説明

変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物及びこれにより成型された半導体チップトレイ

【課題】炭素ナノチューブを含有し、適合した表面抵抗、優れた耐熱性、寸法安定性及び剛性を示す半導体チップトレイ用変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】炭素ナノチューブ(CNT)を含有した伝導性変性ポリフェニレンオキサイド(MPPO)樹脂組成物に関するものであって、さらに詳しくは、ポリフェニレンオキサイド20〜60重量%、ガラス繊維10〜30重量%、ミネラルフィラー10〜20重量%、炭素ナノチューブ0.5〜5重量%及びハイインパクトポリスチレン10〜30重量%を含有する。これにより、優れた耐熱性、寸法安定性及び電気伝導性を有するMPPO樹脂組成物が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブ(CNT)を含有した伝導性変性ポリフェニレンオキサイド(MPPO)樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体チップトレイ(IC Tray)は、主にアクリロブタジエン−スチレン−コポリマー(ABS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)またはポリフェニレンエーテル(PPE)と、ポリサルフォン(PSF)またはポリエーテルサルフォン(PES)樹脂にカーボンファイバー(Carbon fiber)または伝導性カーボンブラック(Carbon black)と必要な時、他の無機充填材(ガラス繊維、タルク、雲母、カオリン、珪灰石等)を混合した混合樹脂で製造されてきた。
【0003】
特にカーボンブラックまたはカーボンファイバーは半導体チップトレイに伝導性を付与し、半導体チップトレイの静電気を防止するため必須的に含まれた。このような伝導性カーボンブラックまたはカーボンファイバーを添加しなければ半導体チップトレイに発生した静電気が半導体チップトレイの上にある半導体のゴールドワイヤーをショートさせる等の問題が発生し、半導体の製造に困難があったためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カーボンファイバーや伝導性カーボンブラックは高価な原料であって、半導体トレイの製造費用において大きな比重を占める。また、一番多く用いられる原料であるカーボンファイバーは全世界的に供給不足な状態に直面している。カーボンファイバーは全世界使用量の70乃至80%を日本で生産しているが、ほとんどの物量は航空機製作(エアバス、ボーイング社)に使用されており、伝導性トレイの製造に使用される物量はその供給が不安定な状況である。その上、半導体集約化技術が発展することにより、パッケージ部分の汚染が頻繁するという問題が度々発生し、カーボンファイバーの使用がだんだん難しくなる傾向にある。また、半導体及び電気、電子部品の静電気放電(ELECTRO STATIC DISCHARGE, ESD)領域が伝導性領域(表面抵抗:103〜105Ω)から半−伝導体領域(表面抵抗:105〜109Ω)に転換されることにより、既存素材であるカーボンファイバーとしては伝導性を付与できない領域の製品がたくさんあふれている。
【0005】
これによって、最近、電気、電子及び半導体業界のパッケージ分野では、半−伝導性または静電気放電性を付与することのできる素材及び原料を開発するため、努力している。特に、本発明者は、従来は本発明に属する分野で使用されなかった炭素ナノチューブを素材とする試みをしてきた。
【0006】
炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube; CNT)は一つの炭素原子に隣合わせる3つの炭素原子がsp2形態で結合されており、このような炭素原子間の結合によって六角環形になり、このような六角環形が蜂の巣形態に繰り返された平面が巻かれ、円筒形またはチューブ形態を有する巨大分子である。この直径が数Å乃至数十nmであり、その長さは数十倍乃至数千倍以上の長い特性を示すと知られている。
【0007】
このような炭素ナノチューブはナノの大きさの黒鉛面がシリンダー構造で丸く巻かれた形態を見せ、大きさや形態によって独特な物理的性質を持ち、剛度が5TPaになる程度に金属以上の高い強度を有しており、その構造は直径からの差によって絶縁体から半導体、金属性までの特性を示すことができる。
【0008】
炭素ナノチューブはこのように力学的堅固性と化学的安定性に優れ、半導体と導体の性質をすべて示すことができ、直径が小さく、長さが長く、中が空いているという特徴のため、平版表示素子、トランジスタ、エネルギー貯蔵体等の素材として優れた性質を見ることができることを期待しており、ナノの大きさの各種電子素子としての活用可能性がとても大きい。
【0009】
これに本発明者は、従来のカーボンファイバーが含有されたMPPO樹脂組成物の問題点である、パッケージ部分の汚染、半導体表面抵抗の不適合、射出ゲート部位の無抵抗及び需給不安定な問題等を解決するため、カーボンファイバーの代替素材に対し根気強く研究した結果、炭素ナノチューブを利用して半導体チップトレイを製造すれば、従来よりも優れた表面抵抗を示し、改善された耐熱性、寸法安定性及び剛性を示しながら反り特性及び表面外観特性が優れることを確認することで本発明を完成させた。
【0010】
したがって、本発明は炭素ナノチューブを含有し、適合した表面抵抗、優れた耐熱性、寸法安定性及び剛性を示す半導体チップトレイ用変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は上記変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物として成形された半導体チップトレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するため、ポリフェニレンオキサイド20〜60重量%、ガラス繊維10〜30重量%、ミネラルフィラー10〜20重量%、炭素ナノチューブ0.5〜5重量%及びハイインパクトポリスチレン10〜30重量%を含有する変性ポリフェニレンオキサイド(MPPO)樹脂組成物をその特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のMPPO樹脂組成物は炭素ナノチューブを使用しながら、かつ102〜109Ωの適合した一定領域帯表面抵抗を示し、優れた耐熱性、寸法安定性及び剛性を示した。特に優れた表面抵抗値及びゲート抵抗値を共に得ることができ製品の不良がほとんど発生しない長所があり、半導体用トレイの製造に非常に適合する。
【0014】
また、表面状態、反り特性等外観が優れた製品を作るのに使用されるので、電気、電子、半導体パッケージ分野及び半導体トレイの製造に有用である。
【0015】
また、本発明のMPPO樹脂組成物は高価なカーボンファイバーの代わりに炭素ナノチューブを使用することで電気、電子、半導体パッケージ分野及び半導体トレイの製造原価を節減し、経済的なため産業的にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、(a)ポリフェニレンオキサイド20〜60重量%、(b)ガラス繊維10〜30重量%、(c)ミネラルフィラー10〜20重量%、(d)炭素ナノチューブ0.5〜5重量%及び(e)ハイインパクトポリスチレン10〜30重量%を含有することにより、優れた耐熱性、寸法安定性及び電気伝導性を有するMPPO樹脂組成物に関するものである。
【0017】
本発明の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物は、上記(a)乃至(e)の必須成分以外に本発明の目的を損なわない範囲内で当分野で広く使用される添加剤を追加として含むことができる。添加剤の含量は本発明の目的を損なわない限り特別に制限されないが、通常的には0.01〜10重量%が含まれる。
【0018】
上記変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物は、伝導性又は半−伝導性を要する製品に広く用いられるが、特に半導体チップトレイの製造に好ましく用いられる。
【0019】
本発明の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物は、耐熱性、寸法安定性及び機械的剛性に優れ、製品の外観に優れ、特に炭素ナノチューブを含有することにより半導体チップトレイ用として適合した表面抵抗を示すことで半導体チップトレイの製造のため有用に用いられる。
【0020】
(a)ポリフェニレンオキサイド(PPO)
本発明のMPPO組成物はポリフェニレンオキサイド樹脂を含む。ポリフェニレンオキサイド樹脂は、本発明が属する分野で通常的に使用されるものを使用することができるが、樹脂の固有粘度が0.3〜0.5dl/gであるものが好ましく、固有粘度が0.4dl/g程度のものがより好ましい。樹脂の固有粘度が0.3未満の場合は製品の衝撃強度が低下することがあり、反対に上記粘度が0.5を超過する場合には流動性の不良によって後述するガラス繊維が表面に表出したり、成形性が低下する問題が発生することもある。上記PPO樹脂は、当業界に広く知られている方法として合成して使用でき、または市販中のものを選択して使用することもできる。
【0021】
上記PPO樹脂は本発明の組成物で20〜60重量%で含有するものが望ましい。万一PPO樹脂の含量が20重量%未満であれば表面外観が悪くなり、反り特性も劣勢になり、耐熱性が低下する問題が発生することもあり、PPO樹脂含量が60重量%を超過すると寸法安定性及び剛性が低下するという短所があり、流れが悪く好ましくない。
【0022】
(b)ガラス繊維
本発明のMPPO樹脂組成物はガラス繊維を含有する。ガラス繊維は特定の種類に限定されず、通常的に使用される各種ガラス繊維を使用することができる。ただし、アミノシランでコーティングされたガラス繊維またはビニールシランでコーティングされたガラス繊維を使用することが好ましく、アミノシランでコーティングされたガラス繊維を使用することがより好ましい。
【0023】
例えば、ガラス繊維の直径は20μm以下、長さが1インチ以下の針状、段平状、球状のガラス繊維でも良く、上記範囲に属するガラス繊維は1種または2種以上が複合的に使用されることがある。
【0024】
ガラス繊維は半導体トレイの耐熱温度を上げ、寸法安定性を付与する役割をすることができ、これにより特に直径3μm乃至10μmのものを使用することができる。
【0025】
また、ガラス繊維は、MPPO樹脂組成物の機械的剛性を増加させる役割をすることにより、本発明の組成物に10〜30重量%が含有されることが好ましい。ガラス繊維を10重量%未満で含有する場合、満足の行く剛性が発揮されず半導体チップトレイの製作時不適合することがあり、30重量%を超過して含有する場合、樹脂の表面が荒くなり製品の外観が不良になる問題がある。
【0026】
(c)ミネラルフィラー
本発明のMPPO樹脂組成物はミネラルフィラーもまた含有するが、これは製品の反り特性を防止する役割をする。ミネラルフィラーとしては例えばシリカ(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、タルク、炭酸カルシウム、石綿、カオリン等が用いられることがあり、他の無機物も必要に応じて使用可能であり、特定の種類のものに限定されない。
【0027】
但し、本発明ではミネラルフィラーとしてシリカが60〜75重量%と酸化マグネシウム25〜40重量%で混合されたミネラルフィラーを使用することが好ましい。
【0028】
また、トレイの製造においてはミネラルフィラーの平均粒径が4〜6μmものが好ましい。
【0029】
上記ミネラルフィラーは本発明の組成物では10〜20重量%を含有するものが好ましい。万一ミネラルフィラーの含量が10重量%未満であれば製品に反り問題が発生することもあり、20重量%を超過すれば製品の衝撃強度が低下され外観も悪くなるという短所があり、比重が増加するため好ましくない。
【0030】
(d)炭素ナノチューブ
本発明のMPPO樹脂組成物は炭素ナノチューブを含有することを重要な特徴とする。炭素ナノチューブは組成物に含有され、製品の表面抵抗を付与し静電気防止(ESD)機能を示す役割をする。
【0031】
本発明の炭素ナノチューブでは単一壁ナノチューブ(Single Wall Nano Tube, SWNT)や多重壁ナノチューブ(Multi Wall Nano Tube, MWNT)を制限なく使用することができるが、多重壁ナノチューブを使用することが価格が相対的に非常に安く、分散が容易な理由からより好ましく、多重壁ナノチューブの場合には2〜5個の壁を有するものが好ましい。
【0032】
上記炭素ナノチューブは平均直径が5〜30nmであり、特に約20nmのものが好ましく使用される。また、炭素ナノチューブの平均長さが1〜20μmであり、特に約10μmのものが表面抵抗の発現に好ましい。
【0033】
上記炭素ナノチューブは本発明の組成物に0.5〜5重量%で含有するものが好ましい。特に、本発明では炭素ナノチューブを上記範囲で含有することにより、優れた表面抵抗値に加え、カーボンファイバーを使用すると得られなかったゲート抵抗値が表面抵抗値と同一の水準で測定される追加的な長所がある。万一、炭素ナノチューブの含量が0.5重量%未満であれば、伝導性付与が困難で静電気防止の役割をすることができないという問題が発生することがあり、5重量%を超過すると発明の目的に符合する水準の表面抵抗を得ることが難しいか、材料原価が上昇するという短所があり、好ましくない。
【0034】
また、必要な場合、本発明の炭素ナノチューブは適正量の炭素繊維と共に使用することもできる。例えば、炭素ナノチューブが少量含有される場合、より好ましい表面抵抗値のため炭素繊維が共に添加されることがあり、例えば、炭素ナノチューブ0.5乃至1重量%と炭素繊維1乃至15重量%が共に使用されることもある。
【0035】
(e)ハイインパクトポリスチレン
本発明のMPPO樹脂組成物はハイインパクトポリスチレン(HIPS)を含むが、インパクトポリスチレンは、例えば、ゴムと芳香族モノアルケニル単量体及び/またはアルキルエステル単量体を混合し熱重合するか、またはそこに重合開始剤を使用し重合させ、製造される。上記ゴムはブタジエン型ゴム類、イソプレン型ゴム類、ブタジエンとスチレンの共同合体類及びアルキルアクリルレイトゴム類等からなる群から選択され、3〜30重量部、好ましくは5〜15重量部を使用することが好ましい。また、上記単量体は芳香族モノアルケニル単量体、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル単量体からなる群から選択され、上記群から選択された1種以上の単量体を70〜97重量部、好ましくは85〜95重量部を投入し製造することができる。
【0036】
本発明のハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂は、重合時開始剤の存在なしで熱重合により重合され、また重合開始剤の存在下で重合されることがある。上記重合開始剤としてはベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、アセチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドからなる過酸化物系開始剤及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ系開始剤中1種以上が選択され使用される。
【0037】
ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合またはこれらの混合方法を使用し製造され、このような重合方法の中で塊状重合方法が好ましく使用される。
【0038】
ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂は本発明の組成物に含有され耐衝撃性を良くして半導体チップトレイ射出時に射出流動性を良くし、製品表面を優れさせ射出量産性を高める役割をする。
【0039】
上記ハイインパクトポリスチレンは本発明の組成物に10〜30重量%で含有されることが好ましい。万一ハイインパクトポリスチレンの含量が10重量%未満であれば製品外観と射出流動性が劣るという問題が発生することがあり、30重量%を超過すれば急激に耐熱性が低下するという短所があり好ましくない。
【0040】
本発明の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物は上記(a)乃至(e)の必須成分以外に本発明の目的を損なわない範囲内で当分野で広く使われる添加剤を追加して含有することもできる。添加剤としては当業界の通常的なカップルリング剤、1次または2次酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、加工潤滑剤及び帯電防止剤等が含まれ、また必要に応じて顔料(Pigments)、核剤等を含むこともできる。添加剤の含量は通常的には0.01〜10重量%である。
【0041】
上記カップルリング剤は本発明に使用されるポリフェニレンオキサイド、ポリスチレンまたはミネラルフィラーとの接着強度を高めるため使用されるが、上記カップルリング剤としてはアミノシラン系、アミノチタン等が使用される。
【0042】
上記1次または2次酸化防止剤及び熱安定剤は本発明のポリフェニレンエーテル、またはポリフェニレンオキサイド系樹脂が工程中に発生することのできる熱的分解を防止するために使用されるが、上記1次酸化防止剤としては通常のフェノール系化合物等が使用されることもある。上記2次酸化防止剤としては、通常のアミン系化合物等が使用されることがある。
【0043】
上記耐熱安定剤としては2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の通常のフェノール系化合物、ジフェニル-p-フェニレンジアミン等の通常のアミン系化合物等を使用することができる。
【0044】
上記紫外線安定剤は樹脂の耐候性補強及び樹脂の屋外露出時、紫外線による分解を防止するため、樹脂組成物に添加されることもあるが、上記紫外線安定剤としてはヒンダードアミン(HALS)系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が使用される。
【0045】
上記加工潤滑剤は樹脂組成物の加工性を向上させ、樹脂製造時やまたは半導体チップトレイ射出時樹脂の流れを円滑にし、樹脂内の残留応力を最小化するために使用される。種類としてはカルシウム-ステアレート(Ca-Stearate)、亜鉛-ステアレート(Zn-stearate)、亜鉛オキサイド(Zn-Oxide)、脂環式飽和炭化水素樹脂(Alicyclic saturated hydrocarbon resin)等が使用される。
【0046】
上記帯電防止剤は複合樹脂の静電気防止を抑制し、半導体チップトレイの製造時または運搬時ほこりや異物が付着するのを防止し通常的にはアルキルアミン系化合物、ステアリン酸系化合物等を使用することができる。
【0047】
上記のような本発明のMPPO樹脂組成物を製造するためにガラス繊維を除外した組成成分を均一に混合した後、連続式2軸圧出機で溶融圧出を行い、ガラス繊維はサイドフィーディング(Side Feeding)して注入する。この時、圧出機バレルの温度はMPPO樹脂組成物は270℃〜310℃が好ましい。溶融圧出された樹脂組成物はペレット状に形成される。
【0048】
上記製造されたペレット状のMPPO樹脂組成物は上記製造された樹脂組成物は一定した水分及び揮発分の除去工程を経ながら水分及び揮発分が除去された後、射出または圧縮試片で製造され、米国標準規格(ASTM)等によって、樹脂の機械的及び熱的物性が測定され通常の射出成形により半導体チップトレイを製造した後、最終製品の表面抵抗、半導体チップトレイの耐熱性、屈曲弾性率、屈曲強度、引張強度、衝撃強度、表面状態及び反り特性等を測定する。
【0049】
このような本発明のMPPO樹脂組成物は表面抵抗が102〜109Ωとして適合な一定領域帯の表面抵抗を示し、熱変形温度も半導体ベイキング温度よりも高いため、耐熱性を示し、屈曲弾性率、屈曲強度及び引張強度も高くて寸法安定性を示し、衝撃強度も高くて機械的剛性を示す。また、表面状態、反り特徴等製品外観にも優れ、電気、電子、半導体パッケージ分野及び半導体トレイの製造に有用に使用され、特に半導体ベイキング温度が130℃または150℃である半導体トレイの製造に適合する。
【0050】
また、本発明のMPPO樹脂組成物は高価なカーボンファイバーの変わりに炭素ナノチューブを使用することで電気、電子、半導体パッケージ分野及び半導体トレイ製造の製造原価を節減し、経済的であり産業的に有用である。
【0051】
以下、本発明の理解を深めるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解できるよう提供されるだけであり、実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0052】
[実施例1乃至20];変性ポリフェニレンオキサイド(MPPO)樹脂組成物の製造
本発明の炭素ナノチューブを含有したMPPO樹脂組成物を図1及び2に示した組成及び含量で製造した。
【0053】
図1の組成物は半導体ベイキング温度が150℃である半導体トレイ用であり、図2の組成物は半導体ベイキング温度が130℃である半導体トレイ用である。
【0054】
組成物でPPO樹脂は粘度が0.4dl/gである製品(朝日製)を使用し、炭素ナノチューブは韓国のカーボンナノテック社製品(平均直径20nm、平均長さ10μm、純度90UT%以上、ASPECT RATIO 500以上)を使用した。
【0055】
ガラス繊維は韓国オーエンスコニン社で製造したCS03-165Aを使用し、ミネラルフィラーとしてはその成分組成がシリカ60〜75重量%及び酸化マグネシウム25〜40重量%の混合物で構成され、粒径が4〜6μmのもの(KC-1250、KOCH社)を使用した。
【0056】
酸化防止剤としてはタイワンシバ社(TWIWAN CIBA)で製造されたIRGAPOX 1010を、カップルリングの剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0057】
図1及び2の組成及び含量で混合した後、LD=46口径45パイの2軸圧出機で圧出温度は270〜310℃、RPMは280で溶融圧出し、ガラス繊維はサイドフィーディングして注入し、コンパウンディングを通じてペレット形状樹脂を製造した。
【0058】
製造したペレット形状の樹脂は100℃で4時間乾燥後、射出成形機を利用して射出温度を275〜295℃、金型温度を70℃にし、ASTM標準試片を製造した。
【0059】
[比較例1乃至5]
上記実施例と同じ方法で試片を製造するが、成分及び含量は図3に基づいて製造し、比較例1〜5組成物を製造した。
【0060】
[試験例:実施例及び比較例の物性及び抵抗試験]
図1乃至3に示すものと同様の組成及び含量で製造されたMPPO樹脂組成物を射出成形した後、25℃の恒温恒湿室で24時間以上放置した後、射出試片について下記と同様な方法によりそれぞれ物性を測定した。
(1)表面抵抗(SURFACE RESISTIVITY)
金属バスバー(METAL BUS BAR)が連結された電気抵抗計(OHM METER)を利用して単位面積当たりの表面抵抗を測定した。
(2)熱変形温度(HEAT DISTORTION TEMPERATURE)
ASTM D648により、サンプルに18.6kgf/cm2の荷重をかけ、周辺流体温度を2℃/minの速度で向上させた時、試験便の変形が0.254mmに到達したときの温度を測定した。
(3)屈曲弾性率(FLEXURAL MODULUS)及び屈曲強度(FLEXURAL STRENGTH)
ASTM D790によってクロスヘッドスピード(CROSS HEAD SPEED)を5mm/minの試験速度を測定した。
(4)引張強度(TENSIL STRENGTH)
ASTM D638に準じて温度23±2℃、相対湿度50%、大気圧の条件で5mm/minの引張速度で測定した。伸率は破断点での値を記録し、最小5回以上測定し、平均値を示した。
(5)衝撃強度(IMPACT STRENGTH)
ASTM D256に準じ、試片が破断される時のエネルギーを単位厚さで分けたものが衝撃強度に該当する。本発明では1/8インチの厚さを有する試片を利用し測定した。最小5回以上測定し平均値を示し、恒温でアイゾット切り欠き(IZOD NOTCH)方法で測定した。
(6)比重
ASTM D792に準じ、5gの粉末やペレットを既に測定された容積に入れ23℃で重さと容積の差で比重を計算した。
(7)表面状態
上記試片の表面状態を肉眼で観察し優秀、普通、劣勢の3等級で評価した。
(8)反り(WARPAGE)
上記試片の反り程度を肉眼で観察し優秀、普通、劣勢の3等級で評価した。
【0061】
上記の方法で測定した実施例1乃至20及び比較例1乃至5の試片の物性測定結果を図4乃至6に示した。
【0062】
上記結果を検討してみると、本発明の組成物(実施例1乃至20)は従来のカーボンファイバーを使用した場合(比較例4及び5)に比べて半導体トレイにより適合し優れた表面抵抗を示すことが分かる。また、本発明の組成物は従来には得られなかった優れたゲート抵抗値も共に得られるという点で重要な長所がある。
【0063】
図4乃至6から分かるように、カーボンナノチューブが全く含有されていない場合(比較例1)と、カーボンナノチューブの含量が全体組成物の0.5重量%に及ばない場合(実施例2及び3)には表面抵抗及びゲート抵抗値を全く得ることができず、カーボンファイバーを使用した場合(比較例4及び5)には表面抵抗は本発明の組成物と類似して得ることができたが、ゲート抵抗値が全く測定されなかった。すなわち、本発明の組成物は射出時(完製品トレイ)ゲート部位に抵抗値が同一に測定され、半導体用トレイとして使用するには適合することが分かる反面、比較例1乃至5はゲート部位が無抵抗と示されるため、ゲート部分で製品の不良が発生する問題がある等、半導体チップトレイとして使用するのに不適合であることが分かった。
【0064】
また、本発明の組成物は比較例に比べ優れた表面抵抗値を示すだけでなく、熱による変形が少ない特性、すなわち優れた耐熱性を示した。そして、本発明の組成物は寸法安定性を示し、強度も高く優れた外観を形成することを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1乃至10に係るMPPO樹脂組成物の組成及び含有量を示す表
【図2】実施例11乃至20に係るMPPO樹脂組成物の組成及び含有量を示す表
【図3】比較例1乃至5に係るMPPO樹脂組成物の組成及び含有量を示す表
【図4】実施例1乃至10に係るMPPO樹脂組成物の物性測定結果を示す表
【図5】実施例11乃至20に係るMPPO樹脂組成物の物性測定結果を示す表
【図6】比較例1乃至5に係るMPPO樹脂組成物の物性測定結果を示す表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンオキサイド20〜60重量%、ガラス繊維10〜30重量%、ミネラルフィラー10〜20重量%、炭素ナノチューブ0.5〜5重量%及びハイインパクトポリスチレン10〜30重量%を含有する、
変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンオキサイドは、粘度が0.3〜0.5dl/gである、
請求項1に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ガラス繊維は、アミノシランでコーティングされたガラス繊維またはビニールシランでコーティングされたガラス繊維である、
請求項1に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ガラス繊維は、アミノシランでコーティングされたガラス繊維である、
請求項3に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ミネラルフィラーは、シリカ60〜75重量%、酸化マグネシウム25〜40重量%で混合されたものであって、平均粒径は4〜6μmである、
請求項1に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項6】
前記炭素ナノチューブは、平均直径が15〜30nmであり、平均長さは5〜20μmある、
請求項1に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項7】
前記炭素ナノチューブは、多層ナノチューブである、
請求項6に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項8】
前記変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物にさらに添加剤を0.01〜10重量%含有した、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物で成型されたことを特徴とする半導体チップトレイ。
【請求項10】
請求項8の変性ポリフェニレンオキサイド樹脂組成物で成型されたことを特徴とする半導体チップトレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−231426(P2008−231426A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71911(P2008−71911)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(508085268)シニル ケミカル インダストリー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】