説明

外傷防止用保護シート

【課題】各種物品の表面保護、特に車両組立て工程において、車体のパネルの塗装部分が外傷を受けるのを防止するために用いられ、簡易に貼付できて密着性がよい、容易に剥離でき、かつ塗装面に悪影響を及ぼさない、良好な曲面追随性、耐水性、強度、クッション性を有する、使い回しが可能である、製造コストが低い、適用対象物の範囲が広いなどの性質を有する外傷防止用保護シートを提供する。
【解決手段】一方の面が自己吸着性を有する基材(A)の他方の面に、フォームラバー層(B)を設けてなる外傷防止用保護シート、特に、前記フォームラバー層(B)上に、さらに基材(A)の自己吸着性面に対し、剥離性を有するシート層(C)を設けてなる外傷防止用保護シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外傷防止用保護シートに関する。さらに詳しくは、各種物品の表面保護、特に車両の組立て工程において、車体のパネルの金属製塗装部分や樹脂製塗装部分が外傷を受けるのを防止するために用いられ、簡易に貼付できて密着性がよい、容易に剥離でき、かつ塗装面に悪影響を及ぼさない、良好な曲面追随性、耐水性、強度、クッション性を有する、使い回しが可能である、製造コストが低い、適用対象物の範囲が広いなどの性質を有する外傷防止用保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動四輪車などの車両の組立て作業においては、車体パネル、特に外板などの外傷を受けやすい部位は、ポリ塩化ビニルなどからなる保護カバーで覆われた状態にして作業が行われている。
しかしながら、外板以外の車体パネルについては、保護カバーで覆っておくことができない部分が多く、その部分の中には外傷を受け易い部位もある。例えば自動四輪車のドア開口を形成するアウトサイドパネルの下側角部が、作業中に外傷を受け易い。
そのため、特許文献1においては、自動四輪車のアウトサイドパネルのドア開口の下側の前方角部から後方角部に至る下端縁に添って形成された熱可塑性樹脂シートの裏面に布製シートを張り合わせた作業用保護カバーが開示されている。
この技術においては、布製シートを張り合わせるに当たり、作業用保護カバーの屈曲部や曲面部に対応させるように布製シートの当該箇所を裁断し、その裁断箇所を粘着テープで張り合わせる形取り工程を経て、この布製シートを熱可塑性シートの裏面に圧着して成形している。
そしてアウトサイドパネルの下端縁の必要な箇所に作業用保護カバーを係止するための係止具を取り付け、該作業用保護カバーを同係止具に係止させる。
しかし、このような作業用保護カバーは、アウトサイドパネルの下端縁に取り付けるための係止具を必要とし、予め取り付けておかなければならず作業工数が多く、かつ製造コストが高くつくのを免れない。さらに、組立て作業終了後、作業用保護カバーを取り外すときには係止具も取り外さなければならず、したがって作業用保護カバーの着脱は面倒である。
そこで、このような問題に対処するために、車体パネルにおける外板以外の金属製塗装部分の被保護部位に対してその外形に概ね添った形状に形成されたシート状軟質部材と、前記シート状軟質部材の前記被保護部位と接する裏面の所要部位に接着されたマグネットラバーとからなる車両組立て作業時の外傷防止カバーが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この車両組立て作業時の外傷防止カバーは、車体パネルの金属製塗装部分の被保護部位のみを必要な組立て作業中外傷から保護することができ、かつ着脱自在で安価であるなどの利点を有しているが、マグネットラバー部に金属の微小片などが付着しやすく、そのまま車体パネルに取り付けた場合、該パネルに損傷を与えるおそれがある。また、耐久性、耐衝撃性が不十分である上、対象物が磁性体でないと適用できないため、対象物が限定されるなどの問題があった。
ところで、各種物品に適用される外傷防止用保護シートに対しては、一般に、簡易に貼付できて密着性がよい、容易に剥離でき、かつ塗装面に悪影響を及ぼさない、良好な曲面追随性、耐水性、強度、クッション性を有する、使い回しが可能である、製造コストが低いなどの特性が要求される。
【特許文献1】特許第3001886号公報
【特許文献2】特開2003−341565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、各種物品の表面保護、特に車両の組立て工程において、車体のパネルの金属製塗装部分や樹脂製塗装部分が外傷を受けるのを防止するために用いられ、かつ前記要求特性を満たすと共に、適用対象物の範囲の広い外傷防止用保護シートを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する外傷防止用保護シートを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、一方の面が自己吸着性を有する基材の他方の面に、フォームラバー層及び場合により特定の性質を有するシート層を順に設けてなる保護シートが、その目的に適合し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)一方の面が自己吸着性を有する基材(A)の他方の面に、フォームラバー層(B)を設けてなる外傷防止用保護シート、
(2)フォームラバー層(B)上に、さらに基材(A)の自己吸着性面に対し、剥離性を有するシート層(C)を設けてなる上記(1)項に記載の外傷防止用保護シート、
(3)シート層(C)を構成する部材として、基材(A)を構成する部材の自己吸着性面に、前記シート層(C)を構成する部材を、その表面側を対面させて重ね合わせ、23℃、50%RH、荷重19.6Nの環境下に3時間放置後における180度剥離試験において、剥離力が150mN/25mm以下であるものを用いる上記(2)項に記載の外傷防止用保護シート、
(4)シート層(C)を構成する部材が有機繊維を用いて得られたシート状布材である上記(2)又は(3)項に記載の外傷防止用保護シート、
(5)基材(A)の自己吸着性が、物理的吸着性又は素材自体の吸着性による上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の外傷防止用保護シート、
(6)物理的吸着性がセル吸盤構造によるものである上記(5)項に記載の外傷防止用保護シート、
(7)自己吸着性を有する基材(A)が、支持体上にアクリル系樹脂からなるセル吸盤層を有するものである上記(6)項に記載の外傷防止用保護シート、
(8)フォームラバー層(B)がウレタンフォームラバー層である上記(1)〜(7)項のいずれかに記載の外傷防止用保護シート、
(9)ウレタン系塗装鋼板に対し、23℃、50%RH環境下、荷重19.6Nのロールで圧着後、3時間放置した後の180度剥離試験における吸着力が50〜200mN/25mmの範囲にある上記(1)〜(8)項のいずれかに記載の保護シート、及び
(10)車両の組立て工程において用いられる上記(1)〜(9)項のいずれかに記載の外傷防止用保護シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、各種物品の表面保護、特に車両の組立て工程において、車体のパネルの金属製塗装部分や樹脂製塗装部分が外傷を受けるのを防止するために用いられ、簡易に貼付できて密着性がよい、容易に剥離でき、かつ塗装面に悪影響を及ぼさない、良好な曲面追随性、耐水性、強度、クッション性を有する、使い回しが可能である、製造コストが低い、適用対象物の範囲が広いなどの性質を有する外傷防止用保護シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の外傷防止用保護シート(以下、単に保護シートと称することがある。)は、一方の面が自己吸着性を有する基材(A)の他方の面に、フォームラバー層(B)が設けられ、さらに場合により、前記フォームラバー層(B)上に、前記基材(A)の自己吸着性面に対し、剥離性を有するシート層(C)が設けられた構造を有している。
なお、本発明において、自己吸着性とは、粘着剤や接着剤あるいはマグネットなどの第三者の貼付機構によらず、基材自体の吸着機構により貼付性を有することを指す。
本発明の保護シートにおいて、(A)層として用いられる一方の面が自己吸着性を有する基材としては、物理的吸着性を有するシート状物及び素材自体が吸着性を有するシート状物のいずれも用いることができる。なお、本発明においてシート状物とは、フィルム及びシートの両方を指す。
物理的吸着性を有するシート状物としては、例えば表面層がセル吸盤構造を有するシート状物を挙げることができる。この表面層がセル吸盤構造であるシート状物としては、少なくとも表面層が吸着性発泡体層であるシート状物を用いることができる。この場合、表面層が吸着性発泡体層であればよく、シート状物全体が吸着性発泡体である必要はないが、もちろんシート状物全体が吸着性発泡体であってもかまわない。すなわち、適当な支持体に吸着性発泡体層を設けたものを用いてもよいし、吸着性発泡体シート状物を用いてもよい。
【0007】
前記吸着性発泡体としては、表面が外気と連通した開口を有する吸盤構造を形成しているものであれば特に制限されず、連続気泡体及び独立気泡体のいずれであってもよい。連続気泡体としては、例えば特開平1−259043号公報に記載されている発泡体を挙げることができる。この発泡体は、被着体側の表面が、微細孔を有する平坦な連続樹脂面を形成し、該微細孔は、その径より大きな径をもつ内部の気泡に連続すると共に、該内部の気泡は、他の気泡と細径管にて連続した構造を有し、かつ前記連続樹脂層が合成樹脂からなる発泡体である。ここで、微細孔を有する平坦な連続樹脂面とは、プラスチックシート状物に孔を開けたような微細孔がほぼ均質に分布した構造を意味する。この微細孔の径及び空隙率は特に制限はないが、被着体に対する吸着固定性の面から微細孔の平均径が50μm以下で、空隙率が5〜25%程度が好ましい。また、前記表面層より中心部に存在する内部の気泡の平均径は、前記した表面の微細孔の平均径よりも大きく、1.5〜5倍程度であることが好ましい。
この吸着性発泡体を構成する合成樹脂については特に制限はなく、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ブタジエン系合成ゴムなどが例示され、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブタジエン系合成ゴムが好ましく、特にアクリル樹脂が好適である。
【0008】
この吸着性発泡体からなる層又は吸着性発泡体からなるシート状物を製造するには、前記例示の合成樹脂をエマルジョンの形態で用いることが好ましい。該エマルジョンにおける合成樹脂の含有量は、通常30〜60質量%程度である。この合成樹脂エマルジョンに、必要に応じ各種添加剤、例えば架橋剤、起泡剤、整泡剤、粘度調節剤、着色剤、充填剤、酸化防止剤、防カビ剤などを配合し、機械発泡機にて空気と混合し、気泡を含有する発泡性エマルジョンを調製する。これを、支持体上に塗工し、熱処理することにより、吸着性発泡体層を形成させることができる。また、剥離紙上、あるいは剥離性枠内で発泡体を成形した後に、これらを除去することにより、吸着性発泡体シート状物を作製することができる。この方式において、配合、機械発泡、塗工及び熱処理の各工程における条件を選定することにより、所望の気泡構造を有する吸着性発泡体層や吸着性発泡体シート状物が得られる。
なお、前記機械発泡の代わりに、例えば塩化ビニリデン共重合体などの適当な合成樹脂を殻壁とし、低沸点炭化水素系化合物を内包する熱膨張性マイクロカプセルを、アクリル樹脂エマルジョンやブタジエン系合成ゴムエマルジョンに添加する方法などにより、発泡性エマルジョンを調製することもできる。
当該基材(A)が、支持体の表面に前記の吸着性発泡体層を有するものである場合、前記支持体としては、例えば紙基材、合成紙、プラスチックシートなどを用いることができる。ここで、紙基材としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙などが挙げられる。合成紙は、熱可塑性樹脂と無機充填剤との組合わせにより表層を紙化したものであって、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂合成紙などを用いることができる。一方、プラスチックシートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、各種オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるシートを用いることができる。これらの中で、ポリエチレンテレフタレートからなるシートが好ましい。
このような支持体の表面に吸着性発泡体層を有する基材の場合、基材全体の厚さは、通常100〜1000μm、好ましくは200〜600μmであり、また発泡体層の厚さは、通常70〜900μm、好ましくは300〜500μmである。
【0009】
また、当該基材が吸着性発泡体シート状物である場合、基材の厚さは、通常100〜1000μm、好ましくは200〜600μmである。
一方、独立気泡体としては、例えば前述の支持体上で、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムなどの合成樹脂材料又はゴム材料を化学発泡させ、吸着性発泡体層を形成したものを挙げることができる。この場合、基材全体の厚さ及び発泡体層の厚さは、前述の連続気泡体の場合と同様である。
さらに、素材自体が吸着性を有するシート状物としては、高摩擦抵抗を有し、かつ剥離性に優れる合成樹脂材料層を、支持体上に設けたものを挙げることができる。例えばアクリル樹脂系エマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョンに剥離性向上剤を含む粘着剤を用いて形成させることができる。ここで、剥離性向上剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンコポリマー及びこれらの混合物などの軟化点が100〜150℃程度のオレフィン系重合体を挙げることができる。また、ベースとなるアクリル樹脂系エマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョンには、吸着性を調整するために、架橋剤を添加することができる。このようにして、アクリル樹脂系エマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョンに剥離性向上剤を含む粘着剤(以下、剥離性向上剤含有エマルジョン塗工液と称す。)を調製することができる。
このようにして調製される剥離性向上剤含有エマルジョン塗工液を、前述の支持体上に塗布、乾燥することにより、素材自体が吸着性を有するシート状物が得られる。
本発明における自己吸着性を有する基材としては、セル吸盤構造の物理的吸着性を有するシート状物が好ましく、特に支持体上にアクリル系樹脂からなるセル吸盤層を有するシート状物が好適である。
【0010】
本発明の保護シートにおいて、(A)層として用いられる一方の面に自己吸着性を有する基材の自己吸着力としては、後で説明するように、該保護シートを、ウレタン系塗装鋼板に対し、23℃、50%RH環境下、荷重19.6Nのロールで圧着後、3時間放置した後の180度剥離試験における吸着力が、好ましくは50〜200mN/25mm、より好ましくは100〜180mN/25mmの範囲にあるように選定されることが望ましい。この吸着力が上記の範囲にあれば、本発明の保護シートは、被着体に密着性よく貼付され、ズレや剥がれが生じにくく、かつ容易に剥離することができる。
本発明の保護シートにおいては、前記の一方の面が自己吸着性を有する基材(A)の他方の面に、フォームラバー層(B)が設けられる。
当該(B)層を構成するフォームラバーとしては、例えばEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどの発泡体(フォームラバー)を挙げることができるが、シート成形性、クッション性、曲面追随性などの観点から、ウレタンゴム発泡体(ウレタンフォームラバー)が好適である。
このフォームラバー層の厚さとしては特に制限はないが、クッション性などの観点から、通常1〜10mm程度、好ましくは2〜8mmである。
前記基材(A)上に当該フォームラバー層を形成するには、接着剤や粘着剤を用いて行うことができる。接着剤としては、例えばポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合体樹脂などを主成分とする公知の接着剤を用いることができ、粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリエステル系などの公知の粘着剤を用いることができる。
【0011】
本発明の保護シートにおいては、前記フォームラバー層(B)上に、前記基材(A)の自己吸着性面に対し、剥離性を有するシート層(C)(以下、単にシート層(C)と称することがある。)を設けることができる。
本発明の保護シートを、各種物品の保護、例えば車両の組立て工程において、車体パネルの保護に使用した後、回収して使い回しする場合、多数の回収保護シートを重ねて運搬や保管することが多い。この際、保護シートが(A)層と(B)層のみとから構成されていると、(A)層の自己吸着面と(B)層の表面とが荷重下に接触することになり、その結果、回収保護シートを再使用するために、1枚1枚剥がそうとしても剥がれにくいという問題が生じる。
しかし、(B)層上に、前記自己吸着面に対し、剥離性を有するシート層を設けることにより、前記問題を解消することが可能となる。
本発明においては、当該シート層(C)を構成する部材として、基材(A)を構成する部材の自己吸着性面に、当該シート層(C)を構成する部材を重ね合わせ、23℃、50%RH、荷重19.6Nの環境下に3時間放置後における180度剥離試験において、剥離力が150mN/25mm以下、好ましくは100mN/25mm以下、より好ましくは50mN/25mm以下であるものを用いることが望ましい。これにより、前記問題を容易に解消することができる。
このような部材としては、有機繊維を用いて得られたシート状布材、例えば織布、編布、不織布などを用いることができる。このシート状布材の素材としては特に制限はなく、例えば木綿、ジュート、セルロース繊維、レーヨン繊維などの天然繊維や半合成繊維;ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維などの合成繊維などを挙げることができる。
このシート状布材の厚さとしては特に制限はないが、通常30〜200g/m2、好ましくは50〜150g/m2の範囲である。
シート状布材として織布を用いる場合、織物組織については特に制限はなく、平織、斜文織、朱子織の基本組織、あるいはそれらを変化させた各種の組織など、いずれであってもよい。また、不織布の場合、その製法については特に制限はなく、熱融着法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、湿式法など、公知のいずれの製造方法で得られたものであってもよい。
【0012】
本発明の保護シートにおいては、前記フォームラバー層(B)上に、当該シート層(C)を形成する方法としては、例えば、前述の接着剤又は粘着剤を用いて、フォームラバー層上に当該シート層を形成してもよいし、あるいはフォームラバーの製造時に、当該シート層の構成部材である、例えば有機繊維からなるシート状布材をフォームラバーに接触させ、フォームラバーの片面に該シート状布材が固着したものを一体的に製造し、このフォームラバー面を、前記接着剤又は粘着剤により、基材(A)の自己吸着性面とは反対側の面に接着させてもよい。
このような構成の本発明の保護シートは、ウレタン系塗装鋼板に対し、23℃、50%RH環境下、荷重19.6Nのロールで圧着後、3時間放置した後の180度剥離試験における吸着力が50〜200mN/25mmの範囲にあることが好ましい。この吸着力が上記の範囲にあれば、本発明の保護シートは、被着体に密着性よく貼付され、ズレや剥がれが生じにくく、かつ容易に剥離することができる。より好ましい吸着力は100〜180mN/25mmである。
本発明の保護シートには、基材(A)の自己吸着性面に、汚れなどを防止する目的で剥離シートを設けることができる。
上記剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したもの、あるいは素材自体が剥離性を有するもの、例えば結晶性ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常15〜150μm程度である。
図1は、本発明の外傷防止用保護シートの1例の構成を示す断面模式図である。外傷防止用保護シート10は、支持体1aの一方の面に自己吸着性層1bを有する基材1の自己吸着性層1bとは反対側の面に、粘(接)着剤層2を介してフォームラバー層3が設けられ、さらにその上に粘(接)着剤層4を介して表層のシート層5が設けられていると共に、基材1の自己吸着性層1b上に、所望により剥離シート6が貼付された構造を有している。
【0013】
本発明の外傷防止用保護シートは、各種物品の表面保護、特に車両の組立て工程において用いられる。具体的には、車体のパネルの金属製塗装部分や樹脂製塗装部分、例えば自動四輪車のフロントドア開口部を形成するフロントアウトサイドパネルなどが外傷を受けるのを防止するために、好適に用いられる。
本発明の外傷防止用保護シート(バージン)を使用する場合、まず、該保護シートをほぼ被着体の形状に打ち抜き、剥離シートを剥がし、自己吸着性面を被着体に接触させて貼付すればよい。作業終了後、貼付された保護シートは、手で剥離して回収する。
回収された保護シートは、使い回しするために、保護シートの自己吸着性面に、他の保護シートの表層部が接するように、多数の保護シートを重ね合わせ、保管されたり、運搬したりする。
この多数が重ね合わされた保護シートは、再使用時には、1枚1枚を容易に剥がすことができる。
本発明の外傷防止用保護シートは、下記の効果を奏する。
(1)被着体への貼付面が自己吸着性面であるため、ズレや剥がれが生じることなく、密着性よく、簡単に被着体に貼付し得ると共に、被着体から容易に剥離することができ、かつ被着体の塗装面に悪影響を及ぼさない。
(2)表層部に、自己吸着性面に対し、剥離性を有するシートを用いているため、回収した保護シートを使い回しするために多数を積み重ねて、運搬や保管した後、1枚1枚を容易に剥がすことができる。
(3)良好な曲面追随性、耐水性、クッション性を有し、保護シートとしての性能に優れている。
(4)製造コストが低く、かつ適用対象物の範囲が広い。
(5)回収保護シートを使い回しする場合、汚れた自己吸着性面は、水洗や濡れぞうきんにより、容易にきれいにすることができる。
【実施例】
【0014】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
一方の面が自己吸着性を有する基材(A)として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート支持体(1a)上に、厚さ400μmのアクリル樹脂系セル吸盤層(1b)を有し、セル吸盤層に剥離シート(6)として厚さ30μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせた「ゼオンALシート」[商品名、日本ゼオン社製]を用いた。この「ゼオンALシート」の下記測定方法で求めた吸着力は155mN/25mmであった。
前記「ゼオンALシート」の支持体の面に、厚さ30μmの粘着剤層(2)(アクリル系粘着剤[リンテック社製、商品名「PA−T1」])を形成した(図1参照)。
次いで、フォームラバー層(B)としてウレタンフォームラバーの表面に、シート層(C)としてナイロン繊維からなる丸編布が接着された、厚さ5mmのウェットスーツ素材シート[サンシステム社製、商品名「#21HFK」、JIS K 6251に準拠して測定した引張り強度688kPa、伸び470%;硬度35HS(高分子計器社製、Type−CSC2硬度計使用);見掛比重0.25]を、前記「ゼオンALシート」上に形成した粘着剤層上に、ウレタンフォームラバー側を対面させて貼り合わせることにより、外傷防止用保護シートを作製した。
なお、前記ウェットスーツ素材シートにおける丸編布表面側の下記測定方法で求めた「ゼオンALシート」のセル吸盤層に対する剥離力は1mN/25mmであった。
このようにして作製された外傷防止用保護シートについて、吸着力及び塗装面への影響を、下記の方法にとり求めた。
その結果、吸着力は135mN/25mmであり、また、塗装面への影響は、10℃3時間、23℃3時間、35℃3時間、35℃72時間のいずれにおいても外観に変化がなかった。
(1)「ゼオンALシート」及び外傷防止用保護シートの吸着力測定方法
剥離シートを剥がした試料を25mm幅に裁断し、そのセル吸盤層側をウレタン系塗装鋼板に、23℃、50%RH環境下、荷重19.6Nのローラで圧着後、3時間放置したのち、JIS Z 0237に準じて180度引張り試験を行い、吸着力を測定した。
(2)塗装面への影響
剥離シートを剥がした試料を50mm×110mmサイズに裁断し、ウレタン系塗装鋼板に、スキージで荷重19.6Nにて圧着し、10℃で3時間、23℃で3時間、35℃で3時間、及び35℃で72時間の条件で、それぞれ放置したのち、手で剥がし、塗装面の影響を目視で確認した。
(3)ウェットスーツ素材シートにおける丸編布表面側の「ゼオンALシート」のセル吸盤層に対する剥離力の測定方法
剥離シートを剥がした「ゼオンALシート」のセル吸盤層面に、ウェットスーツ素材シート(幅25mm)の丸編布側を対面させて重ね合わせ、23℃、50%RH、荷重19.6Nの環境下に3時間放置したのち、JIS Z 0237に準じて180度引張り試験を行い、剥離力を測定した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の外傷防止用保護シートは、各種物品の表面保護、特に車両の組立て工程において用いられ、具体的には、車体のパネルの金属製塗装部分や樹脂製塗装部分、例えば自動四輪車のフロントドア開口部を形成するフロントアウトサイドパネルなどが外傷を受けるのを防止するのに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の外傷防止用保護シートの1例の構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0017】
1 基材
1a 支持体
1b 自己吸着性層
2、4 粘(接)着剤層
3 フォームラバー層
5 シート層
6 剥離シート
10 外傷防止用保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が自己吸着性を有する基材(A)の他方の面に、フォームラバー層(B)を設けてなる外傷防止用保護シート。
【請求項2】
フォームラバー層(B)上に、さらに基材(A)の自己吸着性面に対し、剥離性を有するシート層(C)を設けてなる請求項1に記載の外傷防止用保護シート。
【請求項3】
シート層(C)を構成する部材として、基材(A)を構成する部材の自己吸着性面に、前記シート層(C)を構成する部材を、その表面側を対面させて重ね合わせ、23℃、50%RH、荷重19.6Nの環境下に3時間放置後における180度剥離試験において、剥離力が150mN/25mm以下であるものを用いる請求項2に記載の外傷防止用保護シート。
【請求項4】
シート層(C)を構成する部材が有機繊維を用いて得られたシート状布材である請求項2又は3に記載の外傷防止用保護シート。
【請求項5】
基材(A)の自己吸着性が、物理的吸着性又は素材自体の吸着性による請求項1〜4のいずれかに記載の外傷防止用保護シート。
【請求項6】
物理的吸着性がセル吸盤構造によるものである請求項5に記載の外傷防止用保護シート。
【請求項7】
自己吸着性を有する基材(A)が、支持体上にアクリル系樹脂からなるセル吸盤層を有するものである請求項6に記載の外傷防止用保護シート。
【請求項8】
フォームラバー層(B)がウレタンフォームラバー層である請求項1〜7のいずれかに記載の外傷防止用保護シート。
【請求項9】
ウレタン系塗装鋼板に対し、23℃、50%RH環境下、荷重19.6Nのロールで圧着後、3時間放置した後の180度剥離試験における吸着力が50〜200mN/25mmの範囲にある請求項1〜8のいずれかに記載の保護シート。
【請求項10】
車両の組立て工程において用いられる請求項1〜9のいずれかに記載の外傷防止用保護シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−36895(P2008−36895A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211646(P2006−211646)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】