説明

外包材

【課題】本発明は、夏季に自動車の車内に放置されてもシール部分が剥離しない外包材、詳しくは100℃を超える高温雰囲気下においても十分なシール強度を発現する外包材であって、尚且つ優れた深絞り適性を有する非水電解質電池もしくはキャパシタ用外包材の提供を目的とする。
【解決手段】基材層、バリア層、接着層及びシーラント層をこの順に有する外包材において、前記接着層は融点が145℃以上の酸変性ポリプロピレン系樹脂70〜99重量%と熱可塑性エラストマー30〜1重量%とを混合した樹脂組成物からなり、前記シーラント層は融点が145℃以上のポリプロピレン系樹脂70〜99重量%と熱可塑性エラストマー30〜1重量%とを混合した樹脂組成物からなる非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層、バリア層、接着層、シーラント層を基本構成とする外包材、詳しくは、接着層、シーラント層が共にポリプロピレン系樹脂からなる非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材に関する。特に非水電解質電池やキャパシタを製造する際に、深絞り加工される外包材に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化の要求の高まりと共に、その電源として用いられる電池にも小型化、軽量化の要求が強まっている。また電池はエネルギーの高密度化、エネルギーの大容量化も求められている。これらの要求を満たすため、近年、プラスチックフィルムと金属箔との積層フィルムを外包材とし、その中に正極、負極、セパレータおよび非水電解質からなる発電ユニットが封入された非水電解質電池(例えば薄型リチウムイオン電池)の開発が目覚しい。図3に非水電解質電池Xの一例を示す。この非水電解質電池Xは、深絞り加工によって凹部が成形された外包材3と凹部を有さない外包材3’との間に発電ユニットYが配置され、外包材3、3’の端縁部3aがヒートシールされ、成形される。尚、このとき正極および負極から電気を取り出すための端子Tは、外包材3、3’間に挟まれ、固定される。
【0003】
ところで非水電解質電池(以下、単に「電池」と略称する)は、しばしば携帯電話やノート型パソコン等のモバイル機器の電源として用いられる。これらのモバイル機器は自動車の車内に放置される場合もあり、モバイル機器に搭載される電池の外包材には、夏季の自動車内の温度として予測される100℃を超える高温雰囲気下においても、ヒートシール部が剥離しない耐熱性能が求められている。
【0004】
特許文献1は、基材層、バリア層(特許文献1においてはアルミニウム箔)、接着層(特許文献1においては接着樹脂層)、シーラント層が順次積層されてなるリチウムイオン電池用外包材(特許文献1においては外装材)に関するものである。該電池用外包材は、接着層が融点150℃以上のホモタイプポリプロピレン樹脂に対し3〜5重量%の無水マレイン酸をグラフト重合させた無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂から形成されており、ポリプロピレン系樹脂よりなる従来の積層材料よりも耐熱性に優れるものである。しかしながら実施例での評価結果は、100℃環境下のシール強度が22〜39N/15mmであり、モバイル機器に搭載される電池の外包材としては耐熱性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−216707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは様々な樹脂組成の外包材について高温雰囲気下におけるシール強度を測定し、シール強度測定時に剥離した部分を観察した結果、接着層あるいはシーラント層のうち、融点の低い樹脂からなる層が破壊され、剥離していることを見出した。そして接着層およびシーラント層の双方を融点の高いポリプロピレン系樹脂から形成することで、外包材に耐熱性を付与し得ることを見出した。しかしながら同時に、接着層およびシーラント層の双方が融点の高い樹脂からなる外包材は、深絞り適性に劣ることも見出した。電池外包材は発電ユニットを収納するためにしばしば深絞り加工されるが、融点の高いポリプロピレン系樹脂からなる外包材は、深絞り加工の際に屈曲部分(図3における3b)にピンホールや破れが発生したり、該屈曲部が白化したりし易いのである。
【0007】
本発明は、夏季に自動車の車内に放置されてもシール部分が剥離しない外包材、詳しくは100℃を超える高温雰囲気下においても十分なシール強度を発現する外包材であって、尚且つ優れた深絞り適性を有する非水電解質電池もしくはキャパシタ用外包材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記課題を解決するための手段として、
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層をこの順に有する外包材において、前記接着層は融点が145℃以上の酸変性ポリプロピレン系樹脂70〜99重量%と熱可塑性エラストマー30〜1重量%とを混合した樹脂組成物からなり、前記シーラント層は融点が145℃以上のポリプロピレン系樹脂70〜99重量%と熱可塑性エラストマー30〜1重量%とを混合した樹脂組成物からなる非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材が提供され、
更に前記熱可塑性エラストマーは、融点が145℃以上の樹脂である非水電解質電池もしくはキャパシタ用の前記外包材が提供され、
更に前記酸変性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンにα−オレフィンが0〜4重量%共重合されたポリプロピレン系樹脂に酸成分がグラフト重合されたものである非水電解質電池もしくはキャパシタ用の前記外包材が提供され、
更に前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンにα−オレフィンが0〜4重量%共重合されたポリプロピレン系樹脂である非水電解質電池もしくはキャパシタ用の前記外包材が提供され、
更にモバイル機器搭載用電池の外包材に使用する前記外包材が提供される。
【0009】
尚、本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマーの融点はJIS K7122(1987)「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法に準拠した示差走査熱量測定法で測定した値である。詳しくは樹脂を10℃/minにて230℃まで加熱した後、同じく10℃/minにて0℃まで冷却し、更に10℃/minにて230℃まで再加熱し、再加熱時に発生する吸熱ピークの温度を樹脂の融点とする。尚、樹脂が溶融し始めてから完全に溶融するまでの温度領域において、示差走査熱量測定法による吸熱ピークが複数個存在する場合は、最大吸熱ピークの温度をその樹脂の融点とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電池用外包材は、接着層およびシーラント層の双方が融点の高い樹脂からなり、モバイル機器に搭載される外包材として十分な耐熱性を有している。更にこれらの層には、副成分として熱可塑性エラストマーが配合されているため、深絞り加工時のピンホールや破れの発生、白化が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電池外包材の一例を示す模式的断面図である。
【図2】耐熱性を測定する方法を説明するため図である。
【図3】非水電解質電池の一例の模式的斜視図(A)及びそのa−a’断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の電池外包材の一例の模式的断面図である。
この電池外包材1は基材層11、バリア層12、接着層13、シーラント層14が順次積層されたフィルムである。基材層11は電池の外側となる層であって、外部に曝露される為、ある程度強靭でなお且つ絶縁性を有する樹脂からなる。図1の電池外包材1は基材層11が二軸延伸6,6ナイロンフィルムからなる。バリア層12は電池内部に水分が浸入することを防止するための層であり、図1のバリア層12はアルミニウム箔からなる。また該バリア層12の接着層13側表面は、電池内部からフッ酸等の酸性物質が発生した場合であっても、バリア層12の表面が溶解、腐食しないよう耐酸処理が施されている。
【0013】
接着層13はバリア層12とシーラント層14とを接着するための層であり、ポリプロピレンのホモポリマーを主鎖としこれに無水マレイン酸がグラフト重合された無水マレイン酸変性ポリプロピレン(融点145℃以上)を主成分とする。シーラント層14は電池を成形する際に熱融着される層であり、エチレン−プロピレンランダム共重合体(融点145℃以上)を主成分とする。更に、接着層13、シーラント層14には、深絞り適性を向上させるポリプロピレン系エラストマー(融点145℃以上)が配合されている。
【0014】
尚、上の例では基材層11が二軸延伸6,6ナイロンフィルムからなるものについて説明したが、本発明の基材層11はこれに限定されるものではなく、例えば6ナイロン、6ナイロンと6,6ナイロンの共重合体、6,10ナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のアミド系樹脂を二軸延伸したフィルムを用いることもできる。更に基材層11は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート共重合体やブチレンテレフタレート/ブチレンイソフタレート共重合体等の共重合ポリエステル等、エステル系樹脂からなる二軸延伸フィルムを用いることもできる。
更にまた、基材層11として前述したアミド系樹脂からなる二軸延伸フィルムとエステル系樹脂からなる二軸延伸フィルムとを積層した積層フィルムを用いることもできる。尚、この場合アミド系樹脂は電解液によって変質する恐れがあるので、エステル系樹脂からなるフィルムが電池外包材の最外層となるように、基材層とバリア層とを貼り合わせることが好ましい。
基材層の厚みは特に限定されないが10〜50μmが好ましい。10μm以下であると強度が不十分な場合があり、50μmを越えても強度の向上が見られない。また基材層11が二層である場合は、各層共に5〜25μmが好ましい。
【0015】
また上の例ではバリア層12としてアルミニウム箔を例示したが、他の金属箔であってもよく、従来公知のバリア層用材料が用いられる。バリア層の厚さは、水蒸気バリア性、深絞り適性、耐ピンホール性の兼ね合いから、15〜80μmであることが好ましく、特に20〜50μmであることが好ましいが、耐衝撃性や耐突刺し性が特に重要視される場合は、深絞り適性は若干落ちるが80〜120μm程度にするとよい。
バリア層に施す耐酸処理はバリア層表面の溶解、腐食を防ぎ、バリア層にピンホールが発生する事を防止する。更に耐酸処理は、バリア層と接着層との密着力を向上させる効果も奏する。耐酸処理方法としては、クロメート処理が一般的であるが、ベーマイト処理、パーカライジング処理、トリアジンチオール処理等の非クロメート系処理等も可能である。該耐酸処理はバリア層のシーラント層側の面だけに行ってもよく、バリア層の両面に行っても良い。
【0016】
上述の外包材1では接着層13の主成分として、ポリプロピレンのホモポリマーを主鎖としこれに無水マレイン酸がグラフト重合された無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いたが、該主成分はこれに限定されるものではなく、融点が145℃以上、好ましくは150℃以上の酸変性ポリプロピレン系樹脂であれば特に限定なく用いることができる。このような樹脂として、例えばプロピレンに若干のα−オレフィンがランダム共重合あるいはブロック共重合されたポリプロピレン系樹脂を主鎖とし、これにカルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸やその無水物等の酸成分が重合された樹脂等を例示することができる。主鎖に共重合されるα−オレフィンの配合割合が高くなるほど、酸変性ポリプロピレン系樹脂の融点は低下するが、深絞り適性は向上する傾向にある。また接着層の厚みは特に限定されないが10〜40μmが適する。接着層が10μm以下では良好な接着性を発揮できず、40μmを超えても接着性の向上は見られない。
【0017】
上述の外包材1ではシーラント層14の主成分として、エチレン−プロピレンランダム共重合体を用いたが、該主成分はこれに限定されるものではなく、融点が145℃以上、好ましくは150℃以上のポリプロピレン系樹脂であれば特に限定なく用いることができる。このような樹脂としては、プロピレンにα−オレフィンが0〜4重量%程度、ランダム共重合あるいはブロック共重合された樹脂を例示することができる。α−オレフィンの配合割合が高くなるほど、シーラント層14の融点は低下するが、深絞り適性は向上する傾向にある。またシーラント層の厚みは特に限定されないが15〜80μmが適する。シーラント層の厚みが15μm以下では良好なヒートシール性を発揮できず、80μmを超えてもヒートシール性の向上は見られない。
【0018】
従来の外包材では、深絞り適性を重視し、接着層を形成する酸変性ポリプロピレン系樹脂、シーラント層を形成するポリプロピレン系樹脂として、主鎖にα−オレフィンが多く(6重量%以上)共重合された樹脂が用いられていた。そのため接着層やシーラント層の深絞り適性を改善するための副成分を配合する必要はなかったが、本発明の外包材は接着層やシーラント層の主成分として融点の高い樹脂を用いているため、そのままでは深絞り適性に劣る。そこで本発明の外包材は、接着層及びシーラント層の耐熱性を低下させることなく深絞り適性を向上させる目的で、これらの層に熱可塑性エラストマーを配する。該熱可塑性エラストマーは、スチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等、公知の熱可塑性エラストマーを特に限定なく用いることができるが、接着層やシーラント層の主成分との相溶性を考慮するとポリオレフィン系エラストマーが好ましい。
【0019】
尚、接着層やシーラント層に配合される熱可塑性エラストマーの量が比較的少ない場合(具体的には5重量%未満の場合)、該熱可塑性エラストマーとして融点の低い樹脂を使用することも可能である。しかしながら配合される量が比較的多い場合(具体的には5重量%を超える場合)は、融点が145℃、好ましくは150℃以上の樹脂を用いることが望ましい。融点が145℃未満の熱可塑性エラストマーを5重量%以上配合すると、接着層、シーラント層の主成分として高融点の樹脂を用いても、高温雰囲気下において該熱可塑性エラストマーの部分からシールが剥離する恐れがある。このような融点145℃以上の熱可塑性エラストマーとして、非晶構造中にナノオーダーで分散した結晶部分を非晶分子が結合し、ネットワーク構造を形成するポリプロピレン系エラストマーが知られている。該エラストマーは、主成分中にミクロ分散するため深絞り適性も良好である。
【0020】
接着層、シーラント層に配する熱可塑性エラストマーの配合割合は1〜30重量%であり、電池を製造する際に行う深絞りの深さによって適宜決定すればよい。該エラストマーの配合割合が1重量%未満では深絞り加工時のピンホール、破れ、白化を抑制することができず、30重量%を超えると外包材に良好な耐熱性を付与することができない。そこで熱可塑性エラストマーの配合割合は1〜30重量%の範囲内で、絞り深さが大きい場合は多く、絞り深さが小さい場合は少なくするとよい。
また接着層に配される熱可塑性エラストマーは深絞り適性を向上させる一方で、バリア層と接着層との接着強度を低下させる。バリア層と接着層との接着強度はその界面に存在する酸成分の量に関係しており、熱可塑性エラストマーを多く配合すると、酸変性ポリプロピレン系樹脂の配合割合が少なくなる。するとバリア層と接着層との界面に存在する酸成分の量も減少し、これらの層間接着強度が低下するのである。そこでバリア層よりも内側の層(即ち接着層とシーラント層)にある程度の熱可塑性エラストマーを配し、深絞り適性を向上させながら、尚且つバリア層と接着層との層間接着強度の低下を最小限に食い止めるために、接着層に配合する熱可塑性エラストマーの配合割合をα、シーラント層に配合する熱可塑性エラストマーの配合割合をβとした時、α<βとすることが望ましい。具体的には10≦β−α≦30が好ましい。
【0021】
次に本発明の電池外包材の製造方法の一例を説明する。しかしながら本発明の外包材の製造方法はこれに限定されるものではない。
本発明の外包材の製造方法に際しては、初めに基材層とバリア層とを貼り合わせる。貼り合わせ方法は特に限定されないが、例えばウレタン系の接着等を用いドライラミネート法にて行うとよい。尚、基材層が外側基材層と内側基材層の二層の場合は、あらかじめ外側基材層と内側基材層とを接着剤を用いて貼り合わせておくとよい。次いで、基材層/バリア層の積層フィルムに接着層、シーラント層を貼り合わせる。これらの貼り合わせもドライラミネート法にて行うことは可能であるが、バリア層より電池内部側で接着剤を使用すると電池内部に水分が浸入しやすくなる。そこで、これらの貼り合わせには接着を使用しない押出ラミネート法、サンドイッチラミネート、熱ラミネート法を採用することが望ましい。押出ラミネート法の場合は、基材層/バリア層の積層フィルムのバリア層上に接着層とシーラント層とを共押出し、本発明の外包材を製造する。サンドイッチラミネート法の場合は、あらかじめシーラント層用フィルムを製膜しておき、基材層/バリア層の積層フィルムとシーラント層用フィルムとの間に、溶融状態の接着層用の樹脂を流し込み、本発明の外包材を製造する。熱ラミネート法の場合は、予め接着層/シーラント層の二層フィルムを製膜しておき、基材/バリア層の積層フィルムと接着層/シーラント層の二層フィルムとを、バリア層と接着層とが接するように重ね合わせ、更に加熱し、本発明の外包材を製造する。
【実施例】
【0022】
次に本発明の電池外包材について実施例を挙げて説明する。尚、外包材の評価は以下の方法にてシール強度、耐熱性及び深絞り適性を測定して行った。
<シール強度>
電池外包材を二枚用意し、これらをシーラント層同士が接するように重ね合わせ、上下から210℃に加熱された鉄製のシールバーを当て、二枚の外包材をヒートシールした。シール圧力は面圧1MPa、シール時間は3秒、シール幅は10mmとした。
次にヒートシールされた外包材について23℃、80℃、120℃、150℃雰囲気下にて、T型剥離試験を行い、シール強度を測定した。T型剥離試験は、オートグラフにてチャック間距離は50mm、クロスヘッドスピードは300mm/minで行った。
【0023】
<耐熱性>
縦横10cmの正方形に切断された電池外包材を二枚用意し、これらをシーラント層同士が接するように重ね合わせ、図2に示すように、外包材四辺のうちの三辺をヒートシールし、未シール辺に密封用治具Jを装着した。尚、シール条件はシール温度210℃、シール圧力(面圧)1MPa、シール時間3秒、シール幅10mmとした。
次いで雰囲気温度150℃にて、密封用治具Jに設けられた通気口Hより気体を外包材内に挿入し、外包材内の圧力を0.1MPaに調節した。圧力が0.1MPaに達してから、外包材のヒートシール部が剥離するまでの時間を測定し、これを耐熱性の評価とした。
<深絞り適性>
高さ9mmの凸型の金型と、該凸型金型と嵌合する凹型金型を用いて冷間プレス成型にて電池外包材に深絞り加工を行った。屈曲部分が白化していないか、屈曲部分にピンホールや破れが発生していないか、目視にて確認して深絞り適性を評価した。深絞り適性の試験は4回行い、白化、ピンホール、破れのいずれもみられなかったものの数で評価する。
【0024】
[実施例1]
二軸延伸6ナイロンフィルムを基材層用フィルムとし、片面にクロメート処理を施したアルミニウム箔をバリア層用フィルムとし、基材層用フィルムとバリア層用フィルムのクロメート処理を施していない面とをドライラミネート法にて貼り合わせ、基材層/バリア層の積層フィルムを得た。基材層/バリア層の積層フィルムのバリア層上に、酸変性ポリプロピレン(以下、PP−aと称す)と熱可塑性エラストマー(以下、TPEと称す)からなる接着層と、ポリプロピレン系樹脂(以下、PPと称す)とTPEからなるシーラント層とを形成し、実施例1の外包材を得た。尚、接着層を成すPP−aは表1に記す「PP−a(1)」を、TPEは表1に記す「TPE(1)」を使用し、シーラント層を成すPPは表1に記す「PP(1)」を、TPEは表1に記す「TPE(1)」を使用した。また接着層におけるPP−a(1)とTPE(1)の配合割合、シーラント層におけるPP(1)とTPE(1)との配合割合は表2に記す。この外包材の評価結果を、各層を成す樹脂の融点と共に表3に記す。
【0025】
[比較例1〜3]
接着層、シーラント層を形成する樹脂として表1に記すPP−a(1)〜(3)、PP(1)(2)、TPE(1)(2)を用い、表2に記す配合割合にて実施例1と同様にし、比較例1〜3の外包材を得た。各外包材についてシール強度、耐熱性、深絞り適性を測定した結果を、接着層、シーラント層を成す樹脂の融点と共に表3に記す。
尚、表1に各樹脂のMFRの値を記すが、該MFR値はJIS K7210(1999)に基づき測定した値である。また表2の〔 〕内の記載は、配合割合を重量比で表すものである。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
実施例1の外包材は、120~150℃の高温雰囲気下においても高いシール強度を維持した。また150℃雰囲気下において外包材内部の圧力を上げてもシール部が剥離することはなかった。更に深絞り適性にも優れており、深絞り加工した際にシーラント層が白化したり破れたりすることはなかった。
一方、比較例1乃至3の外包材は接着層が融点の低い樹脂から成形されているため成形性は良好であったが、雰囲気温度が上昇するに伴ってシール強度が著しく低下した。また耐熱性試験では、シール状態を全く維持することができなかった。
【0030】
以上、本発明を非水電解質電池用外包材に適用した場合について説明したが、本発明の外包材の適用範囲はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は電解質が非水系の有機電解質からなる真正ポリマー電解質電池や、ゲルポリマー電解質電池やキャパシタ等の外包材として利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1、2、3、3’ 非水電解質電池もしくはキャパシタ用外包材
11 基材層
12 バリア層
13 接着層
14 シーラント層
2a ヒートシール
3a 端縁部
3b 屈曲部分
X 非水電解質電池
Y 発電ユニット
T 端子
J 治具
H 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層をこの順に有する外包材において、
前記接着層は融点が145℃以上の酸変性ポリプロピレン系樹脂70〜99重量%と熱可塑性エラストマー30〜1重量%とを混合した樹脂組成物からなり、
前記シーラント層は融点が145℃以上のポリプロピレン系樹脂70〜99重量%と熱可塑性エラストマー30〜1重量%とを混合した樹脂組成物からなることを特徴とする非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーは、融点が145℃以上の樹脂であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材。
【請求項3】
前記酸変性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンにα−オレフィンが0〜4重量%共重合されたポリプロピレン系樹脂に酸成分がグラフト重合されたものであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンにα−オレフィンが0〜4重量%共重合されたポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材。
【請求項5】
モバイル機器搭載用電池の外包材に使用することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非水電解質電池もしくはキャパシタ用の外包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−238516(P2012−238516A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107585(P2011−107585)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】