説明

外来DNA断片由来の逆方向反復配列を含むDNA断片の調製方法及びDNA型RNAiライブラリの調製方法

【課題】種々の長さと配列を有する長鎖cDNAについて、一本の試験管内で同時的に高い形成率で逆方向反復配列を形成させることがでる方法、この方法を利用したDNA型RNAiライブラリの調製方法、このライブラリの利用方法を提供する。
【解決手段】標的遺伝子DR構造を有するプラスミドの調製方法。
(1)1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドS:標的遺伝子の両側にニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有し、各ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の標的遺伝子側に、DR構造が形成された時に、その間のスペーサー領域に制限酵素認識部位が生成されるための制限酵素認識部位生成用部位を有する)を調製する工程、
(2)プラスミドSにニックを生じさせる工程、
(3)ニックを生じたプラスミドSに鎖置換反応及び引き続き行われるセルフライゲーション反応により、DR構造に変換した標的遺伝子を有するプラスミド(制限酵素認識部位生成用部位によって、2つの制限酵素認識部位が新たに形成される)を調製する工程、
(4)標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングする工程、
(5)クローニングしたプラスミド群を新たに形成された2つの制限酵素認識部位に対する2つの制限酵素で消化する工程、および
(6)消化したプラスミド群から、制限酵素で消化されて直鎖状になったプラスミドを回収する工程、
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外来DNA断片由来の逆方向反復配列を含むDNA断片の調製方法に関する。さらに本発明は、上記DNA断片の調製方法に利用できる方法及び材料に関する。加えて本発明は、上記調製方法で調製されたDNA断片から、DNA型RNAiライブラリを調製する方法にも関する。このライブラリを細胞に導入して標的遺伝子に対するRNAiを細胞内で産生させて標的遺伝子をノックダウンした細胞を得る方法、このライブラリを利用して標的遺伝子に対してRNAi効果を有する逆方向反復配列を判定する方法、及びRNAi効果を有する逆方向反復配列をスクリーニングする方法も本発明には含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、RNAi(RNA interference;RNA干渉)ライブラリを用いて機能的かつ網羅的に免疫反応などの生物の生命現象に関わる因子のスクリーニングが実施されている。RNAiライブラリを調製する方法としては、これまでに直接合成型RNAiライブラリ調製法とDNA型RNAiライブラリ調製法の二つのアプローチが試みられてきた。
【0003】
直接合成型RNAiライブラリ調製法は、RNAiの標的遺伝子の塩基配列情報に基づいて、DNA/RNAシンセサイザーなどを利用して二本鎖RNAを合成することにより、RNAiライブラリを構築する方法である。本法によれば、種々の長さを持つ二本鎖RNAからなるRNAiライブラリを調製することができる。しかし、本法は、ゲノム配列が明らかになった一部の生物にしか利用できず、かつ作業性及び経済性の面から大規模なライブラリを調製することが困難であるなどの問題点がある。
【0004】
DNA型RNAiライブラリは、種々の標的遺伝子の逆方向反復配列(inverted repeat;IR)を含む核酸を含有する組換えベクターから構成される。標的遺伝子の逆方向反復配列を含む組換えプラスミドが標的遺伝子を発現する宿主細胞に導入されると、上記逆方向反復配列の情報に基づいて細胞内にステムループRNAが産生され、その後スプライシングされた二本鎖RNAによるRNAi効果により標的遺伝子はノックダウンされる。
【0005】
DNA型RNAiを簡便に調製する方法として、Gateway法が知られている(非特許文献1)。Gateway法を利用すれば、ある特定の核酸の塩基配列に基づいて特定の逆方向反復配列を持つ核酸を調製することができる。また、初めにDNA断片を発現プラスミドに挿入し、引き続きこのDNAと逆方向となるようなDNA断片を、初めに挿入されたDNA断片の上流または下流に挿入することでも調製できる(two-step法)。しかし、これらの手法では種々の核酸の塩基配列から同一調製条件下(例えば、一つの試験管内)で1回又は数回で逆方向反復配列を持つ核酸を同時的に調製することはできない。したがって、Gateway法あるいはtwo-step法を用いてRNAiライブラリを調製することは非常に困難とされている。
【0006】
そこで、これら手法を用いない、DNA型RNAiを調製する方法として種々の方法がこれまでに試みられてきた(特許文献1及び2、非特許文献2)。
【0007】
特許文献1に記載の方法によれば、組換えベクターに挿入した100塩基対以上の外来DNA断片の塩基配列を逆方向反復配列に変換できる。しかし、本法は、プラスミドDNAを一本鎖に調製しなければならず、さらにループ部分、外来DNA断片及びレプリコン部分の間でライゲーション反応をしなければならない。プラスミドDNAの一本鎖は不安定であり、容易に高次構造をとり得る。異なる三つの断片のライゲーション反応は、各断片の末端部の接近効率が悪いことから、反応効率の低い反応である。これらの理由によって、本発明者らは、本法を利用してDNA型RNAiライブラリを調製することは技術的に困難であると考えた。
【0008】
特許文献2及び非特許文献2に記載の方法によれば、逆方向反復配列部分が20塩基対程度の短鎖DNA型RNAiライブラリを構築することができる。しかし、本法は、単離したDNA断片を逆方向反復配列に変換しこれを発現ベクターに挿入する方法であり、短鎖では可能でも長鎖の逆方向反復配列をもつDNAを発現ベクターに組み込ませることは困難であることから、長鎖DNA型RNAiライブラリの調製は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−502383号公報
【特許文献2】WO2005/06938
【特許文献3】特開2009−225682号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Genes Genet.Syst. 81, 129-134, 2006
【非特許文献2】Nat. Genet. 36, 190-196, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、従前のDNA型RNAiを簡便に調製する方法には、大規模な長鎖DNA型RNAiライブラリを、同一調製条件下で一度又は数回で調製することができないとの問題があった。そこで、本発明者らは、この問題を解決する方法として、長鎖外来DNAを組換えベクターに挿入したままで、長鎖外来DNAを逆方向反復配列に変換する方法を発明し特許出願した(特許文献3)。
【0012】
特許文献3に記載の方法は、ニッキングエンドヌクレアーゼと鎖置換反応を触媒する酵素を用いる手法である。本法によれば、長さが異なる100塩基以上の長鎖cDNAが混在する系において、各長鎖cDNAをベクターに挿入し、次いで各ベクターにおける挿入cDNAについて、一本の試験管内で同時的に逆方向反復配列を形成させることができる。したがって、本法を用いれば、これまでに報告されていないcDNA発現プラスミドライブラリからの長鎖cDNA型RNAiライブラリの構築が期待できる。しかし、特許文献3に記載の方法では、特定の配列を有する、挿入cDNAを逆方向反復配列に変換することはできたが、その効率は25%程度と必ずしも高くなかった。また種々の長さと配列を有する複数種類のDNA断片が挿入されているプラスミドを用いた場合、一本の試験管内で挿入DNAを同時に逆方向反復配列に変換する効率は非常に低かった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、種々の長さと配列を有する長鎖cDNAについて、一本の試験管内で同時的に逆方向反復配列を形成させることができ、かつ、この逆方向反復配列の形成率がより高い方法を提供することにある。さらに本発明は、この方法に使用するためのDNA断片やベクターの調製方法を提供することも目的とする。
【0014】
加えて本発明の目的は、DNA型RNAiライブラリの新規調製方法、このライブラリを細胞に導入して標的遺伝子に対する二本鎖RNAを細胞内で産生させて標的遺伝子をノックダウンした細胞を得る方法、このライブラリを利用した標的遺伝子に対してRNAi効果を有する逆方向反復配列を判定する方法、及びRNAi効果を有する逆方向反復配列をスクリーニングする方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を積み重ね、その結果、遺伝子操作における種々の技術を駆使して本発明に到達した。
【0016】
本発明は以下のとおりである。
[1]
標的遺伝子ダイレクトリピート(以下、DRと表記する)構造を有するプラスミドの調製方法であって、
(1)1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)を調製する工程、
但し、前記プラスミドSは、標的遺伝子の両側のそれぞれにニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有し、かつ各ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の標的遺伝子側に、DR構造が形成された時に、その間のスペーサー領域に制限酵素認識部位が生成されるための一部配列(制限酵素認識部位生成用部位)を有する、
(2)前記プラスミドSにニックを生じさせる工程、
(3)ニックを生じたプラスミドSに鎖置換反応及び引き続き行われるセルフライゲーション反応により、DR構造に変換した標的遺伝子を有するプラスミドを調製する工程、
但し、調製した標的遺伝子DR構造を有するプラスミドには、前記制限酵素認識部位生成用部位によって、2つの制限酵素認識部位が新たに形成される、
(4)標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングする工程、
(5)クローニングしたプラスミド群を前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位に対する2つの制限酵素で消化する工程、および
(6)消化したプラスミド群から、制限酵素で消化されて直鎖状になったプラスミドを回収する工程、
を含む、標的遺伝子DR構造を有するプラスミドの調製方法。
[2]
(7)工程(6)で回収された直鎖状になったプラスミドにDNA断片を挿入して環状のプラスミドを得る工程をさらに含み、
上記挿入するDNA断片は、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位をこれらに対応する制限酵素で切断した際に生成される突出末端の塩基配列に相補的な塩基配列を有する突出末端が生成される制限酵素認識部位を両側に有する、[1]に記載の方法。
[3]
工程(3)において新たに形成される2つの制限酵素部位がNotIおよびBgII、NotIおよびBstAPI、FseIおよびBsu36I、FseIおよびEcoNI、AscIおよびPflMI、またはAscIおよびBccIである[1]または[2]に記載の方法。
[4]
1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)を調製する方法であって、
(1)上流からプロモーターおよびターミネーター領域に挟まれ領域に2つのN部位を有するプラスミドを用意する工程、但し、N部位とはこの配列を認識する制限酵素の消化によりNNNまたはNNNNの突出末端を生じる制限酵素部位を意味する(Nは同一のいずれかの塩基である)、なお、N部位を認識しNNNまたはNNNNの突出末端を生じさせる制限酵素をN型制限酵素と定義する。
(2)標的遺伝子の両側のそれぞれにN部位を設けた遺伝子断片を調製する工程、
(3)(1)のプラスミドと(2)の遺伝子断片をN型制限酵素で消化し、ライゲーションして、プラスミドのN部位に、遺伝子断片のN型制限酵素切断断片を挿入したプラスミドを得る工程
を含む、1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)の調製方法。
[5]
N部位がDraIII認識部位である[4]に記載の方法。
[6]
上流からプロモーターおよびターミネーター領域に挟まれ領域に、プロモーター側からlox66配列、P部位(但し、P部位とは、この配列を認識する制限酵素の消化により3塩基または4塩基の突出末端を生じかつ、この末端の配列が非パリンドローム配列となる部位である。)第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、第1のN部位((但し、N部位とはこの配列を認識する制限酵素の消化によりNNNまたはNNNNの突出末端を生じる部位を意味する(Nは同一のいずれかの塩基である))、第2のN部位及びニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位をこの順に含み、
第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位及び第1のN部位の間、並びに第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の間に、ニッキング反応及び鎖置換反応、及び引き続き行われるセルフライゲーションによって、2つの制限酵素部位が新たに形成される配列をそれぞれさらに含む、遺伝子挿入用プラスミド。
[7]
P部位がBstXI認識部位、AlwNI認識部位, BglI認識部位, BstAPI認識部位, PflMI認識部位, SfiI認識部位, DraIII認識部位, EarI認識部位,BsmBI認識部位,またはBsmFI認識部位である[6]に記載のプラスミド。
[8]
ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位がNt.BspQI 認識部位である[6]または[7]に記載のプラスミド。
[9]
N部位がDraIII認識部位である[6]〜[8]のいずれかに記載のプラスミド。
[10]
第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位及び第1のN部位の間の配列が5〜15bpであり、第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の間の配列が5〜15bpである、[6]〜[9]のいずれかに記載のプラスミド。
[11]
ニッキング及び鎖置換反応によるセルフライゲーションによって新たに形成される2つの制限酵素部位がNotIおよびBgII、NotIおよびBstAPI、FseIおよびBsu36I、FseIおよびEcoNI、AscIおよびPflMI、またはAscIおよびBccIである[6]〜[10]のいずれかに記載のプラスミド。
[12]
標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法であって、
(1)[1]に記載の方法において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列を含むプラスミドを調製する工程、
(2)[2]に記載の方法において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列を含むDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る工程、および
(3)工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する工程、
を含む、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法。
[13]
標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法であって、
(1)[1]に記載の方法において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを調製する工程、但し、P部位は、この配列を認識する制限酵素の消化により3塩基または4塩基の突出末端を生じかつ、この末端の配列が非パリンドローム配列となる部位である。なお、P部位を認識し、このような突出末端を生じさせる制限酵素をP型制限酵素と定義する。
(2)[2]に記載の方法において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列およびP部位をこの順に含み、かつ一方の側に、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位の一方の制限酵素認識部位を有し、他方の側に、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位の他方の制限酵素認識部位を有するDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る工程、
(3)工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する工程、
(4)工程(3)で得られたIR構造を有するプラスミドをP型制限酵素で消化する工程、および
(5)工程(4)で消化したプラスミドをセルフライゲーションする工程
を含む、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法。
[14]
(6)工程(5)においてセルフライゲーションしたプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングして標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを得る工程、
をさらに含む、[13]に記載の方法。
[15]
P型制限酵素が、BstXI、AlwNI, BglI, BstAPI, PflMI, SfiI, DraIII, BstXI、EarI,BsmBI,またはBsmFIである[13]または[14]に記載の方法。
[16]
工程(2)と(3)の間に以下の工程(7)と(8)をさらに含む、[13]〜[15]のいずれかに記載の方法。
(7)工程(2)で得られた環状のプラスミドをBglIで消化する工程、
(8)工程(7)で消化したプラスミドを含むプラスミド群を宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングしてlox71配列が導入されたプラスミドを得る工程
[17]
[13]〜[16]のいずれかに記載の方法で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを培養細胞に導入し、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを昆虫培養細胞にトランスフェクションして培養細胞をノックダウンする方法。
[18]
培養細胞は、昆虫、植物、または酵母由来である[17]に記載の調製方法。
[19]
前記プラスミドは、以下のスペーサー配列を介してcDNAがIR構造を形成する[17]または[18]に記載の調製方法。
【化1】

スペーサー領域の塩基配列
[20]
前記プラスミドは、IE1プロモーター下に前記IR構造を有する[17]〜[19]のいずれかに記載の調製方法。
[21]
[13]〜[16]のいずれかに記載の方法で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを用いての生物の生命現象に関わる因子をスクリーニングする方法。
[22]
[13]〜[16]のいずれかに記載の方法で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを用いて標的遺伝子に対してRNAi効果を有する逆方向反復配列を判定する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、種々の長さと配列を有する複数の長鎖cDNAについて、発現プラスミドに挿入後、挿入DNAを切り出すことなく、一本の試験管内で同時的に逆方向反復配列を形成させることができる。さらに、本発明によれば、種々の長さと配列を有する複数の長鎖cDNAについて一本の試験管内で同時的に逆方向反復配列を形成させるにもかかわらず、30%を超える逆方向反復配列の形成率で逆方向反復配列を形成させることができる。
【0018】
さらに本発明によれば、DNA断片を挿入したプラスミド型cDNAライブラリの効率的な調製方法、DNA型RNAiライブラリの新規調製方法、このライブラリを細胞に導入して標的遺伝子に対するRNAiを細胞内で産生させて標的遺伝子をノックダウンした細胞を得る方法、このライブラリを利用した標的遺伝子に対してRNAi効果を有する逆方向反復配列を判定する方法、及びRNAi効果を有する逆方向反復配列をスクリーニングする方法を提供することもできる。
【0019】
本発明の方法は、特に、以下の点で優れている。
DNA型RNAiライブラリを調製するためのプラスミド型cDNAライブラリを効率よく調製できるという点、
cDNAを挿入した箇所の両脇にニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位があれば、ニッキング反応によって生じた異なる鎖のニックを起点にした鎖置換反応とそれに続く分子内ライゲーションによりcDNAを同方向反復配列(Direct repeat; DR)構造に変換させることができるという点、
その際、cDNA間のスペーサー領域に異なる2種類の制限酵素部位を形成できるような塩基配列を予めベクター配列に入れておくという点、
異なる2種類の制限酵素部位をスペーサー領域に形成させることで、DR構造に変換したものを、していないものから分離・精製でき、かつ、CreリコンビナーゼによるDR構造からIR構造への変換を行うために必要なloxカセットの挿入が可能となる点、
loxカセットをこの制限酵素部位に挿入させることによってCreリコンビナーゼ反応が可能になるという点、
lox66、lox71の塩基配列を用いてCreリコンビナーゼによる分子内組換え反応を行わせるという点、
BstXI処理によってIRコンストラクトを選別できるという点
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施態様であるプラスミド型cDNAライブラリの構築における、組換えベクターpIEx-4-MC3の概略を示した図である。
【図2】本発明の一実施態様であるプラスミド型cDNAライブラリの構築スキームの概略を示した図である。
【図3】実施例1のプラスミド型cDNAライブラリの構築における、ルシフェラーゼ(luc) cDNAの消化処理後の電気泳動写真である。
【図4】実施例1のプラスミド型cDNAライブラリの構築における、DraIII アダプターを付着させたluc cDNA消化産物のPCR後の電気泳動写真である。
【図5】実施例1のプラスミド型cDNAライブラリの構築における、pIEx-4-MC3へのluc cDNA消化産物の挿入を確認した電気泳動写真である。
【図6】本発明の一実施態様であるpIEx-4-MC3を用いたプラスミド型cDNAライブラリからDNA型RNAiライブラリの構築スキームの概略図である。
【図7】本発明の一実施態様であるpIEx-4-MC3を用いたDNA型RNAiライブラリの構築における、鎖置換反応による同方向反復配列(DR)の形成の概略図である。
【図8】本発明の一実施態様であるpIEx-4-MC3を用いたDNA型RNAiライブラリの構築における、NotI・BglI処理によるDR構造に変換したプラスミドのスクリーニングの概略図である。
【図9】本発明の一実施態様であるpIEx-4-MC3を用いたDNA型RNAiライブラリの構築における、lox71カセットの生成の概略図である。
【図10】本発明の一実施態様であるpIEx-4-MC3を用いたDNA型RNAiライブラリライブラリの構築における、lox71 cassetteの挿入の概略図である。
【図11】本発明の一実施態様であるpIEx-4-MC3を用いたDNA型RNAiライブラリの構築における、Creリコンビナーゼを用いての分子内組換え反応によるIR構造への変換の概略を示した図である。
【図12】lox71が挿入されなかった未反応混合物の除去方法(BglI処理による)の説明図である。
【図13】pIEx-4-MC3を用いたDNA型RNAiライブラリの構築における、BstXI消化によるIR構造産物をDR構造産物から選別する方法の概略を示した図である。
【図14】実施例2において鎖置換反応によってpIEx-4-MC3に挿入されたluc cDNA (200bp) 断片がDR構造に変換されたかをアガロースゲル電気泳動で確認した図である。
【図15】実施例2における、鎖置換反応後に形成されたDR構造産物のNotI・BglI処理によるスクリーニングの妥当性を、鎖置換反応前後におけるNotIあるいはBglIで消化した産物を電気泳動することにより検証した結果を示した図である。
【図16】実施例2における、200 bpのluc cDNA断片が挿入されたpIEx-4-MC3を鎖置換反応し、DR構造産物を選抜した後にlox71カセットを挿入した場合、ほとんどのプラスミドでlox71カセットが挿入されていることを確認した結果を示した図である。
【図17】実施例2における、Creリコンビナーゼの作用の概略を示した図である。
【図18】実施例2における、Creリコンビナーゼの作用の概略を示した図である。
【図19】実施例2における、Creリコンビナーゼ処理後のスクリーニング結果を示した図である。
【図20】実施例2における、pIEx-4-MC4-luc libraryIR_1-5のルシフェラーゼ活性阻害結果を示した図である。
【図21】実施例3で構築したpIEx-4-MC4の概略図である。
【図22】実施例3においてpIEx-4-MC4を用いたRNAiライブラリの構築における、BstXI/PmeI処理によるスクリーニングの概略を示した図である。
【図23】実施例3で構築したpIEx-4-MC4-luc libraryIR_1-5のRNAi効果の確認結果(ルシフェラーゼ活性阻害結果)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明は、上述のように、外来DNA断片由来の逆方向反復配列構造(以下、IR構造と略記することがある)を含むDNA断片の調製方法を提供することを大きな目的とし、そのために必要な様々な方法や材料も併せて提供するものである。以下にまず、外来DNA断片由来の逆方向反復配列を含むDNA断片の調製方法とその中での上記様々な方法や材料の位置づけについての概略を説明する。その後、各方法や材料について説明する。その後、本発明の一態様である、IR構造を有するDNAからIR構造をしたRNAの調製方法について説明する。
【0022】
本発明の外来DNA断片由来の逆方向反復配列を含むDNA断片の調製方法は、より具体的には、発現プラスミドに挿入された外来DNA断片を、Creリコンビナーゼを用いてIR構造に変換することを基本とする方法である。そして、具体的には、Creリコンビナーゼを用いてIR構造に変換する前の段階における、(M1)外来DNA断片を挿入した発現プラスミドを選択的に調製する方法があり、(M2)この外来DNA断片を挿入した発現プラスミドを用いて、Creリコンビナーゼを用いた変換に適した構造を有する同方向の反復配列構造(以下、DR構造と略記することがある)を有する発現プラスミドを選択的に調製する方法があり、さらに、(M3)DR構造を有する発現プラスミドを、Creリコンビナーゼを用いてIR構造に変換する方法があり、Creリコンビナーゼを用いてIR構造に変換した後の段階における、(M4)IR構造のDNA断片を選択的に得る方法を含む。さらに、(P)Creリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドも含む。最後に、(M5) IR構造を有するDNAからIR構造をしたRNAの調製方法を説明する。
【0023】
M1〜M5及びPと請求項に記載の発明との関係は以下のとおりである。

【0024】
以下に、 (M1)〜(M4)の方法について順次説明した後に、(P)のCreリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドについて説明する。さらに、その後に(M5)の方法について説明する。
【0025】
(M1)外来DNA断片を挿入した発現プラスミドを選択的に調製する方法
M1は、外来DNA断片を挿入した発現プラスミドを選択的に調製する方法に関する。
この方法は、1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)を調製する方法である。この方法は以下の(1)〜(3)の工程を含む。
(1)上流からプロモーターおよびターミネーター領域に挟まれ領域に2つのN部位を有するプラスミドを用意する工程、但し、N部位とはこの配列を認識する制限酵素の消化によりNNNまたはNNNNの突出末端を生じる部位を意味し(Nは同一のいずれかの塩基である)、かつN部位を認識しNNNまたはNNNNの突出末端を生じさせる制限酵素をN型制限酵素と呼ぶ、
(2)標的遺伝子の両側のそれぞれにN部位を設けた遺伝子断片を調製する工程、
(3)(1)のプラスミドと(2)の遺伝子断片をN型制限酵素で消化し、ライゲーションして、プラスミドのN部位の切断部位に、遺伝子断片のN型制限酵素切断断片を挿入したプラスミドを得る工程
【0026】
上記工程(1)で用意されるプラスミドは、(P)のCreリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドである。ここでは、まずこの発現プラスミドのDNAの挿入部位になる上記N部位について説明する。
【0027】
上記N部位は、DNAの挿入部位であり、工程(3)において、遺伝子断片のN型制限酵素切断断片がプラスミドに挿入される。DNAの挿入部位として上記N部位を用いることでcDNAのベクターへの挿入効率を上昇させることができる。
【0028】
上記N部位は、例えば、DraIII認識部位であることができ、この場合のN型制限酵素はDraIIIである。cDNAのクローニング部位として切断部配列の異なる二つのDraIII認識部位をベクターに入れ(図1)、DraIII切断後にこの部位にDraIII認識部位を付加後、DraIIIで切断したcDNAを挿入する。ベクター側をDraIIIで切断した場合、生成された突出末端の塩基配列は相補的ではないため、cDNAを挿入する際に生じる分子内ライゲーションは起こらず、従って、cDNAの挿入されていないプラスミドの混入を大きく抑えることができる。
【0029】
尚、前記特許文献3に記載の方法では2種類の異なる制限酵素部位にcDNAを挿入するストラテジーをとったが、本発明では1種類の制限酵素処理ですむので、cDNAの挿入がより簡易でかつ効率よく行われる。また、特許文献3に記載の方法ではまず一度別のプラスミドベクターにcDNAを挿入したプラスミドcDNAライブラリ等の調製が必要であったが、本発明の方法ではこのステップを行う必要がない。
【0030】
DraIII制限酵素部位以外のN型部位でも、類似の切断様式(NNNもしくはNNNNの突出末端を生じるもの)N型制限酵素部位であれば問題なく使用できる。
【0031】
DraIII以外でこの切断様式を有するN型制限酵素として、例えば、AlwNI, BglI, BstAPI, PflMI, SfiI, BstXI, BspQI(いずれもNEB)が挙げられる。SfiIはこの中で唯一の8塩基認識であるためライブラリ構築には最適と思われる。但し、1分子中にある程度(170 bp以上)離れた2箇所の認識サイトがなければ切断されづらいという特性があり(New England Biolabsの資料による)、使用の際にはこの点に配慮することが適当である。BspQIは非パリンドローム7塩基認識であるため、一般的な6塩基認識の制限酵素よりも出現頻度が低い。但し、BspQIはスーパーコイルプラスミドの切断が遅い場合があるので、使用の際にはこの点に配慮することが適当である。BstXIは唯一NNNNの突出末端を生じるので、高いライゲーション効率が期待できる。実際にBstXI adaptorを用いてこのライブラリ構築を行すると、良好な結果が得られることを確認している。尚、これらN型認識部位が発現ベクターの他の領域にある場合は用いることはできないので使用の際には、その点も配慮することが適当である。
【0032】
DraIII、BglI, AlwNI,BstAPI, PflMI, SfiI, BstXI, BspQI, EarI,BamBI,BsaI等のN型制限酵素部位の制限酵素切断部位は以下のとおりである。
【0033】
【化2】

【0034】
本発明の実施例で使用したcDNAを挿入する発現ベクターの構築の例を図1に示す。図1には、pIEx-4(Novagen)のmultiple cloning site(MCS)を制限酵素NcoI及びDraIIIで切断して除去し、その切断箇所に、プロモーター側からlox66配列、並びにBstXI(1箇所)、DraIII(2箇所)及びNt.BspQI(2箇所)の各制限酵素認識部位を含む二本鎖DNA(図の上側)を挿入し、かつoriとhr5の間に、ハイグロマイシン耐性遺伝子を挿入した発現ベクターであり、以下「pIEx-4-MC3」と呼称する。
【0035】
DraIII認識部位(2箇所)以外のlox66配列、BstXI認識部位、Nt.BspQI認識部位(2箇所)については後述する。
【0036】
oriとhr5領域の間のハイグロマイシン耐性遺伝子は、ハイグロマイシンを用いてのRNAi発現プラスミドの導入細胞の選択において用いられる。即ち、目的の遺伝子配列が逆方向反復配列で挿入された発現プラスミドが導入された細胞を、そのような発現プラスミドが導入されなかった細胞から選別するのに用いられる。ハイグロマイシン耐性遺伝子は、その他の抗生物質耐性遺伝子であってもよい。
【0037】
工程(2)
工程(2)ではプラスミドに挿入するcDNA断片を調製する。
図2に上記pIEx-4-MC3にターゲットとなるcDNA断片を挿入する例を示す。プラスミドに挿入するcDNA断片の調製は、例えば、原料となるcDNAを、二本鎖DNAを認識するDuplex-specific nuclease(Evrogen)で消化し、反応終了後、アガロースゲル電気泳動に供し、200から400bpの断片を回収する(図2の右上のcDNA)。このcDNA断片に両側にN部位配列を有したDNAを付加する。例えば、N部位がDraIIIの認識配列の場合には、DraIIIアダプターを、リガーゼを用いて付加後、DraIIIアダプターFをプライマーにし、PCR反応を行い、DraIIIアダプターを両側に付加したcDNA断片を調製する。これによりプラスミドに挿入するcDNA断片を調製することができる。
【0038】
この方法を以下により具体的に説明する。
DNAはベクター「pIEx-4-MC3」のDraIII部位に挿入する。まず、挿入部位であるDraIII部位は「CACGGGGTG」及び「CACCCCGTG」(upper strandのみ表示。lower strandはこれらの相補的な配列となる。)である。これらはDraIIIで消化したときにいずれもGGGの3'突出末端ができるので、セルフライゲーションされることはない。一方、挿入する側のDNAとしては、これはRNAから合成したcDNAを材料にし(特定のDNAを用いてももちろんできる)、二本鎖DNAを認識して切断するDuplex-specific nucleaseで、部分消化する。その後、DNA末端をきちんと平滑化するためにT4DNAポリメラーゼ処理を行う。アガロース電気泳動によって、200から400bpの断片を回収する。その後、標記のDraIIIアダプターをcDNAの末端に付着させる。DraIIIアダプターはそれぞれの鎖を合成し、アニーリングすることでつくることができる。なお、lower strandの5'はアダプターとDNAのライゲーションを確実に行わせ、かつその後のPCR反応を可能とするためリン酸化されている。当然、DraIIIアダプター同士の結合もなされるが、DNA断片と比較し過剰のDraIIIアダプターを用いれば、本反応に影響は与えないと思われる。また、DraIIIアダプターの一方の末端は平滑となっているが(こちらがDNAに付着)、もう一方は2塩基の突出末端となっている。これは、こちらの末端がDNAに付着しないようにするためと、こちらの2塩基突出末端を介して、DraIIIアダプター同士が結合しないようにするためである。リガーゼによるアダプターのDNAへの結合反応を行うことによって、図2の二番目のステップの産物ができあがるが、アダプターの付着したDNAの量を増やすため、「DraIII adaptor F」プライマーを用い、PCRで増幅する。増幅したものをDraIIIで切断することによってCCCの3'突出末端を両端に有するDNAを得ることができる。これを、DraIII切断した「pIEx-4-MC3」に挿入することにより、「標的遺伝子配列」が挿入されたプラスミドができあがる。これを材料に一連の反応を行うことで、「標的遺伝子配列」をIR構造に変換できる。
【0039】
プラスミドに挿入するcDNA断片は特に制限はなく、DNA型RNAiライブラリを調製したい種々のDNA断片であることができる。但し、挿入するDNA断片の塩基長が長くなると伸長反応等の点からIR構造に変換できる効率が落ちる可能性があり、そのような観点から、挿入するDNA断片の塩基長は、例えば、150〜500bpの範囲、好ましくは200〜400bpの範囲であることができる。但し、この範囲に限定される意図ではなく、挿入が必要なcDNA断片の長さが500bpを超える場合、変換効率等を多少犠牲にすることはあるが、本発明の方法が実施できなくなる訳ではない。また、挿入するDNA断片の塩基長が短くなり過ぎると、適切な塩基長のループとステムを確保しにくくなり、ステムループの安定性に影響する場合がある。目安としては、ステムの塩基長はループの塩基長の2倍以上であることが適当であり、この点を考慮して、挿入するDNA断片の塩基長を選択することが好ましい。
【0040】
工程(3)
工程(3)では、cDNA断片をpIEx-4-MC3へ挿入する。
次に増幅されたPCR産物(例えば、DraIIIアダプターを両側に付加したcDNA断片)をDraIIIで消化後、これらをDraIIIで消化したpIEx-4-MC3に挿入する。DraIII以外のN型制限酵素を用いる場合も同様である。上記のように、ベクター側をDraIIIで切断した場合、生成された突出末端の塩基配列は相補的ではないため、cDNAを挿入する際に生じる分子内ライゲーションは起こらず、従って、cDNAの挿入されていないプラスミドの混入を大きく抑えることができるという利点がある。
【0041】
(M2)DR構造を有する発現プラスミドの調製方法
M2は、M1で調製した外来DNA断片を挿入した発現プラスミドを用いて、Creリコンビナーゼを用いた変換に適した構造を有するDR構造を有する発現プラスミドを選択的に調製する方法である。
【0042】
本発明のM2は、標的遺伝子DR構造を有するプラスミドの調製方法である。この方法は以下の(1)〜(6)の工程を含み、さらに、(7)の工程を含むこともできる。
(1)1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドS)を調製する工程、
但し、前記プラスミドSは、標的遺伝子の両側のそれぞれにニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有し、かつ各ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の標的遺伝子側に、DR構造が形成された時に、その間のスペーサー領域に制限酵素認識部位が生成されるための一部配列(制限酵素認識部位生成用部位)を有する、
(2)前記プラスミドSにニックを生じさせる工程、
(3)ニックを生じたプラスミドSに鎖置換反応及び引き続き行われるセルフライゲーション反応により、DR構造に変換した標的遺伝子を有するプラスミドを調製する工程、
但し、調製した標的遺伝子DR構造を有するプラスミドには、前記制限酵素認識部位生成用部位によって、2つの制限酵素認識部位が新たに形成される、
(4)標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングする工程、
(5)クローニングしたプラスミド群を前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位に対する2つの制限酵素で消化する工程、および
(6)消化したプラスミド群から、制限酵素で消化されて直鎖状になったプラスミドを回収する工程、
(7)工程(6)で回収された直鎖状になったプラスミドにDNA断片を挿入して環状のプラスミドを得る工程
但し、挿入するDNA断片は、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位をこれらに対応する2つの制限酵素でそれぞれ切断した際に生成される突出末端の塩基配列に相補的な塩基配列を有する突出末端が生成される制限酵素認識部位を両側に有する。
【0043】
工程(1)
工程(1)では、1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドS)を調製する。但し、前記プラスミドSは、標的遺伝子の両側のそれぞれにニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有し、かつ各ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の標的遺伝子側に前記制限酵素認識部位生成用部位を有する。工程(1)でプラスミドSの調製に用いられるニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するプラスミドも、(P)のCreリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドの例である。
【0044】
プラスミドSは上記M1の方法を用いて調製することができる。但し、プラスミドSは、標的遺伝子の両側のそれぞれにニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するものであることから、M1の方法において、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位としては、例えば、Nt.BspQI認識部位(2箇所)を有する発現ベクターを用いることができる。前述のように、pIEx-4-MC3は、Nt.BspQI認識部位(2箇所)を有する(但し、向きは逆方向である)ものであり、このNt.BspQI認識部位(2箇所)を有する発現ベクターに、M1の記載の方法で1つの標的遺伝子を導入することで、プラスミドSは得られる。
【0045】
工程(2)
工程(2)ではプラスミドSにニックを生じさせる。ニックは、例えば、ニッキングエンドヌクレアーゼを用いて生じさせることができる。ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位としてNt.BspQI認識部位を用いる場合には、Nt.BspQIを用いて行う。
【0046】
Nt.BspQI以外にも、6塩基以上の塩基配列を認識するニッキングエンドヌクレアーゼであって、ニックができる部位の3'側の塩基配列がNt.BspQIのように任意であるニッキングエンドヌクレアーゼであれば、同様に使用できる。そのようなニッキングエンドヌクレアーゼであれば、工程(3)においてのセルフライゲーション後に生成される2箇所の制限酵素部位がうまく生成できる。
【0047】
工程(3)
工程(3)では、ニックを生じたプラスミドSに鎖置換反応及び引き続き行われるセルフライゲーション反応を行わせることにより、標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを調製する。鎖置換反応には、例えば、BcaBEST DNAポリメラーゼ(TANAKA Bio)を用いることができる。但し、鎖置換反応には、Bst DNA ポリメラーゼ(NEB)など他の鎖置換型のDNAポリメラーゼも用いることができる。
【0048】
また、調製した標的遺伝子DR構造を有するプラスミドには、前記制限酵素認識部位生成用部位によって、2つの制限酵素部位が生成される、即ち新たに形成されるように、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位に隣接する核酸の塩基配列を調整する。ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位がNt.BspQI認識部位の場合、発現ベクターとしてNt.BspQI認識部位(2箇所)に挟まれた側の隣接領域に、工程(3)において新たに形成される2つの制限酵素部位がNotIおよびBgIIの認識配列になるような配列を設けた発現ベクターを用いる。
【0049】
工程(2)〜(3)は、具体的には、図7に示すように、ニッキングエンドヌクレアーゼであるNt.BspQ1で消化し、ニックを挿入する。その後、BcaBEST DNAポリメラーゼ(TANAKA Bio)で鎖置換反応を行わせ、セルフライゲーションを行う。この反応によって、cDNAがDR構造に変換したものが産生される。その際、cDNA間のスペーサー領域にはNotI認識部位とBglI認識部位が一部の配列が重複した状態で形成される。(図7下の囲み参照)。
【0050】
図7の例では、鎖置換反応及びセルフライゲーション後にNotIとBglI認識部位が生成できるように細工してある。但し、これらの認識部位は、Nt.BspQI認識部位とDraIII認識部位の間の10bp、7bpの配列を変えることによって他の制限酵素認識部位を生成することが可能である。例えば、下記に示したように、NotIとBstAPI、FseIとBsu36I、FseIとEcoNI、AscIとPflMI、AscIとBccIなどの制限酵素認識部位の組み合わせのものを生成させることができる。ただし、こうした場合、Nt.BspQI認識部位とDraIII認識部位の間の配列中にこうした完全な制限酵素認識部位は持たず、セルフライゲーションによって初めて2種類の制限酵素認識部位が生成されなければならない。
【0051】
【化3】


【0052】
工程(4)
工程(4)では、標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングする。ここで用いる宿主には制限はなく、例えば、大腸菌等を適宜利用でき、形質転換体の培養等も適宜実施できる。培養した形質転換体から標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを含むプラスミド群を得る。
【0053】
工程(5)
工程(5)では、クローニングしたプラスミド群を前記新たに形成された2つの異なる制限酵素認識部位を認識、切断する2種類の制限酵素で消化する。新たに形成された2つの制限酵素認識部位は、上記のようにNotI認識部位とBglI認識部位であることができ、その場合はNotI及びBglIで消化する。
【0054】
工程(6)
工程(6)では、消化したプラスミド群から、制限酵素で消化されて直鎖状になったプラスミドを回収する。直鎖状になったプラスミドは、例えば、電気泳動により回収できる。直鎖状になったプラスミドは、上記2つの制限酵素で消化されるものであるので、標的遺伝子DR構造を有するプラスミドである。プラスミド群には、上記2つの制限酵素認識部位が新たに形成されていない未反応のプラスミドが含まれ、この未反応のプラスミドは、1つの標的遺伝子を有するプラスミドSである。プラスミドSは上記2つの制限酵素認識部位を有していないため、これら2つの制限酵素で切断されず、環状プラスミドのままである。そのため、切断され直鎖状となった標的遺伝子DR構造を有するプラスミドは、上記電気泳動等により上記未反応のプラスミドと簡単に分離される。切断され直鎖状となった標的遺伝子DR構造を有するプラスミドは、回収により、プラスミドSから分離され、精製される。
【0055】
このように本発明のM2では、cDNAのベクター挿入後、ニッキングエンドヌクレアーゼによるニッキング反応と引き続き行われる鎖置換反応でcDNAはDR構造へと変換する。その際、cDNA間のスペーサー領域にNotIとBglI認識部位が生成されるよう工夫しているが、これら部位はcDNAがDR構造に変換されたプラスミドの精製と、後段における標的遺伝子をIR構造に変換するために必須の過程であるlox配列の挿入に寄与する。
【0056】
工程(7)
工程(7)では、工程(6)で回収された直鎖状になったプラスミドにDNA断片をライゲーションして環状のプラスミドを得る。但し、ライゲーションするDNA断片は、制限酵素で切断された際に、直鎖状になったプラスミドの各切断末端と相補的な配列となる制限酵素切断部位を両末端に有するものであり、これらの制限酵素切断部位を介して環状のプラスミドを得る。直鎖状になったプラスミドにDNA断片の切断末端は、例えば、NotI切断部位とBglI切断部位であり、ライゲートするDNA断片は、例えば、一方に制限酵素認識部位(NotI)を有し、他方に前記N部位(例えば、DraIII認識配列)を有する。ただし、DraIII 切断部位とBglI切断部位は、切断によって生成される突出末端の3塩基が相補的な塩基配列でなければならない。また、BglI切断部位を用いずDraIII 切断部位を用いるのは、図12で示すDNA断片の挿入されていない未反応物の除去反応をBglI処理によって可能にするためである。BglI・DraIIIの切断部位の末端の形状は同一であり、配列は相補的であるが、認識配列のパリンドローム部分は異なっているため、BglI・DraIIIの切断部位でライゲーションされた部位はBglI、DraIIIいずれでも切断できない。しかしDNA断片の挿入されなかった未反応物はBglI認識配列を持つため、BglIで切断され、大腸菌内で複製不可となるためこれを除去することが出来るとの理由からである。上記N部位は、DraIII認識配列以外に、AlwNI, BglI, BstAPI, PflMI, SfiI, BstXI, BspQI(いずれもNEB)の各認識配列であっても良い。このような制限酵素部位を有したプラスミドへのDNA断片の導入及び環状のプラスミドの生成は、(M3)のCreリコンビナーゼを用いてIR構造に変換する方法において、lox配列を挿入する際に用いられる。
【0057】
工程(4)〜(7)は、図8において、cDNAがDR構造に変換した直鎖状プラスミドの分離、精製として説明される。工程(3)において、cDNAはNotI及びBglI認識配列を含むスペーサー領域を挟んでDR構造に変換されるが、未反応物(プラスミドS)も混在する。そこで、cDNAがDR構造に変換したコンストラクトのみを分離精製するために、NotI及びBglIで消化後、アガロースゲル電気泳動に供する。図8に示すように、cDNAがDR構造に変換したものはスペーサー領域にNotIとBglI認識部位が存在することから、NotI及びBglIで消化することによってプラスミドは直鎖状になる。一方、未反応物はNotI及びBglIでは切断されないことから、スーパーコイル状のまま泳動される。両者はゲル上で簡単に分離されるので、DR構造に変換したコンストラクトを直鎖状DNAとして回収できる。
【0058】
M2では、cDNAのベクター挿入後、ニッキングエンドヌクレアーゼによるニッキング反応と引き続き行われる鎖置換反応でcDNAはDR構造へと変換する。その際、cDNA間のスペーサー領域にNotIとBglI認識部位が生成されるよう工夫している。これら部位はcDNAがDR構造に変換されたプラスミドの精製及び、Creリコンビナーゼ反応時に用いるlox配列を挿入する部位となる。後述するように、lox配列を挿入することで、DR構造に変換されたcDNAを逆反復配列に変換することができるようになる。
【0059】
(M3)Creリコンビナーゼを用いてIR構造に変換する方法
M3では、M2で調製されたcDNAがDR構造に変換したコンストラクトを直鎖状DNAにlox71カセットを挿入し、次いで、Creリコンビナーゼを用いての分子内組換え反応によるinverted repeat構造への変換を行う。
【0060】
M3は、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法である。この方法は、以下の工程(1)〜(3)含む。
(1)M2の方法において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列を含むプラスミドを調製する工程、
(2)M2の工程(7)において、ライゲーションするDNA断片としてlox71配列を含むDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る工程、および
(3)工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する工程。
【0061】
工程(1)
工程(1)では、M2の方法において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列を含むプラスミドを調製する。工程(1)でプラスミドSの調製に用いられるニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位とlox66配列を有するプラスミドも、(P)のCreリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドの例である。
【0062】
前述のように、pIEx-4-MC3は、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むものであり、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むプラスミドは、例えば、pIEx-4-MC3を用いたM1の方法で調製することができる。従って、M2の方法における工程(1)において、pIEx-4-MC3を用いたM1の方法で、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むプラスミドSを調製することがでる。
【0063】
工程(2)
工程(2)では、M2の工程(7)において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列を含むDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る。M2の工程(7)においては、ライゲートするDNA断片は、一方の側に、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位の一方の制限酵素認識部位を有し、他方の側に、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位の他方の制限酵素認識部位を有するDNA断片であるが、これらの制限酵素認識部位に挟まれた領域にlox71配列を含むDNA断片を用いることができる。
【0064】
工程(3)
工程(3)では、工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する。
【0065】
工程(1)〜(3)を具体的に説明する。図9に基づいてlox71カセットの構築とPCRによる増幅を説明する。まず、pIEx-4をNcoI、XhoIで消化してpIEx-4の1082から1254番目の塩基配列を除去後、以下の配列を挿入する。このプラスミドをpIEx-4-lox71カセットと呼称する。
【化4】

【0066】
センス鎖において、GCGGCCGCは、NotI認識部位であり、ATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAACGGTAは、lox71配列であり、CCATCCCCTTGGは、BstXI認識部位であり、CACGGGGTGは、DraIII認識部位である。
【0067】
pIEx-4-lox71カセットをテンプレートとし、cas-F primer (5'-TGACCATGCGGCCGCATAACT-3')(配列番号11)、cas-R primer (5'-CTCGACACCCCGTGCCAA-3')(配列番号12)をプライマーとしてPCRを行う。PCR産物を「lox71カセット」として回収する。
【0068】
次に、lox71 カセットの挿入は図10に示す。M2の2)の反応で分離精製された直鎖状プラスミドにNotI及びDraIIIで消化した「lox71カセット」をライゲーションさせる。その後このDNAを基質としてCreリコンビナーゼ処理により分子内組換え反応を起こさせる。Creリコンビナーゼを用いての分子内組換え反応によるIR構造への変換は、図11に示す。
【0069】
Cre リコンビナーゼは方向性のある配列loxPを認識し、異なる方向性を持つloxPに挟まれた領域を逆転させる(図17)。この反応は平衡反応であり、同一プラスミド分子にCre リコンビナーゼが偶数回作用すると、逆転前の配列に戻ってしまうため、その反応効率が50%を超えることは理論上ない。しかしZhangらが報告(Zhang et al., Nucleic Acids Res. 2002; 30(17): e90)した、loxPの末端5塩基に変異を導入したlox66、lox71を用いることで、この平衡をずらすことができる(図18)。異なる方向性を持つlox66、lox71にCre リコンビナーゼが一度作用すると、loxPとdouble mutated(DM)loxPが生じるが、DM loxPに対するCre リコンビナーゼの反応は非常に弱いため、再度逆転反応することは難しくなる。これによって、IR構造へ変換される生成物の割合を大きく高めることができる(図18)。
【0070】
本発明のM3ではCreリコンビナーゼを用いることでDR構造のcDNAをIRに変換させる。ここで、Creリコンビナーゼは方向性のある配列loxPを認識し、異なる方向性を持つloxPに挟まれた領域を逆転させる反応を触媒するが、この反応は平衡反応であり、基質DNAと反応生成物はほぼ等量混在することになる。本発明のM3では、loxPではなく、loxPの末端5塩基に変異を導入したlox66, lox71を用いる。これらを用いることにより、逆反応が起こりにくくなり、そのため反応生成物、つまりcDNAがIRに変換されるコンストラクトをより多く産生させることができるようになる。
【0071】
(M4)IR構造のDNA断片を選択的に得る方法
M4では、M3で調製したCreリコンビナーゼを用いてIR構造に変換されたコンストラクトを含む生成物から、IR構造に変換されたコンストラクトのみを選別する。
【0072】
M4は、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法である。この方法は、以下の工程(1)〜(5)を含み、工程(6)を含むこともできる。
(1)M2において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを調製する工程、但し、P部位とは、この配列を認識する制限酵素の消化により3塩基または4塩基の突出末端を生じかつ、この末端の配列が非パリンドローム配列となる部位である。なお、P部位を認識し、このような突出末端を生じさせる制限酵素をP型制限酵素と定義する。
(2)M2の工程(7)において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列およびP部位をこの順に含み、かつ前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位を制限酵素で消化した時に生じる突出末端配列およびこの突出末端配列と相補的な突出末端配列を制限酵素消化によって生じる制限酵素部位を両側に有するDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る工程、
(3)工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する工程、
(4)工程(3)で得られたIR構造を有するプラスミドをP型制限酵素で消化する工程、および
(5)工程(4)で消化したプラスミドをセルフライゲーションする工程、
(6)工程(5)においてセルフライゲーションしたプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングして標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを得る工程、
【0073】
工程(1)〜(3)
工程(1)〜(3)は、M3の工程(1)〜(3)と同様であるが、但し、工程(1)において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列のみならず、P部位を含むプラスミドを用いて、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを調製する点が相違し、さらに工程(2)において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列のみならず、P部位を含むDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る点が相違する。P部位は、この配列を認識する制限酵素の消化により、3塩基または4塩基の突出末端を生じ、かつこれら配列が非パリンドローム配列となる部位である。そのような末端を生じる制限酵素(P型制限酵素)としては、例えば、BstXI認識部位を挙げることができる。工程(1)でプラスミドSの調製に用いられるニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、lox66配列及びP部位を有するプラスミドも、(P)のCreリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドの例である。(従ってP型制限酵素とN型制限酵素は重複するものもある。)
【0074】
P部位は、BstXI認識部位以外の配列でも、この配列を認識する制限酵素の消化により、3塩基または4塩基の突出末端を生じ、かつこれら配列が非パリンドローム配列であれば使用可能である。例えば3あるいは4塩基のパリンドローム配列の間に3から5塩基の非パリンドローム配列が介在しているような配列を認識し、3あるいは4塩基の突出末端を生じさせるような制限酵素(AlwNI, BglI, BstAPI, PflMI, SfiI, DraIII, BstXIなど)や認識部位の外側を切断し、3塩基以上の非パリンドローム配列を有した突出末端を生じさせる制限酵素(EarI,BsmBI,BsmFIなど)が使用可能である。(ただしこの場合、これら認識部位が発現ベクターの他の領域にある場合は用いることはできない。)
【0075】
【化5】

【0076】
工程(4)〜(6)
工程(4)では、工程(3)で得られたIR構造を有するプラスミドをP型制限酵素で消化する。次いで、工程(5)では、工程(4)で消化したプラスミドをセルフライゲーションする。さらに、工程(6)では、工程(5)においてセルフライゲーションしたプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングして標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを得る。
【0077】
具体的には、図13に示すようにIR構造へ変換された生成物が選別される。Cre リコンビナーゼによる分子内組換え反応によってcDNAがIR構造へ変換されるコンストラクトが生成されるが、IR構造に変換されず、DR構造のままのコンストラクトも混在する。IR構造に変換されたコンストラクトのみを選別するためにBstXI処理とそれ引き続き分子内ライゲーション反応を行う。IR構造に変換されたコンストラクトはBstXI処理後、分子内ライゲーションがおこり、大腸菌に形質転換することでプラスミドの複製が起こるのに対し、DR構造のままのコンストラクトはBstXI処理後、分子内ライゲーションは起こらず、直鎖状のままであるので、大腸菌に形質転換しても、複製されることはない。これら一連の反応によりIR構造に変換したコンストラクトのみを取得できる。
【0078】
工程(3)の反応後の生成物中にはcDNAがDR構造となっているコンストラクトやloxカセットが挿入されていないコンストラクトも混在する。そのため、こうしたコンストラクトを取り除くことが、効率向上のためには好ましい。そこでM4では、DRコンストラクトはBstXI消化とその後の分子内ライゲーションによって排除できる(図13)。
【0079】
さらに、M4は、工程(2)と(3)の間に以下の工程(7)と(8)をさらに含むこともできる。
(7)工程(2)で得られた環状のプラスミドをBglIで消化する工程、
(8)工程(7)で消化したプラスミドを含むプラスミド群を宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングしてlox71配列が導入されたプラスミドを得る工程
【0080】
上記工程(7)と(8)をさらに含むことで、loxカセットが未挿入のコンストラクトはBglI消化及びE.coliへの形質転換により排除できる(図12)(IRコンストラクトとDRコンストラクトはBglI部位がないため、BglIで消化されず、環状のままでE. coliに形質転換されるので、E.coliでは複製できる。)。
【0081】
具体的には、(図12)に示すように、Cre リコンビナーゼによる分子内組換え反応を行う際の基質にはlox71カセットの挿入されていないコンストラクトも含まれてしまうことが予想される。このコンストラクトを取り除くために、以下の反応をCre リコンビナーゼ反応後に行うことができる。
(1)BglI処理後大腸菌に形質転換する。lox71カセットが挿入されなかったコンストラクトはBglIによって直線状になるため、大腸菌内では複製されない。一方、lox71カセットが挿入されたコンストラクトはIRコンストラクト、DRコンストラクトいずれもBglI部位が存在しないため切断されず、環状のままであるので、大腸菌内で複製される。
(2)これら大腸菌から再びプラスミドを調製後、図13に示したBstXI処理とそれ引き続きセルフライゲーション反応を行い、IRコンストラクトの選別を行う。
【0082】
(P)Creリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミド
本発明は、Creリコンビナーゼ変換前後の段階で有用な機能を有する発現プラスミドを包含する。本発明の発現プラスミドは、上流からプロモーターおよびターミネーター領域に挟まれ領域に、プロモーター側からlox66配列、P部位(但し、P部位とは、この配列を認識する制限酵素の消化により3塩基または4塩基の突出末端を生じかつ、この末端の配列が非パリンドローム配列となる部位である。)、第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、第1のN部位(但し、N部位とはこの配列を認識する制限酵素の消化によりNNNまたはNNNNの突出末端を生じる部位を意味する(Nは同一のいずれかの塩基である))、第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位をこの順に含み、第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位及び第1のN部位の間、並びに第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の間に、ニッキング反応及び鎖置換反応、及び引き続き行われるセルフライゲーションによって、2つの制限酵素部位が新たに形成される配列をそれぞれ含む、遺伝子挿入用プラスミドである。
【0083】
P部位は、例えば、BstXI認識部位、AlwNI認識部位, BglI認識部位, BstAPI認識部位, PflMI認識部位, SfiI認識部位, DraIII認識部位, EarI認識部位, BsmBI認識部位,またはBsmFI認識部位であることができる。(これら認識部位が発現ベクターの他の領域にある場合は用いることはできない。)
【0084】
ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位は、例えば、Nt.BspQI 認識部位であることができる。(これら認識部位が発現ベクターの他の領域にある場合は用いることはできない。)
【0085】
N部位は、例えば、DraIII認識部位であることができる。(これら認識部位が発現ベクターの他の領域にある場合は用いることはできない。)
【0086】
第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位及び第1のN部位の間の配列は、例えば、5〜15bpであることができ、第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の間の配列は、例えば、5〜15bpであることができる。ニッキング反応及び鎖置換反応、さらに引き続き行われるセルフライゲーションによって新たに形成される2つの制限酵素認識部位は、例えば、NotIおよびBgII、NotIおよびBstAPI、FseIおよびBsu36I、FseIおよびEcoNI、AscIおよびPflMI、またはAscIおよびBccIであることができる。
【0087】
本発明の発現プラスミドは、上記M1〜M4において説明したとおりのものである。具体的には、前述のpIEx-4-MC3である。
【0088】
さらに、本発明の発現プラスミドは、PmeI認識部位を含むことができる。例えば、実施例3に示す発現ベクターpIEx-4-MC4は、PmeI認識部位がBstXI認識部位の上流に入っている。IRコンストラクトの選別のための反応の際、混在する可能性のある図22に示した反応の際に生じる未反応物をBstXI単独ではなくPmeIとのダブル消化を行うことで、効果的に除去できる。
【0089】
(M5)IR構造を有するDNAを用いて培養細胞をノックダウンする方法
M5は、上記M3または4により調製したIR構造を有するDNAを用いて培養細胞をノックダウンする方法に関する。この方法は具体的には、上記M3または4で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを培養細胞に導入し、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを培養細胞にトランスフェクションして培養細胞をノックダウンする方法である。ノックダウンする培養細胞には特に制限はなく、長鎖dsRNAによってRNAiができる生物由来のものであればいずれでもよく、例えば、昆虫、植物、または酵母由来であることができる。さらに、昆虫培養細胞としては、例えば、カイコ由来培養細胞、他のチョウ目昆虫由来培養細胞、ハエ目由来培養細胞等を挙げることができる。
【0090】
上記M3または4で調製したプラスミドは、例えば、ループ配列を含むスペーサー配列を介してcDNAがIR構造を形成することができる。ここで、スペーサー配列とは、cDNA IRの間に存在するベクター由来の配列を意味し、ループ配列とは、スペーサー領域にあってIR構造をとらない部分を意味する。ループ配列は、転写されたとき、ループ構造となりds RNAの安定性に関与する。このIR構造はIE1プロモーター下にあるので、培養細胞内に導入することで、IR構造をしたRNAが合成される。これらRNAはステムループ構造を形成することで、RNA干渉反応を誘起する。スペーサー配列はIRコンストラクトを産生するための一連の反応によって形成され、前記の発現プラスミドのP部位のすぐ下流の配列から第1のN部位までの配列、P部位の配列、loxカセットの挿入によって形成される9bpの配列、並びに第2のN部位の配列を含む。なお、大腸菌中でのIR配列の安定性が保持されるため、この配列の長さは70bp以上が好ましい。つまりP部位から第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位までの長さが12bp以上、第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位から第1のN部位までの長さが10bp以上あるのが好ましい。なお、大腸菌中でIR配列が安定して保持されるためには、ループ配列の長さは26〜50bpであることが好ましい。つまりP部位から第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位までの長さが0〜24bpであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0091】
実施例で形成されたスペーサー領域は、5'側から第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位から第1のN部位までの領域(10 bp)、第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、P部位から第1のN部位までの領域(12bp)、P部位の配列、lox71カセットの挿入によって形成される9bpの配列から成り、その中に転写された際ループ構造をとる38bpのループ配列を含む。以下にこのスペーサー領域の塩基配列を示す。太字がループ配列である。
【0092】
【化6】

【0093】
実施例においては、以上の本発明の方法で構築したプラスミドを大腸菌 (E. coli,SURE2、Stratagene)へ導入し、抽出したプラスミドをカイコ培養細胞にFUGENE HD(ロシュ・ダイアグノスティクス社)を用いてトランスフェクションし、48時間後にノックダウン効果を確認した。
【0094】
Duplex-specific nucleaseで処理したホタルルシフェラーゼcDNA を用い、本発明の方法で効率よくIR構造に変換できることが確認された(図19 30〜40%)。このうち4種類のプラスミドを用い、ノックダウン効果をみたところ、いずれも効率よくRNAiによるホタルルシフェラーゼ遺伝子のノックダウンを起こすことが確認された(95%以上、図20)。
【0095】
本発明は、上記M5の方法で調製されたIR構造を有するRNAのライブラリを用いての昆虫の生命現象に関わるホスト因子をスクリーニングする方法も包含する。具体的には昆虫ウイルスや昆虫病原細菌等に対するホスト昆虫細胞の感染あるいは感染防御に関わるホスト因子や、昆虫ホルモン等による形態形成に関わる昆虫ホスト因子のスクリーニングである。
【0096】
さらに本発明は、上記M5の方法で調製されたIR構造を有するRNAのライブラリを用いて標的遺伝子に対してRNAi効果を有する逆方向反復配列を判定する方法も包含する。具体的にはルシフェラーゼ遺伝子の様々な位置の配列を逆方向反復配列として含む発現プラスミドそれぞれと、その標的遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子の挿入された発現プラスミドを同時に昆虫培養細胞に導入し、細胞抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定し、それぞれ比較することである。これによりルシフェラーゼ遺伝子のどの配列が最もRNAi効果を示す配列であるかを知ることができる。
【0097】
長鎖DNA型RNAiライブラリの有利な点
本発明の方法を用いれば、長鎖DNA型RNAiライブラリを調製することができる。ほ乳類動物は長鎖RNAでRNAi反応を起こさせると細胞障害が引き起こされることから、短鎖DNA型RNAiライブラリは主にほ乳類動物を対象に用いられている。しかし、RNAiは配列によって効果が大きく異なるため、短鎖DNA型RNAiライブラリにはRNAi効果が全くみられないクローンも多数含まれることになる。そのため、このライブラリを用いた場合かなり膨大な量のクローンのスクリーニングを行う必要がある。一方、昆虫や植物などは長鎖RNAを用いても細胞障害は起こらない。さらに短鎖RNAと比べ、長鎖RNAを用いた方が、より高いRNAi効果が得らえる確率が高くなると考えられる。従って、昆虫や植物では、長鎖DNA型RNAiライブラリを用いた場合の方が短鎖DNA型RNAiライブラリを用いた場合と比較し、より効率よく生命現象に関わる因子のスクリーニングが可能となると考えられる。
【0098】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0099】
実施例1
1.昆虫細胞用発現ベクターpIEx-4のマルチクローニングサイト改変
図1に示すように、pIEx-4(Novagen)をNcoI・DraIIIで切断して1082-1284 bpの範囲を除去し、以下のマルチクローニングサイトを挿入して改変した。(下記にはセンス鎖のみを示す。図1にはセンス鎖とアンチセンス鎖の両方を示す。図21には、PmeI認識部位をさらに含むマルチクローニングサイトを用いた例を示す。)
【0100】
マルチクローニングサイト(配列表の配列番号1):
5'-CCATGGATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAACGGTACCAAGGGGATGGATCAGCTTTGTCGCTCTTCACCAGGGAGGCACGGGGTGAACACCCCGTGCGGCCGAGAAGAGCTAAGTG-3'
【0101】
上記の配列のうち、ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAACGGTAはlox66配列であり、CCAAGGGGATGGはBstXIの制限酵素認識部位であり、CACGGGGTGおよびCACCCCGTGはDraIIIの制限酵素認識部位であり、GCTCTTCおよびGAAGAGCはNt.BspQIの認識部位である。
【0102】
またoriとhr5の間に、ハイグロマイシン耐性遺伝子を挿入した。全配列は以下の通りである。
pIEx-4-MC3の全配列(配列表の配列番号2):
5'-CGCGTAAAACACAATCAAGTATGAGTCATAAGCTGATGTCATGTTTTGCACACGGCTCATAACCGAACTGGCTTTACGAGTAGAATTCTACTTGTAACGCACGATCAGTGGATGATGTCATTTGTTTTTCAAATCGAGATGATGTCATGTTTTGCACACGGCTCATAAACTCGCTTTACGAGTAGAATTCTACGTGTAACGCACGATCGATTGATGAGTCATTTGTTTTGCAATATGATATCATACAATATGACTCATTTGTTTTTCAAAACCGAACTTGATTTACGGGTAGAATTCTACTTGTAAAGCACAATCAAAAAGATGATGTCATTTGTTTTTCAAAACTGAACTCGCTTTACGAGTAGAATTCTACGTGTAAAACACAATCAAGAAATGATGTCATTTGTTATAAAAATAAAAGCTGATGTCATGTTTTGCACATGGCTCATAACTAAACTCGCTTTACGGGTAGAATTCTACGCGCGTCGATGTCTTTGTGATGCGCGCGACATTTTTGTAGGTTATTGATAAAATGAACGGATACGTTGCCCGACATTATCATTAAATCCTTGGCGTAGAATTTGTCGGGTCCATTGTCCGTGTGCGCTAGCATGCCCGTAACGGACCTCGTACTTTTGGCTTCAAAGGTTTTGCGCACAGACAAAATGTGCCACACTTGCAGCTCTGCATGTGTGCGCGTTACCACAAATCCCAACGGCGCAGTGTACTTGTTGTATGCAAATAAATCTCGATAAAGGCGCGGCGCGCGAATGCAGCTGATCACGTACGCTCCTCGTGTTCCGTTCAAGGACGGTGTTATCGACCTCAGATTAATGTTTATCGGCCGACTGTTTTCGTATCCGCTCACCAAACGCGTTTTTGCATTAACATTGTATGTCGGCGGATGTTCTATATCTAATTTGAATAAATAAACGATAACCGCGTTGGTTTTAGAGGGCATAATAAAAGAAATATTGTTATCGTGTTCGCCATTAGAGCAGTATAAATTGACGTTCATGTTGGATATTGTTTCAGTTGCAAGTTGACACTGGCGGCGACAAGATCGTGAACAACCAAGTGACCATGGATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAACGGTACCAAGGGGATGGATCAGCTTTGTCGCTCTTCACCAGGGAGGCACGGGGTGAACACCCCGTGCGGCCGAGAAGAGCTAAGTGATTAACCTCAGGTTATACATATATTTTGAATTTAATTAATTATACATATATTTTATATTATTTTTGTCTTTTATTATCGAGGGGCCGTTGTTGGTGTGGGGTTTTGCATAGAAATAACAATGGGAGTTGGCGACGTTGCTGCGCCAACACCACCTCCCTTCCCTCCTTTCATCATGTATCTGTAGATAAAATAAAATATTAAACCTAAAAACAAGACCGCGCCTATCAACAAAATGATAGGCATTAACTTGCCGCTGACGCTGTCACTAACGTTGGACGATTTGCCGACTAAACCTTCATCGCCCAGTAACCAATCTAGACGTCAGGTGGCACTTTTCGGGGAAATGTGCGCGGAACCCCTATTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACAATAACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGTATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCATTTTGCCTTCCTGTTTTTGCTCACCCAGAAACGCTGGTGAAAGTAAAAGATGCTGAAGATCAGTTGGGTGCACGAGTGGGTTACATCGAACTGGATCTCAACAGCGGTAAGATCCTTGAGAGTTTTCGCCCCGAAGAACGTTTTCCAATGATGAGCACTTTTAAAGTTCTGCTATGTGGCGCGGTATTATCCCGTATTGACGCCGGGCAAGAGCAACTCGGTCGCCGCATACACTATTCTCAGAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCACAGAAAAGCATCTTACGGATGGCATGACAGTAAGAGAATTATGCAGTGCTGCCATAACCATGAGTGATAACACTGCGGCCAACTTACTTCTGACAACGATCGGAGGACCGAAGGAGCTAACCGCTTTTTTGCACAACATGGGGGATCATGTAACTCGCCTTGATCGTTGGGAACCGGAGCTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGATGCCTGTAGCTATGGCAACAACGTTGCGCAAACTATTAACTGGCGAACTACTTACTCTAGCTTCCCGGCAACAATTAATAGACTGGATGGAGGCGGATAAAGTTGCAGGACCACTTCTGCGCTCGGCACTTCCGGCTGGCTGGTTTATTGCTGATAAATCTGGAGCCGGTGAGCGTGGGTCTCGCGGTATCATCGCAGCACTGGGGCCAGATGGTAAGCCCTCCCGTATCGTAGTTATCTACACGACGGGGAGTCAGGCAACTATGGATGAACGAAATAGACAGATCGCTGAGATAGGTGCCTCACTGATTAAGCATTGGTAACTGTCAGACCAAGTTTACTCATATATACTTTAGATTGATTTAAAACTTCATTTTTAATTTAAAAGGATCTAGGTGAAGATCCTTTTTGATAATCTCATGACCAAAATCCCTTAACGTGAGTTTTCGTTCCACTGAGCGTCAGACCCCGTAGAAAAGATCAAAGGATCTTCTTGAGATCCTTTTTTTCTGCGCGTAATCTGCTGCTTGCAAACAAAAAAACCACCGCTACCAGCGGTGGTTTGTTTGCCGGATCAAGAGCTACCAACTCTTTTTCCGAAGGTAACTGGCTTCAGCAGAGCGCAGATACCAAATACTGTCCTTCTAGTGTAGCCGTAGTTAGGCCACCACTTCAAGAACTCTGTAGCACCGCCTACATACCTCGCTCTGCTAATCCTGTTACCAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTCGTGTCTTACCGGGTTGGACTCAAGACGATAGTTACCGGATAAGGCGCAGCGGTCGGGCTGAACGGGGGGTTCGTGCACACAGCCCAGCTTGGAGCGAACGACCTACACCGAACTGAGATACCTACAGCGTGAGCTATGAGAAAGCGCCACGCTTCCCGAAGGGAGAAAGGCGGACAGGTATCCGGTAAGCGGCAGGGTCGGAACAGGAGAGCGCACGAGGGAGCTTCCAGGGGGAAACGCCTGGTATCTTTATAGTCCTGTCGGGTTTCGCCACCTCTGACTTGAGCGTCGATTTTTGTGATGCTCGTCAGGGGGGCGGAGCCTATGGAAAAACGCCAGCAACGCGGCCTTTTTACGGTTCCTGGCCTTTTGCTGGCCTTTTGCTCACATGTTCTTTCCTGCGTTATCCCCTGATTCTGTGGATAACCGTATTACCGCCTTTGAGTGAGCTGATACCGCTCGCCGCAGCCGAACGACCGAGCGCAGCGAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGCCCAATACGCAAACCGCCTCTCCCCGCGCGTTGGCCGATTCATTAATGCAGCTGGCACGACAGGTTTCCCGACTGGAAAGCGGGCAGTGAGCGCAACGCAATTAATGTGAGTTAGCTCACTCATTAGGCACCCCAGGCTTTACACTTTATGCTTCCGGCTCGTATGTTGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGCTATGACCATGATTACGAATTCCCCTAGTGATTCAGTGGCTGGGATCATGATGATAAACAATGTATGGTGCTAATGTTGCTTCAACAACAATTCTGTTGAACTGTGTTTTCATGTTTGCCAACAAGCACCTTTATACTCGGTGGCCTCCCCACCACCAACTTTTTTGCACTGCAAAAAAACACGCTTTTGCACGCGGGCCCATACATAGTACAAACTCTACGTTTCGTAGACTATTTTACATAAATAGTCTACACCGTTGTATACGCTCCAAATACACTACCACACATTGAACCTTTTTGCAGTGCAAAAAAGTACGTGTCGGCAGTCACGTAGGCCGGCCTTATCGGGTCGCGTCCTGTCACGTACGAATCACATTATCGGACCGGACGAGTGTTGTCTTATCGTGACAGGACGCCAGCTTCCTGTGTTGCTAACCGCAGCCGGACGCAACTCCTTATCGGAACAGGACGCGCCTCCATATCAGCCGCGCGTTATCTCATGCGCGTGACCGGACACGAGGCGCCCGTCCCGCTTATCGCGCCTATAAATACAGCCCGCAACGATCTGGTAAACACAGTTGAACAGCATCTGTTCGAATTTAGGATCCGCGCCACCATGAAGAAGCCCGAACTCACCGCTACCAGCGTTGAAAAATTTCTCATCGAGAAGTTCGACAGTGTGAGCGACCTGATGCAGTTGTCGGAGGGCGAAGAGAGCCGAGCCTTCAGCTTCGATGTCGGCGGACGCGGCTATGTACTGCGGGTGAATAGCTGCGCTGATGGCTTCTACAAAGACCGCTACGTGTACCGCCACTTCGCCAGCGCTGCACTACCCATCCCCGAAGTGTTGGACATCGGCGAGTTCAGCGAGAGCCTGACATACTGCATCAGTAGACGCGCCCAAGGCGTTACTCTCCAAGACCTCCCCGAAACAGAGCTGCCTGCTGTGTTACAGCCTGTCGCCGAAGCTATGGATGCTATTGCCGCCGCCGACCTCAGTCAAACCAGCGGCTTCGGCCCATTCGGGCCCCAAGGCATCGGCCAGTACACAACCTGGCGGGATTTCATTTGCGCGATTGCTGATCCCCATGTCTACCACTGGCAGACCGTGATGGACGACACCGTGTCCGCCAGCGTAGCTCAAGCCCTGGACGAACTGATGCTGTGGGCCGAAGACTGTCCCGAGGTGCGCCACCTCGTCCATGCCGACTTCGGCAGCAACAACGTCCTGACCGACAACGGCCGCATCACCGCCGTAATCGACTGGTCCGAAGCTATGTTCGGGGACAGTCAGTACGAGGTGGCCAACATCTTCTTCTGGCGGCCCTGGCTGGCTTGCATGGAGCAGCAGACTCGCTACTTCGAGCGCCGGCATCCCGAGCTGGCCGGCAGCCCTCGTCTGCGAGCCTACATGCTGCGCATCGGCCTGGATCAGCTCTACCAGAGCCTCGTGGACGGCAACTTCGACGATGCTGCCTGGGCTCAAGGCCGCTGCGATGCCATCGTCCGCAGCGGGGCCGGCACCGTCGGTCGCACACAAATCGCTCGCCGGAGCGCAGCCGTATGGACCGACGGCTGCGTCGAGGTGCTGGCCGACAGCGGCAACCGCCGGCCCAGTACACGACCGCGCGCTAAGGAGGTAGGTCGAGTTTAAGTCGACGTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGAGCTCCCAGCAATCGAATTGGG-3'
【0103】
上記の通りに改変したpIEx-4を「pIEx-4-MCS converted(MC)3」と呼称した。
【0104】
2.pIEx-4-MC3へのcDNA断片の挿入
反応全体の流れを図2に示す。pIEx-4-MC3へ挿入するcDNA断片として、ルシフェラーゼ(luc)cDNAのオープンリーディングフレームに相当する断片(luc ORF)を用いた。
luc ORFの全配列(配列表の配列番号3):
5'-ATGGCCGATGCTAAGAACATTAAGAAGGGCCCTGCTCCCTTCTACCCTCTGGAGGATGGCACCGCTGGCGAGCAGCTGCACAAGGCCATGAAGAGGTATGCCCTGGTGCCTGGCACCATTGCCTTCACCGATGCCCACATTGAGGTGGACATCACCTATGCCGAGTACTTCGAGATGTCTGTGCGCCTGGCCGAGGCCATGAAGAGGTACGGCCTGAACACCAACCACCGCATCGTGGTGTGCTCTGAGAACTCTCTGCAGTTCTTCATGCCAGTGCTGGGCGCCCTGTTCATCGGAGTGGCCGTGGCCCCTGCTAACGACATTTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGGGCATTTCTCAGCCTACCGTGGTGTTCGTGTCTAAGAAGGGCCTGCAGAAGATCCTGAACGTGCAGAAGAAGCTGCCTATCATCCAGAAGATCATCATCATGGACTCTAAGACCGACTACCAGGGCTTCCAGAGCATGTACACATTCGTGACATCTCATCTGCCTCCTGGCTTCAACGAGTACGACTTCGTGCCAGAGTCTTTCGACAGGGACAAAACCATTGCCCTGATCATGAACAGCTCTGGGTCTACCGGCCTGCCTAAGGGCGTGGCCCTGCCTCATCGCACCGCCTGTGTGCGCTTCTCTCACGCCCGCGACCCTATTTTCGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCTATTCTGAGCGTGGTGCCATTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACCTGATTTGCGGCTTTCGGGTGGTGCTGATGTACCGCTTCGAGGAGGAGCTGTTCCTGCGCAGCCTGCAAGACTACAAAATTCAGTCTGCCCTGCTGGTGCCAACCCTGTTCAGCTTCTTCGCTAAGAGCACCCTGATCGACAAGTACGACCTGTCTAACCTGCACGAGATTGCCTCTGGCGGCGCCCCACTGTCTAAGGAGGTGGGCGAAGCCGTGGCCAAGCGCTTTCATCTGCCAGGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACCGAGACAACCAGCGCCATTCTGATTACCCCAGAGGGCGACGACAAGCCTGGCGCCGTGGGCAAGGTGGTGCCATTCTTCGAGGCCAAGGTGGTGGACCTGGACACCGGCAAGACCCTGGGAGTGAACCAGCGCGGCGAGCTGTGTGTGCGCGGCCCTATGATTATGTCCGGCTACGTGAATAACCCTGAGGCCACAAACGCCCTGATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACTCTGGCGACATTGCCTACTGGGACGAGGACGAGCACTTCTTCATCGTGGACCGCCTGAAGTCTCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGGCCCCAGCCGAGCTGGAGTCTATCCTGCTGCAGCACCCTAACATTTTCGACGCCGGAGTGGCCGGCCTGCCCGACGACGATGCCGGCGAGCTGCCTGCCGCCGTCGTCGTGCTGGAACACGGCAAGACCATGACCGAGAAGGAGATCGTGGACTATGTGGCCAGCCAGGTGACAACCGCCAAGAAGCTGCGCGGCGGAGTGGTGTTCGTGGACGAGGTGCCCAAGGGCCTGACCGGCAAGCTGGACGCCCGCAAGATCCGCGAGATCCTGATCAAGGCTAAGAAAGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA-3'
【0105】
(1)luc ORFの増幅
luc ORFを以下の条件でPCR増幅した。
DDW・・・40μl
1ng/μl psiCHECK-2(Promega)・・・0.5μl
10pmol/μl Luc-F primer(5'-ATGGCCGATGCTAAGAACATTAAGAAG-3':配列表の配列番号4)・・・1.5μl
10 pmol/μl Luc-R primer(5'-TTACACGGCGATCTTGCCGC-3':配列表の配列番号5)・・・1.5μl
10mM dNTP・・・1μl
10×Pwo Super Yield PCR buffer(Roche)・・・5μl
5U/μl Pwo Super Yield DNA Polymerase(Roche)・・・0.5μl
初期変性95℃・2分、連鎖反応95℃・20秒→55℃・20秒→72℃・1分の35サイクル、最終伸長・1分。
【0106】
反応終了後、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いてPCR産物を精製した。
【0107】
(2)luc ORFの不完全消化
Duplex-specific nuclease(Evrogen)を用いてluc ORFを下記の条件で消化した。
125ng/μl luc ORF・・・8μl
10×DSN master buffer(Evrogen)・・・1μl
2mU/μl Duplex-specific nuclease・・・1μl
60℃・15分
【0108】
反応終了後、2%アガロースゲル電気泳動で分離して200-400bpの範囲を切り出し(図3)、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて精製した(60μlのDDWで溶出)。これを「luc ORF消化産物」と呼称した。
【0109】
(3)luc ORF消化産物へのアダプター付加
luc ORF消化産物を以下の条件で処理して平滑化した。
luc ORF消化産物・・・43μl
10×NEBuffer 2(New England Biolabs)・・・5μl
10mM dNTP・・・1μl
10mg/ml BSA・・・0.5μl
3U/μl T4 DNA polymerase(New England Biolabs)・・・0.5μl
16℃・15分
【0110】
反応終了後、フェノール・クロロホルム処理、クロロホルム処理、イソプロパノール沈澱(共沈剤として、反応溶液100μlにつき1μlの割合でEthachinmate(NIPPON GENE)を使用。以下のイソプロパノール沈澱は全て同様)してDNAを回収した。これを45μlのDDWで溶解し、そのうち4.5μlをとって0.5μlの200 pmol/μl DraIII adaptorと混合した後、10μlのDNA Ligation Kit <Mighty Mix>(TAKARA BIO)を加えて16℃・30分間ライゲーションした。反応終了後、35μlのDDWを加えてからWizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemで精製した(50μlのDDWで溶出)。これを「luc ORF消化産物-DraIII adaptor」と呼称した。
【0111】
DraIII adaptorの配列は以下の通りである。
DraIII adaptor-F・・・5'-CAACCAACAACCACGGGGTGA-3'(配列表の配列番号6)
DraIII adaptor-R・・・5'-PTCACCCCGTGGTTGTTGGTTGAA-3'(配列表の配列番号7)
Pは5'末端リン酸化を意味する。上記配列のとおり、DraIII adaptor は5'末端リン酸化されているほうのDNA鎖が3'突出末端を作るようにデザインされているが、これはDraIII adaptorの両末端を平滑にしていると、次のようなことが起こると予想されたためである:(i)DraIII adaptorがcDNAへ逆向きにライゲーションされる、(ii)2分子以上のDraIII adaptorが互いにライゲーションした多量体が、cDNAへライゲーションされる、(iii)cDNAへライゲーションされていない、フリーの同多量体が大量に蓄積し、PCRに持ち込まれる。
【0112】
上記(i)〜(iii)のいずれも、次のPCRによるcDNA増幅の大きな障害となるが、DraIII adaptorの片方の末端を突出にしておけば、全て完全に防止することができる。片方の末端を突出末端にしても、DraIII adaptorの平滑末端同士のライゲーションによる二量体の生成を防ぐことはできないが、この二量体はcDNAへはライゲーションできない上、その鎖長はたかだか42 bp+4 baseであり、ライゲーション反応後のWizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemによる精製で除去できるため、PCRの障害とはならないと推測された。
【0113】
(4)luc ORF消化産物-DraIII adaptorのPCRによる増幅
以下の条件でluc ORF消化産物-DraIII adaptor をPCR増幅した。
DDW・・・71μl
luc ORF消化産物-DraIII adaptor・・・10μl
10pmol/μl DraIII adaptor-F・・・6μl
10mM dNTP・・・2 μl
10×Pwo Super Yield PCR buffer・・・10μl
Pwo Super Yield DNA Polymerase・・・1μl
初期変性95℃・2分、連鎖反応95℃・20秒→55℃・20秒→72℃・30秒の35サイクル、最終伸長・1分(図4)。
【0114】
反応終了後、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いてPCR産物を精製した。
【0115】
(5)MC-1 pIEx-4へのluc ORF消化産物の挿入
以下の条件でMC-1 pIEx-4とluc ORF消化産物-DraIII adaptorを制限酵素処理した。
DDW・・・20μl
100ng/μl MC-1 pIEx-4・・・1μl
75ng/μl luc ORF消化産物-DraIII adaptor・・・2μl
10×NEBuffer 3(New England Biolabs)・・・3μl
1mg/ml BSA・・・3μl
20U/μl DraIII(New England Biolabs)・・・1μl
37℃・2時間
【0116】
反応終了後、フェノール・クロロホルム処理、クロロホルム処理、イソプロパノール沈澱でDNAを回収した。これを3μlの2/3×DNA Ligation Kit <Mighty Mix>で溶解して、16℃・1時間ライゲーションした。これをE. coli (JM109)へ導入し、品質確認のため一部を100μg/mlのアンピシリンを含むLBプレート(以下単に「LBプレート」と呼称)にスプレッドし、コロニーを形成させた。残りを100 μg/mlのアンピシリンを含むLB培地(以下単に「LB培地」と呼称)に移して培養し、High Pure Plasmid Isolation Kit(Roche)を用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドを「pIEx-4-MC3-luc library」と呼称した。またLBプレートに生じたコロニーのコロニーPCRを行い、インサートの存在とサイズ分布を確認した(図5)。確認の結果、200 bp前後のインサートが挿入されているクローンを選んでLB培地で培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドを「pIEx-4-MC3-luc200」と呼称した。
【0117】
コロニーPCR用プライマーの配列は以下の通りである。
IEx1P-F primer・・・5'-TGGATATTGTTTCAGTTGCAAG-3'(配列表の配列番号8)
IEx1T-R primer・・・5'-CAAAACCCCACACCAACAAC-3'(配列表の配列番号9)
【0118】
3.結果
高い確率で、100-500 bpのインサート挿入が確認された(図5)。複数回の実験を行った結果、インサートの挿入率は〜95%であった。またベクターをインサートと同じチューブで切断せず、個別に切断して0.8%アガロースゲル電気泳動、直鎖状プラスミドの切り出し・精製、インサートの反応溶液と混合、フェノール・クロロホルム処理、クロロホルム処理、イソプロパノール沈澱という流れで精製すれば、手間はかかるがインサート挿入率はほぼ100%になった。
【0119】
本法は一種類のみの制限酵素を用いた方法でありながら、(i)ベクターの脱リン酸化処理が不要(脱リン酸化処理は手間と時間が掛かる上、インサートのライゲーション効率を低下させる)、(ii)上記(i)に関連し、ベクターとインサートを同じチューブで制限酵素処理できる(前述のとおり、ベクターはアガロースゲル電気泳動、直鎖状プラスミドの切り出し・精製を行ったほうがインサート挿入率が高くなるので、cDNAライブラリの調製にはそのほうが良いが、単一cDNAのクローニングであれば必要な操作ではない)、(iii)1分子のプラスミドに複数分子のインサートが挿入されることがない、といった利点がある。
【0120】
また、DraIIIに替えてBstXI adaptorを用いても、cDNAライブラリを構築することができた。BstXIは4塩基の突出末端を生じるので、高いライゲーション効率が期待できる。これらの結果から、DraIIIやBstXI以外にも、これらと同様の切断様式を有するAlwNI、BglI、BstAPI、PflMI、SfiI、BspQI(SapI)(いずれもNew England Biolabsより購入可能)を用いても、cDNAライブラリを構築することができるものと推測される。
【0121】
実施例2
[pIEx-4-MC3を用いたIR構造を有するプラスミドの構築]
1.pIEx-4-MC3-luc library, luc200におけるinverted repeat(IR)配列の形成
反応全体の流れを図6に示す。
【0122】
(1)鎖置換反応によるDR構造の形成(図7)
以下の条件で両プラスミドを処理した。
DDW・・・11μl
100ng/μl pIEx-4-MC3-luc library or luc200・・・2μl
NEBuffer 3・・・1.5μl
10U/μl Nt.BspQI(New England Biolabs)・・・0.5μl
50℃・1時間
【0123】
反応終了後、80℃・20分間熱処理してNt.BspQIを失活させた後、43.3μlのdilution buffer (12.5mM Tris-HCl, 10mM MgCl2, pH8.8)、1.2μlの10 mM dNTP、0.5μlの2 U/μl BcaBEST DNA polymerase(TAKARA BIOのBcaBESTTM Labeling Kitに添付のもの)を加えて、鎖置換反応を55℃・30分間、60℃・30分間、65℃・30分間実施した。反応終了後、1.5μlの1M NaCl、0.6μlの10mg/ml BSA、0.5μlの3U/μl T4 DNA polymeraseを加えて16℃・10分間反応させた。その後フェノール・クロロホルム処理、クロロホルム処理、イソプロパノール沈澱することでDNAを回収した。これらを3μlの1/2×DNA Ligation Kit <Mighty Mix>で溶解して、16℃・1時間ライゲーションした。これらをE. coli (SURE2; Stratagene)へ導入し、品質確認のためpIEx-4-MC3-luc200の一部をLBプレートにスプレッドし、コロニーを形成させた。一方MC-1 pIEx-4-luc libraryはLB培地に移して培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドを「pIEx-4-MC3-luc libraryR」と呼称する。またLBプレートに生じたコロニーのコロニーPCRを行ってインサートのサイズを確認し、DR構造が形成されたことによってPCR産物のサイズが大きくなっているクローンを選抜した(図14)。これをLB培地で培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドを「pIEx-4-MC3-luc200R」と呼称した。
【0124】
(2)lox71 cassetteの構築とPCRによる増幅
pIEx-4をNcoI・XhoIで切断して1082-1254 bpの範囲を除去し、以下の配列(配列表の配列番号10)を挿入した。(センス鎖のみ表示)
5'-CATGCGGCCGCATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAACGGTACCATCCCCTTGGCACGGGGTGTCGA-3'
上記の配列のうち、GCGGCCGCはNotIの制限部位を示し、ATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAACGGTAはlox71配列を示し、CCATCCCCTTGGはBstXIの認識部位を示し、CACGGGGTGはDraIIIの認識部位を示す。
【0125】
上記の通りに改変したpIEx-4を「pIEx-4-lox71 cassette」と呼称した。pIEx-4-lox71 cassetteをテンプレートとして以下の条件でPCR増幅した。
DDW・・・80.5μl
1ng/μl pIEx-4-lox71 cassette・・・0.5μl
10pmol/μl cas-F primer・・・3μl
10pmol/μl cas-R primer・・・3μl
10mM dNTP・・・2μl
10×Pwo Super Yield PCR buffer・・・10μl
Pwo Super Yield DNA Polymerase・・・1μl
初期変性95℃・2分、連鎖反応は95℃・20秒→55 ℃・20秒→72℃・10秒の35サイクル、最終伸長・1分
※プライマーの配列
cas-F primer・・・5'-TGACCATGCGGCCGCATAACT-3'(配列表の配列番号11)
cas-R primer・・・5'-CTCGACACCCCGTGCCAA-3'(配列表の配列番号12)
【0126】
反応終了後、PCR産物をWizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて精製した。
【0127】
(3)NotI・BglI処理によるDR構造に変換したプラスミドのスクリーニング(図8)とlox71 cassetteの挿入(図10)
pIEx-4-MC3-4-luc library, luc200とpIEx-4-MC3-luc libraryR, luc200RをそれぞれNotI・BglI処理し、図8に示すスクリーニング法が妥当であるかを検証した(図15)。その結果、鎖置換反応後NotI、BglI処理を行うと、DR構造に変換した直鎖状プラスミドとDR構造に変換されなかったスーパーコイルプラスミドを分離できることが明らかとなり(図15)、DR構造に変換したプラスミドを分離・精製するのに本法が有効であることが確認された。なおNotIとBglIによる処理であるが、これは同時に行うのではなく、BglIで先に切断したあと、NotIで切断するようにした。NotIはプラスミド末端の切断が得意(New England Biolabsの資料によると認識配列の外側に1塩基対あれば98%の切断が可能)なのでBglI切断後でも十分切断できるが、逆は困難であると思われる(BglIの末端切断能力については資料なし)。
【0128】
NotI・BglIによる反応は以下の条件で実施した。
DDW・・・13.5μl
100ng/μl pIEx-4-MC3-luc libraryR or luc200R・・・2μl
NEBuffer 3・・・2μl
1mg/ml BSA・・・2μl
10U/μl BglI(New England Biolabs)・・・0.5μl
37℃・1時間
【0129】
反応終了後、0.5μlの15U/μl NotI(NIPPON GENE)を加えて、さらに37℃・1時間反応させた。その後、0.8%アガロースゲル電気泳動を行って直鎖状プラスミドのみを切り出し、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて精製した。
【0130】
一方、以下の条件でlox71 cassetteを処理した。
DDW・・・38.5μl
50ng/μl lox71 cassette・・・4μl
NEBuffer 3・・・5μl
10mg/ml BSA・・・0.5μl
15U/μl NotI・・・1μl
20U/μl DraIII・・・1μl
37℃・2時間
【0131】
反応終了後、フェノール・クロロホルム処理、クロロホルム処理した後、精製したベクターの溶液と混合してからイソプロパノール沈澱することでDNAを回収した。これらを3μlの2/3×DNA Ligation Kit <Mighty Mix>で溶解し、16℃・1時間ライゲーションした。これらをE. coli(SURE2)へ導入し、品質確認のためMC-1 pIEx-4-luc200Rの一部をLBプレートにスプレッドし、コロニーを形成させた。一方MC-1 pIEx-4-luc libraryRはLB培地に移して培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドを「pIEx-4-MC3-luc libraryR+cas」と呼称する。またLBプレートに生じたコロニーのコロニーPCRを行ってインサートのサイズを確認し、lox71 cassetteが挿入されたことによってPCR産物のサイズが大きくなっているクローンを選抜した(図16)。これをLB培地で培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドを「pIEx-4-MC3-luc200R+cas」と呼称した。
【0132】
(4)分子内組み換えによるIRの形成とその確認(図11)
Cre リコンビナーゼは方向性のある配列loxPを認識し、異なる方向性を持つloxPに挟まれた領域を反転させる(図17)。この反応は平衡反応であり、同一プラスミド分子にCre リコンビナーゼが偶数回作用すると、逆転前の配列に戻ってしまうため、その反応効率が50%を超えることは理論上ない。しかしZhangらが報告(Zhang et al., Nucleic Acids Res. 2002; 30(17): e90)した、loxPの末端5塩基に変異を導入したlox66, lox71を用いることで、この平衡をずらすことができる(図18)。異なる方向性を持つlox66, lox71にCre リコンビナーゼが一度作用すると、loxPとdouble mutated(DM)loxPが生じるが、DM loxPに対するCre リコンビナーゼの反応は非常に弱いため、再度逆転反応することは難しくなる。これによって、逆転反応の効率を高めることができると考えた。
【0133】
Cre リコンビナーゼによる反応は以下の条件で実施した。
DDW・・・14.9μl
100ng/μl pIEx-4-MC3-luc libraryR+cas or luc200R+cas・・・1μl
10×Cre Recombinase Reaction Buffer(New England Biolabs)・・・1.8μl
1mg/ml BSA・・・1.8μl
1U/μl Cre recombinase(New England Biolabs)・・・0.5μl
37℃・1時間
【0134】
反応終了後70℃・10分間熱処理してCre リコンビナーゼを失活させた後、1.5μlの1M NaCl、0.5μlの10U/μl BglIを加えて、さらに37℃・30分間反応させた。その後70℃・10分間熱処理してBglIを失活させた後、反応溶液0.5μlをとってE. coli(SURE2)へ導入後、LBプレートにスプレッドしてコロニーを形成させた。LBプレートに生じたコロニーを用いてコロニーPCRを行い、増幅の有無を確認し、増幅がなければIR構造を形成したと推測した(IRが形成されるとテンプレートDNAが高次構造をとるため、鎖置換反応活性のないTaq DNA polymeraseなどでは著しく増幅効率が悪くなることを利用したスクリーニング法)。増幅不良のクローンがIR構造を形成しているかを確認するため、これらクローンをそれぞれのLBプレートから6つずつ選んで(図19における数字を振った各クローン)LB培地で培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。
【0135】
これらのプラスミドをBstXIで切断した後、その塩基配列をBigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて決定し、全てがluc IRをもつプラスミドであることを確認した。これらの各プラスミドを「pIEx-4-MC3-luc libraryIR+cas」及び「pIEx-4-MC3-luc200IR+cas」と呼称した。
【0136】
2.結果
図19の結果及び塩基配列解析から本法では30〜40%のクローンがIR構造に変換したものであった。
【0137】
3.各pIEx-4-MC3-luc libraryIR+casの昆虫培養細胞におけるRNAi効果の確認
カイコ胚由来培養細胞NIAS-Bm-Oyanagi 2を10%(v/v)ウシ胎児血清・1%(v/v)Antibiotic-Antimycotic(100×)(GIBCO)を含むIPL-41(GIBCO)で約80-90%コンフルエントとなるまで培養した。この細胞を懸濁し、2×105個/wellとなるように24穴プレートの各ウェルに分注して25℃・24時間培養した。その後培地を除去し、100μlのIPL-41と交換した。
【0138】
RNAi効果の評価には、psiCHECKTM-2の各プロモーターを昆虫培養細胞用に改変(SV40 early enhancer/promoter→actin3 promoter・HSV-TK promoter→OpIEx2 promoter)したA3P-OpIE2-CHECK-2を用いた。0.06 pmolのA3P-OpIE2-CHECK-2に対して0.18pmolのpIEx-4-MC3-luc libraryIR+cas 1-4もしくはpIEx-4-MC3(ネガティブコントロール)を混合し、IPL-41で100μlとした。ここに0.2μg DNA/μlの割合となるようにFuGENE HD Transfection Reagent(Roche)を加え、15分間室温でインキュベートした。これらを細胞の入った各ウェルに加えて、25℃・4時間インキュベートした後培地を除去し、500μlの10%(v/v)ウシ胎児血清・1%(v/v)Antibiotic-Antimycotic(100×)を含むIPL-41に交換した。その後25℃・48時間培養した。
【0139】
培養終了後、RNAi効果をDual-Luciferase(R) Reporter Assay System(Promega)を用いて評価した。
【0140】
4.結果
pIEx-4-MC3-luc libraryIR+cas_1-4はいずれもルシフェラーゼを95%程度ノックダウンしており、十分なRNAi効果が確認できた(図19)。
【0141】
IR構造への変換効率が十分上がらなかった原因として、最初の鎖置換反応が行われなかったpIEx-4-MC3-luc libraryの混入が多いこと、pIEx-4-MC3-luc libraryIR+casのBstXIサイトに塩基置換が起こり、ライゲーションできない突出末端を作っていたことが考えられた。そこで、こういった混入産物を効率よく除去するための反応ステップ(図22)を考え、この反応ステップを行うため、pIEx-4-MC3の配列をさらに改善した新たなベクターを構築した。
【0142】
実施例3
[pIEx-4-MC4を用いたRNAiライブラリの構築]
1.pIEx-4-MC3のマルチクローニングサイト改変
pIEx-4-MC3をNcoI・BstXIで切断し、当該箇所(配列表の配列番号13)を以下のようにさらに改変した(図21)。(センス鎖のみを示した。)
CCATGGATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAACGGTAGTTTAAACAGCCAAGGGGATGG
上記配列において、GTTTAAACはPmeIの認識部位であり、ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAACGGTAはlox66配列であり、CCAAGGGGATGGはBstXIの認識部位である。
【0143】
上記の通りに改変したpIEx-4を「pIEx-4-MC4」と呼称した。全配列は以下の通りである。
pIEx-4-MC4の全配列(配列表の配列番号14)
CGCGTAAAACACAATCAAGTATGAGTCATAAGCTGATGTCATGTTTTGCACACGGCTCATAACCGAACTGGCTTTACGAGTAGAATTCTACTTGTAACGCACGATCAGTGGATGATGTCATTTGTTTTTCAAATCGAGATGATGTCATGTTTTGCACACGGCTCATAAACTCGCTTTACGAGTAGAATTCTACGTGTAACGCACGATCGATTGATGAGTCATTTGTTTTGCAATATGATATCATACAATATGACTCATTTGTTTTTCAAAACCGAACTTGATTTACGGGTAGAATTCTACTTGTAAAGCACAATCAAAAAGATGATGTCATTTGTTTTTCAAAACTGAACTCGCTTTACGAGTAGAATTCTACGTGTAAAACACAATCAAGAAATGATGTCATTTGTTATAAAAATAAAAGCTGATGTCATGTTTTGCACATGGCTCATAACTAAACTCGCTTTACGGGTAGAATTCTACGCGCGTCGATGTCTTTGTGATGCGCGCGACATTTTTGTAGGTTATTGATAAAATGAACGGATACGTTGCCCGACATTATCATTAAATCCTTGGCGTAGAATTTGTCGGGTCCATTGTCCGTGTGCGCTAGCATGCCCGTAACGGACCTCGTACTTTTGGCTTCAAAGGTTTTGCGCACAGACAAAATGTGCCACACTTGCAGCTCTGCATGTGTGCGCGTTACCACAAATCCCAACGGCGCAGTGTACTTGTTGTATGCAAATAAATCTCGATAAAGGCGCGGCGCGCGAATGCAGCTGATCACGTACGCTCCTCGTGTTCCGTTCAAGGACGGTGTTATCGACCTCAGATTAATGTTTATCGGCCGACTGTTTTCGTATCCGCTCACCAAACGCGTTTTTGCATTAACATTGTATGTCGGCGGATGTTCTATATCTAATTTGAATAAATAAACGATAACCGCGTTGGTTTTAGAGGGCATAATAAAAGAAATATTGTTATCGTGTTCGCCATTAGAGCAGTATAAATTGACGTTCATGTTGGATATTGTTTCAGTTGCAAGTTGACACTGGCGGCGACAAGATCGTGAACAACCAAGTGACCATGGATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAACGGTAGTTTAAACAGCCAAGGGGATGGATCAGCTTTGTCGCTCTTCACCAGGGAGGCACGGGGTGAACACCCCGTGCGGCCGAGAAGAGCTAAGTGATTAACCTCAGGTTATACATATATTTTGAATTTAATTAATTATACATATATTTTATATTATTTTTGTCTTTTATTATCGAGGGGCCGTTGTTGGTGTGGGGTTTTGCATAGAAATAACAATGGGAGTTGGCGACGTTGCTGCGCCAACACCACCTCCCTTCCCTCCTTTCATCATGTATCTGTAGATAAAATAAAATATTAAACCTAAAAACAAGACCGCGCCTATCAACAAAATGATAGGCATTAACTTGCCGCTGACGCTGTCACTAACGTTGGACGATTTGCCGACTAAACCTTCATCGCCCAGTAACCAATCTAGACGTCAGGTGGCACTTTTCGGGGAAATGTGCGCGGAACCCCTATTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACAATAACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGTATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCATTTTGCCTTCCTGTTTTTGCTCACCCAGAAACGCTGGTGAAAGTAAAAGATGCTGAAGATCAGTTGGGTGCACGAGTGGGTTACATCGAACTGGATCTCAACAGCGGTAAGATCCTTGAGAGTTTTCGCCCCGAAGAACGTTTTCCAATGATGAGCACTTTTAAAGTTCTGCTATGTGGCGCGGTATTATCCCGTATTGACGCCGGGCAAGAGCAACTCGGTCGCCGCATACACTATTCTCAGAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCACAGAAAAGCATCTTACGGATGGCATGACAGTAAGAGAATTATGCAGTGCTGCCATAACCATGAGTGATAACACTGCGGCCAACTTACTTCTGACAACGATCGGAGGACCGAAGGAGCTAACCGCTTTTTTGCACAACATGGGGGATCATGTAACTCGCCTTGATCGTTGGGAACCGGAGCTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGATGCCTGTAGCAATGGCAACAACGTTGCGCAAACTATTAACTGGCGAACTACTTACTCTAGCTTCCCGGCAACAATTAATAGACTGGATGGAGGCGGATAAAGTTGCAGGACCACTTCTGCGCTCGGCACTTCCGGCTGGCTGGTTTATTGCTGATAAATCTGGAGCCGGTGAGCGTGGGTCTCGCGGTATCATCGCAGCACTGGGGCCAGATGGTAAGCCCTCCCGTATCGTAGTTATCTACACGACGGGGAGTCAGGCAACTATGGATGAACGAAATAGACAGATCGCTGAGATAGGTGCCTCACTGATTAAGCATTGGTAACTGTCAGACCAAGTTTACTCATATATACTTTAGATTGATTTAAAACTTCATTTTTAATTTAAAAGGATCTAGGTGAAGATCCTTTTTGATAATCTCATGACCAAAATCCCTTAACGTGAGTTTTCGTTCCACTGAGCGTCAGACCCCGTAGAAAAGATCAAAGGATCTTCTTGAGATCCTTTTTTTCTGCGCGTAATCTGCTGCTTGCAAACAAAAAAACCACCGCTACCAGCGGTGGTTTGTTTGCCGGATCAAGAGCTACCAACTCTTTTTCCGAAGGTAACTGGCTTCAGCAGAGCGCAGATACCAAATACTGTCCTTCTAGTGTAGCCGTAGTTAGGCCACCACTTCAAGAACTCTGTAGCACCGCCTACATACCTCGCTCTGCTAATCCTGTTACCAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTCGTGTCTTACCGGGTTGGACTCAAGACGATAGTTACCGGATAAGGCGCAGCGGTCGGGCTGAACGGGGGGTTCGTGCACACAGCCCAGCTTGGAGCGAACGACCTACACCGAACTGAGATACCTACAGCGTGAGCTATGAGAAAGCGCCACGCTTCCCGAAGGGAGAAAGGCGGACAGGTATCCGGTAAGCGGCAGGGTCGGAACAGGAGAGCGCACGAGGGAGCTTCCAGGGGGAAACGCCTGGTATCTTTATAGTCCTGTCGGGTTTCGCCACCTCTGACTTGAGCGTCGATTTTTGTGATGCTCGTCAGGGGGGCGGAGCCTATGGAAAAACGCCAGCAACGCGGCCTTTTTACGGTTCCTGGCCTTTTGCTGGCCTTTTGCTCACATGTTCTTTCCTGCGTTATCCCCTGATTCTGTGGATAACCGTATTACCGCCTTTGAGTGAGCTGATACCGCTCGCCGCAGCCGAACGACCGAGCGCAGCGAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGCCCAATACGCAAACCGCCTCTCCCCGCGCGTTGGCCGATTCATTAATGCAGCTGGCACGACAGGTTTCCCGACTGGAAAGCGGGCAGTGAGCGCAACGCAATTAATGTGAGTTAGCTCACTCATTAGGCACCCCAGGCTTTACACTTTATGCTTCCGGCTCGTATGTTGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGCTATGACCATGATTACGAATTCCCCTAGTGATTCAGTGGCTGGGATCATGATGATAAACAATGTATGGTGCTAATGTTGCTTCAACAACAATTCTGTTGAACTGTGTTTTCATGTTTGCCAACAAGCACCTTTATACTCGGTGGCCTCCCCACCACCAACTTTTTTGCACTGCAAAAAAACACGCTTTTGCACGCGGGCCCATACATAGTACAAACTCTACGTTTCGTAGACTATTTTACATAAATAGTCTACACCGTTGTATACGCTCCAAATACACTACCACACATTGAACCTTTTTGCAGTGCAAAAAAGTACGTGTCGGCAGTCACGTAGGCCGGCCTTATCGGGTCGCGTCCTGTCACGTACGAATCACATTATCGGACCGGACGAGTGTTGTCTTATCGTGACAGGACGCCAGCTTCCTGTGTTGCTAACCGCAGCCGGACGCAACTCCTTATCGGAACAGGACGCGCCTCCATATCAGCCGCGCGTTATCTCATGCGCGTGACCGGACACGAGGCGCCCGTCCCGCTTATCGCGCCTATAAATACAGCCCGCAACGATCTGGTAAACACAGTTGAACAGCATCTGTTCGAATTTAGGATCCGCGCCACCATGAAGAAGCCCGAACTCACCGCTACCAGCGTTGAAAAATTTCTCATCGAGAAGTTCGACAGTGTGAGCGACCTGATGCAGTTGTCGGAGGGCGAAGAGAGCCGAGCCTTCAGCTTCGATGTCGGCGGACGCGGCTATGTACTGCGGGTGAATAGCTGCGCTGATGGCTTCTACAAAGACCGCTACGTGTACCGCCACTTCGCCAGCGCTGCACTACCCATCCCCGAAGTGTTGGACATCGGCGAGTTCAGCGAGAGCCTGACATACTGCATCAGTAGACGCGCCCAAGGCGTTACTCTCCAAGACCTCCCCGAAACAGAGCTGCCTGCTGTGTTACAGCCTGTCGCCGAAGCTATGGATGCTATTGCCGCCGCCGACCTCAGTCAAACCAGCGGCTTCGGCCCATTCGGGCCCCAAGGCATCGGCCAGTACACAACCTGGCGGGATTTCATTTGCGCGATTGCTGATCCCCATGTCTACCACTGGCAGACCGTGATGGACGACACCGTGTCCGCCAGCGTAGCTCAAGCCCTGGACGAACTGATGCTGTGGGCCGAAGACTGTCCCGAGGTGCGCCACCTCGTCCATGCCGACTTCGGCAGCAACAACGTCCTGACCGACAACGGCCGCATCACCGCCGTAATCGACTGGTCCGAAGCTATGTTCGGGGACAGTCAGTACGAGGTGGCCAACATCTTCTTCTGGCGGCCCTGGCTGGCTTGCATGGAGCAGCAGACTCGCTACTTCGAGCGCCGGCATCCCGAGCTGGCCGGCAGCCCTCGTCTGCGAGCCTACATGCTGCGCATCGGCCTGGATCAGCTCTACCAGAGCCTCGTGGACGGCAACTTCGACGATGCTGCCTGGGCTCAAGGCCGCTGCGATGCCATCGTCCGCAGCGGGGCCGGCACCGTCGGTCGCACACAAATCGCTCGCCGGAGCGCAGCCGTATGGACCGACGGCTGCGTCGAGGTGCTGGCCGACAGCGGCAACCGCCGGCCCAGTACACGACCGCGCGCTAAGGAGGTAGGTCGAGTTTAAGTCGACGTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGAGCTCCCAGCAATCGAATTGGG
【0144】
2.pIEx-4-MC4へのcDNA断片の挿入とIR配列の形成
pIEx-4-MC3を用いたRNAiライブラリの構築の方法に準じ、pIEx-4-MC4-luc libraryをサンプルとしてIRを構築した。
【0145】
Cre リコンビナーゼ処理後のプラスミドをE. coli(SURE2)へ導入してLBプレートにスプレッドし、コロニーフォーミングさせた。LBプレートに生じたコロニーのコロニーPCRを行い、増幅の有無を確認した。確認の結果、増幅不良のクローンを7つ選んでLB培地で培養し、High Pure Plasmid Isolation Kitを用いてプラスミドを抽出した。
【0146】
これらのプラスミドをDraI(NIPPONGENE)で切断した後、その塩基配列をBigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitを用いて決定し、7つ中5つがluc IRをもつプラスミドであることを確認した。これらの各プラスミドを「pIEx-4-MC4-luc libraryIR+cas」と呼称した。
【0147】
その後、以下の条件でpIEx-4-MC4-luc libraryIR+casを処理した。
DDW・・・16.5μl
100 ng/μl各pIEx-4-MC3-luc libraryIR+cas・・・1μl
NEBuffer 3・・・2μl
10U/μl BstXI・・・0.5μl
37℃・1時間
【0148】
反応終了後、0.8%アガロースゲル電気泳動を行って直鎖状プラスミドのみを切り出し、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて精製した。その後、イソプロパノール沈澱することでDNAを濃縮した。これらを3μlの1/2×DNA Ligation Kit <Mighty Mix>で溶解し、16℃・30分間ライゲーションした。これらをE. coli(SURE2)へ導入し、LB培地で培養してPureYieldTM Plasmid Miniprep System(Promega)を用いてプラスミドを抽出した後、イソプロパノール沈澱(Ethachinmate使用せず)を行って無菌化した。これらの各プラスミドを「pIEx-4-MC4-luc libraryIR_1-5」と呼称した。
【0149】
3.各pIEx-4-MC4-luc libraryIRの昆虫培養細胞におけるRNAi効果の確認
カイコ胚由来培養細胞NIAS-Bm-Oyanagi 2を10%(v/v)ウシ胎児血清・1%(v/v)Antibiotic-Antimycotic(100×)(GIBCO)を含むIPL-41(GIBCO)で約80-90%コンフルエントとなるまで培養した。この細胞を懸濁し、2×105個/wellとなるように24穴プレートの各ウェルに分注して25℃・24時間培養した。その後培地を除去し、100μlのIPL-41と交換した。
【0150】
RNAi効果の評価には、psiCHECKTM-2の各プロモーターを昆虫培養細胞用に改変(SV40 early enhancer/promoter→actin3 promoter・HSV-TK promoter→OpIEx2 promoter)したA3P-OpIE2-CHECK-2を用いた。0.06 pmolのA3P-OpIE2-CHECK-2に対して0.18pmolのpIEx-4-MC4-luc libraryIR_1-5もしくはpIEx-4-MC4(ネガティブコントロール)を混合し、IPL-41で100μlとした。ここに0.2μg DNA/μlの割合となるようにFuGENE HD Transfection Reagent(Roche)を加え、15分間室温でインキュベートした。これらを細胞の入った各ウェルに加えて、25℃・4時間インキュベートした後培地を除去し、500μlの10%(v/v)ウシ胎児血清・1%(v/v)Antibiotic-Antimycotic(100×)を含むIPL-41に交換した。その後25℃・48時間培養した。
【0151】
培養終了後、RNAi効果をDual-Luciferase(R) Reporter Assay System(Promega)を用いて評価した。
【0152】
4.結果
MC-2 pIEx-4-luc libraryIR_1-5はいずれもルシフェラーゼを95%程度ノックダウンしており、十分なRNAi効果が確認できた(図23)。
【0153】
ほ乳類動物では片側が30塩基以上の逆方向反復配列DNAが挿入されている発現プラスミドを用いて細胞に挿入し、細胞内でRNAi反応を起こさせようとすると、インターフェロン産生による細胞性障害などが引き起こされる。従って本発明の方法で調製される発現プラスミドはこういった障害が引き起こされない昆虫や植物を対象にRNAi反応を起こすために用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的遺伝子ダイレクトリピート(以下、DRと表記する)構造を有するプラスミドの調製方法であって、
(1)1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)を調製する工程、
但し、前記プラスミドSは、標的遺伝子の両側のそれぞれにニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有し、かつ各ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の標的遺伝子側に、DR構造が形成された時に、その間のスペーサー領域に制限酵素認識部位が生成されるための一部配列(制限酵素認識部位生成用部位)を有する、
(2)前記プラスミドSにニックを生じさせる工程、
(3)ニックを生じたプラスミドSに鎖置換反応及び引き続き行われるセルフライゲーション反応により、DR構造に変換した標的遺伝子を有するプラスミドを調製する工程、
但し、調製した標的遺伝子DR構造を有するプラスミドには、前記制限酵素認識部位生成用部位によって、2つの制限酵素認識部位が新たに形成される、
(4)標的遺伝子DR構造を有するプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングする工程、
(5)クローニングしたプラスミド群を前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位に対する2つの制限酵素で消化する工程、および
(6)消化したプラスミド群から、制限酵素で消化されて直鎖状になったプラスミドを回収する工程、
を含む、標的遺伝子DR構造を有するプラスミドの調製方法。
【請求項2】
(7)工程(6)で回収された直鎖状になったプラスミドにDNA断片を挿入して環状のプラスミドを得る工程をさらに含み、
上記挿入するDNA断片は、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位をこれらに対応する制限酵素で切断した際に生成される突出末端の塩基配列に相補的な塩基配列を有する突出末端が生成される制限酵素認識部位を両側に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(3)において新たに形成される2つの制限酵素部位がNotIおよびBgII、NotIおよびBstAPI、FseIおよびBsu36I、FseIおよびEcoNI、AscIおよびPflMI、またはAscIおよびBccIである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)を調製する方法であって、
(1)上流からプロモーターおよびターミネーター領域に挟まれ領域に2つのN部位を有するプラスミドを用意する工程、但し、N部位とはこの配列を認識する制限酵素の消化によりNNNまたはNNNNの突出末端を生じる制限酵素部位を意味する(Nは同一のいずれかの塩基である)、なお、N部位を認識しNNNまたはNNNNの突出末端を生じさせる制限酵素をN型制限酵素と定義する。
(2)標的遺伝子の両側のそれぞれにN部位を設けた遺伝子断片を調製する工程、
(3)(1)のプラスミドと(2)の遺伝子断片をN型制限酵素で消化し、ライゲーションして、プラスミドのN部位に、遺伝子断片のN型制限酵素切断断片を挿入したプラスミドを得る工程
を含む、1つの標的遺伝子を有するプラスミド(プラスミドSと呼ぶ)の調製方法。
【請求項5】
N部位がDraIII認識部位である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上流からプロモーターおよびターミネーター領域に挟まれ領域に、プロモーター側からlox66配列、P部位(但し、P部位とは、この配列を認識する制限酵素の消化により3塩基または4塩基の突出末端を生じかつ、この末端の配列が非パリンドローム配列となる部位である。)第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、第1のN部位((但し、N部位とはこの配列を認識する制限酵素の消化によりNNNまたはNNNNの突出末端を生じる部位を意味する(Nは同一のいずれかの塩基である))、第2のN部位及びニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位をこの順に含み、
第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位及び第1のN部位の間、並びに第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の間に、ニッキング反応及び鎖置換反応、及び引き続き行われるセルフライゲーションによって、2つの制限酵素部位が新たに形成される配列をそれぞれさらに含む、遺伝子挿入用プラスミド。
【請求項7】
P部位がBstXI認識部位、AlwNI認識部位, BglI認識部位, BstAPI認識部位, PflMI認識部位, SfiI認識部位, DraIII認識部位, EarI認識部位,BsmBI認識部位,またはBsmFI認識部位である請求項6に記載のプラスミド。
【請求項8】
ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位がNt.BspQI 認識部位である請求項6または7に記載のプラスミド。
【請求項9】
N部位がDraIII認識部位である請求項6〜8のいずれかに記載のプラスミド。
【請求項10】
第1のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位及び第1のN部位の間の配列が5〜15bpであり、第2のN部位及び第2のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の間の配列が5〜15bpである、請求項6〜9のいずれかに記載のプラスミド。
【請求項11】
ニッキング及び鎖置換反応によるセルフライゲーションによって新たに形成される2つの制限酵素部位がNotIおよびBgII、NotIおよびBstAPI、FseIおよびBsu36I、FseIおよびEcoNI、AscIおよびPflMI、またはAscIおよびBccIである請求項6〜10のいずれかに記載のプラスミド。
【請求項12】
標的遺伝子逆方向反復配列(以下、IRと表記する)構造を有するプラスミドの調製方法であって、
(1)請求項1に記載の方法において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列を含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列を含むプラスミドを調製する工程、
(2)請求項2に記載の方法において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列を含むDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る工程、および
(3)工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する工程、
を含む、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法。
【請求項13】
標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法であって、
(1)請求項1に記載の方法において、プラスミドSとして、標的遺伝子の上流側のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを用い、標的遺伝子DR構造の上流側にlox66配列およびP部位をこの順に含むプラスミドを調製する工程、但し、P部位は、この配列を認識する制限酵素の消化により3塩基または4塩基の突出末端を生じかつ、この末端の配列が非パリンドローム配列となる部位であり、P部位を認識し、このような突出末端を生じさせる制限酵素をP型制限酵素と定義する、
(2)請求項2に記載の方法において、ライゲートするDNA断片としてlox71配列およびP部位をこの順に含み、かつ一方の側に、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位の一方の制限酵素認識部位を有し、他方の側に、前記新たに形成された2つの制限酵素認識部位の他方の制限酵素認識部位を有するDNA断片を用いて環状のプラスミドを得る工程、
(3)工程(2)で得られた環状のプラスミドにCreリコンビナーゼを作用させてIR構造を有するプラスミドを調製する工程、
(4)工程(3)で得られたIR構造を有するプラスミドをP型制限酵素で消化する工程、および
(5)工程(4)で消化したプラスミドをセルフライゲーションする工程
を含む、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドの調製方法。
【請求項14】
(6)工程(5)においてセルフライゲーションしたプラスミドを含むプラスミド群を、宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングして標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを得る工程、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
P型制限酵素が、BstXI、AlwNI, BglI, BstAPI, PflMI, SfiI, DraIII, BstXI、EarI,BsmBI,またはBsmFIである請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
工程(2)と(3)の間に以下の工程(7)と(8)をさらに含む、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
(7)工程(2)で得られた環状のプラスミドをBglIで消化する工程、
(8)工程(7)で消化したプラスミドを含むプラスミド群を宿主に導入し、得られた形質転換体を用いてクローニングしてlox71配列が導入されたプラスミドを得る工程
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載の方法で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを培養細胞に導入し、標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを昆虫培養細胞にトランスフェクションして培養細胞をノックダウンする方法。
【請求項18】
培養細胞は、昆虫、植物、または酵母由来である請求項17に記載の調製方法。
【請求項19】
前記プラスミドは、以下のスペーサー配列を介してcDNAがIR構造を形成する請求項17または18に記載の調製方法。
【化7】

スペーサー領域の塩基配列
【請求項20】
前記プラスミドは、IE1プロモーター下に前記IR構造を有する請求項17〜19のいずれかに記載の調製方法。
【請求項21】
請求項13〜16のいずれかに記載の方法で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを用いての生物の生命現象に関わる因子をスクリーニングする方法。
【請求項22】
請求項13〜16のいずれかに記載の方法で調製した標的遺伝子IR構造を有するプラスミドを用いて標的遺伝子に対してRNAi効果を有する逆方向反復配列を判定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−125278(P2011−125278A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287565(P2009−287565)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)生物系特定産業技術支援センター平成20年度新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】