説明

外来微粒子の細胞透過性を向上させる方法

本発明は、外来微粒子を細胞の細胞壁、細胞膜、細胞小器官膜および/または核膜の中に非常に効率良く入り込ませそして前記細胞の中の相補的標的とハイブリッド形成または結合させることを可能にする方法を提供する。そのような細胞は培養物または患者から得た標本に由来するものであってもよい。前記外来微粒子はプローブ、例えば下記の中の各々または2種以上の任意組み合わせで構成されているプローブであってもよい:DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、糖ペプチド、リポペプチド、糖脂質またはプリオン。当該標的は細胞、細胞成分、または好適には病原体または病原体成分である。その病原体は、例えば細菌、菌・カビ、酵母菌またはウイルスなどであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外来微粒子(本発明のプローブを包含)の細胞透過性を向上させる組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は生きている有機体全部の基本的単位である。ほとんど全部の細胞に共通した1つの属性は、それらが細胞膜に取り巻かれている(または閉ざされている)点にある。前記膜は当該細胞の内部内容物を封じ込めかつ物質が細胞に出入りする動きを調節する。当該細胞に出入りすることができる分子は、前記膜を貫通して拡散するか或は輸送される分子のみである。ある分子は前記膜の脂質中心部を通り抜けることができるが、他の分子は孔の中を通り抜ける必要がある。更に他の分子は担体と結合している膜をエネルギー依存様式で通り抜ける必要さえある。同様に、核および他の細胞小器官も分子が前記細胞小器官に出入りする流れを調節する膜を有する。
【0003】
固定は、細胞分子を適切な場所に「定着」させることで次に細胞もしくは組織を試験することができるようにする化学的プロセスである。固定剤として用いられる大部分の作用剤(例えばアルコール、例えばエタノールなど、およびアルデヒド、例えばパラホルムアルデヒドなど)は、細胞分子、特に蛋白質を架橋させることで働く。そのような架橋プロセスによって細胞構造の劣化が防止される。保存しようとする細胞分子および構造物が異なるか或は検出方法が異なると、より良好に適する固定剤も異なる。所定目的で選択される固定剤はその目的の性質によって決まる。
【0004】
不幸なことには、現在の固定方法を用いると、しばしば、その後に研究者または臨床医が内部の細胞成分を検出することができなくなる。言い換えれば、細胞の劣化を防止すること、即ち固定は、また、サイズがより大きな検出用分子に頼っている様々な種類の研究および診断にとって障害にもなり得る。このことから、固定後に細胞に透過性を与えるか或は通路を生じさせる努力が成されてきた。
【0005】
固定後に細胞膜に透過性を与える現在の方法は必ずしも全ての標本にとって有効ではなく、あまりにも厳しく(従って、試験すべき構造物が壊され)そして/または高価な装置を必要とする。例えば、ポリカルボン酸重合体およびpHを用いることが特許文献1に開示されているが、細胞膜が壊れることから、使用可能なのは固定されていないサンプルのみである。2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロ安息香酸または2,4−ジニトロフェノールを含有する組成物を細胞膜の固定および透過性の両方で用いることが特許文献2および3に開示されているが、そのような組成物は、研究者または臨床医が選択する固定剤を制限しており、このように、必要な検定の柔軟性を制限している。固定されていないサンプルに対してのみ機能する方法は、一般に、物理的方法、例えば音波処理、エレクトロポレーションなどでありかつ高価な装置を必要とする。
【0006】
その上、いろいろな細胞標的、例えば病因などの研究および診断で利用可能な従来技術の方法は、顕微鏡による評価、細胞形態パラメーター、染色特徴および特定標的の存在有り無しに頼っている。しかしながら、そのような診断方法の多くはあまり正確でないか或は感度が充分ではない。
【0007】
外来微粒子、例えば標識付き検出分子などが標本の細胞膜を透過する率を向上させる組成物および方法が求められている。その上、細胞標的および病原体の検出を向上させる組成物および方法も求められている。
【特許文献1】Hoffman他、米国特許第6,835,393号
【特許文献2】Connelly他、米国特許第5,597,688号
【特許文献3】Connelly他、米国特許第5,422,277号
【発明の開示】
【0008】
発明の要約
本発明は、1つの態様において、標的または標的フラグメントを細胞培養物または患者から得た標本の中の細胞からインシトゥハイブリッド形成によって直接的に検出することを可能にするものである。好適な態様における細胞は病原体である。本方法は数段階を包含し、これらを必ずしもではないが好適には示す順で実施する。培養物または標本のサンプルをスライドの上に置く。そのサンプルを前記スライドの上に熱または標準的な固定剤で固定する。その固定剤は、例えばメタノール、メタノール酢酸、アセトン、ホルムアルデヒドまたはホルマリンなどであり得る。その固定したサンプルをIDF溶液(以下を参照)で処理し、染色または精査しそして観察する。別法として、当該標本をIDF溶液と混合し、インキュベートした後、ガラススライドの上に塗るか或は他の様式で位置させ、空気で乾燥させた後、固定する。前記IDF溶液を下記の反応体の任意組み合わせで構成させてもよい:カオトロピック塩(例えばグアニジンのチオ硫酸塩もしくは塩酸塩)、イオン性界面活性剤(例えばSDS)および/または非イオン性界面活性剤(例えばIPGEL、デオキシコール酸塩、コール酸塩または胆汁塩)または同様な特性を有する他の反応体、メタノールおよび酢酸。前記IDF溶液に入れる各反応体の濃度は、例えば検出すべき病原体の細胞壁などに依存する。本発明を如何なる理論でも機構でも制限するものでないが、そのようなIDF溶液によって当該病原体の細胞壁および/または膜(細胞および核)の中に「通路」が形成されると考えている。そのような通路によって、プローブが前記細胞壁および細胞膜を通り抜けて当該病原体の細胞質および/または核の中に入り込むことができる。本発明のプローブには、DNA、RNA、PNA、ペプチド、糖ペプチド、リポ蛋白質または糖脂質、または前記いずれかの混合物が含まれ得る。当該サンプルの中の固定した細胞の標的をこの標的に特異的なプローブ複合体(このプローブ複合体は当該標的に特異的な結合因子を含有して成る)とハイブリッド形成または結合に適した条件[例えばShahおよびHarrisの米国特許第6,165,723号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如き]下で接触させる。次に、ハイブリッド形成も結合も起こさなかったプローブを当該サンプルから濯ぎ流してもよい。1つの態様では、その後、その濯いだサンプルに適切な対比染色剤(例えばEvans Blue、DAPI、過マンガン酸カリウムなど)による染色を受けさせてもよい。そのハイブリッド形成または結合したプローブ複合体を例えば顕微鏡などで可視的に検出するが、そのプローブ複合体が存在することは当該細胞標的が存在することの指標である。この方法はいろいろなハイブリッド形成用緩衝液を用いて実施可能であり、それの非限定例をいくつか本明細書に開示するが、それらはShahおよびHarrisの米国特許第6,165,723号(引用することによって本明細書に組み入れられる)にも開示されている。使用するハイブリッド形成用緩衝液は使用するプローブの性質によって決まる。本発明の方法は、細胞、細胞成分、好適には標本の中の病原体を検出しようとする時に有効である。ミコバクテリウム種の病原体を検出しようとする時に用いるに有用な特定の典型的な非限定プローブ複合体を本明細書に開示する。
【0009】
本発明の方法は、例えば幅広く多様な標本に由来する核酸、ペプチド、糖ペプチド、リポ蛋白質および糖脂質などを検出しようとする時に用いるに有用である。典型的な標本には、例えば興味の持たれる細胞、細胞型、組織または病原体1種または2種以上が含まれ、それらには、例えば血清、血漿、痰、尿、脳脊髄液、組織および母乳などが含まれるか或はそれらに由来するそれらが含まれる。本発明の組成物および方法は、全ての有機体に由来する標本に対して使用可能であり、そのような有機体には、これらに限定するものでないが、哺乳動物、爬虫類、魚類、鳥類、植物および昆虫類が含まれる。
【0010】
本発明は、1つの態様において、細胞壁、細胞膜、細胞小器官膜および核膜の透過性を向上させる組成物(IDF溶液)を意図したものであり、ここで、前記組成物は、1つの態様において、GuSCN(チオシアン酸グアニジン)、Tris−HCL、EDTA,IGEPAL(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、酢酸、メタノール、コール酸ナトリウムおよびデオキシコール酸ナトリウムを含有して成る。本発明は、更に、前記GuSCNを約2.0から3.3Mの濃度で存在させ、前記Tris−HCLを約10から100mMの濃度で存在させ、前記Tris−HCLを約7.0から9.0のpHで存在させ、前記EDTAを約5から50mMの濃度で存在させ、前記IGEPALを約0.1から2.0パーセントの濃度で存在させ、前記酢酸を約0.1から10.0パーセントの濃度で存在させ、前記メタノールを約20から50パーセントの濃度で存在させ、前記コール酸ナトリウムを約0.02から2.5パーセントの濃度で存在させ、そして前記デオキシコール酸ナトリウムを約0.02から2.5パーセントの濃度で存在させることも意図する。
【0011】
別の態様では、GuSCN緩衝液の代わりにGuHCL緩衝液を約2Mから6Mの範囲で用いる。更に別の態様では、IGEPALの代わりにSDSを約0.01%から2.0%の範囲で用いる。更に別の態様では、GuSCNをGuHCLと一緒に用いそして/またはIGEPALをSDSと一緒に用いる。
【0012】
本発明は、1つの態様において、細胞の中の標的を染色する方法を意図し、この方法は、a)前記細胞をGuSCN(チオシアン酸グアニジン)、Tris−HCL、EDTA,IGEPAL(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、酢酸、メタノールおよびデオキシコール酸ナトリウムを含有して成る組成物と接触させることで透過性細胞を生じさせ、b)前記段階(a)の透過性細胞を前記標的との結合に特異的な結合因子と接触させ、そしてc)前記段階(b)の結合因子を検出することを含んで成る。
【0013】
本発明は、他の面において、前記方法の標的を例えば核酸、ペプチド核酸、ペプチド、糖蛋白質、脂質、リポ蛋白質、ウイルス、プリオンおよびマイコプラズマなどから選択することを意図する。
【0014】
本発明は、他の態様において、前記結合因子を核酸、ペプチド核酸、ペプチド、リポ蛋白質、糖蛋白質、抗体または抗体フラグメントおよび脂質から成る群から選択することを意図する。
【0015】
本発明の結合因子に追加的に検出部分も含有させてもよく、そしてその検出部分を例えば蛍光マーカー、放射性マーカー、色素、コロイド状金属、ビオチン/アビジンおよび西洋ワサビペルオキシダーゼなどを包含する群から選択してもよい。好適な態様では、前記検出を当該標的抗原に親和性を示す標識抗体を用いて実施する。本明細書では、検出部分を含有して成る結合因子をプローブ複合体として定義する。
【0016】
1つの態様では、臨床サンプルにIDF溶液を用いた処理を管の中で受けさせた後、沸騰させることで核酸を溶液の中に放出させる。この技術は、例えば細胞壁を消化させようとする時に物理的溶解(例えば音波処理)または酵素を用いた長期のインキュベーションを行う必要がある標的、例えばミコバクテリウム、菌・カビおよび酵母菌などにとって有効である。その興味の持たれる標的にさらなる精製を(1)標準的DNA精製技術または(2)特異的プローブを用いたサンドイッチハイブリッド形成で受けさせることも可能で
ある。次に、その精製標的DNAまたはRNAをそれぞれ必要ならば検出前にPCRまたはRT−PCRで増幅させておいてもよい。
【0017】
より好適な態様における標的は、微生物であるヒト型結核菌に由来する核酸でありそして結合因子は微生物であるヒト型結核菌に由来する核酸に相補的なオリゴヌクレオチド(またはPNAプローブ)である。
【0018】
別の面では、本方法に、また、検出部分をより良好に目立たせるか或は見えるようにする目的で背景を染色することも包含させる。背景の染色および染色技術は本技術分野の実施者に公知である。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞の中の標的である核酸、蛋白質、ペプチド、リポペプチド、糖ペプチド、脂質などの存在を培養物または個体から得た標本(例えば血液塗抹標本、生検、パラフィン包埋組織およびダニなど)からインシトゥハイブリッド形成させて直接検出する目的でプローブが細胞(例えば病原体)の細胞壁および/または細胞膜を透過し得るように改良を受けさせた方法を見いだしたことが基になっている。本発明の方法は、特に、病原体、例えば痰、全血、中枢髄液(CSF)、他の体液または感染した組織などの中に存在する病原体に特異的なヌクレオチド配列を検出するに良好に適する。より具体的には、プローブ(例えばオリゴヌクレオチドプローブ)が感染した宿主細胞の内側または外側のいずれかに存在し得る細胞(例えば病原体、例えば細菌、ウイルス、菌・カビ、酵母菌および原生動物など)の中に入り込むことができるように伝統的な固定/前処理方法に対して行った新規な改良を記述する。加うるに、蛍光標識付きプローブを用いたハイブリッド形成後に対比染色剤(例えばDAPI、Evans Blue、過マンガン酸カリウム)を用いた手順を実施することで、培養物または臨床サンプルの中のハイブリッド形成したプローブを保持している有機体を容易に見ることができるようにもする。
【0020】
本明細書に記述する本発明の新規でユニークなインシトゥハイブリッド形成前処理方法、検出技術および組成物を用いると、組換え型DNA、RNA、PNA、ペプチド、糖蛋白質、脂質および糖脂質プローブを細胞、微生物または組織断片で用いることが可能になりかつこれらは細菌学、寄生虫学、組織学または病理学実験室で常規実施される顕微鏡検査に適合し得る。本発明では、集団の中の興味の持たれる特定の標的(例えば核酸配列)を含有する細胞(また組織)はどれであるかを決定する目的で、例えばサンプルである細胞(または組織)および前記サンプルの検査に対して例えば顕微鏡、電子顕微鏡、フローサイトメトリーまたは放射能画像形成(例えばX線フィルム、燐光画像形成など)を用いて前以て決めたヌクレオチド配列を持たせておいた核酸プローブなどを用いる。このように、感染した全血、塗抹標本または組織断片に関して、感染している細胞の中の病原性有機体、例えば細菌、ウイルス、原生動物または菌・カビなどを検出することができる。そのようなプロトコルは有用な診断および科学的情報を与えるものである、と言うのは、特定の核酸の存在有り無しと観察可能な構造物および形態を有する1種以上の細胞とが相互に関係している可能性があり、このようにして、臨床的診断および予後診断の基礎を与えるからである。
【0021】
標的である核酸フラグメントを標本から直接検出する本方法は数段階を包含し、これを好適には示す順で実施する。標本(通常は個体から得た)を最初にスライドの上に置く。そのサンプルを前記スライドの上に固定剤(例えばメタノール、メタノール−酢酸固定剤またはホルマリン−酢酸固定剤など)で固定する。前記サンプルを固定した後、本発明の組成物および方法を用いて前記サンプルの細胞が透過性を示すようにする。別法として、当該標本をIDF溶液と管の中で混合し、インキュベートした後、スライドの上に置き、空気で乾燥させた後、固定する。次に、その細胞を当該標的に特異的なプローブとハイブ
リッド形成に適した条件下で接触させる。
【0022】
ハイブリッド形成が起こるに充分な時間が経過した後、ハイブリッド形成しなかったいくらか存在するプローブを前記サンプルから濯ぎ流す。好適な態様では、次に、そのサンプルを対比染色剤(例えばDAPI、Evans Blue、過マンガン酸カリウムなど)と接触させる。前記サンプルに対比染色を受けさせるか否かに拘わらず、次に、当該サンプルに含まれる標的とハイブリッド形成したプローブを例えば顕微鏡などで可視的に検出する。前記サンプルの中にプローブが存在することは、標的フラグメントが存在することの指標である。本発明のインシトゥハイブリッド形成検定と同時または逐次的に当該サンプルに対比染色を受けさせると、例えば前記サンプル内の標的の位置の決定がより明瞭になることなどで、本方法が向上する。そのような情報は、例えば背景のハイブリッド形成をより明瞭に決定することなどに役立つ。
【0023】
本方法は、個体から得た如何なる標本を用いる時にも使用に適する。それには、これらに限定するものでないが、全血、血清、血漿、痰、尿、母乳、脳脊髄液および組織が含まれる。本方法は、また、昆虫ベクター、昆虫細胞、植物細胞、菌・カビおよび細菌の細胞の中に存在する病原体または他の標的を検出しようとする時にも適する。
【0024】
細胞または組織を固定する目的は、インシトゥハイブリッド形成中に細胞成分、例えばRNAなどが細胞マトリクスの中に保持されるように細胞を不動態化しそして細胞または組織の形態を保存することにある。従って、好適な方法では、プローブが侵入した後にハイブリッド形成するようにする目的で細胞または組織が実質的に開放された形態のままであるように細胞に含まれる核酸を保存しかつ保持し得ると同時に細胞マトリクスの中の蛋白質を架橋させそして/または沈澱させる固定剤を用いる。
【0025】
好適な態様における本発明のプローブは、例えば特定の細胞標的と緊縮条件下でハイブリッド形成する特定の核酸またはペプチド配列を含有する合成もしくは生物学的に生じさせた核酸(DNA、RNAおよび相当物)、ペプチド核酸(PNAおよび相当物)、ペプチド(および相当物)を含んで成る。別の態様における本発明のプローブは、細胞の中の特定の標的と緊縮条件下で結合する合成もしくは生物学的に生じさせた糖ペプチド、リポペプチドおよびプリオンもしくはプリオン様分子(またはそれらの相当物)を含んで成る。
【0026】
プローブ複合体は、検出に適したマーカー部分を含有して成るプローブであるとして定義する。当該プローブが核酸の場合には、マーカー部分を5’末端、3’末端、内部またはこれらの任意組み合わせのいずれかの所に結合させる。好適なマーカー部分は、識別用標識、例えば放射性標識(例えばp32、I125、H)、ビオチン標識または蛍光標識などである。別法として、そのようなプローブに標識付きポリデオキシヌクレオチド尾を持たせて、それを当該プローブ複合体の検出で用いる。そのようなプローブ複合体を、また、複数の異なる核酸配列、PNA、ペプチド、糖ペプチド、リポペプチドまたはプリオンまたはこれらの任意組み合わせで構成させることも可能であり、これにマーカー部分による標識を付けた1つ以上を含有させてもよい。2つ以上のプローブ部分に標識を付けておくと、そのプローブ部分の各々に異なるマーカー部分による標識を付けることができると言った利点が得られる可能性がある。
【0027】
オリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列は実質的に標的核酸の少なくとも一部と相補的である。その標的核酸は固定した細胞または組織の中に通常存在する核酸であるか、或は別法として、細胞または組織の中に通常は存在しないが異常または病気状態に関連して存在する核酸である。プローブ複合体分子の各々を好適にはヌクレオチドが約10−50個分の範囲内の大きさを有するDNAもしくはRNAフラグメントで構成させる。
【0028】
ペプチドプローブには、例えば限定標的または限定範囲の標的と結合することが知られている抗体および他の分子などが含まれる。抗体以外のプローブの例には、例えば酵素および酵素基質およびこれらのエフェクター部分などが含まれる。加うるに、公知の薬剤または化学品も標的蛋白質と選択的に結合し得る(例えば抗生物質は細菌と結合し得る)。細胞の中の脂質部分を検出しようとする時には例えばリポペプチドが有用であり、それには、細胞の中に存在する特異的細胞小器官または細胞小器官の一部および細菌が含まれる。例えば、糖ペプチドは血小板の凝固を妨害し、従って、血小板の機能に必要な分子を標的にしようとする時に使用可能であり、それによって凝固異常の研究および診断に役立つ。プリオンまたはこれの一部は、例えば神経組織のプローブとして使用可能である。同様に、プリオンは固定したサンプルの中の標的にも成り得る。
【0029】
好適な態様では、当該プローブを標的より多い量(例えば10:1、100:1または1000:1)でサンプルに添加する。それによって、ハイブリッド形成反応が効率良く進行しかつプローブ:標的の結合速度が速くなる。
【0030】
プローブ複合体(例えばDNA、RNAおよびまたはPNAを含んで成る)と固定したサンプルの中のサンプルの標的(例えば核酸)の接触を一般にプローブ複合体の溶液を当該サンプルに添加することで起こさせる。ハイブリッド形成に適した典型的な条件は、適切な緩衝環境をもたらす溶液である。適切なハイブリッド形成用緩衝液のいくつかの例は下記である:
1)ホルムアミドの含有量が約10%から50%で2X.SSC(pH7.4)でNP40の含有量が1%の緩衝液;
2)GuSCN緩衝剤が約1.5Mから4M入っている緩衝液[5MのGuSCNストック緩衝液を5MのGuSCN、100mMのTris−HCl(pH7.8)、40mMのEDTA、1%のNP40で構成させる。このストック緩衝液に1xTE(pH7.8)を添加することによる希釈を実施して示したGuSCNのモル濃度にすることでGuSCN緩衝液のモル濃度をこの上に示した濃度にする];
3)GuHCl緩衝剤が約2から6M入っている緩衝液[8MのGuHClストック緩衝液を8MのGuHCl、200mMのTris−HCl(pH7.8)、40mMのEDTA、1%のNP40で構成させる。このストック緩衝液に1xTE(pH7.8)を添加することによる希釈を実施して示したGuHClのモル濃度にすることでGuHCl緩衝液のモル濃度をこの上に示した濃度にする];
4)ホルムアミド(20−50%)とGuSCN緩衝剤(例えば0.5Mから3M)の混合物で構成されている緩衝液;
5)GuSCN緩衝剤(例えば0.5Mから3M)とGuHCL緩衝剤(例えば1Mから5M)の混合物で構成されている緩衝液。
【0031】
特定のハイブリッド形成用緩衝液の組成および濃度は使用するプローブもしくはプローブ複合体の種類に伴って変わる。使用する緩衝液の組成および濃度はまた当該プローブのTm(融点:即ち2本鎖DNAが分離を起こして2本の相補的1本鎖になる時の温度)、プローブの配列、プローブの長さおよびハイブリッド形成温度にも依存するが、これを本分野の技術者は単なる常規実験を行うことで決定することができるであろう。
【0032】
本発明を所定のハイブリッド形成温度に限定するものでない。しかしながら、ホルムアミドをハイブリッド形成用緩衝液で用いると標準的なハイブリッド形成プロトコルを実施する時の温度よりずっと低い温度でハイブリッド形成を起こさせることができると理解されるべきである。例えば、ハイブリッド形成用緩衝剤水溶液、例えば塩化ナトリウムなど中の標的に特異的(宿主細胞に特異的ではなく)な平均的プローブ複合体のハイブリッド形成に必要な温度は一般に約60−65℃であろう。この上に示したハイブリッド形成用
流体(1)を用いて同じハイブリッド形成を約42℃で実施することでも相当する特異性がもたらされるであろう。
【0033】
同様に、GuSCNを用いることでも、また、ハイブリッド形成を標準的ハイブリッド形成用プロトコルを実施する時の温度よりずっと低い温度でハイブリッド形成を起こさせることができる。例えば、平均的手順では、ハイブリッド形成用緩衝剤水溶液、例えば塩化ナトリウムなど中の標的に特異的(宿主細胞に特異的ではなく)なプローブのハイブリッド形成に必要な温度は約60−65℃であろう。しかしながら、この上に示したGuSCNまたはGuHClハイブリッド形成用緩衝液中で同じハイブリッド形成を約37℃で実施することでも相当するハイブリッド形成特異性がもたらされるであろう。
【0034】
ハイブリッド形成が完了した後、ハイブリッド形成しなかったプローブをサンプルから濯ぎ流す、一般的には洗浄用緩衝液を用いた一連の洗浄を実施することで濯ぎ流す。適切な洗浄用緩衝液および洗浄時間の決定は本技術分野の手段の範囲内である。1つの態様における洗浄用緩衝液は、塩化ナトリウムを0.3M、クエン酸ナトリウムを0.03MおよびSDSを0.1%含有して成る。別の適切な洗浄用緩衝液は燐酸塩緩衝食塩水(PBS)を含有して成る。
【0035】
濯いだ後のサンプルに対比染色を受けさせてもよい。1つの態様では、背景の対比染色を実施するとハイブリッド形成したプローブの可視化が向上する。好適な対比染色剤は、例えばDAPI、Evans Blueおよび過マンガン酸カリウムである。他の適切な対比染色剤は本分野の技術者に公知である。標的に特異的な核酸、蛋白質、糖蛋白質およびリポ蛋白質を検出しようとする時に蛍光標識付きプローブを用いる場合には、一般に、そのような染色段階を用いる。そのような対比染色は有用ではあるが、本発明の態様にとって必ずしも必要ではない。
【0036】
当該プローブ複合体に標識を付ける時に用いた特定部分に適切な手段を用いて当該プローブを検出する。蛍光標識付きプローブを検出するに好適な方法では、例えば特殊な緑色、赤色および青色の顕微鏡フィルター(即ち蛍光顕微鏡法)を用いる。ハイブリッド形成した放射能標識付きプローブの検出は、例えばオートラジオグラフィーおよび燐光画像形成などを用いて実施可能である。ビオチン標識付きプローブの検出は、酵素検出システムを用いて実施可能であり、そのような検出システムは商業的に入手可能である。
【0037】
この上に記述した方法を用いると、各々に異なるマーカー部分による標識を付けておいた複数の異なる核酸配列で構成させたプローブ複合体を用いて1つの反応を実施することで単一の臨床サンプルの中のいろいろな病原体を同時に検出することが可能になる。標本の中に通常存在する様々な標的が有する異なる核酸に特異的な異なるオリゴヌクレオチドプローブを用いて同時検出を実施する場合、それらをプローブ複合体の配列の全部が示すTm(融点)値が非常に類似するように考案することができる。次に、特異的オリゴヌクレオチドの各々に異なる検出可能部分(例えば異なる蛍光部分)による標識を付ける。そのようなプローブ複合体の多数の成分を用いてハイブリッド形成を実施する。ハイブリッド形成させたサンプルの処理をこの上に記述したようにして実施し、そして前記標的の中のどれが当該サンプルの中に存在するかを検出する目的で、前記プローブ複合体の異なる標識を付けたオリゴヌクレオチドを検出するに適した手段を用いてサンプルを観察する(例えば異なる蛍光部分を用いる時には適切なフィルターを用いて見る)。
【0038】
本分野の通常の技術を有する実施者は、本明細書に記述するインシトゥハイブリッド形成プロトコルで用いるに適した新規な前処理プロトコルが以前から公知の検出方法の全部ばかりでなく本明細書に記述する方法に適合しかつ使用する検出方法によって制限されないことを理解するであろう。本インシトゥハイブリッド形成プロトコルは、必要な操作の
数が少なく、従って短時間に実施可能であるように簡素化したものである。本発明の態様は、また、本発明の組成物を含有して成るキットも包含する。前記組成物をキットの形態で提供することにより、本明細書に示すプロトコルのいろいろな態様を実施することが可能になり、それには、幅広く多様な検出方法に関して簡潔さおよび適合性を最適にしたそれらが含まれる。また、特定的に調製した反応体およびプローブを含有するように調製した前記キットは臨床/診断実験室でも使用可能であると期待し、その場合、特定の核酸が存在するか否かを検出することができることから、特定の標的の存在によって特徴づけられる病気状態が陽性または陰性であるかを識別するに役立つであろう。
【0039】
いろいろな細胞病因を診断する時に利用可能な従来技術の方法は、顕微鏡による評価、細胞形態パラメーター、染色特徴および特定標的の存在有り無しに頼っている。しかしながら、そのような診断方法の多くはあまり正確でないか或は感度が充分ではない。上述したプロトコルおよび病原体に特異的なプローブを用いたインシトゥハイブリッド形成は、サンプルの中の標的(これらに限定するものでないが、病原体を包含)の同定をより容易かつより正確に行うことを可能にするものである。
【0040】
本発明は、インシトゥハイブリッド形成プロトコルで用いるに適して細胞へのプローブの侵入、従ってハイブリッド形成および検出特性を以前に記述したプロトコルに比べて向上させる簡潔な前処理プロトコルを提供するものである。そのような向上には、ハイブリッド形成の効率および特異的「シグナル」の検出の向上によって検定の感度を最大限にすることが含まれる。本発明を所定の機構に限定するものでないが、そのように感度が向上することは細胞へのプローブの侵入が向上したことでハイブリッド形成が向上すると同時に細胞または組織の中の標的(例えば核酸配列)の保持が最大限になりかつ細胞または組織サンプルの他の生化学および形態的特性の保存が最大限になることによるものであると考えている。
【0041】
実験
この上に示した方法の好適な非限定使用は、ヒト型結核菌を培養物または痰から検出する時の使用である。本分野の技術者は、この新規な方法を興味の持たれる特定の核酸のハイブリッド形成(または標的細胞、組織または病原体の他の細胞成分の検出)の目的で細胞の一体性および形態を保存しながら他の幅広く多様な系、細胞、組織培養物および組織に等しく適用することができることを理解しかつ評価するであろう。
【実施例】
【0042】
培養物または患者の処理した痰をガラスプレートの上に塗り付けた後、空気で乾燥させた。その培養した細胞を洗浄した後、遠心分離で濃縮した。その洗浄した細胞を燐酸塩緩衝液にBSAと一緒に入れて懸濁させた。その細胞を不活性にする目的で、その懸濁させた細胞を100℃で15分間沸騰させた。
【0043】
サンプル調製方法1
痰を1)NALC/NaOHで処理するか或は2)NALC/NaOHで処理した後にその処理した痰を100℃で15分間沸騰させることでサンプルを不活性にするか或は3)カオトロピック溶液、例えばグアニジンの塩酸塩またはチオ硫酸塩などで処理する(簡単に述べると、痰に2−3倍の体積の5M GuSCNまたは8M GuHCLを混合した)。そのサンプルを37℃で20分間インキュベートした。そのサンプルを遠心分離にかけることで細胞を沈澱させた。その細胞を燐酸塩緩衝食塩水で洗浄した。洗浄した細胞を燐酸塩緩衝食塩水に1%のBSAと一緒に入れて懸濁させるか、或は4)カオトロピック溶液、例えばグアニジンの塩酸またはチオ硫酸塩に入れた後に沸騰させる(細胞を緩衝食塩水に1%のBSAと一緒に入れて懸濁させて100℃で15分間沸騰させてミコバクテリウムを死滅させる以外はこの上に示した段階3と同様に)。次に、その調製した培養物または痰サンプルをガラススライドに塗り付けた後、空気で乾燥させる。
【0044】
そのサンプルをメタノールまたはメタノール−酢酸またはエタノールで固定した。その固定した塗り付け物をIDF溶液(この上に開示した如き)で10分間処理した。10分後、その塗り付け物をPBSで3回洗浄した後、空気で乾燥させた。
【0045】
サンプル調製方法2
1体積の患者の未処理痰を2体積のIDF溶液(前記)と管の中で混合した後、室温(20−25℃)で15分間インキュベートした。次に、その痰−IDF混合物をガラススライドに塗り付け、空気で乾燥させた後、メタノールで固定した。その固定した塗り付け物をハイブリッド形成前にIDFで処理する段階を省いた。ハイブリッド形成を実施する前に前記スライドをPBSで3回洗浄した。
【0046】
サンプル調製方法3
ガラススライド上にメタノールで固定した痰−IDF混合物にPBS中2%のグルタルアルデヒドを用いた処理を20−25℃(周囲温度)で5分間受けさせた後、PBSによる濯ぎを3回そして空気乾燥を受けさせた。その固定した塗り付け物をハイブリッド形成前にIDFで処理する段階を省いた。
【0047】
サンプル調製方法4
1体積の患者の未処理痰を2体積のIDF溶液(前記)と管の中で混合した後、約20−25℃(周囲温度)で15分間インキュベートした。その痰−IDF混合物を15分間沸騰させることで核酸を溶液の中に放出させると同時に前記サンプルが感染しないようにした。その沸騰させたサンプルから核酸を標準的技術で精製してもよいか、或はShah他[Shah J.S.、King W.、Liu J.、Smith J.、Serpe G.およびPopoff S.、および(1997)Assay Improvements.、米国特許第5,629,156号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)]が記述した如き特定のプローブおよび磁気ビードを用いたサンドイッチハイブリッド形成で興味の持たれる標的核酸を選択してもよい。その精製した標的をPCR(DNA標的の場合)またはRT−PCR(RNA標的の場合)で増幅させてもよい。
【0048】
サンプルの精査
細胞の中にヒト型結核菌が存在するか否かを検出する時に、好適には、Shah、NietupskiおよびLiu(米国特許第5,521,300号)が記述した如きヒト型結核菌の23 SリボソームRNAと特異的にハイブリッド形成するDNA配列で構成させたオリゴヌクレオチドプローブを用いる。適切なプローブ複合体の例は下記である:
P1.TBプローブ
5’−ローダミングリーン−AGA−ACA−CGC−CAC−TAT−TCA−CAC−GCG−CGT−ATG−C−3’[配列番号:1]66.5c
P2−Tb−1 51−2c
5’−ローダミングリーン−TTC−GAG−GTT−AGA−TGC−CC−3’[配列番号:2]
P3.ミコバクテリウムプローブ
5’−Tamra−ATC GCC CGC ACG CTC ACA GTT AAG
CCG TGA GAT TTC−3’[配列番号:3]68.7c
P4−ミコバクテリウム属−54.1c
5’−Tamra−GCA−TTA−CCC−GCT−GGC−3’[配列番号:4]
P5−ブルクホルデリア(Burkholderia)プローブ
5’−FAM−CTT−GGC−TCT−AAT−ACA−GTC−GG−3’[配列番
号:5]tm52c
PNAプローブ
1つの態様では、このプローブ複合体を固定/前処理しておいたサンプルの核酸と37℃のハイブリッド形成用緩衝液[2.5MのGuSCN、50mMのTris(pH7.8)、20mMのEDTAおよび1%のNP40]中で接触させた。代替態様では、前記プローブ複合体を固定しておいたサンプルの核酸と42℃のハイブリッド形成用緩衝液[50%のホルムアミド、2X SSC(pH7.4)、20mMのEDTA、1%のNP40]中で接触させた。
【0049】
ミコバクテリウム種を検出するための代替プローブ複合体で用いるに適したオリゴヌクレオチド配列の例は下記である:
P2−Tb−1 51−2c
5’−ローダミングリーン−TTC−GAG−GTT−AGA−TGC−CC−3’[配列番号:2]
P3.ミコバクテリウムプローブ
5’−Tamra−ATC GCC CGC ACG CTC ACA GTT AAG
CCG TGA GAT TTC−3’[配列番号:3]68.7c
P4−ミコバクテリウム属−54.1c
5’−Tamra−GCA−TTA−CCC−GCT−GGC−3’[配列番号:4]
配列番号:3および4およびこれらの相補体がミコバクテリウム種の検出で用いるに適切である。配列番号:1および2およびこれらの相補体がヒト型結核菌の検出で用いるに適切である。配列番号:5がブルクホルデリア種の検出で用いるに適する。
【0050】
ミコバクテリウム病原体の検出の使用では、細菌細胞中にrRNAが非常に豊富に存在(1,000−10,000個のコピー)することから、リボソームRNA配列を選択する。そのプローブ複合体のオリゴヌクレオチドは、好適には、ヒト型結核菌のrRNAに相補的な配列を有するDNAである。好適には、そのオリゴヌクレオチドの3’および5’末端にフルオレセインによる標識を付ける。RNAオリゴヌクレオチドプローブも同様に使用可能であることは理解されるであろう。
【0051】
この上で考察したように、プローブ全体の量を、ハイブリッド形成反応が効率良く進行しかつプローブ:標的のアニーリング速度が速くなるように、サンプル内に存在すると思われる有効rRNAの推定量より多いであろう前以て決めておいた量(約100:1)にする。信頼できるシグナルを背景の上に生じさせるには、量に換算して、長さがヌクレオチド30個分のオリゴヌクレオチドで構成されているプローブを1−10μg/mlの範囲の濃度で用いる必要がある。
【0052】
また、GuSCNを用いることでも標準的ハイブリッド形成プロトコルを実施する時よりもずっと低い温度でハイブリッド形成を起こさせることができると理解されるべきである。ハイブリッド形成用水性流体、例えば塩化ナトリウムなどの中で標的に特異的(宿主細胞にではなく)な特定のプローブのハイブリッド形成を起こさせるに要する温度は約60−65℃であろう。しかしながら、この上に示したハイブリッド形成用緩衝液であるGuSCNまたはGuHCl中でハイブリッド形成を実施するならば約37℃で特異性が確保される。
【0053】
このようなインシトゥハイブリッド形成方法の利点の1つは、サンプルに入っている細胞の数を比較的少なくすることができることと同じサンプルを短い時間の間に多数処理することができる点にある。この記述するユニークなインシトゥハイブリッド形成方法は極めて簡潔である。本発明の方法をまた如何なる種類のサンプルに適用することも可能であり、そのようなサンプルには、これらに限定するものでないが、パラフィン包埋組織断片
、アセトン固定サンプルが含まれる。
【0054】
これらの実験の結果は、試験を受けさせたサンプルの中の標的(病原体のDNA)は検出されるが対照サンプルの中の標的は検出されないことを示している。サンプルを本発明のIDF溶液で処理しておくと、当該標的の検出がかなりより良好になる。本分野の技術者は、本発明のIDF溶液はプローブ(または他の同様な物)を細胞、病原体(例えば細胞の中に存在する)または細胞小器官の中に有効に入らせる必要のある如何なる状況でも使用可能であることを過度の実験無しに評価し、理解しかつ確認するであろう。
【0055】
本発明は、例えば細胞成分および/または病原体の検出などに役立つように細胞、細胞壁、細胞膜、細胞小器官および細胞小器官膜の透過性を向上させる組成物および方法を提供するものであることは前記から明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞壁、細胞膜および核膜の透過性を向上させる組成物であって、GuSCN(チオシアン酸グアニジン)、Tris−HCL、EDTA,IGEPAL(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、酢酸、メタノール、コール酸ナトリウムおよびデオキシコール酸ナトリウムを含有して成る組成物。
【請求項2】
前記GuSCNが約2.0から3.3Mの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記Tris−HCLが約10から100mMの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記Tris−HCLが約7.0から9.0のpHで存在する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記EDTAが約5から50mMの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記IGEPALが約0.1から2.0パーセントの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記酢酸が約1.0から10パーセントの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記メタノールが約20から50パーセントの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記コール酸ナトリウムが約0.02から2.5パーセントの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記デオキシコール酸ナトリウムが約0.02から2.5パーセントの濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項11】
細胞の中の標的を染色する方法であって、
a)前記細胞をGuSCN(チオシアン酸グアニジン)、Tris−HCL、EDTA,IGEPAL(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、酢酸、メタノール、コール酸ナトリウムおよびデオキシコール酸ナトリウムを含有して成る組成物と接触させることで透過性細胞を生じさせ、
b)前記段階(a)の透過性細胞を前記標的との結合に特異的な結合因子と接触させ、そして
c)前記段階(b)の結合因子を検出する、
ことを含んで成る方法。
【請求項12】
前記標的を核酸、ペプチド核酸、ペプチド、糖蛋白質、脂質、リポ蛋白質、ウイルスおよびプリオンから成る群から選択する請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記結合因子を核酸、ペプチド核酸、ペプチド、リポ蛋白質、糖蛋白質および脂質から成る群から選択する請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記結合因子が追加的に検出部分も含有して成る請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記検出部分を蛍光マーカー、放射性マーカー、色素、コロイド状金属、ビオチン/アビジンおよび西洋ワサビペルオキシダーゼから成る群から選択する請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記検出を前記結合因子に親和性を示す標識抗体を用いて実施する請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記GuSCNが約2.0から3.3Mの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項18】
前記Tris−HCLが約10から100mMの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項19】
前記Tris−HCLが約7.0から9.0のpHで存在する請求項11記載の組成物。
【請求項20】
前記EDTAが約5から50mMの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項21】
前記IGEPALが約0.1から2.0パーセントの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項22】
前記酢酸が約1.0から10パーセントの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項23】
前記メタノールが約20から50パーセントの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項24】
前記コール酸ナトリウムが約0.02から2.5パーセントの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項25】
前記デオキシコール酸ナトリウムが約0.02から2.5パーセントの濃度で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項26】
前記標的が微生物であるヒト型結核菌に由来する核酸である請求項11記載の方法。
【請求項27】
前記結合因子が微生物であるヒト型結核菌に由来する核酸に相補的なオリゴヌクレオチドである請求項11記載の方法。
【請求項28】
追加的に背景を染色することも含んで成る請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2009−502177(P2009−502177A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524212(P2008−524212)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029501
【国際公開番号】WO2007/016379
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508027752)アイデイー−フイツシユ・テクノロジー・インコーポレーテツド (3)
【Fターム(参考)】