説明

変速機のハウジング

【課題】 重量増加及び部品点数増加することなく、合わせ面の面圧を確保することができる変速機のハウジングを提供することである。
【解決手段】 本発明の変速機のハウジングは、少なくとも第1ケース1及び第2ケース2の2つが合わさり、複数のボルト3によって締結される変速機のハウジングであって、
第1ケース1又は第2ケース2のうちボルト3の頭部31が位置するケースは、頭部31が当接する座面部121と、ボルト3の軸部32の周りが肉抜きされた形状となる軸穴122とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のハウジングに関し、特に複数のケースを合わせて締結する構成に特徴を有する変速機のハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
2つ以上のケースをボルトによって締結する変速機のハウジングとしては、例えば特許文献1に開示されるものがある。このようなハウジングは、ケースを合わせる部分が複数のボルトによって締結される。締結する際、ハウジングの内部に貯留される潤滑油がケースを合わせた部分(合わせ面)から漏れ出るのを防止するために、合わせ面の面圧を所定以上確保する必要がある。ボルトによって締結する場合、面圧はボルトの軸部から遠ざかるほど低くなるため、全ての合わせ面の面圧を所定以上にするためには、ボルトとボルトとの間隔を一定以上離すことができない。締結するためのボルトを多くすれば面圧を確保できるが、その分の重量増加、且つ部品点数増加による組み付けコスト増加などとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、重量増加及び部品点数増加することなく、合わせ面の面圧を確保することができる変速機のハウジングを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、少なくとも第1ケース及び第2ケースの2つが合わさり、複数のボルトによって締結される変速機のハウジングであって、
前記第1ケース又は第2ケースのうち前記ボルトの頭部側が位置するケースは、前記頭部が当接する座面部と、前記ボルトの軸部の周りが少なくとも一部肉抜きされた形状の軸穴とを有することである。
【0006】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記軸穴が前記座面部から前記第1ケース及び前記第2ケースが合わさる合わせ面に向かって徐々に肉抜きの範囲が拡大することである。
【0007】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記座面部が前記ボルトの軸方向に周辺よりも突出していることである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明においては、ボルトの頭部が当接する座面部から挿入されるボルトの軸部が位置する軸穴が、軸部の周りを少なくとも一部肉抜きした形状であるため、当該ボルトによる軸力が肉抜きされていない部分から合わせ面に加わる。そのため、軸部のすぐ周りに軸力が集中せず、軸部から離れたところに軸力が加わるため、1つのボルトによる軸力を分散(拡散)することができる。つまり、ボルトの数を増やしたのを同じ効果を発生することができる。よって、ボルトの増加による重量増加や部品点数増加がなくして、締結するケースの合わせ面の面圧を確保することができる。
【0009】
請求項2に係る発明においては、軸穴を座面部から合わせ面方向に徐々に肉抜きされる範囲を拡大することで、軸力がより軸部から離れた合わせ面へと分散する。特に、座面部に近い部分を軸部に当接するような形状とすることで、軸力による座面部の変形を防ぎ、より効率的に軸力を軸穴の周りに分散することができる。
【0010】
請求項3に係る発明においては、座面部を第1ケース及び第2ケースの何れとも別体とすることで、既存のケースの形状を変更せずに、軸力を分散する構成を実現しやすい。特にケースに一体・別体に関係なく、軸穴の形状が合わせ面方向に徐々に拡大する場合は、頭部から合わせ面までの距離を確保することができるため、軸力をより分散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態1のハウジング10の構成図である。
【図2】本実施形態1のハウジング10の主要部を一部断面で表した説明図である。
【図3】本実施形態1のハウジング10の主要部を一部断面で表した説明図である。
【図4】従来技術と本実施形態1のハウジング10との面圧を模式的に表した説明図である。
【図5】従来技術と本実施形態1のハウジング10との面圧をグラフ化した説明図である。
【図6】本実施形態2のハウジングの主要部を一部断面で表した説明図である。
【図7】本実施形態3のハウジングの主要部の構成図である。
【図8】図8の一部断面図である。
【図9】本実施形態4のハウジングの主要部の構成図である。
【図10】その他の実施形態のハウジングの主要部を一部断面で表した説明図である。
【図11】その他の実施形態のハウジングの主要部を一部断面で表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図11を参照して説明する。本実施形態に係る変速機のハウジング10(以下、「ハウジング10」と称する。)は、図1に示されるように、第1ケース1と第2ケース2とが合わさり、内部に変速機を収納し、車両に搭載されるものである。第1ケース1及び第2ケース2の形状は、図示されている形状に限定されるわけでない。第1ケース1と第2ケース2とがそれぞれに合わさる合わせ面11,21を有しており、第1ケース1の合わせ面11と第2ケース2の合わせ面21とが合わさっている状態を複数のボルト3の締結により、変速機が収納されるハウジングとなる。
【0013】
(実施形態1)
本実施形態1のハウジング10の第1ケース1は、第2ケース2の合わせ面21と当接する合わせ面11を備える鍔部12を有する。鍔部12は、箱状の本体から鍔状に突出している。鍔部12は、図2に示されるように、ボルト3の頭部31が当接する座面部121と、ボルト3の軸部31の周りが肉抜きされた軸穴122とを有する。頭部31と座面部121との間には座金33が配置されている。座金33は必要に応じて挿入可能である。軸穴122は、ボルト3の軸力方向(図2では矢印Yで示されている。)に徐々に軸部32から肉抜きの形状が拡大している。軸穴212は、軸力方向の断面がテーパ形状をしている。
【0014】
ボルト3は、第1ケース1から第2ケース2へと軸部31が挿入され、第1ケース1と第2ケース2とを締結により合わせることができる長さを有する。よって、公知のボルトを用いる。
【0015】
本実施形態1のハウジング10では、図3に示されるように、軸穴122が軸力方向Yに軸部32から離れるような肉抜き形状とすることで、メッシュ状に塗りつぶしている(図面上で記号Aで示される範囲)ように軸力が拡径方向に拡散する。なお、図3では図面の見やすいさを考慮し、第1ケース1及び第2ケース2の断面を示すハッチングが省略されており、範囲A以外の図示は図2と同じである。図4では、第1ケース1の合わせ面11に加わる面圧のうち、所定以上の面圧をもつ部分をメッシュ状に塗りつぶしている。図4では、左右方向に複数のボルト3が配置されるとして、上図が従来技術の構成による面圧、下図が本実施形態に係る構成による面圧を模式的に図示している。軸部32との間にすき間のない従来の軸穴の構成と比べた場合、軸力によって第1ケース1の合わせ面11に加わる面圧は、軸部32が位置する軸穴部分には面がないため、圧力による図示はない。そして、軸部32から拡径方向に離れた位置へと高い面圧の範囲がある。図では、軸部32から隣り合うボルト方向へと、それぞれαほど広がっている。面圧について、模式的にグラフ化した図が図5である。
【0016】
図5では、従来技術の構成における面圧とボルトの軸部の位置が破線で図示されている。そして、本実施形態の構成による面圧の図示については、本実施形態におけるボルト3の1つが従来技術の構成におけるボルトの1つ(軸部P2の位置)と同じ位置にあるとし、その他のボルト3の軸部32は軸部P1と軸部P3の位置には配置していないとなっている。従来の軸穴の場合、軸部32が位置する周辺の面圧が一番高く、軸部32から離れるごとに面圧が下がる。一方、本実施形態1のハウジング10における面圧は、軸部32周辺の面圧が一番高くならず、軸部32からいくらか離れた箇所の面圧が一番高く、そのピーク位置から離れるごとに面圧が下がる。ボルト3によって締結された軸部32周辺の面圧が低下して、1つのボルトで2つのボルトによって軸力を加えたようになっている。つまり、1つのボルトによる面圧の範囲が広がり、ボルト間のピッチを広げることができため、ボルトの本数を減らすことが可能である。
【0017】
よって、本実施形態1のハウジング10によれば、ボルト本数を増加することなく、ボルト本数を増加したのと同様に、第1ケース1と第2ケース2とを合わせた合わせ面11,12から潤滑油が漏れ出たりしないだけの所望の最低面圧を確保することができる。
【0018】
(実施形態2)
本実施形態2のハウジングは、実施形態1のハウジングと基本的な構成及び同様の効果を有する。以下では、異なる構成及び効果について主に説明する。
【0019】
本実施形態2のハウジングの第1ケース1は、図6に示されるように、座面部123が周辺よりもボルト3の軸線方向で頭部31側に突出した形状である。座面部123を軸線方向で高くすることで、頭部31から合わせ面11,12への距離を確保することができる。結果、ボルト3による軸力が軸部32から拡径方向により遠くへと働かせることができるため、ボルト3間のピッチを広げることができる。なお、図6は、断面を示すハッチングが省略されている。
【0020】
(実施形態3)
本実施形態3のハウジングの第1ケース1は、図7に示されるように、鍔部12の座面部124がボルト3の軸方向に周辺よりも突出している。そして、鍔部12は、ボルト3の頭部31側の軸穴125とを軸力方向Yにおいて第2ケース2側の軸穴126とを有する。第2ケース2側に位置する軸穴126は、ボルト3の軸部32のネジに螺合するように肉抜きされていない(図8も参照)。ボルト3の頭部31側の軸穴125は、軸力方向Yに徐々に拡径方向に大きく肉抜きされた形状である。軸穴125は、軸部32には当接しない(図8も参照)。
【0021】
本実施形態3のハウジングによれば、第1ケース1と第2ケース2とが合わさる合わせ面11,12における高い面圧の範囲を拡大することができる。
【0022】
(実施形態4)
本実施形態4のハウジングは、実施形態3のハウジングと基本的な構成及び同様の効果を有する。以下、異なる構成及び効果について主に説明する。
【0023】
本実施形態4のハウジングの第1ケース1は、図9に示されるように、軸方向でボルト3の頭部31側に突出する部分である座面部127が別体である。座面部127は、軸方向において、軸部32の周りが肉抜きされた軸穴128を有する。軸穴128は、軸力方向Yに徐々に多く肉抜きされる形状である。実施形態3の軸穴125に相当する。
【0024】
テーパ状の軸穴128が形成される座面部127を別体とすることで、従来の第1ケース1を用いて、合わせ面の面圧の高い部分を拡散することができるハウジングを実現することができる。
【0025】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態3及び4の座面部124,127の形状は、軸穴125,128の周りの肉抜きだけでなく、ハウジング10外部に軸部32の位置が露出するように開口しているが、軸部32の周りだけが肉抜きされているようなドームやお椀状でもよい。また、図10や図11に示されるように、軸穴125,128の肉抜き形状が、軸力方向に徐々に拡大されるのではなく均等に肉抜きされるものでもよい。
【0026】
また、軸穴122,124の形状は、テーパ状に限られず、軸力方向断面がドームのような円弧状でもよい。ボルト3の頭部31に近い径よりも頭部31から遠い箇所の径が大きくなるのが望ましい。
【符号の説明】
【0027】
1:第1ケース、 10:ハウジング、 11:合わせ面、 12:鍔部、
121,123,124,127:座面部、
122,125,126,128:軸穴、
2:第2ケース、 21:合わせ面、
3:ボルト、 31:頭部、 32:軸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1ケース及び第2ケースの2つが合わさり、複数のボルトによって締結される変速機のハウジングであって、
前記第1ケース又は第2ケースのうち前記ボルトの頭部側が位置するケースは、前記頭部が当接する座面部と、前記ボルトの軸部の周りが少なくとも一部肉抜きされた形状となる軸穴とを有することを特徴とする変速機のハウジング。
【請求項2】
前記軸穴は、前記座面部から前記第1ケース及び前記第2ケースが合わさる合わせ面に向かって徐々に肉抜きの範囲が拡大する請求項1に記載する変速機のハウジング。
【請求項3】
前記座面部は、前記ボルトの軸方向に周辺よりも突出している請求項1又は2に記載の変速機のハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−61000(P2013−61000A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199103(P2011−199103)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】