説明

変色性積層体

【課題】 乾燥状態と吸液状態で同一像が色調変化を生じたり、乾燥状態で視認される像が、吸液状態では新たに現出する像と混在して視認され、色彩変化或いは様相変化に富む変色性積層体を提供する。
【解決手段】 支持体2上に屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層C6、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層D7を順次設けた積層体であって、前記支持体と多孔質層Cが互いに異なる色調を呈し、且つ、多孔質層Dが像を形成してなり、乾燥状態と吸液状態で異なる色調の像を視認できる変色性積層体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色性積層体に関する。更に詳細には、水等の液体を吸液した状態と乾燥した状態で互いに異なる様相又は色調の像が視認される変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低屈折率顔料を含む塗布層を片面に設けた透明フィルムを任意の印刷物に貼り合わせ、前記塗布層に水等の液体が吸液することにより透明化して印刷物が視認できるように構成した水像シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記水像シートは、乾燥した状態で全面が同一色を呈するため装飾性に乏しく、乾燥状態と吸液状態で像の色調が変化したり、異なる様相の像が現出することが望まれる玩具や教習具等への適用には不適であった。
又、乾燥状態と吸水状態で異なる像を視認させるシートとしては、低屈折率顔料を含む塗布層及び塗布層上に表面画像を設けた透明フィルムを、着色された面に画像を有する台紙に貼り合わせた水像シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
前記水像シートは、乾燥状態で塗布層によって下層の画像が隠蔽されるため表面画像のみが視認され、吸液状態で塗布層が透明化し、且つ、表面画像が台紙或いは下層の画像の色調と同調して視認され難くなり、下層の画像のみが視認されるよう構成したものであって、異なる像が視認されるとしても、表面画像を下層の画像及び/又は台紙の色調と同調させるために同系色或いは薄い色調にしたり、表面画像と下層の画像ができる限り重ならないように配慮することを余儀なくされる。従って、像の色調及びデザインに制限があると共に変化前後の色調変化も乏しくなる。
又、表面画像を設けた透明フィルムを台紙に貼り合わせる際、接着剤を用いたり、貼り合わせる位置を特定する工程が煩雑且つコスト高になり、実用性を満足させていなかった。
【特許文献1】特開昭58−199185号公報
【特許文献2】特開昭63−260478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の水像シートの不具合を解消しようとするものであって、即ち、簡易に製造できると共に乾燥状態と吸液状態で同一像が色調変化を生じたり、乾燥状態で視認される像が、吸液状態では新たに現出する像と混在して視認されるといった、色彩変化或いは様相変化に富み、玩具分野、装飾分野、デザイン分野等、多様な分野への応用性に優れた変色性積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
1.支持体上に屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層C、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層Dを順次設けた積層体であって、前記支持体と多孔質層Cが互いに異なる色調を呈し、且つ、多孔質層Dが像を形成してなり、乾燥状態と吸液状態で異なる色調の像を視認できる変色性積層体。
2.前記多孔質層Cは、着色剤を含有する乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する層であり、且つ、多孔質層Cと多孔質層Dは互いに異なる色調を呈する1項に記載の変色性積層体。
3.支持体上に着色層、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料バインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層E、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層Fを順次設けた積層体であって、前記着色層と多孔質層Fが像を形成してなり、乾燥状態で多孔質層Fの像が視認され、吸液状態で着色層と多孔質層Fの混在した像が視認される変色性積層体。
4.前記多孔質層は、低屈折率顔料として湿式法で製造される屈折率が1.4〜1.7の微粒子状珪酸を含んでなる1項乃至3項に記載のいずれかの変色性積層体。
5.前記多孔質層は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂を含んでなる1項乃至4項に記載のいずれかの変色性積層体。
を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、乾燥状態と吸液状態で同一像が色調変化を生じたり、乾燥状態で視認される像が、吸液状態では新たに現出する像と混在して視認され、色彩変化或いは様相変化に富み、玩具分野、装飾分野、デザイン分野等、多様な分野への応用性に優れた変色性積層体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記変色性積層体は、水等の液体を吸液した状態と乾燥した状態で互いに異なる色調の同一像が視認される変色性積層体、或いは、乾燥状態で視認される像が、吸液状態では新たに現出する像と混在して視認される変色性積層体であって、それぞれについて以下に説明する。
【0007】
前記水等の液体を吸液した状態と乾燥した状態で互いに異なる色調の同一像が視認される系の変色性積層体としては、適宜支持体上に乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層Cを設け、前記多孔質層C上に乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層Dを設けてなり、前記支持体と多孔質層Cが互いに異なる色調を呈すると共に多孔質層Dが像を形成してなる構成が挙げられる。
前記多孔質層Cは、乾燥状態で下層を隠蔽するため白色不透明化し、多孔質層Dは有色不透明化する。よって、白地に多孔質層Dによる像が視認されることとなる。
又、吸液状態では多孔質層Cが透明化し、且つ、多孔質層Dによる像は有色透明化するため、多孔質層Cとは色調の異なる支持体の色調が視認されることとなる。よって、多孔質層Dによる像は支持体の色調が混色となった像であり、それ以外の部分は支持体の色調が視認される。
この場合、支持体と多孔質層Cが互いに異なる色調を呈する必要があるが、支持体が白色の場合は、着色層を設けた支持体を用いる必要がある。
前記のようにして、多孔質層Dによる像は変化しないものの、乾燥状態と吸液状態で同一像の色調及び背景色を変化させることができる。
又、多孔質層Cは白色不透明から透明に変化するものに限らず、着色剤を含有して有色不透明化から有色透明に変化する層であっても、同様の効果が得られ、色調変化も多様化する。この場合、多孔質層Cと多孔質層Dは互いに異なる色調を呈する必要がある。
【0008】
前記乾燥状態で視認される像が、吸液状態では新たに現出する像と混在して視認される系の変色性積層体としては、支持体上に着色層を設け、前記着色層上に低屈折率顔料バインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層Eを設け、前記多孔質層E上に低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層Fを順次設けてなり、前記着色層と多孔質層Fが像を形成してなる構成が挙げられる。
前記多孔質層Eは、乾燥状態で下層を隠蔽するため白色不透明化し、多孔質層Fは有色不透明化する。よって、白地に多孔質層Fによる像が視認されることとなる。
又、吸液状態では多孔質層Eが透明化し、且つ、多孔質層Fによる像は有色透明化するため、着色層と多孔質層Fの像が混在した像を視認することができる。
この場合、多孔質層Fによる像と着色像が重なった部分は混色となり、より変化性のある積層体となる。又、多孔質層Fによる像が支持体及び/又は着色像と同系色であると、吸液状態で支持体及び/又は着色像と同化して視覚されなくなるため、異なる色調にする必要がある。
尚、多孔質層Eに、多孔質層Fと色調の異なる着色剤を含有したり、支持体と多孔質層Eを互いに異なる色調とすることにより、更に色彩変化に富む積層体を得ることができる。
【0009】
前記支持体の材質は、耐水性を有するものであれば特に限定されないが、織布、編布、起毛布、植毛布、パイル生地等の布帛、合成紙、フィルム、プラスチック、ゴム、合成皮革、レザー、ガラス、陶磁器、木材、石材等が挙げられる。
又、耐水性に乏しい材質、例えば、上質紙、中質紙、アート紙、キャストコート紙、コート紙等であっても、フィルムによるラミネート、樹脂を塗工又は含浸する等の方法により、支持体として用いることができる。
前記支持体形態としては平面状のものが好ましいが、凹凸状の形態であってもよい。
【0010】
前記着色層中に含まれる着色剤としては、一般有色染料、顔料、又は、蛍光染料、顔料が用いられ、所望によりパール顔料、金属粉顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン等の白色顔料等を用いることもできる。
前記着色剤は、膜形成材料であるバインダー中に分散されて、インキ、塗料等の色材として適用され、着色層を形成できる。
又、前記着色層が像を形成する場合、前記像の形状は特に限定されるものではないが、図柄、文字、記号等が挙げられる。
【0011】
前記多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であって、乾燥状態では下層を隠蔽し、水等の媒体を吸液すると透明又は半透明化して下層を視認でき、前記吸液した部分が乾燥すると再び元の状態に戻る層である。
又、多孔質層中に着色剤を含む場合、乾燥状態では有色不透明化して下層を隠蔽し、水等の媒体を吸液すると有色透明又は有色半透明化して下層を視認でき、前記吸液した部分が乾燥すると再び元の状態に戻る層である。
前記着色剤としては一般有色染料、顔料、又は、蛍光染料、顔料が挙げられ、所望によりパール顔料、金属粉顔料等を用いることもできる。
前記低屈折率顔料としては、微粒子状珪酸、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.7の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては微粒子状珪酸が挙げられる。微粒子状珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法微粒子状珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるもの(以下、湿式法微粒子状珪酸と称する)とに大別され、いずれを用いることも可能であるが、湿式法微粒子状珪酸を用いた場合、乾式法微粒子状珪酸の系に較べて常態での隠蔽性が大きいため、微粒子状珪酸に対するバインダー樹脂の混合比率を大きくすることが可能となり、多孔質層の皮膜強度を向上させることができるので、より好適に用いられる。
前記した如く多孔質層の常態での隠蔽性を満足させるために用いられる微粒子状珪酸としては、湿式法微粒子状珪酸が好ましい。これは、乾式法微粒子状珪酸と、湿式法微粒子状珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法微粒子状珪酸は以下に示されるような珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、
【化1】

湿式法微粒子状珪酸は、以下に示されるように、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。従って、前記乾式法微粒子状珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法微粒子状珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法微粒子状珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
【化2】

又、前記多孔質層に含まれる低屈折率顔料は、浸透する媒体が主に水であることから、適度の親水性を有することが望ましい。従って、湿式法微粒子状珪酸は乾式法微粒子状珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く存在するため親水性が高く、好適に用いられる。
【0012】
前記湿式法微粒子状珪酸を低屈折率顔料として用いる場合、湿式法微粒子状珪酸の種類、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸水状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m〜30g/mであることが好ましく、より好ましくは、5g/m〜20g/mである。1g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/mを越えると吸水時に十分な透明性を得ることが困難である。
【0013】
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散して塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して顔料に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。よって、耐洗濯性、耐擦過性が必要となる用途においては、上述のバインダー樹脂としてウレタン系樹脂又はナイロン樹脂を用いるか、或いは前記樹脂を少なくとも含有することが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解及至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、媒体との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0015】
又、多孔質層が像を形成する場合、前記像としては図柄、文字、記号等が挙げられるが、形状は特に限定されるものではない。尚、下層に着色像を設ける構成の場合は、多孔質層は多数の線の組み合わせからなる像が好適である。
前記像とは、多数の平行線、交叉線、線の組み合わせにより形成されるハニカム状、網状、格子状、方眼状、亀甲模様、その他の幾何学模様が有効である。尚、前記線は実線、破線等の直線は勿論、曲線、スパイラル線、屈曲線等であってもよく、又、線の太さや密度は、積層体や着色像の大きさ、形状によって適宜決められる。
前記した多数の線の組み合わせからなる像を設けることにより、乾燥状態で多孔質層が完全に着色像を隠蔽していなくても、視覚的に隠蔽したような効果を得ることができる。即ち、前記多数の線の組み合わせからなる像は着色像による残像を部分的に隠蔽し、且つ、残像を視覚的にカムフラージュする効果を有するからである。
【0016】
更に、前記多孔質層中には、従来より公知の二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄−二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を添加して色変化を多様にすることもできる。
【0017】
前記多孔質層及び着色層は、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装、等の手段により形成することができる。
【0018】
前記のようにして形成される変色性積層体には、必要によって、二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄−二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を含むインキを塗布して金属光沢層を設けたり、温度変化により可逆的に変色する可逆熱変色性組成物を含む熱変色層を設けたり、或いは、前記多孔質層中に可逆熱変色性組成物を含有させることにより、媒体による様相変化と共に熱又は冷熱による様相変化を付与して変化性を高めることもできる。
前記可逆熱変色性組成物としては、例えば、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び、(ハ)前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物、液晶、AgHgI、CuHgI等が用いられる。
前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物としては、具体的には、特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44708号公報、特公昭52−7764号公報、特公平1−29398号公報、特開平7−186546号公報等に記載のものが挙げられる。前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、所謂、温度変化による温度−色濃度について小さいヒステリシス幅(ΔH)を示して変色するタイプである。
【0019】
又、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプであり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性組成物も有効である。
【0020】
前記した電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物は、そのままの適用でも有効であるが、マイクロカプセルに内包して使用するのが好ましい。即ち、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜30μmの範囲が実用性を満たす。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0021】
前記した変色性積層体の構成において、保護層や光安定剤層を適宜設けることもできる。具体的には、前記光安定剤層は紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を分散状態に固着した層である。
尚、老化防止剤、帯電防止剤、極性付与剤、揺変性付与剤、消泡剤等を必要に応じて各層に添加して機能を向上させることもできる。
【0022】
前記変色性積層体に適用される液体は、水が簡易性、安全性、コスト面から好適に用いられるが、乾燥速度を調整して印像の可視時間を延長化させるためにプロピレングリコール等、微量の水溶性有機溶剤を配合することもできる。
【0023】
本発明変色性積層体は平面状に限らず、凹凸状、立体状等、様々な形態が有効である。又、具体的な実施形態としては、例えば、ぬいぐるみ、人形、レインコート等の人形用衣装、傘や鞄等の人形用付属品、水鉄砲の標的、車や船を模した模型、人間と人形の手形や足形等の形跡を現すボード等の玩具類、水筆紙、水筆シート等の教習具類、文房具類、ドレス、水着、レインコート等の衣類、雨靴等の靴類、防水加工を施した本、カレンダー等の印刷物類、スタンプカード、パズル、各種ゲーム等の娯楽用具類、ウェットスーツ、浮袋、水泳用浮板等の遊泳又は潜水用具類、コースター、コップ等の台所用具類、その他、傘、造花、当りくじ等が挙げられる。
又、各種インジケーターとして適用することもでき、例えば、配管、パイプ、水槽、タンク等の液洩れ検知、禁水性薬品の輸送や保管場所での水濡れ検知、結露、降雨等の検知、使い捨ておむつの尿の検知、各種容器やプールの液量、水深検知、土壌中の水分検知等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示す。尚、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1(図1乃至3参照)
支持体2として、ABS樹脂と青色顔料を混練して射出成形して得た青色のミニチュアカーのボディ上に、円形をくり抜いたマスキングを施し、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる白色水性スプレーインキを用いてスプレー塗装し、更に70℃で約30分間加温硬化させ、多孔質層C6を形成した。
次いで、上記多孔質層C6上に、ピンク色顔料3.0部、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなるピンク色水性スプレーインキを用いて「A」の文字をスプレー塗装して70℃で約30分間加温硬化させ、多孔質層D7を形成して変色性積層体1を得た。
【0025】
前記変色性積層体1は、乾燥状態では青色のミニチュアカーに白色円形の多孔質層C6と、前記円形内に多孔質層D7によるピンク色の「A」の文字が描かれたデザインを示していたが(図1)、水に浸漬させると、多孔質層C6が透明化すると共に多孔質層D7もピンク色透明化するため、全面が青色のミニチュアカーに、前記多孔質層D7のピンク色と支持体2の青色が混色となった紫色の「A」の文字が視認された(図2)。
前記積層体を水中から取り出すと、乾燥するにつれて徐々に多孔質層C6と多孔質層D7が不透明化し、完全乾燥状態で元の状態、即ち、青色のミニチュアカーに白色円形と、前記円形内にピンク色の「A」の文字が描かれたデザインが視覚された。
前記変色性積層体は、前述のように乾燥状態と吸液状態で像の形状が変化し、且つ、乾燥状態におけるピンク色の「A」の文字と吸液状態における紫色の「A」の文字は鮮明且つ綺麗に視覚され、玩具性も十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0026】
実施例2
支持体として、ABS樹脂と青色顔料を混練して射出成形して得た青色のミニチュアカーのボディ上に、円形をくり抜いたマスキングを施し、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる白色水性スプレーインキを用いてスプレー塗装し、更に70℃で約30分間加温硬化させ、多孔質層Cを形成した。
次いで、前記多孔質層C上に、ピンク色顔料3.0部、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなるピンク色水性スプレーインキを用いて「A」の文字、及び、黄色顔料3.0部、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる黄色水性スプレーインキを用いて「B」の文字をスプレー塗装し、更に70℃で約30分間加温硬化させて多孔質層Dを形成して変色性積層体を得た。
【0027】
前記変色性積層体は、乾燥状態では、青色のミニチュアカーに白色円形の多孔質層Cと、前記円形内に多孔質層Dによるピンク色の「A」の文字及び黄色の「B」の文字が描かれたデザインを示していたが、水に浸漬させると、多孔質層Cが透明化すると共に多孔質層Dもピンク色透明化及び黄色透明化するため、全面が青色のミニチュアカーに、前記多孔質層Dのピンク色と支持体の青色が混色となった紫色の「A」の文字、及び多孔質層Dの黄色と支持体の青色が混色となった緑色の「B」の文字が視認された。
前記積層体を水中から取り出すと、乾燥するにつれて徐々に多孔質層Cと多孔質層Dが不透明化し、完全乾燥状態で元の状態、即ち、青色のミニチュアカーに白色円形と、前記円形内にピンク色の「A」の文字及び黄色の「B」の文字が描かれたデザインが視覚された。
前記変色性積層体は、前述のように乾燥状態と吸液状態で像の形状が変化し、且つ、乾燥状態におけるピンク色の「A」の文字及び黄色の「B」の文字と、吸液状態における紫色の「A」の文字及び緑色の「B」の文字は鮮明且つ綺麗に視覚され、玩具性も十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0028】
実施例3(図4参照)
支持体2として白色のABS樹脂で射出成形して得た白色のミニチュアカーボディ上の全面に、黄色顔料と油性アクリル系樹脂と溶剤からなる油性黄色スプレーインキを用いてスプレー塗装し、乾燥させて、着色層3を形成した。
次いで、前記着色層3上の全面に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる白色水性スプレーインキを用いてスプレー塗装し、70℃で約30分間加温硬化させ、多孔質層C6を形成した。
次いで、前記多孔質層C6上に、青色顔料3.0部、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:パーマリンUA−150、ポリエーテル系ウレタン樹脂、固形分30%、三洋化成工業(株)製〕50部、水30部、イソプロピルアルコール10部、シリコーン系消泡剤0.5部、レベリング剤3部イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる青色水性スプレーインキを用いて「A」の文字をスプレー塗装し、70℃で約30分間加温硬化させ、多孔質層D7を形成して変色性積層体1を得た。
【0029】
前記変色性積層体1は、乾燥状態では、白色のミニチュアカーに多孔質層D7による青色の「A」の文字が描かれたデザインを示していたが、水をかけると多孔質層C6が透明化すると共に多孔質層D7も青色透明化するため、全面が黄色のミニチュアカーに、前記多孔質層D7の青色と着色層3の黄色が混色となった緑色の「A」の文字が視認された。
前記積層体は乾燥するにつれて徐々に多孔質層C6と多孔質層D7が不透明化し、完全乾燥状態で元の状態、即ち、白色のミニチュアカーに青色の「A」の文字が描かれたデザインが視覚された。
前記変色性積層体は、前述のように乾燥状態における青色の「A」の文字と、吸液状態における緑色の「A」の文字は鮮明且つ綺麗に視覚され、且つ、「A」の文字を設けていない部分も変色するため、玩具性を十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0030】
実施例4
支持体として、ピンク色の50デニールポリエステルトリコット生地上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、黄色顔料3.0部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる黄色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を施して多孔質層Cを形成した。
次いで、前記多孔質層C上に、青色顔料0.5部、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュの水玉柄のスクリーン版にて水玉模様を印刷して多孔質層Dを形成し、変色性積層体を得た。
【0031】
前記変色性積層体は、乾燥状態では、多孔質層Cによるパステル調の黄色と、多孔質層Dによるパステル調の青色の水玉模様が視覚されていたが、水を付着させると多孔質層Cが黄色透明化すると共に多孔質層Dも青色透明化するため、全面が支持体と多孔質層Cの色調が混色となった赤色の布帛に、支持体と多孔質層Cと多孔質層Dの色調が混色となった茶色の水玉模様が視認された。
前記積層体は乾燥するにつれて徐々に多孔質層Cと多孔質層Dが不透明化し、完全乾燥状態で元の状態、即ち、パステル調の黄色の布帛にパステル調の青色の水玉模様が描かれたデザインが視覚された。
前記変色性積層体は、前述のように乾燥状態における青色の水玉模様と、吸液状態における茶色の水玉模様は鮮明且つ綺麗に視覚され、且つ、水玉模様を設けていない部分も変色するため、玩具性を十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0032】
実施例5(図5乃至7参照)
支持体2として、白色の塩化ビニールフィルム(大きさ300mm×250mm、厚さ50μm)上に、ピンク顔料3部、水性ポリエステルエマルジョン〔商品名:ファインテックスES−675、大日本インキ工業(株)製〕50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤3部、レベリング剤2部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合、攪拌してなるピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて直径150mmの円形を印刷して着色層3を形成した。
次いで、前記着色層3上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にてフィルム全面にベタ印刷を施して多孔質層E8を形成した。
次いで、前記多孔質層E8上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料1.0部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて水玉模様(直径20mmの円形、30mmの間隔で均等に配置)を印刷して多孔質層F9を形成し、変色性積層体1を得た。
【0033】
前記変色性積層体1は、乾燥状態では白色の多孔質層E8上に青色の水玉模様の多孔質層F9が視認されるが(図5)、水を含ませた筆で変色性積層体1に水を付着させると、多孔質層F9は青色透明化し、且つ、多孔質層E8が透明化するため、着色層3のピンク色の円形が現出して多孔質層F9の水玉模様と混在した像が視認される。
尚、着色層3を設けた部分と重なった部分の多孔質層F9の水玉模様は、前記着色層3のピンク色と混色になった紫色の水玉模様であり、着色層3と重なっていない部分の多孔質層F9の水玉模様は青色のままであった。
前記した様相は乾燥するにつれて徐々に多孔質層E8と多孔質層F9が不透明化してピンク色の円形は視認され難くなり、完全に乾燥した段階では、再び、白地にパステル調の青色の水玉模様が視覚された
前記変色性積層体1は、前述のように乾燥状態における青色の水玉模様と、吸液状態における紫色及び青色の水玉模様とピンク色の円形が混在した像は鮮明且つ綺麗に視覚され、玩具性を十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0034】
実施例6(図8参照)
支持体2として、黄色に着色されたサテン生地上に、ピンク顔料3部、水性ポリエステルエマルジョン〔商品名:ファインテックスES−675、大日本インキ工業(株)製〕50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤3部、レベリング剤2部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合、攪拌してなるピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて薔薇の花を印刷し、着色層3を形成した。
次いで、前記着色層3上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にてサテン生地の全面にベタ印刷を施して多孔質層E8を形成した。
次いで、前記多孔質層E8上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料1.0部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて薔薇の葉と茎の図柄を着色層3を設けていない部分に近接するように印刷して孔質層F9を形成し、変色性積層体1を得た。
【0035】
前記変色性積層体1は、乾燥状態では白色の多孔質層E8上に多孔質層F9による青色の薔薇の葉及び茎のみ視認されるが、水を含ませた筆で変色性積層体1に水を付着させると、多孔質層F9は有色透明化し、且つ、多孔質層E8が透明化するため、支持体2の黄色と着色層3のピンク色の薔薇の花が視認され、多孔質層F9の薔薇の葉及び茎と混在した像が視認される。
尚、支持体2と重なった部分の多孔質層F9の薔薇の葉及び茎は、前記支持体2の黄色と混色になった緑色の像であった。
前記した様相は乾燥するにつれて徐々に多孔質層E8と多孔質層F9が不透明化してバラの花は視認され難くなり、完全に乾燥した段階では、再び、白地にパステル調の青色の薔薇の葉及び茎の像のみが視覚された
前記変色性積層体1は、前述のように乾燥状態における青色の薔薇の葉及び茎の像と、吸液状態におけるピンク色の薔薇の花と緑色の薔薇の葉及び茎が混在した像は鮮明且つ綺麗に視覚され、且つ、薔薇の花、葉及び茎の像を設けていない部分も変色するため、玩具性を十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0036】
実施例7
支持体として、白色のPETフィルム(大きさ300mm×250mm、厚さ50μm)上に、ピンク顔料3部、水性ポリエステルエマルジョン〔商品名:ファインテックス ES−675、大日本インキ工業(株)製〕50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤3部、レベリング剤2部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合、攪拌してなるピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて直径150mmの円形を印刷し、着色層を形成した。
次いで、前記着色層上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、黄色顔料1.5部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる黄色スクリーン印刷用インキ用いて、80メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を施して多孔質層Eを形成した。
次いで、前記多孔質層E上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料1.0部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて水玉模様(直径10mmの円が10mmの間隔で均等に配置)を印刷して多孔質層Fを形成し、変色性積層体を得た。
【0037】
前記変色性積層体は、乾燥状態では黄色の多孔質層E上に多孔質層Fによる青色の水玉模様が視認されるが、水を含ませた筆で変色性積層体に水を付着させると、多孔質層E及び多孔質層Fが有色透明化するため、着色層の円形が視認され、多孔質層Fの水玉模様と混在した像が視認される。
尚、着色層による円形は多孔質層Eの黄色と混色となった赤色であり、着色層を設けた部分と重なった部分の多孔質層の水玉模様は、前記着色層のピンク色及び多孔質層Eの黄色と混色になった茶色の水玉模様であり、着色層と重なっていない部分の多孔質層の水玉模様は多孔質層Eの黄色と混色になった緑色の水玉模様になる。
前記した様相は乾燥するにつれて徐々に多孔質層Eと多孔質層Fが不透明化して円形は視認され難くなり、完全に乾燥した段階では、再び、黄色地に青色の水玉模様が視覚された
前記変色性積層体は、前述のように乾燥状態における青色の水玉模様と、吸液状態における茶色及び緑色の水玉模様と赤色の円形が混在した像は鮮明且つ綺麗に視覚され、玩具性を十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【0038】
実施例8
支持体として、白色のサテン生地上に、ピンク顔料3部、水性ポリエステルエマルジョン〔商品名:ファインテックスES−675、大日本インキ工業(株)製〕50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤3部、レベリング剤2部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合、攪拌してなるピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて薔薇の花を印刷し、着色層を形成した。
次いで、前記着色層上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、黄色顔料1.5部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる黄色水性スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を施して多孔質層Eを形成した。
次いで、前記多孔質層E上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料1.0部、バインダー樹脂として水性ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、水系インキ用架橋剤2部を均一に混合、攪拌してなる青色水性スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて薔薇の葉と茎の図柄を着色層を設けていない部分に近接するように印刷して多孔質層Fを形成し、変色性積層体を得た。
【0039】
前記変色性積層体は、乾燥状態では黄色の多孔質層E上に多孔質層Fによる青色の薔薇の葉及び茎の像が視認されるが、水を含ませた筆で変色性積層体に水を付着させると、多孔質層E及び多孔質層Fが有色透明化するため、着色層の薔薇の花が視認され、多孔質層Fの薔薇の葉及び茎と混在した像が視認される。
尚、着色層による薔薇の花は多孔質層Eの黄色と混色となった赤色であり、多孔質層Fの薔薇の葉及び茎は、多孔質層Eの黄色と混色になった緑色の像であった。
前記した様相は乾燥するにつれて徐々に多孔質層Eと多孔質層Fが不透明化して薔薇の花は視覚され難くなり、完全に乾燥した段階では、再び、黄色地に青色の薔薇の葉及び茎の像が視覚された
前記変色性積層体は、前述のように乾燥状態における青色の薔薇の葉及び茎の像と、吸液状態における赤色の薔薇の花と緑色の薔薇の葉及び茎が混在した像は鮮明且つ綺麗に視覚され、玩具性を十分に兼ね備えている。
又、前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明変色性積層体の一実施例の斜視図である。
【図2】図1の変色性積層体に水が付着した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の変色性積層体のA−A断面図である。
【図4】本発明変色性積層体の他の実施例の縦断面図である。
【図5】本発明変色性積層体の他の実施例の斜視図である。
【図6】図5の変色性積層体に水が付着した状態を示す斜視図である。
【図7】図5の変色性積層体のA−A断面図である。
【図8】本発明変色性積層体の他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 変色性積層体
2 支持体
3 着色層
6 多孔質層C
7 多孔質層D
8 多孔質層E
9 多孔質層F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層C、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層Dを順次設けた積層体であって、前記支持体と多孔質層Cが互いに異なる色調を呈し、且つ、多孔質層Dが像を形成してなり、乾燥状態と吸液状態で異なる色調の像を視認できる変色性積層体。
【請求項2】
前記多孔質層Cは、着色剤を含有する乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する層であり、且つ、多孔質層Cと多孔質層Dは互いに異なる色調を呈する請求項1記載の変色性積層体。
【請求項3】
支持体上に着色層、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料バインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で白色不透明化し、吸液状態で透明又は半透明化する多孔質層E、屈折率が1.4〜1.7の低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化し、吸液状態で有色透明又は有色半透明化する多孔質層Fを順次設けた積層体であって、前記着色層と多孔質層Fが像を形成してなり、乾燥状態で多孔質層Fの像が視認され、吸液状態で着色層と多孔質層Fの混在した像が視認される変色性積層体。
【請求項4】
前記多孔質層は、低屈折率顔料として湿式法で製造される屈折率が1.4〜1.7の微粒子状珪酸を含んでなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変色性積層体。
【請求項5】
前記多孔質層は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂を含んでなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変色性積層体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−188996(P2008−188996A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63541(P2008−63541)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【分割の表示】特願平10−48800の分割
【原出願日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】