。1以上の実施形態において、ステアリン酸は、ゴム組成物に0.1pphe以上、0.5pphe以上または1pphe以上存在する。他の実施形態において、ステアリン酸は、ゴム組成物に約0.1〜約5pphe、約0.5〜約4ppheまたは1〜3pphe存在することができる。
【0033】
上記のように酸化亜鉛は、本発明の様々な実施形態にゴム組成物の成分として任意に用いることができる。1以上の実施形態において、酸化亜鉛は、ゴム組成物に0.1pphe以上、0.5pphe以上、1pphe以上存在する。他の実施形態において、酸化亜鉛はゴム組成物に約0.1〜約6pphe、約0.5〜約5pphe、1〜4pphe存在することができる。
【0034】
上記のように1以上の抗酸化物質は、本発明の様々な実施形態のゴム組成物の成分として任意に用いることができる。適切な抗酸化物質としては、市販の抗酸化物質、例えばサントフレックス13が挙げられる。1以上の実施形態において、抗酸化物質は、ゴム組成物に、総量で0.01pphe以上、0.05pphe以上または0.1pphe以上存在する。他の実施形態において、抗酸化物質は、ゴム組成物に、総量で約0.01〜約4pphe、約0.05〜約3ppheまたは0.1〜2pphe存在することができる。
【0035】
上記のように1以上のカップリング剤は、本発明の様々な実施形態のゴム組成物の成分として任意に用いられる。1以上の実施形態において、シランカップリング剤を用いることができる。このようなカップリング剤の例としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(“Si69”)、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(“Si75”)並びにオクチルエトキシシランおよびヘキシルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1以上の実施形態において、カップリング剤は、ゴム組成物に総量で1pphe以上、2pphe以上または4pphe以上存在することができる。他の実施形態において、カップリング剤は、ゴム組成物に総量で約1〜約20pphe、約2〜約16ppheまたは4〜12pphe存在することができる。
【0036】
上記のように硫黄は、本発明の様々な実施形態のゴム組成物の成分として任意に用いることができる。1以上の実施形態において、硫黄はゴム組成物に0.1pphe以上、0.5pphe以上または1pphe以上存在することができる。他の実施形態において、硫黄は、ゴム組成物に約0.1〜約5pphe、約0.5〜約4ppheまたは1〜3pphe存在することができる。
【0037】
上記のように1以上の遅延剤は、本発明の様々な実施形態のゴム組成物の成分として任意に用いることができる。このような遅延剤の例としては、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミドを含むが、これに限定されるものではない。1以上の実施形態において、遅延剤はゴム組成物に総量で0.01pphe以上、0.05以上または0.1pphe以上存在することができる。他の実施形態において、遅延剤はゴム組成物に総量で約0.01〜約2pphe、約0.05〜約1ppheまたは0.1〜0.5pphe存在することができる。
【0038】
上記のように1以上の促進剤は、本発明の様々な実施形態のゴム組成物の成分として任意に用いることができる。このような促進剤の例としては、シクロヘキシル−ベンゾチアゾールスルフェンアミドおよびジフェニルグアニジンが挙げられるが、これに限定されるものではない。1以上の実施形態において、促進剤はゴム組成物に総量で0.1pphe以上、0.5pphe以上または1pphe以上存在することができる。他の実施形態において、促進剤はゴム組成物に総量で約0.1〜約5pphe、約0.5〜約4ppheまたは1〜3pphe存在することができる。
【0039】
付加的な充填剤としては、本発明の様々なゴム組成物に用いることができ、無機充填剤、例えばクレイ、タルク、アルミニウム水和物、水酸化アルミニウムおよびマイカが挙げられる。前述の付加的な充填剤は、任意のものであって、約0.5〜約40ppheで用いられる。
【0040】
また、本明細書に記載のゴム組成物に用いられる他の任意の添加剤としては、従来技術において既知のゴム配合物、例えば活性剤、付加的なプロセス添加剤、顔料、付加的な充填剤、脂肪酸、オゾン劣化防止剤および解膠物質が挙げられる。当業者に既知のものとして、ゴム組成物の使用目的によって、上記添加剤が選択され、通常使用される量で使用される。
【0041】
上記のゴム組成物は、様々な改良された特徴を有する。1以上の実施形態において、ゴム組成物は、ASTM D412の条件下、幅0.05インチおよび厚さ0.075インチを有するリング形のサンプルにおいて、23℃(M50)でのリング引張強度が1.3以上、1.4以上または1.5以上である。また、様々な実施形態において、ゴム組成物は、スリップ率65%で、ランボーン指数(即ち摩耗抵抗)が105以上、110以上、115以上、120以上、125以上、130以上、135以上、140以上、145以上または150以上を示す。ステロイドまたはペプチドのいずれにも変性されるものでなく、変性剤を含まない代わりにそれと等量の芳香油を有する以外、同じ組成物の非変性ゴムサンプルのランボーン指数を100とした場合の本発明のゴム組成物についてランボーン指数で表示する。また、ランボーン指数は、ASTM D2228に基づいて測定する。さらに、様々な実施形態において、ゴム組成物は、サンプルサイズ2.54×7.62×0.64cmで英国式ポータブル・スキッドテスタを用いて測定すると、湿潤トラクションが62以上、63以上、64以上または65以上となる。
【0042】
上記ゴム組成物は、あらゆる既知の方法または将来的に発見されるであろう方法を用いることができる。1以上の実施形態において、ゴム組成物は、既知の通常使用される方法に従って配合される。しかしながら、特定の理論に拘束されることなく、発明者らは、予想外に改良された結果が得られる組成物の調製方法を見出したといえる。したがって、1以上の実施形態において、上記のゴム組成物は以下の方法によって調製される。
【0043】
まず、エラストマー成分を、初期の混合段階で、上記シリカ充填剤とともに配合して、初期混合物を生成する。加えて、初期混合物を、上記増量剤(例えば芳香油およびワックス)、ステアリン酸、抗酸化物質および/またはカップリング剤を任意に含有させることができる。これらの成分は、それぞれ上記の量で組み合わせることができる。1以上の実施形態において、この初期混合物は、1分以上、2分以上または3分以上の一定時間混合される。また、この初期混合物は、約1〜約60分、約2〜約30または3〜10分の一定時間混合される。初期の混合段階は、50℃以上、75℃以上または100℃以上の初期温度で実施される。また、初期の混合段階は、約50〜約300℃、約75〜約200℃または100〜120℃の初期温度で実施される。なお、この初期の混合段階は、市販のミキサー、例えばバンバリーミキサーで実施される。初期の混合段階における混合速度は、20rpm以上、35rpm以上または50rpm以上とすることができる。また、初期の混合段階における混合速度は、約20〜約100rpm、約35〜約85rpmまたは50〜70rpmとすることができる。
【0044】
所望の混合時間が経過した後、初期の混合段階は、5秒以上、10以上または20秒以上の終了時間で任意に終了することができる。他の実施形態において、終了時間は、約5秒〜約1時間、約10秒〜約30分または20秒〜10分とすることができる。
【0045】
初期の混合段階および任意の終了時間の後、生成した初期混合物を、本明細書に記載のステロイドおよび/またはペプチドと組み合わせることができる。これにより生成される中間組成物は、第2混合段階(別名「再練り」段階)を経る。1以上の実施形態において、この中間混合物は、1分以上、2分以上または3分以上の一定時間混合することができる。また、この中間混合物は、約1〜約60分、約2〜約30分または3〜10分の一定時間混合することができる。再練り段階は、50℃以上、75℃以上または100℃以上の初期温度でさらに実施される。また、再練り段階は、約50〜約300℃、約75〜約200℃または100〜120℃の初期温度で実施することができる。なお、再練り段階は、市販のミキサー、例えばバンバリーミキサーで実施される。再練り段階に用いられるミキサーは、上記の初期の混合段階に用いられるものと同じであっても異なっていてもよい。1以上の実施形態において、再練り段階に用いられるミキサーは、初期の混合段階に用いられるものと同じである。再練り段階における混合速度は、20rpm以上、35rpm以上または50rpm以上とできる。また、再練り段階における混合速度は、約20〜約100rpm、約35〜約85rpmまたは50〜70rpmとできる。
【0046】
所望の混合時間が経過した後、再練り混合段階は、5秒以上、10秒以上または20秒以上の第2終了時間で任意に終了することができる。他の実施形態において、第2終了時間は、約5秒〜約1時間、約10秒〜約30分または20秒〜10分である。
【0047】
再練り段階および任意の2回目の終了時間の経過後、1以上の上記任意の成分の残余成分は、結果として生じる中間混合物に添加することができる。例えば、硫黄成分、遅延剤、酸化亜鉛または促進剤の1以上のものは、それぞれ上記の容量で中間混合物と組み合わせることができる。1以上の実施形態において、この最終混合物は20秒以上、30秒以上または40秒以上の一定時間混合することができる。さらに、最終混合物は、約20〜約70秒、約30〜約60秒または40〜50秒の一定時間混合することができる。最終混合段階は、35℃以上、50℃以上または65℃以上の初期温度で実施することができる。また、最終混合段階は、約35〜約115℃、約50〜約100℃または65〜85℃の初期温度で実施することができる。また、最終混合段階は、市販のミキサー、例えばバンバリーミキサーで実施することができる。最終混合段階に用いられるミキサーは、上記のように初期の混合段階および/または再練り段階の際、用いられるものと同じであっても異なっていてもよい。1以上の実施形態において、最終混合段階に用いられるミキサーは、初期の混合段階および再練り段階に用いられるものと同じである。最終混合段階における混合速度は、20rpm以上、35rpm以上または50rpm以上とできる。さらに、最終混合段階における混合速度は、約20〜約100rpm、約35〜約85rpmまたは50〜70rpmとできる。
【0048】
調製後、前記ゴム組成物は、様々な物品の製造の生産に用いることができる。製造に用いられる適切なゴム組成物の物品の例としては、タイヤの製造が挙げられるが、これに限定されるものではない。1以上の実施形態において、本明細書に記載されたゴム組成物は、タイヤ、例えば様々な用途のある空気式タイヤ(例えば自動車の空気式タイヤ)の少なくとも一部を構成し得る。様々な実施形態において、タイヤは、タイヤの総量に対して0.1重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上または40重量%以上のゴム組成物を含む。さらに、タイヤは、タイヤの総量に対して約1〜約80重量%、約2〜約60重量%または5〜約40重量%のゴム組成物を含むことができる。1以上の実施形態において、本発明の様々な実施形態によるタイヤは、トレッド部材を含むことができる。このような実施形態において、トレッド部材は、トレッド部材の総量に対して50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または99重量%以上の本明細書に記載のゴム組成物を含む。「トレッド」の用語は、従来技術において既知の単語であり、その通常の意味、且つ、通常使用される意味として使用される。
【0049】
本明細書に記載のゴム組成物を用いるタイヤは、あらゆる既知の方法または将来的に発見されるであろう方法で調製することができる。1以上の実施形態において、タイヤは、(a)ゴム組成物、例えば上記ゴム組成物の調製工程;(b)少なくともゴム組成物の一部をタイヤ用モールドに導入する工程;および(c)前記ゴム組成物をタイヤ用モールド内で1以上の硬化条件に供し、タイヤを形成する工程;の一般的な工程に従って調製される。この方法の工程(a)は、上記方法および/または成分の一部または全てを用いて実施することができる。この方法の工程(b)において、ゴム組成物は、他の成分を付加的に含むグリーンタイヤの一部を構成する。「グリーンタイヤ」の用語は、硬化していないタイヤを意味し、従来技術において既知の用語であり、本明細書において、その通常の意味、且つ、通常使用される意味として使用される。例えばゴム組成物は、グリーンタイヤの部材、例えばインナーライナー、サイドウォール部、ボディプライ、ベルトパッケージおよび/またはトレッドの一部または全てを構成し得る。グリーンタイヤの形成後、硬化のために、ゴム組成物をタイヤ用モールドに(グリーンタイヤの一部として)配置する。タイヤを硬化するための硬化条件は、当業者に既知である。タイヤの製造に適切なあらゆる硬化条件が、上記工程(c)において用いられる。例えば、硬化条件には、高温および/または高圧による処理を含めることができる。1以上の実施形態において、硬化条件には、グリーンタイヤの温度を約200〜約500°F、300〜400°Fまで上昇する工程が含まれる。さらに、硬化条件としては、グリーンタイヤを約200〜約500psi(重量ポンド毎平方インチ)または300〜400psiの圧力の対象とする工程が含まれる。また、ある適切な時間、グリーンタイヤを硬化条件の対象とすることができる。1以上の実施形態において、グリーンタイヤは、約1分〜約5時間、約5分〜約1時間または10〜20分の一定時間、硬化条件に供される。形成後、硬化したタイヤをモールドから取り外し、従来技術おける既知の様々な仕上げ工程に供することができる。
【実施例】
【0050】
本発明は、以下のその実施形態の例によって詳細に説明されるが、これらの例は、単に説明の目的のためであり、特に示さない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
<試薬>
以下の実施例において、コレステロールおよびコレステロールの誘導体を、様々なゴム組成物の処方に用いた。米国ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ社から入手した95%純度の3β−ヒドロキシ−5−コレステン(製品番号C75209)をコレステロールとして使用した。以下の例において、米国ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ社から入手した95%純度の3β−アセトキシ−5−コレステン(製品番号151114)を酢酸コレステリルとして使用した。米国ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ社の純度97%のクロロギ酸コレステリル(製品番号C77007)を使用した。なお、以下の例において、米国ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ社から入手した純度90%のカプリル酸コレステリル(製品番号125253)を使用した。
【0052】
<実施例1−ゴムコントロールサンプルの調製>
ゴム組成物のコントロールサンプル(サンプルID1)を以下の表1に示す組成物として調製した。
【0053】
【表1】

A−23.5%スチレン、溶液重合、100℃でのムーニー粘度=55,11%ビニル含有量;ファイアストーン・シンセティック社(米国ペンシルベニア州アクロン)
B−水和化非晶シリカとしてPPC(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)から購入
C−モービル社(米国バージニア州フェアファックス)から商標名Mobilsol 90として購入
D−Aston Wax Corp.(米国ペンシルベニア州タイタスビル)から購入
E−Sherex Chemical(米国オハイオ州ダブリン)から購入
F−モンサント社(米国ミズーリ州セントルイス)から商標名6PPD、化学名:N−(1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−P−フェニレン−ジアミン)
G−デグサ社(米国ニュージャージー州パーシッパニー)から化学名:ビス−(3−トリエトキシ−シリルプロピル)テトラスルフィドとして購入
H−International Sulphur(米国テキサス州マウントプレザント)から購入
I−モンサント社(米国ミズーリ州セントルイス)から商標名Santogard PVIとして購入
J−Zinc Corp. America(米国ペンシルベニア州モナコ)から購入
K−モンサント社(米国ミズーリ州セントルイス)から購入
L−モンサント社(米国ミズーリ州セントルイス)から購入
【0054】
まず、スチレン−ブタジエンゴム300gをバンバリーミキサーに加え、撹拌速度60rpm、初期温度110℃に設定し、ゴムのコントロールサンプルを調製した。その後、油、シリカ充填剤、シランカップリング剤、サントフレックス 13、ステアリン酸およびワックスを、約0.5分間でミキサーに加えた。生成した混合物を、その後、上記条件で約4.5分間混合した。混合を一時的に中断した後、初期の混合段階と同じ速度で、同じミキサーを用いて約5.0分間、110℃で混合物を再練りした。その約0.5分後、75℃で、表1に記載された、硫黄、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、シクロヘキシル−ベンゾチアゾールスルホンアミド、酸化亜鉛およびジフェニルグアニジンをミキサーに加え、約45秒間混合した。生成したストックをシート状にし、165℃、15分間で成形した。
【0055】
<実施例2−変性ゴムサンプル2−6の調製>
表1に示される配合のうち、芳香油の一部をコレステロール(ID2)、酢酸コレステリル(ID3)、クロロギ酸コレステリル(ID4)およびカプリル酸コレステリル(ID5)に置き換えた配合物の、4つのゴム組成物(サンプルID2−5)を調製した。単にコレステロールを上記表1に記載された化合物の配合に加えて添加することによって(即ち芳香油の一部を置き換えることなく)付加的なゴム組成物(サンプルID6)を調製した。それぞれのサンプルを上記の実施例1と同じ方法で、初期の混合段階でミキサー中にコレステロールまたはコレステロールの誘導体を加えて調製した。生成したゴムサンプルは、以下の表2に示す組成物を含んでいた。表2に列挙された成分は、上記の実施例1に記載されたものと同じであった。
【0056】
【表2】

*重量部で示される成分の濃度
【0057】
<実施例3−ゴムサンプル1−6の分析>
サンプルID1−6の各々について、レオロジー特性、ムーニー粘度、力学的特性、伸長強度、硬度、湿潤トラクションおよび耐磨耗性の試験を実施した。各サンプルのムーニー粘度を130℃で測定した。各サンプルのレオロジー特性を165℃で、MDR2000血流系(米国オハイオ州アクロン、Alpha Technologies)を用いて測定した。各サンプルのショアA硬度を23℃および100℃で測定した。
【0058】
サンプルの伸長強度を、ASTM D412の方法に従って測定した。伸長強度の測定に用いられた試験片の形状は、幅0.05インチおよび厚さ0.075インチを有するリングとした。試料は、特定のゲージ長1.0インチで試験した。
【0059】
各サンプルの力学的特性を振動せん断力分析装置(Oscillatory Shear Dynamic Analyzer)、(米国デラウェア州ニューカッスル、TA Instrumentsで製造されているARES)を用いて評価した。試験片の形状は、長さ30mm、幅15mmおよび厚さ1.8mmのストリップ状とした。試験条件:周波数5Hz、歪2%。
【0060】
湿潤トラクション(Stanley London)の測定を英国式ポータブル・スキッドテスタ(C.G. Giles et al.によるRoad Research Laboratory Technical Paper No. 66, London (1966))で実施した。湿潤トラクション試験のためのサンプルの形状は、2.54×7.62×0.64cmの長方形棒とした。
【0061】
耐磨耗性の計測をASTM D2228に従って測定した。コントロールサンプル1の耐摩耗性を100として、以下のサンプル2−6の耐摩耗性を指数表示した。
【0062】
上記結果の測定は、以下の表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示すように、コントロールサンプルと比較して、コレステロールまたはコレステロール誘導体で変性されたゴムサンプルは、一般的に優れた磨耗性(即ち耐磨耗性)および湿潤トラクションを示すことが、最も明確な改良点である。表3に示す結果は、変性ゴム組成物において伸長強度も改良されることを示す。
【0065】
<実施例4−ゴムのコントロールサンプル7および変性ゴムサンプル8−12の調製>
他の6サンプルのセット(1つのコントロールとしてのサンプルID7、および5つの変性サンプルとしてのサンプルID8−12)のうち1つを除いては、上記と同様の方法で調製した。この変性サンプルの例において、コレステロールまたはコレステロール誘導体を、サンプル調製工程において、初期の混同段階の始めではなく、再練り段階の始めにゴム組成物に添加した。生成したサンプルは、以下の表4に示す組成物を含んでいた。表4に列挙された成分は、上記実施例1の表1に記載したものと同じであった。
【0066】
【表4】

*重量部で示される成分の濃度
【0067】
<実施例5−ゴムサンプル7−12の分析>
サンプルID7−12の各々の、レオロジー特性、ムーニー粘度、力学的特性、伸長強度、硬度、湿潤トラクションおよび耐磨耗性について試験した。これらの測定に従った方法は、上記実施例3と同じであった。これら測定の結果を以下の表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
表5に列挙した結果から見られるように、この場合においても、コントロールサンプルと比較して、コレステロールまたはコレステロール誘導体で変性されたゴム組成物が、一般的により良い磨耗性(即ち耐磨耗性)および湿潤トラクションを示すことが、最も明らかな改良点である。表5の結果は、伸長強度の改良の兆候も示す。なお、上記の表3に列挙された結果と比較した場合、調製の再練り段階コレステロールまたはコレステロール誘導体の添加により、生成される変性ゴム組成物の性能が改良されることが示された。
【0070】
<選択的な定義>
以下は定義された用語の唯一の一覧を意図するものではないと解釈すべきである。文脈中で定義された他の用語と共に、他の定義は下記の規定とすることができる。
【0071】
本明細書に使用する、“a”、“an”および“the”の用語は、1以上を意味する。
【0072】
本明細書に使用する、2以上のものに使用される場合、“および/または”の用語は、あらゆる列挙されたそのものの1つとして、または、列挙された2以上のもののあらゆる組み合わせを意味する。例えば、組成物がA、Bおよび/またはCを含むと記載されている場合、組成物は、Aのみ;Bのみ;Cのみ;AおよびBの組み合わせ;AおよびCの組み合わせ;BおよびCの組み合わせ;またはA、BおよびCの組み合わせを含む。
【0073】
本明細書に使用する、“comprising”、“comprises”および“comprise”は、用語の前に列挙される主語から用語の後に列挙される1以上の要素への転換として使用される制限のない転換語であって、転換語の後ろに列挙された要素は、必ずしも主語を構成する唯一の要素ではない。
【0074】
本明細書に使用される、“containing”、“contains”および“contain”は、上記の“comprising”、“comprises”および“comprise”と同様に、制限のない意味がある。
【0075】
本明細書に使用される、“having”、“has”および“have”は、上記の“comprising”、“comprises”および“comprise”と同様に、制限のない意味がある。
【0076】
本明細書に使用される、“including”、“include”および“included”は、上記の“comprising”、“comprises”および“comprise”と同様に、制限のない意味がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー成分、並びに、ステロイド、ペプチドおよびこれらの混合物からなる群から選択される変性剤を含有するゴム組成物を含むタイヤであって、前記タイヤは前記タイヤの総量に対して0.1重量%以上の前記ゴム組成物を含む、タイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、前記ステロイドを含み、前記ステロイドは、コレスタン、コラン、プレグナン、アンドロスタン、エストラン、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ステロイドは、コレステロール、コレステロールの誘導体またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ステロイドは、ギ酸コレステリル、酢酸コレステリル、プロピオン酸コレステリル、酪酸コレステリル、安息香酸コレステリル、ラウリン酸コレステリル、カプリル酸コレステリル、クロロギ酸コレステリルおよび2以上のこれらの混合物からなる群から選択されるコレステロールのエステル誘導体を含む、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ステロイドは、臭化コレステリル、塩化コレステリル、ヨウ化コレステリルおよび2以上のこれらの混合物からなる群から選択されるコレステロールのハロゲン化誘導体を含む、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物は前記ペプチドを含み、前記ペプチドは、乳ペプチド、リボソームペプチド、非リボソームペプチド、ペプトン、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択され、前記ペプチドは平均鎖長5〜50モノマー残基を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記エラストマー成分は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリウレタン、エチレンプロピレンジエンゴム、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物は、前記ゴム組成物の総量に対して10重量%以上の前記エラストマー成分を含み;前記タイヤは、前記タイヤの総量に対して10重量%以上の前記ゴム組成物を含み;前記ゴム組成物は、シリカ充填剤、カーボンブラック、芳香油、ワックス、ステアリン酸、抗酸化物質、シランカップリング剤、硫黄、酸化亜鉛、遅延剤、促進剤からなる群から選択される1以上の添加剤を含み;前記タイヤは、トレッド部材を備え;前記ゴム組成物の少なくとも一部は、前記トレッド部材に配される、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物は、ASTM D412の条件下、幅0.05インチ厚さ0.075インチのリング形のサンプルにおいて、23℃(M50)でのリング引張強度が1.3以上であって、変性剤を含まない代わりにそれと等量の芳香油を含む以外は同じ組成物を備えた非変性ゴムのサンプルのランボーン指数を100として、前記ゴム組成物は、スリップ率65%で105以上のランボーン指数を示し、前記ゴム組成物は、サンプルサイズ2.54×7.62×0.64cmを用いて英国式ポータブル・スキッドテスタで測定すると、湿潤トラクション62以上の湿潤トラクションを示す、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
タイヤの製造方法であって:
(a)エラストマー成分、並びに、ステロイド、ペプチドおよびこれらの混合物からなる群から選択される変性剤を含むゴム組成物を調製する工程;
(b)前記ゴム組成物の少なくとも一部をタイヤ用モールドに導入する工程;および
(c)前記ゴム組成物をタイヤ用モールド内で1以上の硬化条件に供し、タイヤを形成する工程;を含む方法。
【請求項11】
前記調製工程(a)は:
i.エラストマー成分およびシリカ充填剤を初期の混合段階に供して、初期混合物を生成する工程;
ii.前記初期の混合段階の後、前記ステロイドおよび/または前記ペプチドを前記初期混合物と組み合わせ、混合して、中間混合物を生成する工程;及び
iii.1以上の硬化添加剤を前記中間混合物と組み合わせ、混合して、当該ゴム組成物を生成する工程;を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゴム組成物は前記ステロイドを含み、前記ステロイドはコレステロール、コレステロールの誘導体またはこれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ゴム組成物は、前記ペプチドを含み、前記ペプチドは、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される1以上のモノマー残基を含み、前記ペプチドは平均鎖長10〜40モノマー残基を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記エラストマー成分は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリウレタン、エチレンプロピレンジエンゴム、これらの誘導体および2以上のこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ゴム組成物は、ASTM D412の条件下、幅0.05インチ厚さ0.075インチのリング形のサンプルにおいて、23℃(M50)でのリング引張強度が1.3以上であって、変性剤を含まない代わりにそれと等量の芳香油を含む以外は同じ組成物を備えた非変性ゴムのサンプルのランボーン指数を100として、前記ゴム組成物は、スリップ率65%で105以上のランボーン指数を示し、前記ゴム組成物は、サンプルサイズ2.54×7.62×0.64cmを用いて英国式ポータブル・スキッドテスタで測定すると、湿潤トラクション62以上の湿潤トラクションを示す、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2013−512331(P2013−512331A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542151(P2012−542151)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058520
【国際公開番号】WO2011/068846
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】