説明

変電所の騒音解析方法

【課題】実態に即して適切に騒音を解析することが可能な変電所の騒音解析方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る変電所の騒音解析方法の代表的な構成は、複数の変圧器120を設置した変電所100の騒音解析方法であって、複数の変圧器120について騒音を個別に測定し、変圧器120ごとに騒音を2以上の周波数に周波数分解し、受音点130について各変圧器120の騒音の周波数成分ごとに距離減衰を算出し、2以上の周波数成分の合成波を算出し、合成波のエネルギーを求めることにより受音点130の騒音値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の変圧器を備える変電所の騒音解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な環境問題がメディアに取り上げられ、企業にその社会的責任を求める気運が高まっている。変電所で問題となる環境問題のひとつに騒音問題がある。変電所の騒音設計では、音源の中で最も騒音が大きく、かつ定常騒音である変圧器騒音のみに着目している。そこで、設計段階で法定の規制値(非特許文献1参照)を超えないように変圧器を選定するとともに防音壁を設置し、運転開始後に敷地境界線の騒音値を実際に測定して確認を行っている。
【0003】
設計段階において、現状では、変圧器騒音の距離による減衰と、防音壁による減衰に基づいて騒音解析を実施している。図8は従来の距離減衰の算出手法を説明する図である。騒音の距離減衰には、図8(a)に示すように、IEEE(T.AIEE `60.6月)より示されている実験式が用いられている(非特許文献2参照)。実験式においてdBsは音源の騒音値(変圧器の至近距離で測定された騒音値)であり、i番目の変圧器の騒音値dBdiは、変圧器からの距離diのみを変数とする関数になっている。図8(b)はこの実験式の計算例を表したグラフであり、騒音値は変圧器からの距離diに対して対数的な単調減少を示すことがわかる。そして、任意の位置の受音点について、各変圧器からの距離diに応じて個々の騒音値dBdiを算出し、これを足し合わせることによって受音点の騒音値を求めることができる。
【0004】
このようにして算出した解析結果(理論値)により、変電所の敷地境界線上の騒音値が法令上の既定値を超過しないように変圧器を選定したり、遮音壁を設置するように設計したりする。遮音壁による騒音の減衰効果を求める方法は種々公表されている(非特許文献2参照)。
【0005】
また特許文献1には、変圧器から発生する騒音と逆位相の音波を出力してこれを打ち消すことが提案されている。特許文献1によれば、これにより遮音壁を不要とし、変電所における騒音低減対策費を安くできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−61073号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】産業環境管理協会,「公害防止の技術と法規 騒音編」,丸善,2003.4 第8版
【非特許文献2】JESC E0016日本電気協会発変電専門部会,「発変電所等における騒音振動防止対策指針」,オーム社,2006.7 第2版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記実験式では、騒音は単調減少を示し、十分な距離が確保されれば騒音値は規制値内に収まるはずである。しかし、運転開始後に変電所の敷地境界線上で騒音値を実測すると、同一受音点であっても測定日(周囲環境)により騒音値が異なる場合があり、理論値を上回る騒音が測定される場合が少なくない。
【0009】
また、変圧器から離れる方向に騒音値を測定すると、騒音値は単調減少を示さず、実験式による理論値曲線を中心に上下に変動する。図8(c)は、ある屋外式超高圧変電所において、約1ヶ月半おきに3回に亘って測定したデータと、実験式による理論値を比較したものである。どの測定結果を見ても理論値に対して上下に変動していることが確認でき、特に理論値を超過している受音点も何点か確認された。これは現在の解析手法では説明がつかない現象が影響していると考えられる。
【0010】
実測した騒音値が理論値を超過した場合には、防音壁の追加設置など、騒音低減のための対策を講じる必要がある。すると工事完了後にあらためて工事を施工することになるため、当初から設計に組み込まれている場合よりもコストが増大してしまう。そのため従来は、法令上の既定値に対して大きく余裕を持たせた防音設計を講じるように設計している。しかしどの程度の余裕を持たせるかについては設計者の経験的な予測に依存し、確実性が低いという問題がある。一方、過剰な防音設計はやはりコスト増大の原因となってしまう。
【0011】
なお、特許文献1に記載の技術は、騒音そのものを低減させることを目的としたものであって、騒音値を適切に解析しようとするものではないため、本発明とは目的および構成を異にしている。
【0012】
そこで本発明は、実態に即して適切に騒音を解析することが可能な変電所の騒音解析方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために発明者らが鋭意検討したところ、理論値と実際の騒音値の間に乖離が生じる原因としては、騒音を騒音値(エネルギー)として計算しているためであると考えた。そこで騒音を音波として捉え、波の持つ様々な特性に着目した。むろん、音波の伝搬の解析については、反射、屈折、回折、干渉といった波動現象が知られており、従来から様々な分野においてこれらの波動現象が解析に用いられている。しかし、あまりに煩雑で高度な解析が必要であったり、いたずらに入力データが多くなったり、処理時間が延びてしまったりするため、実用性を失ってしまうおそれがある。そこで、波動現象の中の1つである干渉現象に着目し、さらに検討を重ねることにより、簡略に、かつ実態に即して適切に騒音を解析する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明に係る変電所の騒音解析方法の代表的な構成は、複数の変圧器を設置した変電所の騒音解析方法であって、複数の変圧器について騒音を個別に測定し、変圧器ごとに騒音を2以上の周波数に周波数分解し、受音点について各変圧器の騒音の周波数成分ごとに距離減衰を算出し、2以上の周波数成分の合成波を算出し、合成波のエネルギーを求めることにより受音点の騒音値を算出することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、任意の受音点における騒音値の変動幅をカバーすることができ、実際の騒音値に超過されることのない理論値を求めることができるため、実態に即して適切に騒音を解析することができる。したがって、工事後に法定の規制値を超えてしまって追加工事を行うことがなく、不要な人件費および工事費がかかることを防止することができる。
【0016】
変圧器の電源周波数の2倍を基本周波数とし、基本周波数およびその数次の高調波に周波数分解することを特徴とする。
【0017】
変圧器の騒音は基本周波数およびその数次の高調波が支配的であり、これらの周波数に限定して演算を行うことにより、計算負荷を軽減することが可能となる。
【0018】
受音点を所定間隔で複数配列し、複数の受音点についてそれぞれ騒音値を算出し、複数の受音点を所定範囲ごとに区切って、区切りごとに騒音値の最大値を取得し、複数の最大値をプロットとする近似曲線であって全ての最大値を上回るピーク曲線を算出し、ピーク曲線上の値を各受音点の予測騒音値とすることを特徴とする。
【0019】
これにより、複数の受音点のうち、干渉が最大となっていない受音点についても、干渉が最大となった場合の騒音値と同等の予測騒音値を得ることができる。したがって、騒音値の変動幅をより確実にカバーすることができる。
【0020】
複数の受音点を配列する所定間隔は0.85m以下で設定し、複数の受音点を区切る所定範囲は25m以上ごとに設定したことを特徴とする。受音点の間隔を上記のように短くすることによって折り返しノイズを防止し、かつ、複数の受音点を区切る所定範囲を上記のように長くすることによって確実に干渉が最大となる受音点を内包させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、任意の受音点における騒音値の変動幅をカバーすることができ、実際の騒音値に超過されることのない理論値を求めることができるため、実態に即して適切に騒音を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】変電所の概略構成を説明する図である。
【図2】1つの受音点について騒音値を求める際のフローチャートである。
【図3】変圧器の騒音の周波数別の騒音値の例を示す図である。
【図4】周波数成分ごとの位相と合成波を説明する図である。
【図5】複数の受音点について騒音値を求める際のフローチャートである。
【図6】騒音値と近似曲線およびピーク曲線を説明する図である。
【図7】ピーク曲線と実測した騒音値とを比較する図である。
【図8】従来の距離減衰の算出手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は変電所100の概略構成を説明する図である。変電所100は様々な機器やケーブルが設置されているが、その中に本発明における音源として7台の変圧器120(120a〜120g)が設置されている(図1でハッチングを付した機器)。本実施形態において変圧器120の電源周波数は50Hzである。また図1に示すように、変電所100の敷地境界線110に複数の受音点130が配列して設定されるものとする。
【0025】
図2は1つの受音点130について騒音値を求める際のフローチャートである。まず、変圧器120の騒音を測定する(ステップ200)。測定は、変圧器120の周囲を回るように複数点(6点以上)測定する。
【0026】
次に、この騒音を周波数分解する(ステップ202)。図3は、変圧器の騒音の周波数別の騒音値の例を示す図である。騒音の測定は、リオン株式会社製の精密騒音計(NA−28)を用いて測定した。図3からわかるように、変圧器の騒音には多様な周波数が含まれており、理想的には全ての周波数に対する位相を考慮して重ね合わせるべきである。しかし、図3からわかるように、電源周波数50Hzの2倍である100Hz、4倍である200Hzに大きなピークが見られる。他の周波数との比較によれば10dB程度の差があり、これはエネルギー(音圧[Pa])として1010に相当するため、図3の例では100Hzと200Hzの騒音が支配的であるということができ、この2つの周波数に限定して解析を行ったとしても十分実態に近い値が得られる。
【0027】
そこで、電源周波数の2倍を基本周波数とし、基本周波数およびその数次の高調波に周波数分解して(ステップ202)、周波数成分ごとに騒音値を算出する(ステップ204)。本実施形態では100Hzと200Hzのみについて算出する例を示すが、さらに300Hz、400Hzについても計算に加えてよい。
【0028】
なお、周波数分解および騒音値の算出は、変圧器120の周囲で角度を変えて複数回測定した騒音値についてそれぞれ行う。したがって1つの変圧器について、(周波数成分の数×測定した角度の数)個の騒音値が算出される。そして周波数成分ごとに、全方位の騒音値のエネルギー平均を取る。この平均値を用いて、その変圧器120の周波数成分ごとの騒音値とすることができる。なお、「変圧器ごと」の意味は、単体ごとでもよいが、機種ごとに定まっていれば十分である。したがって機器メーカーの協力が得られれば、カタログ値とすることが好ましい。
【0029】
次に、受音点130を設定する(ステップ206)。本実施形態では受音点130を敷地境界線110上に設定しているが、地形または周囲環境に応じて適宜設定することができる。受音点130が設定されると各変圧器120(120a〜120g)との距離が定まるので、各変圧器の周波数成分ごとに距離減衰を算出する(ステップ208)。距離減衰は、図8に示した実験式を用いて算出することができる。実験式は騒音値を求める式であるが、本発明では騒音値dBdiと音源の騒音値dBsの減衰比(dBdi/dBs)を求めるために利用する。
【0030】
次に、各周波成分の位相を算出する(ステップ210)。図4は周波数成分ごとの位相と合成波を説明する図である。位相は、音の波長と、各変圧器120と受音点130の距離によって変動する。音の波長は、周囲温度によって音速が変化することによって変動する。そこで図4(a)に示すように、周囲温度と、変圧器120と受音点130の距離から、周波数成分ごとの位相を算出する。
【0031】
次に、各周波数成分に、先に求めた減衰比を掛けて、合成波を算出する(ステップ212)。図4(b)は合成波を算出する例であって、説明の便宜上2つの変圧器について図示している。図4(b)の左側を参照して、変圧器120aで100Hzが62dB、200Hzが62dBであり、変圧器120bで100Hzが57dB、200Hzが57dBであったとする。図4(b)の右側を参照して、受音点において変圧器120aの100Hzが42dB、200Hzが42dB、変圧器120bの100Hzが39dB、200Hzが39dBであったとする。これらの波形を合成すると、図4(b)の右下にあるような合成波を得ることができる。
【0032】
そして合成波のエネルギーを求めることにより、受音点130における(最終的な)騒音値を算出する(ステップ214)。波形から騒音値を算出するためには既知の手法を用いることができ、例えば100msの時間幅の波形のエネルギー(実効値)を算出することによって得ることができる。実効値を算出する際の積分手法としては、波形が滑らかであることから、合成シンプソン公式を用いて精度よく求めることができる。ただし積分手法としては、他の既知の数値積分法(リーマン積分や台形公式など)を用いてもよい。
【0033】
上記の説明からわかるように、各変圧器120と受音点130の距離は変動しないため、不確定要素(変動する要素)は周囲温度である。そこで周囲温度を変化(スイープ)させて騒音値を変化させることにより、ある受音点130における騒音値の最大値、最小値、および変動幅を知ることができ、例えば最大値をその受音点130の予測騒音値と設定することができる。そして、この予測騒音値を用いて、防音壁などの騒音低減のための対策を設計段階から行うことができる。
【0034】
すなわち、任意の受音点における騒音値の変動幅をカバーすることができ、実際の騒音値に超過されることのない理論値を求めることができるため、実態に即して適切に騒音を解析することができる。したがって、工事後に実際の騒音値が法定の規制値を超えてしまうことがなくなり、また過剰な防音対策を施してしまうおそれもなくなるため、不要な人件費および工事費がかかることを防止することができる。
【0035】
図5は複数の受音点130について騒音値を求める際のフローチャートである。まず、図1に示したように、敷地境界線110上に、所定間隔で複数の受音点130を配列する(ステップ220)。この所定間隔がどの程度であるかについては後述する。受音点130の位置を決定すると、各受音点130と各変圧器120との距離が定まる。
【0036】
次に、各受音点130について、図2のフローチャートに従い、それぞれ騒音値を算出する(ステップ222)。ただし周囲温度としては1つの温度(例えば標準状態の25℃)を用いることとし、温度を変化(スイープ)させる計算は行わない。全ての受音点について計算したか否かを判断し(ステップ224)、完了していなければ(ステップ224のNO)、次の受音点130について騒音値を算出する(ステップ222)。
【0037】
図6は騒音値と近似曲線およびピーク曲線を説明する図であって、図6(a)は受音点の位置(敷地の端からの位置)と騒音値の関係を示す図である。全ての受音点130について計算が完了すると(ステップ224のYES)、図6(a)に示すように、従来手法では得られなかった大きく変動した騒音値が得られる。これは、複数の変圧器から到達した音が干渉することにより、互いに増幅又は相殺した結果である。したがって、実際の騒音も、同様の乱れを生じているものと考えられる。最終的には各受音点130における騒音値を予測したいのであるが、このように乱れていては予測しにくい。仮に各受音点130の騒音値の近似曲線を求めたとしても、図6(b)に示すように近似曲線を超過する場合が多く発生するため、この近似曲線の値に基づいて設計することはできない。
【0038】
そこで図6(c)にプロットで示すように、複数の受音点130を所定範囲ごとに区切り、区切りごとに騒音値の最大値を取得する(ステップ226)。この所定範囲を大きくすれば、その中に高い確率で干渉が最大となっている受音点130が含まれる。したがって、この複数の最大値の近似曲線を算出することにより、ほとんどの受音点の騒音値を包含する近似曲線を描くことができる。しかし図6(c)を参照すると、それでもいくつかの点は近似曲線より上にあることがわかる。
【0039】
そこで図6(d)に示すように、複数の最大値の中でも最も値が大きいプロットを通るように近似曲線の条件を設定することにより、ピーク曲線を算出する(ステップ228)。これにより、全ての最大値を上回るピーク曲線を算出することができる。このようにしてピーク曲線を算出したら、各受音点の位置に基づいて、ピーク曲線上の値を各受音点130の予測騒音値とする(ステップ230)。
【0040】
ここで、複数の受音点130を配列する所定間隔は、計算に用いる周波数成分の最大値が200Hzである場合には、0.85m以下に設定することが好ましい。ナイキストの定理により、サンプリング周波数は信号の周波数の2倍以上である必要がある(折り返しノイズが発生するため)。そこでサンプリング周波数を400Hzとすると、音速を340m/sとすれば、340/400=0.85mとなる。そこで、所定間隔を0.85m以下とすれば、十分に精度の高い解析を行うことができる。なお、所定間隔の一例としては0.5mとすることができる。
【0041】
また、複数の受音点130を区切る所定範囲は、25m以上ごとに設定することが好ましい。所定範囲が短いと、所定範囲内に干渉が最大となる点が含まれる確率が低くなる。所定範囲が長いほどその確率は高くなるが、一方、あまりに長く取ると、ピーク曲線(近似曲線)を描くために十分なプロット数が得られなくなってしまう。発明者らが種々検討したところ、25m以上あれば、十分に高い確率で干渉が最大となる受音点130を内包させることができる。
【0042】
上記のように予測騒音値を求めることにより、複数の受音点130のうち、干渉が最大となっていない受音点130についても、干渉が最大となった場合の騒音値と同等の予測騒音値を得ることができる。したがって、騒音値の変動幅をより確実にカバーすることができ、実態に即して適切に騒音を解析することができる。
【0043】
図7は上記のようにして求めたピーク曲線と実測した騒音値とを比較する図である。図7を参照すれば、測定値の変動幅がピーク曲線を越えることがないことがわかる。また、測定値の変動の最大値に対して、ピーク曲線が大きく乖離していないことも確認できる。このことから、干渉を考慮して騒音値を算出することにより、従来の実験式だけでは説明できなかった理論値超過を回避できることが確認された。
【0044】
なお、本発明を適用することにより、従来の実験式を用いた理論値より厳しい条件で設計しなければならず、イニシャルコストが増加する可能性はある。しかし、工事後に法定の規制値を超えてしまって追加工事を行う場合に比べると、人件費および工事費を低く抑えることができるため、結果的にはコストの削減を図ることができる。
【0045】
[第2実施形態]
上記第1実施形態においては、複数の受音点について騒音値を計算するとき、周囲温度を変化させないと説明した(ステップ222)。しかし、各受音点について騒音値を計算するときに、周囲温度を変化させて干渉が最大となったときの騒音値を算出しておくことにより、全ての受音点について最大値を用いることができる。
【0046】
この場合においては、ピーク曲線を求める際に(ステップ228)、単に各受音点の騒音値を用いて、最も値が大きいプロットを通ることを条件とする近似曲線を算出すればよい。すなわち、複数の受音点130を所定範囲ごとに区切り、区切りごとに騒音値の最大値を取得する過程(ステップ226)を省略することができる。
【0047】
[第3実施形態]
上記第1および第2実施形態においては、周囲温度を変化させることにより、各周波数成分の位相を算出するように説明した(ステップ210)。しかし、周囲温度を用いて算出するのではなく、位相を揃えることによって常に干渉が最大となる位相の組み合わせのパターンで合成波を算出(ステップ212)することもできる。その場合、位相を算出するためのステップ210は省略することができる。また、第2実施形態と同様に、複数の受音点130を所定範囲ごとに区切り、区切りごとに騒音値の最大値を取得する過程(ステップ226)を省略することができる。
【0048】
これにより、少なくとも干渉による影響については、確実に最大値を上回る予測騒音値を得ることができる。また、第2実施形態に比べると、計算負荷を大幅に削減することができる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、複数の変圧器を備える変電所の騒音解析方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…変電所、110…敷地境界線、120…変圧器、130…受音点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変圧器を設置した変電所の騒音解析方法であって、
複数の変圧器について騒音を個別に測定し、
変圧器ごとに騒音を2以上の周波数に周波数分解し、
受音点について各変圧器の騒音の周波数成分ごとに距離減衰を算出し、
前記2以上の周波数成分の合成波を算出し、
合成波のエネルギーを求めることにより前記受音点の騒音値を算出することを特徴とする変電所の騒音解析方法。
【請求項2】
変圧器の電源周波数の2倍を基本周波数とし、基本周波数およびその数次の高調波に周波数分解することを特徴とする請求項1に記載の変電所の騒音解析方法。
【請求項3】
前記受音点を所定間隔で複数配列し、
前記複数の受音点についてそれぞれ騒音値を算出し、
複数の受音点を所定範囲ごとに区切って、区切りごとに騒音値の最大値を取得し、
複数の最大値をプロットとする近似曲線であって全ての最大値を上回るピーク曲線を算出し、
前記ピーク曲線上の値を各受音点の予測騒音値とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変電所の騒音解析方法。
【請求項4】
前記複数の受音点を配列する所定間隔は0.85m以下で設定し、
前記複数の受音点を区切る所定範囲は25m以上ごとに設定したことを特徴とする請求項3に記載の変電所の騒音解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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