説明

変色性釣り道具

本発明の釣り道具には、光(フォトクロミック)、温度変化(サーモクロミック)または周囲水分の変化(ソルベートクロミック)への曝露時に変色するまたは発色する、一種またはそれより多い染料が組込まれている。ポリマーから製造される部材を包む製品または全体としてポリマーである製品は本発明により利益を得ることができ、かかる製品としては、釣り糸、釣竿、釣り用リール、釣竿のラインガイドを巻くのに用いられるスレッド、および釣り用リール・ハンドルを挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、釣りに用いられるポリマー性構成要素であって、その中に組み込まれた一種または複数のフォトクロミック(光感受性)染料、サーモクロミック(熱感受性)染料またはソルバクロミック(溶剤感受性)染料を包むポリマー性構成要素に関する。
【0002】
背景技術
染料および着色剤は、いくつかの機能を果たす釣り道具の多くの遍在的な側面のうちの一つである。最も顕著なことには、釣人たちには、釣り糸について数多くの異なる可能な色が与えられている。選択される色は、多くの場合、水面より上下の所望の糸視認性における利害平衡の個人的好みの問題であり、選択されたルアー、そのルアーの操作、および引きつけられると考えられる魚のタイプに影響を及ぼし得る。
【0003】
また、色は、製造業者らによっても満足のいく製品外観を示すのに用いられ、それらの製品を長期の陳列棚上で競争相手の製品から区別することができる。特に、釣竿ブランクは、透明な光沢または艶消仕上げの被覆の下部で、しばしば、赤、黒または白に着色され、ラインガイド巻き用スレッドは、赤、黒、白または金色である。釣竿の柄は、多くの場合、黒色のポリマーで製造され、天然もしくは合成コルクかまたは握りうるエラストマーの一またはそれより多い部分を伴う。小売価格が様々である釣り用リールの外部構成要素もまた、一またはそれより多い成形ポリマーからつくられていてもよく、それら成形ポリマーは、所望の外観を示し、更には、リールにおいて一定の機能を果たす。
【0004】
釣り道具の性能を高めるであろう視覚に基づく特徴を与える独特の色または外観を、釣り道具に与える手段を有することは、望ましいであろう。
発明の要旨
本発明の目的は、ポリマー着色剤であって、釣り道具の内部またはその上に使用され釣り道具の性能または有用性を高めることができるポリマー着色剤を提供することである。
【0005】
本発明の更なる目的は、関心を引き魅力的な、色に基づく特性をもつ釣り道具を提供するための系を提供することである。
本発明のこれら目的、および本明細書中の説明により明らかになるであろう他の目的によれば、本発明にしたがった釣り道具は、(a)少なくとも一種のポリマー性構成要素を有する製品であって、スポーツの釣りに有用である前記製品;および(b)前記ポリマー性構成要素の内部もしくはその上に配置させたか、または前記ポリマー性構成要素の全体にわたって分配させた、染料、顔料または配合物を含む少なくとも一種の変色剤であって、その知覚色を、周囲の電磁線(フォトクロミック)、温度(サーモクロミック)または水分レベル(ソルベートクロミック)の変化の結果として変化させる前記変色剤、を含む。
【0006】
本発明にしたがった釣り用製品は、可逆性変色剤を使用して、変色性製品の性能を高める。釣り糸は、水面より上では一の色を示し、水面下では別のよりカムフラージュされた色を示すことができる。これにより、釣り人には釣り糸を見て追跡できることに関連した利点が提供されると同時に、釣り糸を魚から隠すことにもなる。
【0007】
発明の具体的な説明
ポリマー性の釣り糸、ルアー、および、釣りに有用なそれらのポリマー性装備または構成要素は、その内部またはその上に一種またはそれより多いフォトクロミック染料、サーモクロミック染料またはソルベートクロミック染料が分散されたポリマーにより製造される。フォトクロミック染料は、それらが感受性である日光または波長の放射線に曝露された場合、日光または放射線に曝露された領域上に変色を生じる。サーモクロミック染料は、比較的温暖な空気にある釣り糸を相対的に冷たい水中に落としたときなど、温度の変化に応答する。ソルベートクロミック染料は、(水などの)溶剤の存在に応答して、乾燥時に一の色を示し、湿潤時に別の色を示す。そのような変色の制御は、その装備の釣りの容易さと性能を高めることができる。
【0008】
例えば、一種またはそれより多い光感受性(フォトクロミック)染料、温度感受性(サーモクロミック)染料または水分感受性(ソルベートクロミック)染料を組込む釣り糸は、水面より上では比較的目視可能な外観を示し、水面より下ではより暗くて不明瞭な色プロフィールを示すように設計することができる。更に、一種またはそれより多いフォトクロミック染料を組込む釣り糸の変色感受性時間は、日光または紫外線に対する釣り糸の定格曝露時間に対応するように選択または変更される。釣り人には、(日光への曝露時に色の変化がないことにより)リール上の釣り糸が変化するという視覚指標が与えられる。
【0009】
一種またはそれより多いフォトクロミック染料、サーモクロミック染料またはソルバクロミック染料を含有する釣り用ルアーは、様々な水深と、明るい領域または陰になった領域の間を移動する際に色の変化を経験するが、これにより、捕食性魚に対するルアーの視覚的な誘引を高めると考えられる。染料(単数または複数)を適切に選択することにより、これらの色の変化は、視覚的な刺激に少なくとも部分的に感受性である捕食動物に対して、改良された有効性をもって、自然の獲物の視覚的外観に対応しうると考えられる。
【0010】
釣竿およびリールは全て、独特な視覚的外観のために一種またはそれより多いフォトクロミック染料、サーモクロミック染料またはソルバクロミック染料を組込み得るポリマー性構成要素を有する。例えば、釣竿ブランク、ラインガイドスレッドまたはリールハンドルは、好適に照明された店内ディスプレイにおいて、更には、昼光時間中に釣りをする際に屋外において、特有の視覚的外観のためにフォトクロミックにし得ると考えられる。
【0011】
本明細書中に用いられるように、そして特に断らない限り、百分率は全て、全組成物の重量基準である。
ポリマーは、問題となる釣り道具製品に適している、本発明にしたがった染料(単数または複数)との組合せについて選択するものとする。例えば、釣り糸は、良好なテナシティ、低い剛性、水中に沈めた場合に低〜無ストレッチ、良好な耐摩耗性、更には、溶剤、紫外線およびオゾンへの耐性を必要とする。釣り糸に用いるのに適するポリマーとしては、ポリアミド単独、または組合せで、ポリエステル、ポリオレフィン、ゲルスパンポリオレフィン(米国特許第5,540,990号および第6,148,597号を参照されたい)、フルオロポリマー等が挙げられる。釣り糸に用いるのに好ましいポリマーとしては、一種またはそれより多いポリアミド、ゲルスパンポリオレフィン、およびモノフィラメント糸用のフルオロポリマー、および編み釣り糸用のポリエステルが含まれる。
【0012】
釣竿の表面にラインガイド基部を固定するのに用いられるスレッドラッピングも、本発明によって染色することができる。このようなスレッドは、典型的には、ポリエステルから製造されるマルチフィラメント糸であり、所望の染料を含有する塗料浴にスレッドを通すことにより、または糸全体の連続着色のために紡糸溶液に染料を加えることにより、本発明にしたがった染料で被覆することができる。
【0013】
対照的に、釣り用リール構成要素は、比較的硬質で、耐久性があり、油、シリコーンおよび種々の石油基材溶剤に対して耐性が高いものとする。成形される釣り用リール構成要素に用いるのに適するポリマーとしては、ナイロン、ガラス繊維入りナイロンおよび類似の材料が挙げられる。装飾的魅力を有することもできる外部の機能性部材については、一種またはそれより多い染料を溶融樹脂中に組込むことができる。
【0014】
釣竿は、好都合には、多くの場合エポキシ樹脂を基材とする樹脂マトリックス中に延伸炭素繊維を含有するプレプレグ複合材料から製造される。そのプレプレグを、テーパー付きマンドレル上に圧延し、熱収縮セロファンでくるみ、硬化炉中で硬化させる。マンドレルを取外し、硬化したブランクをサンドペーパー仕上げし、仕上樹脂で被覆し、再度硬化させる。一種またはそれより多い染料は、プレプレグのエポキシ樹脂中に組み込みことができ、ブランクの(内側または外側)表面に、またはサンドペーパー仕上げをしたブランクに適用される仕上被覆に適用される。米国特許第5,964,056号を参照されたい。
【0015】
釣竿ハンドルは、多くの場合、成形された構成要素を有し、または単体成形部材から製造される。釣竿ハンドルを製造するのに用いることができる適するポリマーとしては、ナイロン、ガラス繊維入りナイロン等が挙げられる。一種またはそれより多い染料は、成形前の樹脂中に組込むことができるし、または成形済みハンドルへの外部被覆として適用することができる。
【0016】
ポリマー性釣り用ルアーは、一般的には、硬質体か、軟質体かまたは半硬質である。硬質体ルアーは、ポリウレタン、ポリエチレンおよびナイロンを成形することによって製造される。軟質体ルアーは、プラスチゾルを、所望のルアー形状を有する金型中に流し込み、その溶融プラスチゾルを硬化するまで冷却させることによって製造される。米国特許第5,827,551号および第6,269,586号を参照されたい。
【0017】
本発明で用いるのに適するフォトクロミック染料としては、ポリマー性モノフィラメントおよびマルチフィラメントの釣り糸を形成すること、ならびに、釣竿、釣り用ルアー、または釣り用リールに用いられる構成要素の形成することに付随した、注型および/または硬化操作において用いられる高熱にも耐性のあるポリマー性樹脂中で安定であり且つそれら樹脂と適合性のある有機フォトクロミック化合物が含まれる。本発明において使用が考えられる有機フォトクロミック化合物は、約400〜700ナノメートルの範囲内に少なくとも一つの活性吸収極大を有するか、またはそのような化合物を含有する物質である。それらフォトクロミック化合物は、各々単独で用いることができるし、または一種またはそれより多い他の有機フォトクロミック材料、安定剤、流動助剤等との組合せで用いることができる。
【0018】
例示的なフォトクロミック材料としては、アゾベンゼン化合物、チオインジゴ化合物、ジチゾン金属錯体、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、フルギド化合物、ジヒドロピレン化合物、スピロチオピラン化合物、1,4−2H−オキサジン、トリフェニルメタン化合物、ビオロゲン化合物、ピラン化合物、オキサジン化合物、クロメン、例えば、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピランおよびフェナントロピラン;スピロピラン、例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノピランおよびスピロ(インドリン)ピラン;オキサジン、例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンゾオキサジン;水銀ジチゾネート、フルギド、フルギミド(fulgimides)、重合性フォトクロミック化合物(米国特許第4,719,296号;第5,166,345号;第5,236,958号;第5,252,742号;第5,359,035号;第5,488,119号および第6,113,814号に開示されたものなど)およびこのようなフォトクロミック化合物の混合物が挙げられる。このようなフォトクロミック化合物および補足的なフォトクロミック化合物は、参照により本明細書中にそれらの開示が援用される米国特許第5,645,767号;第5,658,501号;第6,153,126号;第6,296,785号;第6,348,604号および第6,353,105号に記載されている。
【0019】
考えられる他のフォトクロミック物質としては、有機金属ジチオゾネート(organo-metal dithiozonates)、すなわち、(アリールアゾ)−チオギ酸アリールヒドラジデート、例えば、米国特許第3,361,706号等に記載されている水銀ジチゾネート;およびフルギドおよびフルギミド、例えば、米国特許第4,931,220号の段落20の5行〜段落21の38行に記載されている3−フリルおよび3−チエニルフルギドおよびフルギミドが挙げられる。被覆用組成物に加えることもできる重合開始剤の作用に耐性のある有機フォトクロミック物質を含有する層を適用することも可能である。このような有機フォトクロミック物質としては、金属酸化物中に封入されたフォトクロミック化合物が挙げられるが、それらは、参照により本明細書中にそれらの開示が援用される米国特許第4,166,043号および第4,367,170号に記載されている。
【0020】
上記の化合物のうち、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ピラン化合物およびオキサジン化合物は、色に対する感受性および色濃度が優れている。
適するスピロオキサジンタイプの化合物の例は、米国特許第5,208,132号(参照により本明細書中に援用される)に開示されており、1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];5−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1,3,3,5−テトラメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1,3,3−トリメチル−9’−メトキシスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1,3,3,5−テトラメチル−9’−メトキシスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1,3,3,5,6−ペンタメチル−9’−メトキシスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];4−トリフルオロメチル−1,3,3−トリメチル−5’−メトキシスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)−オキサジン];6’−トリフルオロメチル−1,3,3−トリメチル−5’−メトキシスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];4−トリフルオロメチル−1,3,3−トリメチル−9’−メトキシスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ピリド(3,2−f)(1,4)−ベンゾオキサジン];1,3,3,5,6−ペンタメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ピリド(3,2−f)(1,4)−ベンゾオキサジン];1−メチル−3,3−ジフェニルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ピリド(3,2−f)(1,4)−ベンゾオキサジン];1−ベンジル−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1−(3,5−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1−(4−クロロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];1−(2−フルオロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];6’−ピペリジン−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];6’−インドリン−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフタ(2,1−b)(1,4)−オキサジン];および式
【0021】
【化1】

【0022】
によって示される化合物が挙げられる。
好ましいスピロピランタイプの化合物の例は、米国特許第5,208,132号に開示されており、1−(2,3,4,5−ペンタメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)−ピラン]および1−(2−メトキシ−5−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)−ピラン]が挙げられる。
【0023】
また、適するフォトクロミック染料は、参照により本明細書中にその開示が援用される、Bamfeld, Chromic Phenomena: Technological Applications of Colour Chemistry, pp. 7-33, Springer Verlag (2002) の“Phenomena Involving a Reversible Colour Change”と題する第1章に開示された材料である。
【0024】
ピランタイプの化合物の例は、米国特許第5,208,132号に開示されており、2,2−ジ−p−メトキシフェニルナフト(2,1−b)−ピラン;2,2−ジ−p−メトキシフェニルフェナントラ(2,1−b)−ピラン;2,2−ジフェニルナフト(2,1−b)−ピラン;および2,2−ジフェニルフェナントラ(2,1−b)−ピランが挙げられる。
【0025】
サーモクロミック染料は、温度にしたがってそれらの色を可逆的に変化する無機物質または有機物質である。本発明にしたがえば、およそ15℃の温度で無色または暗色であるサーモクロミック染料が好ましく、それらは、加熱時に、または好ましくは、冷却時に変色する。特に好ましいのは、約25℃またはそれ未満、好ましくは、5〜20℃の範囲内、具体的には、12〜20℃の温度で変色するサーモクロミック染料である。
【0026】
電子供与体および電子受容体を含有するサーモクロミック染料、または酸に応答性の成分および酸性成分を含有する染料が好ましい。電子放出性色原体(電子供与体)および電子受容体の混合物は、電子供与体および電子受容体に基づくサーモクロミック染料として特に適している。電子供与体として好ましいのは、置換フェニルメタン、フルオラン、例えば、3,3’−ジメトキシフルオラン、3−クロロ−6−フェニルアミノフルオラン(-flourane)、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチル−7,8−ベンゾフルオラン、3,3’,3”−トリス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3’−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−7−フェニルアミノフルオランおよび3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオランなど、インドリルフタリド、スピロピランおよびクマリン、更には、これら物質の混合物である。
【0027】
電子受容体として特に適するのは、フェノール、アゾール、有機酸およびエステル、更には、有機酸の塩である。フェノールとして挙げることができる例は、フェニルフェノール、ビスフェノールA、クレゾール、レソルシノール、クロロルシノール(chlorolucinol)、フェノール、フェノールオリゴマー、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ピロカテコール、ピロガロール、およびp−クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物のトリマーである。アゾールとして挙げることができる例は、5−クロロベンゾトリアゾール、4−ラウリルアミノスルホベンゾトリアゾール、5−ブチルベンゾトリアゾール、ジベンゾトリアゾール、2−オキシベンゾトリアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾトリアゾール、5,5’−メチレンビスベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール;オキシベンゾイミダゾールなどのイミダゾール;およびテトラゾールである。有機酸は、例えば、芳香族および脂肪族のカルボン酸およびそれらの置換誘導体を包含する。芳香族カルボン酸の例は、サリチル酸、メチレンビスサリチル酸、β−レソルシル酸、没食子酸、安息香酸、p−オキシ安息香酸、ピロメリット酸、β−ナフトエ酸、タンニン酸、トルイル酸、トリメリット酸、フタル酸、テレフタル酸およびアントラナル酸(anthranalic acid)である。脂肪族カルボン酸の例は、1〜20個の炭素原子、好ましくは、3〜15個の炭素原子を有する酸、例えば、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸およびラウリン酸などである。エステルの例は、没食子酸ブチル、p−オキシ安息香酸エチルおよびサリチル酸メチルのような、アルキル基が1〜6個の炭素原子を含有する芳香族カルボン酸のアルキルエステルである。塩として挙げることができる例は、上に挙げた酸のアンモニウム塩および金属塩である。金属塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、スズ塩、チタン塩およびニッケル塩を包含する。特に好ましい電子受容体は、1,2−ヒドロキシステアリン酸、酒石酸およびクエン酸である。上に挙げた電子受容体は、単独で用いることができるし、または互いに混合することができる。更に、サーモクロミック材料は、それ自体で用いることができるし、またはマイクロカプセル封入された形で用いることができる。このタイプの適する染料は、米国特許第4,957,949号に記載されている。
【0028】
酸に応答性の成分および酸性成分に基づくサーモクロミック染料として好ましいのは、酸に応答性の色原体物質および酸性物質(酸成分)の混合物である。好ましい酸に応答性の物質は、トリフェニルメタンフタリド、フタリド、フタラン、アシルロイコメチレンブルー化合物、フルオラン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スピロピランおよびこれら物質の誘導体である。代表的な化合物は、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジブトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ジメチルフルオラン、3−クロロ−6−フェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、3,3’,3”−トリス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3’−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−ジエチルアミノ−7−フェニルアミノフルオラン、3,3−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチル)フェニル−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリドおよび2’−(2−クロロアニリノ)−6’−ジブチルアミノスピロ−[フタリド−3,9’−キサンテン]である。
【0029】
好ましい酸性物質は、1,2,3−ベンゾトリアゾール、フェノール、チオ尿素、オキソ芳香族カルボン酸およびこれら物質の誘導体である。代表的な化合物は、5−ブチルベンゾトリアゾール、ビスベンゾトリアゾール−5−メタン、フェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、2,2’−ビスフェノール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、p−オキシ安息香酸アルキルおよびフェノール性樹脂オリゴマーである。これら染料は、同様に、それ自体で用いることができるし、またはマイクロカプセル封入された形で用いることができる。このタイプの適する染料は、米国特許第5,431,697号に記載され、Dainichiseika Color & Chemicals Co., Ltd という会社より、例えば、Yellow PP−020(登録商標)という名称で、Hodogaya Chemicals Co., Ltd よりまたは Matsui Shikiso Chemicals Co., Ltd より、例えば、Photopia Yellow(登録商標)または Chromicolor Fast Blue S−17(登録商標)という名称で入手することができる。
【0030】
更に好ましいサーモクロミック染料は、コレステロールのアルカン酸エステルおよびアラルカン酸エステル、コレステロールカーボネートのアルキルエステルおよびそれらの混合物のような、液状結晶性コレステロール誘導体、具体的には、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基およびアルカン酸基を有するものである。9〜22個の炭素原子を有するアルカン酸基、または安息香酸基およびアルキル部分に1〜3個の炭素原子を有するアラルカン酸基を含有するコレステロールエステルおよびそれらの誘導体は、特に好ましい。コレステロールカーボネートエステルの場合、C〜C20アルキル基を有するものが好ましい。このタイプの適する化合物は、米国特許第3,619,254号に記載されている。
【0031】
ソルベートクロミック染料は、具体的な組成および配合とは無関係に、その吸収および/または発光スペクトルが、それらの周囲環境の極性−直近の空間体積中に一時的にまたは永続的に存在する気体、液体および/または固体の分子およびイオンをはじめとする−に感受性であり且つそれによって変化する光エネルギー吸収性物質として識別され、また実用上の用語で定義される。「ソルバクロミック」という用語は、その蛍光発光スペクトルが、それらが用いられるかまたは見出される溶剤の極性に対して感受性である、多数の蛍光体に関して認識され且つ長期に確定された特性に由来する。例えば、1−アニリノ−8−ナフタレンスルホニル酸のような蛍光体の発光スペクトルを、いろいろな極性を有する異なった溶剤中で調べる場合、その発光スペクトルは、溶剤極性が減少するにつれて、より短い波長へと移動する(ブルーシフト)ということが判っている。逆に、溶剤極性を増加させることは、概して、蛍光体の発光スペクトルを、より長い波長へと移動させる(レッドシフト)。レッドシフトは、常にではないが、多くの場合、評価されている蛍光体について放出された光子の全量または量子収率の減少を伴う。いろいろな極性を有する異なった溶剤に関する多数の蛍光体の発光スペクトル変化であるこの現象は、染料技術分野の当業者に周知である。米国特許第5,244,813号;第5,319,975号;および第6,140,041号を参照されたい。
【0032】
ソルバクロミック染料の最も良く知られている例は、蛍光体であるが、このクラスの全体としてのメンバーとしては、双方の吸収剤または発色団、更には、蛍光分子が挙げられる。このクラスの染料の各々および全てのメンバーに共通の不可欠な性質は、選択された染料物質が、いろいろな極性を有する異なった溶剤に曝露された場合に、そのスペクトル特性を変えるということである。蛍光体について、このスペクトル変化には、発光強度変化(charge)かまたは発せられた蛍光の波長変化が含まれうる。吸収剤または発色団の染料については、色の純度が変化することがありうるし、または染料の吸収スペクトルが、そのスペクトルのレッドかまたはブルーの側の方に移動することがありうる。ある選択された染料組成物が、ソルバクロミック染料として定義されるクラスのメンバーであるかどうかを決定するには、その試験は、単に経験的なものである。染料を、いろいろな極性を有する異なった有機溶剤に曝露する場合、染料は、スペクトル変化として経験的に認められるその色を変化させる。したがって、吸収剤染料は、その色によるスペクトル変化を、色の純度を変化させることによってかまたは実際の変色の観察によって示す。或いは、蛍光染料は、その吸収性励起光の変化によってか;または発せられた光の波長の変化によってか;または発せられた光の強さの変化によって、いろいろな極性を有する異なった溶剤への感受性を示す。
【0033】
当業者であれば選択された染料物質をソルバクロミック染料と識別することができる経験的試験法とこの実用上の定義により、「ソルバクロミック」および「極性感受性」という用語は、直接的に関連し、多くの場合、同じ意味であるということは認識され且つ理解されるであろう。しかしながら、これら用語の各々の意味は正確には等しくない。それとは反対に、「極性感受性染料」という用語は、いろいろな極性を有する異なった溶剤に感受性であるのみならず、任意の他の有機物質、分子、または認めうる−すなわち、示しうるまたは決定しうる−極性を有する物質にも感受性である染料配合物を定義し且つ識別する。したがって、いろいろな極性を有する、それ自体は溶剤でない有機組成物、化合物および配合物は、「有機溶剤」として古典的に定義される組成物に加えて、この用語によって明らかに包含され且つ含まれる。したがって、有機溶剤は、認めうる極性を有する有機被検体のクラスについて、全体としてのメンバー内で一つの群またはファミリーを構成しているにすぎない。この方式で、ある選択された染料を、いろいろな極性を有する複数の溶剤を用いて試験し且つ評価して、その選択された染料が、周囲環境の極性によってスペクトルに影響を受け且つ変化するということを経験的に示すことは、最も好都合であるが、いずれか他の種類またはタイプまたは有機分子も、あまり好都合でないおよび/または一層厳密な試験条件下にもかかわらず、その選択された染料のスペクトル感受性を示すのに用いることもできる。
【0034】
表1−極性感受性蛍光体
リン脂質蛍光体:
N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)ジパルミトイル(dipalmittcyl)−L−a−ホスファチジルエタノールアミン(NBD−PE)
N−(5−フルオロセインチオカルバモイル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩(フルオレセイン−PE)
N−(6−テトラメチルローダミンチオカルバモイル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩(TRITC DPPE)
N−(リサミンローダミンBスルホニル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩(ローダミンDPPE)
N−(テキサスレッドスルホニル)ジオルソイル(diolsoyl)−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩
N−(テキサスレッドスルホニル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩(Texas Red DPPE)
3−パルミトイル−2−(1−ピレンデカノイル)−L−a−ホスファチジルコリン(10−py−PC)
N−(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩
N−(1−ピレンスルホニル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩
N−(6−(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)アミノ)ヘキサノイルジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩
N−(ビオチノイル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩

アニオン系蛍光体:
cis−パリナリン酸
trans−パリナリン酸
p−((6−フェニル)−1,3,5−ヘキサトリエニル)安息香酸(DPHカルボン酸)
3−(p−(6−フェニル)−1,3,5−ヘキサトリエニル)フェニルプロピオン酸(DPHプロピオン酸)
1−ピレンカルボン酸
1−ピレンブタン酸(ピレン酪酸)
1−ピレンオナン酸(pyreneonanoic acid)
1−ピレンデカン酸
1−ピレンドデカン酸
1−ピレンヘキサデカン酸
11−((1−ピレンスルホニル)アミノ)ウンデカン酸
2−(9−アントロイルオキシ)パルミチン酸(2−AP)
2−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(2−AS)
3−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(3−AS)
6−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(6−AS)
7−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(7−AS)
9−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(9−AS)
10−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(10−AS)
11−(9−アントロイルオキシ)ウンデカン酸(11−AU)
12−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(12−AS)
12−(9−アントロイルオキシ)オレイン酸(12−AO)
16−(9−アントロイルオキシ)パルミチン酸(16−AP)
9−アントラセンプロピオン酸
9−アントラセンドデカン酸
1−ペリレンドデカン酸
6−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBDヘキサン酸)
12−(N−メチル)−N−((7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ドデカン酸
12−(N−メチル−N−((7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)オクタデカン酸
12−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ドデカン酸
11−(9−カルバゾール)ウンデカン酸(11−CU)
11−((5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)アミノ)ウンデカン酸
5−(N−ドデカノイル)アミノフルオレセイン
5−(N−ヘキサデカノイル)アミノフルオレセイン
5−(N−オクタデカノイル)アミノフルオレセイン
5−(N−ヘキサデカノイル)アミノエオシン
1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(1,8−ANS)
2−アニリノナフタレン−6−スルホン酸(2,6−ANS)
2−(p−トルイジニル)ナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム塩(2,6−TNS)
2−(N−メチルアニリノ)ナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム塩(2,6−MANS)
ビス−ANS(1,1’−ビ(4−アニリノ)ナフタレン−5,5’−ジスルホン酸二カリウム塩)
1−ピレンスルホン酸ナトリウム塩
2−(N−オクタデシル)アミノナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム塩

カチオン系蛍光体:
1,1’−ジヘキサデシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩(DiOC.sub.16(3))
3,3’−ジオクタデシルオキサカルボシアニン(dioctadecyloxacarboxyanine)過塩素酸塩(“DiO”,DiOC.sub.18(3))
1,1’−ジドデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩(DilC.sub.12(3))
1,1’−ジヘキサデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン(tetramethyolindocarbocyanine)過塩素酸塩(DilC.sub.16(3))
1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩(“:Dil”,DilC.sub.18(3))
1,1’−ジドコサニル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩(DilC.sub.22(3))
1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドジカルボシアニン過塩素酸塩(DilC.sub.18(5))
3,3’−ジオクタデシルチアカルボシアニン過塩素酸塩(DiSC.sub.18(3))
オクタデシルローダミンBクロリド塩(R18)
ローダミン6Gオクタデシルエステルクロリド
ローダミン101オクタデシルエステルクロリド
N−4−(4−ジデシルアミノスチリル)−N−メチルピリジニウムヨージド(4−di−10−ASP)
1−(4−トリメチルアンモニウムフェニル)−6−フェニル−1,3,5−ヘキサトリエンp−トルエンスルホネート(TMA−DPH)
6−パルミトイル−2−(((2−(トリメチル)アンモニウム)エチル)メチル)アミノ)ナフタレンクロリド(PATMAN)
1−ピレンメチルトリメチルアンモニウムヨージド
1−ピレンブチルトリメチルアンモニウムブロミド
3−(アントラセン)プロピルトリメチルアンモニウムブロミド
アクリジンオレンジ−10−ドデシルブロミド(ドデシルアクリジンオレンジ)
アクリジンオレンジ−10−ノニルブロミド(ノニルアクリジンオレンジ)

中性蛍光体:
1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン(DPH)
1−フェニル−6−((4−トリフルオロメチル)フェニル)−1,3,5−ヘキサトリエン(CF−DPH)
パラジウム二ナトリウムアリザリンモノスルホネート(Pd(QS).sub.2)
ナイルレッドまたは9−ジエチルアミノ−SH−ベンゾ[]フェノキサジン−5−オン
6−プロピオニル−2−ジメチルアミノナフタレン(プロダン)
6−ドデカノイル−2−ジメチルアミノナフタレン(ラウロダン)
N−フェニル−11−ナフチルアミン
1,10−ビス−(1−ピレン)デカン
1,3−ビス−(1−ピレン)プロパン
p−ジメチルアミノベンジリデンマロノニトリル
N−(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)ヘキサデシルアミン
N−(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)ジヘキサデシルアミン
4−(N,N−ジヘキサデシル)アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ=1,3−ジアゾール(NBDジヘキサデシルアミン)
4−(N,N−ジオクチル)アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD−ジオクチルアミン)
4−(ヘキサデシルアミノ)−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBDヘキサデシルアミン)
1−ピレンカルボキサルデヒド
1−ピレンノナノール
7−ジメチルアミノ−4−ペンタデシルクマリン
コレステリルアントラセン−9−カルボキシレート
1−ピレンメチル36−ヒドロキシル−22,23−ビスノル−5−コレネート(PMC)
1−ピレンメチル38−(cis−9−オクタデセノイルオキシ)−22,23−ビスノル−5−コレネート(PMCオレエート)
25−(NBD−メチルアミノ)−27−ノルコレステロール(NBD−MANC)
25−(NBD−メチルアミノ)−27−ノルコレステリルオレエート(NBD−MANCオレエート)
22−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−38−オール
22−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−38−イルリノレエート
N−(3−スルホニル)−4−(p−ジデシルアミノスチリル)ピリジニウム分子内塩(Di10ASP−PS)
3−(N,N−ジメチル−N−(1−ピレンメチル)アンモニウム)プロパンスルホネート分子内塩
4−(N,N−ジメチル−N−(1−ピレンメチル)アンモニウム)ブタンスルホネート分子内塩
N−e−(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)−L−リシン(ダンシルリシン)

表2−極性感受性発色団
リン脂質発色団:
2(3−ジフェニルヘキサトリエニル)プロパノイル−3−パルミトイル−L−a−ホスファチジルコリン(DPH−PC)
N−(6−(ビオチノイル)アミノヘキサノイル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩(ビオチン−X−DPPE)
N−((4−マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボニル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩(MMCC−DPPE)
N−((2−ピリジルジチオ)プロピオニル)ジパルミトイル−L−a−ホスファチジルエタノールアミントリエチルアンモニウム塩
アニオン系発色団:
15−フェニルペンタデカン酸
5−(N−ヘキサデカノイル)アミノフルオレセインジアセテート
本発明に用いられる染料は、いずれかこれらの固体、純液体、コンセントレート、エマルジョン、封入された形、または釣り糸中の均一な染料分布または表面被覆を形成するように計算されている任意の他の物理的形態としてポリマーに加えることができる。
【0035】
多くの状況において、一種またはそれより多い追加の配合剤を組成物中に包含させて、変色現象の反復可逆性および色の安定度を促すことが望まれるであろう。米国特許第6,733,887号および第6,727,300号を参照されたい。
【0036】
安定化材料は、変色性材料を含む組成物中に、フォトクロミック材料の組成物中への配合または被覆としての適用の前、適用と同時に、または適用の後に配合することができる。例えば、紫外線吸収剤は、組成物へのそれらの添加前にフォトクロミック物質と混合することができるし、またはこのような吸収剤は、フォトクロミック被覆と入射光との間に被覆として用いることができる。他の非限定的な態様において、更に別の安定剤を、変色性物質と混合後、それらを被覆用組成物へ添加して、変色性物質の光疲労耐性を改良することができる。フォトクロミック染料について、適する安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、無対称ジアリールオキサルアミド(オキサニリド)化合物および一重項酸素失活剤、例えば、有機リガンドとのニッケルイオン錯体、またはそれらの混合物が挙げられる。このような安定剤は、一般的には、米国特許第4,720,356号および第5,391,327号にそれぞれ記載されている。UV安定剤の適する量は、一般的には、全組成物重量に基づき約1ppm〜5wt%の範囲内であり、具体的な量は、特定の染料、ポリマーおよび製造装置を用いた単に慣習的な実験を実施することにより決定される。
【0037】
HALSは、ポリマー性材料が紫外線に曝露された場合にその材料中で形成されるフリーラジカルを捕捉する。HALS分子の機能性成分は、典型的には、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン部分である。典型的に、その2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン部分は、カルボニルまたはメラミン官能基に固定される。カルボニルまたはメラミン官能基への2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン部分の固定は、典型的には、安定剤の揮発性および抽出性を低下させる。低揮発性は、高温に遭遇する場合の用途における光安定剤の重要な特性であり、それは、しばしば、熱可塑性樹脂の加工および熱硬化性樹脂および塗料の硬化に生じる。しばしば、高温は、安定化した材料についての最終使用用途にも存在する。低揮発性は、加工、硬化および高温最終使用の際の安定剤の損失を妨げるのに役立つ。典型的には、カルボニル基に固定された2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン基を含有するHALS分子は、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−4−オールまたは4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンをカルボン酸塩化物またはエステルと反応させることによって製造される。
【0038】
HALS安定剤は、本発明によるフォトクロミック染料との使用に好ましい。特に好ましいのは、Ciba-Geigy 製のTINUVIN(商標)622などのHALS安定剤であるが、それらは、製品の溶融ポリマーに対して反応性ではなく、それ以外に、釣り糸に成形された場合の最終ポリマーの分子重量を減少させることがなく、しかも酸化によって着色することがない。変色が見出される場合、化学的に適合性の酸化防止剤を用いて、安定剤の酸化を妨げるまたは最小限にすることができる。リン基材酸化防止剤が好ましく、ベンゼンホスフィン酸ナトリウムおよび/またはベンゼンホスフィン酸が、特に好ましい。
【0039】
本発明の被覆に用いられる本明細書中に記載の変色性物質の量は、活性化時に裸眼で認めうる変色作用を生じるのに充分な量である。概して、このような量は、「フォトクロミック量」、「サーモクロミック作用」または類似の命名として記載することができる。変色性化合物は、一つまたは複数の化合物が適用されるまたはそれが配合される被覆用組成物が、フィルターを通さない日光で活性化された場合に結果として所望の色を示すような変色性量でおよび(混合物が用いられる場合)比率で用いられる。本発明の種々の態様において配合される変色性材料の具体的な量は、広範囲でありうる。一般的には、その量は、染料を含有する組成物の重量に基づき約10ppm〜40重量%であり、例えば、押出溶融混合物に加えられるフォトクロミック材料の濃度は、全ポリマー性組成物の重量に基づき約300ppm〜5wt%である。
【0040】
本発明によって着色することができる釣り道具には、少なくとも一つのポリマー性部材から製造されるまたはそれを有する釣り用製品である。代表的な製品としては、釣り糸、釣竿、釣竿上に用いられるガイド巻き付け用スレッド、釣竿ハンドル、釣り用リール、釣り用ルアー、疑似餌および餌本体が含まれる。便宜上、本発明は、釣り糸製造の場合で記載しているが、上記のタイプの他の釣り道具が、一種またはそれより多いフォトクロミック染料、サーモクロミック染料またはソルベートクロミック染料の添加によって有益でありうるということは、当業者に理解されるであろう。
【0041】
釣り糸は、変色剤の使用に特に充分に適している一連の釣り用製品である。フォトクロミック染料、サーモクロミック染料またはソルベートクロミック染料、顔料または着色剤を含有する釣り糸は、(周囲の日光、釣りをする水中より比較的高い温度、または水中に没しないことによる)水面より上の一つの色を釣り人に、そして水面下の魚に異なった色を示す。例えば、フォトクロミック糸は、釣り人には着色した釣り糸を示すが、水面下では透明であるまたは淡色を有すると考えられる。サーモクロミック釣り糸は、そのルアーが、より温かい表面水に近づくにつれて、水面より下(冷却された場合)の暗色〜より鮮明な色へと変化すると考えられる。このような色の表示差は、水中外のそれらの好ましい色と、水面下の魚に示されるより良い色を釣り人に選択させる釣り糸の色選択の平衡を移動させると考えられる。この変色差は、変色する釣り糸を、競争相手の変色しない釣り糸と区別するように、釣り糸の可逆変色特性を強調する店内ディスプレイの使用も可能にする。
【0042】
本発明による釣り糸は、可逆変色性外観を与える染料、顔料または着色剤を許容するであろういずれかの材料から製造することができる。適する釣り糸材料には、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンアクリレート、ゲルスパンポリエチレンまたはフルオロポリマーが含まれる。米国特許第3,994,990号および第4,338,277号(ポリアミド);第5,540,990号および第6,148,597号(ゲルスパンポリオレフィン);第5,625,967号(ポリエステル);第6,667,067号(フルオロポリマー)を参照されたい。
【0043】
本発明で用いられる可逆性変色剤は、釣り道具中に染料または顔料を配合するのに慣用的に用いられるいずれかの方法によって釣り糸中に配合するまたは適用することができる。例えば、可逆性変色剤は、相互に適合性の溶剤、例えば、水、鉱油、ロウ、可塑剤または有機溶剤中にその薬剤を含有する着色浴中に成形済み釣り糸を浸漬するまたは表面塗することによって、釣り糸またはラインガイドスレッドに適用することができる。変色剤は、約1ppm〜約99wt%の範囲内の濃度で用いられるであろう。
【0044】
可逆性変色剤は、同時押出された内層および外層の形で、別々に釣り糸中に配合することもできる。変色剤は、一般的には、釣り糸一次ポリマーと化学的におよび構造的に適合性であるポリマーと混合後、同時押出して、中心の釣り糸ポリマーコアの上に外装を成形する。
【0045】
可逆性変色剤は、更に、(a)釣り糸を可紡性混合物にするためのポリマーを含む溶融混合物に可逆性変色剤を加え、(b)その可紡性混合物を紡糸して、未延伸ポリマー糸を製造し、(c)そのポリマー糸を引いて、ポリマー糸内のポリマー鎖を、それら性質が、釣り糸としての使用に適する製品にさせる強力およびデニールに達するまで延伸し、そして(d)染料をポリマーチップとドライブレンドし、そして釣り糸およびポリマーに依存して、溶融押出または紡糸によって釣り糸を成形することにより、釣り糸中に配合し且つ釣り糸内に均一に分配することができる。溶融紡糸工程で釣り糸が経験する最高温度より高い分解点を有する化学的に適合性の可逆性変色剤の適切な選択は、可逆変色特性を示す釣り糸を生じるであろう。
【0046】
好ましくは、可逆性変色剤は、溶融紡糸添加剤として用いるための着色剤コンセントレートとして配合する。このような着色剤コンセントレートは、一種またはそれより多いポリマー、油、ロウ、エラストマーまたは可塑剤を含むことがありうる。
【0047】
請求項2に記載の釣り道具であって、その釣り糸が、約15〜少なくとも約500g/デニールの範囲内の引張モジュラスで、約5〜約50g/デニールの範囲内の(または可能ならば、それより多い)強力を示すもの。ナイロンモノフィラメントは、概して、20〜50g/dの範囲内のモジュラスを有するが、ゲルスパンポリオレフィン釣り糸(「スーパーライン」)は、少なくとも約500g/dの強力を示す。
【0048】
開示された且つ挙げられた特許は全て、参照により本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツの釣りに有用な製品を含む釣り道具であって、
前記製品が、
(a)少なくとも一種のポリマー性構成要素;および
(b)前記ポリマー性構成要素の内部もしくはその上に配置させたか、または前記ポリマー性構成要素の全体にわたって分配させた、染料、顔料または配合物を含む少なくとも一種の可逆性変色剤
を含む組成物から製造されるかまたは前記組成物を有し、
前記可逆性変色剤が、周囲の電磁線、温度または水分レベルの変化の結果としてその知覚色を変化させる、前記釣り道具。
【請求項2】
製品が釣り糸である、請求項1に記載の釣り道具。
【請求項3】
釣り糸が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ゲルスパンポリエチレンまたはフルオロポリマーから製造される、請求項2に記載の釣り道具。
【請求項4】
釣り糸が、ポリアミドから製造される、請求項3に記載の釣り道具。
【請求項5】
釣り糸が、ポリオレフィンから製造される、請求項3に記載の釣り道具。
【請求項6】
釣り糸が、ゲルスパンポリエチレンから製造される、請求項3に記載の釣り道具。
【請求項7】
釣り糸が、フルオロポリマーから製造される、請求項3に記載の釣り道具。
【請求項8】
可逆性変色剤を含む溶液で釣り糸を表面被覆するかまたは前記溶液中に釣り糸を浸漬することによって、前記可逆性変色剤を釣り糸に適用する、請求項2に記載の釣り道具。
【請求項9】
可逆性変色剤を適合性ポリマーと混合し、そして同時押出によって釣り糸の周囲の外層において前記可逆性変色剤を釣り糸に適用する、請求項2に記載の釣り道具。
【請求項10】
(a)釣り糸用のモノマーを含む溶融混合物に可逆性変色剤を添加して、可紡性混合物を生成し、(b)前記可紡性混合物を紡糸して、未延伸ポリマー糸を製造し、そして(c)前記ポリマー糸を延伸して、前記ポリマー糸中のポリマーを釣り糸としての使用に適するテナシティおよびデニールへと延伸することによって、前記可逆性変色剤を前記釣り糸中に組み込む、請求項2に記載の釣り道具。
【請求項11】
可逆性変色剤を、着色剤濃縮物として溶融混合物に加える、請求項10に記載の釣り道具。
【請求項12】
着色剤濃縮物が、ポリマー、油、水、ろう、エラストマーまたは可塑剤を含む、請求項10に記載の釣り道具。
【請求項13】
組成物が、紫外線安定剤または酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の釣り道具。
【請求項14】
紫外線安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤である、請求項13に記載の釣り道具。
【請求項15】
製品が、釣り用ルアーを含む、請求項1に記載の釣り道具。
【請求項16】
釣り用ルアーが、軟質の本体を有する、請求項15に記載の釣り道具。
【請求項17】
製品が、釣竿のラインガイド基部の周囲に巻かれたスレッドを含む、請求項1に記載の釣り道具。
【請求項18】
製品が、釣竿ブランクを含む、請求項1に記載の釣り道具。
【請求項19】
可逆性変色剤が、釣竿ブランクを成形するのに用いられたプリプレグ中に組み込まれている、請求項19に記載の釣り道具。
【請求項20】
可逆性変色剤を、釣竿ブランクの釣り用保護被覆中に組み込まれている、請求項19に記載の釣り道具。

【公表番号】特表2008−502364(P2008−502364A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527593(P2007−527593)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/019458
【国際公開番号】WO2006/009606
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(502407152)ピュア・フィッシング・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】