説明

外壁材

【課題】スパンドレルを用いた外壁材であるが、建物内部の断熱性を向上させることができ、外装施工のコストを削減することができる外壁材を提供する。
【解決手段】 建物の躯体外壁1に沿って水平方向に複数連結され、建物の外装をなす外壁材である。この外壁材は、互いに隣接して躯体外壁に固定されるスパンドレル2A,2B,2Cと、これらスパンドレルの内側に前記躯体外壁に沿って配置され、スパンドレルに一体に保持された断熱材10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体外壁に沿って水平方向に複数連結され、前記建物の外装をなす外壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、ビル等の建物の外壁施工として、建物の躯体外壁に、金属板の押出成形により形成したスパンドレルを、水平方向、上下方向に複数並べて取付けることで施工する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−219968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のスパンドレルを使用した外壁施工は、外気の熱が、スパンドレルを介して直接躯体外壁に伝わるので、外気の温度変化による建物内部の断熱性の面で問題がある。
ここで、躯体外壁にシート状の断熱材を貼り付け、その後にスパンドレルを取付ける施工が考えられるが、断熱材の貼り付け作業に多くの時間と労力が費やされるので、施工コストの面で問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、スパンドレルを用いた外壁材であるが、建物内部の断熱性を向上させることができ、外装施工のコストを削減することができる外壁材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、建物の躯体外壁に沿って水平方向に複数連結され、前記建物の外装をなす外壁材であって、前記躯体外壁に固定されるスパンドレルと、このスパンドレルの内側に前記躯体外壁に沿って配置され、前記スパンドレルに一体に保持された断熱材とを備えた外壁材である。
ここで、前記スパンドレルは、上下方向に延在する凸部及び凹部が水平方向に交互に連続してなる金属板材であり、これら凸部及び凹部の内面と前記断熱材との間に空気層が設けられていることが好ましい。
【0006】
また、前記スパンドレルの水平方向の端部に雄型連結部が形成され、当該スパンドレルに隣接する他のスパンドレルの端部に、前記雄型連結部に向けて水平方向に差し込むことにより前記雄型連結部に連結する雌型連結部が形成されていることが好ましい。
また、前記スパンドレルの端部に、前記躯体外壁に固定手段を介して固定される被固定部を設け、前記被固定部の近傍に水返し部が設けられていることが好ましい。
【0007】
また、前記スパンドレルの水平方向の両端部に、前記断熱材の水平方向の両端部を板厚方向から着脱自在に保持する保持部が形成されていることが好ましい。
さらに、前記スパンドレル及び前記断熱材は、略同一の外郭形状の部材であり、前記スパンドレルは、前記凹部及び凸部が連続する方向に沿って湾曲させて弾性変形させ、湾曲した頂部を前記断熱材の中央部に係合して弾性復帰させることで前記断熱材の端部を前記保持部で保持するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る外壁材によると、躯体外壁に固定されるスパンドレルの内側に、躯体外壁に沿って断熱材が配置されているので、スパンドレルに伝達された外気の熱は断熱材が遮断し、建物内部に外気の熱が伝達されにくくなるので、断熱性を高めた外装構造を提供することができる。
また、スパンドレルは断熱材を保持しているので、従来のように躯体外壁に断熱材を貼り付ける等の施工が不要となり、外壁施工の大幅なコスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る建物(住宅やビル)の外装構造の1実施形態を、水平方向の断面で示した図である。
本実施形態の外装構造は、建物の躯体外壁1に沿って水平方向に連結された複数の外壁材により構成されており、各外壁材は、躯体外壁1に固定した複数のスパンドレル2A,2B,2Cと、これらスパンドレル2A,2B,2Cに一体化されて躯体外壁1に沿って配置した複数の断熱材10とを備えている。
【0010】
スパンドレル2A,2B,2Cは、金属板の押出成形により、上下方向に延在する凸部(外方に向けて2段に分けて突出した略台形状の部分)2a及び凹部(躯体外壁1に向けて突出した部分)2bが水平方向に交互に繰り返し形成された部材である。
スパンドレル2Bの水平方向の一方の端部には、図2に示すように、雌型連結部3及び被固定部4が一体に形成されており、スパンドレル2Bの水平方向の他方の端部には、図3に示すように、雄型連結部5が一体に形成されている。
【0011】
スパンドレル2Bの水平方向の一方の端部に形成した雌型連結部3は、図2に示すように、第1雌型係合部3aと第2雌型係合部3aとで構成されている。第1雌型係合部3aは、凸部2aから連続してスパンドレル2Bの他方の端部側に折り曲げられ、且つ所定位置で折り返されて「く」の字形状に折り曲げられている。第2雌型係合部3aは、この第1雌型係合部3aから厚さ方向連結板8を介して離間した位置で第1雌型係合部3aと略平行に延在しており、スパンドレル2Bの他方の端部側に折り曲げられ、且つ所定位置で折り返されて「く」の字形状に折り曲げられている。
【0012】
被固定部4は、第2雌型係合部3bの端部からスパンドレル2Bの一方の端部の外方に延在した板部であり、躯体外壁1に当接して端部側が後述するビス11により躯体外壁1に固定されるようになっている。
この被固定部4には、ビス11により躯体外壁1に固定される位置より開放端部側に、躯体外壁1から離間する方向に湾曲形状に突出した水返し部7が形成されている。
【0013】
スパンドレル2Bの水平方向の他方の端部に形成した雄型連結部5は、図3に示すように、第1雄型係合部5a、第2雄型係合部5b及び一対の断熱材保持部5c,5dを備えている。スパンドレル2Bの凸部2aから他方の端部の外方に平板状の断熱材保持部5cが延在している。この断熱材保持部5cの端部と重なるように折り返すことで直線状の第1雄型係合部5aが形成され、この第1雄型係合部5aから厚さ方向連結板9を介して離間した位置で断熱材保持部5cと平行に延在するように断熱材保持部5dが折り曲げられて形成されている。この断熱材保持部5dから他方の端部の外方に延在して平板状の第2雄型係合部5bが設けられている。
【0014】
そして、他のスパンドレル2A,2Cも、上述したスパンドレル2Bと同一の構造とされている。
断熱材10は、合成樹脂のビーズ発泡成形体など断熱性を有する材料からなり、スパンドレル2A,2B,2Cの凸部2aに入り込む凸部10aが一方の面に複数形成された板状部材である。
【0015】
図4は、図1の符号Cで示す領域を拡大して示した図である。
スパンドレル2Bの一方の端部に設けた被固定部4は、躯体外壁1に当接されてビス11を介して躯体外壁1に固定されている。スパンドレル2Bの雌型連結部3を構成する第1雌型係合部3a及び第2雌型係合部3bは、スパンドレル2Bの内側で躯体外壁1に沿って配置した断熱材10の一方の端部の外周に当接し、断熱材10の一方の端部を板厚方向から保持している。
【0016】
また、スパンドレル2Bの第1雌型係合部3a及び第2雌型係合部3bの「く」の字形状の内部には、水平方向に隣接配置した(図1の右側に配置した)スパンドレル2Cの第1雄型係合部5a及び第2雄型係合部5bが差し込まれることで、スパンドレル2B,2C同士が連結されている。
そして、スパンドレル2Cの断熱材保持部5c,5dは、スパンドレル2Cの内側で躯体外壁1に沿って配置した断熱材10の他方の端部の外周に当接し、断熱材10の他方の端部の他方の端部を板厚方向から保持している。
【0017】
なお、詳細には図示していないが、スパンドレル2Bの他方の端部に設けた第1雄型係合部5a及び第2雄型係合部5bは、図1の左側に隣接配置したスパンドレル2Aの第1雌型係合部3a及び第2雌型係合部3bの「く」の字形状の内部に差し込まれることで、スパンドレル2A,2B同士が連結される。また、スパンドレル2Bの内側で躯体外壁1に沿って配置した断熱材10の他方の端部は、スパンドレル2Bの他方の端部に設けた断熱材保持部5c,5dにより板厚方向から保持されている。
ここで、本発明の固定手段がビス11に対応し、本発明の保持部が第1雌型係合部3a、第2雌型係合部3b、断熱材保持部5c,5dに対応している。
【0018】
次に、上記構成の外装構造の作用効果について説明する。
本実施形態の外装構造は、躯体外壁1とスパンドレル2A,2B,2Cとの間に、複数の断熱材10が配置されているので、スパンドレル2A,2B,2Cに伝達された外気の熱を断熱材10が遮断し、建物内部に外気の熱が伝達されにくくなり、断熱性を高めた外壁構造を提供することができる。
【0019】
また、本実施形態は、上下方向に連続した凸部2a及び凹部2bが水平方向に交互に繰り返したスパンドレル2A,2B,2Cを使用することにより、断熱材10との間に凹凸形状の通気層が存在することになり、その凹凸形状の通気層が外壁構造内部の乾燥を促進するので、断熱材10の断熱性能を長期に渡って維持することができる。
また、本実施形態は、各スパンドレル2A,2B,2Cが断熱材10を保持する構造としているので、従来のように躯体外壁1に断熱材を貼り付ける等の施工が不要となり、外壁施工の大幅なコスト削減を図ることができる。
【0020】
また、水平方向に隣接するスパンドレル2B,2C同士は、一方の部材の端部に設けたスパンドレル2Bの第1雌型係合部3a及び第2雌型係合部3bに、水平方向に隣接配置したスパンドレル2Cの第1雄型係合部5a及び第2雄型係合部5bを差し込むことで連結されるので、スパンドレル2A,2B,2C同士の連結も簡単に行うことができる。
また、スパンドレル2A,2B,2Cの雌型連結部3(第1雌型係合部3a及び第2雌型係合部3b)は、断熱材10の端部を保持する機能と、隣接するスパンドレルの雄型連結部(第1雄型係合部5a及び第2雄型係合部5b)と連結する機能とを有しており、一つの構成部で2つの機能を備えているので、スパンドレル2A,2B,2Cの製造コストの低減化も図ることができる。
【0021】
また、スパンドレル2A,2B,2Cの被固定部4の端部に付着した雨水が毛細管現象や風圧によって第2雌型連結部3bに向かっても、湾曲形状に突出した水返し部7がビス11により躯体外壁1に固定される位置に雨水が向かうのを遮断するので、躯体外壁1に雨水が浸入しない雨仕舞い構造を得ることができる。
さらに、断熱材10は各スパンドレル2A,2B,2Cの雌型連結部3、断熱材保持部5c,5dにより着脱自在に挟持されているので、外壁構造の解体時、廃棄物の分別作業(スパンドレル2A,2B,2Cと断熱材10を別の廃棄物として分別する作業)や、スパンドレル2A,2B,2C、断熱材10のリサイクル利用を促進して環境問題に適した外壁材を提供することができる。
【0022】
次に、図5は、スパンドレル2Aに断熱材10を一体化する手順を示すものである。
断熱材10及びスパンドレル2Aは、略同一の幅寸法(図5の左右方向の寸法)及び長さ寸法(紙面に直交する方向の寸法)を有している。
先ず、図5(a)に示すように、スパンドレル2Aの幅方向中央部が断熱材10の幅方向中央部に近接し、スパンドレル2Aの幅方向両端部が断熱材10の幅方向両端部に対して離間するように、スパンドレル2A全体を円弧状に弾性変形させる。これにより、スパンドレル2Aは、凸部2a、凹部2bの内部空間が拡がるように変形して幅寸法が僅かに増大する。
【0023】
そして、断熱材10の幅方向中央部の凸部10aに、スパンドレル2Aの幅方向中央部の凸部2aを係合させ、次いで、円弧形状のスパンドレル2Aを元の状態に弾性復帰させていく。
次いで、図5(b)に示すように、スパンドレル2Aの一方の端部に形成した雌型連結部3(第1雌型係合部3a,第2雌型係合部3b)及び他方の端部に形成した雄型連結部5の断熱材保持部5c,5dで、断熱材10の幅方向両端部を板圧方向から保持する。
【0024】
このように、スパンドレル2Aを円弧状に弾性変形させることで幅方向寸法を増大させ、このスパンドレル2Aを断熱材10の幅方向中央部から係合させることで、スパンドレル2Aに断熱材10を一体化することができるので、狭い施工現場においてスパンドレル2Aに断熱材10を一体化する場合であっても、スペースを取らずに簡単にスパンドレル2A及び断熱材10を一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る外壁材を使用した外装構造を示す水平方向の断面図である。
【図2】本発明に係るスパンドレルの水平方向の一方の端部の構造を示す図である。
【図3】本発明に係るスパンドレルの水平方向の他方の端部の構造を示す図である。
【図4】図1の符号Cで示す領域を拡大して示した図である。
【図5】スパンドレル2Aに断熱材10を一体化する手順を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…躯体外壁、2A,2B,2C…スパンドレル、2a…凸部、2b…凹部、3…雌型連結部、3a…第1雌型係合部、3b…第2雌型係合部、4…被固定部、5…雄型連結部、5a…第1雄型係合部、5b…第2雄型係合部、5c,5d…断熱材保持部、7…水返し部、8,9…厚さ方向連結板、10…断熱材、10a…凸部、11…ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体外壁に沿って水平方向に複数連結され、前記建物の外装をなす外壁材であって、
前記躯体外壁に固定されるスパンドレルと、
このスパンドレルの内側に前記躯体外壁に沿って配置され、前記スパンドレルに一体に保持された断熱材と、を備えていることを特徴とする外壁材。
【請求項2】
前記スパンドレルは、上下方向に延在する凸部及び凹部が水平方向に交互に連続してなる金属板材であり、これら凸部及び凹部の内面と前記断熱材との間に空気層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の外壁材。
【請求項3】
前記スパンドレルの水平方向の端部に雄型連結部が形成され、当該スパンドレルに隣接する他のスパンドレルの端部に、前記雄型連結部に向けて水平方向に差し込むことにより前記雄型連結部に連結する雌型連結部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の外壁材。
【請求項4】
前記スパンドレルの端部に、前記躯体外壁に固定手段を介して固定される被固定部を設け、前記被固定部の近傍に水返し部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の外壁材。
【請求項5】
前記スパンドレルの水平方向の両端部に、前記断熱材の水平方向の両端部を板厚方向から着脱自在に保持する保持部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の外壁材。
【請求項6】
前記スパンドレル及び前記断熱材は、略同一の外郭形状の部材であり、
前記スパンドレルは、前記凹部及び凸部が連続する方向に沿って湾曲させて弾性変形させ、湾曲した頂部を前記断熱材の中央部に係合して弾性復帰させることで前記断熱材の端部を前記保持部で保持することを特徴とする請求項5記載の外壁材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−53619(P2010−53619A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220992(P2008−220992)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(599090615)株式会社メガテック (2)
【Fターム(参考)】