説明

変更したエフェクター機能を有する抗体

本発明は、変更したエフェクター機能を有する抗体、及び様々な疾患の治療にこれら抗体を使用する方法を提供する。さらに、本発明は、本発明の方法を実行するための組成物、キット及び製造品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年9月5日出願の米国特許仮出願番号60/500622号の優先権を主張し、その全体の開示が出典明記によりそのままここに組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は一般に分子生物学及びタンパク質技術の分野に関する。より詳細には、本発明は組換え生産された抗体、及びその作製方法と用途に関する。
【0003】
(発明の背景)
近年、様々な疾患及び疾病の診断及び治療薬として抗体の使用に期待が高まっている。診断、研究及び治療目的のための一般的な抗体の重要性は、天然の抗体にみられる配列及び構造から抗体配列及び構造を研究したり修飾したりするために非常に多くの努力が費やされていることからもわかる。そのような試みは文献に掲載されている。例として、米国特許第6,165,745号;同第5,854,027号;国際公報95/14779;国際公報99/25378;Chamowら, J. Immunol. (1994), 153:4268-4280;Merchantら, Nature Biotech. (1998), 16:677-681;Adlersberg, Ric. Clin. Lab. (1976), 6(3):191-205を参照のこと。抗体配列、例えばフレームワークの配列の修飾は一般的である。
しかしながら一般的に、文献では、特定の残基が抗体に関連する生物化学的及び機能的特徴を寄与する非常に重要な役割を担っており、したがってこの残基の修飾は多少なりとも注意すべきものであることが認識されている。そのような残基群は、鎖内及び/又は鎖間ジスルフィド結合を形成する保存的システイン残基からなるものがある。このシステイン残基の保存とそれらが果たす見かけの構造上の働きによって、その欠損又は修飾によって望ましくない結果をもたらしうることが示唆される。実際、このシステイン残基を修飾した場合、(i)このシステイン残基の機能の少なくとも一部が抗体整合性、機能及び活性の受容可能なレベルを保存するために残っている;又は(ii)完全長抗体よりもむしろ抗体断片内のみを修飾すると考えられる。例として、米国特許第5,892,019号;同第5,348,876号;同第5,648,237号;同第5,677,425号;国際公報92/22583;国際公報99/64460;Kimら, Mol. Immunol. (1995), 32(7):467-475を参照のこと。さらに、遺伝子レベルでヒンジを持たない又は欠損する場合、例えばBrekkeら(Nature (1993), 363:628-630)に記載のように、ジスルフィド結合を人工的に導入して、野生型ヒンジシステインの欠損により生じるジスルフィド結合の欠損を補う。
【0004】
天然に生じるモノクローナル抗体の配列及び構造の特定の修飾により、通常とは異なる機能及び生化学特徴を有する臨床的に有効なタンパク質が生じうる。Presta, L., Current Pharmaceutical Biotechnology (2002), 237-256。例えば、抗体の治療的態様がFcγR結合などのエフェクター機能を必要としない場合(したがって抗体依存性細胞障害(ADCC)及び/又は食作用)、又は治療的抗体のエフェクター機能が有害な場合、通常、このようなエフェクター機能を除去又は実質的に減弱させることが、望ましいと考えられる。好適な特徴を表す抗体が生じる好適な修飾を同定するために多くの試みが成されてきた。例として、Hsuら, Transplantation (1999), 27:68(4): 545-554;Carpenterら, J. Immunol. (2000), 165:6205-6213;Xuら, Cell. Immunol. (2000), 200:16-26;Van der Lubbeら, Arthritis Rheum. (1993), 36(10): 1375-1379;Konら, Lancet (1998), 352:1109-1113;Reddyら, J. Immunol. (2000), 164:1925-1933;Duncanら, Nature (1988), 332:563-564;Kleinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1981), 78(1): 524-528;Gillies & Wesolowski, Hum. Antibod. Hybridomas (1990), 1(1): 47-54;及びArmourら, Eur. J. Immunol. (1999), 29:2613-2624を参照。このような修飾により修飾された抗体の薬物動態学的特徴があまり損なわれていないことを確認する必要があることは、これらの試みをさらに複雑にする重要な要素である。例えば、多くの臨床設定において、実質的に野生型であるインビボ半減期又はクリアランスの保持は重要である。
【0005】
モノクローナル抗体は、4つの主なエフェクター機能を誘発する:ADCC、食作用、補体依存性細胞障害作用(CDC)および半減期/クリアランス速度。ADCCおよび食作用は、Fcγレセプター(FcγR)を有する細胞結合モノクローナル抗体の相互作用を介して、CDCは補体系(例えばC1q)を構成する一連の可溶性血液タンパク質と細胞結合mAbの相互作用によって、及び、半減期については新生児期Fcレセプター(FcRn)に対する遊離したモノクローナル抗体の結合によって媒介される。Presta, Current Pharmaceutical Biotechnology (2002), 237-256。モノクローナル抗体(例えばIgG)のFc領域の厳密なグリコシル化は、野生型エフェクター機能の寄与に重要であると思われる。例として、Jefferis & Lund, Immunol. Lett. (2002), 82(1-2): 57-65;Lisowska, Cell. Mol. Life Sci. (2002), 59(3): 445-455;Radaev & Sun, Mol. Immunol. (2002), 38(14): 1073-1083;Mimuraら, Adv. Exp. Med. Biol. (2001), 495:49-53;Ruddら, Science (2001), 291(5512): 2370-2376;Jefferisら, Immunol. Rev. (1998), 163:59-76;Wright & Morrison, Trends Biotechnol. (1997), 15(1): 26-32;Jefferis & Lund, Chem. Immunol. (1997), 65:111-128を参照。
広範囲にわたる努力にもかかわらず、所望の生物学的効果を示し、さらに望ましくないエフェクター機能関連の減弱した副作用を示す抗体を用いた改良型の治療方法に対して重大で深刻な必要性が求められる。本願明細書において記載される発明は、この必要性について述べ、他の利点を提供するものである。
本明細書中に挙げる特許出願及び文献を含むすべての参考文献は、出典明記によりその全体が組み込まれる。
【0006】
(本発明の開示)
本発明は、真核生物宿主細胞で産生され、ジスルフィド結合の減弱した形成能を表す免疫グロブリン、好ましくは抗体を用いるための方法、組成物、キット及び製造品を提供するものであり、該免疫グロブリンが好ましくは変異形重鎖、特に重鎖内に変異形ヒンジ領域を含むものである。本発明の免疫グロブリン/抗体は、野生型Fc領域グリコシル化特性を含み、更に野生型のエフェクター機能のサブセットのみを有する。
変異形ヒンジ領域を含んでなる真核生物産生抗体はインビボで疾患の治療的寛解/改善をもたらしうることが明らかにされた。これら抗体は、通常では重鎖間ジスルフィド結合を形成しうるシステインが結合形成することができなくなっている変異形ヒンジ領域を含む。驚くべきことに、抗体の特徴を分析すると、野生型ヒンジ領域相対物を含んでなる抗体と比較して産生の質に差異がないことが示された。更に、これら抗体は様々なFcγレセプター(例えばFcγRIII)への結合能が顕著に減弱しているか全くなかった。これらレセプターは抗体依存性細胞障害(ADCC)などのエフェクター機能をもたらすのに重要な役割を果たしていると考えられる。抗体のADCC活性は顕著に減弱しているようである。都合がよいことに、FcRnへの結合は影響を受けないので、抗体はその野生型相対物と比較して類似/匹敵するクリアランスを示し、その上インビボ治療用途において野生型相対物と実質的に同様である。このことから、ヒンジ領域内の配列の単純な変化により必要とする治療的機能を有するが不必要あるいは望ましくない完全長抗体特異的特徴を欠いている(すなわち、通常は野生型Fc領域(一般的に野生型インビボ半減期の保持に必要)を含んでなる完全長抗体に関連するADCCなどの特定のエフェクター機能が不要あるいは有害な場合)治療用抗体を生じさせる、非常に有益な疾患の治療方法が示される。更に、抗体は一般的に回収率がさほど低下しない宿主細胞内で産生されうることは、安定性、適当な折りたたみ及び集積などの重要な要素がヒンジ領域内の変異(及び重鎖間のジスルフィド結合の欠落)によって負の方向に影響されないことを示唆している。本明細書中に示す抗体は、不要ないし望ましくない免疫系エフェクター機能(例えばADCC及び/又はCDC)を伴うことなく治療的抗体がその治療的機能を働かせる一方で、実質的に野生型と同様のインビボ半減期/クリアランスレベルを保持しているという臨床応用を目的とする。
【0007】
一態様では、本発明の抗体は分子間ジスルフィド結合(例えば2つの重鎖間のジスルフィド結合)を欠損している。ある実施態様では、前記の重鎖間のジスルフィド結合はFc領域間である。他の実施態様では、本発明の抗体は分子間ジスルフィド結合ができない又は関与する変異形重鎖ヒンジ領域を含んでなる。一実施態様では、前記変異形ヒンジ領域は、分子間(例えば重鎖間)のジスルフィド結合を形成することができる野生型ヒンジ領域内に通常存在する少なくとも1のシステイン、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、又は全部以下の任意の整数のシステインを欠損している。一般的に、本発明の抗体は、野生型相対物抗体のエフェクター機能の全部ではない少なくとも一を実質的に欠損している本発明の抗体を除き、野生型相対物と実質的に同様な治療的効果に関連する生物学的(限定するものでなく例として抗原結合能)及び/又は物理化学的特徴を保持する。例えば、エフェクター機能には、Fc領域に関連する当業者に周知のもの、例えばADCC、食作用、CDC及び半減期/クリアランスが含まれる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、ADCC活性を減弱しているか、実質的あるいは完全に欠損しているが、その野生型相対物と実質的に同様なFcRn結合を含んでいる。例えば、本発明の抗体は、ADCC活性が類似のアッセイ条件下で評価される場合、野生型相対物抗体によって表される細胞障害性レベルの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下の細胞障害性を示すであろう。そのアッセイは当本明細書中に示すものを含む、業者に周知な任意のものである。いくつかの実施態様では、本発明の抗体のFcγRへの結合は、野生型と比較して減弱している。一実施態様では、FcγIaレセプターへの結合は野生型相対物抗体と比較して減弱している。例えば、本発明の抗体のEC50値は、結合が同様なアッセイ条件下で評価される場合、野生型相対物抗体のEC50値の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍であり得る。いくつかの実施態様では、本発明の抗体のFcγIaレセプター結合は減弱しているが、完全に消失してはいない。一実施態様では、FcγIIa及び/又はFcγIIbレセプターへの結合は野生型相対物抗体と比較して減弱している。例えば、本発明の抗体のEC50値は、結合が同様なアッセイ条件下で評価される場合、野生型相対物抗体のEC50値の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍であり得る。一実施態様では、FcγIIIへの結合は野生型相対物抗体と比較して減弱している。例えば、本発明の抗体のEC50値は、結合が同様なアッセイ条件下で評価される場合、野生型相対物抗体のEC50値の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍であり得る。一実施態様では、FcγIa、FcγIIa、FcγIIb及びFcγIIIの少なくとも一への結合は野生型相対物抗体と比較して減弱している。例えば、本発明の抗体のEC50値は、結合が同様なアッセイ条件下で評価される場合、野生型相対物抗体のEC50値の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍であり得る。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、CDC活性を減弱しているか実質的又は完全に欠損しているが、野生型相対物と比較して実質的に同様なFcRn結合を含んでいる。例えば、本発明の抗体は、CDC活性が類似のアッセイ条件下で評価される場合、本発明の抗体のCDC活性レベルは、野生型相対物抗体によって表されるレベルの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下のレベルであろう。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、補体タンパク、例えばC1qへの結合が減弱しているか実質的又は完全に欠損しているが、野生型相対物と比較して実質的に同様なFcRn結合を含む。例えば、本発明の、補体タンパク質(例えばC1q)への結合についての抗体のEC50値は、結合が同様なアッセイ条件下で評価される場合、野生型相対物抗体のEC50値の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍であり得る。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、ADCC及びCDC活性を減弱しているか実質的又は完全に欠損しているが、野生型相対物と比較して実質的に同様なFcRn結合を含んでいる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、ADCC活性及び補体タンパク(例えばC1q)への結合が減弱しているか実質的又は完全に欠損しているが、野生型相対物と比較して実質的に同様なFcRn結合を含む。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、野生型相対物抗体と実質的に同様な又は同一のFcグリコシル化特性を含む。
【0008】
いくつかの実施態様では、本発明は、免疫グロブリン重鎖の変異形ヒンジ領域を含んでなる抗体を提供するものであり、該変異形ヒンジ領域はジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を欠損している(すなわち含まない又は含有しない、あるいは有しない)ものである。いくつかの実施態様では、前記ジスルフィド結合は分子間(好ましくは重鎖間)である。2つ以上のシステイン残基がジスルフィド結合ができないようになっている抗体の実施態様の中には、該システインのすべてが正常に分子間(好ましくは重鎖間)ジスルフィド結合ができるものがある。2つ以上のシステイン残基がジスルフィド結合ができないようになっている抗体の実施態様の中には、該システインの少なくとも一が正常に分子間(例えば重鎖間)ジスルフィド結合ができるものがある。いくつかの実施態様では、前記分子間ジスルフィド結合は2つの免疫グロブリン重鎖のシステイン間である。
本発明の抗体及び方法では、当業者に公知の多くの方法及び技術によってシステイン残基をジスルフィド結合できないようにすることができる。例えば、正常にジスルフィド結合形成することができるヒンジ領域システインを欠損させてもよい。他の例では、正常にジスルフィド結合形成することができるヒンジ領域のシステイン残基を他のアミノ酸、例えばセリンに置換してもよい。いくつかの実施態様では、ジスルフィド結合ができないようにヒンジ領域システイン残基を修飾してもよい。
【0009】
本発明の抗体は任意の多様な形であり得る。例えば、一実施態様では、本発明の抗体は、好ましくは重鎖及び軽鎖を含んでなる完全長抗体である。一態様では、本発明はヒト化した抗体を提供する。他の態様では、本発明はヒト抗体を提供する。他の態様では、本発明はキメラ抗体を提供する。また、本発明の抗体は抗体断片、例えばFcまたはFc融合ポリペプチドであってもよい。Fc融合ポリペプチドは、典型的に異種性ポリペプチド配列に融合したFc配列(またはその断片)(例えば、免疫グロブリンFc配列に融合した抗原結合ドメインやレセプター細胞外ドメイン(ECD))を含む。例えば、一実施態様では、Fc融合ポリペプチドは、flt、flkなどを含むVEGFレセプターであるVEGF結合ドメインを含んでなる。他の例では、Fc融合ポリペプチドはCD20結合ドメインを含んでなる。ある例では、Fc融合ポリペプチドは組織因子結合ドメインを含んでなる。ある例では、Fc融合ポリペプチドはHER2又はEGFレセプター結合ドメインを含んでなる。ある例では、Fc融合ポリペプチドは、肝細胞成長因子レセプター結合ドメインを含んでなる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、重鎖定常ドメイン配列および軽鎖定常ドメイン配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、分子間ジスルフィド結合ができるFc領域(例えばヒンジ領域)に付加、置換あるいは修飾したアミノ酸を含有しない。通常、本発明の抗体のFc部分(またはヒンジ領域)は重鎖間ジスルフィド結合ができない。一実施態様では、本発明の抗体は、重鎖間の二量体化又は多量体化を可能にするかまたは亢進する修飾(限定するものではなく例としてロイシンジッパーなどの二量体化配列を形成するような一以上のアミノ酸)を含んではいない。
【0010】
本発明の抗体は、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)のヒンジ領域をを含んでなる任意のアイソタイプのものであり得る。いくつかの実施態様では、本発明の抗体のヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される免疫グロブリンの何れかである。
本発明の抗体は、様々な設定で様々な用途を提供する。例えば、一態様において本発明の抗体は治療用抗体である。本発明の抗体は、任意の多様なメカニズムによってその治療的効果を及ぼしうる。例えば、本発明の抗体はアゴニスト抗体であってもよい。他の例では、本発明の抗体は拮抗用抗体であってもよい。さらに他の例では、本発明の抗体は遮断用抗体であってもよい。他の例では、本発明の抗体は中和用抗体である。
一般的に及び好ましくは、本発明の抗体及びその野生型相対物抗体は、特定の生物学的/生理的特徴において実質的に同程度であるが、他、特にエフェクター機能に関してはそうでない。一般的に、本発明の抗体およびその野生型相対物は、実質的に同程度の抗原結合及び/又は疾患と戦う能力を備えている。いくつかの実施態様では、本発明の抗体およびその野生型相対物は、実質的に同程度のFcRn結合能力を有する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体およびその野生型相対物は、実質的に同程度の薬物動態学的及び/又は薬力学的特徴/値を有する。
【0011】
任意の多くの宿主細胞が本発明の方法で利用可能である。このような細胞は、当分野に周知である(そのいくつかは本願明細書に記載する)かまたは当分野に公知の通常の技術を用いて、経験的に決定することができる。例えば、宿主細胞は一般的に真核生物、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
本発明の抗体は、一般にその野生型相対物の抗原結合能を保持する。したがって、本発明の抗体は、抗原に、好ましくは特異的に結合できる。このような抗原には、例えば、腫瘍抗原、細胞生存調節性因子、細胞増殖調節性因子、組織発達又は分化に関連する分子(例えば、機能的な関与が知られているか予測される分子)、細胞表面分子、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に伴う分子、脈管形成に伴う分子および血管新生に関与する分子(例えば、機能的な関与が知られているか予測される分子)が含まれる。本発明の抗体が結合できる抗原は、上記の種類のうちの1のサブセットのメンバーであってもよく、前記種類の他のサブセットは異なる特徴(対象とする抗原に関して)を有する他の分子/抗原を包含する。また、対象とする抗原は2以上の種類に帰属するとも考えうる。例えば、ある実施態様では、本発明は、細胞表面分子でない腫瘍抗原に、好ましくは特異的に結合する抗体を提供する。一実施態様では、腫瘍抗原は、例えばレセプターポリペプチドなどの細胞表面分子である。他の例では、いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、クラスター分化因子でない腫瘍抗原に、好ましくは特異的に結合する。他の例では、本発明の抗体は、いくつかの実施態様において例えばCD3又はCD4でないクラスター分化因子に、好ましくは特異的に結合することができる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は抗VEGF抗体である。他の例では、本発明の抗体は抗組織因子抗体である。他の例では、本発明の抗体は抗CD20抗体である。他の例では、本発明の抗体は抗HER2抗体である。他の例では、本発明の抗体は抗EGFR抗体である。他の例では、本発明の抗体は抗肝細胞増殖因子レセプター抗体である。
【0012】
典型的に、本発明の抗体はグリコシル化される。例えば、本発明の抗体は、例えばCHOなどの哺乳動物細胞の真核生物宿主細胞内で正常な発現の結果としてグリコシル化されてもよい。一実施態様では、本発明の抗体のグリコシル化パターンは、MALDI-TOF-MS分析によって測定されるように(例えばN-グリコシダーゼFなどの好適な酵素を用いて、オリゴ糖の放出に先行してもよい)、その野生型相対物のグリコシル化パターンと実質的に同程度であるか同一である。一実施態様では、本発明の抗体はFc領域内に2つのN-連結オリゴ糖を含有する。
本発明の抗体は、異種性成分とコンジュゲートしてもよい。抗体へのコンジュゲートが抗体の所望の機能及び/又は特徴を実質的に低減しない限り、何れの異種性成分でも適する。例えば、いくつかの実施態様では、免疫コンジュゲートは細胞障害性剤である異種性成分を具備する。いくつかの実施態様では、前記細胞障害性剤は、放射性同位体、化学療法剤および毒素からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、前記毒素は、カリケアマイシン(calichemicin)、メイタンシンおよびトリコセン(trichothene)からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、免疫コンジュゲートは、検出可能なマーカーである異種性成分を具備する。いくつかの実施態様では、前記検出可能なマーカーは、放射性同位体、リガンド-レセプター対のメンバー、酵素-基質対のメンバーおよび蛍光共鳴エネルギー転移対のメンバーからなる群から選択される。
【0013】
一態様では、本発明は、本発明の抗体と担体(例えば薬学的に受容可能な担体)とを具備する組成物を提供する。一実施態様では、抗体は異種性成分にコンジュゲートされる。
他の態様において、本発明は容器と、そこに含有される組成物とを具備する製造品を提供するものであり、該組成物は本発明の抗体を含んでなる。いくつかの実施態様では、製造品は、前記組成物の使用についての指示書を更に具備する。一実施態様では、抗体は治療上の有効量で提供される。
更なる他の態様では、本発明は本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
一態様では、本発明は、本発明の抗体を発現するための組み換えベクターを提供する。
一態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又は組み換えベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。好ましくは、宿主細胞は真核生物細胞、例えばCHOなどの哺乳動物細胞である。
【0014】
一態様では、本発明は、疾患を治療する又は進行を遅らせるのに効果的な本発明の抗体を疾患を有する対象体に投与することを含む、疾患の治療又は進行遅延方法を提供するものであり、該抗体は重鎖間のジスルフィド結合が実質的に減弱するか排除するように修飾されたものである。一般的及び好ましくは、抗体は哺乳動物などの真核生物宿主細胞内で産生される。一実施態様では、疾患が腫瘍又は癌である。一実施態様では、疾患が、例えば、慢性関節リウマチ、免疫性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患などの免疫系の疾病である。他の実施態様では、疾患は、異常な脈管化(例えば血管新生)と関連している。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管新生関連疾患の治療的及び/又は予防的治療のための医薬の調製における本発明の抗体の使用を提供する。
【0015】
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管新生関連疾患の治療的及び/又は予防的治療のための医薬の調製における本発明の核酸の使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管新生関連疾患の治療的及び/又は予防的治療のための医薬の調製における本発明の発現ベクターの使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管新生関連疾患の治療的及び/又は予防的治療のための医薬の調製における本発明の宿主細胞の使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管新生関連疾患の治療的及び/又は予防的治療のための医薬の調製における本発明の製造品の使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管新生関連疾患の治療的及び/又は予防的治療のための医薬の調製における本発明のキットの使用を提供する。
【0016】
一態様では、本発明は、細胞増殖の阻害方法であり、有効量の本発明の抗体に細胞又は組織を接触させることにより細胞増殖を阻害することを含む方法を提供する。
一態様では、本発明は、病状の治療方法であり、有効量の本発明の抗体を対象体に投与することにより病状を治療することを含む方法を提供する。
一態様では、本発明は、細胞成長の阻害方法であり、本発明の抗体に細胞を接触させることにより該細胞の成長を阻害することを含む方法を提供する。
一態様では、本発明は、癌性腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処理する方法であり、有効量の本発明の抗体を癌性腫瘍を有する哺乳動物に投与することにより効果的に該哺乳動物を治療することを含む方法を提供する。
一態様では、本発明は、細胞増殖性疾患を治療又は予防する方法であり、有効量の本発明の抗体を対象体に投与することによって効果的に該細胞増殖性疾患を治療するか予防することを含む方法を提供する。一実施態様では、前記増殖性疾患は癌である。
【0017】
一態様では、本発明は、細胞の成長を阻害する方法であり、ここでいう細胞の成長が少なくとも部分的に標的分子の成長亢進作用に依存しているものであり、該標的分子の生物学的機能を(例えば該標的分子への結合によって)阻害する有効量の本発明の抗体に該細胞を接触させることによって該細胞の成長を阻害することを含む方法を提供する。
腫瘍の成長が少なくとも部分的に標的分子の成長亢進作用に依存しており、該標的分子の生物学的機能を(例えば該標的分子への結合によって)阻害する有効量の本発明の抗体に細胞を接触させることによって該腫瘍を効果的に治療することを含む、哺乳動物の腫瘍の治療的処置方法である。
本発明の方法は、任意の適切な病理学的状態、例えば細胞性シグナル伝達経路の調節不全に関連する細胞及び/又は組織に影響を及ぼす/調整するために用いることができる。一実施態様では、本発明の方法で標的とする細胞は癌細胞である。例えば、癌細胞は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、乳頭癌腫細胞(例えば、甲状腺の)、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、頸部癌細胞、中枢神経系癌細胞、骨原性肉種細胞、腎臓癌腫細胞、肝細胞性癌腫細胞、膀胱癌細胞、胃癌腫細胞、頭頸部扁平上皮癌細胞、前立腺癌細胞、リンパ腫細胞、黒色腫細胞及び白血病細胞からなる群から選択されるものでありうる。一実施態様では、本発明の方法で標的とする細胞は過剰増殖性及び/又は過形成性細胞である。一実施態様では、本発明の方法で標的とする細胞は形成異常性細胞である。さらに他の実施態様では、本発明の方法で標的とする細胞は転移性細胞である。
【0018】
本発明の方法は、付加的処置工程を更に含みうる。例えば、一実施態様では、方法は更に、標的とする細胞及び/又は組織(例えば、癌細胞)が放射線治療又は化学療法剤にさらされる工程を含む。
本発明の方法の一実施態様では、標的とする細胞(例えば癌細胞)は、本発明の抗体によって阻害される(例えば結合した)分子の量及び/又は活性が同じ組織起源の正常細胞と比較して亢進されるものである。一実施態様では、本発明の方法によって標的細胞の死が引き起こされる。例えば、本発明のアンタゴニスト抗体との接触によって細胞が細胞性シグナル伝達を起こせなくなり、それによって例えば細胞死が引き起こされる。
本発明の方法の一実施態様では、治療有効性は、治療用抗体のエフェクター機能活性に依存しない。一実施態様では、治療有効性は、実質的にエフェクター機能活性を欠いている治療用抗体を用いることにより改良される。一実施態様では、本発明の方法は、治療用抗体に関与するエフェクター機能活性の存在が臨床的/治療的に有害であるか望ましくないと考えられる場合の病理学的症状を治療することに関連する。
【0019】
(本発明の実施形態)
本発明は、分子間(重鎖間)ジスルフィド結合を形成するための重鎖の能力を減弱させるかまたは排除した変化を含んでなる免疫グロブリン、好ましくは抗体を使用するための方法、組成物、キットおよび製造品を提供する。好ましくは、これらの免疫グロブリンは、システイン残基がジスルフィド結合を形成することができないように、少なくとも一つのジスルフィド形成システイン残基の変化を含んでなる。一態様では、前記システインは重鎖のヒンジ領域の中である(したがって、このようなヒンジ領域は、本明細書において「変異形ヒンジ領域」と称する)。一般に及び好ましくは、重鎖間ジスルフィド結合が実質的に減弱するかまたは排除されるように、免疫グロブリンのヒンジ領域を突然変異させる。いくつかの態様では、このような免疫グロブリンは、分子間(重鎖間)ジスルフィド結合を形成することが正常にできる重鎖システイン残基の完全な能力範囲を欠いている。一般に及び好ましくは、変更される(すなわちジスルフィド結合を形成することができなくなる)システイン残基によって形成されるジスルフィド結合は、抗体内にない場合、免疫グロブリンの治療的有用性(例えば腫瘍抗原ターゲティング/特異性、効率、インビボ安定性など)を実質的に損なわないように一つである。通常、ジスルフィド結合の形成ができなくなるシステイン残基は、重鎖のヒンジ領域のシステインである。当分野の教示に反して、本明細書では、少なくとも一のシステイン残基がジスルフィド結合を形成できない変異形ヒンジ領域を含んでなる免疫グロブリンが、野生型免疫グロブリンと比較して基本的には同じ、ある場合には改善した物理化学的及び/又は治療的能力を有していることを示す。本発明の方法で用いられる抗体は、システインによって通常形成されるジスルフィド結合(特にヒンジシステインによって形成されるもの)が不完全な能力範囲にあるか、完全に欠損しているものを含んでなる。本発明の方法、組成物、キットおよび製造品の詳細は本願明細書で提供する。
【0020】
典型的技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を使用して行う。このような技術は、例えば以下のような文献に完全に明記されている。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版(Sambrookら, 1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait, 編, 1984);「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney, 編, 1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press, Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubelら, 編., 1987, and periodic updates);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」, (Mullisら, 編, 1994);「A Practical Guide to Molecular Cloning」(Perbal Bernard V., 1988)。
【0021】
定義
ここで使用される「ベクター」という用語は、それが結合している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合されうる円形の二重鎖DNAループを意味する。他の型のベクターはファージベクターである。他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへ結合させうる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製する。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を指令し得る。このようなベクターはここでは「組換え発現ベクター」(又は単に「組換えベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合が多い。
【0022】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識との結合により、さらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0023】
ここで使用される場合、「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
「分泌シグナル配列」又は「シグナル配列」は、対象の新たに合成されたタンパク質を細胞膜、通常は原核生物の内膜又は内膜と外膜の両方を通過するようにするために使用することができる短いシグナルペプチドをコードする核酸配列を意味する。よって、免疫グロブリン軽鎖又は重鎖ポリペプチドのような対象のタンパク質は原核生物宿主細胞の細胞膜周辺中又は培養培地中に分泌される。分泌シグナル配列によってコードされるシグナルペプチドは宿主細胞に内因性でありうるか、又はそれらは外因性であり得、発現されるポリペプチドに対して未変性のシグナルペプチドを含む。分泌シグナル配列は典型的には発現するポリペプチドのアミノ末端部分にあり、典型的には生合成と細胞質からのポリペプチドの分泌の間に酵素的に除去される。よって、シグナルペプチドは通常は成熟タンパク質産物中には存在しない。
【0024】
ここで使用されるところの「宿主細胞」(又は「組換体宿主細胞」)という用語は、遺伝子的に改変されたか、又は外因性ポリヌクレオチド、例えば組換えプラスミド又はベクターの導入によって遺伝子的に改変され得る細胞を意味するものである。このような用語は特定の対象細胞だけではなく、そのような細胞の子孫をも意味するものと理解されなければならない。突然変異か又は環境の影響の何れかによりある種の修飾が、次の世代で生じるため、実際は、このような子孫は親細胞と同一ではない可能性があるが、やはりここで使用されるところの「宿主細胞」という用語の範囲に含まれる。
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は互換性をもって広義な意味で使われ、モノクローナル抗体(例えば完全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多価抗体および多特異性抗体(例えば所望の生物学的活性を示す限りの二重特異性抗体)が含まれる。本発明の抗体及び免疫グロブリンは、ジスルフィド結合の形成に負の方向に影響を及ぼすヒンジ領域内の突然変異を含んでなる。一態様では、本発明の抗体及び免疫グロブリンは少なくとも一つのシステイン残基がジスルフィド結合を形成することができなくなっているヒンジ領域を含んでなり、ジスルフィド結合は好ましくは分子間、好ましくは2つの重鎖間である。ヒンジシステインは、本明細書中に記載する当分野に公知の任意の様々な好適な方法によってジスルフィド結合形成をできなくすることができ、その方法には限定するものではないが、システイン残基の欠損、又はシステインの他のアミノ酸への置換が含まれる。
【0025】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主たるクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgA1、IgA2等々に分けられる。免疫グロブリンの異なったクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元構造はよく知られており、一般に例えば、Abbas等, Cellular and Mol. Immunology, 4版 (2000)に記載されている。抗体は、一又は他のタンパク質又はペプチドと抗体の共有又は非共有結合により形成されたより大きな融合分子の一部であってもよい。
【0026】
用語「完全長抗体」、「無傷の抗体」及び「完全抗体」は、ここで互換性をもって使用され、実質的に無傷の形態の抗体を意図する(例えば、重鎖のFc部分の実質的にすべて又はすべてを欠損しているFabなどの抗体断片と対照的に)。この用語は、特にFc領域を含む重鎖をもった抗体を意味する。本発明の抗体変異形は完全長抗体でありうる。完全長抗体は、例えばヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものであり得る。
「生物学的に活性な」又は「機能的」免疫グロブリンは構造的、調節、生化学的又は生物学的事象においてその天然の活性の一又は複数を作用させ得るものである。例えば、生物学的抗体は抗原に特異的に結合する能力を持ち得、その結合はシグナル伝達又は酵素活性などの細胞又は分子の事象を誘発又は改変し得る。生物学的に活性な抗体はまたレセプターのリガンド活性化を阻止し又はアゴニスト抗体として作用し得る。その天然の活性の一又は複数を作用させる抗体の能力は、正しいフォールディング(折りたたみ)及びポリペプチド鎖の組立てを含む幾つかの要因に依存する。好ましくは、「生物学的に活性な」抗体は、インビボ又はエクスビボでの治療的効果、例えば疾患の寛解又は治療を引き起こす生物学的/生理学的な応答を起こすために主に用いることを意図する抗体である。したがって、好ましくは例えば「生物学的に活性な」抗体は、比較対照として用いる参照又は対照抗体として単独に産生される抗体は包含しない。また、「生物学的に活性な」又は「機能的な」本発明の抗体は、その野生型の形態にある機能/能力のすべてを保持する必要はない(例えば本明細書中に広く記載されるように、特定のエフェクター機能が減弱又は排除されてもよい)。
【0027】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原に対している。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
【0028】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。一般的に、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また、以下の概説文献及びここに挙げる引用文献も参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0029】
「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、及び/又は本明細書中に開示したヒト抗体をつくるためのいずれかの技術を使用して、つくられたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のCDRに1つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks他は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994); Schier他、Gene, 169:147-155 (1995); Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995); Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995); およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0030】
「Fc領域」という用語は、無傷の抗体のパパイン消化により生成される免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は天然配列のFc領域または変異体Fc領域でありうる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界はまちまちであるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、約Cys226または約Pro230に位置するアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで延びていると定義される。免疫グロブリンのFc領域は、通常、2つの定常ドメイン、1つのCH2ドメインおよび1つのCH3ドメインを含み、場合によってはCH4ドメインを含む。ここでの「Fc領域」はFc領域の2つのポリペプチド鎖の一つを意味する。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害(抗体依存性細胞性障害)」及び「ADCC」とは、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的な細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識して、続く標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性応答を意味する。
【0031】
「Fcレセプター」及び「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。例えば、FcRは天然配列ヒトFcRである。一般的には、FcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。他のイソ型(isotype)の免疫グロブリンもまた特定のFcRに結合しうる(例としてJanewayら, Immuno Biology: the immune system in health and disease, (Elsevier Science Ltd., NY) (第4版, 1999)を参照のこと)。活性レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン依存性活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン依存性阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRに関しては、 Ravetch及びKinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-492 (1991); Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRはここでの「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプターFcRnも含まれる(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) Kim等, J. Immunol.24:249 (1994))。
【0032】
ここで用いる「ヒンジ領域」及びその異なる言い回しは、例えば、Janewayら, Immuno Biology: the immune system in health and disease, (Elsevier Science Ltd., NY) (第4版, 1999); Bloomら, Protein Science (1997), 6:407-415; Humphreysら, J. Immunol. Methods (1997), 209:193-202に示すように、当分野に公知のものを含む。
ここで用いられるように、「改変された」又は「変異形」重鎖は通常、ジスルフィド結合能力が減弱した、例えば少なくとも一のシステイン残基がジスルフィド結合形成をすることができなくなった重鎖を指す。ここで記載されるように、概して、本発明の抗体は実質的に重鎖間ジスルフィド結合を欠いている。通常、正常に重鎖間ジスルフィド結合形成をするヒンジ領域内のシステインの少なくとも一及びすべてまでのいくつかを改変する。
ここで用いる「野生型相対物」なる句又はその変形した言い回しは、例えば一以上のヒンジシステインがジスルフィド結合することができなくなるかどうかを評価することによって、ジスルフィド結合形成が可能であるという意味において、主に又は単にヒンジ領域が本発明の抗体と異なる抗体を意味する。
【0033】
ここで用いる「変異形免疫グロブリン又は抗体の活性量(例えばADCC、レセプター結合、CDC、補体(complement)結合など)がその野生型相対物の同じ活性の量よりも少ない(又は比較して実質的に減弱している)」なる句又はその異なる言い回しは、本発明の変異形免疫グロブリン又は抗体の検出可能な活性の量と野生型の形態によって表される活性の量が当業者にも明らかに統計学上顕著に異なることを意味する。当業者には理解されるであろうが、活性の量は、本発明の免疫グロブリン又は抗体とその野生型相対物との比較ができる限りにおいて、量的又は質的に測定してもよい。活性は、例えば本明細書中に記載するものを含む当分野に公知の任意のアッセイ又は技術に従って測定又は検出することができる。本発明の免疫グロブリン又は抗体とその野生型相対物の活性量は平行して又は別々の実施で測定することができる。
【0034】
ここで用いる「実質的に類似」、「実質的に同一」、「実質的に同じ」及びその異なる言い回しは、当業者が2つの数値(典型的には本発明の抗体に関与するものとその野生型相対物に関与するその他)の差異に、該値によって測定される生物学的、物理学的又は量的な性質上わずかに又は全く生物学的重要性がないと認められるほど、2つの数値が十分に高く類似していることを意味する。前記2つの値間の差異は、野生型相対物の値の好ましくは約50%以下、好ましくは約40%以下、好ましくは約30%以下、好ましくは約20%以下、好ましくは約10%以下である。
【0035】
「補体依存性細胞障害」及び「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は、補体系の第一補体(C1q)が同系の抗原と複合体化した分子(例えば抗体)に結合することによって開始する。
一般的に「結合親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原又はFcRnレセプター)との間の非共有結合的な相互作用の総合的な強度を意味する。一般的に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(Kd)として表される。親和性は、本明細書中に記載のものを含む当業者に公知の共通した方法によって測定することができる。低親和性抗体は抗原(又はFcRnレセプター)に弱く結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は抗原(又はFcRnレセプター)により密接により長く結合したままとなる。
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、及び毒素、例えば細菌、糸状菌、植物又は動物起源のその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は酵素的に活性な毒素を含むように意図されている。
【0036】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);βラパチョーネ;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHCIリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(gemcitabine) (GEMZAR(登録商標))、テガフル(tegafur) (UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(capecitabine) (XELODA(登録商標))、エポチロン(epothilone)、及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)、及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;上述したもののいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体:並びに上記のうち2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロン併用療法の略称であるCHOP、及び5-FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組み合わせた治療法の略称であるFOLFOXが含まれる。
【0037】
またこの定義に含まれるものには、癌の成長を助けるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働き、多くの場合全身処置の形態で使用される抗ホルモン剤がある。それらはそれ自体がホルモンであってもよい。それらは例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方調節剤(ERD);エストロゲンレセプターアンタゴニスト、例えばフルベストラント(fulvestrant) (FASLODEX(登録商標));卵巣を抑止又は停止させる機能がある作用剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば酢酸リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);その他抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド;並びに副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))である。加えて、このような化学療法剤の定義には、クロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(SKELID(登録商標))、又はリセドロン酸(ACTONEL(登録商標))、並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Raf、及びH-Ras、及び上皮成長因子レセプター(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));ラパチニブ(lapatinib ditosylate)(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);セレコシブ(celecoxib)などのCOX-2阻害剤(CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾル-1-イル)ベンゼンスルホンアミド;及び上記のもののいずれかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0038】
「遮断(ブロック)」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害又は減退させるものである。そのような遮断は、任意の方法、例えばレセプターに対するリガンド結合、レセプター複合体形成、受容体複合体のチロシンキナーゼレセプターのチロシンキナーゼ活性及び/又はレセプターの、又は、レセプターによるチロシンキナーゼ残基のリン酸化を妨げることによって起こりうる。例えば、VEGFアンタゴニスト抗体はVEGFに結合してVEGFの活性を阻害し、血管内皮細胞増殖を引き起こす。好ましい遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。
「アゴニスト抗体」はレセプターなどの抗原に結合して活性化する抗体である。一般的に、アゴニスト抗体のレセプター活性化能は、レセプターの天然のアゴニストリガンドと少なくとも質的に同等であろう(及び基本的に量的に同等)。
【0039】
その野生型相対物抗体「と基本的に同等の効率で抗原に結合する」本発明の抗体は、例えば、結合親和性がKd、Ka及び/又はEC50値として表される場合、野生型相対物抗体の結合親和性及び/又は結合力の約10倍、好ましくは約5倍、及びより好ましくは約2倍の範囲内である親和性及び/又は結合力を有して抗原に結合することができるものである。
ここで用いる「腫瘍抗原」には、腫瘍細胞の腫瘍原性特定に関与することが知られているか又は考えられている腫瘍細胞上に発現する(又は腫瘍細胞の発達に関与する)任意の分子を含む、当業者に公知のものを含む。多くの腫瘍抗原が当分野で公知である。また、分子が腫瘍抗原であるかどうかも、例えばクローン原性アッセイ、形質転換アッセイ、インビトロ又はインビボ腫瘍形成アッセイ、ゲル移動アッセイ、遺伝子ノックアウト分析などの当業者に公知の技術及びアッセイに従って測定することができる。
【0040】
「疾病」又は「疾患」は、疾病又は疾患に罹患している又はそれが疑われる対象体に本発明の免疫グロブリン又は抗体を投与することによって、又は該免疫グロブリン又は抗体で対象体を処置することによって利益を得る任意の症状である。これには、問題とする疾患に哺乳動物がかかりやすくなる病理学的症状を含む慢性及び急性の疾病又は疾患を含む。限定的なものではなく、ここで治療する疾患の例には、悪性及び良性の腫瘍;非白血病性及びリンパ球性悪性腫瘍;神経系、神経膠系、星状性、視床下部系及び他の腺性、マクロファージ性、上皮性、間質性、胚盤胞性疾患;及び炎症性、血管形成性、免疫性疾患が含まれる。
【0041】
ここで言う「自己免疫性疾患」は個体自身の組織に由来する又はその組織に対して生じる非悪性疾患又は疾病である。ここでは、自己免疫性疾患は、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病及び慢性骨髄芽球性白血病を除く悪性腫瘍又は癌性疾患ないし症状を明確に除く。自己免疫性疾患ないし疾病の例には、限定するものではないが、炎症反応、例えば乾癬および皮膚炎(例えば過敏性皮膚炎)を含む炎症性皮膚病;全身強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患関連の反応(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギー性症状、例えばT細胞の浸潤ないし慢性炎症反応を伴う湿疹及び喘息及び他の症状;アテローム性動脈硬化;白血球癒着不全;慢性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真正糖尿病(例えばI型糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年型糖尿病;及び、一般的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び脈管炎でみられるサイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症と関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多器官損傷症候群;溶血性貧血(限定するものではなく、クリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血症を含む);重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート-イートン筋無力症症候群;水疱性類天ぽうそう;ペンフィグス;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター症候群;全身強直性症候群;ベーチェット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgAネフロパシ;IgM多発性神経炎;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少などが含まれる。
【0042】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫(例えばホジキン性及び非ホジキン性リンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓性癌、並びに頭部及び頸部の癌が含まれる。
【0043】
血管形成調節不全により、本発明の組成物及び方法によって治療される多くの疾患が引き起こされうる。これらの疾患には、非腫瘍性又は腫瘍性症状の両方が含まれる。腫瘍性のものは上記に記載のものに限らない。非腫瘍性疾患には、限定するものではないが、望ましくない又は異常な肥大、関節炎、慢性関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬の斑、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、アテローム動脈硬化性斑、未熟児の網膜症を含む糖尿病性及び他の増殖性の網膜症、水晶体後繊維増殖、血管新生緑内障、年齢関連性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、角膜移植片拒絶、網膜/脈絡叢血管新生、虹彩(angle)(ルベオーシス)の血管新生、眼性新生血管疾患、脈管再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺の過形成(グレーブズ病を含む)、角膜及び他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、急性肺損傷/ARDS、敗血症、原発性肺高血圧症、悪性の肺滲出、大脳浮腫(例えば、急性脳卒中/非開放性頭部損傷/外傷と関連している)、滑液炎症、RAのパンヌス形成、筋炎骨化、高親和性骨形成、骨関節炎(OA)、抵抗性腹水、多嚢胞性卵巣の疾患、子宮内膜症、液体性疾患の第3の間隔(3rd spacing)(膵炎、コンパートメント症候群、熱傷、腸疾患)、子宮類線維腫、早産、慢性炎症、例えばIBD(クローン病および潰瘍性大腸炎)、腎臓同種異系移植片拒絶反応、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、望ましくない又は異常な組織塊成長(癌以外)、血友病関節、肥大した瘢痕、体毛成長の抑制、Osler-Weber症候群、化膿性肉芽腫水晶体後繊維増殖、強皮症、トラコーマ、脈管粘着力、関節滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心嚢貯留液(例えば心外膜炎と関連しているもの)および胸水が含まれる。
【0044】
ここで使用されるところの「治療」は、治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変するための臨床的介入を意味し、予防のため又は臨床的病理の過程中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾病の発生又は再発の防止、症状の寛解、疾病の任意の直接的又は間接的病理的結果の低減、転移の防止、疾病の進行速度の低減、疾病状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体は疾患又は疾病の進行を遅らせるために用いられる。
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。本発明の抗体の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び個体の体重、並びに個体に所望の応答を誘発する抗体の能力のような因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は抗体の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には、予防的量は疾患の初期ステージ又はその前の患者に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0045】
本発明の方法
多くの病的状態において、治療的抗体は、免疫系媒介活性、例えばエフェクター機能ADCC、食作用及びCDCを伴うことなくその治療的動きを作用しうる。このような状況において、このような活性が実質的に減退されるかまたは排除されるように抗体を設計することが望ましい。残念なことに、このような目的を達成するために多くの試みがある。また、例えば多数のエフェクター機能を伴うFc領域の全部または一部を変化ないし除去することによって、エフェクター機能(FcRnへの結合及び生体内クリアランスなど)を望ましく不要に変化させうる。つまり、その治療的有用性を保持する一方、野生型エフェクター機能の全てでなく、サブセットを示す抗体を設計することが有用であろう。さらに、改変した抗体がその野生型相対物と比較して効率が実質的に減少することなく産生することができれば、さらにより有用であろう。本発明は、野生型相対物と実質的に同程度の治療有効性を備えていることが示された抗体を提供する。
【0046】
したがって、一態様において、本発明は生物学的に活性な免疫グロブリンを用いた疾患の治療方法を提供するものであり、該方法は治療が必要な対象体に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、あるいは2から11の重鎖内ジスルフィド結合が排除されている抗体を投与し、それによって疾患を治療することを含むものである。例えば、抗体は免疫グロブリン重鎖の変異形ヒンジ領域を具備し、該変異形ヒンジ領域の少なくとも一つのシステインがジスルフィド結合を形成することができなくなっているものである。
さらに、免疫グロブリン重鎖内の任意のシステインが、ここで記載されるヒンジシステインと同様に、ジスルフィド結合形成ができなくなりうることが予測されるが、この変化によって実質的に免疫グロブリンの治療的有用性を減退させない。例えば、IgMおよびIgEはヒンジ領域を欠いているが、各々は余分な重鎖ドメインを含有する;重鎖を含んでなる抗体の治療的機能を実質的に減らさない限り、重鎖のシステインのうちの少なくとも1(実施例によっては全て)は本発明の方法で用いられる抗体内でジスルフィド結合形成ができなくなりうる。
【0047】
例えばKabatによる「Sequences of proteins of immunological interest」にて説明されているように、重鎖ヒンジシステインは当分野で公知である。当分野で周知のように、ヒンジシステインの数は、免疫グロブリンのクラス及びサブクラスによって異なる。例としてJaneway, 「Immunobiology」, 第4版, (Garland Publishing, NY)参照。例えば、ヒトIgG1には、2のプロリンによって切り離される2のヒンジシステインがあり、これらは通常、分子間ジスルフィド結合において隣接した重鎖上のそれらの相対物と対になる。他の例には、4のヒンジシステインを含有するヒトIgG2、11のヒンジシステインを含有するIgG3と、2のヒンジシステインを含有するIgG4とが含まれる。したがって、一実施態様では、本発明の方法に用いる抗体は変異形ヒンジ領域を含んでなり、該変異形ヒンジ領域の少なくとも1のシステインはジスルフィド結合を形成することができなくなっている。他の実施態様では、本発明の方法は変異形ヒンジ領域を含んでなる抗体を用いることを含み、該変異形ヒンジ領域の少なくとも2のシステインはジスルフィド結合を形成することができなくなっている。一実施態様では、本発明の方法に用いる抗体は変異形ヒンジ領域を含んでなり、該変異形ヒンジ領域の少なくとも3のシステインはジスルフィド結合を形成することができなくなっている。一実施態様では、本発明の方法に用いる抗体は変異形ヒンジ領域を含んでなり、該変異形ヒンジ領域の約2から約11のシステインはジスルフィド結合を形成することができなくなっている。一実施態様では、本発明の方法に用いる抗体は変異形ヒンジ領域を含んでなり、該変異形ヒンジ領域の少なくとも4のシステインはジスルフィド結合を形成することができなくなっている。一実施態様では、本発明の方法に用いる抗体は変異形ヒンジ領域を含んでなり、該変異形ヒンジ領域のすべてのシステインはジスルフィド結合を形成することができなくなっている。
本発明の方法に用いられる本発明の抗体を構成する軽鎖及び重鎖は、単一のポリヌクレオチドから又は別々のポリヌクレオチドによってコードされ、産生されてもよい。
【0048】
ジスルフィド結合形成に通常関与するシステインは、ここで記載される基準からみて当業者に明らかな、様々な任意の方法によってジスルフィド結合形成を不可能にさせることができる。例えば、ヒンジシステインは他のアミノ酸、例えばジスルフィド結合ができないセリンに置換することができる。アミノ酸置換は、修飾すべきヒンジ領域をコードする核酸配列の部位特異的突然変異誘発などの標準的な分子生物学的技術によって達成することができる。適切な技術はSambrookら, 上記に記載されるものを含む。変異形ヒンジ領域を有する免疫グロブリンを生成するための他の技術には、置換すべきシステインをコードするコドンが代替アミノ酸をコードするコドンに置換されるヒンジ領域をコードする配列を含んでなるオリゴヌクレオチドを合成することが含まれる。次いで、このオリゴヌクレオチドは、他の適当な抗体配列、例えば可変領域及びFc配列を好適に含んでなるベクター主鎖に結合させることができる。これらの技術例の詳細は、下記の実施例の項目で詳述する。他の例では、ヒンジシステインは削除されうる。アミノ酸欠失は、修飾すべきヒンジ領域をコードする核酸配列の部位特異的突然変異誘発などの標準的な分子生物学的技術によって達成することができる。適切な技術はSambrookら, 上記に記載されるものを含む。変異形ヒンジ領域を有する免疫グロブリンを生成するための他の技術には、修飾すべきシステインをコードするコドンを欠損したヒンジ領域をコードする配列を含んでなるオリゴヌクレオチドを合成することが含まれる。次いで、このオリゴヌクレオチドは、他の適当な抗体配列、例えば可変領域及びFc配列を好適に含んでなるベクター主鎖に結合させることができる。
【0049】
抗原特異性
本発明は任意の適切な抗原結合特異性を有する抗体に適用できる。好ましくは、本発明の方法に用いる抗体は、生物学的に重要なポリペプチドである抗原に特異的である。より好ましくは、本発明の抗体は哺乳動物の疾病又は疾患の治療又は診断に有用である。本発明の抗体は、限定するものではないが、遮断用抗体、アゴニスト抗体、中和用抗体又は抗体コンジュゲート(抱合体)が含まれる。治療用抗体の非限定的な例には、抗VEGF、抗IgE、抗CD11、抗CD18、抗CD40、抗組織因子(TF)、抗HER2及び抗TrkC抗体が含まれる。非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍関連糖脂質抗原)に対する抗体もまた考えられる。
【0050】
抗原がポリペプチドである場合、抗原は膜貫通分子(例えばレセプター)あるいはリガンド、例えば成長因子でありうる。抗原の例には、例えば、レニン;ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インシュリンA-鎖;インシュリンB-鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;VIIIC因子、IX因子、組織因子(TF)、及びフォン・ウィルブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性物質;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;肝細胞成長因子(HGF);c-met;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4のような細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子等の神経栄養因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞成長因子;表皮成長因子(EGF);TGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD40等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばM-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したポリペプチドの何れかの断片が含まれる。
【0051】
本発明の一実施態様に包含される抗体に対する抗原には、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34及びCD46;ErbBレセプターファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプター;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、α4/β7インテグリン及びそのα又はβサブユニット(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体)を何れか含むαv/β3インテグリン;成長因子、例えばVEGF;組織因子(TF)、及びTGF-βアルファインターフェロン(α-IFN);インターロイキン、例えばIL-8;IgE;血液型抗原Apo2、デスレセプター;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等々が含まれる。一実施態様では、ここでの最も好ましい標的はVEGF、TF、CD19、CD20、CD40、TGF-β、CD11a、CD18、Apo2及びC24である。
【0052】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は腫瘍抗原に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、腫瘍抗原がクラスター分化因子(すなわちCDタンパク質)でない腫瘍抗原に、特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCDタンパク質に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCD3又はCD4以外のCDタンパク質に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCD19又はCD20以外のCDタンパク質に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCD40以外のCDタンパク質に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCD19又はCD20に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCD40に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体はCD11に特異的に結合可能である。
【0053】
一実施態様では、本発明の抗体は細胞生存調節性因子に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は細胞増殖調節性因子に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は細胞周期調節に関与する分子に特異的に結合可能である。他の実施形態では、本発明の抗体は、組織発達又は細胞分化に関与する分子に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は細胞表面分子に特異的に結合可能である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、細胞表面レセプターポリペプチドでない腫瘍抗原に結合可能である。
一実施態様では、本発明の抗体はリンホカインに特異的に結合可能である。他の実施態様では、本発明の抗体はサイトカインに特異的に結合可能である。
一実施態様では、本発明の抗体は脈管形成に関与する分子に特異的に結合可能である。他の実施態様では、本発明の抗体は血管形成に関与する分子に特異的に結合可能である。
【0054】
他の分子と場合によっては抱合していてもよい可溶型抗原又はその断片を、抗体を産生するための免疫原として使用することができる。レセプターのような膜貫通分子に対しては、これらの分子の断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫原として使用することもできる。そのような細胞は天然源(例えば癌細胞株)から取り出すことができ、又は膜貫通分子を発現するように組換え技術により形質転換された細胞であってもよい。抗体の調製に有用な他の抗原とその型は当業者には明らかであろう。
本発明の抗体は、単一特異的、二重特異的、三重特異的又は更に高次の多重特異的なものでありうる。多重特異的抗体は単一の分子の異なったエピトープに特異的であるか又は異なった分子のエピトープに特異的でありうる。多重特異的抗体を設計し作製する方法は当該分野において知られている。例えば、Millstein等 (1983) Nature 305:537-539; Kostelny等 (1992) J. Immunol. 148:1547-1553;国際公開93/17715を参照のこと。
【0055】
(ベクター、宿主細胞及び組換え方法)
本発明の抗体の組み換え生成のために、コードする核酸を単離して、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは従来の手順で簡単に単離し、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。一般的に、ベクターは、限定するものではないが、以下の一以上を含む:シグナル配列、複製起点、一以上のマーカー遺伝子、エンハンサー因子、プロモータ及び転写終末因子。
【0056】
(i)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接的組み換えだけでなく、また、好ましくはシグナル配列あるいは成熟タンパク質ないしポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても産生しうる。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、多価抗体をコードするDNAに読み枠を一致させて結合される。
【0057】
(ii)複製開始点
一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である。例えば、SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる。
【0058】
(iii)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)必要があれば栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例として、ATCC CRL-9096)。
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0059】
(iv)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され抗体核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体の転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターにょって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞中でのヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0060】
(v)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物によるこの発明の抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0061】
(vi)転写終結成分
また、真核生物宿主細胞に用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0062】
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、脊椎動物の宿主細胞を含む本明細書中に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587); ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2); イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34); バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442); ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065); マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0063】
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0064】
(ix)抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内で生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0065】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 15671575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSETMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
予備的精製工程に続いて、目的の抗体および混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
【0066】
活性のアッセイ
本発明の免疫グロブリンは当該分野で知られている様々なアッセイによってその物理的/化学的性質及び生物学的機能について特徴付けることができる。本発明の一態様では、本発明の変異形ヒンジ抗体とその野生型相対物とを比較することが重要である。
精製された免疫グロブリンは、限定されるものではないが、N末端シークエンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含む一連のアッセイによって更に特徴付けることができる。
本発明の特定の実施態様では、ここで生産された免疫グロブリンはその生物学的活性について分析される。ある実施態様では、本発明の免疫グロブリンはその抗原結合活性について試験される。当該分野で知られ、ここで使用することができる抗原結合アッセイには、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、エライザ(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドウィッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイのような技術を使用する任意の直接的又は競合的結合アッセイが制限なく含まれる。例示的抗原結合アッセイは以下の実施例の項目で示す。
【0067】
一実施態様では、本発明はすべてではなくいくつかのエフェクター機能を有する変更した抗体を考慮する。抗体の特定の性質(すなわち、無傷の又は実質的に無傷のFc領域を有しているがすべてではなくいくつかのエフェクター機能を欠損している)は、抗体のインビボ半減期が重要なある種のエフェクター機能(補体又はADCCなど)が不要又は有害である多くの手法の所望する候補となる。特定の実施態様では、生成した免疫グロブリンのFc活性を測定して、望ましい特性が維持されていることを確認する。インビボ及び/又はインビトロ細胞障害アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠損している(すなわちADCC活性をほとんど欠損している)が、FcRn結合能は維持していることを確認することができる。ADCCに関与している第一細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現しており、その一方で単核細胞はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現している。造血系細胞でのFcR発現については、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されている。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes ら. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデル内でインビボに評価することができる。また、C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合できない、つまりCDC活性を欠損していることを確認してもよい。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro ら., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のように、CDCアッセイを行ってもよい。また、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期測定を、当分野で公知の方法、例えば実施例の項目で示す方法を用いて行うことができる。
【0068】
ヒト化抗体
本発明は、ヒト抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化する様々な方法は当分野でよく知られている。例えば、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0069】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、一方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0070】
抗体変異体
本明細書中に記載の抗体のアミノ酸配列の修飾を考える。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれうる。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体核酸中に適当なヌクレオチド変化を導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせをその最終コンストラクトに達するまでなされることによって最終コンストラクトが所望の特徴を有する。配列を作製すると同時に目的の抗体アミノ酸配列にアミノ酸修飾を導入するのがよい。
【0071】
突然変異誘発の好ましい位置である抗体の所定の残基又は領域の特定のために有用な方法は、Cunningham及びWells, Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。ついで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更なる又は他の変異体を導入することにより精製される。しかして、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された免疫グロブリンを所望の活性についてスクリーニングする。
【0072】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体ないし細胞障害性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を向上させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドへの、抗体のN又はC末端への融合物を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子において少なくとも一つのアミノ酸残基が異なる残基で置換されている。置換突然変異に対して最も興味深い部位は高頻度可変領域を含むが、FR変化も考えられる。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表2に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、以下の表に「例示的置換」と名前を付け、又はアミノ酸の分類に関して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてもよい。
【0073】
表1

【0074】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, 第2版, pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1) 非極性:Ala (A), Val (V), Leu (L), Ile (I), Pro (P), Phe (F), Trp (W), Met (M)
(2) 荷電のない極性:Gly (G), Ser (S), Thr (T), Cys (C), Tyr (Y), Asn (N), Gln (Q)
(3) 酸性:Asp (D), Glu (E)
(4) 塩基性:Lys (K), Arg (R), His(H)
あるいは、天然に生じる残基は共通の側鎖性質に基づくグループに分けられる:
(1) 疎水性:ノルロイシン, Met, Ala, Val, Leu, Ile;
(2) 中性親水性:Cys, Ser, Thr, Asn, Gln;
(3) 酸性:Asp, Glu;
(4) 塩基性:His, Lys, Arg;
(5) 鎖配向に影響する残基:Gly, Pro;
(6) 芳香族:Trp, Tyr, Phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、保存的置換部位又はより好ましくは残りの(非保存的)部位内に置換された残基を導入してもよい。
【0075】
ある型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異を含む。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された抗体の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0076】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域内に一以上のアミノ酸修飾を導入してFc領域変異型を生成することが望ましい。Fc領域変異体は、ヒンジシステイン修飾を含む、一以上のアミノ酸位置でのアミノ酸修飾(例えば、置換)を有するヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含みうる。
当分野での記載や教示に従って、ある実施態様では、本発明の方法を用いた抗体が野生型の対応抗体と比較して、ここで所望するヒンジ配列変異に加えて例えばFc領域内に一以上の変異を有することを考慮する。にもかかわらず、この抗体はその野生型対応物と比較して治療的有用性を示す実質的に同じ特徴を維持している。例えば、WO99/51642などに記載のようにC1q結合及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)を変更する(すなわち改良又は減少する)結果となるFc領域内に特定の変異を生じさせることが考えられる。また、Fc領域変異型の他の例に関するDuncan & Winter Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351を参照。
【0077】
免疫コンジュゲート
また、本発明は、化学療法剤、薬剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞毒性剤にコンジュゲートした抗体を含む免疫コンジュゲート又は抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)に関する。
細胞障害性又は細胞分裂停止性の薬剤、すなわち癌治療における腫瘍細胞を殺す又は阻害するための薬剤の局部運搬に抗体−薬剤コンジュゲートを用いると(Syrigos及びEpenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4,975,278号)、論理的に腫瘍への薬剤成分の標的とする運搬とそこでの細胞内集積が可能となるものであり、この非コンジュゲート薬物作用剤の全身性投与により正常細胞並びに除去しようとする腫瘍細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwinら., (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,」 in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pincheraら. (ed.s), pp. 475-506)。これによって、最小限の毒性で最大限の効果を求める。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体はこの方策に有用であるとして報告されている(Rowlandら., (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowlandら., (1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandlerら(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandlerら(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP 1391213;Liuら., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lodeら (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinmanら (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞障害性及び細胞分裂停止性の効果に影響しうる。ある種の細胞障害性剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0078】
ゼバリン(ZEVALIN)(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan), Biogen/Idec)は正常及び悪性のBリンパ球の細胞表面上にみられるCD20抗原に対するマウスIgG1κモノクローナル抗体と111In又は90Y放射性同位体とがチオウレアリンカーキレート剤にて結合した抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wisemanら (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wisemanら (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzigら (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzigら (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンはB細胞非ホジキン性リンパ球(NHL)に対して活性を有するが、投与によってほとんどの患者に重症で長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに連結したhuCD33抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるマイロターグ(MYLOTARG)(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin), Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬剤分子DM1と連結しているhuC242抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)(Immunogen, Inc.)は、CanAgを発現する癌、例として大腸、膵臓、胃などの治療用に第II相試験へと進んでいる。メイタンシノイド薬剤分子DM1と連結している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、前立腺癌の潜在的治療の開発段階にある。アウリスタチン(auristatin)ペプチド、アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチン(MMAE)、ドラスタチン(dolastatin)の合成類似体は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌細胞上のルイスYに特異的)及びcAC10(血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doroninaら (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートしており、治療的開発段階にある。
【0079】
このような免疫複合体(免疫コンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を上に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0080】
メイタンシン及びメイタンシノイド
一実施態様では、本発明の抗体(完全長又は断片)は一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。
【0081】
メイタンシノイド-抗体コンジュゲート
治療指標を改善する試みにおいて、メイタンシン及びメイタンシノイドは、腫瘍細胞抗原に特異的に結合する抗体と結合している。メイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲート及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合している免疫コンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×10HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
【0082】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲート(免疫コンジュゲート)
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235B1号、及びChari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)に開示されているもの等を含む、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。
【0083】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施態様において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0084】
カリケアマイシン
対象の他の免疫コンジュゲートには、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した抗体が含まれる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ、α、α、N-アセチル-γ、PSAG及びθ(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0085】
他の細胞障害剤
本発明の抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)より)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫コンジュゲートをさらに考察する。
【0086】
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出用に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0087】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467−498頁を参照。
【0088】
抗体薬剤コンジュゲートの調製
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1〜約20の薬剤部分にコンジュゲートする。式IのADCはいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態および試薬を用いて調製されうる:(1)共有結合の後に薬剤部分Dと反応してAb-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた抗体の求核基の反応;及び(2)共有結合の後に抗体の求核基と反応してD-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた薬剤部分の求核基の反応、が含まれる。
Ab−(L−D)p I
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、および(iv)抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオールおよび水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群およびリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2-イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。
【0089】
また、本発明の抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤上の求核置換基を用いて反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;US 5362852)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
同様に、薬剤部分上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステルおよびアリールヒドラジド基:(i)活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸および酸ハロゲン化物);(ii)アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基、が含まれる。
【0090】
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0091】
抗体誘導体
本発明の抗体は当該分野において知られ直ぐに利用できる更なる非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中におけるその安定性のために製造の際に有利であろう。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じでも異なった分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、その抗体誘導体が定まった条件下での治療に使用されるかどうか、改善される抗体の特定の性質又は機能を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0092】
医薬製剤
本発明の抗体を含んでなる治療用製剤は、所望の純度を持つ抗体と、場合によっては生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A. 編 (1980))、水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥製剤の形態に調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0093】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものも含んでよい。そのような分子は、好適には、意図する目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編 (1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0094】
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、本発明の免疫グロブリンを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。この点において、ここに記載するようにジスルフィド形成システイン残基の減少/欠如は特に有用であろう。
【0095】
使用
例えば、本発明の免疫グロブリンは、インビトロ、エクスビボ及びインビボの治療法で用いてもよい。
例えば、本発明の抗体は、インビトロ、エクスビボ及び/又はインビボで特異的抗原活性を部分的に又は完全にブロック(遮断)するアンタゴニストとして用いることができる。さらに、本発明の少なくともいくつかの免疫グロブリンは、他の種から抗原活性を中和することができる。したがって、本発明の抗体は、例えば、抗原を含んでいる細胞培養物中、患者、又は、本発明の抗体が交差反応する抗原を有する他の哺乳類対象動物(例えばチンパンジ、ヒヒ、マーモセット、カニクイザルおよび赤毛猿、ブタ又はマウス)の特異的抗原活性を阻害するために用いることができる。一実施態様において、本発明の免疫グロブリンは、抗原活性が阻害されるように抗原と免疫グロブリンとを接触させることによって抗原活性を阻害するために用いることができる。抗原はヒトタンパク質分子であることが好ましい。
他の実施態様において、本発明の抗体を抗原活性が有害である疾患に罹患している対象体の抗原を阻害する方法に用いることができ、その方法は対象体の抗原活性が阻害されるように本発明の免疫グロブリンを対象体に投与することを含む。好ましくは、抗原はヒトタンパク質分子であり、対象体は患者である。あるいは、対象体は、本発明の抗体が結合する抗原を発現する哺乳動物でありうる。また更に、対象体は、抗原が導入された哺乳動物でありえる(例えば、抗原の投与や、抗原導入遺伝子の発現による)。本発明の抗体は、治療的目的のために患者に投与することができる。さらに、本発明の免疫グロブリンは、免疫グロブリンが獣医学の分野で、又はヒト疾患の動物モデルとして交差反応する抗原を発現する人間以外の哺乳動物(例えば霊長類、ブタ又はマウス)に投与することができる。後者に関して、このような動物モデルは、本発明の抗体の治療有効性(例えば用量のテストおよび投与の時間経過)を評価するために有効であるかもしれない。治療的に有効である本発明の遮断抗体には、例えば、限定するものではなく、抗VEGF、抗IgE、抗CD11、抗インターフェロン、及び抗組織因子抗体が含まれる。本発明の抗体は一以上の抗原分子の異常発現及び/又は活性が関与する疾患、疾病又は症状、の治療、阻害、経過を遅延、再発を予防/遅延、寛解、又は予防に用いることができる。この疾患、疾病又は症状には、限定するものではないが、悪性及び良性の腫瘍;非白血病及びリンパ系の悪性腫瘍;神経系、神経膠、星状膠、視床下部、他の腺性、マクロファージ性、上皮性、間質性、胞胚腔性の疾患;及び炎症性、血管形成性、免疫系の疾患が含まれる。
【0096】
一態様では、本発明の遮断抗体はリガンド抗原に特異的で、リガンド抗原を伴うリガンド-レセプタ相互作用をブロックするかまたは妨げることによって、対応するシグナル経路および他の分子又は細胞性の現象を阻害することによって抗原活性を阻害する。また、本発明は必ずしもリガンド結合を阻害するというわけではなくて、レセプター活性化を妨ぐレセプター特異的な抗体を特徴とし、それによって通常リガンド結合によって開始する任意の応答を阻害する。また、本発明は、好ましくは又は排他的にリガンド-レセプター複合体と結合する抗体を包含する。また、本発明の抗体は、特定の抗原レセプターのアゴニストとして作用し、それによって、リガンド媒介性のレセプター活性の活性化を完全に又は部分的に潜在化、亢進又は活性化する。
ある実施態様では、細胞障害性剤とコンジュゲートした抗体を含んでなる免疫コンジュゲートを患者に投与する。好ましくは、免疫コンジュゲート及び/又はそれが結合する抗原が細胞に内在化されていると、結合する標的細胞を殺す際の免疫コンジュゲートの治療効果が増す。一実施態様において、細胞障害性剤は標的細胞内の核酸を標的とするか又は妨げる。このような細胞障害性剤の例には、本明細書に記載の何れかの化学療法剤(例えばメイタンシノイド又はカリケアマイシン)、放射性同位元素、又はRNA分解酵素ないしDNAエンドヌクレアーゼが含まれる。
【0097】
本発明の抗体は、単独で、または、他の組成物と組み合わせて治療に用いることができる。例えば、本発明の抗体は、他の抗体、化学療法剤(一又は複数)(化学療法剤の混合を含む)、他の細胞障害性剤(一又は複数)、抗血管形成剤(一又は複数)、サイトカインおよび/または増殖阻害性剤(一又は複数)と同時に投与してもよい。本発明の抗体が腫瘍成長を阻害する場合、腫瘍成長を阻害する一つ以上の他の治療薬と組み合わせることが特に望ましい。例えば、転移性乳癌の治療に、VEGF活性を遮断する抗VEGF抗体を抗ErbB抗体(例えばハーセプチン(登録商標)抗HER2抗体)と組み合わせてもよい。あるいは又は加えて、放射線療法(例えば、外部光線照射、又は放射性標識した抗体などの作用剤を用いた治療)を患者に併用してもよい。上記の併用治療には、併用投与(2以上の作用剤が同じか又は別の製剤に包含される)及び別々の投与、別々の場合には、本発明の抗体は補助治療(一又は複数)の前及び/又はその後に投与することができる。
本発明の抗体(及び補助治療薬)は、非経口的、皮下、腹膜内、肺内、鼻腔内、そして、必要に応じて局所の治療のために、病巣内投与を含む任意の好適な手段によって投与する。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下的な投与を含む。加えて、抗体を、特に抗体の用量を減少して、パルス注入によって好適に投与する。投与が短期のものであるか長期のものであるかにある程度依存して、好ましくは注射で、最も好ましくは静脈内又は皮下注射によって投与することができる。
【0098】
本発明の抗体組成物は、医学的実用性に合わせた様式で調製し、1回分に分けて、投与する。ここで考慮する要因は、治療する特定の疾患、治療する特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の運搬部位、投与の方法、投与の日程計画、および医師が知る他の因子を含む。必要ではないが場合によっては、問題の疾患を予防するかまたは治療するために一般に用いられる一つ以上の作用剤と抗体とを調製する。そのような他の作用剤の有効量は、製剤中の本発明の抗体の量、疾患の型又は治療、及び上記の他の因子に依存する。一般的に、以前用いたのと同じ用量及び投与経路で、又は前回用いた用量の1〜99%で用いる。
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の好適な用量は(単独で用いる場合、又は化学療法剤などの他の作用剤と組み合わせて用いる場合)、治療する疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体を予防目的で投与するか治療目的で投与するか、以前の治療法、患者の病歴及び抗体への応答性、及び担当医師の判断に依存するであろう。抗体は一時的又は一連の治療にわたって好適に患者に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、例えば一以上の分割投与又は連続注入による患者投与の初期候補用量である。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であろう。症状に応じて、数日間以上にわたる繰り返し投与は、所望の疾患症状の抑制が得られるまで持続する。抗体の用量の例は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲であろう。ゆえに、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの一以上の用量を(又はそれらを組み合わせて)患者に投与してもよい。このような用量は、間欠的に、例えば週ごと又は3週ごとに投与してもよい(例えば患者に約2〜約20、例えば約6用量の抗体が投与される)。初期のより高い負荷投与量の後、一以上のより低い用量を投与してもよい。例示的用量療法は、約4mg/kgの初期負荷投与量の後、約2mg/kgの毎週の維持用量抗体を投与することを含む。しかしながら、他の投与計画が有効かもしれない。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターすることができる。
【0099】
製造品
本発明の他の態様では、上記の疾患の治療に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と該容器の又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、それのみによって又は他の組成物と組み合わせて症状を治療するのに有効な組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、(a)組成物を中に収容し、その組成物が本発明の抗体を含む第一の容器と;(b)組成物を中に収容し、その組成物が更なる細胞毒性剤を含む第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二抗体組成物を癌の治療に使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含む。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0100】
以下に、本発明の方法及び組成物の実施例を示す。上記の概要的解説に示した様々な他の実施態様が実施しうる。
以下の実施例は限定するものでなく本発明を例示するために挙げる。
【実施例】
【0101】
変異形ヒンジ領域を含んでなる抗体の産生及び特徴付け
野生型及びヒンジ変異形抗体の発現と産生のために、これらの抗体をコード化している配列を具備している発現ベクターは標準的な組換え方法を用いて構築する。例えば、抗体の発現ベクターは、好適なベクター主鎖内に抗体の重鎖及び軽鎖のコード配列を挿入することによって構築することができる。このようなベクター主鎖は、非常に多く、ここに記載するものを含み、当分野に公知である。Presta ら, Thromb Haemost. 2001 Mar;85(3): 379-89にて記載されるように、抗組織因子(本明細書においてATF、抗TF及びaTFとも称する)のコード配列を得ることができる。米国特許第5,821,337号及び同第6,054,297号にて記載されるように、抗HER2のコード配列を得ることができる。
標準的な組換えDNA技術を用いて、抗TF及び抗HER2 IgG1抗体の産生のための発現ベクターを、野生型又はヒンジ変異形の形で生成した。これらのベクターから発現される抗体を後述するように特徴づけた。全てのベクターは、SV40プロモーター/エンハンサー配列を具備した。抗TFベクターはDHFR選択マーカーを具備した。抗HER2ベクターは、DHFR/ピューロマイシン選択マーカーを具備した。ヒンジ変異形配列は、標準的な突然変異誘発技術を用いて、ヒンジ領域の両方のシステインをセリンに置換することによって生成した。
【0102】
抗HER-2および抗TFIgG1ヒンジ変異形コンストラクトのDNAを、ヒンジ領域内のシステインからセリンへの突然変異を確認するために配列決定した。
発現ベクターDNAを精製し、製造業者の指示に従ってリポフェクタミン (Invitrogen, Calsbad, CA)にてCHO宿主細胞株(DP12)の形質移入を行った。メトトレキセートの存在下でプレート上に現れるコロニーを選択して、スピナー管で抗体産生についてスクリーニングした。変異形残基があるないしは無い抗HER-2及び抗TF IgG1の産生培養物を生成した。抗HER-2及び抗TF IgG1を発現している野生型及びヒンジ変異形細胞株を、標準の1Lスピナー管を用いて同一の細胞培養条件下にて培養した。スピナーは、6×10細胞/mlでまいた。試料は、細胞濃度、生存度及び力価の測定のために毎日採取した。培養物を、第7日目(生存度50−70%)に回収した。回収した細胞懸濁液を低速で遠心分離して(200g、10分)、無細胞上清を濾過した(0.2μm)。抗体は、高速タンパク質液体クロマトグラフィを用いてプロテインA親和性クロマトグラフィー(ProSep Protein A)にて精製した。タンパク質は、MOPSランニングバッファを用いて、Invitrogenからの4〜12%密度勾配ゲル(NuPAGE)上でSDS PAGEによって、非還元条件下で分析した。クーマシーブルーR250染色溶液を用いて、タンパク質バンドを視覚化した。
【0103】
ナイーブPAGE分析
精製した抗体試料を、Novex(登録商標)トリス-グリシン天然試料バッファ(Invitrigen, Calsbad, CA)で希釈して、予め調製したNovex(登録商標)16%トリス-グリシンゲルに負荷(load)した。ゲルは、6〜12時間、125ボルトで、Novex(登録商標)トリス-グリシン天然ランニングバッファに流した。ゲルは、クーマシーブリリアントブルー色素で染色して、標準的なプロトコルによって脱色した。
【0104】
MALDI-TOF/MS
Papac, D.I., Briggs, J.B., Chin, E.T., Jones, A.J.S. Glycobiology 8: 445-454 (1998)に記載されるように、オリゴ糖はN-グリコシダーゼ Fを用いて抗TF及び抗HER-2から遊離させ、MALDI-TOF/MSによって分析した。
【0105】
BiacoreによるFcRn結合親和性測定
既に記載されているように(Raghavan,ら, Proc. Natl.Aacad. Sci. USA 92, 11200-11204 (1995);Vaughn & Bjorkman, Biochemistry 36, 9374-9380 (1997);Vaughnら, J. Mol. Biol. 274, 597-607 (1997))基本的には、BIAcore-2000表面プラスモン共鳴(SPR)システム(Biacore Inc., Piscataway, NJ)を用いて、ラットFcRnへの結合について抗体変異形の会合定数(結合定数)(kon)及び解離定数(koff)を決定した。CM-5バイオセンサチップ(Biacore, Inc.)を、アミン共役のために製造業者の指示に従って活性化した。ラットFcRnは、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)中で約1400反応単位(RU)の密度でチップに結合した。反応していない群を、1Mエタノールアミンにて遮断した。固定したFcRnへのIgG変異形結合の定常状態の結合は、10mM Mes-緩衝食塩水pH6.0、0.05%Tween-20、0.01%アジ化ナトリウム中の、25℃、8μM IgGから始めて、2倍の階段希釈にて測定した。各サイクル後にチップを、リン酸緩衝食塩水pH7.4にて再生し、その後洗浄、10mMトリス-緩衝食塩水pH8.0の注入、更なる洗浄を行った。
【0106】
注入する抗体濃度の関数として結合した抗体(RU)の量をプロットして、Kaleidographソフトウェアを用いて2独立部位結合モデル(2-independent-site binding model)(Vaughn & Bjorkman, supra)にフィットすることによって分析した。フィットする方程式は以下の通りである:
y= m1*(m2*(x/m3)/(1+(x/m3))
+((1−m2)*(x/m4)/(1+x/m4)))
ここで、xは抗体の濃度であり、yは定常状態の反応(RU)であり、m2はm3によって得られる高い見かけの親和性(K)を有する結合部位の分画であり、m4はより低い見かけの親和性、Kである。
IgGとの複合体におけるFcRnの結晶構造 (Burmeisterら, Nature 372, 336-343 (1994))により、IgGの1コピーに結合したFcRnの2コピーが明らかとなった。バイオセンサデキストラン上のFcRnの2コピーがIgGの単一コピーと相互に作用する場合に、観察される高親和性結合部位に2:1複合体の形成が表されるようである(Raghavanら, 上掲)。低親和性相互作用(Kd2)は、2つのバージョンについて同程度であるようだった;しかしながら、これらの測定値により大きな誤差が伴う。
【0107】
プロトロンビン時間(PT)アッセイ
野生型又は変異させた変異形ヒンジの何れかを含有する精製した抗TF IgG1の試料を、Presta,ら, Thromb. Haemost. 85: 379-389 (2001)の記載のように、プロトロンビン時間アッセイでの生物学的活性について試験した。クエン酸ナトリウム(0.38%最終濃度)によって血液凝固を阻止した貯蔵正常ヒト血漿を−70℃で貯蔵し、アッセイの日に37℃のウォーターバスにて解凍した。様々な濃度の抗体試料を血漿に加えて(PBSで希釈;血漿中1:10希釈)、10分間の室温でインキュベートした。IL ACL6000の凝固計(Beckman Coulter Inc, Mesa CA)にて、50μl血漿/抗体試料を、100ulのInnovin(登録商標) (Dade Inc, Hialeah FL)組換えヒト組織因子/塩化カルシウムPT試薬と混合した。光学的に検出される凝固時間を測定した。結果は、平均対照試料凝固時間(血漿+PBSだけ)に対するPTの倍数的延長として表した。4助変数曲線(KaleidaGraph, Synergy Software, Reading PA)を、方程式((m1−m4)/(1+(m0/m3)^m2))+m4(m1=最大凝固時間、m2=曲線の傾き、m3=曲線の変曲点、及びm4=最小凝固時間)によって投与-反応データにフィッティングした。凝固時間が2倍延長した試料の各濃度は、方程式x=m3(((m1−m4)/(2−m4))−1)^(1/m2)によってこの曲線から算出した。
【0108】
抗TF IgG1の薬物動態学的研究
4匹のSprague Dawley(SD)ラットの2つの群各々に、単一IVボーラス用量(3 mg/kg)の抗TF IgG1又はヒンジ変異形抗TF IgG1を投与した。血漿試料を、TF-結合アッセイによる分析のために42日までに回収した。薬物動態学的助変数は、WinNonlin 3.0の2区画除去モデルを用いて評価した。以下のPK助変数を算定した:クリアランス(CL)、分布の量(V1)、最大の血漿濃度(Cmax)、濃度対時間曲線下の領域から測定される薬剤曝露(AUC)、定常状態量(vss)、α半減期(a-HL)及びβ半減期(b-HL)。ANOVAによって群間の統計的比較を行った。
【0109】
補体C1q結合
C1qへの抗体の結合は、既にIdusogie E.E.ら, J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)によって記載されているものから変更した方法によって評価した。ヒンジ変異形及び対照抗体の階段希釈物を、炭酸塩緩衝液(50mM、pH9.6)を含むアッセイプレート上に4℃で終夜コートした。プレートを遮断(ブロック)して、0.5%BSAを含むPBSにて洗浄して、続いて0.05%Tween-20を含むPBSにてインキュベートした。コーティングの後、プレートを、アッセイ緩衝液(0.5%BSA、0.05%Tween-20、0.05%ProClin300を含むPBS)中で精製したヒトC1qにて2時間インキュベートした。結合したC1qを、ヤギ抗ヒトC1qの後、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートロバ抗ヤギIgGにて検出した。プレートを基質としてテトラメチルベンジジンにて反応させ、C1qへの抗体結合のEC50値を決定した。
【0110】
抹消血単核細胞のADCCによる細胞溶解
ADCCは、エフェクター細胞として健常なドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を用いて評価した。簡潔にいうと、バフィーコートはスタンフォード血液バンクから、ヘパリン処理した新鮮血液はGenentech正常ドナーから得て、PBMCはフィコール勾配遠心によって単離した。次いで、PBMCは、アッセイに使用の前に、10%ウシ胎児血清を含むRPMI-1640にて、37℃で5%CO、18−22時間培養した。標的細胞を96ウェル丸底プレートの各ウェルにまいた。段階希釈した試験抗体を細胞に加えて、オプソニン作用をさせた。37℃、5%COで45分後に、PBMCを、エフェクター:標的が30:1になるように加えて、さらにプレートをインキュベートした。インキュベーション終了後、プレートを遠心分離した。上清を、光学的に透明な96ウェル平底プレートの対応するウェルに移し、放出されるLDHのレベルを測定した。無傷の標的細胞を含有するウェルの吸光度を低コントロールとした。2%トリトンX-100の添加によって完全な細胞溶解が起こった(高コントロール)。抗体非依存性細胞障害性(AICC)は、試験抗体がない条件下で、標的及びエフェクター細胞を混合することによって測定した。特異的な%細胞障害性は以下のように算出した:

吸光度値は抗体濃度に対してプロットし、EC50値はSoftMax Pro(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)にて4助変数方程式にデータをフィットすることによって求めた。
【0111】
補体依存性細胞障害性(CDC)活性の評価
CDC活性は補体のC1q成分を介して媒介する。野生型又は変異形(すなわちシステインのセリンへの変換)のヒンジ領域の何れかを含有する抗CD20抗体を分析した。この抗体の野生型の形態はCDC活性を有することが既に示されている。
【0112】
ヒトFcγレセプターへの抗体の結合
ヒトFcγレセプター(FcγR)への抗体の結合は、Shields R.L.ら, J. Biol. Chem. 276(9): 6591-6604 (2001)によって記載される手順の変更したものによって評価した。単量体IgGは、高親和性FcγRIa(CD64)に結合可能である;しかしながら、低親和性レセプター、FcγRIIa(CD32A)、FcγRIIb(CD32B)及びFcγRIIIa(CD16)は、結合に多量体のIgGを必要とする。したがって、低親和性レセプター結合アッセイについて、2:1のモル比で抗体とヤギ抗ヒトκ鎖を混ぜ合わせることによって抗体の二量体が形成された。FcγRは、Gly/His6/GSTを有するレセプターα鎖の細胞外ドメインの組換え融合タンパクとして発現された。抗GSTコート、BSA-遮断アッセイプレートを用いて、FcγRを捕獲した。この後、プレートを洗浄して、続いて全てを0.05%のTween-20を含むPBSにてインキュベートした。レセプターを、FcγRIaの単量体として及び低親和性FcγRの多量体として段階希釈したヒンジ変異形及び対照(野生型相対物)抗体とともに2時間インキュベートした。結合した抗体は、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトF(ab')2にて検出した。プレートを基質としてテトラメチルベンジジンにて反応させ、FcγRへの抗体結合のEC50値を測定した。
【0113】
異種移植片研究
抗HER-2変異形を、ベージュヌードマウスにおけるMMTV-HER2 F2#1282乳房腫瘍移植片について試験した。MMTV-HER2 F2#1282乳房腫瘍は、HER2発現がMMTVプロモーターを用いて乳腺を標的としているHER2トランスジェニックマウス由来であった。米国特許出願第20020001587号および同第20020035736号を参照。
腫瘍はHER2を過剰発現し、移植した腫瘍株としてインビボに保持した。これを調べるために、腫瘍を、野生型ベージュヌードマウスの右#2,3乳房脂肪部分内に2mm×2mm以下の組織片として外科的に移植した。移植14日後に、150〜200mm(個体腫瘍サイズは70〜400mmの範囲)間の平均腫瘍容量から調査を始めた。
一群につき4匹のマウスを用いて抗HER-2を投与した:
A群:ハーセプチン(市販の抗HER-2;Genentech, Inc., South San Francisco)10mg/kg、IP、週に1回、4週間。
B群:ハーセプチン30mg/kg、IP、週に1回、4週間。
C群:抗HER-2ヒンジ変異形30mg/kg、IP、週に1回、1週間。
(市販のハーセプチンをA群及びB群に用いた。)
【0114】
結果及び考察
スピナー生成から精製した試料をSDS PAGEゲルに流して、ジスルフィド結合を持たない抗体の発現を確認した(図1)。システイン残基のない抗HER-2及び抗TFIgG1について、主に約75kDにバンドが観察され、これは、鎖間ジスルフィド結合を欠いている重-軽鎖抗体形が存在する分子量に一致した。ナイーブPAGEゲル分析法(図2)により、変異したヒンジ領域を有する抗TF IgG1分子が結合したままであることが示された。これは、非共有の相互作用が二量体をあわせて保つために十分であることを示唆する。MALDI/TOF-MS分析(図3)により、ジスルフィド結合の除去がFc領域内の2つのN連結オリゴ糖に影響を及ぼさないことが確認された。グリコシル化パターンは、突然変異のない抗体と同程度のようであった。この一連のアッセイにより、ヒンジシステイン突然変異を含有する抗体が野生型相対物と同じ物理的/分析的特性を有していることが確認された。
セリンに変異させたヒンジシステイン又はヒンジシステインを含んでなる抗TF IgG1を、プロトロンビン時間アッセイにて評価した。図5に示すように、分子の両方の型は、PT(プロトロンビン時間)の倍数的延長において統計学的に有意な違いを示さなかった。さらにまた、2つの抗体を、Biacore FcRn結合アッセイで試験した(図4)。システインからセリンへの突然変異を有する抗TF IgG1は、その野生型相対物と同程度のFcRn結合を示した。さらに、ラットにおいて行った薬物動態学的研究により、同一のクリアランス特性が示された(図6)。ヒンジ領域内にシステインのない抗TF IgG1は、システインを有する抗体と比較して、クリアランスにおいて統計学的に有意な違いを示さなかった(システイン残基ありの抗TF IgG1 8.24±0.55 ml/日/kg、及び、システイン残基のない抗TF IgG1 10.47±2.62 ml/日/kg)。データにより、野生型分子の形態で観察されるレベルと比較して、FcRn結合、薬物動態学的特性並びに抗TF IgG1分子の凝固形成は、ヒンジ領域内の突然変異に実質的に影響を受けないことが示された。
【0115】
ヒンジ領域内のシステインからセリンへの突然変異を有する及び有さない抗HER-2及び抗TF IgG1を、補体C1q結合アッセイにて評価した。IgGのFcドメインへのC1qの結合によって補体活性化が起こる。図7及び図8に示すように、哺乳動物細胞において発現されるヒンジ変異形領域を含んでなる抗HER-2及び抗TF IgG1は、補体C1q結合において有意な減少を示した。抗CD20抗体の場合、CDC活性を野生型及びヒンジ変異形形態について評価すると、C1q結合は、野生型相対物と比較してヒンジ変異形抗体では有意に減少していた。例えば、対照材料の0.62μg/mlと比較して、ヒンジ変異形のEC50は1.14μg/mlであった。ヒンジ変異形抗体がC1qにいくらか結合を示したにもかかわらず、結合は見かけ上十分でなく、CDC反応を媒介しなかった。標的細胞としてWIL-2細胞及びエフェクター細胞としてPBMC細胞を用いたCDCアッセイにおいて、ヒンジ変異形抗体に測定可能な活性はなかった(データは示さない)。
抗HER2及び抗TF変異形抗体を、Fcγレセプター結合アッセイのパネルにて試験した。Fcレセプターの特異的な認識に、レセプターの1つの鎖のみが必要であり、γ鎖はシグナル伝達を媒介する。市販のハーセプチン及びリツキサン、並びに野生型抗HER-2及び抗TF IgG1細胞株から生成した材料を対照物として用いた。予想されるように、行ったすべてのエフェクター機能アッセイにおいて大腸菌で発現される完全長HER-2及び抗TF IgG1の結合は、劇的に減少しているか基本的には結合が観察されなかった(図7−16)。CHO細胞で発現されるヒンジ変異形抗HER-2及び抗TF IgG1は、その野生型相対物と比較して、FcγIaレセプター結合にわずかな減少を示した(図9及び10)。加えて、両方のヒンジ変異形は、大腸菌で産生される材料と同程度のレベルで、FcγIIa及びFcγIIbレセプター結合に有意な減少を示した(図11、12、13)。
【0116】
また、ヒンジ変異形抗体(例えば抗HER-2)及びその野生型相対物を、FcγRIII結合及びADCC活性アッセイにて評価した。ヒンジ領域内のジスルフィド結合を欠いている抗HER-2及び抗TF IgG1分子は、欠失のない材料と比較して、FcγRIII結合に劇的な減少を示した。結合の低下は、高親和性対立遺伝子V158並びに低親和性対立遺伝子F158(図14、15、16)で観察することができ、大腸菌で産生される材料の結合能と同程度であった。FcγIIIレセプターがADCCに関与する主なレセプターであるので、抗HER-2及びヒンジ変異形抗HER-2もまた、エフェクター細胞としてのPBMC細胞と、標的細胞としてのSKBR3細胞を用いて2つの独立したADCCアッセイにて試験した(図17及び18)。両方のアッセイにおいて、ヒンジ領域内にシステイン残基のない抗HER-2の細胞障害性が、参照材料と比較して実質的に減少していた。面白いことに、CHO又は大腸菌細胞において発現されるヒンジ変異形抗HER-2の細胞障害性のレベルは、見かけ上、エフェクター細胞を単離させるために用いられたドナーにある程度依存していた。新鮮なドナー血液を用いた変異形抗体のADCC活性は、野生型材料と比較したとき、冷凍ドナー試料を用いた類似のアッセイにおいてより減少した;大腸菌については、ADCC活性はさらに存在しなかった(図18)。にもかかわらず、調べた全ての場合で、ヒンジ変異形抗体の細胞障害性のレベルは、類似のアッセイ条件で評価した野生型相対物で観察されたものより著しく低かった。
説明の便宜上、FcγレセプターとC1q結合で得られた数値の概要を、表2−3に示す。
【0117】
表2
FcγレセプターとC1q結合ELISA:概要
試験1

*EC50値(μg/ml)/%最大結合(リツキサン対照との相対)

試験2 FcγRIaについて

【0118】
表3
FcγレセプターとC1q結合ELISA:概要
試験1


試験2 FcγRIaについて

*注記:最大結合の低いレベルでプラトーになる曲線
【0119】
抗HER-2野生型(ハーセプチン)及びヒンジ変異形のインビボ特性を、エフェクター機能に依存しない異種移植片モデルにおいて試験した。MMTV-HER2 F2#1282乳房腫瘍移植片をベージュヌードマウスに用いた。図19は、抗HER-2曝露後のベージュヌードマウスの乳房腫瘍移植片の平均腫瘍容量を示す。高用量(週1回30mg/kg、1週間)で処置した全てのマウスにおいて野生型抗HER-2(ハーセプチン)及びヒンジ変異形抗HER-2の両方に著効が示された。したがって、ヒンジ変異形抗体の治療的有効性は、臨床的に効果的な治療薬であることが示された野生型相対物と比較して実質的に同程度であることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】ヒンジ領域内に突然変異を持つ及び持たない抗HER2及び抗TFIgG1のSDS−PAGEゲル。レーン2、3及び5はジスルフィド結合を持たない抗体単量体を示す。
【図2】システインからセリンへの突然変異を持つ及び持たない抗TFIgG1の天然PAGE分析。
【図3】グリコシル化プロフィール上で検出可能な効果を示さない、ヒンジ領域内の突然変異を持つ及び持たない異なる細胞系統についてMALDI/TOF−MSにて評価したグリカン組成物。細胞系統間にみられるわずかな差異は予測されるものであり、クローン間の偏差内である。
【図4】FcRnへの結合能に差異を示さない、ヒンジ領域内のシステイン残基を持つ及び持たない抗TFIgG1のFcRn結合。
【図5】倍数的延長として表される血塊形成の時間に有意な差を示さない、ヒンジ領域内のシステインからセリンへの突然変異を持つ及び持たない抗TFIgG1発現正常ヒト血漿のプロトロンビン時間(血塊時間の2倍の延長は25μg/mlの抗TFIgG1及び30μg/mlの抗TFIgG1ヒンジ変異体で測定した)。
【図6】野生型のヒンジを有する抗TFIgG1のクリアランス(8.24±0.55ml/日/kg)は、CHO産生抗体の変異形ヒンジを含む抗TFIgG1(10.47±2.62ml/日/kg)と同程度である。説明文:大腸菌ヒンジなし(ヒンジ変異形);大腸菌ヒンジ(野生型ヒンジ);CHOヒンジなし(ヒンジ変異形);CHOヒンジ(野生型ヒンジ)。
【図7】CHO並びに大腸菌で発現するヒンジ領域内に突然変異を持つ及び持たない抗TFIgG1のC1q結合。変異形ヒンジ領域を持つ抗TFIgG1は野生型抗体と比較して減弱した結合能を示した。リツキサン(市販の抗CD20抗体)をポジティブ対照例として流した。
【図8】CHO及び大腸菌で発現するヒンジ領域内に2つのジスルフィド結合を持つ及び持たない抗HER2のC1q結合。新規に形質移入した細胞系統によって産生された突然変異を持たない抗HER2は市販のハーセプチンと同程度の結合を示した。しかしながら、変異形ヒンジ領域を持つ抗HER2の結合は大腸菌で発現する抗HER2の結合能と同程度のレベルに減弱している。
【図9】CHO並びに大腸菌で発現するヒンジ領域内に突然変異を持つ及び持たない抗TFIgG1のFcγRIa結合。リツキサンと抗TFIgG1は同程度の結合能を示した。しかしながら、変異形ヒンジ領域を持つ抗TFIgG1はその野生型相対物よりも結合が低かった。予想されたとおり、突然変異を持つ及び持たない大腸菌発現完全長抗TFIgG1は顕著に低いFcγIaレセプターへの結合を示した。
【図10】システイン残基を持つ及び持たない抗HER2のFcγRIa結合。対照例として用いた抗HER2とリツキサンは同程度の結合能を示した。逆に、変異形ヒンジ領域(システインからセリンへの突然変異)を持つ抗HER2は減弱した結合を示した。予想されたとおり、大腸菌発現抗HER2について結合能の顕著な減弱がみられた。
【図11】ヒンジ領域内にシステイン残基を持つ及び持たない抗TFIgG1のFcγRIIa結合。リツキサン及びメラノーマIgG1を対照例として用いた。ヒンジ領域内にジスルフィド結合を持たない抗TFIgG1は結合能の顕著な低下を示した。しかしながら、システイン残基を持つ及び持たない大腸菌発現試料はさらに減弱したFcγRIIaレセプターへの結合を示した。
【図12】システイン残基を持つ及び持たない抗HER2のFcγRIIa結合。対照例として用いたハーセプチン及びリツキサンは同程度の結合能を示した。しかしながら、ヒンジ領域内に突然変異を持つ抗HER2並びに大腸菌発現完全長抗HER2は劇的に減弱したレセプター結合を示した。
【図13】システイン残基を持つ及び持たない抗HER2のFcγRIIb結合。CHO又は大腸菌で発現するヒンジ領域内に突然変異を持つ抗HER2はリツキサン及びハーセプチンと比較して顕著に減弱した結合を示した。
【図14】抗TFIgG1のFcγRIIIa結合(高親和性アロタイプV158及び低親和性アロタイプF158)。リツキサン及びメラノーマIgG1を対照例として用いた。ヒンジ領域内に突然変異を持つ(すなわち鎖間ジスルフィド結合を持たない)抗TFIgG1のFcγRIIIaへの結合は突然変異を持たない試料と比較して劇的に減弱した。大腸菌で発現される完全長抗TFIgG1分子は何れもわずかに結合したのみであった。
【図15】システイン残基を持つ及び持たない抗HER2のFcγRIIIa(F158)結合。ヒンジ領域内に突然変異を持つ抗HER2の結合能は顕著に減弱し、大腸菌内で産生される抗HER2と比較して同程度の結合特性を示した。
【図16】ヒンジ変異形を持つ及び持たない抗HER2のFcγRIIIa(V158)結合。V158アロタイプの結合特性は明らかにアロタイプF158と同程度であった。システイン残基を持たない抗HER2の減弱した結合能が観察された。
【図17A】SKBR3細胞のPBMC細胞ADCC。PBMC細胞はスタンフォード血液バンクから入手したバフィーコート試料から単離した。CHO並びに大腸菌由来ヒンジ変異形抗HER2は、ハーセプチン参照試料と比較して様々な抗体濃度で細胞障害性の顕著な減弱を示した。図17Aはデータをグラフで表す。
【図17B】SKBR3細胞のPBMC細胞ADCC。PBMC細胞はスタンフォード血液バンクから入手したバフィーコート試料から単離した。CHO並びに大腸菌由来ヒンジ変異形抗HER2は、ハーセプチン参照試料と比較して様々な抗体濃度で細胞障害性の顕著な減弱を示した。図17Bはデータを数値で表す。
【図18A】SKBR3細胞のPBMC細胞ADCC。PBMC細胞は新鮮血から単離した。CHO細胞で発現される変異形ヒンジ抗HER2の細胞障害性は顕著に減弱した。ヒンジ領域内に突然変異を持つ大腸菌由来抗HER2は、参照ハーセプチン試料と比較して検出可能な活性を示さなかった。図18Aはデータをグラフで表す。
【図18B】SKBR3細胞のPBMC細胞ADCC。PBMC細胞は新鮮血から単離した。CHO細胞で発現される変異形ヒンジ抗HER2の細胞障害性は顕著に減弱した。ヒンジ領域内に突然変異を持つ大腸菌由来抗HER2は、参照ハーセプチン試料と比較して検出可能な活性を示さなかった。図18Bはデータを数値で表す。
【図19】抗HER2抗体に曝露して4週後のベージュヌードマウスに移植した乳房腫瘍の平均腫瘍容積(30mg/kg:単回投与、10mg/kg:週1回の4週間投与)。30mg/kg用量で処置したヒンジ変異形抗HER2について、ハーセプチン(市販の抗HER2抗体)と同程度の完全な反応を観察することができた(図中に「CR」として示す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患を有する対象体に疾患の治療に効果的な抗体を投与することを含む疾患の治療方法であり、該抗体が重鎖間ジスルフィド結合ができない変異形重鎖ヒンジ領域を含み、真核生物宿主細胞培養物内で産生されるものである治療方法。
【請求項2】
抗体が野生型抗体と比較して減弱した抗体依存性細胞障害(ADCC)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変異形重鎖ヒンジ領域がジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を欠くものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ジスルフィド結合が分子間にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分子間ジスルフィド結合が2つの免疫グロブリン重鎖のシステイン間にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
通常ジスルフィド結合を形成することができるヒンジ領域システイン残基が削除されている、請求項2ないし5の何れか一に記載の方法。
【請求項7】
通常ジスルフィド結合を形成することができるヒンジ領域システイン残基が他のアミノ酸によって置換されている、請求項2ないし5の何れか一に記載の方法。
【請求項8】
前記システイン残基がセリンによって置換されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗体が完全長抗体である、請求項1ないし8の何れか一に記載の方法。
【請求項10】
前記完全長抗体が重鎖及び軽鎖を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体がヒト化したものである、請求項1ないし10の何れか一に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体がヒトのものである、請求項1ないし10の何れか一に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が抗体フラグメントである、請求項1ないし8及び11ないし12の何れか一に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体フラグメントがFc融合ポリペプチドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が重鎖定常ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、請求項1ないし14の何れか一に記載の方法。
【請求項16】
抗体がIgG、IgA及びIgDからなる群から選択されるアイソタイプのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
抗体がIgGである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗体がIgG1である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗体がIgG2である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
抗体が治療用抗体である、請求項1ないし19の何れか一に記載の方法。
【請求項21】
抗体がアゴニスト抗体である、請求項1ないし20の何れか一に記載の方法。
【請求項22】
抗体が拮抗的抗体である、請求項1ないし20の何れか一に記載の方法。
【請求項23】
抗体が診断用抗体である、請求項1ないし19の何れか一に記載の方法。
【請求項24】
抗体が遮断用抗体である、請求項1ないし22の何れか一に記載の方法。
【請求項25】
抗体が中和用抗体である、請求項1ないし24の何れか一に記載の方法。
【請求項26】
抗体が腫瘍抗原に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項27】
腫瘍抗原が細胞表面分子でない、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍抗原がクラスター分化因子でない、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
抗体がクラスター分化因子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項30】
抗体が細胞生存調節性因子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項31】
抗体が細胞増殖調節性因子に特異的に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項32】
抗体が組織発達又は分化と関連する分子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項33】
抗体が細胞表面分子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項34】
抗体がリンホカインに結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項35】
抗体がサイトカインに結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項36】
抗体が細胞周期調節に伴う分子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項37】
抗体が脈管形成に伴う分子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項38】
抗体が血管新生に関連する分子に結合可能である、請求項1ないし25の何れか一に記載の方法。
【請求項39】
抗体が重鎖間ジスルフィド結合を欠いている、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記重鎖間ジスルフィド結合がFc領域間にある、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
抗体が異種性成分とコンジュゲートしている、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記異種性成分が細胞障害性剤である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞障害性剤が放射性同位体、化学療法剤および毒素からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
毒素がカリケアマイシン、メイタンシン及びトリコセンからなる群から選択される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記異種性成分が検出可能なマーカーである、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記検出可能なマーカーが放射性同位体、リガンド-レセプター対のメンバー、酵素-基質対のメンバー及び蛍光共鳴エネルギー転移対のメンバーからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
抗体がその野生型ADCC活性を含む野生型相対物と実質的に同程度の薬物動態学的値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
ADCC活性がインビトロで測定される、請求項1又は47に記載の方法。
【請求項49】
真核生物宿主細胞が哺乳動物宿主細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
抗体がその野生型相対物抗体と比較して実質的に減弱した補体依存性細胞障害を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
抗体がその野生型相対物抗体と比較して補体タンパク質に対して実質的に減弱した結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
補体がC1qである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
疾患が腫瘍又は癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
疾患が免疫学的疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
免疫学的疾患が自己免疫である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
請求項1ないし56の何れか一に記載の方法に用いられる抗体と薬学的に受容可能な担体とを含んでなる組成物。
【請求項58】
容器とそれに内包される組成物を含んでなる製造品であって、該組成物が請求項1ないし56の何れか一に記載の方法に用いられる抗体を含んでなる製造品。
【請求項59】
抗体が治療上の有効量で提供される、請求項58に記載の製造品。
【請求項60】
前記組成物を用いるための指示書を更に含む、請求項59に記載の製造品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−504245(P2007−504245A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525460(P2006−525460)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028687
【国際公開番号】WO2005/027966
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】